特許第6088905号(P6088905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088905
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】複式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/22 20060101AFI20170220BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20170220BHJP
   F28F 9/26 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   F28F9/22
   F28F9/02 301E
   F28F9/02 301Z
   F28F9/26
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-110204(P2013-110204)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-228240(P2014-228240A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄一
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−183960(JP,A)
【文献】 特開平11−325788(JP,A)
【文献】 特開2011−064379(JP,A)
【文献】 特開平11−142087(JP,A)
【文献】 特開平07−305990(JP,A)
【文献】 特開2011−051466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/22
F28F 9/02
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用空調装置の送風路に配置され、暖房運転時には、コンプレッサからの冷媒を凝縮することで空気を加熱するコンデンサとして用いられ、冷房運転時には、送風が遮断され、コンプレッサからの冷媒をガス状態で通過させて車室外のコンデンサに供給するように構成される、熱交換器であって、
互いに平行に配置される一対の円筒状のヘッダタンクと、これら一対のヘッダタンクを並列に連通する複数のチューブと、を含んで構成され、前記チューブ内を流れる冷媒と前記チューブ間の空隙を通流する空気との間で熱交換を行う熱交換ユニットを、少なくとも2個備え、
これらの熱交換ユニットが、前記空気の通流方向の前後に並べて配置され、互いに一方のヘッダタンク同士が接続部材を介して連通する構成である、複式熱交換器であり、
前記接続部材は、同一形状の2枚の細長の板材を含み、各板材には一方の面にバーリング加工により筒状に突出するボス部付きの連通孔が複数並べて形成され、これらの板材が互いに背面側の全面を背中合わせに接合されてなり、
前記接続部材は、連通させる2つのヘッダタンクの間に配置され、前記ボス部がこれらのヘッダタンクに形成した孔に挿入されて、これらのヘッダタンクと接合され、
前記接続部材を介して対向する前記ヘッダタンク間のうち、ヘッダタンクの長手方向で前記接続部材がない領域には、前記対向する前記ヘッダタンク間に、前記2枚の板材の板厚分のクリアランスがあることを特徴とする、複式熱交換器。
【請求項2】
前記接続部材の各連通孔は、前記接続部材が接合されるヘッダタンクの長手方向において、当該ヘッダタンクに連通する複数のチューブの端部間に位置するように設けられることを特徴とする、請求項1記載の複式熱交換器。
【請求項3】
前記接続部材を構成する前記板材は、前記ボス部が突出する前記一方の面を段押し加工により前記ヘッダタンクの円筒面と同じ曲率の円筒面としたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の複式熱交換器。
【請求項4】
前記接続部材を構成する前記板材は、背面側にろう材を持たせたクラッド材であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の複式熱交換器。
【請求項5】
前記接続部材を介して対向する前記ヘッダタンク間の最小クリアランスを1mm以上としたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の複式熱交換器。
【請求項6】
前記各熱交換ユニットの前記一方のヘッダタンクは、長手方向の中間部にタンク空間を仕切る仕切壁を有し、
前記仕切壁により仕切られる2つのタンク空間のうち、一端側のタンク空間が冷媒の流入側又は流出側のタンク空間となり、他端側のタンク空間が前記接続部材を介して他の熱交換ユニットと連通するタンク空間となることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の複式熱交換器。
【請求項7】
前記接続部材の前記連通孔は、前記接続部材が接合されるヘッダタンクの長手方向において、前記他端側のタンク空間の全域に設けられることを特徴とする、請求項6記載の複式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の熱交換ユニットを空気の通流方向に並べて配置した複式熱交換器に関し、特に熱交換ユニット間の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複式熱交換器は、特許文献1に示されるように、複数個の熱交換ユニットを空気の通流方向に並べて配置したもので、各熱交換ユニットは、互いに平行に配置される一対の円筒状のヘッダタンクと、これら一対のヘッダタンクを並列に連通する複数のチューブとを含んで構成され、チューブ内を流れる冷媒とチューブ間の空隙を通流する空気との間で熱交換を行う。
【0003】
ここで、4パスのカウンターフロー方式では、空気の通流方向の後側(下流側)の熱交換ユニットに2パス(第1パスと第2パス)で蛇行させて流した後、前側(上流側)の熱交換ユニットに2パス(第3パスと第4パス)で蛇行させて流す。
このとき、後側の熱交換ユニットの第2パスから、前側の熱交換ユニットの第3パスへの接続は、互いに一方のヘッダタンク同士が接続部材を介して連通する構成により、達成される。
【0004】
特許文献1では、接続部材(ジョイント部材)として、アルミニウム押出型材の連通孔にパイプ部材を挿入して、パイプ部材の両端部を突出させたものを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−142087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、2つのヘッダタンクを1箇所で連通させることを前提に、アルミニウム押出型材の連通孔にパイプ部材を挿入して、パイプ部材の両端部を突出させた接続部材を用いている。
従って、流通抵抗の低減のため、連通箇所を増やそうとすると、その分、パイプ部材が必要となるなど、部品点数が増加し、組立工数が増大する。
【0007】
特に本熱交換器が、ヒートポンプ方式の自動車用空調装置における送風路に配置され、暖房運転時には、コンプレッサからの冷媒を凝縮することで空気を加熱するコンデンサとして用いられ、冷房運転時には、送風が遮断され、コンプレッサからの冷媒をガス状態で通過させて車室外のコンデンサに供給するように構成される場合、本熱交換器の通流抵抗を低減することが求められる。かかる場合、ヘッダタンク間の連通箇所を増やして、通流抵抗を低減することが重要な課題であり、かかる課題を部品点数や組み立て工数の増加なく達成することは極めて重要である。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑み、部品点数や組み立て工数の増加を招くことなく、通流抵抗を低減できる、熱交換ユニット間の接続構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る複式熱交換器は、互いに平行に配置される一対の円筒状のヘッダタンクと、これら一対のヘッダタンクを並列に連通する複数のチューブと、を含んで構成され、前記チューブ内を流れる冷媒と前記チューブ間の空隙を通流する空気との間で熱交換を行う熱交換ユニットを、少なくとも2個備え、これらの熱交換ユニットが、前記空気の通流方向の前後に並べて配置され、互いに一方のヘッダタンク同士が接続部材を介して連通する構成である。
【0010】
ここにおいて、前記接続部材は、同一形状の2枚の細長の板材を含み、各板材には一方の面にバーリング加工により筒状に突出するボス部付きの連通孔が複数並べて形成され、これらの板材が背中合わせに接合されてなる。そして、前記接続部材は、連通させる2つのヘッダタンクの間に配置され、前記ボス部がこれらのヘッダタンクに形成した孔に挿入されて、これらのヘッダタンクと接合される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続部材は、簡単な加工の同一形状の2枚の板材より構成でき、しかも複数の連通孔での連通を達成できる。従って、部品点数や組み立て工数の増加を招くことなく、通流抵抗を低減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態として示す自動車用空調装置の冷媒回路の暖房運転時の概略図
図2】同上の自動車用空調装置の冷媒回路の冷房運転時の概略図
図3】本発明の一実施形態として示す複式熱交換器の概略斜視図
図4】同上の複式熱交換器の正面図
図5】同上の複式熱交換器の側面図(図4のA−A矢視図)
図6図4のB−B断面図
図7】同上の複式熱交換器の平面図(図4のC−C矢視図)
図8図4のD−D断面図
図9図4のE−E断面図
図10】同上の複式熱交換器のパス構成を示す概略斜視図
図11】接続部材の斜視図
図12】横断面で見た接続部材を含む接続部の組み立て工程図
図13】縦断面で見た接続部材を含む接続部の組み立て工程図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の一実施形態として示す自動車用空調装置の冷媒回路の概略図であり、本発明に係る複式熱交換器を第2車室内熱交換器17として備えている。また、図1は暖房運転時の状態を示しており、図2は冷房運転時の状態を示している。
【0014】
自動車用空調装置は、自動車(エンジン駆動の自動車、電気自動車、ハイブリッド車を含む)の車室内に配設され、車室内空気(内気)又は車外空気(外気)を取込んで温調し、それを車室内に吹き出すHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット1と、車室外に配設され、フロン系冷媒を介してHVACユニット1との熱交換を行うヒートポンプサイクル2と、から構成される。
【0015】
HVACユニット1は、ハウジング10により形成される送風路11と、送風路11の入口として形成される内気取込み口12及び外気取込み口13と、これらの取込み口12、13を選択的に切換える内外気切換ダンパ14と、これらの取込み口12、13から空気(内気又は外気)を取込んで送風路11へ送風するブロア15と、送風路11の比較的上流側に設けられる冷房用の第1車室内熱交換器16と、送風路11の比較的下流側に設けられた暖房用の第2車室内熱交換器17と、第2車室内熱交換器17をバイパスするバイパス通路18と、エアミックスダンパ19とを含んで構成される。
【0016】
エアミックスダンパ19は、第2車室内熱交換器17及びバイパス通路18への空気の流れを制御するもので、冷房運転時には図2に示すように第2車室内熱交換器17への空気の通流を遮断する機能を有している。
送風路11の出口側については図示を省略したが、温調された空気を適宜の方向に吹き出すべく、デフ吹出し口、フェース吹出し口、フット吹出し口が設けられ、これらはそれぞれのダンパにより開閉される。
【0017】
ヒートポンプサイクル2は、フロン系冷媒を循環させるもので、上記の第1車室内熱交換器16及び第2車室内熱交換器17を含んで構成される。
ヒートポンプサイクル2は、上記の第1車室内熱交換器16と、第1車室内熱交換器16の出口側配管が接続されるコンプレッサ(圧縮機)20と、コンプレッサ20の出口側配管が接続される第2車室内熱交換器17と、第2車室内熱交換器17の出口側配管が接続される膨張弁等の減圧手段21と、減圧手段21の出口側配管が接続される車室外熱交換器22と、車室外熱交換器22の出口側配管が接続される膨張弁等の減圧手段23と、を含んで構成され、減圧手段23の出口側配管は第1車室内熱交換器16に接続されている。
【0018】
車室外熱交換器22は、車室外、具体的には車両前面に配置され、ファン28による送風又は車両の走行風を受けて外気と熱交換する。
【0019】
減圧手段21に対しては、バイパス配管24が設けられる。ここにおいて、バイパス配管24に設けた開閉弁25などの制御の下、冷房運転時には冷媒がバイパス配管24を流れ、暖房運転時には冷媒が減圧手段21を流れるように構成されている。
また、減圧手段23及び第1車室内熱交換器16に対し、これらをバイパスするバイパス配管26が設けられる。ここにおいて、バイパス配管26に設けた開閉弁27などの制御の下、冷房運転時には冷媒が減圧手段23及び第1車室内熱交換器16へ流れ、暖房運転時には冷媒がバイパス配管26を流れるように構成されている。
尚、上記流れの制御のため、開閉弁25、27の他、一方向弁等が適宜設けられるが、ここでは省略した。
【0020】
次に上記の自動車用空調装置の動作について、暖房運転時と冷房運転時とに分けて説明する。
暖房運転時には、図1に示すように、バイパス配管24の開閉弁25が閉じ、バイパス配管26の開閉弁27が開いて、冷媒は図1の矢印に示すように循環する。
【0021】
HVACユニット1では、第1車室内熱交換器16がバイパスされていることにより、第1車室内熱交換器16には冷媒が流れない。従って、空気は第1車室内熱交換器16を通過するだけで、第1車室内熱交換器16での冷媒との熱交換は行われない。エアミックスダンパ19は第2車室内熱交換器17を開放する。このため、空気は第2車室内熱交換器17に流入し、第2車室内熱交換器17にて冷媒との熱交換が行われる。
【0022】
ヒートポンプサイクル2では、先ずコンプレッサ20にて圧縮された高温高圧のガス冷媒が暖房運転時にコンデンサ(凝縮器)として機能する第2車室内熱交換器17に流入し、空気との熱交換により冷却されて凝縮液化される。このとき、空気は第2車室内熱交換器17にて加熱され、送風路11下流側の吹出し口から吹き出されて、車室内の暖房に供される。
【0023】
第2車室内熱交換器17にて凝縮された冷媒は、膨張弁等の減圧手段21で断熱膨張し、減圧された後、気液二相冷媒となって、暖房運転時にエバポレータ(蒸発器)として機能する車室外熱交換器22に流入する。この気液二相冷媒は、車室外熱交換器22にて、ファン28による送風又は車両の走行風により外気から吸熱して、蒸発ガス化した後、バイパス配管26を通って、コンプレッサ20に吸入され、再び圧縮される。
【0024】
冷房運転時には、図2に示すように、バイパス配管24の開閉弁25が開き、バイパス配管26の開閉弁27が閉じ、冷媒は図2の矢印に示すように循環する。
【0025】
HVACユニット1では、第1車室内熱交換器16に冷媒が流れることから、空気は第1車室内熱交換器16にて冷媒と熱交換される。エアミックスドア19は第2車室内熱交換器17を閉鎖する。このため、空気は第2車室内熱交換器17に流入せず、第2車室内熱交換器17での冷媒との熱交換は行われない。
【0026】
ヒートポンプサイクル2では、先ずコンプレッサ20にて圧縮された高温高圧のガス冷媒が第2車室内熱交換器17に流入するが、エアミックスダンパ19の閉鎖により、空気との熱交換は行われず、第2車室内熱交換器17をそのまま通過する。従って、コンプレッサ20にて圧縮された高温高圧のガス冷媒は、そのまま、バイパス配管24を通り、冷房運転時にコンデンサとして機能する車室外熱交換器22に流入する。従って、高温高圧のガス冷媒は、車室外熱交換器22にて外気に放熱し、凝縮液化される。
【0027】
車室外熱交換器22にて凝縮された冷媒は、膨張弁等の減圧手段23で断熱膨張し、減圧された後、気液二相冷媒となって、冷房運転時にエバポレータとして機能する第1車室内熱交換器16に流入する。第1車室内熱交換器16に流入した冷媒は、各取込み口から送風路11に取込まれた空気との熱交換により加熱されて蒸発ガス化される。このとき、第1車室内熱交換器16にて冷却された空気は、送風路11下流側の吹出し口から吹き出されて、車室内の冷房に供される。
そして、第1車室内熱交換器16を経た冷媒はコンプレッサ20に吸入され、再び圧縮される。
【0028】
従って、上記の自動車用空調装置において、第2車室内熱交換器17は、HVACユニット1の送風路11に配置され、暖房運転時には、コンプレッサ20からの冷媒を凝縮することで空気を加熱するコンデンサとして用いられ、冷房運転時には、エアミックスダンパ19により送風が遮断され、コンプレッサ20からの冷媒をガス状態で通過させて車室外のコンデンサ(車室外熱交換器22)に供給するように構成される。尚、冷房運転時に冷媒を第2車室内熱交換器17をバイパスさせる方式と比較すると、バイパスのための配管及び弁を省略でき、コスト低減を図ることができる。
【0029】
次に上記の自動車用空調装置における第2車室内熱交換器17を構成する複式熱交換器の具体的構成について説明する。
図3は本発明の一実施形態として示す複式熱交換器の概略斜視図、図4は正面図、図5は側面図(図4のA−A矢視図)、図6図4のB−B断面図、図7は平面図(図4のC−C矢視図)、図8図4のD−D断面図、図9図4のE−E断面図である。
【0030】
この複式熱交換器17は、自動車用空調装置の送風路に配置され、冬期暖房時にはコンデンサとして送風空気を加熱し、夏季冷房時には送風空気の流通が遮断されて冷媒を通過させるものとなる。
本実施形態の複式熱交換器17は、空調空気の通流方向(図1中AIRの矢印方向)において、前後に並べて配置された2つの熱交換ユニット100、200を有している。ここで、2つの熱交換ユニット100、200のうち、通流方向の上流側に位置する熱交換ユニット100は、冷媒出口パイプ110を有する冷媒出口側の熱交換ユニットであり、通流方向の下流側に位置する熱交換ユニット200は、冷媒入口パイプ210を有する冷媒入口側の熱交換ユニットである。
【0031】
熱交換ユニット100は、互いに平行に配置される上下一対の円筒状のヘッダタンク101、102と、これらのヘッダタンク101、102を並列に連通する複数のチューブ103と、チューブ103間に配置されるコルゲートフィン104とから構成され、これらはろう付けにより接合されている。
【0032】
チューブ103は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金により断面形状が扁平な形状に形成され、内部に冷媒流路を有している。
コルゲートフィン104は、隣合うチューブ103、103の扁平面間に挿入配置され、空気の通流方向に空気通路を形成している。
【0033】
上側のヘッダタンク101は、その下側の円筒面に、複数のチューブ103の上端部が連通している。尚、ヘッダタンク101には、前記チューブ103を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、上側のヘッダタンク101の左右の両端部は閉塞されている。
【0034】
下側のヘッダタンク102は、その上側の円筒面に、複数のチューブ103の下端部が連通している。尚、ヘッダタンク102にも、前記チューブ103を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、下側のヘッダタンク102の左右の両端部のうち、一方(図で右方)は閉塞されるが、他方(図で左方)には冷媒出口パイプ110が接続されている。そして、下側のヘッダタンク102の長手方向中間部には、タンク内空間を第1及び第2のタンク内空間102a、102bに仕切る仕切壁105が設けられる。尚、仕切壁105は、円板状に形成され、ヘッダタンク102に予め形成したスリットを介して挿入し、接合する。
【0035】
下側のヘッダタンク102において、仕切壁105により仕切られる一端側のタンク空間(第1のタンク空間)102aは、冷媒の流出側のタンク空間となり、他端側のタンク空間(第2のタンク空間)102bは、後述の接続部材300を介して他の熱交換ユニット200と連通するタンク空間となる。
【0036】
熱交換ユニット200は、熱交換ユニット100と同様、互いに平行に配置される上下一対の円筒状のヘッダタンク201、202と、これらのヘッダタンク201、202を並列に連通する複数のチューブ203と、チューブ203間に配置されるコルゲートフィン204とから構成され、これらはろう付けにより接合されている。
【0037】
チューブ203は、チューブ103と同様、アルミニウムあるいはアルミニウム合金により断面形状が扁平な形状に形成され、内部に冷媒流路を有している。
コルゲートフィン204は、コルゲートフィン104と同様、隣合うチューブ203、203の扁平面間に挿入配置され、空気の通流方向に空気通路を形成している。
【0038】
上側のヘッダタンク201は、その下側の円筒面に、複数のチューブ203の上端部が連通している。尚、ヘッダタンク201には、前記チューブ203を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、上側のヘッダタンク201の左右の両端部は閉塞されている。
【0039】
下側のヘッダタンク202は、その上側の円筒面に、複数のチューブ203の下端部が連通している。尚、ヘッダタンク202にも、前記チューブ203を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、下側のヘッダタンク202の左右の両端部のうち、一方(図で右方)は閉塞されるが、他方(図で左方)には冷媒入口パイプ210が接続されている。そして、下側のヘッダタンク202の長手方向中間部には、タンク内空間を第1及び第2のタンク内空間202a、202bに仕切る仕切壁205が設けられる。尚、仕切り壁205は、円板状に形成され、ヘッダタンクに予め形成したスリットを介して挿入し、接合する。
【0040】
下側のヘッダタンク202において、仕切壁205により仕切られる一端側のタンク空間(第1のタンク空間)202aは、冷媒の流入側のタンク空間となり、他端側のタンク空間(第2のタンク空間)202bは、後述の接続部材300を介して他の熱交換ユニット100と連通するタンク空間となる。
【0041】
尚、熱交換ユニット100のフィン104と、熱交換ユニット200のフィン204とは、熱交換ユニット100、200を連結するように一体構造となっている。
また、熱交換ユニット100、200の上側のヘッダタンク101、201の両端部は、前後一体のキャップ106、107により閉止されている。熱交換ユニット100、200の下側のヘッダタンク102、202の一方(右側)の端部は、前後一体のキャップ108により閉止されている。熱交換ユニット100、200の下側のヘッダタンク102、202の他方(左側)の端部は、前後一体のキャップ109を介して、パイプ110、210が接続されている。
また、熱交換ユニット100、200の両側部は補強板111、112により補強されている(図4参照)。
【0042】
ここにおいて、熱交換ユニット100の下側のヘッダタンク102の第2のタンク内空間102bと、熱交換ユニット200の下側のヘッダタンク202の第2のタンク内空間202bとは、接続部材300により接続される。本実施形態での接続部材300の詳細構造については後述する。
【0043】
以上のように構成された複式熱交換器17での冷媒の流れは図10の矢印に示すようになる。
冷媒は、後側の熱交換ユニット200の冷媒入口パイプ210から下側のヘッダタンク202内の仕切板205により仕切られた第1のタンク内空間202aに流入し、第1のタンク内空間202aに連通しているチューブ203の一群(第1パスP1)を上向きに流れ、上側のヘッダタンク201内に流入する。
上側のヘッダタンク201内に流入した冷媒は、チューブ203の他群(第2パスP2)を下向きに流れ、下側のヘッダタンク202内の仕切板205により仕切られた第2のタンク内空間202bに流入する。
【0044】
冷媒は、その後、後側の熱交換ユニット200の下側のヘッダタンク202の第2のタンク空間202bから、接続部材300を介して、前側の熱交換ユニット100の下側のヘッダタンク102の仕切壁105により仕切られた第2のタンク内空間102bに流入する。
前側の熱交換ユニット100の下側のヘッダタンク102の第2のタンク内空間102bに流入した冷媒は、第2のタンク内空間102bに連通しているチューブ103の一群(第3パスP3)を上向きに流れ、上側のヘッダタンク101内に流入する。
上側のヘッダタンク101内に流入した冷媒は、チューブ103の他群(第4パスP4)を下向きに流れ、下側のヘッダタンク102内の仕切板105により仕切られた第1のタンク内空間102aに流入し、冷媒出口パイプ110より流出する。
【0045】
かかる流れ構造では、空気の通流方向に対し、後側の熱交換ユニット200が冷媒の流れ方向で上流側、前側の熱交換ユニット100が冷媒の流れ方向で下流側となり、冷媒の流れ方向と空気の通流方向とが対向する、いわゆるカウンターフローとなる。これにより、空気の通流方向での空気と冷媒との温度差を均一化でき、熱交換効率を向上させることができる。
【0046】
本実施形態での接続部材300の詳細構造について図11図13を参照して説明する。図11は接続部材の斜視図、図12は横断面で見た接続部材を含む接続部の組み立て工程図、図13は縦断面で見た接続部材を含む接続部の組み立て工程図である。
【0047】
接続部材300は、2枚の細長い板材301、302により構成される。これらの板材301、302は互いに同一形状である。
板材301、302には、その長手方向に所定の間隔で並べて、複数の連通孔301a、302aが形成される。
【0048】
これらの連通孔301a、302aは、バーリング加工により形成され、板材301、302の一方の面に円筒状に突出するボス部301b、302bを有している。
また、板材301、302のボス部301b、302bが突出する前記一方の面は、段押し加工により、ヘッダタンク102、202の円筒面と同じ曲率の円筒面301c、302cとしてある。
【0049】
板材301、302は、背面側(ボス部301b、302b突出側と反対側)にろう材を持たせたクラッド材であり、このクラッド材に対して、バーリング加工及び段押し加工がなされる。2枚の板材301、302は、最終的には、背中合わせにして接合される。
【0050】
一方、接続部材300により連通させる2つのヘッダタンク102、202(特に第2のタンク内空間102b、202bの部分)の対向する円筒面には、長手方向に所定の間隔で並べて、前記ボス部301b、302bが挿入される孔102c、202cが形成される。尚、ヘッダタンク102、202にはその外周面にろう材をコーティングしてある(101、201についても同様)。
【0051】
従って、組み立てに際しては、ヘッダタンク102の孔102cに一方の板材301のボス部301bを挿入し、ヘッダタンク102の円筒面に板材301の円筒面301cを沿わせて接合する。また、ヘッダタンク202の孔202cに他方の板材302のボス部302bを挿入し、ヘッダタンク202の円筒面に板材302の円筒面302cを沿わせて接合する。そして、板材301、302同士を背中合わせにして接合する。尚、ヘッダタンク101、102、201、202、チューブ103、203及びコルゲートフィン104、204を含む全ての部材は、加熱炉内でろう付けにより接合するが、このとき同時に接続部材300についてもろう付けにより接合する。
【0052】
ここで、接続部材300の連通孔301a、302は、連通させるヘッダタンク102、202の長手方向において、当該ヘッダタンク102、202に連通する複数のチューブ103、203の端部間に位置するように設けられる(図9参照)。
【0053】
また、接続部材300の厚さ調整により、接続部材300を介して対向するヘッダタンク102、202間の最小クリアランスは1mm以上とするのが好ましい。最小クリアランスが1mm未満であると、ろう付け接合時にろう流れにより対向するヘッダタンク102と202とがろう材により熱的につながって、カウンターフローなどの効果を弱めることになるからである。実際に、本発明者らは、最小クリアランスを0mm、0.5mm、1.0mmとして実験したが、0mmではろう流れによるタンク間熱伝導を生じ、0.5mmでは一部においてろう流れによるタンク間熱伝導を生じ、1.0mmでろう流れによるタンク間熱伝導を阻止できた。但し、1mmを超えに従って熱交換器の大型化を招くので、1mm付近とすることが望ましい。
【0054】
本実施形態によれば、接続部材300は、簡単な加工の2枚の板材301、302より構成でき、しかも複数の連通孔301a、302aでの連通を達成できる。従って、部品点数や組み立て工数の増加を招くことなく、通流抵抗を低減できる。
しかも、2枚の板材301、302は同一形状の同一部品であり、部品管理が容易となる。また、板材301、302への加工はバーリング加工及び段押し加工のみであり、加工は容易である。また、バーリング加工は同一方向への加工であり、加工性に優れる。
【0055】
また、本実施形態によれば、接続部材300の各連通孔301a、302aは、接続部材300が接合されるヘッダタンク102、202の長手方向において、当該ヘッダタンク102、202に連通する複数のチューブ103、203の端部間に位置するように設けられることにより、チューブ103、203との干渉を避けつつ、多数の連通孔301a、302aを効果的に配置でき、通流抵抗を効率良く低減できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、接続部材300を構成する板材301、302は、ボス部301b、302bが突出する面を段押し加工によりヘッダタンク102、202の円筒面と同じ曲率の円筒面301c、302cとしたことにより、洩れ等を生じにくい良好な接合を実現できる。
【0057】
また、本実施形態によれば、接続部材300を構成する板材301、302として、背面側にろう材を持たせたクラッド材を用いることにより、接合が容易となる。また、両面側、すなわちヘッダタンク102、202側の面にろう材を持たせると、ヘッダタンク102、202にはその外周側に予めろう材をコーティングしてあるので、ろう材が過多となり、焼損などの不具合を生じやすい。よって、背面側のみとすることが効果的である。
【0058】
また、本実施形態によれば、接続部材300を介して対向するヘッダタンク102、202間の最小クリアランスを1mm以上としたことにより、ろう材によるヘッダタンク102、202の熱的短絡を防止でき、所望の熱交換性能を維持できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、各熱交換ユニット100、200の一方のヘッダタンク102、202は、長手方向の中間部にタンク空間を仕切る仕切壁105、205を有し、仕切壁105、205により仕切られる2つのタンク空間のうち、一端側のタンク空間102a,202aが冷媒の流入側又は流出側のタンク空間となり、他端側のタンク空間102b、202bが接続部材300を介して他の熱交換ユニットと連通するタンク空間となることにより、4パス方式で熱交換効率を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、4パス方式において、接続部材300の前記連通孔301a,302aは、接続部材300が接合されるヘッダタンク102、202の長手方向において、前記他端側のタンク空間102b、202bの全域に設けられることにより、冷媒の通流抵抗を効果的に低減できる。但し、本発明は4パス方式に限るものではなく、最も単純な方式である2パス方式としてもよい。
【0061】
また、本実施形態によれば、自動車用空調装置の送風路に配置され、暖房運転時には、コンプレッサ20からの冷媒を凝縮することで空気を加熱するコンデンサとして用いられ、冷房運転時には、送風が遮断され、コンプレッサ20からの冷媒をガス状態で通過させて車室外のコンデンサ22に供給するように構成される車室内熱交換器17に適用することにより、当該熱交換器17での冷房運転時の通流抵抗を効果的に低減できる。但し、本発明はこれ以外への適用も可能であることは言うまでもない。
【0062】
ここで、一部の先行技術について述べる。
特開平11−325788号公報には、ヘッダタンク用の接続部材が示されているが、これはヘッダタンク同士を接続するものではなく、ヘッダタンクとレシーバタンクとを接続するものである。また、この接続部材は2枚の板材からなるが、これらの板材は同一形状ではなく、加工も容易ではない。また、使用目的の相違から連通孔は少数である。
また、特開2003−21490号公報にも、ヘッダタンク用の接続部材が示されているが、これもヘッダタンク同士を接続するものではなく、ヘッダタンクとレシーバタンクとを接続するものである。また、この接続部材は板材の両面にバーリング加工によるボス部を突出させており、板材が破断する恐れがあるなど、加工も容易ではない。
特にレシーバタンクの場合は、タンクの外形が大きく、円筒面であったとしても、曲率半径が大きいため、ボス部のバーリング高さをそれほど必要としない。
これに対し、ヘッダタンク同士では、円筒面の曲率半径が小さいため、しかも複式熱交換器ではヘッダタンクそのものを小径化するので、安定した接続のために、ボス部のバーリング高さを確保する必要がある。よって、本実施形態のような構成が必要となる。
【0063】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1 HVACユニット
2 ヒートポンプサイクル
10 ハウジング
11 送風路
12 内気取込み口
13 外気取込み口
14 内外気切換ダンパ
15 ブロワ
16 第1車室内熱交換器(冷房運転時:エバポレータ)
17 第2車室内熱交換器(暖房運転時:コンデンサ)
18 バイパス通路
19 エアミックスダンパ
20 コンプレッサ
21 膨張弁等の減圧手段
22 車外熱交換器(冷房運転時:コンデンサ、暖房運転時:エバポレータ)
23 膨張弁等の減圧手段
24 バイパス配管
25 開閉弁(冷房運転時:開)
26 バイパス配管
27 開閉弁(暖房運転時:開)
28 ファン
100 熱交換ユニット
101 上側のヘッダタンク
102 下側のヘッダタンク
102a、102b 第1及び第2タンク内空間
102c 孔
103 チューブ
104 コルゲートフィン
105 仕切壁
106〜109 キャップ
110 冷媒出口パイプ
111、112 補強板
200 熱交換ユニット
201 上側のヘッダタンク
202 下側のヘッダタンク
202a、202b 第1及び第2タンク内空間
202c 孔
203 チューブ
204 コルゲートフィン
205 仕切壁
210 冷媒入口パイプ
300 接続部材
301、302 板材
301a、302a 連通孔
301b、302b ボス部
301c、302c 段押し加工による円筒面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13