(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術文献に記載のベークプレートは、いわゆる加熱プレートである。本発明は、加熱プレートを一層効率よく冷却することができる熱処理装置および加熱プレート冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、加熱プレートを冷却するとき、加熱プレートの温度の経時変化を詳細に分析した。その結果、冷却の条件によっては、加熱プレートの面内における温度のばらつきが大きくなる場合があることを知見した。加熱プレートの面内における温度のばらつきが大きくなると、加熱プレートの全体の温度を目標温度に収束させることが困難となり、冷却時間が長くなる。
【0007】
ここで、冷却の条件とは、冷却前における加熱プレートの実際の温度や、加熱プレートを冷却すべき温度(目標温度)などである。
【0008】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、基板に熱処理を行う熱処理装置において、基板を加熱する加熱プレートと、加熱プレートから熱を受け取るための受動冷却プレートと、加熱プレートから離れた位置に配置され、受動冷却プレートから熱を受け取るための能動冷却部と、加熱プレートと受動冷却プレートとを熱的に接続するために加熱プレートと受動冷却プレートとを相対的に移動させ、受動冷却プレートと能動冷却部とを熱的に接続するために受動冷却プレートと能動冷却部とを相対的に移動させる駆動機構と、能動冷却部および受動冷却プレートの双方と密着して能動冷却部と受動冷却プレートとを熱的に接続することができる熱伝導材と、を備える熱処理装置である。
【0009】
[作用・効果]本発明に係る熱処理装置によれば、加熱プレートは、基板を加熱することによって基板に熱処理を施す。駆動機構は、加熱プレートと受動冷却プレートとを相対的に移動させることにより、加熱プレートと受動冷却プレートとを熱的に接続することができる。また、駆動機構は、受動冷却プレートと能動冷却部とを相対的に移動させることにより、受動冷却プレートと能動冷却部とを熱的に接続することができる。
【0010】
加熱プレートと受動冷却プレートとを熱的に接続すると、加熱プレートから受動冷却プレートに熱を移動させることができる。すなわち、加熱プレートを冷却できる。受動冷却プレートと能動冷却部とを熱的に接続すると、受動冷却プレートから能動冷却部に熱を移動させることができる。すなわち、受動冷却プレートを冷却できる。
【0011】
ここで、受動冷却プレートと能動冷却部とは、熱伝導材を介して熱的に接続される。駆動機構が受動冷却プレートと能動冷却部とを相対的に移動させたとき、熱伝導材は受動冷却プレートおよび能動冷却部の双方と密着する。これにより、受動冷却プレートと能動冷却部との間における熱抵抗は小さくなり、位置による熱抵抗のばらつきも抑制できる。すなわち、受動冷却プレートと能動冷却部との間で熱が円滑に移動できる。よって、受動冷却プレートを効率よく冷却でき、かつ、受動冷却プレートの面内における温度がばらつくことを好適に防止できる。
【0012】
さらに、このような受動冷却プレートによって加熱プレートを冷却するので、加熱プレートを効率よく冷却でき、加熱プレートの面内における温度がばらつくことを好適に防止できる。
【0013】
なお、「熱的に接続する」とは、熱が実質的に移動できるように接続するという意味である。複数の物体が直接的に接触していない場合であっても、物体間で熱が実質的に移動できるときには、「熱的に接続する」に該当する。
【0014】
本発明において、熱伝導材は、弾性変形可能であることが好ましい。熱伝導材は、受動冷却プレートの表面形状、および、能動冷却部の表面形状に追従して弾性変形する。よって、熱伝導材は、受動冷却プレートおよび能動冷却部にそれぞれ好適に密着できる。
【0015】
本発明において、能動冷却部は、略平坦な金属製の伝熱面を有し、受動冷却プレートは、略平坦な金属製の伝熱面を有し、熱伝導材の主たる材質は、樹脂またはゴムであり、熱伝導材は、能動冷却部の伝熱面と受動冷却プレートの伝熱面とに同時に密着可能であることが好ましい。受動冷却プレートと能動冷却部とは、熱伝導材を介して熱的に面接触する。これにより、受動冷却プレートを一層効率よく冷却できるとともに、受動冷却プレートの温度がばらつくことを一層好適に防止できる。また、能動冷却部および受動冷却プレートの各伝熱面はそれぞれ金属製であるのに対し、熱伝導材の主たる材質は樹脂またはゴムである。このため、能動冷却部および受動冷却プレートの各伝熱面が微小な凹凸を有していても、熱伝導材は各伝熱面とそれぞれ好適に密着できる。
【0016】
本発明において、加熱プレートおよび能動冷却部はそれぞれ、所定の位置に固定されており、駆動機構は、受動冷却プレートを移動することによって、受動冷却プレートと加熱プレートとを接近および離反させ、かつ、受動冷却プレートを移動することによって、受動冷却プレートと能動冷却部とを接近および離反させることが好ましい。受動冷却プレートのみを移動させることによって、加熱プレートを冷却でき、かつ、受動冷却プレートを冷却できる。このように簡素な、かつ、可動部が少ない構造によって熱処理装置を実現できる。
【0017】
本発明において、熱伝導材は、熱伝導シート、サーマルパッド、および、熱伝導グリースの少なくともいずれかであることが好ましい。これによれば、熱伝導材は、能動冷却部および受動冷却プレートの双方と好適に密着できる。
【0018】
本発明において、能動冷却部に熱伝導材を吸着させる吸着機構を備えていることが好ましい。吸着機構を備えているので、熱伝導材を能動冷却部に一層好適に密着させることができる。
【0019】
また、本発明は、加熱プレート冷却方法において、受動冷却プレートを能動冷却部に熱的に接続することなく受動冷却プレートを加熱プレートに熱的に接続させて、加熱プレートを冷却する冷却過程と、受動冷却プレートを加熱プレートに熱的に接続することなく受動冷却プレートを能動冷却部に熱的に接続させて、受動冷却プレートを冷却する準備過程と、を備え、冷却過程を開始してから終了するまでの間に、準備過程を少なくとも1回以上行い、準備過程を行っているときは冷却過程を中断し、準備過程が終了すると冷却過程を再開する加熱プレート冷却方法である。
【0020】
[作用・効果]本発明に係る加熱プレート冷却方法によれば、冷却過程は、受動冷却プレートを冷却せずに、加熱プレートを冷却する。準備過程は、加熱プレートを冷却せずに、受動冷却プレートを冷却する。この準備過程を、冷却過程を開始した時から終了する時までの間に、1回以上実行する。準備過程を実行しているとき、冷却過程を中断するので、加熱プレートを冷却できない。しかし、冷却過程を再開すると加熱プレートを再び効率よく冷却できる。この結果、加熱プレートを冷却するのに要する冷却時間を却って短くすることができ、加熱プレートの全体的な冷却効率を高めることができる。
【0021】
本発明において、冷却過程を実行しているときに、単位時間当たりの加熱プレートの温度低下量である温度低下率が閾値以下であるか否かを判定する温度低下率監視過程と、を備え、温度低下率監視過程によって温度低下率が閾値以下であると判定されると、準備過程を行うことが好ましい。温度低下率監視過程を備えているので、冷却過程を中断するタイミングを適切に判定できる。
【0022】
また、本発明は、加熱プレート冷却方法において、冷却前の加熱プレートの初期温度と加熱プレートを冷却すべき目標温度との差である温度変更幅が、所定量以下であるか否かを判定する冷却条件判定過程と、受動冷却プレートを能動冷却部に熱的に接続することなく受動冷却プレートを加熱プレートに熱的に接続させて、加熱プレートを冷却する冷却過程と、受動冷却プレートを加熱プレートに熱的に接続することなく受動冷却プレートを能動冷却部に熱的に接続させて、受動冷却プレートを冷却する準備過程と、を備え、冷却条件判定過程によって温度変更幅が所定量以下であると判定された場合、冷却過程を開始してから終了するまでの間に準備過程を行うことを禁止し、冷却条件判定過程によって温度変更幅が所定量より大きいと判定された場合、冷却過程を開始してから終了するまでの間に準備過程を行うことを許容し、冷却過程を開始してから終了するまでの間に準備過程を行うときには、冷却過程を中断する加熱プレート冷却方法である。
【0023】
[作用・効果]本発明に係る加熱プレート冷却方法によれば、冷却過程に先立って冷却条件判定過程が温度変更幅の大きさを判定する。続いて、冷却過程を開始する。冷却過程は、受動冷却プレートを冷却せずに、加熱プレートを冷却する。ここで、温度変更幅が所定量以下であると判定された場合、準備過程の実行を禁止する。これにより、冷却過程は、中断することなく、終了する。他方、温度変更幅が所定量より大きいと判定された場合、準備過程の実行を許容する。準備過程は、加熱プレートを冷却せずに、受動冷却プレートを冷却する。準備過程を行うときには冷却過程を中断し、準備過程が終了すると冷却過程を再開する。このように、温度変更幅の大きさに応じて準備過程の実行を制限するので、温度変更幅が比較的に大きい場合であっても比較的に小さい場合であっても、加熱プレートの全体的な冷却効率を適切に高めることができる。
【0024】
本発明において、冷却過程を実行しているときに、単位時間当たりの加熱プレートの温度低下量である温度低下率が閾値以下であるか否かを判定する温度低下率監視過程と、を備え、冷却条件判定過程によって温度変更幅が所定量以下であると判定された場合にのみ温度低下率監視過程を実行し、温度低下率監視過程によって温度低下率が閾値以下であると判定されると、準備過程を行うことが好ましい。温度低下率監視過程を備えているので、準備過程を行うタイミングを適切に判定できる。
【0025】
本発明において、加熱プレートの温度が所定値以下であるか否かを判定する温度監視過程と、を備え、温度監視過程によって加熱プレートの温度が所定値以下であると判定されると、冷却過程を終了することが好ましい。温度監視過程を備えているので、冷却過程を終了するタイミングを好適に判定できる。
【0026】
本発明において、準備過程は、能動冷却部及び受動冷却プレートの双方に密着する熱伝導材を介して能動冷却部と受動冷却プレートとを熱的に接続させることが好ましい。準備過程において、熱伝導材は受動冷却プレートおよび能動冷却部の双方と密着する。これにより、受動冷却プレートと能動冷却部との間において熱が円滑に移動できる。このため、受動冷却プレートを効率よく冷却でき、かつ、受動冷却プレートの面内における温度がばらつくことを好適に防止できる。さらに、冷却過程を再開したとき、加熱プレートを効率よく冷却でき、かつ、加熱プレートの面内における温度がばらつくことを好適に防止できる。
【0027】
なお、本明細書は、次のような熱処理装置および加熱プレート冷却方法に係る発明も開示している。
【0028】
(1)受動冷却プレートと能動冷却部とを直接的に接触させずに受動冷却プレートと能動冷却部とを熱的に接続させることが好ましい。
【0029】
前記(1)に記載の発明によれば、受動冷却プレートと能動冷却部との間で移動する熱は全て、熱伝導材を通過する。よって、受動冷却プレートを一層適切に冷却できる。
【0030】
(2)駆動機構は、受動冷却プレートを能動冷却部に熱的に接続することなく加熱プレートと受動冷却プレートとを熱的に接続させることが好ましい。
【0031】
前記(2)に記載の発明によれば、加熱プレートの冷却時に受動冷却プレートを冷却しないので、加熱プレートを好適に冷却できる。
【0032】
(3)駆動機構は、受動冷却プレートを加熱プレートに熱的に接続することなく受動冷却プレートと能動冷却部とを熱的に接続させることが好ましい。
【0033】
前記(3)に記載の発明によれば、受動冷却プレートの冷却時に加熱プレートを冷却しないので、受動冷却プレートを好適に冷却できる。
【0034】
(4)加熱プレートと受動冷却プレートとは、それぞれ水平姿勢で設置され、加熱プレートの下方に受動冷却プレートが配置され、受動冷却プレートの下方に能動冷却部が配置され、受動冷却プレートは、受動冷却プレートの上面で加熱プレートと熱的に接続可能であり、かつ、受動冷却プレートの下面で能動冷却部と熱的に接続可能であることが好ましい。
【0035】
前記(4)に記載の発明によれば、簡素な構造で、熱処理装置を実現できる。また、加熱プレート、受動冷却プレートおよび能動冷却部が上下方向に並ぶので、熱処理装置の設置面積を小さくできる。
【0036】
(5)加熱プレートおよび能動冷却部はそれぞれ、所定の位置に固定されており、駆動機構は、受動冷却プレートを上下方向に移動させることが好ましい。
【0037】
前記(5)に記載の発明によれば、駆動機構が移動させる対象が受動冷却プレートのみである。また、駆動機構が受動冷却プレートを移動させる方向は上下方向のみである。よって、駆動機構の構造を簡素化できる。また、加熱プレートの冷却と受動冷却プレートの冷却を速やかに切り替えることができる。
【0038】
(6)受動冷却プレートと能動冷却部とが熱的に接続するとき、受動冷却プレートおよび能動冷却部によって、熱伝導材を圧縮変形させることが好ましい。
【0039】
前記(6)に記載の発明によれば、熱伝導材を受動冷却プレートおよび能動冷却部にそれぞれ好適に密着させることができる。
【0040】
(7)所定値は目標温度よりも大きいことが好ましい。
【0041】
前記(7)に記載の発明によれば、加熱プレートの温度が惰性で低下することや、加熱プレートの温度がオーバーシュートすることを利用して、加熱プレートの温度を目標温度に一層効率よく収束させることができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明に係る熱処理装置および加熱プレート冷却方法によれば、加熱プレートを効率よく冷却できる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0044】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1(a)、
図1(b)はそれぞれ、実施例1に係る熱処理装置の概略構成を示す側面図である。
図1(a)は、受動冷却プレート17が準備位置にあるときを示し、
図1(b)は、受動冷却プレート17が冷却位置にあるときを示す。
図2は、実施例1に係る熱処理装置の概略構成を示す平面図である。なお、
図2では、駆動機構18等を省略している。
【0045】
以下の説明において、「基板」とは、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、プラズマディスプレイ用の基板、光ディスク用の基板、磁気ディスク用の基板、光磁気ディスク用の基板など(以下、単に基板と称する)をいう。
【0046】
熱処理装置1は、加熱プレート11と、能動冷却部13と、熱伝導シート15と、受動冷却プレート17と、駆動機構18と、を備える。
【0047】
加熱プレート11は、基板Wを加熱する。加熱プレート11の外形は、基板Wよりやや大径の円盤形状である。加熱プレート11は、水平姿勢で所定の位置に固定されている。加熱プレート11は、上面A1と下面A2を有する。上面A1および下面A2はそれぞれ、略平坦である。上面A1に基板Wが載置される。上面A1は、加熱プレート11が基板Wに熱を与えるための伝熱面である。下面A2は、加熱プレート11が受動冷却プレート17に熱を渡すための伝熱面である。
【0048】
加熱プレート11は、ヒータ(不図示)を備えている。ヒータが発熱することによって、加熱プレート11自体が能動的に昇温可能である。
【0049】
能動冷却部13は、加熱プレート11から離れた位置に配置されている。本実施例では、能動冷却部13は、加熱プレート11の下方に配置されている。能動冷却部13も固定的に設置されている。
図2において能動冷却部13が現れていないように、平面視で加熱プレート11と能動冷却部13とは重なっている。能動冷却部13は、略平坦な上面Bを有する。上面Bは、能動冷却部13が受動冷却プレート17から熱を受け取るための伝熱面である。上面Bは金属で形成されている。
【0050】
能動冷却部13は、水冷方式または空冷方式の熱交換器(不図示)を有している。能動冷却部13自体が能動的に降温可能である。
【0051】
熱伝導シート15は、能動冷却部13の上面B上に載置されている。上面Bには熱伝導シート15の裏面C2が直接的に面接触している。裏面C2とは反対側の熱伝導シート15の面を表面C1と呼ぶ。熱伝導シート15の厚みは、表面C1および裏面C2の寸法に比べて小さい。すなわち、熱伝導シート15は扁平な形状(シート形状)を呈する。
【0052】
熱伝導シート15は、熱伝導性に優れている(熱伝導率が大きい)。熱伝導シート15は、放熱シートとも呼ばれる。熱伝導シート15の主たる材質は、樹脂(合成樹脂を含む)やゴムであることが好ましい。たとえば、熱伝導シート15が、樹脂またはゴムのみから構成されていてもよい。また、たとえば、熱伝導シート15が、合成樹脂やゴム等に添加物やフィラーが配合された材質によって構成されていてもよい。添加物やフィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、黒鉛、銀、セラミックまたはダイヤモンド等が例示される。
【0053】
熱伝導シート15は、弾性変形可能である。熱伝導シート15は、能動冷却部13の上面B(金属)に比べて弾性係数が小さく、比較的に柔軟である。熱伝導シート15の表面C1および裏面C2はそれぞれ、局所的に凹凸変形可能である。換言すれば、熱伝導シート15の表面C1および裏面C2はそれぞれ、部分的に厚み方向に圧縮変形可能である。
【0054】
熱伝導シート15は、本発明における熱伝導材に相当する。
【0055】
受動冷却プレート17は、加熱プレート11から熱(熱エネルギー)を受け取り、能動冷却部13に熱を渡す。受動冷却プレート17は金属製である。金属としては、銅やアルミニウム等の伝熱性の良好な金属であることが好ましい。
【0056】
受動冷却プレート17は、加熱プレート11の下方であって、能動冷却部13の上方に設置されている。
図2において受動冷却プレート17が現れていないように、平面視で加熱プレート11と受動冷却プレート17とは重なっている。受動冷却プレート17は、加熱プレート11と略同じ径を有する円盤形状である。受動冷却プレート17は、水平姿勢で設置されている。
【0057】
受動冷却プレート17は、上面D1と下面D2を有する。上面D1および下面D2はそれぞれ、略平坦である。受動冷却プレート17の上面D1は、熱処理プレート11の下面A2と対向している。受動冷却プレート17の下面D2は、熱伝導シート15の表面C1と対向している。上面D1は、受動冷却プレート17が加熱プレート11から熱を受け取るための伝熱面である。下面D2は、受動冷却プレート17が能動冷却部13に熱を渡すための伝熱面である。
【0058】
駆動機構18は、受動冷却プレート17を上下方向に移動させる。これにより、受動冷却プレート17と加熱プレート11とは接近または離反する。また、受動冷却プレート17と能動冷却部13とは接近または離反する。そして、受動冷却プレート17は、
図1(a)に示す準備位置と、
図1(b)に示す冷却位置とに移動する。
【0059】
受動冷却プレート17が準備位置に位置するとき、受動冷却プレート17と能動冷却部13とは直接的に接触せず、熱伝導シート15を介して間接的に接続される。熱伝導シート15は受動冷却プレート17および能動冷却部13と密着する。この熱伝導シート15を介して、受動冷却プレート17と能動冷却部13との間で熱が実質的に移動できる。すなわち、受動冷却プレート17と能動冷却部13とが熱的に接続される。
【0060】
受動冷却プレート17と能動冷却部13とを熱的に接続するとき、受動冷却プレート17と能動冷却部13によって、熱伝導シート15を圧縮変形させることが好ましい。熱伝導シート15を圧縮変形させる際、受動冷却プレート17の自重を利用して熱伝導シート15を押し圧してもよい。
【0061】
受動冷却プレート17が冷却位置に位置するとき、受動冷却プレート17と加熱プレート11とが直接的に接触する。これにより、加熱プレート11と受動冷却プレート17が熱的に接続される。
【0062】
なお、受動冷却プレート17と能動冷却部13とが熱的に接続されるとき、受動冷却プレート17と加熱プレート11とは熱的に接続されていない(絶縁されている)。また、受動冷却プレート17と加熱プレート11とが熱的に接続されるとき、受動冷却プレート17と能動冷却部13とは熱的に接続されていない。
【0063】
駆動機構18としては、エアシリンダ等が例示される。
【0064】
次に、実施例に係る熱処理装置1の動作について説明する。以下では、まず、基板Wを加熱する処理を説明し、その後、加熱プレート11を冷却する処理を説明する。
【0065】
<基板Wを加熱する動作>
駆動機構18は、受動冷却プレート17を加熱プレート11から離す。この際、受動冷却プレート17を準備位置に移動させてもよい。
【0066】
加熱プレート11の上面A1に基板Wを載置する。加熱プレート11が有するヒータが発熱する。ヒータが発した熱は加熱プレート11の上面A1から基板Wに伝わる。このようにして、基板Wを加熱する。
【0067】
<加熱プレート11を冷却する動作>
図3、
図4を参照する。
図3は、加熱プレート11を冷却する手順を示すフローチャートである。
図4(a)、(b)はそれぞれ、加熱プレート11の温度の経時変化を示すグラフである。
図4(a)、(b)において、横軸は時間であり、縦軸は加熱プレート11の温度である。
図4(a)、(b)ではそれぞれ、加熱プレート11の上面A1における位置e1乃至e6(
図1参照)における各温度を示す。
図4(a)、(b)は、縦軸のレンジが異なるだけであり、同じ測定結果を示すグラフである。
【0068】
<ステップS1> 冷却過程:時刻t1〜時刻t2
駆動機構18は、時刻t1において、受動冷却プレート17を冷却位置に移動させる。受動冷却プレート17は加熱プレート11と熱的に接続する。加熱プレート11から受動冷却プレート17に熱が移動する。受動冷却プレート17は加熱プレート11の熱を受け取る。このようにして、受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却する。この冷却過程では、能動冷却部13によって受動冷却プレート17を冷却しない。時刻t1は、冷却過程を開始する時刻である。
【0069】
<ステップS2> 準備過程:時刻t2〜時刻t3
駆動機構18は、時刻t2において、受動冷却プレート17を冷却位置から準備位置に移動させる。熱伝導シート15は能動冷却部13のみならず受動冷却プレート17と密着し、能動冷却部13と受動冷却プレート17とを熱的に接続する。受動冷却プレート17から熱伝導シート15を介して能動冷却部13に熱が移動する。受動冷却プレート17は能動冷却部13に熱を渡す。このようにして、能動冷却部13によって受動冷却プレート17を冷却する。この準備過程では、受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却しない。
【0070】
ここで、受動冷却プレート17の下面D2の全体は熱伝導シート15と密着しているので、受動冷却プレート17と能動冷却部13との間における熱抵抗は小さく、位置に応じた熱抵抗のばらつきも抑制されている。よって、受動冷却プレート17の下面D2は等しく冷却され、下面D2における温度のばらつきが抑制される。この結果、受動冷却プレート17の上面D1における温度も、略均一に降下する。
【0071】
時刻t2は、冷却過程を中断する時刻である。
図4に示すように、時刻t1から時刻t2の期間に比べて、時刻t2から時刻t3の期間では、加熱プレート11の温度が比較的に緩やかに低下している。
【0072】
<ステップS3> 冷却過程:時刻t3〜時刻t4
駆動機構18は、時刻t3において、受動冷却プレート17を準備位置から冷却位置に移動させる。再び、受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却する。時刻t3は、冷却過程を再開する時刻である。
図4に示すように、時刻t2から時刻t3の期間に比べて、時刻t3から時刻t4の期間では、加熱プレート11の温度が比較的に急峻に低下している。
【0073】
上述したように、受動冷却プレート17の上面D1における温度のばらつきが小さいので、加熱プレート11の下面A2は等しく冷却され、加熱プレート11の下面A2における温度は、ばらつきにくい。この結果、加熱プレート11の上面A1における温度も略均一に降下する。時刻t3は、冷却過程を再開する時刻である。
【0074】
<ステップS4> 準備過程:時刻t4〜時刻t5
駆動機構18は、時刻t4において、受動冷却プレート17を冷却位置から準備位置に移動させる。再び、能動冷却部13によって受動冷却プレート17を冷却する。時刻t4は、冷却過程を中断する時刻である。
【0075】
<ステップS5> 冷却過程:時刻t5〜時刻t6
駆動機構18は、時刻t5において、受動冷却プレート17を準備位置から冷却位置に移動させる。再び、受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却する。時刻t5は、冷却過程を再開する時刻である。
【0076】
そして、加熱プレート11の温度が目標温度に収束すると、冷却過程を終了する。時刻t6は、冷却過程を終了する時刻である。
図4に示すように、時刻t6における加熱プレート11の各温度はそれぞれ、目標温度(例えば、80[℃])に収束している。
【0077】
ここで、本実施例1を比較例と比較する。
図5は、比較例に係る熱処理装置101の概略構成を示す側面図である。
【0078】
図5に示すように、比較例に係る熱処理装置101は、本実施例の熱処理装置1から熱伝導シート15を省略した装置である。すなわち、熱処理装置101は、加熱プレート111と能動冷却部113と受動冷却プレート117と駆動機構118とを備えている。
図5に示すように受動冷却プレート117が準備位置に位置するとき、受動冷却プレート117は能動冷却部113と直接的に接触する。
【0079】
図6(a)、(b)はそれぞれ、比較例における加熱プレート111の温度の経時変化を示すグラフである。
図6(a)、(b)において、横軸は時間であり、縦軸は温度である。
図6(a)、(b)では、
図4と同様に、加熱プレート111の上面A1における6箇所の位置における各温度を示す。
【0080】
図示するように、比較例では各温度の曲線同士の間隔が比較的に大きいのに対し、実施例1では各温度の曲線同士の間隔が比較的に小さい。すなわち、比較例に比べて、実施例1では、位置による温度のばらつきが小さい。また、比較例における時刻t11から時刻t16までの期間は比較的に長いのに対し、実施例1における時刻t1から時刻t6までの期間は比較的に短い。すなわち、比較例に比べて、実施例1によれば、より短い時間で加熱プレート11の全体を目標温度に収束させることができる。つまり、加熱プレート11を冷却するのに要する時間を短縮できる。
【0081】
このように、本実施例1によれば、能動冷却部13と受動冷却プレート17の間を熱伝導シート15によって熱的に接続するので、受動冷却プレート17を効率よく冷却できる。そして、このような受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却するので、加熱プレート11を効率よく冷却できる。
【0082】
また、熱伝導シート15によって、受動冷却プレート17の面内D1、D2における温度がばらつくことを好適に抑制できる。そして、このような受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却するので、加熱プレート11の面内A1、A2における温度がばらつくことを好適に抑制できる。この結果、加熱プレート11の全体を目標温度に速やかに収束させることができる。
【0083】
また、熱伝導シート15は弾性変形可能であるので、能動冷却部13の上面Bに微小な凹凸が存在しても、熱伝導シート15は能動冷却部13と隙間無く密着できる。同様に、熱伝導シート15は、受動冷却プレート17とも好適に密着できる。よって、受動冷却プレート17をより一層効率良く冷却できるとともに、加熱プレート11をより一層効率良く冷却できる。さらに、能動冷却部13の上面Bや受動冷却プレート17の下面D2をそれぞれ、支障なく金属で形成できる。
【0084】
また、受動冷却プレート17と能動冷却部13とを熱的に接続するとき、受動冷却プレート17および能動冷却部13によって熱伝導シート15を圧縮変形させる。このため、熱伝導シート15を受動冷却プレート17および能動冷却部13にそれぞれ好適に密着させることができる。
【0085】
また、受動冷却プレート17と熱伝導シート15とは、面接触する。また、熱伝導シート15と能動冷却部13とは、面接触する。よって、受動冷却プレート17を一層効率良く冷却できる。また、受動冷却プレート17の面内において温度がばらつくことを好適に抑制できる。
【0086】
また、冷却過程を開始した時刻t1から冷却過程を終了する時刻t6までの間に、準備過程を、1回以上実行する。準備過程を実行しているときには冷却過程を中断するので加熱プレート11を冷却できない。しかしながら、再開後の冷却過程では、再び加熱プレート11を効率よく冷却できる。この結果、加熱プレート11を冷却するのに要する時間を却って短くすることができる。すなわち、加熱プレート11の全体的な冷却効率を高めることができる。
【0087】
また、加熱プレート11、受動冷却プレート17および能動冷却部13が上下方向に並ぶように配置されているので、熱処理装置1の設置面積を小さくできる。また、加熱プレート11および受動冷却プレート17はそれぞれ水平姿勢で設置されており、受動冷却プレート17の上面D1が加熱プレート11と熱的に接続可能であり、受動冷却プレート17の下面D2が能動冷却部13と熱的に接続可能である。このため、受動冷却プレート17の姿勢は水平姿勢のまま一定であり、受動冷却プレート17の姿勢を変更するための機構を要しない。よって、熱処理装置1の構造を簡素化できる。
【0088】
また、加熱プレート11および能動冷却部13はそれぞれ、所定位置に固定されており、駆動機構18が移動させる対象は受動冷却プレート17のみである。このように可動部が少ないので、駆動機構18の構造を簡素化できる。
【0089】
さらに、受動冷却プレート17の移動方向は上下方向のみである。よって、駆動機構18を一層簡素化できる。また、加熱プレート11の冷却と受動冷却プレート17の冷却を容易かつ円滑に切り替えることができる。
【実施例2】
【0090】
以下、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
図7は、実施例2に係る熱処理装置2の概略構成を示す断面図である。なお、以下では、実施例2と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0091】
加熱プレート11は、表側プレート21と、裏側プレート22と、支持部材23と、ヒータ25と、温度センサ27と内部通路Fを備えている。
【0092】
表側プレート21および裏側プレート22はいずれも金属製である。金属としては、例えば銅やアルミニウム等が好ましい。表側プレート21と裏側プレート22は、加熱プレート11のプレート本体に相当する。
【0093】
支持部材23は、基板Wを直接的に支持し、加熱プレート11の上面A1と基板Wとの間に僅かな隙間(空間)Gを形成する。この隙間Gを通じて加熱プレート11から基板Wに熱が伝達される。支持部材23は、表側プレート21に固定されている。支持部材23は、例えば、球形状を有する。加熱プレート11の上面A1は、表側プレート21の上面と支持部材23とによって形成されている。ちなみに、加熱プレート11の下面A2は、裏側プレート22によって形成されている。
【0094】
ヒータ25は、表側プレート21と裏側プレート22との間に設置され、熱を発する。ヒータ25の熱は、表側プレート21によって基板Wに伝達される。
【0095】
本実施例では、ヒータ25は、複数の分割ヒータ25aを備える。加熱プレート11を区画する複数のゾーンのそれぞれに分割ヒータ25aが配置されている。各分割ヒータ25aはそれぞれ別個独立に発熱可能である。これにより、加熱プレート11は、ゾーンごとに独立して昇温可能である。分割ヒータ25aとしては、マイカヒータや熱電モジュール等が例示される。
【0096】
温度センサ27は、表側プレート21の温度を測定する。温度センサ27は、表側プレート21の内部に埋設されている。
【0097】
内部通路Fは、表側プレート21の内部に形成されている。内部通路Fの一端は、加熱プレート11の上面A1(具体的には、表側プレート21の上面)に開口している。内部通路Fの他端は、後述する吸着機構41に連通接続されている。内部通路Fを通じて隙間Gから気体を排出することによって、加熱プレート11の上面A1に基板Wを吸着させることができる。
【0098】
能動冷却部13は、能動冷却部本体31と、温度センサ33と、外部配管35と、流量調整弁37と、流路Hと、内部通路Iとを備えている。
【0099】
能動冷却部本体31は金属製である。金属としては、例えば銅やアルミニウム等が好ましい。能動冷却部13の上面Bは、能動冷却部本体31に形成されている。
【0100】
温度センサ33は、能動冷却部本体31の温度を測定する。温度センサ33は、能動冷却部本体31の内部に埋設されている。
【0101】
流路Hは、能動冷却部本体31の内部に形成されている。流路Hには、冷却水等の熱媒体が流れる。熱媒体は能動冷却部本体31と熱交換する。
【0102】
外部配管35は、能動冷却部本体31の外部に設置され、流路Hと連通接続している。外部配管35は、熱媒体を流路Hに供給し、かつ、流路Hから熱媒体を排出する。
【0103】
流量調整弁37は、流路Hを流れる熱媒体の流量を調整する。これにより、能動冷却部本体31の温度を調整する。流量調整弁37は、外部配管35の途中に取り付けられている。
【0104】
内部通路Iも、能動冷却部本体31の内部に形成されている。内部通路Iの一端は、能動冷却部13の上面Bに開口している。内部通路Iの他端は、後述する吸着機構41に連通接続されている。内部通路Iを負圧にすることによって、能動冷却部13の上面Bに熱伝導シート15を吸着させる。
【0105】
受動冷却プレート17は、内部通路Jを備えている。内部通路Jは、受動冷却プレート17の内部に形成されている。内部通路Jの一端は、受動冷却プレート17の上面D1に開口している。内部通路Jの他端は、後述する吸着機構41に連通接続されている。
【0106】
さらに、実施例2に係る熱処理装置2は、熱伝導シート39と吸着機構41と制御部51とを備えている。
【0107】
熱伝導シート39は、受動冷却プレート17の上面D1に載置されている。熱伝導シート39は、受動冷却プレート17の上面D1と略同等以上に広い。熱伝導シート39は、熱伝導シート15と同様に、熱伝導性に優れており、弾性変形可能である。熱伝導シート39の材質としては、熱伝導シート15の材質として例示したものが好ましい。熱伝導シート39の材質は、熱伝導シート15と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0108】
吸着機構41は、排出配管42、43、44と、共通管45と、真空吸引源46と、圧力調整弁47、48、49とを備えている。
【0109】
排出配管42の一端は、内部通路Fに連通接続されている。排出配管43の一端は、内部通路Iに連通接続されている。排出配管44の一端は、内部通路Jに連通接続されている。各排出配管42乃至44の他端はいずれも、共通管45に連通接続されている。共通管45は、真空吸引源46に連通接続されている。真空吸引源46は、気体を吸引・排出する。真空吸引源46は、例えば、クリーンルームに設けられたバキュームのユーティリティである。排出配管42、43、44の途中にはそれぞれ、圧力調整弁47、48、49が設けられている。各圧力調整弁47乃至49はそれぞれ、内部通路F、I、Jの圧力(負圧)を調整する。
【0110】
内部通路Fを負圧にすると、加熱プレート11の上面A1に基板Wが吸着される。内部通路Iを負圧にすると、能動冷却部13の上面Bに熱伝導シート15が吸着される。内部通路Jを負圧にすると、受動冷却プレート17の上面D1に熱伝導シート39が吸着される。
【0111】
制御部51は、駆動機構18、ヒータ25(分割ヒータ25a)、温度センサ27、33、流量調整弁37、真空吸引源46、圧力調整弁47乃至49と電気的に接続されている。制御部51は、温度センサ27、33の検出結果に基づいて、加熱プレート11および能動冷却部13の各温度を監視する。制御部51は、駆動機構18、ヒータ25、流量調整弁37、真空吸引源46および圧力調整弁47乃至49を制御する。制御部51は、予め設定されている処理レシピ等を参照する。処理レシピ等は、加熱プレート11を冷却すべき目標温度のほか、後述する閾値Ra、所定量kおよび所定値に関する情報を含む。
【0112】
制御部51は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、処理レシピ等の各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0113】
次に、実施例に係る熱処理装置2の動作について説明する。以下では、まず、基板Wを加熱する処理を説明し、その後、加熱プレート11を冷却する処理を説明する。
【0114】
<基板Wを加熱する動作>
制御部51は駆動機構18を制御して、受動冷却プレート17を加熱プレート11から離す。不図示の搬送機構によって、加熱プレート11の上面A1に基板Wが載置されると、制御部51は、真空吸引源46および圧力調整弁47を制御して、内部通路Fおよび隙間Gを負圧にする。これにより、基板Wが加熱プレート11の上面A1に吸着される。
【0115】
制御部51がヒータ25を制御し、加熱プレート11を昇温させる。これにより、基板Wに熱処理を施す。
【0116】
所定の時間が経過すると、制御部51は、真空吸引源46および圧力調整弁47を制御して、基板Wの吸着を解除する。その後、不図示の搬送機構が、加熱プレート11から基板Wを取る。
【0117】
<加熱プレート11を冷却する動作>
図8を参照する。
図8は、加熱プレート11を冷却する手順を示すフローチャートである。
図8のフローチャートでは、冷却過程の開始、中断、再開および終了に関するステップを明示する。
【0118】
なお、加熱プレート11を冷却する動作の期間中、制御部51は真空吸引源46および圧力調整弁48、49を制御して、能動冷却部13に熱伝導シート15を吸着させ、かつ、受動冷却プレート17に熱伝導シート39を吸着させているものとする。
【0119】
<ステップS11> 準備過程
制御部51は、駆動機構18を制御して、受動冷却プレート17を準備位置に位置させる。さらに、制御部51は、温度センサ33の検出結果に基づいて流量調整弁37を制御して、能動冷却部本体31の温度を調整する。これにより、受動冷却プレート17を所定の温度に冷却する。
【0120】
<ステップS12> 冷却過程開始
駆動機構18は、受動冷却プレート17を準備位置から冷却位置に移動させる。受動冷却プレート17によって加熱プレート11を冷却し始める。
【0121】
<ステップS13> Tpが所定値に達した?
制御部51は、処理レシピ等を参照して所定値を特定する。また、制御部51は、温度センサ27の検出結果に基づいて、加熱プレート11の温度(以下、「プレート温度」という)Tpを監視する。そして、プレート温度Tpが所定値に達したか否かを判定する。ここで、所定値は、目標温度よりも大きいことが好ましい。所定値としては、たとえば、目標温度に1を加えた値が例示される。
【0122】
判定の結果、プレート温度Tpが所定値に達したと判定された場合にはステップS18に進み、そうでない場合にはステップS14に進む。ステップS13は、本発明における温度監視過程に相当する。
【0123】
<ステップS14> ΔT≦Ra?
制御部51は、処理レシピ等を参照して閾値Raを特定する。また、制御部51は、温度センサ27の検出結果に基づいて、単位時間当たりのプレート温度Tpの低下量である温度低下率ΔTを監視する。そして、温度低下率ΔTが閾値Ra以下であるか否かを判定する。閾値Raとしては、例えば、1[℃/sec]が例示される。ただし、閾値Raの値は、これに限られず、適宜に選択、変更することができる。
【0124】
判定の結果、温度低下率ΔTが閾値Ra以下であると判定された場合にはステップS15に進み、そうでない場合にはステップS13に戻る。ステップS14は、本発明における温度低下率監視過程に相当する。
【0125】
<ステップS15> 冷却過程中断
駆動機構18は、受動冷却プレート17を冷却位置から離す。これにより、加熱プレート11と受動冷却プレート17との熱的な接続を断ち、冷却過程を中断する。
【0126】
<ステップS16> 準備過程
駆動機構18は、受動冷却プレート17を準備位置に位置させる。これにより、熱伝導シート15を介して受動冷却プレート17と能動冷却部13とを熱的に接続し、能動冷却部13によって受動冷却プレート17を冷却する。
【0127】
<ステップS17> 冷却過程再開
駆動機構18は、受動冷却プレート17を準備位置から冷却位置に戻す。これにより、加熱プレート11の冷却を再開する。そして、ステップS13に戻る。
【0128】
<ステップS18> 冷却過程終了
駆動機構18は、受動冷却プレート17を冷却位置から離す。これにより、冷却過程を終了する。
【0129】
なお、所定値が目標温度と異なる場合、冷却過程を終了した時点では、未だ、加熱プレート11の温度(プレート温度Tp)が目標温度に収束していない。このため、冷却過程を終了した後、引き続き、プレート温度Tpが目標温度に収束するまで、制御部51はプレート温度Tpを監視する。この際、ヒータ25を適宜に発熱させてプレート温度Tpを調整してもよい。
【0130】
このように、本実施例2によれば、ステップS14(温度低下率監視過程)を備えているので、準備過程を行うタイミングを適切に判定できる。さらに、必要に応じて準備過程を行う回数を2回以上に増やすことも容易にできる。また、準備過程を実行する必要がない場合には、冷却過程を開始した後、準備過程を1度も行わずに冷却過程を終了することもできる。
【0131】
また、ステップS13(温度監視過程)を備えているので、冷却過程を終了するタイミングを好適に判定できる。
【0132】
また、ステップS13の判定に用いる所定値は、目標温度よりも大きな値である。このため、加熱プレート11の温度が惰性で低下することや、加熱プレート11の温度がオーバーシュートすることを利用して、加熱プレート11の温度を目標温度に一層効率よく収束させることができる。
【0133】
熱処理装置1は吸着機構41を備えているので、熱伝導シート15を能動冷却部13に一層好適に密着させることができる。
【0134】
熱処理装置1は熱伝導シート39を備えているので、加熱プレート11と受動冷却プレート17との間で熱を円滑に移動させることができる。このため、加熱プレート11を一層効率よく冷却できる。また、加熱プレート11の面内におけるプレート温度Tpがばらつくことを一層好適に防止できる。
【0135】
また、吸着機構41は、さらに、受動冷却プレート17に熱伝導シート39を吸着させる。よって、受動冷却プレート17に熱伝導シート39を好適に密着させることができる。よって、加熱プレート11を一層効率よく、かつ、一層均一に冷却することができる。
【0136】
また、吸着機構41は、さらに、加熱プレート11に載置された基板Wを加熱プレート11に吸着させる。これにより、加熱プレート11は基板Wに熱処理を効率よく施すことができる。
【0137】
また、吸着機構41は、共通の真空吸引源46によって、熱伝導シート15、39および基板Wそれぞれを吸着するので、装置構成を簡素化することができる。
【実施例3】
【0138】
次に、図面を参照して本発明の実施例3を説明する。なお、実施例3に係る熱処理装置の構造は実施例2と同じであるので、その説明を省略する。以下では、実施例3に係る熱処理装置2において、加熱プレート11を冷却する動作を説明する。
【0139】
図9を参照する。
図9は、加熱プレート11を冷却する手順を示すフローチャートである。なお、実施例2と同じステップSについては、同符号を付し、簡単に説明する。
【0140】
<ステップS11> 準備過程
能動冷却部13によって受動冷却プレート17を冷却する。
【0141】
<ステップS21> WT≦k?
制御部51は、温度センサ27の検出結果に基づいて、冷却前の加熱プレート11の温度(プレート温度Tp)を得る。本明細書では、冷却前のプレート温度Tpを、特に「初期温度Tp0」と呼ぶ。初期温度Tp0は、冷却過程を開始する時点におけるプレート温度Tpであってもよい。また、制御部51は、処理レシピ等を参照して、目標温度と所定量kを得る。目標温度と所定量kとは、予め設定されている。そして、初期温度Tp0と目標温度との差である温度変更幅WTが、所定量k以下であるか否かを判定する。所定量kとしては、たとえば50[℃]が例示される。
【0142】
その結果、温度変更幅WTが所定量k以下であると判定された場合は、ステップS22に進む。そうでない場合には、ステップS12に進む。
【0143】
ステップS21は、本発明における冷却条件判定過程に相当する。
【0144】
<ステップS22、23>
冷却過程を開始する。制御部51は、温度センサ27の検出結果に基づいて、プレート温度Tpを監視する。そして、プレート温度Tpが所定値に達したか否かを判定する。その結果、プレート温度Tpが所定値に達したと判定された場合にはステップS18に進む。そうでない場合には本ステップS23を再び行う。これにより、プレート温度Tpが所定値に達するまで、ステップS23を繰り返し、プレート温度Tpを監視する。
【0145】
<ステップS12〜S17>
冷却過程を開始する。冷却過程を開始した後からプレート温度Tpが所定値に達するまでの期間において、温度低下率ΔTが閾値Ra以下になる度に、冷却過程を中断し、準備過程を行う。プレート温度Tpが所定値に達すると、ステップS18に進む。
【0146】
<ステップS18> 冷却過程終了
冷却過程を終了する。
【0147】
このように、本実施例3によれば、ステップS21(冷却条件判定過程)を備えているので、冷却過程を開始する前に、温度変更幅WTの大きさを判定できる。
【0148】
そして、温度変更幅WTが所定量k以下であると判定された場合、冷却過程を開始した時から終了する時までの期間において準備過程の実行を禁止する。具体的には、冷却過程を開始した後、冷却過程を中断することなく、冷却過程が終了するまで冷却過程を継続する。
【0149】
他方、温度変更幅WTが所定量kより大きいと判定された場合、冷却過程を開始した時から終了する時までの期間において準備過程を行うことを許容する。本実施例では、加熱プレート11の温度低下率ΔTに基づいて、冷却過程を中断し、準備過程を割り込ませる。
【0150】
このように、温度変更幅WTの大きさが比較的に小さい場合には冷却過程の実行中に準備過程を行うことを禁止し、そうでない場合には冷却過程の実行中に準備過程を行うことを許容する。この結果、温度変更幅WTが比較的に小さい場合であっても比較的に大きい場合であっても、加熱プレート11の全体的な冷却効率を適切に高めることができる。
【0151】
なお、準備過程を行うことを許容した場合であっても、結果的に冷却過程を開始した時から終了する時までの期間において準備過程を1度も行わない可能性もある。
【0152】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0153】
(1)上述した各実施例1乃至3では、熱伝導材として熱伝導シート15を例示したが、これに限られない。熱伝導シート15、サーマルパッドおよび熱伝導グリースの少なくともいずれかによって熱伝導材を構成してもよい。
【0154】
(2)上述した各実施例1乃至3では、熱伝導シート15は能動冷却部13の上面Bに配置されていたが、これに限られない。例えば、熱伝導シート15を受動冷却プレート17の下面D2に配置してもよい。この変形例によっても、駆動機構18が受動冷却プレート17を準備位置に移動させたときに、熱伝導シート15は受動冷却プレート17および能動冷却部13の双方と好適に密着できる。
【0155】
(3)上述した各実施例2、3では、熱伝導シート15を能動冷却部13に吸着させていたが、これに限られない。たとえば、熱伝導シート15の取付構造は適宜に変更できる。たとえば、熱伝導シート15を能動冷却部13の上面Bに接着剤や締結部材によって固定してもよい。あるいは、熱伝導シート15を能動冷却部13に固定せずに、熱伝導シート15を能動冷却部13の上面Bに単に載せるだけであってもよい。熱伝導シート39を受動冷却プレート17に取り付ける構造についても、同様に変更することができる。
【0156】
(4)上述した各実施例2、3では、所定値は目標温度よりも大きかったが、これに限られない。すなわち、所定値は、加熱プレート11を冷却すべき目標温度と同じ値であってもよいし、所定値は、目標温度よりも低くてもよい。
【0157】
このように、冷却過程が終了する時とプレート温度が目標温度に収束する時とが、同じであってもよいし、異なっていてもよい。換言すれば、冷却過程を開始してから終了するまでの期間が、加熱プレート11を冷却するのに要する冷却時間と同じであってもよいし、異なっていてもよい。冷却過程が終了する時とは、加熱プレート11を1の目標温度に冷却するために実行される冷却過程の終期であり、実施例2、3においてはプレート温度Tpが所定値に達する時である。また、実施例2、3においては、冷却過程は、冷却過程の始期から終期にわたって連続的(継続的)に実行されてもよいし、冷却過程の始期から終期の期間において間欠的(断続的)に実行されてもよい。
【0158】
(5)上述した各実施例1乃至3では、駆動機構18は、受動冷却プレート17のみを移動させていたが、これに限られない。すなわち、駆動機構18は、加熱プレート11および受動冷却プレート17の少なくとも一方を移動させて、加熱プレート11と受動冷却プレート17を熱的に接続してもよい。また、駆動機構18は、受動冷却プレート17および能動冷却部13の少なくとも一方を移動させて、受動冷却プレート17と能動冷却部13を熱的に接続してもよい。
【0159】
(6)上述した各実施例1乃至3では、加熱プレート11と能動冷却部13のレイアウトを例示したが、これらの配置は適宜に変更できる。たとえば、各実施例1乃至3では、加熱プレート11と能動冷却部13が上下方向にならぶように配置されていたが、これに限られない。たとえば、加熱プレート11と能動冷却部13とが横方向にならぶような配置に変更してもよい。また、各実施例1乃至3では、加熱プレート11と能動冷却部13とが平面視で重なるように配置されていたが、これに限られない。すなわち、両者が平面視で重ならないような配置に変更してもよい。この場合において、さらに、加熱プレート11と能動冷却部13とが正面視または側面視で重なるような配置に変更してもよい。上述した配置の変更に応じて、駆動機構18による受動冷却プレート17の移動方向を適宜に変更できる。
【0160】
(7)上述した各実施例2、3では、吸着機構41は、熱伝導シート15を能動冷却部13に吸着させる機能、熱伝導シート39を受動冷却プレート17に吸着させる機能、および、基板Wを加熱プレート11に吸着させる機能を有していたが、これに限られない。たとえば、上述した3つの機能の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0161】
(8)上述した各実施例2、3では、吸着機構41は、上記(6)に記載した3つの機能を同じ真空吸引源46によって実現していたが、これに限られない。たとえば、各機能を、異なる真空吸引源によって実現してもよい。
【0162】
(9)上述した各実施例2、3では、加熱プレート11は複数の分割ヒータ25aを備え、ゾーンごとに昇温可能であったが、これに限られない。加熱プレートの面内全体を一律に昇温する加熱プレートに変更してもよい。また、分割ヒータ25aを、加熱プレート11の面内全体を一律に昇温させるヒータに変更してもよい。
【0163】
(10)上述した各実施例1乃至3では、基板Wの外形が円形であったが、これに限られない。矩形の外形を有する基板であっても、本発明を好適に適用できる。
【0164】
(11)上述した実施例2、3では、加熱プレート11のプレート本体は、表側プレート21と裏側プレート22とによって構成されていたが、これに限られない。たとえば、裏側プレート22を省略してもよい。
【0165】
(12)上述した各実施例1乃至3および各変形実施例における全部または一部の構成を適宜に組み合わせるように変更してもよい。