【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、耐候層と接着封止層からなる保護層と、フレキシブル基材上に光電変換層が配置された太陽電池素子と、ホットメルト接着剤層とがこの順に積層された構造を有するホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールであって、下記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42であり、かつ、前記接着封止層及び前記ホットメルト接着剤層のゲル分率が10%以上であるホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
【数1】
【0009】
図1に本願発明のホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールの断面を示す模式図を示した。
図1に示したホットメルト接着剤付き太陽電池モジュール1は、耐候層31と接着封止層32からなる保護層3と、太陽電池素子2と、ホットメルト接着剤層4とがこの順に積層された構造を有する。このようにホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールは、複数の素材の異なる層が積層された構造を有する。
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、鋼板等に熱融着により貼付したホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールが、長期間接着力を保持できない理由が、複数の素材の異なる層のそれぞれが異なる熱的性質(例えば、線膨張率)を有することから、熱融着の際の加熱、及び、該加熱後の冷却の際に層間に応力が生じ、この応力によってホットメルト接着剤付き太陽電池モジュール全体に反りが発生して、鋼板等から剥離してしまうことにあることを見出した。
【0011】
熱融着の際の加熱、冷却により各層に発生する応力は、該層を構成する種々の要素により決まるが、最も影響が大きいのは各層を構成する素材の線膨張係数と厚みである。
一方、ホットメルト接着剤付き太陽電池モジュール全体を見ると、太陽電池素子はあまり寄与せずに、保護層とホットメルト接着剤層とのバランスが重要である。
これらの考察をもとに本発明者が更に検討したところ、上記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42の範囲にある場合に、鋼板等に対して熱融着により貼付した後でも、長期間接着力を保持することができることを見出し、本発明を完成した。
なお、本明細書において鋼板とは、建築物の屋根等に一般的に用いられる鋼板を意味し、例えば、溶融亜鉛系めっき鋼板、塗装溶融亜鉛系めっき鋼板、ステンレス板等が挙げられる。
【0012】
本発明のホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールは、保護層と、太陽電池素子と、ホットメルト接着剤層とがこの順に積層された構造を有する。
上記保護層は、耐候層と接着封止層からなり、太陽電池素子を保護する役割を有する。
【0013】
上記耐候層は、本発明のホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールの他の構成を太陽光による劣化から防止し、また、水分による太陽電池素子の劣化を防止する働きを有する。
上記耐候層は、例えば、フッ素系樹脂シートやアクリル系樹脂シートからなる。
上記フッ素系樹脂シートは、透明性、耐熱性及び難燃性に優れるものであれば、特に限定されないが、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフロオロエチレン−パーフロオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、ポリビニルフルオライド樹脂(PVF)、テトラフロオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、及び、フッ化ビニリデンとポリメタクリル酸メチルとの混合物(PVDF/PMMA)からなる群より選択される少なくとも一種のフッ素系樹脂からなることが好ましい。なかでも、上記フッ素系樹脂は、耐熱性及び透明性により優れる点で、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニルフルオライド樹脂(PVF)がより好ましい。
【0014】
上記アクリル系樹脂シートは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを1種以上含むモノマーを重合してなる(メタ)アクリル系樹脂からなる。
上記(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外の、エチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン等の他のモノマー成分を含む共重合体であってもよい。
また、アクリル系樹脂シートは、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン等の樹脂との混合樹脂からなるものであってもよい。
【0015】
上記耐候層の厚みの好ましい下限は10μm、好ましい上限は100μmである。上記耐候層の厚みが10μm未満であると、絶縁性が確保できなかったり、難燃性が損なわれたりするおそれがある。上記耐候層の厚みが100μmを超えると、得られるホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールの重量が重くなるおそれがあり、経済的に不利である。上記耐候層の厚みのより好ましい下限は15μm、より好ましい上限は80μmである。
【0016】
上記耐候層は、上記接着保護層との密着性を高めるために、上記接着保護層と接する側の面にプラズマやコロナにより表面処理されたものであることが好ましい。
【0017】
上記耐候層は、表面にエンボス形状を有していることが好ましい。より具体的には、ホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールを製造した際に、受光面側となる上記耐候層面に、エンボス形状を有していることが好ましい。
上記エンボス形状を有することにより、太陽光の反射ロスを低減したり、ギラツキを防止したり、外観を向上させたりすることができる。
上記エンボス形状は、規則的な凹凸形状であっても、ランダムな凹凸形状であってもよい。
上記エンボス形状は、太陽電池素子に保護層を貼り合せる前にエンボス賦形しても、太陽電池素子に貼り合せた後でエンボス賦形しても、又は、太陽電池素子と貼り合せる工程で同時に賦形しても良い。なかでも、太陽電池素子に貼り合せる前にエンボス賦形して形成するのが、エンボスの転写ムラがなく均一なエンボス形状が得られるので好ましい。
【0018】
上記接着封止層は、上記耐候層と太陽電池素子とを接着させるとともに、太陽電池素子を保護する役割を有する。
上記接着封止層は、酸変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン、アイオノマー、及び、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
なかでも、太陽電池素子との接着性及び真空ラミネート適性に優れる点で、酸変性ポリオレフィン、及び、シラン変性ポリオレフィンであることが好ましく、酸変性ポリオレフィンであることがより好ましい。
また、上記酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂であることが更に好ましい。
【0019】
上記無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸でグラフト変性したオレフィン系樹脂、エチレンと無水マレイン酸との共重合体、あるいは、それらの金属架橋ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
なかでも、上記無水マレイン酸変性オレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸でグラフト変性したオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0020】
上記オレフィン系樹脂は、単一のモノマーからなるホモポリマーであっても、2以上の種類のモノマーからなる共重合体であってもいい。
上記ホモポリマーとしては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
上記共重合体としては、具体的には、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。
上記オレフィン系樹脂としては、中でも、熱融着の観点からα−オレフィンとエチレンとの共重合体である、α−オレフィン−エチレン共重合体が好ましい。
【0021】
上記α−オレフィン−エチレン共重合体は、α−オレフィンとエチレンとからなる共重合体であることが好ましい。
上記α−オレフィンは、樹脂の非晶性向上による低融点化、柔軟化のため、炭素数が3〜10であることが好ましく、炭素数が4〜8であることがより好ましい。
上記α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、なかでも、上記α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテンが好ましい。すなわち、上記α−オレフィン−エチレン共重合体としては、ブテン−エチレン共重合体、ヘキセン−エチレン共重合体、オクテン−エチレン共重合体が好ましい。
【0022】
上記α−オレフィン−エチレン共重合体は、α−オレフィン含有量が1〜25重量%であることが好ましい。上記α−オレフィン含有量が1重量%未満であると、太陽電池モジュールの製造の際にシワやカールが発生するおそれがある。上記α−オレフィン含有量が25重量%を超えると、太陽電池素子に対する接着性が低下するおそれがある。上記α−オレフィン含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は20重量%である。
【0023】
上記α−オレフィン−エチレン共重合体における上記α−オレフィンの含有量については、
13C−NMRのスペクトル積分値により求めることができる。具体的には、例えば1−ブテンを用いた場合、重クロロホルム中で10.9ppm付近や26.1ppm付近、39.1ppm付近に得られる1−ブテン構造由来のスペクトル積分値と、26.9ppm付近、29.7ppm付近、30.2ppm付近、33.4ppm付近に得られるエチレン構造由来のスペクトル積分値を用いて算出する。スペクトルの帰属については高分子分析ハンドブック(日本分析化学会編、朝倉書店発行、2008年)等の既知データーを利用するとよい。
【0024】
上記オレフィン系樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、上記オレフィン系樹脂と無水マレイン酸とラジカル重合開始剤とを含有した組成物を、押出機に供給して溶融混練してオレフィン系樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合させる溶融変性法や、上記オレフィン系樹脂を溶媒に溶解させて溶解液を作製し、この溶解液に無水マレイン酸及びラジカル重合開始剤を添加してオレフィン系樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合させる溶液変性法等が挙げられる。なかでも、機上混合できる点で、上記溶融変性法が生産上好ましい。
【0025】
上記グラフト変性する方法において使用するラジカル重合開始剤としては、従来からラジカル重合に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0026】
上記無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無水マレイン酸の総含有量が0.1〜3重量%であることが好ましい。上記無水マレイン酸の総含有量が0.1重量%未満であると、太陽電池素子に対する接着性が低下するおそれがある。上記無水マレイン酸の総含有量が3重量%を超えると、無水マレイン酸変性オレフィン系樹脂が架橋して接着性が低下したり、押出成形性が低下したりするおそれがある。上記無水マレイン酸の総含有量のより好ましい下限は0.2重量%、より好ましい上限は1.5重量%であり、1.0重量%未満であることが更に好ましい。
なお、上記無水マレイン酸の総含有量は、上記無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いて試験フィルムを作製し、上記試験フィルムの赤外吸収スペクトルを測定して、1790cm
−1付近の吸収強度から算出することができる。具体的には、上記無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂中における無水マレイン酸の総含有量は、例えば、FT−IR(フーリエ変換赤外分光装置 Nicolet 6700 FT−IR)を用いて、高分子分析ハンドブック(日本分析化学会編、朝倉書店発行、2008年)等に記載された既知の測定方法で測定することができる。
【0027】
上記シラン変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンに、ラジカル発生剤の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物をグラフト重合することによって得られた樹脂を挙げることができる。
上記ポリオレフィンとしては、エチレンとα−オレフィンの共重合体等を挙げることができる。
上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等を挙げることができる。
上記エチレン性不飽和シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、およびビニルトリカルボキシシラン等を挙げることができる。
【0028】
上記ポリオレフィンにグラフト重合するエチレン性不飽和シラン化合物の量は、ポリオレフィン100重量部に対して、上記エチレン性不飽和シラン化合物が0.1重量部以上10重量部未満であることが好ましい。
【0029】
上記アイオノマーとしては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸基の一部又は全部を金属イオンで中和したものであることが好ましい。
上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合としては、少なくともエチレン及び不飽和カルボン酸の共重合成分からなる共重合体が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フタル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられ、なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
上記金属イオンとしては、ナトリウムイオン、亜鉛イオンが好ましい。
上記アイオノマーは、公知の方法で製造することができる。
【0030】
上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体が好ましい。
上記エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体は、少なくともエチレン、アクリル酸エステル及び無水マレイン酸の三成分からなる共重合体である。
上記アクリル酸エステルは、コスト、重合性の観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及び、アクリル酸ブチルからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレン成分の含有量が71〜93重量%であり、アクリル酸エステル成分の含有量が5〜28重量%であり、無水マレイン酸成分の含有量が0.1〜4重量%であることが好ましい。
【0031】
上記接着封止層は、更に、エポキシ基を有するシラン化合物を含有することが好ましい。
特に、上記無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いた場合は、上記エポキシ基を有するシラン化合物を更に含有することが好ましい。
上記シラン化合物を含有することにより、太陽電池素子との接着性を向上させることができる。
上記シラン化合物は、脂肪族エポキシ基、脂環式エポキシ基等のエポキシ基を分子中に少なくとも1個有していればよい。上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、下記一般式(I)で示されるシラン化合物であることが好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
(式中、R
1は、3−グリシドキシプロピル基又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を示し、R
2は、炭素数が1〜3であるアルキル基を示し、R
3は、炭素数が1〜3であるアルキル基を示し、且つ、nは0又は1である。)
【0034】
R
1は、下記式(II)で示される3−グリシドキシプロピル基、又は、下記式(III)で示される2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を示す。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
上記R
2としては、炭素数が1〜3であるアルキル基であれば、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0038】
上記R
3としては、炭素数が1〜3であるアルキル基であれば、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0039】
上記一般式(I)で示されるシラン化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(I)において、nは0であることが好ましい。
上記シラン化合物としては、特に好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
【0041】
上記接着封止層中の上記シラン化合物の含有量は、上記無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部であることが好ましい。上記シラン化合物の含有量が上述の範囲外であると、接着性が低下するおそれがある。
【0042】
上記接着封止層は、その物性を損なわない範囲内において、他の添加剤を更に含有していてもよい。上記他の添加剤としては、例えば、UV安定剤、可塑剤、充填剤、着色剤、顔料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤、調色液、屈折率マッチング用添加剤及び分散助剤等が挙げられる。
【0043】
上記接着封止層は、ゲル分率が10%以上でなくてはならない。上述のように本発明においては、上記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42の範囲であるように保護層とホットメルト接着剤層とのバランスを調整することにより、熱融着の際の加熱、冷却により各層に発生する応力に起因する反りの発生を防止する。上記接着封止層のゲル分率が10%未満であると、熱融着の際の加熱、冷却により接着封止層の厚みが大きく変動してしまい、バランスの調整が極めて困難となる。
なお、本明細書においてゲル分率とは、以下の方法により測定した値を意味する。即ち、まず、上記接着封止層の一部を切り出し、キシレンを含有する試験管に浸漬し、110℃、20時間で加熱する。次いで、加熱後のキシレン液をメッシュ網を用いて濾過し、120℃、4時間送風乾燥した後、メッシュ網上に残存した樹脂分の重さを測定し、投入試料の重さに対する比を算出する。
【0044】
上記接着封止層の厚みの好ましい下限は10μm、好ましい上限は300μmである。上記接着封止層の厚みが10μm未満であると、太陽電池素子の封止特性を保持できないおそれがあり、300μmを超えると、ホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールに発生する反り大きくなったりするおそれがある。上記接着封止層の厚みのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は200μmである。
【0045】
上記保護層は、上記耐候層と上記接着封止層とを積層一体化することにより製造することができる。上記積層一体化する方法は特に限定されず、例えば、上記接着封止剤層の一面に上記耐候層を押出ラミネートして形成する方法や、上記接着封止層と上記耐候層とを共押出して形成する方法等が挙げられる。上記耐候層と接着保護層との密着性を高める観点より、押出ラミネートして形成することが好ましい。
【0046】
上記太陽電池素子は、一般に、受光することで電子が発生する光電変換層、発生した電子を取り出す電極層、及び、フレキシブル基材から構成される。
上記フレキシブル基材としては、可撓性があり、フレキシブル太陽電池素子に使用することができるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性樹脂からなる基材を挙げることができる。
上記フレキシブル基材の厚みの好ましい下限は10μm、好ましい上限は80μmである。
【0047】
上記光電変換層としては、例えば、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、多結晶シリコン、微結晶シリコン等の結晶系半導体、アモルファスシリコン等のアモルファス系半導体、GaAs、InP、AlGaAs、Cds、CdTe、Cu
2S、CuInSe
2、CuInS
2等の化合物半導体、フタロシアニン、ポリアセチレン等の有機半導体等から形成されたものを挙げることができる。
上記光電変換層は、単層又は複層であってもよい。
上記光電変換層の厚みの好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は10μmである。
【0048】
上記電極層は、電極材料からなる層である。
上記電極層は、必要に応じて、上記光電変換層上にあってもよいし、上記光電変換層とフレキシブル基材との間にあってもよいし、上記フレキシブル基材面上にあってもよい。
また、上記太陽電池素子は、上記電極層を複数有していてもよい。
受光面側(表面)の電極層は、透明である必要があるため、上記電極材料としては、金属酸化物等の一般的な透明電極材料であることが好ましい。上記透明電極材料としては、特に限定されないが、ITO又はZnO等が好適に使用される。
透明電極を使用しない場合は、バス電極やそれに付属するフィンガー電極を銀などの金属でパターニングされたものでもよい。
背面側(裏面)の電極層は、透明である必要はないため、一般的な電極材料によって構成されて構わないが、上記電極材料としては、銀が好適に用いられる。
【0049】
上記太陽電池素子を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記フレキシブル基材上に上記光電変換層や電極層を配置する等の公知の方法により製造することができる。
上記太陽電池素子は、ロール状に巻回された長尺状であってもよいし、矩形状のシート状であってもよい。
【0050】
上記ホットメルト接着剤層は、熱融着による鋼板等への接着を可能にするとともに、上記太陽電池素子の裏面を封止してこれを保護する役割を有する。
上記ホットメルト接着剤層は、上記接着封止層と同様に、酸変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン、アイオノマー、及び、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。なお、上記ホットメルト接着剤層と接着封止層とは、同じ樹脂からなるものであってもよいし、異なる樹脂からなるものであってもよい。
【0051】
上記ホットメルト接着剤層は、ゲル分率が10%以上でなければならない。上述のように本発明においては、上記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42の範囲であるように保護層とホットメルト接着剤層とのバランスを調整することにより、熱融着の際の加熱、冷却により各層に発生する応力に起因する反りの発生を防止する。上記ホットメルト接着剤層のゲル分率が10%未満であると、熱融着の際の加熱、冷却によりホットメルト接着剤層の厚みが大きく変動してしまい、バランスの調整が極めて困難となる。
【0052】
上記ホットメルト接着剤層の厚みの好ましい下限は200μm、好ましい上限は700μmである。上記ホットメルト接着剤層の厚みが200μm未満であると、熱融着による鋼板等への接着が困難となったり、ホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールの絶縁性を保持できないおそれがあり、700μmを超えると、ホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールの難燃性に悪影響を及ぼしたり、全体の重量が必要以上に重くなってしまったりするおそれがある。上記ホットメルト接着剤層の厚みのより好ましい下限は250μm、より好ましい上限は400μmである。
【0053】
本発明のホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールを製造する方法としては、例えば、上記太陽電池素子の少なくとも受光面上に上記保護層を、他方の面上に上記ホットメルト接着剤層を、一対の熱ロールを用いて狭窄し、熱圧着する方法が挙げられる。
なお、上記太陽電池素子の受光面とは、光を受けることができる面であって、上記太陽電池素子の光電変換層が配置された面をいう。
【0054】
本発明のホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールは、上記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42の範囲にある。該値がこの範囲内である場合に、鋼板等に対して熱融着により貼付した後でも、長期間接着力を保持することができる。
具体的には、上述したなかから保護層及びホットメルト接着剤層を構成する素材や各層の厚みを選択するにあたって、各素材の線膨張係数と厚みとを考慮して、上記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42の範囲となるように設計を行う。
【0055】
本発明のホットメルト接着剤付き太陽電池モジュールは、一方の面にホットメルト接着剤層を有することから、鋼板等に対して熱融着することにより容易に貼付することができる。更に、上記式(1)にて算出される値が0.15〜0.42の範囲にあることにより、反りの発生が抑えられ、長期間接着力を保持することができる。