【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る屋根上設置物固定装置は、「屋根構造体上に取付けられる平板状の本体、該本体を上下に貫通している貫通口、及び該貫通口の周縁から上方へ延出している周壁部を有している被覆用瓦と、該被覆用瓦の下側において屋根構造体上に面で当接させて取付けられる平板状の第一取付部、及び該第一取付部よりも上方へ延びており前記貫通口を通る棒状の第一雄ネジ部を有している第一固定部材と、該第一固定部材の前記第一雄ネジ部が貫通する平板状の第二取付部、該第二取付部から上方へ延出している第二立壁部、該第二立壁部の上端から前記第二取付部と平行に延びている平板状の載置部、及び該載置部を上下に貫通しているスリットを有しており、前記載置部が前記貫通口を通って前記周壁部よりも上方へ突出するように、前記第二取付部が前記第一雄ネジ部に取付けられる第二固定部材と、該第二固定部材の前記スリットよりも大径の頭部、及び前記頭部から延出しており前記スリットを通る棒状の第二雄ネジ部を有しており、該第二雄ネジ部が前記スリットを下側から通って上方へ突出するように前記載置部に取付けられる第二雄ネジ部材と、該第二雄ネジ部材の前記第二雄ネジ部を通過させる貫通孔が形成されており、平面視において前記周壁部の外周よりも大きく形成されている平板状の天板部、及び該天板部の周縁から下方へ延出している側板部を有しており、前記周壁部の上端開口を覆うように前記載置部に載置されるカバー部材とを具備しており、該カバー部材から上方へ突出する前記第二雄ネジ部に屋根上設置物が固定される」ことを特徴とする。
【0009】
ここで、「屋根構造体」とは、建物における屋根瓦よりも下側の部分であり、野地板、垂木、等を含むことができる。また、「屋根上設置物」は、太陽電池モジュール、太陽熱温水器、屋根上緑化体、を例示することができる。
【0010】
また、被覆用瓦の本体は、屋根構造体上に葺かれる一般的な屋根瓦と同じ形状とすることが望ましく、本葺き形、J形、F形、S形、スパニッシュ形、の瓦を例示することができる。
【0011】
また、「第一固定部材」としては、「第一取付部及び第一雄ネジ部のみからなる部材」、「第一取付部及び第一雄ネジ部に加えて、第一取付部から上方へ延出している第一立壁部と、第一立壁部の上端から第一取付部と平行に延びている棚部とを更に有し、棚部から第一雄ネジ部が上方へ延びている部材」、「第一取付部と第一雄ネジ部とが別体とされている部材」、を例示することができる。
【0012】
更に、第二固定部材の第一雄ネジ部への取付としては、「第二取付部において第一雄ネジ部が貫通する孔を第一雄ネジ部よりも大径の通過孔とし、通過孔を貫通している第一雄ネジ部に対して、第二取付部を挟むように両側に一対のナットを螺合させ、一対のナットを締結させることで取付ける」、「第二取付部において第一雄ネジ部に螺合される雌ネジ孔を形成することで取付ける」、を例示することができる。
【0013】
また、「第二立壁部」は、第二取付部から一つのみ上方へ延出していても良いし、第二取付部から複数上方へ延出していても良い。また、「スリット」は、長孔状のスリット、載置部を分断するスリット、を例示することができる。
【0014】
また、「第二雄ネジ部材」としては、根角ボルト、六角ボルト、なべ頭ボルト、六角穴付ボルト、を例示することができ、スリットへの挿入によって回転不能となる雄ネジ部材が望ましい。
【0015】
本発明の屋根上設置物固定装置によれば、被覆用瓦及び第一固定部材を、屋根構造体上に取付けると共に、第一固定部材の第一雄ネジ部に載置部が貫通口を通って周壁部よりも上方へ突出するように第二固定部材を取付ける。また、第二固定部材では、載置部のスリットを通って第二雄ネジ部が上方へ突出するように第二固定部材を取付ける。そして、第二固定部材の上端の載置部に、被覆用瓦の周壁部を上から覆うようにカバー部材を載置すると共に、カバー部材の貫通孔を通して第二雄ネジ部をカバー部材から上方へ突出させる。その後、カバー部材から突出している第二雄ネジ部に屋根上設置物を固定することによって、屋根上設置物を屋根上に設置することができる。
【0016】
これにより、屋根上設置物の重量が、第二固定部材及び第一固定部材を介して屋根構造体上に作用する。そして、屋根構造体に取付けられる第一固定部材では、平板状の第一取付部を屋根構造体上に対して面で当接させているため、屋根上設置物の重量を屋根構造体上の広い範囲に分散させることができる。従って、屋根構造体に対して、屋根上設置物の重量が狭い範囲に集中して作用することにより、屋根構造体が傷み易くなる虞を低減させることができる。
【0017】
また、屋根構造体に取付けられる第一固定部材の上方へ延びている第一雄ネジ部に、屋根上設置物が取付けられる第二固定部材を取付けているため、第一雄ネジ部のネジ作用を用いることで第二固定部材を上下に自由に移動させることができる。これにより、屋根上設置物固定装置を複数用いて屋根上に屋根上設置物を設置する際に、屋根構造体の上面が平面に対して歪んでいても、第一雄ネジ部のネジ作用によって第二固定部材を上下に移動させることにより、各第二固定部材が同一面上となるように調整することができる。従って、各第二固定部材(カバー部材)の上面に屋根上設置を載置させた時に、第二固定部材と屋根上設置物との間に隙間が形成されることがないため、屋根上設置物を固定することができなかったり、屋根上設置物を固定する時に屋根上設置物に無理な力が作用して破損してしまったりする不具合を低減することができる。
【0018】
また、第一雄ネジ部のネジ作用によって第二固定部材を上下に移動させることにより、スペーサを用いなくても第二固定部材と屋根構造体との間の隙間を解消させることができるため、予め厚さの異なるスペーサを複数用意しておく必要がない。従って、屋根上設置物の設置にかかる部品点数の増加を抑制させることができ、部品管理に係る手間やコストの増加を抑制させることができる。
【0019】
ところで、特許文献2の技術では、支持体において二つの平行に延びている部位の上端同士を連結している上片に取付孔を形成し、上側から取付孔を通して長いビスを屋根構造体にねじ込むことにより、支持体を取付けるようにしている。このため、支持体を取付けた状態では、ビスの頭部が上片の上面に当接し、ビスにおいて上片と屋根構造体との間が外部に露出した状態となる。これにより、何らかの理由によって屋根構造体上に浸入した雨水等がビスの露出している部位に接触すると、ビスの露出した部位から雨水等がビスを伝って屋根構造体上よりも下側へ浸入してしまう虞がある。これに対して、本発明では、上述したように、平板状の第一取付部を屋根構造体上に面で当接させており、屋根構造体に取付けるためのビスの頭部が第一取付部の上面に当接することとなるため、ビスの頭部と第一取付部との間、及び、第一取付部と屋根構造体との間を、ゴムやシリコン樹脂等によってシールすれば、ビスの頭部以外が屋根構造体上で露出しないようにすることができる。従って、喩え屋根構造体上に雨水等が浸入しても、屋根構造体側へ雨水等の浸入を防止することができる。
【0020】
更に、スリットを通して第二雄ネジ部材の第二雄ネジ部を上方へ延出させており、第二雄ネジ部材をスリットに沿って移動させることができるため、第一固定部材及び第二固定部材を屋根構造体上に取付けた後でも、第二雄ネジ部材をスリットに沿って移動させることができる。これにより、第一固定部材を屋根構造体から取外さなくても屋根構造体に対して第二雄ネジ部の位置を変更することができる。従って、例えば、屋根上設置物を構成する棒状の桟部材を、複数(三つ以上)の屋根上設置物固定装置を用いて固定する場合、固定される桟部材の長手方向に対して、直角方向にスリットが延びるように複数の屋根上設置物固定装置を屋根構造体に取付けておくことで、桟部材の固定線(屋根上における桟部材を固定すべき線)に対して第二雄ネジ部がずれていても、第二雄ネジ部材をスリットに沿って移動させることで、第二雄ネジ部を桟部材の固定線に一致させることができる。
【0021】
また、第一雄ネジ部に第二固定部材を取付けているため、第一雄ネジ部に対して第二固定部材を回転させることができる。これにより、固定する屋根上設置物に適した向きに第二固定部材を向けることができ、屋根構造体から第一固定部材を取外さなくても多様な屋根上設置物に対応させることができる。
【0022】
また、第二固定部材を第一雄ネジ部に対して回転させることができるため、例えば、第一雄ネジ部の軸芯に対してスリットの位置(第二雄ネジ部材の軸芯)が偏芯しているような第二固定部材とした場合、第二固定部材を回転させることにより、第一固定部材を屋根構造体から取外さなくても、第二雄ネジ部材の位置を変更することができ、スリットによる移動と併用することで、より大きいずれにも対応させることができる。
【0023】
更に、被覆用瓦の貫通口を通して上側まで延出させた第二固定部材の載置部を介して屋根上設置物を固定することができるため、屋根上設置物の重量が被覆用瓦に作用することがなく、被覆用瓦に強度や剛性の低い比較的安価な材料を用いることができ、屋根上設置物固定装置にかかるコストを抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る屋根上設置物固定装置は、上記の構成に加えて、「前記第一取付部は、一定の間隔を開けて一対有しており、前記第一固定部材は、一対の前記第一取付部から上方へ夫々延出している一対の第一立壁部と、一対の該第一立壁部の上端を互いに連結しており、前記第一取付部と平行に延びている棚部とを更に有しており、該棚部から前記第一雄ネジ部が延びている」ことを特徴としても良い。
【0025】
ところで、第二固定部材が取付けられる第一雄ネジ部において、第二取付部よりも下側の部位が長くなるほど、その部位が撓み易くなる性質がある。そして、第一雄ネジ部が撓み易い状態では、第二固定部材に取付けられている屋根上設置物に風や雨等が当たることで、屋根構造体の上面に沿った方向の力が作用すると、第一雄ネジ部から上側が振動し易くなり、その振動によって第一雄ネジ部が疲労して破断したり、屋根上設置物に不具合が生じたりする虞がある。
【0026】
これに対して、本発明では、第一固定部材において、一対の第一立壁部によって第一取付部よりも上側に備えられている棚部から、第一雄ネジ部が上方へ延びるようにしているため、平板状の第一取付部から第一雄ネジ部が直接上方へ延びるようにした場合と比較して、第一雄ネジ部において第二取付部よりも下側の部位の長さを短くすることができる。従って、第一雄ネジ部が相対的に撓み難くなるため、屋根上設置物に雨や風等が当たることによって屋根構造体の上面に沿った方向の力が作用しても、第一雄ネジ部から上側が振動し難くなり、振動による疲労によって第一雄ネジ部が破断するような不具合が生じる虞を低減させることができる。
【0027】
また、本発明に係る屋根上設置物固定装置は、上記の構成に加えて、「前記第二固定部材は、前記第二立壁部及び前記載置部が、前記第一雄ネジ部が貫通する孔の両側に対称に夫々一対備えられ、且つ、前記スリットが、一対の前記第二立壁部が離間している方向に対して直角方向へ延びている」ことを特徴としても良い。
【0028】
これにより、第二固定部材において一対の載置部を、第一雄ネジ部が貫通する孔の両側に対称に配置しているため、一対の載置部を介して屋根上設置物の重量が、第二取付部に取付けられた第一雄ネジ部に対して均等に作用させることができる。従って、屋根上設置物の重量が作用しても第一雄ネジ部が曲がり難くなり、屋根構造体に対して屋根上設置物を良好な状態で固定させることができる。
【0029】
また、一対の載置部から夫々第二雄ネジ部材の第二雄ネジ部を上方へ突出させていることから、一対の載置部で屋根上設置物を受けて固定させることができるため、一つの載置部(第二雄ネジ部)により屋根上設置物を受けて固定させる場合と比較して、屋根上設置物をより強固に固定させることができる。この際に、一対の載置部においてスリットが延びている方向を、一対の第二立壁部が離間している方向に対して直角方向としているため、例えば、複数の屋根上設置物固定装置を用いて一つの棒状の桟部材を固定する場合、桟部材の固定軸線に対して第二雄ネジ部がずれていても、各第二雄ネジ部材をスリットに沿って移動させることにより、一対の第二雄ネジ部を桟部材の固定線に一致させることができ、一対の載置部に桟部材を固定させることができる。
【0030】
更に、本発明に係る屋根上設置物固定装置は、上記の構成に加えて、「前記第二固定部材に備えられており、前記第二雄ネジ部材の前記頭部に下側から当接する規制部を更に備えている」ことを特徴としても良い。
【0031】
ここで、「規制部」としては、「載置部の上面に係止される一対の係止片と、一対の係止片を載置部の下側で互いに連結していると共に上面に第二雄ネジ部材の頭部を当接させる受片と、を備えた部材」、「載置部の下面から下方へ延出しており第二雄ネジ部材の頭部が載置部の面に沿った方向から嵌合される嵌合溝」、「第二立壁部の側面から第二雄ネジ部材の頭部の下側へ延出している延出片」、を例示することができる。
【0032】
これにより、規制部が第二雄ネジ部材の頭部に下側から当接することにより、載置部から第二雄ネジ部材が落下するのを防止することができる。従って、本屋根上設置物固定装置を屋根構造体に取付ける際や、第二雄ネジ部に屋根上設置物を固定する際に、落下しないように第二雄ネジ部材を支え続ける必要がなく、屋根上へ屋根上設置物を設置する際の作業性が良くなる。
【0033】
更に、本発明に係る屋根上設置固定装置は、「屋根構造体上に取付けられる平板状の本体、該本体を上下に貫通している貫通口、及び該貫通口の周縁から上方へ延出している周壁部を有している被覆用瓦と、該被覆用瓦の下側において屋根構造体上に面で当接させて取付けられる平板状の第一取付部、及び該第一取付部よりも上方へ延びており前記貫通口を通る棒状の第一雄ネジ部を有している第一固定部材と、該第一固定部材の前記第一雄ネジ部が貫通している状態で該第一雄ネジ部に取付けられている平板状の第二取付部、該第二取付部から前記貫通口を通って前記周壁部よりも上側まで上方へ延出している第二立壁部、該第二立壁部の上端から前記第二取付部と平行に延びている平板状の載置部、及び該載置部を上下に貫通しているスリットを有している第二固定部材と、該第二固定部材の前記スリットよりも大径で前記載置部の下側に取付けられている頭部、及び前記頭部から前記スリットを下側から通って前記載置部の上方へ突出している棒状の第二雄ネジ部を有している第二雄ネジ部材と、該第二雄ネジ部材の前記第二雄ネジ部が通過している貫通孔が形成されていると共に前記載置部に載置されており、平面視において前記周壁部の外周よりも大きく形成されている平板状の天板部、及び該天板部の周縁から前記周壁部の上端よりも下側まで延出している側板部を有しているカバー部材とを具備しており、該カバー部材から上方へ突出する前記第二雄ネジ部に屋根上設置物が固定される」ことを特徴とする。これにより、上記と同様の作用効果を奏することができる。