(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インペラーの前記羽根の内径側の端部を結んだ円の直径をDsとし、前記インペラーの直径をDとした場合、前記第1開口部は、前記軸を中心として1.0・Ds以上1.0・D以下の範囲に開口する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遠心式ポンプ。
前記通路は、その延在する方向と直交する断面が円形であり、前記断面の直径は、前記流体を吐出する吐出口の直径に対して10%以上50%以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の遠心式ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る遠心式ポンプの一部断面を含む外観図である。
図2は、本発明の実施形態に係るインペラーの平面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るポンプヘッド部の概略を示す断面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る吸込みカバーの平面図である。
図5は、本発明の実施形態に係るインペラーの直径に対する吸込みカバーの領域を示す凸部側から見た平面図である。本実施形態においては、遠心式ポンプ1の原動機として、電動機を例として説明するが、遠心式ポンプの原動機はこれに限定されない。例えば、遠心式ポンプは、エンジンを原動機として適用することも可能である。
【0020】
遠心式ポンプ1は、電動機2と、電動機2に接続された軸3と、軸3の端部3cに接続されたインペラー5と、インペラー5を収納するポンプヘッド6と、を有する。また、遠心ポンプ1は、軸3の外周に配置され、軸3を保護する保護カバー4と、保護カバー4と電動機2とに連結され、電動機2を支持する支持部材15を有する。また、保護カバー4は、支持部材15とポンプヘッド6に連結されている。ポンプヘッド6は、ケーシング60および吸込みカバー61を有し、流体を吸い込む吸込口13および流体を吐出する吐出口14が形成されている。また、ケーシング60と吸込みカバー61とは、ボルト19bおよびナット20bで固定されている。ポンプヘッド6は、吸込みカバー61の部位65Aに第1開口部10が形成されている。また、ポンプヘッド6は、吸込みカバー61の部位65Bに第2開口部11が形成されている。ポンプヘッド6の吸い込みカバー61には、第1開口部10および第2開口部11を接続する通路12が形成されている。吐出口14には、ポンプの駆動側に向かってL型配管16が接続されている。また、L型配管16には、配管17および接続部材18が接続されている。
【0021】
遠心式ポンプ1は、外部からの供給電力によって電動機2が駆動して軸3が回転し、軸3の端部3cに固定されたインペラー5が、吸込口13を通る所定の軸となる中心線CLを中心として回転することにより、流体の吸込みおよび中心線CLと直交する方向へ吐出をする。
【0022】
電動機2は、軸3を回転させる原動機(駆動源)である。電動機2は、支持部材15(遠心式ポンプ1の吸込口13側)にフランジ2aが設けられている。フランジ2aは、ボルト19aおよびナット20aで支持部材15に固定されている。
【0023】
軸3は、電動機2からポンプヘッド6側に向かって延びる金属製の丸棒の本体部3bおよび当該本体部3bの一方の端に固定された端部3cを含む。本体部3bは、電動機2に接続されており、保護カバー4によって保護されている。端部3cは、キー3eが取付けられており、端部3cの前方にはねじ部3dが形成されている。保護カバー4は、支持部材15と例えば溶接で固定され、支持部材15を支持している。
【0024】
インペラー5は、複数の羽根を有し、直径がDとなる。具体的には、インペラー5は、
図2に示すように、円盤50および複数枚の羽根51を有している。インペラー5は、直径Dの樹脂製の円盤50に6枚の羽根51が一体成型されている。なお、図示しないが、円盤50の裏側にも、同様に6枚の羽根が一体成型されている。円盤50の中心部50aには、ボス部52が形成されている。ボス部52は、キー溝50bを含む貫通孔50cが形成されている。インペラー5は、
図1に示すように、キー溝50bにキー3eを嵌め合わせて、軸3のねじ部3dにインペラーナット21をねじ込むことによって、軸3の端部3cに固定されている。
【0025】
インペラー5は、ボス部52とインペラー5の羽根51の内径側の端部を結んだ直径Dsの円周53との間が中心領域CPとなる。インペラー5は、6枚の羽根51が中心領域CPの径方向外側に配置されている。羽根51は、円周53から円盤50の外縁50dに向かって、インペラー5の反回転方向に湾曲して形成されており、円盤50の周方向に向かって等間隔で配置されている。なお、円盤50は樹脂製に限らず、ステンレスなどの金属製であってもよい。ここで、インペラー5は、円盤50と羽根51とを一体成型しなくてもよい。例えばインペラー5は、円盤50上に羽根51を取付けて形成することもできる。
【0026】
ポンプヘッド6は、
図3に示すように、円筒形状であって、中心線CLを中心とした貫通孔3aおよび吸込口13を有し、かつインペラー5を収納する。ポンプヘッド6は、円柱状のケーシング60と、フランジ状の吸い込みカバー61と、ケーシング60と吸い込みカバー61とを固定するボルト19bおよびナット20bと、を有する。
【0027】
ケーシング60は、ポンプヘッド6の中心軸CL方向の端面(中心軸CL方向の端となる面)7となる第1端面7aが中心線CLと垂直に形成されている。ケーシング60には、第1端面7aから凹部62aに向かって中心線CLを中心とする貫通孔3aが形成されている。貫通孔3aには、軸3が挿入される。
【0028】
ケーシング60は、中心線CLを中心とした貫通孔3aと凹部62と凹部62aとが形成されている。凹部62は、吸い込みカバー61側の面(吸込口13側の面)に、貫通孔3a側に凸に形成されている。凹部62は、平面61dと交差し、中心線CLに平行な内面60dと、中心線CLと垂直な内面60cとで形成される。凹部62は、吸い込みカバー61側の面(吸込口13側の面)から内面60cまでの深さがdpとなる。凹部62は、凹部62の貫通孔3a側、つまり、内面60cに形成されている。凹部62aは、中心線CLに平行な内面60bと、中心線CLと垂直な内面60aとで形成される。凹部62aは、中心軸CLを通る断面において、内面60b間の距離が内面60a間の距離よりも短くなる。
【0029】
ケーシング60には、ポンプヘッド6の側面(ポンプヘッド6の中心軸CLに直交する方向の端面)8となる第1側面8aが形成されている。ケーシング60には、第1側面8aから凹部62aの内面60bに開口した吐出口14が形成されている。吐出口14は、内面60a側の端部の直径がD3となる。つまり、吐出口14と凹部62aの内部の空間とが繋がる位置の開口の直径がD3となる。ケーシング60は、吐出口14に第1側面8aから凹部62に向かって窪み、配管が接続されるザグリ部14bが形成されている。なお、ザグリ部14bは、配管の挿入を容易にするために設けられているがこれに限らない。例えば、吐出口14に配管を接続できれば、ザグリ部14bを設けていなくてもよい。
【0030】
図3に示すように、吸込みカバー61には、中心線CLに垂直な平面60eと、中心線CLに平行であって、ポンプヘッド6の側面8となる第2側面8bと、中心線CLに垂直であって、ポンプヘッド6の端面7となる第2端面7bを備える曲面部64と、が形成されている。また、吸込みカバー61には、中心線CLに平行な曲面61cと、中心線CLに垂直な平面61aとで形成され、曲面部64から、ケーシング61に向かって突出する高さHの凸部63を備える。吸込みカバー61には、第2端面7bから、平面61aに向かって貫通し、中心線CLを中心とした吸込口13となる貫通孔が形成されている。
【0031】
ポンプヘッド6は、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する部位65Aに、第1開口部10が開口されている。第1開口部10は、吸込みカバー61の吸込口13側であって、直径Dのインペラー5の複数の羽根51と対向する平面61aに開口している。
【0032】
また、ポンプヘッド6は、中心線CLと直交する方向に存在する部位65Bに、第2開口部11が開口されている。具体的には、中心線CLと直交する方向であって、第2側面8bに、第2開口部11が開口されている。すなわち、本実施形態において、第2側面8bは、中心線CLと直交する方向に存在するポンプヘッド6の部位65Bに相当する。第1開口部10の中心C1は、中心線CLを中心とする直径D1の円周上に形成されている。そして、第1開口部10は、インペラー5の中心領域CPの近くに開口されている。第2開口部11は、中心線CLと直交する向きに開口している。第2開口部11の中心C2は、第2端面7bから距離Rの位置に形成されている。また、第2開口部11には、ねじ部31が形成されている。
【0033】
吸込みカバー61には、排気穴12aおよび排気穴12bが形成されている。排気穴12aと排気穴12bとは、延在する方向と直交する断面が円形となる。吸込みカバー61は、排気穴12aと排気穴12bとが繋がって通路12となる。排気穴12aは、第1開口部10から第2端面7bに向かって延在する、長さL1、直径d1の穴である。排気穴12bは、第2開口部11から吸込口13に向かって延在する長さL2、直径d1の穴である。排気穴12aの第1開口部10とは反対側の端部と排気穴12bの第2開口部11とは反対側の端部とが、吸込みカバー61内で、角度α1で接続している。これにより、排気穴12aと排気穴12bとは、繋がった通路12となり、凹部62aに露出した第1開口部10と、側面8bに露出した第2開口部11とが繋がる。排気穴12aの長さL1は、平面61aから第2端面7bまでの長さLHよりも短く、排気穴12bの長さL2は、第2側面8bから内面61bまでの長さLWよりも短い。なお、本実施形態において、排気穴12aおよび排気穴12bの直径d1は同一の大きさであるがこれに限定されず、互いに異なる直径であってもよい。さらに、角度α1は90°で接続されているがこれに限定されず、例えば、鋭角または鈍角であってもよい。
【0034】
図4に示すように、吸込みカバー61には、ボルト19bを通すために8個の貫通孔22および吸込口13が形成されている。さらに、第1開口部10、第2開口部11、排気穴12aおよび排気穴12bは、それぞれ4つずつ、かつ角度α2の間隔で形成されている。ここで、角度α2とは、中心線CL1を基準とした中心角度であって、隣接する排気穴12b同士のなす角度である。なお、本実施形態において角度α2は、90°であるがこれに限らない。例えば第1開口部10、第2開口部11、排気穴12aおよび排気穴12bは、1つから3つであってもよい。さらに、第1開口部10、第2開口部11、排気穴12aおよび排気穴12bは、5つ以上であって、角度α2を60°または30°で形成することも可能である。
【0035】
図3に示すように、ポンプヘッド6は、ケーシング60の凹部62に、吸込みカバー61の凸部63を挿入することによって形成されている。具体的には、凹部62と凸部63とは、凹部62の内面60dと凸部63の曲面61cとが接し、凹部62の平面61dと曲面部64の平面60eとが接している。吸込みカバー61の凸部63の高さHは、ケーシング60の凹部62の深さdpよりも低く形成されている。したがって、吸込みカバー61の凸部63をケーシング60の凹部62に挿入してポンプヘッド6を形成すると、内部の空間であるポンプ室9が形成される。
【0036】
ポンプ室9は、吸込口13、領域9aおよび吐出口14で形成される。領域9aは、ケーシング60の内面60a、内面60b、内面60cおよび内面60dと、吸込みカバーの凸部63の平面61aで囲まれた空間である。領域9aは、平面61aの一部が吸込口13と接続し、内面60dの一部が吐出口14と接続されている。すなわち、ポンプ室9は、吸込口13から領域9aを介して吐出口14に至る領域である。吐出口14から吐出された流体は、
図1に示すように、L型配管16と、L型配管16に接続されている配管17と、支持部材15を介して接続されている接続部材18を通過して外部へ排出される。なお、ポンプ室9は、ケーシング60と吸込みカバー61とを組み合わせた内部の領域であるがこれに限られない。例えば、ポンプヘッド6が1つの加工品または成型品であっても、ポンプ室9は流路となる領域が形成されていればよい。
【0037】
遠心式ポンプ1は、インペラー5を回転させることでインペラー5の入口部に負圧を発生させて流体を吸込口13から吸い込む原理である。そして、遠心式ポンプ1は、内部の領域に溜まった気体をポンプ室9の外部へ排出するために、インペラー5の中心領域CPの圧力より低い圧力側へ繋がる通路12が必要となる。例えば、水槽内に浸漬した遠心式ポンプ1では、インペラー5の中心領域CPで発生した圧力よりさらに低い圧力をポンプ単独の使用下では発生している場所もなければ、発生させることもできない。そこで、インペラー5の羽根51部には、加圧する作用があるため、インペラー5の中心領域CPに近く、かつインペラー5の羽根51と対向するポンプヘッド6の部位65Aに、ポンプ室9から外部へ通じる通路12を開口する。そのため、インペラー5の中心領域CPとポンプ室9の外部との差圧により気体をポンプ室9の外部へ排出することが可能になる。そして、第2開口部11を中心線CLと直交する方向に存在するポンプヘッド6の部位65Bへ設けることで、排出された気体は、インペラー5の加圧作用によって、細分化された気泡となって水槽内流体を浮上する。そして、気泡が再び吸込口13から入ることを抑制することができる。すなわち、中心領域CPに溜まった気体を吸込口13側のみに気泡として排出した場合は、多くの気泡が吸込口13から吸込まれる。そして、吸込まれた気泡は、再び水槽内へ排出される。すなわち、気泡は、水槽内とポンプ内とを循環する。本実施形態において、多くの気泡は、中心線CLと直交する向きに排出されて水槽内を浮上する。そのため、遠心式ポンプ1は、気泡が再び吸込口13から入ることを抑制することができる。その結果、中心領域CPに溜まる気体の量が少なくなるため、遠心式ポンプ1は、吸込み不良および吐出不良の発生を抑制し、安定して能力を発揮することができる。さらに、遠心式ポンプ1は、中心領域CPに溜まる気体の量が少なくなるため、能力の低下を抑制することができる。
【0038】
気泡と液体とが接触すると、気泡を形成する気体は、液中に溶け込むことがある。この場合、気泡は、液中に滞在する時間が長いほど液体に溶ける気体の量が多くなる。本実施形態において、気泡が中心線CLと直交する向きに排出されて水槽内の水面へ浮上する距離は、吸込口13側から排出されて水槽内の水面へ浮上する距離よりも短い。しがたって、気泡は、吸込口13側からのみ排出される場合よりも、液中に滞在する時間が短くなる。その結果、遠心式ポンプ1は、液中に溶け込む気体の量を抑制することができる。
【0039】
通路12の本数は、2本以上10本以下であることが好ましい。ここで、通路12の本数とは、気泡を排出する経路の本数を意味する。通路12の本数を2本以上とすることによって、中心線CLに対して等配すれば、バランス良く気泡を排出することができる。一方、通路12を10本以下とすることによって、ポンプの能力低下となる量の液体を排出することなく効率の良い排気ができる。より好ましくは、通路12は、4本以上8本以下である。
【0040】
インペラー5の羽根51の始まり(中心線CL側の端を結んだ円)の直径をDsとし、インペラー5の直径をDとした場合、第1開口部10は、中心線CLを中心として1.0・Ds以上1.0・D以下の範囲Sに開口することが好ましい。つまり、第1開口部10は、中心線CLを中心とした直径1.0・Dsの円と、中心線CLを中心とした1.0・Dの円と、で囲まれる範囲Sに形成することが好ましい。ここで、範囲Sは、
図5に示すように、吸込みカバー61において、1.0・Dsを示す点線P2と1.0・Dを示す点線P1で囲まれた部分を示し、点線P1、P2を含む。
【0041】
遠心式ポンプ1は、中心線CLを中心とした直径1.0・Dsの円の外側(境界含む)に第1開口部10を開口することによって、中心領域CPの気体をインペラー5の加圧作用によって第1開口部10から排出できる。一方、遠心式ポンプ1は、中心線CLを中心とした直径1.0・Dの円の内側(境界含む)に第1開口部10を形成することで、インペラー5の加圧作用による第1開口部10からの液体の流出を抑え、ポンプの能力低下を抑制できる。
【0042】
また、第1開口部10は、中心線CLを中心とした直径1.05・Dsの円および直径1.0・Ds+7mmの円のうち、小さい円の外側に開口することがより好ましい。ここで、1.0・Ds+7mmとは、インペラー5の羽根51の始まり(中心線CL側の端を結んだ円)の直径Dsに加えて、
図3に示した長さLWと長さL2との差である最小肉厚と、通路12の最小の直径とを考慮した値である。なお、最小肉厚は1mm(直径で2mm)であり、通路の最小直径は5mmであることが好ましい。第1開口部10が、直径1.05・Dsの円の外側または直径1.0・Ds+7mmの円の外側であれば、最小の肉厚を確保できるので第1開口部10の加工が容易となる。一方、第1開口部10は、直径(D−Ds)/2+Dsの円の内側に開口することがより好ましい。ここで、直径(D−Ds)/2+Dsの円とは、範囲Sの中心を通る円である。第1開口部10が直径(D−Ds)/2+Dsの円の内側であれば、インペラー5の加圧による気泡の排出が有利となる。
【0043】
通路12の直径d1は、吐出口14の直径D3に対して10%以上50%以下であることが好ましい。直径d1を吐出口14の直径D3に対して10%以上とすることによって、連続して吸引する気体とほぼ同等の気泡を排出することができる。一方、直径d1を吐出口14の直径D3に対して50%以下とすることによって、吐出口14へ移送する液体まで排出することを抑制することができる。なお、具体的には、直径d1は、5mm以上20mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、8mm以上12mm以下である。
【0044】
図6は、本発明の実施形態に係るポンプヘッド部の第1変形例の概略を示す断面図である。第1変形例は、前述した実施形態と同様であるが、第2開口部11をポンプヘッド6Aの部位65Bに開口し、かつ第2排出口70をポンプヘッド6Aの部位65Cにも開口している点が異なる。第1変形例の説明では、前述した実施形態と同様の構成についての説明は原則として省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0045】
ポンプヘッド6Aは、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する部位65Aに、第1開口部10を有している。第1開口部10は、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する平面61aに開口している。
【0046】
また、ポンプヘッド6Aは、中心線CLと直交する方向に存在する部位65Bに、第2開口部11が開口されている。具体的には、中心線CLと直交する方向であって、第2側面8bに、第2開口部11が開口されている。さらに、ポンプヘッド6Aは、吸込みカバー61の部位65Cに、第2排出口70が開口されている。すなわち、本変形例において、第2側面8bは、中心線CLと直交する方向に存在するポンプヘッド6Aの部位65Bに相当する。また、第2端面7bは、ポンプヘッド6Aの部位65Cに相当する。
【0047】
第1開口部10の中心C1は、中心線CLを中心とする直径D1の円周上に形成されている。そして、第1開口部10は、インペラー5の中心領域CPの近くに開口されている。第2開口部11は、中心線CLと直交する向きに開口している。第2開口部11の中心C2は、第2端面7bから距離Rの位置に形成されている。さらに、第2排出口70は、第1開口部10と同心であって、直径D1の円周上に開口されている。また、第2開口部11および第2排出口70には、ねじ部31が形成されている。
【0048】
吸込みカバー61には、排気穴12cおよび排気穴12bが形成されている。排気穴12cと12bとは、延在する方向と直交する断面が円形となる。吸込みカバー61は、排気穴12bと排気穴12cとが繋がって通路12となる。排気穴12cは、第1開口部10から第2端面7bに向かって延在する、長さLH、直径d1の穴である。また、排気穴12cは、第1開口部10から第2端面7bに貫通している。排気穴12bは、第2開口部11から、吸込口13に向かって延在する、長さL2および直径d1の穴である。そして、排気穴12bの第2開口部11とは反対側の端部と排気穴12cの幅とが、吸込みカバー61内で、角度α1で接続されている。これにより、排気穴12bと排気穴12cとは、繋がった通路12となり、凹部62aに露出した第1開口部10と、第2端面7bに露出した第2排出口70と、第2側面8bに露出した第2開口部11とが繋がる。排気穴12bの長さL2は、第2側面8bから内面61bまでの長さLWよりも短い。なお、本実施形態において、排気穴12bおよび排気穴12cの直径d1は同一の大きさであるがこれに限定されず、互いに異なる直径であってもよい。さらに、角度α1は90°で接続されているがこれに限定されず、例えば、鋭角または鈍角であってもよい。
【0049】
本発明の第1変形例において、ポンプヘッド6Aに第1開口部10から第2開口部11および第2排出口70をつなぐ通路12を形成したことによって、遠心式ポンプ1は、インペラー5の中心領域CPに溜まる気体をポンプ室9から排気穴12b、12cを介してポンプヘッド6Aの外部へ排出する。第1変形例に係る遠心式ポンプ1は、ポンプヘッド6Aの部位65Cである吸込口13側にも、排出口が形成されている。そして、気泡は、中心線CLと直交する向きおよび吸込口側から排出される。したがって、気泡が吸込口側のみに排出される場合と比較すると、第1変形例は、中心線CLと直交する向きからも気泡を排出することができるので、気泡が水槽内を浮上する量が増加する。そして、第1変形例は、吸込口から再び気泡を吸込む量を抑制することもできる。その結果、第1変形例に係る遠心式ポンプ1は、吸込み不良および吐出不良の発生を抑制し、安定して能力を発揮することができる。また、第1変形例は、中心領域CPに溜まる気体の量が少なくなるため、ポンプの能力低下を抑制することができる。
【0050】
また、吸込口側のみから気泡が排出される場合と比較すると、気泡は、第2開口部11および第2排出口70から排出されるため、水槽内の水面へ浮上する気泡の量が多くなる。その結果、第1変形例は、吸込口側のみから気泡が排出される場合と比較して、液中に溶存する気体の量を抑制することができる。
【0051】
図7は、本発明の実施形態に係るポンプヘッド部の第2変形例の概略を示す断面図である。第2変形例は、
図3で示した実施形態と同様であるが、第2開口部11bをポンプヘッド6Bの部位65Dに開口している点が異なる。第2変形例の説明では、
図3で示した構成についての説明は原則として省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0052】
ポンプヘッド6Bは、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する部位65Aには、第1開口部10が開口されている。第1開口部10は、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する平面61aに開口している。
【0053】
また、ポンプヘッド6Bは、中心線CLと直交する方向に存在する部位65Bに、第2開口部11が開口されている。具体的には、中心線CLと直交する方向であって、第2側面8bに、第2開口部11が開口されている。さらに、ポンプヘッド6Bは、ケーシング60の部位65Dに、第2開口部11bが開口されている。すなわち、本変形例において、第2側面8bは、中心線CLと直交する方向に存在するポンプヘッド6Bの部位65Bに相当する。また、第1端面7aは、ポンプヘッド6Bの部位65Dに相当する。
【0054】
第1開口部10の中心C1は、中心線CLを中心とする直径D1の円周上に形成されている。そして、第1開口部10は、インペラー5の中心領域CPの近くに開口されている。第2開口部11は、中心線CLと直交する向きに開口されており、第2開口部11の中心C2は、第2端面7bから距離Rの位置に形成されている。さらに、第2開口部11bの中心C3は、中心線CLを中心とする直径D2の円周上に形成されている。また、第2開口部11および第2開口部11bには、ねじ部31が形成されている。
【0055】
吸込みカバー61には、排気穴12a、排気穴12b、排気穴12dおよび排気穴12eが形成されている。排気穴12a、排気穴12b、排気穴12dおよび排気穴12eは、延在する方向と直交する断面が円形となる。吸込みカバー61は、排気穴12aと、排気穴12bと、排気穴12dと、排気穴12eとが繋がって通路12となる。排気穴12aは、第1開口部10から第2端面7bに向かって延在する、長さL1、直径d1の穴である。排気穴12bは、第2開口部11から吸込口13に向かって延在する長さL2、直径d1の穴である。排気穴12dは、第2開口部11bから平面61dに向かって延在する長さL3、直径d1の穴である。また、排気穴12dは、第2開口部11bから平面61dに貫通している。排気穴12eは、平面60eから第2端面7bに向かって延在する長さL4、直径d1の穴である。排気穴12aの第1開口部10とは反対側の端部と排気穴12bの第2開口部11とは反対側の端部とが、吸込みカバー61内で、角度α1で接続している。また、排気穴12dの第2開口部11bとは反対側の端部と排気穴12eの第2端面7bとは反対側の端部とが、接続している。さらに、排気穴12eの第2端面7b側は、吸込みカバー61内で、角度α1で排気穴12bと接続している。これにより、排気穴12aと、排気穴12bと、排気穴12dと、排気穴12eとは、繋がった通路12となる。そして、凹部62aに露出した第1開口部10と、第1端面7aに露出した第2開口部11bと、第2側面8bに露出した第2開口部11とが繋がる。なお、本実施形態において、排気穴12a、排気穴12b、排気穴12dおよび排気穴12eの直径d1は同一の大きさであるがこれに限定されず、互いに異なる直径であってもよい。さらに、角度α1は90°で接続されているがこれに限定されず、例えば、鋭角または鈍角であってもよい。
【0056】
本発明の第2変形例において、ポンプヘッド6Bに第1開口部10、第2開口部11、第2開口部11b、排気穴12a、排気穴12b、排気穴12dおよび排気穴12eを形成したことによって、遠心式ポンプ1は、インペラー5の中心領域CPに溜まる気体をポンプ室9から排気穴12a、排気穴12b、排気穴12dおよび排気穴12eを介してポンプヘッド6Bの外部へ排出することができる。第2変形例に係るポンプは、第2開口部11bがポンプヘッド6Bの部位65Dである吸込口とは反対側に形成されている。そして、気泡は、中心線CLと直交する向きおよび吸込口とは反対の向きから排出される。したがって、吸込口側のみに気泡を排出した場合と比較すると、第2変形例は、遠心式ポンプ1が再び気泡を吸込む量をより好適に抑制することができる。その結果、第2変形例を備えたポンプは、吸込み不良および吐出不良の発生を抑制し、より安定して能力を発揮することができる。また、第1変形例は、中心領域CPに溜まる気体の量が少なくなるため、ポンプの能力低下を抑制することができる。
【0057】
また、第2変形例において、気泡が第2開口部11bから排出して水面へ浮上するまでの距離は、気泡が吸込口側から排出して水面へ浮上するまでの距離よりも短い。さらに、気泡が第2開口部11bから排出して水面へ浮上するまでの距離は、気泡が第2開口部11から排出して水面へ浮上するまでの距離よりも短い。したがって、第2変形例に係る遠心式ポンプ1は、気泡が液中を滞在する時間を短くできるので、気泡が液中に滞在する時間をより少なくすることができる。したがって、第2変形例は、中心線CLと直交する向きのみから気泡を排出した場合と比較すると、液体に溶存する気体の量をさらに好適に抑制することができる。
【0058】
ここで、第2変形例は、中心線CLと直交する向きおよび吸込口側とは反対の向きから気泡を排出する例を示したが、吸込口側とは反対の向きのみに気泡の排出口を形成してもよい。すなわち、ポンプヘッド6Bの部位65Dのみに第2開口部11bを形成する例である。
【0059】
吸込口側とは反対の向きのみに気泡の排出口である第2開口部11bを形成したことによって、気泡は、第2開口部11bのみから排出されることになる。すなわち、気泡は、水槽内の水面により近い向きから排出する。そして、気泡は、中心線CLと直交する向きのみから排出される例と比較すると、水面に浮上する距離も短くなり、液中に滞在する時間も短くなる。その結果、第2変形例は、液中に溶存する気体の量をより好適に抑制することができる。また、液中に溶存する気体の量をより好適に抑制することができるので、気体の溶存を低減したい液体を取り扱う場合は、特に好適である。
【0060】
図8は、本発明の実施形態に係るポンプヘッド部の第3変形例の概略を示す断面図である。第3変形例は、
図3で示した実施形態と同様であるが、第2開口部11cをポンプヘッド6Cの部位65Eに開口している点が異なる。第3変形例の説明では、
図3で示した構成についての説明は原則として省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0061】
ポンプヘッド6Cは、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する部位65Aに、第1開口部10が開口されている。具体的には、第1開口部10は、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する平面61aに開口している。
【0062】
また、ポンプヘッド6Cは、中心線CLと直交する方向に存在する部位65Eに、第2開口部11cが開口されている。具体的には、中心線CLと直交する方向であって、第1側面8aに、第2開口部11cが開口されている。本変形例において、第1側面8aは、中心線CLと直交する方向に存在するポンプヘッド6Cの部位65Eに相当する。
【0063】
第1開口部10の中心C1は、中心線CLを中心とする直径D1の円周上に形成されている。そして、第1開口部10は、インペラー5の中心領域CPの近くに開口されている。第2開口部11cは、中心線CLと直交する向きに開口されており、第2開口部11cの中心C4は、第1端面7aから距離R1の位置に形成されている。また、第2開口部11cには、ねじ部31が形成されている。
【0064】
ケーシング60には、排気穴12fが形成されている。また、吸込みカバー61には、排気穴12gおよび排気穴12hが形成されている。排気穴12f、排気穴12gおよび排気穴12hは、延在する方向と直行する断面が円形となる。ケーシング60と吸込みカバー61とは、排気穴12f、排気穴12gおよび排気穴12hとが繋がって通路12となる。排気穴12fは、第2開口部11cから内面60dに向かって延在する、長さL6、直径d1の穴である。また、排気穴12fは、第2開口部11cから内面60dに貫通している。排気穴12gは、第1開口部10から第2端面7bに向かって延在する、長さL5、直径d1の穴である。排気穴12hは、曲面61cから吸込口13に向かって延在する長さL7、直径d1の穴である。排気穴12fの第2開口部11cとは反対側の端部と排気穴12hの吸込口13とは反対側の端部とが、接続されている。排気穴12gの第1開口部10とは反対側の端部と排気穴12hの曲面61cとは反対側の端部とが、吸込みカバー61内で、角度α1で接続している。これにより、排気穴12f、排気穴12gおよび排気穴12hとは、繋がった通路12となり、凹部62aに露出した第1開口部10と第1側面8aに露出した第2開口部11cとが繋がる。
【0065】
排気穴12gの長さL5は、平面61aから第2端面7bまでの長さLHよりも短く、排気穴12hの長さL7は、第2側面8bから内面61bまでの長さLWよりも短い。なお、排気穴12gの長さL5は、
図3で示した、排気穴12aの長さL1よりも短い。さらに、排気穴12fの長さL6および排気穴12hの長さL7を合わせた長さは、
図3で示した、排気穴12bの長さL2の長さと同じである。なお、本変形例において、排気穴12f、排気穴12gおよび排気穴12hの直径d1は同一の大きさであるがこれに限定されず、互いに異なる直径であってもよい。さらに、角度α1は90°で接続されているがこれに限定されず、例えば、鋭角または鈍角であってもよい。
【0066】
ポンプヘッド6Cに第1開口部10、第2開口部11cおよび排気穴12f、排気穴12gおよび排気穴12hを形成したことによって、遠心式ポンプ1は、インペラー5の中心領域CPに溜まる気体をポンプ室9から排気穴12f、排気穴12gおよび排気穴12hを介してポンプヘッド6Cの外部へ排出する。第3変形例は、排気穴12gの長さL5が、
図3で示した排気穴12aの長さL1よりも短い。そのため、気泡は、排出される距離が短くなり、排出される際の抵抗が少なくなる。そのため、気泡は、より排出されやすくなる。そして、第3変形例は、吸込口13側のみに気泡を排出した場合と比較すると、再び気泡を吸込む量が抑制することができる。その結果、第3変形例に係る遠心式ポンプ1は、吸込み不良および吐出不良の発生を抑制し、安定して能力を発揮することができる。さらに、第3変形例は、中心領域CPに溜まる気体の量を少なくすることができるため、ポンプの能力低下を抑制することができる。
【0067】
図9は、本発明の実施形態に係るポンプヘッド部の第4変形例の概略を示す断面図である。第4変形例は、前述した実施形態と同様であるが、第1開口部10、10aを複数設けた点が異なる。第4変形例の説明では、前述した実施形態と同様の構成についての説明は原則として省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0068】
ポンプヘッド6Dは、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する部位65Aに、第1開口部10および第1開口部10aが開口されている。第1開口部10および第1開口部10aは、吸込みカバー61の吸込口13側であって、インペラー5の複数の羽根51と対向する平面61aに開口している。
【0069】
また、ポンプヘッド6Dは、中心線CLと直交する方向に存在する部位65Bに、第2開口部11が開口されている。具体的には、中心線CLと直交する方向であって、第2側面8bに、第2開口部11が開口されている。すなわち、本変形例において、第2側面8bは、中心線CLと直交する方向に存在するポンプヘッド6Dの部位65Bに相当する。
【0070】
第1開口部10の中心C1は、中心線CLを中心とする直径D1の円周上に形成されている。また、第1開口部10aの中心C5は、中心線CLを中心とする直径D4の円周上に形成される。そして、第1開口部10は、インペラー5の中心領域CPの近くに開口されている。第2開口部11は、中心線CLと直交する向きに開口されており、第2開口部11の中心C2は、第2端面7bから距離Rの位置に形成されている。また、第2開口部11には、ねじ部31が形成されている。
【0071】
吸込みカバー61には、排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iが形成されている。排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iは、延在する方向と直交する断面が円形となる。吸込みカバー61は、排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iが繋がって通路12となる。排気穴12aは、第1開口部10から第2端面7bに向かって延在する、長さL1、直径d1の穴である。排気穴12bは、第2開口部11から吸込口13に向かって延在する長さL2、直径d1の穴である。排気穴12iは、第1開口部10aから第2端面7bに向かって延在する、長さL1、直径d1の穴である。排気穴12aの第1開口部10とは反対側の端部と、排気穴12bの第2開口部11とは反対側の端部とが、吸込みカバー61内で、角度α1で接続している。また、排気穴12iの第1開口部10aとは反対側の端部と排気穴12bとが、吸込みカバー61内で、角度α1で接続している。これにより、排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iとは、繋がった通路12となり、凹部62aに露出した第1開口部10および第1開口部10aと、第2側面8bに露出した第2開口部11とが繋がる。
【0072】
排気穴12aおよび排気穴12iの長さL1は、平面61aから第2端面7bまでの長さLHよりも短い。排気穴12bの長さL2は、第2側面8bから内面61bまでの長さLWよりも短い。なお、本実施形態において、排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iの直径d1は同一の大きさであるがこれに限定されず、互いに異なる直径であってもよい。さらに、角度α1は90°で接続されているがこれに限定されず、例えば、鋭角または鈍角であってもよい。
【0073】
ポンプヘッド6Dに第1開口部10、第1開口部10aおよび排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iを形成したことによって、遠心式ポンプ1は、インペラー5の中心領域CPに溜まる気体をポンプ室9から排気穴12a、排気穴12bおよび排気穴12iを介してポンプヘッド6Dの外部へ排出する。そして、第2開口部11から排出された気泡が、再び吸込口13から入ることを抑制することができる。その結果、第4変形例に係る遠心式ポンプ1は、吸込み不良および吐出不良を抑制し、安定して能力を発揮することができる。また、第4変形例は、第1開口部を1つのみ開口した場合に比べて、気泡の排出量を多くすることができる。その結果、第4変形例は、中心領域CPに溜まる気体の量を少なくすることができるため、ポンプの能力低下をより好適に抑制することができる。また、第4変形例は、気泡が吸込口側からのみ排出される場合と比較すると、水面へ浮上する気泡の量が多くなる。したがって、第4変形例は、液中に滞在する気泡の量を少なくすることができるため、液中に溶存する気体の量を抑制することができる。
【実施例】
【0074】
本発明の遠心式ポンプの性能を評価するために、第1の性能試験および第2の性能試験としてエアー注入試験を行った。
図10は、本発明に係る遠心式ポンプの第1および第2の性能試験を実施した際の設備の外観を示している。
図10に示すように、遠心式ポンプ1Aの性能試験は、アクリル製の水槽タンク24内に溜めた流体(清水)25中に遠心式ポンプ1Aのポンプヘッド部6Eを沈めて、水槽タンク24内で流体25を循環させて、遠心式ポンプ1A内に強制的にエア(空気)を注入することによって、遠心式ポンプ1Aの能力低下を計測することによって行った。遠心式ポンプ1Aは、吐出量が250L/min、全揚程が23m、回転速度2900min
―1および電動機出力が3.7kWの性能を有する。また、水槽タンク24は、タンク径Dbが780mm、タンクの高さHbが470mmである。さらに、エア(空気)は、エアー量を調節できるエアーコンプレッサ(図示無し)にホースを接続して、水中から遠心式ポンプ1Aへ侵入させた。
【0075】
水槽タンク24と遠心式ポンプ1Aとの位置関係は、タンクの底から液面までの高さh1が370mm、ポンプヘッド6Eの第2端面7bから液面までの高さh2が170mm、液面からタンクの上端までの高さh3が100mm、タンクの底からポンプヘッド6Eまでの高さh4が200mm、ポンプヘッド6Eの第2端面7bからタンクの上端までの高さh5が270mmとなっている。また、流体25の循環は、遠心式ポンプ1Aの接続部材18に配管26を接続して再び水槽タンク24内に戻すことによって行った。なお、配管26には、ポンプの吐出圧を計測するために圧力計27を取付け、さらに、ポンプの流量を調節するためにバルブ28を取付けた。また、配管26を流体25に戻す際は、極力ポンプ性能に影響が出ないように、配管26の戻り口を吸込口から離して、循環の影響によるエアーの侵入を極力排除した。
【0076】
第1の性能試験において使用した吸込みカバー61の形状および構造は、
図6で示した吸込みカバー61と同様である。したがって、説明は省略する。なお、吸込みカバー61において、第1開口部10から第2開口部11へ気泡が排出される通路は4本であり、第1開口部10から第2排出口70へ気泡が排出される通路は4本である。第1開口部10の中心C1の直径D1は90mm、通路12の径d1は11mmである。また、インペラー5の直径Dは166mm、インペラー5の羽根51の始まり(中心線CL側の端を結んだ円)の直径Dsは70mmである。実施例1は、第2排出口70を閉塞し、第2開口部11のみから気泡を排出させた例である。実施例2は、第2開口部11と第2排出口70の両方から気泡を排出させた例である。比較例は、第2開口部11および第2排出口70を閉じた例である。なお、実施例1、実施例2および比較例を実施するにあたり、第2開口部11および第2排出口70の閉塞は、プラグ30をねじ部31にねじ込むことによって対応した。
【0077】
エアー注入試験は、遠心式ポンプ1Aを50Hzで運転させて、バルブ28で流量が50L/minとなるように調節した後、バルブ28を固定し、インバータにて30Hzから50Hzまで5Hz間隔でモータの回転数を調節して、エアー流量計を介してエアーコンプレッサにてエアーを注入させることで行った。その結果を
図11に示す。図中の吐出圧(m)は、エアーを注入させる前と最大エアー注入量(L/min)を注入した後を示している。なお、吐出圧(m)は、圧力計27の読みを試験時に使用した清水の比重で除してメートル換算した数値である。
【0078】
第1の性能試験では、周波数(回転速度)を基準として遠心式ポンプ1Aを運転している為、通路の有無によって吐出圧(m)に変化が生じる。そこで、本発明の遠心式ポンプの性能評価は、最大エアー注入量(L/min)に対して、吐出圧(m)の低下を調査して評価した。すなわち、最大エアー注入量(L/min)が多く、かつ吐出圧(m)の低下が小さい程、効果があり、吐出圧(m)の低下が1.0(m)以下であれば効果があることを示している。本発明の実施形態である実施例1および実施例2では、最大エアー注入量(L/min)が最も多い10.0(L/min)であっても、吐出圧(m)の低下は、1.0(m)以下であった。一方、第2開口部を全て塞いだ比較例では、最大エアー注入量(L/min)が0.4(L/min)にもかかわらず、吐出圧(m)の低下が1.0(m)を超えている例がある。したがって、比較例に比して、実施例1および実施例2は、効果があることが分かる。
【0079】
また、実施例1では、第2開口部11から気泡が排出された際、液面に上昇していく様子が目視で確認できた。実施例2では、第2排出口70から気泡が排出された際、液面に上昇していく様子と、吸込口13から吸込まれる様子が目視で確認できた。すなわち、実施例1および実施例2は、中心線CLと直交する向きに気泡が排出されており、気泡が水槽内を浮上するため、吸込口13からの吸込みおよび溶存する気体の量を抑制している。そのため、吸込み不良が抑制され、ポンプの能力を安定して発揮することが出来た。比較例では、第2開口部11が全て塞がれているため、気泡の一部が吐出口14から排出されている。また、実施例1は、比較例に比べて、エアーを約10倍注入させても、ポンプの能力低下が抑制されていることが分かる。なお、比較例は、最大エアー注入量(L/min)が0.8(L/min)を超えると、吐出圧(m)が大きく低下してしまう。
【0080】
次に、第2の性能試験について説明する。第2の性能試験は、吐出量が100L/min、全揚程が10m、回転速度2900min
―1および電動機出力が3.7kWの性能を有する遠心式ポンプにて、上述したエアー注入試験を行った。その結果を
図13に示す。なお、エアー注入試験を行うにあたり、水槽タンクの大きさ、水槽タンクと遠心式ポンプの配置、配管の接続方法については上述した
図10に示した例と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
図12は、第2の性能試験において使用した、ポンプヘッド部の概略を示すポンプ幅方向の半分の断面を示す断面図である。
図12に示すように、ポンプヘッド6Fは、ケーシング600および吸込みカバー610を組み合わせて形成されている。ケーシング600には、第2開口部11bおよび排気穴12dが形成されている。吸込みカバー610には、第1開口部10、第2開口部11、第2排出口70、排気穴12b、排気穴12cおよび排気穴12eが形成されている。なお、排気穴12b、排気穴12c、排気穴12dおよび排気穴12eの直径はともにd1である。そして、
図12に示すように、第2開口部11bには、配管17aとL型配管16aを取付け、L型配管16aの排出口29から大気中に気泡を排出させている。第2排出口70の閉塞は、プラグ30をねじ込むことによって対応した。なお、第1開口部10は、平面61aの4箇所に形成されており、軸3の中心線CLを中心とした直径D1の円周上に、90°の間隔で形成されている。排気穴12b、排気穴12c、排気穴12dおよび排気穴12eは、それぞれ4本ずつ形成されている。吸込みカバー610において、第1開口部10から第2開口部11へ気泡が排出される通路12は4本であり、第1開口部10から第2開口部11bを介して排出口29へ排出される通路12は4本である。また第1開口部10から第2排出口70へ気泡が排出される通路12は4本である。第1開口部10の中心C1の直径D1は90mm、通路の径d1は11mmである。また、インペラー5の直径Dは135mm、インペラー5の羽根51の始まり(中心線CL側の端を結んだ円)の直径Dsは70mmである。
【0082】
実施例1は、L型配管16aの排出口29のみから気泡を排出させる例である。実施例2は、第2開口部11のみから気泡を排出させる例である。比較例は、第2開口部11、排出口29および第2排出口70を閉じた例である。従来例は、第2排出口70のみ開口した例である。なお、従来例、比較例、実施例1および実施例2を実施するにあたり、第2開口部11、排出口29および第2排出口70の閉塞は、プラグ30を取付けることによって対応した。
【0083】
第2の性能試験におけるエアー注入試験は、第1の性能試験におけるエアー注入試験と同様、遠心式ポンプ1Aを50Hzで運転させて、バルブ28で流量が50L/minとなるように調節した後、バルブ28を固定し、インバータにて30Hzから50Hzまで5Hz間隔でモータの回転数を調節して、エアー流量計を介してエアーコンプレッサにてエアーを注入させることで行った。なお、吐出圧(m)の計測も第1の性能試験で計測した方法と同様である。その結果を
図13に示す。
【0084】
第2の性能試験においても第1の性能試験と同様に、周波数(回転速度)を基準として遠心式ポンプ1Aを運転している為、通路の有無によって吐出圧(m)に変化が生じる。そこで、第2の性能試験においても第1の性能試験と同様に遠心式ポンプの性能評価は、最大エアー注入量(L/min)に対して、吐出圧(m)の低下を調査して評価した。すなわち、最大エアー注入量(L/min)が多く、かつ吐出圧(m)の低下が小さい程、効果があり、吐出圧(m)の低下が1.0(m)以下であれば効果があることを示している。本発明の実施形態である実施例1および実施例2では、最大エアー注入量(L/min)が最も多い13.0(L/min)であっても、吐出圧(m)の低下は、1.0(m)以下であった。
【0085】
また、実施例1では、排出口29から気泡が液体と排出される様子が目視で確認できた。実施例2では、第2開口部11から気泡が排出された際、液面に上昇していく様子が目視で確認できた。比較例では、排出口29、第2開口部11および第2排出口70が全て塞がれているため、気泡の一部が吐出口から排出されている。実施例1、実施例2および比較例の結果を比較すると、比較例の結果よりも実施例1および実施例2の結果が良好であることが分かる。また、実施例1は、比較例に比べてエアーを約2倍注入してもポンプの能力低下が抑制されていることが分かる。さらに、実施例1は従来例に比べて、排出された気泡が再び吸込口から流入されることが抑制されていた。また、溶存する気体の量は、水面へ浮上して大気へ放出されているため低減されている。その結果、吸込み不良が抑制され、ポンプの能力を安定して発揮することが出来た。なお、比較例は、最大エアー注入量(L/min)が3.0(L/min)を超えると、吐出圧(m)が大きく低下してしまう。