(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物は、耐衝撃性および耐熱性が実用上で不十分であるとともに、耐加水分解性が劣るという点で必ずしも十分なものではない。また、特許文献2に記載の樹脂組成物は、耐熱性が劣るという点で必ずしも十分なものではない。このように、脂肪族ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物で、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、難燃性および流動性の全てを満足できるものはなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、脂肪族ポリエステル樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、難燃性および流動性に優れ、良好な外観を有する熱可塑性樹脂組成物、並びにそれを用いた成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のような熱可塑性樹脂組成物および成形品を提供するものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A1)
芳香族ポリカーボネート樹脂を40質量%以上100質量%以下と、(A2)熱可塑性樹脂を0質量%以上60質量%以下とからなる(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂100質量部に対して、(B)ポリヒドロキシアルカノエート
(ポリ乳酸樹脂は除く)3質量部以上100質量部以下を含む
樹脂成分と、(C)リン系難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、相溶化剤、および着色剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤成分と、からなり、前記(A2)熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂およびスチレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂中の前記(A1)
芳香族ポリカーボネート樹脂が、50質量%以上90質量%以下であり、前記(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂中の前記(A2)熱可塑性樹脂が、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂中の前記(A1)
芳香族ポリカーボネート樹脂が、60質量%以上80質量%以下であり、前記(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂中の前記(A2)熱可塑性樹脂が、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい
。
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記(B)ポリヒドロキシアルカノエート
(ポリ乳酸樹脂は除く)が、前記(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、(C)リン系難燃剤をさらに含み、前記(C)リン系難燃剤が、前記(A)
芳香族ポリカーボネート含有樹脂および前記(B)ポリヒドロキシアルカノエート
(ポリ乳酸樹脂は除く)の合計100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、前記(B)ポリヒドロキシアルカノエート
(ポリ乳酸樹脂は除く)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)であることが好ましい。
本発明の成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脂肪族ポリエステル樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、難燃性および流動性に優れ、良好な外観を有する熱可塑性樹脂組成物、並びにそれを用いた成形品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、(A1)ポリカーボネート樹脂を40質量%以上100質量%以下と、(A2)熱可塑性樹脂を0質量%以上60質量%以下とからなる(A)ポリカーボネート含有樹脂100質量部に対して、(B)ポリヒドロキシアルカノエート3質量%以上100質量%以下を含むものである。以下、詳細に説明する。
【0011】
[(A)ポリカーボネート含有樹脂]
本発明に用いる(A)ポリカーボネート含有樹脂は、(A1)ポリカーボネート樹脂を含む樹脂である。前記(A)ポリカーボネート含有樹脂としては、(A1)ポリカーボネート樹脂を単独で用いてもよいが、ポリカーボネート樹脂が有する優れた耐衝撃性および耐熱性などを本組成物の使用目的に応じて調整できるという観点から、(A1)ポリカーボネート樹脂の他に、(A2)その他の熱可塑性樹脂を混合した混合樹脂を用いてもよい。
前記(A)ポリカーボネート含有樹脂は、前記(A1)ポリカーボネート樹脂を40質量%以上100質量%以下含むことが必要であり、この場合、前記(A2)熱可塑性樹脂を0質量%以上60質量%以下含む。このような範囲内であれば、ポリカーボネート樹脂の機械的強度(耐衝撃性、耐熱性など)を維持できる。また、耐衝撃性、耐熱性などのバランスの観点から、前記(A)ポリカーボネート含有樹脂中の前記(A1)ポリカーボネート樹脂は、50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。一方で、前記(A)ポリカーボネート含有樹脂中の前記(A2)熱可塑性樹脂は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0012】
[(A1)ポリカーボネート樹脂]
本発明に用いる(A1)ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であっても脂肪族ポリカーボネート樹脂であってもよいが、耐衝撃性と耐熱性の観点から芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることがより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、他の熱可塑性樹脂に比べて、耐熱性、難燃性および耐衝撃性が良好であるため本組成物の主成分とすることができる。
【0013】
二価フェノールとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕などのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどを挙げられる。これらの中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、ハロホーメート、および炭酸エステルなどが挙げられ、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートなどが挙げられる。これらのカーボネート前駆体は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂の製造においては、必要に応じて末端停止剤を用いることができ、例えば、一価フェノール化合物が挙げられる。
一価フェノール化合物としては、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、およびp−tert−アミルフェノールなどが挙げられる。これらの一価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよい。分岐構造を導入するためには分岐剤を用いればよく、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、およびイサチンビス(o−クレゾール)などの官能基を三個以上有する化合物などを用いることができる。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、本組成物の物性面から、10,000〜40,000であることが好ましく、13,000〜30,000であることがより好ましい。
【0016】
[(A2)熱可塑性樹脂]
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、スチレン系樹脂などを用いることが好ましい。
【0017】
前記スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン、および、これらの構造単位を含む共重合体などが挙げられる。
これらの構造単位を含む共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、スチレン−(1−ブテン)−スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン−(エチレン/1−ブテン)−スチレントリブロック共重合体(SEBS)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS)、および、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)などが挙げられる。
これらスチレン系樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
前記ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸と1,3−ブロパンジオール或いは1,4−ブロパンジオールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸との共重合体、ポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸を含む共重合体などが挙げられる。これらポリエステル樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合体、ジアミンと二塩基酸との重縮合体、およびω−アミノ酸の重縮合体などが挙げられる。これらポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の単独重合体、および、これらの共重合体等が挙げられ、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。これらポリオレフィン樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
[(B)ポリヒドロキシアルカノエート]
本発明に用いる(B)ポリヒドロキシアルカノエート(以下、「PHA」ともいう。)は、[−CHR−CH
2CO−O−](ただし、式中RはC
nH
2n+1で表されるアルキル基で、nは1〜15の整数)、[−CHR’−CH
2−CH
2CO−O−](ただし、式中R’はH又はC
nH
2n+1で表されるアルキル基で、nは1〜15の整数)で示されるヒドロキシアルカン酸の繰り返し単位を有する重合体である。
PHAとしては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、「PHB」ともいう)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)(以下、「PHBV」ともいう。)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、「PHBH」ともいう。)、およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)などが挙げられる。これらの中でも、PHBHがより好ましい。また、PHAとしては、環境への負荷の観点から、微生物から生産されるものを用いることが好ましい。また、PHAの中でも、PHBHが特に好ましい。
【0022】
PHAを生産する微生物としては、3−ヒドロキシアルカノエート重合体類生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、PHB生産菌としては、1925年に発見されたバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)が最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator、旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus))、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)などの天然微生物が知られており、これらの微生物ではPHBが菌体内に蓄積される。
【0023】
また、PHBとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体生産菌としては、PHBVおよびPHBH生産菌であるアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)生産菌であるカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator、旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus))などが知られている。特に、PHBHに関し、PHBHの生産性を上げるために、3−ヒドロキシアルカノエート重合体合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファスAC32株(Alcaligenes eutrophus AC32 FERM BP−6038)、(T.Fukui、Y.Doi,J.Bacteriol.,179,4821(1997))などがより好ましい。これらの微生物を適切な条件で培養することで、菌体内にPHBV、PHBHなどが蓄積される。
【0024】
PHAの質量平均分子量は、機械的強度と流動性とのバランスの観点から、30万以上300万以下が好ましく、40万以上250万以下がより好ましく、50万以上200万以下が特に好ましい。なお、前記質量平均分子量は、クロロホルム溶離液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。
【0025】
PHAの配合量は、前記(A)成分100質量部に対して、3質量部以上100質量部以下であることが必要である。配合量が3質量部未満では、本組成物の流動性が不十分となり、他方、100質量部を超えると、本組成物の耐熱性および難燃性が不十分となる。また、PHAの配合量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、5質量部以上45質量部以下であることがより好ましい。
【0026】
[(C)リン系難燃剤]
本組成物には、難燃性をより向上させるため、さらに、(C)リン系難燃剤を配合することが好ましい。本組成物に(C)リン系難燃剤を添加すると、耐熱性や耐加水分解性が低下する傾向にある。しかし、前記(A)成分および前記(B)成分を含む本組成物は、耐熱性や耐加水分解性が優れているため、(C)リン系難燃剤を添加しても、耐熱性や耐加水分解性を確保でき、難燃性の更なる向上を図ることができる。
【0027】
本発明に用いる(C)リン系難燃剤は、ハロゲンを含まないリン系難燃剤が好ましい。ハロゲンを含むと、成形時の有害ガスの発生、金型腐食の恐れや成形品の焼却時に有害物質を排出する恐れがあり、環境汚染、安全性の観点から好ましくない。
ハロゲンを含まないリン系難燃剤としては、ハロゲン非含有の有機リン系難燃剤がある。この有機リン系難燃剤としては、リン原子を有し、ハロゲンを含まない有機化合物であれば特に制限なく用いることができる。これらの中でも、リン原子に直接結合するエステル性酸素原子を1つ以上有するリン酸エステル化合物が好ましく用いられる。このリン酸エステル化合物以外のハロゲン非含有のリン系難燃剤としては、赤リンなどがある。
【0028】
リン系難燃剤の配合量は、前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、8質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。配合量が前記下限未満では、難燃性の向上効果が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、耐熱性および耐加水分解性が低下する傾向にある。
【0029】
[添加剤成分]
本組成物は、前記(A)成分〜前記(C)成分とともに、添加剤成分を必要により添加含有させることができる。例えば、フェノール系やリン系やイオウ系の酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)などが挙げられる。添加剤成分の配合量は、本組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
【0030】
[混練・成形]
本組成物は、前記(A)成分および前記(B)成分を前記割合で、さらに必要に応じて前記(C)成分や前記添加剤成分を配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、およびコニーダなどを用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類により通常200℃以上350℃以下の範囲で適宜選択されるが、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることから、240℃以上300℃以下の範囲であることが好ましい。
本組成物は、上記の溶融混練物、或いは、得られたペレットを原料として、中空成形法、射出成形法、押出成形法、真空成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、カレンダー成形法、回転成形法などにより成形品とすることができる。
【0031】
[成形品]
本発明の成形品は、前述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。本発明の成形品は、射出成形品(射出圧縮を含む)であることが好ましい。
本発明の成形品は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、家庭電化製品、電気・電子機器のハウジングや各種部品などに用いられる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A1)成分)
ポリカーボネート樹脂:芳香族ポリカーボネート(粘度平均分子量:17,800)、出光興産社製、商品名「タフロンA1700」
((A2)成分)
熱可塑性樹脂1:非晶質スチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、日本エイアンドエル社製、商品名「AT−05」
熱可塑性樹脂2:ポリプロピレン、出光興産社製、商品名「IDEMITSU PP:J966HP」
熱可塑性樹脂3:ポリ乳酸、ネイチャーワークス社製、商品名「Nature works 3001D」
((B)成分)
PHBH1:ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(共重合体中の3−ヒドロキシヘキサノエートのユニット比率:7mol%、質量平均分子量:60万)、カネカ社製、商品名「アオニレックス」
PHBH2:ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(共重合体中の3−ヒドロキシヘキサノエートのユニット比率:11mol%、質量平均分子量:70万)、カネカ社製、商品名「アオニレックス」
((C)成分)
リン系難燃剤:ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、大八化学工業社製、商品名「PX−200」
(他の成分)
PBS:ポリブチレンサクシネート、三菱化学株式会社製、商品名「GSPla」
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン、商品名「テフロン」
【0033】
[実施例1〜10および比較例1〜6]
下記表1に示す割合で各成分を配合し、押出機(機種名:VS40、田辺プラスチック機械株式会社製)に供給し、240℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例および比較例において、フェノール系酸化防止剤としてイルガノックス1076(BASF社製)0.2質量部およびリン系酸化防止剤としてアデカスタブ2112(株式会社ADEKA製)0.1質量部をそれぞれ配合した。得られたペレットを、120℃で12時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械株式会社製、型式:IS100N)シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形して試験片を得た。
【0034】
[樹脂組成物の性能評価]
各例で得られた樹脂組成物の性能試験は、以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)メルトインデックス(MI):流動性
測定樹脂温度240℃、荷重21.18Nにおいて、ASTM規格D−1238に準拠し測定した。
(2)アイゾット衝撃強度(IZOD):耐衝撃性
厚さ1/8インチの試験片を用いて、ASTM規格D−256に準拠し、測定温度23℃にて測定した(単位:kJ/m
2)。
(3)熱変形温度(荷重たわみ温度):耐熱性
ASTM規格D−648に準拠し、荷重1.8MPaで測定した。熱変形温度は、耐熱性の目安を示すものである。
(4)酸素指数(LOI):難燃性
ASTM規格D−2863に準拠し測定した。酸素指数とは、試験片が燃焼を維持するのに必要な最低酸素濃度を空気中の容量%で示した値である。
(5)難燃性(UL94)
難燃性UL94規格に準拠し、厚み3mmの試料を評価した。
(6)耐湿熱性
耐湿熱性は、温度60℃、湿度80%の環境下に300時間、平板状試験片(80mm×80mm×1mm)を放置した後、目視により表面変形の有無を観察して評価した。そして、以下の基準に従って、耐湿熱性を判定した。
○:表面の変形が認められない。
×:表面のふくれ、変形が認められる。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜10)は、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、難燃性および流動性に優れることが確認された。また、(C)成分を更に含有する熱可塑性樹脂組成物(実施例8〜10)を用いた場合には、耐熱性および耐加水分解性を確保しつつ、難燃性を向上できることが確認された。
これに対し、(A1)成分からなる熱可塑性樹脂組成物(比較例1)を用いた場合には、流動性が不十分であることが分かった。また、この熱可塑性樹脂組成物は、生分解性を有さないものである。さらに、(B)成分を過剰に含有する熱可塑性樹脂組成物(比較例2)を用いた場合には、耐加水分解性や難燃性が不十分であることが分かった。また、(B)成分の代わりにポリブチレンサクシネートを含有する樹脂組成物(比較例3)を用いた場合には、流動性が不十分であることが分かった。
また、熱可塑性樹脂組成物の他の成分を調整しても、(B)成分を含有しない場合(比較例4〜6)には、耐衝撃性、耐熱性、耐加水分解性、難燃性および流動性の全てを満たすことができないことが分かった。