特許第6088937号(P6088937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEテクノス株式会社の特許一覧

特許6088937ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法
<>
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000002
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000003
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000004
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000005
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000006
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000007
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000008
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000009
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000010
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000011
  • 特許6088937-ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088937
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/10 20140101AFI20170220BHJP
【FI】
   H02S20/10 N
   H02S20/10 Q
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-168161(P2013-168161)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-37116(P2015-37116A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】511104657
【氏名又は名称】JFEテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 高志
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−080770(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/140564(WO,A1)
【文献】 特開2004−235188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して設置される複数本の主支柱と該複数本の主支柱間に懸架されるケーブルとを具備する吊構造部と、前記ケーブルに架設される太陽光発電パネルと、を備えるケーブル懸架型空中太陽光発電装置を複数個、前記ケーブルの長手方向に対して非平行な方向に沿って並列に配置することにより構成されるケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、
前記非平行な方向に移動可能な作業サイトを用意する第一の工程と、
前記ケーブルと前記太陽光発電パネルとを前記作業サイトに供給する第二の工程と、
前記作業サイトにおいて前記太陽光発電パネルを前記ケーブルに順次取り付ける第三の工程と、
前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、前記作業サイトから送り出す第四の工程と、
前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、予め設置されている複数本の主支柱間に懸架する第五の工程と、
前記作業サイトを前記非平行な方向に移動させる第六の工程と、
を有しており、
前記第六の工程を実行した後、前記第三の工程、前記第四の工程及び前記第五の工程を再度実行する、
ことを特徴とするケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法。
【請求項2】
前記第三の工程は、前記ケーブルを前記作業サイトから送り出す過程で、そのケーブルに前記太陽光発電パネルを取り付ける工程である、
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法。
【請求項3】
前記ケーブル懸架型空中太陽光発電設備は、前記ケーブル懸架型空中太陽光発電装置を複数個、前記ケーブルの長手方向に沿って直列に配置するように構成されており、
前記第五の工程は、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、前記ケーブルの長手方向に沿って直列に配置するように予め設置されている前記複数本の主支柱間に懸架することにより、複数個の前記ケーブル懸架型空中太陽光発電装置を組み立てる工程である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法。
【請求項4】
前記吊構造部は、前記複数本の主支柱間に各支柱から離隔して配置し、前記ケーブルが懸架される中間支柱を具備しており、
前記第五の工程は、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、予め設置されている前記複数本の主支柱間及び前記中間支柱に懸架する工程である、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載のケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法。
【請求項5】
前記中間支柱は、その中間支柱に対して姿勢の変更が可能に構成されているサドル部を備えており、
前記第五の工程は、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、予め設置されている前記中間支柱が備えるサドル部に懸架する工程である、ことを特徴とする請求項4に記載のケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法。
【請求項6】
前記作業サイトは、前記ケーブルの長手方向に移動可能に構成されており、
前記作業サイトを前記ケーブルの長手方向に移動させる第七の工程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載のケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブル懸架型空中太陽光発電装置を複数個、ケーブルの長手方向に対して非平行な方向に沿って備えるケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル懸架型空中太陽光発電装置を複数個、ケーブルの長手方向に沿って及び/又はケーブルの長手方向に対して非平行な方向に沿って備えるケーブル懸架型空中太陽光発電設備は、よく知られている(特許文献1から6参照)。
【0003】
ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の構造単位であるケーブル懸架型空中太陽光発電装置は、互いに離隔して配置される複数本の主支柱と該複数本の主支柱間に懸架されるケーブルとを具備する吊構造部と、前記ケーブルに架設される太陽光発電パネルとを備える装置であるので、ケーブル懸架型空中太陽光発電設備を実際に組み立てる際には、たとえば、(1)予め設置しておいた複数本の主支柱に、予め太陽光発電パネルを取り付けておいたケーブルを懸架するという一連の作業を繰り返す、(2)予め設置しておいた複数本の主支柱にケーブルを懸架し、引き続きそのケーブルに太陽光発電パネルを取り付けるという一連の作業を繰り返す、といった方法を選択することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第699119号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/140564号
【特許文献3】米国特許第4832001号明細書
【特許文献4】特開2012−60095号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第0373234号明細書
【特許文献6】カナダ特許出願公開第2004980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記(1)の方法では、太陽光発電パネルが取り付けられているケーブルをケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立作業現場まで輸送しなければならず、積荷が嵩張り、輸送コストも増加する。また、組立作業現場においては、少しずつ当該ケーブルを引き出して予め設置しておいた複数本の主支柱に懸架して行くという非能率的な作業を行わなければならない。
【0006】
また、上記(2)の方法では、太陽光発電パネルを既設のケーブルの所定位置に取り付けなければならない。このことは、ケーブルに取り付ける太陽光発電パネルの枚数が少ない場合には大きな問題にはならないが、多数の太陽光発電パネルをケーブルに取り付ける場合や多数の吊構造部を組み立てる場合(より大型のケーブル懸架型空中太陽光発電設備を組み立てる場合を含む)には大きな問題となる。太陽光発電パネルを一枚一枚、既設のケーブルの所定位置に取り付けるという手間がかかる作業を繰り返し行うことになるからである。
【0007】
この発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ケーブル懸架型空中太陽光発電設備をより能率的に組み立てることが可能な技術、特にその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、この発明の第1の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法は、互いに離隔して設置される複数本の主支柱と該複数本の主支柱間に懸架されるケーブルとを具備する吊構造部と、前記ケーブルに架設される太陽光発電パネルと、を備えるケーブル懸架型空中太陽光発電装置を複数個、前記ケーブルの長手方向に対して非平行な方向に沿って並列に配置することにより構成されるケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、前記非平行な方向に移動可能な作業サイトを用意する第一の工程と、前記ケーブルと前記太陽光発電パネルとを前記作業サイトに供給する第二の工程と、前記作業サイトにおいて前記太陽光発電パネルを前記ケーブルに順次取り付ける第三の工程と、前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、前記作業サイトから送り出す第四の工程と、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、予め設置されている複数本の主支柱間に懸架する第五の工程と、前記作業サイトを前記非平行な方向に移動させる第六の工程と、を有しており、前記第六の工程を実行した後、前記第三の工程、前記第四の工程及び前記第五の工程を再度実行する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明の第2の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法は、第1の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、前記第三の工程は、前記ケーブルを前記作業サイトから送り出す過程で、そのケーブルに前記太陽光発電パネルを取り付ける工程である、ことを特徴とする。
【0010】
この発明の第3の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法は、第1又は第2の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、前記ケーブル懸架型空中太陽光発電設備は、前記ケーブル懸架型空中太陽光発電装置を複数個、前記ケーブルの長手方向に沿って直列に配置するように構成されており、前記第五の工程は、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、前記ケーブルの長手方向に沿って直列に配置するように予め設置されている前記複数本の主支柱間に懸架することにより、複数個の前記ケーブル懸架型空中太陽光発電装置を組み立てる工程である、ことを特徴とする。
【0011】
この発明の第4の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法は、第1から第3の何れか1つの形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、前記吊構造部は、前記複数本の主支柱間に各主支柱から離隔して配置し、前記ケーブルが懸架される中間支柱を具備しており、前記第五の工程は、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、予め設置されている前記複数本の主支柱間及び前記中間支柱に懸架する工程である、ことを特徴とする。
【0012】
この発明の第5の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法は、第4の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、前記中間支柱は、その中間支柱に対して姿勢の変更が可能に構成されているサドル部を備えており、前記第五の工程は、前記作業サイトから送り出された前記太陽光発電パネルが取り付けられた前記ケーブルを、予め設置されている前記中間支柱が備えるサドル部に懸架する工程である、ことを特徴とする。
【0013】
この発明の第6の形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法は、第1から第5の何れか1つの形態に係るケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法であって、前記作業サイトは、前記ケーブルの長手方向に移動可能に構成されており、前記作業サイトを前記長手方向に移動させる第七の工程をさらに有する、ことを特徴とする。
【0014】
なお、以下において、吊構造部において複数本の主支柱間に懸架されるケーブルの長手方向を、X方向という場合があり、X方向に対して非平行な方向を、Y方向という場合がある。
【発明の効果】
【0015】
この発明(特に、この発明の第1の形態)においては、まず、ケーブルと太陽光発電パネルとを作業サイトに供給する。このことは、ケーブル及び太陽光発電パネルを別々にケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立作業現場まで輸送することができることを意味している。それ故、ケーブル及び太陽光発電パネルを一緒に組立作業現場まで輸送する場合であっても、太陽光発電パネルが取り付けられているケーブルを組立作業現場まで輸送する場合、つまり、上記(1)の方法の場合に比べて、積荷が嵩張らず、輸送コストの増加も避けることができる。
【0016】
また、作業サイトで太陽光発電パネルをケーブルに順次取り付けて、そのケーブルを予め設置されている複数本の主支柱に向けて又はX方向に送り出すので、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルの複数本の主支柱間への懸架作業を滞ることなく又は能率的に行うことができる。それ故、太陽光発電パネルを一枚一枚、既設のケーブルの所定位置に取り付ける場合、つまり、上記(2)の方法の場合に比べて、より少ない手間で懸架作業を行うことができる。
【0017】
しかも、Y方向に沿って作業サイトを移動させた後、作業サイトで太陽光発電パネルをケーブルに順次取り付けて、そのケーブルを予め設置されている別の複数本の主支柱に向けて又はX方向に送り出し、その別の複数本の支柱間へ懸架するという工程を再度実行するので、Y方向に沿って複数個、並列に配置する構造単位(ケーブル懸架型空中太陽光発電装置)の組立を滞ることなく又は能率的に行うことができる。
【0018】
総じて、この発明によれば、ケーブル懸架型空中太陽光発電設備をより能率的に組み立てることができる。この発明の効果は、ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立工期の短縮と組立コストの低減に資するものであり、ケーブルに取り付ける太陽光発電パネルの枚数が少ない場合は言うまでもなく、多数の太陽光発電パネルを取り付ける場合や多数の吊構造部を組み立てる場合(より大型のケーブル懸架型空中太陽光発電設備を組み立てる場合を含む)において、特に有意義であり、有益である。
【0019】
この発明の第2の形態によれば、ケーブルを作業サイトから送り出す過程で、そのケーブルに太陽光発電パネルを順次取り付けるので、第三の工程と第四の工程とを切れ目のなく実行することができ、ひいてはケーブル懸架型空中太陽光発電設備をより効率的に組み立てることができる。
【0020】
この発明の第3の形態によれば、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルを、X方向に沿って直列に配置するように予め設置されているより多くの主支柱間に懸架することができるので、X方向に沿って複数個、直列に配置する構造単位(ケーブル懸架型空中太陽光発電装置)をより能率的に組み立てることができる。
【0021】
この発明の第4の形態によれば、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルを、X方向に沿って直列に配置するように予め設置されている複数本の主支柱間及び中間支柱に懸架することができるので、ケーブル懸架型空中太陽光発電装置のうち吊構造部が中間支柱を具備するものを、より能率的に組み立てることができる。
【0022】
特に、この第4の形態が奏する効果は、構造部が中間支柱を具備しているケーブル懸架型空中太陽光発電装置が複数個、X方向に沿って直列に配置するように構成されているケーブル懸架型空中太陽光発電設備を組み立てる場合において、その組立工期の短縮と組立コストの低減に資するものであり、特に有意義であり、有益である。
【0023】
この発明の第5の形態においては、中間支柱がサドル部を備えており、そのサドル部が中間支柱に対して姿勢の変更が可能に構成されているので、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルをサドル部に懸架する際、当該ケーブルを懸架し易くなるように、また、懸架後に当該ケーブルの懸架状態を適正にするために、サドル部の姿勢を調整することができる。それ故、この第5の形態によれば、たとえば、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルを中間支柱に仮懸架し、引き続きサドル部の姿勢を厳密に調整することで適正な懸架状態を実現することができる。
【0024】
総じて、この第5の形態によれば、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルの懸架作業をより能率的に行うことができ、ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立工期の短縮と組立コストの低減に資することができる。また、中間支柱における当該ケーブルの懸架状態の事後調整や保守を行うことが容易になる。
【0025】
この発明の第6の形態においては、作業サイトがX方向に移動可能に構成されているので、X方向に沿って複数個、直列に配置するケーブル懸架型空中太陽光発電装置の組立を滞ることなく又は能率的に行うことができる。
【0026】
作業サイトがY方向に移動可能に構成されていることを考え合わせると、この第6の形態によれば、X方向及びY方向に沿って複数個、換言すれば平面的に配置するケーブル懸架型空中太陽光発電装置の組立を滞ることなく又は能率的に行うことができる。
【0027】
なお、この発明において、(1)作業サイトとは、(a)ケーブルと太陽光発電パネルの供給を受けることでき、(b)太陽光発電パネルを前記ケーブルに順次取り付けることができ、(c)太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルを、予め設置されている複数本の主支柱間に向けて送り出すことができ、(d)少なくともY方向に移動する又は移動させることができる、作業空間を意味する。
【0028】
作業サイトは、少なくとも上記(a)、(b)及び(c)の作業を作業者が行うために必要な作業主面(作業台であれば床面に相当するもの)を必要的に備えており、少なくとも上記(a)、(b)及び(c)の何れかの作業を行う作業者を補助する機器(作業主面の昇降装置を含む)を備えていてもよい。作業主面は、上記(c)の作業がより容易になるように、主支柱や中間支柱が設置される基盤の表面位置よりも高い位置に設定される。
【0029】
作業サイトは、太陽光発電パネルが取り付けられたケーブルを懸架するために予め設置されている複数本の主支柱のうち最も作業サイトに近い位置にあるものと隣接又は近接する場所に配置させるのが好ましい。作業サイトとそれに最も近い位置にある主支柱との距離が離れ過ぎると、ケーブルの懸架作業を能率的に行うことが難しくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】地面に設置されたケーブル懸架型空中太陽光発電装置の概略側面図(紙面垂直のY方向から眺めた図)であり、(a)は、主支柱と中間支柱の高さが同じ場合であり、(b)は、中央に位置する中間支柱のみが主支柱の高さと同じ場合であり、(c)は、主支柱に比べて中間支柱の高さが低い場合である。
図2】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の概略平面図である。
図3】中間支柱を示す部分側面図である。
図4】中間支柱を示す部分正面図である。
図5】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の組立方法の説明図である。
図6】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の別の組立方法の説明図である。
図7】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の別の組立方法の説明図である。
図8】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の別の組立方法の説明図である。
図9】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の別の組立方法の説明図である。
図10】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の別の組立方法の説明図である。
図11】ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の別の組立方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、この発明の、ケーブル懸架型空中太陽光発電設備の組立方法の一実施態様を図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、地面に設置されたケーブル懸架型空中太陽光発電装置の概略側面図(紙面垂直のY方向から眺めた図)であり、(a)は、主支柱と中間支柱の高さが同じ場合であり、(b) は、中央に位置する中間支柱のみが主支柱の高さと同じ場合であり、(c)は、主支柱に比べて中間支柱の高さが低い場合である。図2は、図1に示すケーブル懸架型空中太陽光発電装置を示す概略平面図、図3は、中間支柱を示す部分側面図、図4は、中間支柱を示す部分正面図である。
【0033】
先ず、この発明における吊構造部、作業サイト、中間支柱及びサドル部について説明する。
【0034】
<吊構造部>
吊構造部は、互いに離隔して設置される複数本の主支柱Mと該複数本の主支柱M間に懸架されるケーブルCとを備えている(図1及び図2参照)。複数本のケーブルCに架設される複数枚の太陽光発電パネルP(図示せず)のそれぞれは、その長手方向がY方向になるように、また、そのパネル面がX方向とY方向により構成される平面(X−Y平面)と略平行になるように架設される。なお、図1及び図2に示すように、ケーブルCの両端は、主支柱Mを介してアンカー部材Aに固定されているが、ケーブルCを主支柱Mに直接固定してもよい。
【0035】
<作業サイト>
典型的な作業サイトSは、車輪と当該車輪の制動機構とを備える作業台である。制動機構を働かせない状態における作業台の移動は、駆動装置により車輪を回転させることによる自走であってもよく、人力による移動であってもよい。この作業台は、作業主面の昇降を可能にする昇降装置を備えていてもよい。作業主面を昇降させることができれば、作業者は、ケーブルC及び太陽光発電パネルPの受け入れ、ケーブルへの太陽光発電パネルPの取り付け、太陽光発電パネルPが取り付けられたケーブルCの送り出し等の各作業に好適な作業主面の高さを設定することができる(図5及び図6)。
【0036】
<中間支柱>
ケーブルCの撓みを支える中間支柱Iは、主支柱M間に設置され(図1及び図2参照)、図3の部分側面図及び図4の部分正面図に示すように、直管部材1とサドル部2とからなっている。中間支柱Iは、一本であっても、二本以上であってもよい。なお、図1に示すように、中間支柱Iの両側には、斜材が設けられているが、斜材は、必ずしも必要ない。
【0037】
<サドル部>
図3及び図4に示すように、サドル部2は、ケーブルCを固定することなく、その撓みを減じ、中間支柱Iからの脱落を防止するものであり、中間支柱Iを構成する直管部材1の上部に取り付けられている。すなわち、直管部材1の上端部には、板状又は円盤状の載台3が溶接などの手段により固定され、当該直管部材1と一体化している。載台3の上面には、凹部3aが形成され、サドル部2の下面に形成された突出部2aが凹部3aに嵌合している。サドル部2の上部には、X方向に延伸する溝2bが形成されており、張力が作用しているケーブルCがその溝2b内に収容される。このとき、当該溝2bの壁面によりケーブルCのY方向の動きが規制されるので、サドル部2、ひいては中間支柱Iの頂部からのケーブルCの脱落が防止される。突出部2aの高さは、当該凹み3aの深さと比べて、同じ又は若干大きいので、サドル部2の底面は、載台3の上面と隙間なく接触するか、若干の隙間を残すように配置される。この結果、サドル部2は、中間支柱Iを構成する直管部材1に対して姿勢の変更が可能になる。なお、主支柱Mの上端部にも同様なサドル部2が取り付けられている。
【0038】
サドル部2の材質は、SCW490、SS400、SM400Aなどから選択する。SS400であれば製作容易で経済的であり好ましい。太陽光発電パネルが比較的大型であり、溶接を要する箇所が多い場合には、SM400Aが好ましい。一本の中間支柱が支える重量がより大きくなる場合には、SCW490(鋳鋼品)を採用するのが好ましいケースもある。
【0039】
一本の中間支柱Iが備えるサドル部2は一つでも、二つ以上であってもよい。一つのサドル部2と接触するケーブルCは一本でも、二本以上であってもよい。一つのサドル部2を備える中間支柱Iは、一本でも、二本以上であってもよい。一本の中間支柱Iが複数本のケーブルCの撓みを支える場合には、当該複数本のケーブルCのそれぞれと接触する複数個のサドル部2をその中間支柱Iに設けてもよいし、当該複数本のケーブルCに共通の(又は当該複数本のケーブルCに同時に接触する)一つのサドル部2をその中間支柱Iに設けてもよく、当該複数本のケーブルCの一部のそれぞれに接触する一つ又は二つ以上のサドル部2と、残部に共通の(又は当該複数本のケーブルCに同時に接触する)一つ又は二つ以上のサドル部とを設けてもよい。
【0040】
ケーブル懸架型空中太陽光発電装置は、ケーブルCの軸(長手)方向(X方向)の主支柱M間の距離が短い場合には、中間支柱Iは不要であるが、当該距離が長い場合には、ケーブルCならびに当該ケーブルCに架設されたフレームF及び当該フレームFに取り付けられた太陽光発電パネルPの重量を支持するための中間支柱Iが必要になってくる。
【0041】
以下においては、X方向における中間支柱Iの本数は1以上であるものとして説明するが、この発明は、中間支柱Iがない場合を排除するものではない。
【0042】
図1および図2に示すように、ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[ij]は、X方向において離隔する一対の主支柱M(2i-1)jとM(2i-1)(j+1)との間ならびに当該一対の主支柱間に配置された中間支柱I(2i-1)jk、I(2i-1)j(k+1)、I(2i-1)j(k+2)に懸架された第一のケーブルCaと、X方向において離隔する別の一対の主支柱M(2i)jとM(2i)(j+1)との間ならびに当該一対の主支柱間に配置された中間支柱I(2i)jk、I(2i)j(k+1)、I(2i)j(k+2)に懸架された第二のケーブルCbとからなる一対のケーブルCと、当該一対のケーブルCに架設されたフレームFと、当該フレームFに取り付けられた太陽光発電パネルPとから構成される工作物W(Wa、Wb)を備える吊構造を備えている。なお、i、jともに1以上の整数であり、m,nをそれぞれの上限値とする。
【0043】
工作物W(Wa)を構成する第一のケーブルCaは、その両端が、アンカー部材A(2i-1)LとA(2i-1)Rにより地面Gに固定され、工作物W(Wb)を構成する第二のケーブルCbは、その両端が、アンカー部材A(2i)LとA(2i)Rにより地面Gに固定される。X方向において離隔する一対の主支柱間ならびに当該主支柱間に配置される中間支柱に懸架された一対のケーブル(第一のケーブルCaと第二のケーブルCb)Cには、張力が作用したままである。それ故、当該一対のケーブルCは、地面Gに接する位置から離れた位置に配置され、その結果、当該一対のケーブルCに架設されたフレームFに取り付けられた太陽発電パネルPは、空中に配置される。
【0044】
なお、図1及び図2において、中間支柱は、X方向の一対の主支柱間あたり三個(合計六個)描かれているが、X方向の一対の主支柱間あたり一個(合計二個)でも二個(合計四個)でも、四個(合計八個)以上であってもよい。
【0045】
また、図1(a)から(c)に示すように、柱の高さ(サドル部によるケーブル支承位置の高さ)は、(a)に示すように、主支柱と中間支柱とが同じであってもよく、(b)に示すように、X方向において主支柱間の中央に位置する中間支柱のみが主支柱の高さと同じであり、その他の中間支柱は主支柱より低くてもよく、(c)に示すように、主支柱に比べて中間支柱の高さが低くてもよい。無論、図1(a)から(c)以外の態様であってもよい。
【0046】
さらに、図2に示すケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[ij]の範囲には、アンカー部材(A(2i-1)LとA(2i-1)R、A(2i)LとA(2i)R)が含まれていない、当該範囲を定義する際には、アンカー部材を含めてもよい。
【0047】
図5は、ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の組立方法の説明図である。図5に基づく説明は、i、jのいずれか一方が1でない、より一般的な場合にも当てはまる。
【0048】
その組立方法の一例(第一例)は、次に掲げる工程を有する。
【0049】
<工程1> ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の設置予定場所にX方向において隣接する位置に、作業サイトSを設営する。
【0050】
<工程2> 複数本の主支柱M11、M12、M21、M22を設置する。
【0051】
<工程3> 作業サイトSに対して、ケーブルC、フレームF及び太陽光発電パネルPならびにその他の作業上必要な部材、工具等を供給する。
【0052】
<工程4> 作業サイトSにおいて、サイト内作業者(図示せず)が工作物Wを作成しながら、工作物Wを構成する第一のケーブルCaを主支柱M12の側から主支柱M11の側へ、第二のケーブルCbを主支柱M22の側から主支柱M21の側へと送り出す。これにより、工作物W(Wa、Wb)を、一対のケーブルCとともに、作業サイトSとは反対側に向かって送り出す。
【0053】
なお、工作物Wは、一対のケーブルC(Ca、Cb)にフレームFを架設し、そのフレームFに太陽光発電パネルPを取り付けることにより構成される。以下においては、第一のケーブルCaを基準に眺めた工作物Wを、Waと表記し、第一のケーブルCbを基準に眺めた工作物Wを、Wbと表記する。
【0054】
<工程5> 作業サイトSから送り出された一対のケーブルCを、主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に懸架する。必要に応じて、主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に中間支柱I1k、I2kを配置し、当該中間支柱に第一のケーブルCa及び第二のケーブルCbを懸架する。これらにより、工作物W(Wa、Wb)を主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に懸架する。
【0055】
<工程6> 次の(1)又は(2)の作業を行い、吊構造を構築する。
【0056】
(1)作業サイトS側(主支柱M12、M22がある側)においてアンカー部材A1R(図示せず)により第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2R(図示せず)により第二のケーブルCbの一端を固定し、作業サイトSの反対側(主支柱M11、M21がある側)において第一のケーブルCaと第二のケーブルCbを−X方向に引っ張る。これにより、一対のケーブルC(Ca、Cb)を、主支柱間、主支柱と中間支柱との間及び中間支柱間において地面Gから離れた位置に配置させ、当該一対のケーブルCに架設されたフレームFに取り付けられた太陽発電パネルPを、空中に配置させる。この張力が印加された状態を維持したままで、作業サイトSの反対側においてアンカー部材A1L(図示せず)により第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2L(図示せず)により第二のケーブルCbの一端を固定する。
【0057】
(2)作業サイトS側とは反対側においてアンカー部材A1Lにより第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2Lにより第二のケーブルCbの一端を固定し、作業サイトS側において第一のケーブルCaと第二のケーブルCbを+X方向に引っ張る。これにより、一対のケーブルC(Ca、Cb)を、主支柱間、主支柱と中間支柱との間及び中間支柱間において地面Gから離れた位置に配置させ、当該一対のケーブルCに架設されたフレームFに取り付けられた太陽発電パネルPを、空中に配置させる。この張力が印加された状態を維持したままで、作業サイトS側においてアンカー部材A1Rにより第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2Rにより第二のケーブルCbの一端を固定する。
【0058】
<工程7> 必要に応じて、主支柱間、主支柱と中間支柱との間及び中間支柱間における一対のケーブルCの垂れ下がり状態を調節して、主支柱と中間支柱が支える重量を適正にする。
【0059】
上記の第一例において、工程1と工程2とは、実行順序が逆であってもよく、同時に実行するようにしてもよい。
【0060】
工程1では、作業サイトSを主支柱M11、M21の側に設置してもよい。その場合、工程4は、工作物Wを構成する第一のケーブルCaを主支柱M11の側から主支柱M12の側へ、第二のケーブルCbを主支柱M21の側から主支柱M22の側へと送り出すことにより、主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に工作物W(Wa、Wb)を懸架する工程となる。また、工程6の記載内容は、(ア) 作業サイトS側が主支柱M11、M21がある側となり、アンカー部材A1Lが作業サイトS側にあるアンカー部材となるとともに、作業サイトSの反対側が主支柱M12、M22がある側となり、アンカー部材A1Rが作業サイトSの反対側にあるアンカー部材となること、ならびに (イ) 一対のケーブルCに張力をかける際には+X方向に引っ張る必要があることを考慮したうえで、適宜読み替えることになる。
【0061】
工程3におけるケーブルC、フレームF等の作業サイトSへの供給の仕方は、作業サイトSにおいて作業を行うサイト内作業者と、作業サイトS外で作業を行うサイト外作業者との間の人力作業(たとえば、手渡し)でもよく、専用装置を用いた非人力による供給であってもよく、一部人力、残部非人力による供給であってもよい。工具などは、一回供給すれば足りる場合もある。
【0062】
工程4における工作物Wの作業サイトSからの送り出しは、たとえば、工作物Wを構成する一対のケーブルC(Ca、Cb)に別のケーブル(牽引補助ケーブル)を取り付け、その牽引補助ケーブルを主支柱M12、M22の側から主支柱M11、M21の側へ牽引することにより実現することができる。その際、当該一対のケーブルCに、X方向に沿って間隔をおいて別のケーブル(引揚補助ケーブル)を取り付け、その引揚補助ケーブルを上方に引っ張りあげることで当該一対のケーブルCを引っ張り上げれば、工作物W(Wa、Wb)が地面Gやその他の障害物に接触しないようにすることができる。ケーブルCを引っ張り上げる場合であっても、地面Gや他の障害物との接触の悪影響を低減するために太陽光発電パネルPの受光面と反対側の面に緩衝材を取り付けるのが好ましい。工程6が完了すれば、牽引補助ケーブル、引揚補助ケーブル及び緩衝材はもはや不要であるので、必要に応じて取り外す。
【0063】
工程5は、たとえば、引揚補助ケーブルを引き上げたり、特殊機械によりケーブルCを押し上げることにより、当該ケーブルCを主支柱や中間支柱の懸架位置又はそれよりは若干高い位置まで一旦引き上げ、当該ケーブルCを所定位置に若干水平移動させた後降下させることにより、各支柱にケーブルを懸架することにより実現できる。
【0064】
工程6では、一対のケーブルCの一端をアンカー部材により固定した後、当該一対のケーブルを引っ張っている。(当該一対のケーブルCを引っ張る目的は、工作物Wを空中に配置させるためである。その目的を達成することができる限り、引っ張る前に当該一対のケーブルCの一端の固定は、アンカー部材による固定である必要はない。)その場合、当該一対のケーブルCの一端を、別の手段により暫定的に固定した後引っ張ることにより工作物Wを空中に配置させ、その後、アンカー部材により固定するようにしてもよい。
【0065】
工程7は、広くは、吊構造に無理がかからないように微調整を行う工程である。たとえば、主支柱や中間支柱がそれらの頂部に設置されたサドル部によりケーブルC(Ca、Cb)を脱落しないように支持する機構を備えている場合であれば、工程7には、サドル部の姿勢や向きを調整することにより、ケーブルCに作用する張力のバランスと分布をできる限り均質にすることが含まれる。
【0066】
ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の組立方法の別の例(第二例)は、次に掲げる工程を有する。
【0067】
<工程1> ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の設置予定場所にX方向において隣接する位置に、作業サイトSを設営する。
【0068】
<工程2> 複数本の主支柱M11、M12、M21、M22を設置する。
【0069】
<工程3> 作業サイトSに対して、ケーブルC、フレームF及び太陽光発電パネルPならびにその他の作業上必要な部材、工具等を供給する。
【0070】
<工程3A> 作業サイトS側(主支柱M12、M22がある側)においてアンカー部材A1R(図示せず)により第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2R(図示せず)により第二のケーブルCbの一端を固定する。
【0071】
<工程4> 作業サイトSにおいて、サイト内作業者(図示せず)が工作物Wを作成しながら、工作物Wを構成する第一のケーブルCaを主支柱M12の側から主支柱M11の側へ、第二のケーブルCbを主支柱M22の側から主支柱M21の側へと送り出す。これにより、工作物W(Wa、Wb)を、一対のケーブルCとともに、作業サイトSとは反対側に向かって送り出す。
【0072】
<工程5> 作業サイトSから送り出された一対のケーブルCを、主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に懸架する。必要に応じて、主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に中間支柱I1k、I2kを配置し、当該中間支柱に第一のケーブルCa及び第二のケーブルCbを懸架する。これらにより、工作物W(Wa、Wb)を主支柱M11、M12間及び主支柱M21、M22間に懸架する。
【0073】
<工程6A> 次の作業を行い、吊構造を構築する。
【0074】
作業サイトSの反対側(主支柱M11、M21がある側)において第一のケーブルCaと第二のケーブルCbを−X方向に引っ張る。これにより、一対のケーブルC(Ca、Cb)を、主支柱間、主支柱と中間支柱との間及び中間支柱間において地面Gから離れた位置に配置させ、当該一対のケーブルCに架設されたフレームFに取り付けられた太陽発電パネルPを、空中に配置させる。この張力が印加された状態を維持したままで、作業サイトSの反対側においてアンカー部材A1L(図示せず)により第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2L(図示せず)により第二のケーブルCbの一端を固定する。
【0075】
<工程7> 必要に応じて、主支柱間、主支柱と中間支柱との間及び中間支柱間における一対のケーブルCの垂れ下がり状態を調節して、主支柱と中間支柱が支える重量を適正にする。
【0076】
第一例と第二例との大きな違いは、第一例では、工作物Wを作業サイトSから送り出した後にケーブルの端部を固定するのに対して、第二例では、工作物Wを作業サイトSから送り出す前にケーブルの一端を固定しておくことにある。第二例では、工作物Wを作業サイトSから送り出す際、すでにケーブルの一端が固定されているので、ケーブルCの送り出しを引張りにより行うと、ケーブルCに作用する張力に起因して工作物Wが地面Gから離隔する。それゆえ、工作物Wを地面Gや障害物との接触を回避しながら、送り出すことができるというメリットがある。(第一例の場合、送り出しが終了した後、工作物Wを支柱に懸架するので、地面Gやその他の障害物と衝突しやすい。それゆえに緩衝材などを用意したり、引揚補助ケーブルを用いて接触を回避しなければならない。)
【0077】
上記の第二例において、工程1、工程2、工程3、工程5及び工程7についての説明は、第一例における説明と同じである。
【0078】
工程1では、作業サイトSを主支柱M11、M21の側に設置してもよい。その場合、工程3Aは、作業サイトS側(主支柱M11、M21がある側)においてアンカー部材A1Lにより第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2Lにより第二のケーブルCbの一端を固定する工程となる。工程4は、工作物Wを構成する第一のケーブルCaを主支柱M11の側から主支柱M12の側へ、第二のケーブルCbを主支柱M21の側から主支柱M22の側へと送り出す工程となる。工程6Aの記載内容は、(ア) 作業サイトS側が主支柱M11、M21がある側となり、作業サイトSの反対側が主支柱M12、M22がある側となり、アンカー部材A1Rが作業サイトSの反対側にあるアンカー部材となること、ならびに (イ) 一対のケーブルCに張力をかける際には+X方向に引っ張る必要があることを考慮したうえで、適宜を読み替えることになる。
【0079】
工程4における工作物Wの作業サイトSからの送り出しは、第一例と同様、たとえば、工作物Wを構成する一対のケーブルC(Ca、Cb)に取り付けた牽引補助ケーブルを、主支柱M12、M22の側から主支柱M11、M21の側へ牽引することにより実現することができる。その際、当該一対のケーブルCに、X方向に沿って間隔をおいて引揚補助ケーブルを取り付け、当該引揚補助ケーブルを上方に引っ張りあげることで当該一対のケーブルCを引っ張り上げれば、工作物W(Wa、Wb)が地面Gやその他の障害物に接触しないようにすることができる。ケーブルCを引っ張り上げる場合であっても、地面Gや他の障害物との接触の悪影響を低減するために太陽光発電パネルPの受光面と反対側の面に緩衝材を取り付けるのが好ましい。工程6が完了すれば、牽引補助ケーブル、引揚補助ケーブル及び緩衝材はもはや不要であるので、必要に応じて取り外す。
【0080】
工程3Aでは、一対のケーブルCの一端をアンカー部材(A1R、A2R)に固定し、その後工程6Aにおいて、当該一対のケーブルCを引っ張っている。(当該一対のケーブルCを引っ張る目的は、工作物Wを空中に配置させるためである。その目的を達成することができる限り、当該一対のケーブルCの一端の固定は、アンカー部材による固定である必要はない。)その場合、当該一対のケーブルCの一端を、別の手段により暫定的に固定した後、引っ張ることにより工作物Wを空中に配置させ、その後、アンカー部材により固定するようにしてもよい。
【0081】
ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の組立方法のさらに別の例(第三例)は、次に掲げる工程を有する。
【0082】
<工程1> ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の設置予定場所にX方向において隣接する位置に、作業サイトSを設営する。
【0083】
<工程2A> 複数本の主支柱M11、M12、M21、M22ならびに主支柱M11、M12間に中間支柱I1kを配置し、主支柱M21、M22間に中間支柱I2kを配置する。
【0084】
<工程3> 作業サイトSに対して、ケーブルC、フレームF及び太陽光発電パネルPならびにその他の作業上必要な部材、工具等を供給する。
【0085】
<工程3A> 作業サイトS側(主支柱M12、M22がある側)においてアンカー部材A1R(図示せず)により第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A2R(図示せず)により第二のケーブルCbの一端を固定する。
【0086】
<工程4> 作業サイトSにおいて、サイト内作業者(図示せず)が工作物Wを作成しながら、工作物Wを構成する第一のケーブルCaを主支柱M12の側から主支柱M11の側へ、第二のケーブルCbを主支柱M22の側から主支柱M21の側へと送り出す。これにより、工作物W(Wa、Wb)を、一対のケーブルCとともに、作業サイトSとは反対側に向かって送り出す。
【0087】
<工程5A> 作業サイトSから送り出された一対のケーブルC(Ca、Cb)を、主支柱M11、M12間及び中間支柱I1kならびに主支柱M21、M22間及び中間支柱I2kに懸架する。これにより、工作物W(Wa、Wb)を主支柱M11、M12間及び中間支柱I1kならびに主支柱M21、M22間及び中間支柱I2kに懸架する。
【0088】
<工程6B> 次の作業を行い、吊構造を構築する。
【0089】
作業サイトSの反対側(主支柱M11、M21がある側)において第一のケーブルCaと第二のケーブルCbを−X方向に引っ張る。この張力が印加された状態を維持したままで、作業サイトSの反対側においてアンカー部材A1Lにより第一のケーブルCaの一端を固定し、アンカー部材A(2i)Lにより第二のケーブルCbの一端を固定する。
【0090】
<工程7> 必要に応じて、主支柱間、主支柱と中間支柱との間及び中間支柱間における一対のケーブルCの垂れ下がり状態を調節して、主支柱と中間支柱が支える重量を適正にする。
【0091】
第二例と第三例との大きな違いは、第二例では、第一例と同様、主支柱を設置することは必須であるが、中間支柱は必要に応じて設置するものである(第一例及び第二例の工程2及び工程5参照)のに対して、第三例では、主支柱も中間支柱も設置することが必須であるという点である(第三例の工程2A参照)。
【0092】
第三例では、第二例に比べて、一対のケーブルC(Ca、Cb)、従って工作物W(Wa、Wb)が懸架される支柱の本数が多いという点を除き、第二例における説明がおおむねそのまま当てはまる。(第一例から第三例は、文字通り例に過ぎず、この発明は、これらの例に限定されない。)
【0093】
ケーブル懸架型空中太陽光発電装置U[11]の組立方法のさらに別の例(第四例)は、次に掲げる工程を有する。
【0094】
<工程1> ケーブル懸架型空中太陽光発電装置の設置予定場所に主支柱Mと中間支柱Iを設置する。
【0095】
<工程2> 作業サイトSを主支柱Mあるいは中間支柱Iの近傍に設営する。
【0096】
<工程3> ケーブルCを一方の主支柱Mから他方の主支柱Mに亘って送り出し、ケーブルサグ量を保持する高さにして、ケーブルCを全支柱(主支柱M及び中間支柱I)のサドル部2に仮止めする。ケーブルCには、予め所定間隔でフレームFの掴み部を取り付けておく。掴み部は、ケーブルCの供給者が予めケーブルCにボルト等によって取り付けておいてもよいし、作業サイトS上で取り付けてもよい。なお、サグとは、ケーブル自身あるいはこれにかかる各種部材の重量により生じるケーブルの垂れ下がりを意味し、サグ量とは、ケーブルの垂れ下がり量であり、通常は、ケーブルの両端を結ぶ直線とケーブルとの間の鉛直距離を支柱中央部で測った値である。
【0097】
<工程4> 中間支柱Iの両側のケーブルCにかかる荷重の偏りなくして、ケーブルCの張力のバランスを取りながら、作業サイトS上でフレームFを掴み部にボルト等により固定する。
【0098】
<工程5> 同時に作業サイトS上でフレームFに太陽光発電パネルPをボルト等により固定する。この作業を繰り返し行う。
【0099】
上記第四例によれば、ケーブルCに予め掴み部を取り付けておくことによって、フレームF及び太陽光発電パネルPの取り付け効率が向上する。
【0100】
上記において例説した組立方法によりケーブル懸架型空中太陽光発電装置(構造単位)U[11]を組み立てたら、作業サイトSを、Y方向において隣接する構造単位U[21]の設置予定場所のX方向において隣接する位置に移動させ、そこに設営する。そして、少なくとも複数の主支柱M31、M32、M41、M42を備える構造単位U[21]を当該組立方法により組み立てる。その後、さらに作業サイトSを、Y方向において隣接する構造単位U[31]の設置予定場所のX方向において隣接する位置に移動させ、そこに設営する。そして、少なくとも複数の主支柱M51、M52、M61、M62を備える構造単位U[31]を当該組立方法により組み立てる(図6参照)。以降、構造単位U[m1]を組み立てるまで同様の作業を繰り返し、j=1の列の構造単位群の組み立てを終える。
【0101】
次に、作業サイトSを、X方向に、単位構造一個分におおむね相当する距離だけ移動させる。つまり、作業サイトSを、構造単位U[m2]の設置予定場所のX方向において隣接する位置に移動させ、そこに設営する。そして、構造単位U[m2]を当該組立方法により組み立てる。その後、さらに作業サイトSを、Y方向において隣接する構造単位U[(m-1)2]の設置予定場所のX方向において隣接する位置に移動させ、そこに設営する。そして、構造単位U[(m-1)2]を当該組立方法により組み立てる。以降、構造単位U[12]を組み立てるまで同様の作業を繰り返し、j=2の列の構造単位群の組み立てを終える(図7参照)。
【0102】
構造単位群の組み立てを終えるたびに、作業サイトSを、X方向に、単位構造一個分におおむね相当する距離だけ移動させる作業を行うことで、任意の列jの構造単位群の組み立てによる増設を行い(図8参照)、最終的に、j=nの列の構造単位群の組み立てを終えて、M行N列の構造単位により構成される任意の設備単位PU[pq]を組み立てる(図9参照)。なお、p、qは、1以上の整数であり、s、tをそれぞれの上限値とする。
【0103】
設備単位PU[pq]を組み立てることにより、より大規模な設備を構成することができる(図10及び図11参照)。
【0104】
この発明におけるケーブル懸架型空中太陽光発電設備は、少なくとも一つのケーブル懸架型空中太陽光発電装置を備えるものであるので、図2図9図10及び図11にそれぞれ示すものは、いずれもこの発明におけるケーブル懸架型空中太陽光発設備に該当する。
【0105】
X方向とY方向とは互いに直角に交差する関係である必要はなく、図11に示すように互いに斜め(非直角)に交差する関係であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1:直管部材
2:サドル部
2a:突出部
2b:溝
3:載台
3a:凹部
U:ケーブル懸架型空中太陽光発電装置
M:主支柱
I:中間支柱
C:ケーブル
F:フレーム
P:パネル
W:工作物
A:アンカー部材
G:地面
S:作業サイト
PU:設備単位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11