(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体電解質層(2)と、該固体電解質層(2)の一方面に積層されたアノード層(3)と、上記固体電解質層(2)の他方面に中間層(4)を介して積層されたカソード層(5)と、該カソード層(5)における上記固体電解質層(2)側と反対側の面に積層されたカソード層側集電層(6)とを有しており、
上記カソード層(5)は、Srを含有するSr含有材料を含んで構成されており、
上記カソード層側集電層(6)は、Srを含有しないSr非含有材料、および/または、上記Sr含有材料よりもSrの含有割合が低い低Sr含有材料を含んで構成されており、かつ、上記カソード層(5)における上記中間層(4)と接する面を除いた残りの面を覆っており、
上記Sr非含有材料は、SrおよびCrを含有しない酸化物であり、
上記低Sr含有材料は、上記Sr含有材料よりもSrの含有割合が低く、Crを含有しない酸化物であり、
上記カソード層(5)、上記カソード層側集電層(6)および上記固体電解質層(2)の外形の大きさは、上記カソード層(5)の外形<上記カソード層側集電層(6)の外形<上記固体電解質層(2)の外形の関係を満たすことを特徴とする燃料電池単セル(1)。
上記カソード層側集電層(6)の上記カソード層(5)面位置における厚みは、上記カソード層(5)の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に燃料電池単セル(1)。
上記カソード層側集電層(6)の焼成温度は、上記カソード層(5)の焼成温度に対して少なくとも10℃以上低い温度とされることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池単セル(1)の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記燃料電池単セルは、電解質として固体電解質を利用する固体電解質型の燃料電池である。固体電解質層を構成する固体電解質には、酸素イオン導電性を示す固体酸化物セラミックス等を用いることができる。なお、固体電解質として固体酸化物セラミックスを用いる燃料電池は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)と称される。
【0013】
上記燃料電池単セルの電池構造は、特に限定されるものではなく、例えば、平板形、扁平形等の平面状、円筒状などとすることができる。上記電池構造は、好ましくは、製造性に優れる等の観点から、平板形とすることができる。また、上記燃料電池単セルは、例えば、アノード層を各層を支持する支持体として機能させることができる。それ以外にも、上記燃料電池単セルは、電解質層またはカソード層を支持体として機能させることもできるし、発電主要素とは異なる支持体上に、各層を積層することもできる。上記燃料電池単セルは、オーミック抵抗等の観点から、アノード層を支持体とすることが好ましい。
【0014】
アノード層は、具体的には、例えば、固体電解質層の一方面に積層される活性層と活性層における固体電解質層側と反対側の面に積層される拡散層とを備える構成とすることができる。活性層は、主に、アノード層側における電気化学的反応の反応場となる層である。拡散層は、主に、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な層である。拡散層は、1層または2層以上から構成することができる。中間層は、主に、カソード層を構成する材料と固体電解質層を構成する材料との反応を防止するための層である。中間層は、1層または2層以上から構成することができる。カソード層側集電層は、主に、カソード層に電子を配電するための層である。
【0015】
上記燃料電池単セルにおいて、カソード層は、Srを含有するSr含有材料を含んで構成されている。カソード層は、具体的には、Sr含有材料より構成されていてもよいし、Sr含有材料と後述の固体電解質等との混合物より構成することもできる。上記Sr含有材料としては、カソード層の触媒活性の向上、電子導電性の向上等の観点から、Srを含有するペロブスカイト型酸化物を好適に用いることができる。Srを含有するペロブスカイト型酸化物としては、具体的には、例えば、La
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3系酸化物(x=0.4、y=0.8等)、La
1−xSr
xCoO
3系酸化物(x=0.4等)、La
1−xSr
xFeO
3系酸化物(x=0.4等)、La
1−xSr
xMnO
3系酸化物(x=0.4等)、Sm
1−xSr
xSrCoO
3系酸化物(x=0.5等)などを例示することができる。これらは、1種または2種以上併用することができる。上記Sr含有材料のうち、好ましくは、低温作動時(例えば、600〜700℃程度)でも触媒活性が高い等の観点から、上記La
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3系酸化物、La
1−xSr
xCoO
3系酸化物、Sm
1−xSr
xSrCoO
3系酸化物等が好適である。また、上記固体電解質としては、酸素イオン導電性等の観点から、後述の酸化セリウム系酸化物を好適に用いることができる。なお、上記ペロブスカイト型酸化物の組成式において、酸素の原子比は3と表示したが、これは当業者には明らかなように、例えば、原子比x(y)が0でない場合には酸素空孔を生じるので、実際には酸素の原子比は3より小さい値をとることが多い。しかしながら、酸素空孔の数は、添加される元素の種類や製造条件によっても変化するため、便宜上、酸素の原子比を3として表示したものである(以下、同様である。)。
【0016】
上記燃料電池単セルにおいて、カソード層側集電層は、Srを含有しないSr非含有材料、および/または、Sr含有材料よりもSrの含有割合が低い低Sr含有材料を含んで構成されている。カソード層側集電層は、具体的には、Sr非含有材料より構成されていてもよいし、低Sr含有材料より構成されていてもよいし、Sr非含有材料と低Sr含有材料との混合物より構成されていてもよい。カソード層側集電層は、好ましくは、Sr非含有材料を含んで構成されているとよく、より好ましくは、Sr非含有材料より構成されているとよい。これらの場合は、カソード層側集電層のCr被毒耐性を向上させやすくなるので、上記作用効果を確実なものとしやすくなる。
【0017】
上記Sr非含有材料としては、カソード層側集電層のCr被毒耐性の向上等の観点から、Sr
およびCrを含有しないペロブスカイト型酸化物等の酸化物
が用い
られる。
当該酸化物としては、具体的には、例えば、LaNi
1−xFe
xO
3系酸化物(x=0.4等)、La
2NiO
4、La
2Ni
1−xCu
xO
4系酸化物(x=0.4等)などを例示することができる。これらは、1種または2種以上併用することができる。上記Sr非含有材料のうち、好ましくは、熱膨張係数、電子導電性等の観点から、LaNi
1−xFe
xO
3系酸化物等が好適であり、より好ましくは、LaNi
0.6Fe
0.4O
3等である。
【0018】
また、上記低Sr含有材料としては、カソード層側集電層のCr被毒耐性の向上等の観点から、Sr含有材料よりもSrの含有割合が低
く、Crを含有しないペロブスカイト型酸化物等の酸化物
が用い
られる。
当該酸化物としては、具体的には、例えば、La
1−xSr
xFeO
3系酸化物(x=0.2等)、La
1−xSr
xCo
1−yMn
yO
3系酸化物(x=0.2、y=0.9等)などを例示することができる。なお、低Sr含有材料に用いられる酸化物は、Sr含有材料に用いられるペロブスカイト型酸化物に応じて、組成比でSrの含有割合が低いものを選択すればよい。これらは、1種または2種以上併用することができる。上記低Sr含有材料のうち、好ましくは、電子導電性等の観点から、La
1−xSr
xCo
1−yMn
yO
3系酸化物等が好適であり、より好ましくは、La
0.8Sr
0.2Co
0.1Mn
0.9O
3等である。
【0019】
上記燃料電池単セルにおいて、上記カソード層側集電層は上記カソード層よりもSr含有率が低い構成とすることができる。カソード層のSr含有率は、カソード層の触媒活性の向上等の観点から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは20mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上とすることができる。カソード層のSr含有率は、元素拡散抑制等の観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、さらに好ましくは40mol%以下とすることができる。カソード層側集電層のSr含有率は、Cr被毒耐性の向上等の観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下とすることができる。
【0020】
上記燃料電池単セルにおいて、カソード層側集電層は、カソード層における上記中間層と接する面を除いた残りの面を覆っている。具体的には、カソード層側集電層は、カソード層における固体電解質層側と反対側の面を覆う本体部と、本体部における固体電解質層側の面より突出し、カソード層の側面を覆う側面被覆部とを有する構成とすることができる。
【0021】
上記燃料電池単セルにおいて、カソード層側集電層に含まれる気孔の気孔径は、カソード層に含まれる気孔の気孔径よりも大きい構成とすることができる。
【0022】
この場合は、カソード層側集電層が、カソード層に供給される酸化剤ガスのガス拡散律速場となり難く、カソード層への酸化剤ガスの拡散が阻害され難い。その結果、酸化剤ガスのガス拡散抵抗を小さくしやすく、燃料電池単セルの発電特性を向上させやすい。
【0023】
なお、カソード層側集電層の気孔径とカソード層の気孔径との大小関係は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察によって判断することができる。また、上記断面観察だけでは両気孔径の大小関係を明確に判断することができない場合には、カソード層側集電層の平均気孔径、カソード層の平均気孔径をそれぞれ測定して比較することができる。なお、上記平均気孔径は、パームポロメータ等により測定した細孔径分布から算出した気孔径の平均値のことである。
【0024】
上記燃料電池単セルにおいて、カソード層、カソード層側集電層および固体電解質層の外形の大きさは、カソード層の外形<カソード層側集電層の外形<固体電解質層の外形の関係を満たすように構成
されている。つまり、カソード側集電層の外形は、固体電解質層の外形よりも小さく形成
されている。また、カソード層の外形は、カソード側集電層の外形よりも小さく形成
されている。
【0025】
この
構成によれば、カソード層における中間層と接する面を除いた残りの面を、カソード層側集電層が確実に覆いやすくなる。また、カソード層側集電層の側面位置が、固体電解質層の側面位置よりも内側に配置されるので、カソード層側集電層とアノード層との短絡を抑制しやすくなる。また、中間層の表面に、例えば、カソード層、カソード層側集電層を順次印刷法により形成する場合における印刷性を向上させることができる。
【0026】
上記燃料電池単セルにおいて、カソード層側集電層のカソード層面位置における厚みtccは、カソード層の厚みtcよりも大きい構成とすることができる。
【0027】
この場合は、カソード層側集電層が、カソード層における中間層と接する面を除いた残りの面を確実に覆いやすくなるので、主な反応場であるカソード層のCr被毒を低減させやすくなり、有利である。また、集電性の向上などの利点もある。
【0028】
上記tccは、Cr被毒耐性の向上等の観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上とすることができる。上記tccは、電気抵抗等の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下とすることができる。上記tcは、電極反応抵抗等の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上とすることができる。上記tcは、電気抵抗等の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下とすることができる。
【0029】
上記燃料電池単セルにおいて、固体電解質層、アノード層、中間層を構成する材料としては、以下のものを例示することができるが、特に限定されない。
【0030】
固体電解質層を構成する固体電解質としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等の酸化ジルコニウム系酸化物;ランタンガレート系酸化物;CeO
2、CeO
2にGd、Sm、Y、La、Nd、Yb、Ca、Dr、および、Hoから選択される1種または2種以上の元素等がドープされたセリア系固溶体等の酸化セリウム系酸化物などを例示することができる。固体電解質層の厚みは、オーミック抵抗などの観点から、好ましくは3〜20μm、より好ましくは3〜10μmとすることができる。
【0031】
アノード層の材質としては、例えば、金属ニッケル、酸化ニッケル等の触媒、上記触媒と上記固体電解質とを含む混合物などを例示することができる。なお、アノード層を活性層および拡散層の二層積層構造とする場合、各層の材質は、いずれも上記材質とすることができる。もっとも、活性層に含まれる気孔の気孔径は、拡散層に含まれる気孔の気孔径よりも小さい構成とすることができる。この場合は、供給される燃料ガスを拡散層から活性層へ拡散させやすくなるなどの利点がある。なお、活性層の気孔径、拡散層の気孔径は、例えば、造孔剤の添加量等によって調整することができる。アノード層の厚みは、支持体としての強度確保、ガス拡散などの観点から、好ましくは200〜800μm、より好ましくは400〜800μmとすることができる。なお、活性層の厚みは、電極反応抵抗などの観点から、好ましくは10〜30μm、より好ましくは10〜20μmとすることができる。拡散層の厚みは、支持体としての強度確保、ガス拡散などの観点から、好ましくは200〜800μm、より好ましくは400〜800μmとすることができる。
【0032】
中間層の材質としては、上記酸化セリウム系酸化物などを例示することができる。中間層の厚みは、オーミック抵抗、カソード層からの元素拡散防止などの観点から、好ましくは1〜10μm、より好ましくは1〜5μmとすることができる。
【0033】
上記燃料電池単セルの製造方法は、カソード層およびカソード層側集電層を焼成(焼付を含む)によって形成する工程を含む。上記工程では、カソード層とカソード層側集電層とを別々の焼成によって形成することもできるし、カソード層とカソード層側集電層とを同時に焼成することによって一度に形成することもできる。
【0034】
上記工程は、具体的には、例えば、アノード層、固体電解質層、および中間層がこの順に積層された焼成体を準備する手順と、準備した焼成体における中間層の表面に、焼成よりカソード層になるカソード層形成用材料を印刷法等により塗布し、焼成することによってカソード層を形成する手順と、形成されたカソード層の表面を覆うように、焼成によりカソード層側集電層になるカソード層側集電層形成用材料を印刷法等により塗布し、焼成することによってカソード層側集電層を形成する手順とを含むことができる。
【0035】
また他にも、上記工程は、具体的には、例えば、アノード層、固体電解質層、および中間層がこの順に積層された焼成体を準備する手順と、準備した焼成体における中間層の表面に、焼成よりカソード層になるカソード層形成用材料を印刷法等により塗布する手順と、上記塗布されたカソード層形成用材料の表面を覆うように、焼成によりカソード層側集電層になるカソード層側集電層形成用材料を印刷法等により塗布し、同時に焼成することによってカソード層およびカソード層側集電層を形成する手順とを含むことができる。
【0036】
なお、上記焼成体の準備方法は、特に制限はない。例えば、上記焼成体は、焼成によりアノード層になるシート状のアノード層形成用材料と、焼成により固体電解質層になるシート状の固体電解質層形成用材料と、焼成により中間層になるシート状の中間層形成用材料とをこの順に積層し、必要に応じて圧着や脱脂等を行った後、例えば、1300〜1500℃で同時焼成することなどによって準備することができる。
【0037】
上記燃料電池単セルの製造方法において、カソード層およびカソード層側集電層を別々の焼成によって形成する場合、カソード層側集電層の焼成温度は、カソード層の焼成温度と同じにすることができる。好ましくは、カソード層側集電層の焼成温度は、カソード層の焼成温度よりも低い温度であるとよい。具体的には、カソード層側集電層の焼成温度は、カソード層の焼成温度に対して少なくとも、好ましくは10℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは50℃以上、さらにより好ましくは100℃以上低い温度とすることができる。なお、カソード層側集電層の焼成温度の下限は、カソード層側集電層を形成できる温度であれば、特に制限されない。
【0038】
この場合は、カソード層に含まれるSrがカソード層側集電層へ拡散するのを抑制しやすくなり、得られる燃料電池単セルにおけるカソード層側集電層のCr被毒耐性を向上させやすくなる利点がある。
【0039】
カソード層の焼成温度は、電極反応抵抗などの観点から、好ましくは900〜1200℃、より好ましくは1000〜1200℃の範囲内から選択することができる。また、カソード層側集電層の焼成温度は、電気抵抗などの観点から、好ましくは900〜1200℃、より好ましくは1000〜1200℃の範囲内から選択することができる。
【0040】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例の燃料電池単セルおよびその製造方法について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0042】
(実施例1)
実施例1の燃料電池単セルについて、
図1〜
図4を用いて説明する。
図1〜
図4に示すように、本例の燃料電池単セル1は、固体電解質層2と、固体電解質層2の一方面に積層されたアノード層3と、固体電解質層2の他方面に中間層4を介して積層されたカソード層5と、カソード層5における固体電解質層2側と反対側の面に積層されたカソード層側集電層6とを有している。カソード層5は、Srを含有するSr含有材料を含んで構成されている。カソード層側集電層6は、Srを含有しないSr非含有材料、および/または、Sr含有材料よりもSrの含有割合が低い低Sr含有材料を含んで構成されており、かつ、カソード層5における中間層4と接する面を除いた残りの面を覆っている。以下、これを詳説する。
【0043】
本例において、固体電解質層2は、酸化ジルコニウム系酸化物である、8mol%のY
2O
3を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、8YSZ)より形成されており、その厚みは10μmである。
【0044】
本例において、アノード層3は、固体電解質層2の一方面に積層される活性層32と活性層32における固体電解質層2側と反対側の面に積層された拡散層31とを備えている。活性層32および拡散層31は、いずれも触媒粒子と固体電解質粒子との混合物である、NiO(還元雰囲気でNiとなる)−8YSZサーメットより形成されている。但し、活性層32の気孔径は、拡散層31の気孔径よりも相対的に小さくされている。活性層32の厚みは20μmであり、拡散層31の厚みは500μmである。なお、本例の燃料電池単セル1は、アノード層3を支持体とする平板形の単セルである。
【0045】
本例において、中間層4は、酸化セリウム系酸化物である、10mol%のGdがドープされたセリア(以下、10GDC)より形成されており、その厚みは5μmである。
【0046】
本例において、カソード層5は、具体的には、Srを含有するペロブスカイト型酸化物(Sr含有材料)を含んで構成されている。より具体的には、カソード層5は、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質との混合物より構成されている。上記Srを含有するペロブスカイト型酸化物は、La
1−xSr
xCo
1−yF
yO
3(x=0.4、y=0.8)であり、上記固体電解質は、酸化セリウム系酸化物である10GDCである。カソード層の厚みは20μmである。
【0047】
本例において、カソード層側集電層6は、具体的には、Sr
およびCrを含有しない酸化物(Sr非含有材料)を含んで構成されている。より具体的には、カソード層側集電層6は、Sr
およびCrを含有しない酸化物より構成されている。上記Sr
およびCrを含有しない酸化物は、LaNi
1−xFe
xO
3(x=0.4)である。カソード層側集電層6のカソード層5面位置における厚みは30μmである。
【0048】
本例において、カソード層側集電層6の気孔径は、カソード層5の気孔径よりも相対的に大きく形成されている。また、本例では、カソード層側集電層6、カソード層5の材料構成を上述の通りとすることにより、カソード層側集電層6は、カソード層5よりもSr含有率が低い構成とされている。カソード層側集電層6のSr含有率は、1mol%以下であり、カソード層5のSr含有率は、約20mol%である。
【0049】
本例では、アノード層3(拡散層31、活性層32)、固体電解質層2、中間層4、カソード層5、および、カソード層側集電層6は、いずれも、平面視で、矩形状の形状を呈している。アノード層3(拡散層31、活性層32)、固体電解質層2、および中間層4の外形は、同じ大きさに揃えられている。つまり、アノード層3(拡散層31、活性層32)、固体電解質層2、および中間層4の側面は、同一面上に配置されている。一方、カソード層5の外形は、固体電解質層2の外形よりも小さく形成されている。カソード層5の外形における直線部分と固体電解質層2の外形における直線部分との間隔は、具体的には、2mmである。また、カソード層側集電層6の外形は、固体電解質層2の外形よりも小さく形成されている。カソード層側集電層6の外形における直線部分と固体電解質層2の外形における直線部分との間隔は、具体的には、1mmである。つまり、本例の燃料電池単セル1では、カソード層5、カソード層側集電層6および固体電解質層2の外形の大きさが、カソード層5の外形<カソード層側集電層6の外形<固体電解質層2の外形の関係を満たすように構成されている。カソード層側集電層6は、具体的には、カソード層5における固体電解質層2側と反対側の面を覆う本体部61と、本体部61における固体電解質層2側の面より突出し、カソード層5の側面を覆う側面被覆部62とを有している。
【0050】
次に、本例の燃料電池単セルの作用効果について説明する。
【0051】
燃料電池単セル1は、Srを含有するSr含有材料を含んでカソード層5が構成されているので、カソード層5の触媒活性を高めることができる。さらに、燃料電池単セル1は、
上記Sr非含有材料、および/または、
上記低Sr含有材料を含んでカソード層側集電層6が構成されており、当該カソード層側集電層6が、カソード層5における中間層4と接する面を除いた残りの面を覆っている。つまり、燃料電池単セル1は、Cr被毒耐性のある材料を含んで構成されているカソード層側集電層6によってカソード層5が覆われている。そのため、燃料電池単セル1は、その構成上で主な反応場となるカソード層5のCr被毒を低減させることができ、Cr被毒によるカソード層5の触媒活性の低下を抑制することができる。よって、燃料電池単セル1は、主な反応場であるカソード層5の触媒活性の低下を抑制することができ、これにより発電性能の低下を抑制することが可能となる。また、燃料電池単セル1は、カソード層5の側面を通じて酸化剤ガスを供給することもできるので、カソード層5におけるガス拡散性の向上にも寄与することができる。
【0052】
また、本例の燃料電池単セル1は、カソード層5が、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と酸化セリウム系酸化物との混合物より構成されているので、カソード層5の触媒活性が高い、中間層との接合性が良いなどの利点がある。また、本例の燃料電池単セル1は、カソード層側集電層6が、Sr
およびCrを含有しない酸化物より構成されているので、カソード層側集電層6のCr被毒耐性が高まり、カソード層5のCr被毒を効果的に抑制しやすいなどの利点がある。
【0053】
また、本例の燃料電池単セル1は、カソード層側集電層6に含まれる気孔の気孔径が、カソード層5に含まれる気孔の気孔径よりも大きい。そのため、本例の燃料電池単セル1は、カソード層側集電層6が、カソード層5に供給される酸化剤ガスのガス拡散律速場となり難く、カソード層5への酸化剤ガスの拡散が阻害され難い。その結果、本例の燃料電池単セル1は、酸化剤ガスのガス拡散抵抗を小さくしやすく、燃料電池単セル1の発電特性を向上させやすい。
【0054】
また、本例の燃料電池単セル1は、カソード層5、カソード層側集電層6および固体電解質層2の外形の大きさが、カソード層5の外形<カソード層側集電層6の外形<固体電解質層2の外形の関係を満たしている。そのため、本例の燃料電池単セル1は、カソード層5における中間層4と接する面を除いた残りの面を、カソード層側集電層6が確実に覆いやすい。また、本例の燃料電池単セル1は、カソード層側集電層6の側面位置が、固体電解質層2の側面位置よりも内側に配置されるので、カソード層側集電層6とアノード層3との短絡を抑制しやすくなる。
【0055】
(実施例2)
実施例2の燃料電池単セルの製造方法について説明する。本例の燃料電池単セルの製造方法は、実施例1の燃料電池単セル1を好適に製造することができる製造方法である。本例の燃料電池単セルの製造方法は、カソード層5およびカソード層側集電層6を焼成によって形成する工程を含んでいる。カソード層側集電層6の焼成は、カソード層5の焼成温度以下の温度で行われる。以下、これを詳説する。
【0056】
本例の燃料電池単セルの製造方法は、具体的には、アノード層3、固体電解質層2、および中間層4がこの順に積層された焼成体を準備する手順と、準備した焼成体における中間層4の表面に、焼成よりカソード層5になるカソード層形成用材料を印刷法により塗布し、焼成することによってカソード層5を形成する手順と、形成されたカソード層5の表面を覆うように、焼成によりカソード層側集電層6になるカソード層側集電層形成用材料を印刷法により塗布し、焼成することによってカソード層側集電層6を形成する手順を含んでいる。
【0057】
また、本例では、焼成体は、焼成によりアノード層3になるシート状のアノード層形成用材料と、焼成により固体電解質層2になるシート状の固体電解質層形成用材料と、焼成により中間層4になるシート状の中間層形成用材料とをこの順に積層し、圧着、脱脂を行った後、同時焼成することによって準備する。
【0058】
次に、本例の燃料電池単セルの製造方法の作用効果について説明する。
【0059】
上記燃料電池単セルの製造方法は、カソード層5およびカソード層側集電層6を焼成によって形成する工程を含み、カソード層側集電層6の焼成が、カソード層5の焼成温度以下の温度で行われる。そのため、本例の燃料電池単セルの製造方法は、カソード層5に含まれるSrがカソード層側集電層6へ拡散するのを抑制することができ、得られる燃料電池単セル1におけるカソード層側集電層6のCr被毒耐性を損ない難い。それ故、上記燃料電池単セルの製造方法は、燃料電池単セル1の製造に適する。
【0060】
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
<実験例>
NiO粉末(平均粒子径:0.7μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、カーボン(造孔剤)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)d50である(以下、同様)。上記スラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の拡散層形成用材料を準備した。
【0061】
NiO粉末(平均粒子径:0.7μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、カーボン(造孔剤)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。なお、カーボン量は、上記拡散層形成用材料と比較して少量とされている。上記スラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の活性層形成用材料を準備した。
【0062】
8YSZ粉末(平均粒子径:0.5μm)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。このスラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の固体電解質層形成用材料を準備した。
【0063】
10GDC粉末(平均粒子径:0.3μm)と、ポリビニルブチラール(有機材料)と、酢酸イソアミル、2−ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。このスラリーを、ドクターブレード法を用いて、プラスチック基材上に層状に塗工し、乾燥させることにより、シート状の中間層形成用材料を準備した。
【0064】
La
1−xSr
xCo
1−yF
yO
3(x=0.4、y=0.8)粉末(平均粒子径:0.6μm)と、エチルセルロース(有機材料)と、テルピネオール(溶媒)とをボールミルにて混合することによりペースト状のカソード層形成用材料を準備した。
【0065】
LaNi
0.6Fe
0.4O
3粉末(平均粒子径:0.7μm)と、エチルセルロース(有機材料)と、テルピネオール(溶媒)とをボールミルにて混合することによりペースト状のカソード層側集電層形成用材料を準備した。
【0066】
ほぼ同じ大きさに形成されているシート状の拡散層形成用材料、シート状の活性層形成用材料、シート状の固体電解質層形成用材料、および、シート状の中間層形成用材料をこの順に積層した積層体を、CIP成形法を用いて圧着、脱脂した後、1350℃で2時間焼成した。なお、CIP成形条件は、温度80℃、加圧力50MPa、加圧時間10分という条件とした。これにより、拡散層(500μm)、活性層(20μm)、固体電解質層(10μm)、および中間層(5μm)がこの順に積層された焼結体を得た。
【0067】
次いで、得られた焼結体における中間層の表面に、カソード層形成用材料をスクリーン印刷法により塗布し、1100℃で2時間焼成することによってカソード層(厚み20μm)を形成した。なお、カソード層形成用材料は、中間層の外縁まで印刷しておらず、カソード層の外形は、固体電解質層の外形よりも小さく形成されている。
【0068】
次いで、形成されたカソード層の表面を覆うように、カソード層側集電層形成用材料をスクリーン印刷法により塗布し、1100℃で2時間焼成することによってカソード層側集電層(カソード層面位置における厚み30μm)を形成した。なお、カソード層側集電層形成用材料は、カソード層の側面を覆うように印刷した。また、カソード層側集電層形成用材料は、中間層の外縁まで印刷しておらず、カソード層側集電層の外形は、固体電解質層の外形よりも小さく形成されている。なお、本例の焼成温度においては、カソード層およびカソード層側集電層は、カソード層形成用材料を印刷し、印刷されたカソード層形成用材料を覆うようにカソード側集電層形成用材料を印刷後、同時に焼成することによって形成することも可能である。以上により、
図1〜
図4の積層構造を有する試料1の燃料電池単セルを作製した。
【0069】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。