特許第6089006号(P6089006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089006
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】スプレーノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/02 20060101AFI20170220BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20170220BHJP
   B22D 11/22 20060101ALI20170220BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B05B1/02 101
   B05B7/04
   B22D11/22 B
   B22D11/124 G
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-131817(P2014-131817)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-7602(P2016-7602A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】中野 久継
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−016846(JP,A)
【文献】 特開2011−067781(JP,A)
【文献】 特開2010−221121(JP,A)
【文献】 特開2008−168167(JP,A)
【文献】 特開2008−296197(JP,A)
【文献】 特開2007−237086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/02
B22D 11/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液混合流体が供給されるノズル本体の中心軸線に沿った主流路の噴射側の中心に噴射側前端に向けて細くなる円錐形状の主孔を連通して設けると共に、該主孔の幅方向の両側に一対の長孔形状の副孔を前記主流路および前記主孔と連通させて設け、かつ、前記ノズル本体の噴射側端面に前記副孔の長寸方向と同方向の直径方向で且つ該両側の副孔と干渉させない幅で切り込みを入れ、該切り込みで前記主孔の先端円弧部を切り欠いて噴口を設け、
前記両側の副孔の前記主孔を挟んで対向する長辺側部分と前記主孔の両側部分とを連通させ、主孔の後端径(D1)に対して前記副孔の長寸径(D2)の比をD1:D2=1:0.7〜1:1.2としていることを特徴とするスプレーノズル。
【請求項2】
前記ノズル本体の主流路に、水からなる液体と圧縮空気からなる気体の気液混合流体を導入し、
前記主孔は断面円形とすると共に、前記副孔は断面長円形状とし、
前記主孔の後端径D1に対して前記副孔の短寸径D3の比D1:D3=1:0.3〜1:0.7、
前記副孔の短寸径D3に対する副孔の長寸径D2の比D3:D2=1:1.5〜1:2.5
に設定している請求項1に記載のスプレーノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体を、整流板を設けた気液混合流体供給管の先端側に一体的または接続して設け、前記気液混合流体供給管の基端側に液体供給管と気体供給管とを直交方向に接続し、
前記整流板により前記ノズル本体の中心軸線と平行な分流路を設けている請求項1または請求項2に記載のスプレーノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレーノズルに関し、詳しくは、連続鋳造装置の二次冷却帯に連続的に引き出される鋳片に対して冷却水を噴霧するノズルとして好適に用いられるものであり、特に、冷却水の噴霧量を変えても噴角変動が少なく均等な流量分布と打力分布が得られ、冷却ムラの発生を防止できるノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスプレーノズルとして、本出願人は特許第2719073号公報で図9(A)〜(C)に示すノズル100を提供している。該ノズル100はノズル本体101の中心軸線Lに沿って水と圧縮空気との気液混合流路となる主孔102を設けている。該主孔102の下孔部102aの円弧形状とした噴射側先端をノズル本体101の噴射側端面101fに近接して形成し、該噴射側端面101fに設ける直径方向の切り込み104を下孔部102aの噴射側先端部と連通させて長円形状の噴口105を設けている。かつ、前記下孔部102aの幅方向両側に断面円形の副孔106、107を設けている。
【0003】
前記ノズル100は、主孔102の両側に副孔106、107を設けることで、これら副孔106、107から主孔102の両側に流れ込む気液混合流体を主孔102の中心軸線Lに沿って流れる気液混合流体に衝突させて、気液混合を促進し、噴霧の均質化を図っている。これにより、水流量を低流量としても噴霧角度を広げることができる一方、水流量を高流量とした場合に噴霧角度の広がりを抑え、水の供給量を変えても噴霧角度を略均一に保持できるようにしている。
その結果、圧縮空気の一定供給量に対する水の供給量を変化させても、噴霧角度範囲、流量分布、打力分布および粒子径を均等に保持し、冷却ムラを発生させずに制御できるターンダウン比を1:20と広げている。例えば、圧縮空気の一定供給量0.4NL/minに対して水供給量を2リットル〜40リットル/minの範囲で制御できるようにしている。このように、ターンダウン比を広げることにより、冷却水量を多く必要とする二次冷却帯の上流領域から冷却水量が少なくてよい下流領域にかけて同一のノズルを用いて冷却することができると共に、鋳片の厚さが相違しても同一のノズルで対応できるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2719073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のノズルは、それ迄のターンダウン比1:10を2倍の1:20に広げているが、更に鋳片の多様な厚さ等に対応できるように、ターンダウン比を広い範囲とすることが求められている。また、低水量時の噴霧角度は高水量時の噴霧角度と比べて安定しないため、ターンダウン比を広い範囲としながら、低水量時に噴霧角度を安定化させることも求められている。
【0006】
よって、本発明は、ターンダウン比を1:20より大きな範囲としながら、低水量時の噴霧角度を高水量時の噴霧角度と同等に安定して保持できるノズルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、気液混合流体が供給されるノズル本体の中心軸線に沿った主流路の噴射側の中心に噴射側前端に向けて細くなる円錐形状の主孔を連通して設けると共に、該主孔の幅方向の両側に一対の長孔形状の副孔を前記主流路および前記主孔と連通させて設け、かつ、前記ノズル本体の噴射側端面に前記副孔の長寸方向と同方向の直径方向で且つ該両側の副孔と干渉させない幅で切り込みを入れ、該切り込みで前記主孔の先端円弧部を切り欠いて噴口を設け、
前記両側の副孔の前記主孔を挟んで対向する長辺側部分と前記主孔の両側部分とを連通させ、主孔の後端径(D1)に対して前記副孔の長寸径(D2)の比をD1:D2=1:0.7〜1:1.2としていることを特徴とするスプレーノズルを提供している。
【0008】
前記ノズル本体の主流路に、水からなる液体と圧縮空気からなる気体の気液混合流体を導入し、
前記主孔は断面円形とすると共に、前記副孔は断面長円形状とし、
前記主孔の後端径D1に対して前記副孔の短寸径D3の比D1:D3=1:0.3〜1:0.7、
前記副孔の短寸径D3に対する副孔の長寸径D2の比D3:D2=1:1.5〜1:2.5
に設定していることが好ましい。
【0009】
また、前記噴口は長円形とし、該噴口の長さ方向の両端に前記噴射側端面の外周端に向けて次第に広がるガイド凹部を延在させることが好ましい。
【0010】
前記のように、主孔の両側に設ける副孔を断面長円形状とし、両側の副孔の対向側の長辺側部分を主孔の両側にそれぞれ連続させると、副孔と主孔とのラップ部分の面積を増大できる。このラップ部分で副孔から主孔に流入する気液混合流体と主孔内を噴口に向かって直進する気液混合流体とが衝突して撹拌が生じる。
副孔を従来の断面円形にした場合と比較して、副孔を断面長円とすると主孔とのラップ面積が増大し、言い換えると、撹拌部分の面積が増大し、該撹拌により気液混合流体の均質化を促進できる。よって、液体流量が大きく変動しても、前記撹拌による気液均質化で、噴口から噴射される気液混合流体の噴霧角度の変動を少なくでき、均等な流量分布と打力分布を得ることができる。
【0011】
前記構成として、断面長円形状の副孔を長寸方向に2分割したうちの主孔側の約半分を中央の主孔とラップした状態で連続し、主孔側の流体と副孔側の流体との撹拌面積を増大させることができる。この撹拌面積の増大により、前記のように、気液混合流体の均質化を促進し、前記噴口からの噴霧を安定化し、その結果、液流量を大きく変動させても、噴霧角度、流量分布、打力分布の変動を抑制して、冷却ムラを発生しないノズルとすることができる。
【0012】
なお、前記ノズル本体の主孔および副孔に流入する流体を液体のみとする一流体ノズルとして用いた場合も、前記二流体ノズルとする場合と同様に、前記主孔と副孔とのラップ部分の面積増大による撹拌の強化で、液滴を均質化して噴霧角度の変動を少なくでき、均等な流量分布と打力分布を得ることができる。
【0013】
なお、前記長孔形状の副孔は断面長円形状または断面楕円形状としてもよい。
また、前記主孔を断面長円形状とし、該主孔の長辺側の両側に前記断面長円形状の副孔の長辺側を連通させてもよい。この場合、主孔の後端の短寸径に対して主孔の後端の長寸径は1:1〜1:2が好ましく、更に1:1〜1:1.4が好ましい。前記構成のノズルは、ノズル本体を断面長円形状とする必要がある場合に好適に用いられる。
【0014】
前記構成からなる本発明のノズルは、一定量の圧力空気に対する液体量を低水量時1に対して高水量時40の範囲(即ち、1:40のターンダウン比の範囲)で変動しても、噴霧角度の変動角度を5度以下としている。
【0015】
前記ターンダウン比は従来例の図9に示すノズルのターンダウン比が1:20であるのに対して、本発明のノズルはターンダウン比を2倍大きくして1:40としている。
このようにターンダウン比を大きくすることで、厚さが大きく相違する鋳片、二次冷却帯が長尺である場合等に、冷却温度を大幅に変える必要がある場合に好適に用いることができる。
【0016】
前記ノズル本体を、整流板を設けた気液混合流体供給管の先端側に一体的または接続して設け、前記気液混合流体供給管の基端側に液体供給管と気体供給管とを直交方向に接続し、
前記整流板により前記ノズル本体の中心軸線と平行な分流路を設けていることが好ましい。
【0017】
詳細には、前記ノズル本体を整流アダプタを介して直管状パイプからなる前記気液混合流体供給管と接続し、該気液混合流体供給管を混合アダプタに接続し、該混合アダプタに前記液体供給管と気体供給管とを直交方向に接続し、
前記整流アダプタの中心軸線を前記ノズル本体の中心軸線と一致させ、前記整流アダプタの中心軸線に沿った流路に、該中心軸線と平行な分流路に分離する整流板を介在していることが好ましい。
【0018】
前記気体供給管から圧力空気、液体供給管から水を前記混合アダプタ内に直交方向から供給して衝突混合し、該混合アダプタから前記整流アダプタへ直管状のパイプからなる前記気液混合流体供給管を通して気液混合流体を流通し、前記整流アダプタ内で整流して前記ノズル本体内の主孔と両側の副孔にそれぞれ気液混合流体を流入させる構成としていることが好ましい。
【0019】
前記のように、ノズル本体の上流側の流路に整流板を配置し、ノズル本体内へ流入する気液混合流体を整流化した後に、ノズル本体の噴口近傍で前記主孔と副孔とのラップにより撹拌している。このように、混合アダプタでの混合→整流板での整流→本体ノズル内での衝突混合による撹拌を順次行うことで、液滴の均質化をより促進することができる。
【0020】
前記整流板は、整流アダプタの流路の内面から一体的に突設しても良いし、前記流路に挿入固定する別体でもよい。
該整流板は前記本体ノズルの噴口から3cm〜8cmの位置に配置し、該整流板の長さは5mm〜30mmとし、1つの流入側流路を5〜10個の分流路に区切る形状とすることがこのましい。
【0021】
本発明のスプレーノズルは連続鋳造装置の二次冷却帯の鋳片冷却、厚板・薄板・メッキ鋼板等の鋼板冷却、シームレスパイプ等の鋼管冷却、圧延・熱処理後の制御冷却、鋼板の表面処理、アルミ板・ガラス板等の板材冷却、排ガス冷却用など広範囲に用いることができる。
また、本発明のスプレーノズルは、鋳片等の被冷却材の幅方向に間隔をあけて並列し、噴霧範囲の両側の流量が噴霧範囲の中央部の流量と同等となるようにラップさせて配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
前記した本発明のスプレーノズルは、ノズル本体の主孔の両側に設ける副孔を断面長円形状とし、該両側の副孔の対向側の長辺側部分を主孔の両側にそれぞれ連続させているため、副孔と主孔とが重なるラップ部分の面積を増大できる。このラップ部分で、副孔から主孔に流入する気液混合流体と主孔内を噴口に向かって直進する気液混合流体とを衝突させて撹拌させることができる。其の際、副孔を従来の断面円形にした場合と比較して、副孔を断面長孔とすると主孔とのラップ部分の面積が増大し、撹拌量を増大して撹拌により気液混合流体の均質化を促進できる。よって、液体流量が大きく変動しても、前記撹拌による混合流体の均質化で、噴口から噴射される気液混合流体の噴霧角度の変動を少なくでき、均等な流量分布と打力分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態のスプレーノズルを示し、(A)は軸線方向に沿った断面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は左側面図である。
図2】(A)は図1(A)のA−A線断面図、(B)は(A)に示す主孔と副孔を比較して示す概略図、(C)は主孔と副孔が重なるラップ領域を示す図面、(D)は図1(A)のD−D線断面図である。
図3】整流板を示し、図1(A)のE−E線断面図である。
図4】(A)〜(C)は前記スプレーノズルの作用を説明する断面図である。
図5】実験結果を示す図面である。
図6】(A)は整流板の第1変形例を示す断面図、(B)は整流板の第2変形例を示す断面図、(C)は整流板の第3変形例を示す断面図である。
図7】第2実施形態を示し、(A)はノズル本体の断面図、(B)は主孔と副孔を示す概略図である。
図8】(A)(B)は第2実施形態の副孔の変形例を示す図面である。
図9】(A)〜(C)は従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態を示す。
該第1実施形態のスプレーノズル10は連続鋳造装置の二次冷却帯に配置して、鋳片の上方から冷却用ミストを噴霧する二流体ノズルからなる。
【0025】
スプレーノズル10は、図1(A)に示すように、ノズル本体1に整流アダプタ2、直管パイプからなる気液混合流体供給管3(以下、流体供給管3と略称する)、混合アダプタ4をそれらの中心軸線Xを一致させて順次接続して形成している。前記中心軸線Xに沿ったノズル本体1の主流路1a、整流アダプタ2の主流路2a、流体供給管3の主流路3a、混合アダプタ4の主流路4aを連通している。混合アダプタ4の主流路4aの後端開口4bに圧縮空気供給管5を接続し、該主流路4aに液体供給管6を直角方向に接続している。
【0026】
図1(B)に示すように、ノズル本体1の中心軸線Xに沿った主流路1aの噴射側端の前端面1eの中心に主孔11を連通して設けると共に、該主孔11の幅方向の両側に一対の副孔12、13を主流路1aおよび主孔11と連通して設けている。
詳しくは、ノズル本体1は略円筒形状で、中空部を前記主流路1aとし、該主流路1aを断面円形としている。該断面円形の主流路1aの前端面1eの中央部に断面円形の前記主孔11を連続して設けると共に、その両側に断面長円形の前記副孔12、13を連続して設けている。
【0027】
前記主孔11は軸線方向の噴射側先端に向けて流路断面積を次第に減少する円錐状とすると共に先端を円弧状として先端円弧部11aを設け、該先端円弧部11aをノズル本体1の噴射側端面1sに近接させている。
前記一対の副孔12、13は中心軸線Xを挟んで対称形状とし、噴射側先端に先端円弧部12a、13aを設け、これら先端円弧部12a、13aの位置を主孔11の先端円弧部11aの位置より噴射側端面1sから若干離した位置または同等の位置としている。即ち、主孔11の先端円弧部11aより副孔12、13の先端円弧部12a、13aを噴射側に突出させていない。
【0028】
図1(C)に示すように、ノズル本体1の噴射側端面1sに直径方向に断面凹状とした切り込み14を設けている。該切り込み14の方向は前記副孔12、13の長辺方向Y1と平行方向とし、かつ、該切り込み14を中心に向けて深くなるテーパとしている。かつ、図1(B)に示すように、該切り込み14の幅14wは両側の副孔12、13と干渉しない幅とし、中央に位置する主孔11の先端円弧部11aと干渉し、切り込み14により先端円弧部11aだけを切り欠いて長円形の噴口15を形成している。かつ、切り込み14は外周側の両端に向けて幅方向を広げて、噴口15の長さ方向の両端に噴射側端面の外周端に向けて次第に広がるガイド凹部14a、14bを延在させている。
【0029】
副孔12、13は断面長円形状とし左右の副孔12、13の主孔側の長辺側部分は主孔11の両側部と重なり、この重なり部分、即ち、図2(C)でクロス斜線で示すラップ部分Z1、Z2で連続した形状としている。主孔11は前記のように、噴口15に向けて細くなる円錐形状で且つ断面円形であり、最大面積となる後端、即ち、主流路1aの前端面1eとの境界位置で主孔11の外周を副孔12、13の中心点Yoと一致させている。主孔11を前端に向けて縮小する円錐形状としているため、前記ラップ部分Z1、Z2の断面積は噴射側前端にかけて次第に小さくなる。
【0030】
前記主孔11の後端径(D1)に対して副孔12、13の長寸径(D2)の比D1:D2=1:0.7〜1:1.2としている。前記主孔11は断面円形であるため、前記後端径(D1)は主孔11の後端の直径である。
【0031】
前記主孔11の後端径D1に対して副孔12、13の短寸径D3の比は、D1:D3=1:0.3〜1:0.7としている。
さらに、副孔12、13の短寸径D3に対する副孔12、13の長寸径D2の比は、
D3:D2=1:1.5〜1:2.5としている。
主孔11の後端径D1および副孔12、13の長寸径D2に対して、副孔12、13の短寸径D3を前記比の範囲に設定しているのは、副孔12、13への流入量を所要量に確保し、副孔12、13から主孔11に流入して撹拌する量を所要量に確保するためである。副孔12、13の短寸径D3を前記範囲より小さくするとラップ面積が減少して撹拌効果が少なくなり、前記範囲より大きくすると、ノズル本体1が大型化する問題がある。
【0032】
前記ノズル本体1の主流路1aの後端開口1gに整流アダプタ2の前部挿入部2bを挿入し、螺合して連結している。該整流アダプタ2は円筒形状で中空部を主流路2aとし、該主流路2aの中間位置に整流板18を介設している。
【0033】
整流板18は図3に示すように4個の小円筒18a〜18dを90度間隔をあけて配置して連続した形状とし、これら小円筒18a〜18dを囲む仮想円の直径を主流路2aの直径と同等としている。主流路2aの周面に嵌合凹部2vを環状に凹設し、整流板18の外周部分を嵌合凹部2vに圧入固定している、該整流板18を主流路2aに配置することで、中心軸線Xと平行な9個の分離流路2dを設けている。
【0034】
前記整流板18の長さL3は5mm〜30mm、整流板18の前端位置はノズル本体1の噴口15から3cm〜6cmの位置としている。
【0035】
前記整流アダプタ2の後端開口に直管パイプからなる流体供給管3の前部挿入部3bを挿入し、螺合して連結している。
【0036】
前記流体供給管3の後部に前記混合アダプタ4の前部挿入部4gを外嵌し、螺合して連結している。該混合アダプタ4の主流路4aは略同径の主流路3aと連通し、該主流路4aの一側部に設けた開口に液体挿入管4cを直角方向から挿入固定し、該液体挿入管4cの先端開口4dに前記液体供給管6を連結している。前記液体挿入管4cに流路断面積を絞ったオリフィス4eを設け、主流路4aに側方から圧力を高めた水を流入させるようにしている。
【0037】
また、混合アダプタ4の主流路4aの後端に小径流路4hを連続して設け、該小径流路4hに大径挿入穴4jを連続して設け、その後端開口4bに前記圧縮空気供給管5を挿入して連結している。
該混合アダプタ4では圧縮空気供給管5より小径流路4hをへて主流路4aに圧力を高めた圧縮空気を流入させ、該圧縮空気に側方から圧力を高めた水を流入させて、衝突混合している。
【0038】
前記圧縮空気供給管5はコンプレッサー(図示せず)から所要圧力とした空気を一定流量でスプレーノズル10に供給している。
また、前記液体供給管6にはポンプ(図示せず)を介して所要圧力とした水をターンダウン比を1:40の広範囲で調節した水量で供給している。
【0039】
次に、本発明のスプレーノズル10の作用を図4(A)〜(C)を参照して説明する。 気体供給管となる圧縮空気供給管5から所要圧力とした圧力空気を、液体供給管6から水を混合アダプタ4内に直交方向から供給して衝突混合し、該混合アダプタ4から流体供給管3を介して整流アダプタ2へ水と空気を混合した気液混合流体AQを流入し、整流アダプタ2内で整流板18を通って整流化し、ノズル本体1内の主流路1aに流入する。
主流路1aの中央部の気液混合流体AQ−cは主孔11に流入し、両側の気液混合流体AQ−sは両側の副孔12、13にそれぞれ流入する。
【0040】
主孔11の両側で副孔12、13の長辺側の約半分が重なり、該ラップ部分Z1、Z2で、副孔12、13に流入する気液混合流体AQ−sは主孔11に側方から流れ込み、主孔11内の気液混合流体AQ−cと衝突混合して、撹拌が生じる。この撹拌により気液混合流体AQの均質化を促進する。
【0041】
図4(C)に示すように、均質化された気液混合流体AQは主孔11の前端の長円形状の噴口15より外方に噴射される。噴口15は切り欠み14の両側壁に挟まれ、噴口15の長さ方向の両端にガイド凹部14a、14bが連続して延在するため、噴口15から噴射された気液混合流体AQはガイド凹部14a、14bに沿って両側方へ拡がる。これにより、スプレーノズル直下への流量を抑えて両側へ流量を多くし、流量が均一な範囲が長い台形状の噴霧パターンとなる。かつ、噴射される気液混合流体AQ中の水滴は微粒化されて圧力空気と混合され、均質化された噴霧となっているため、液量を変えても圧力空気量を一定量とすると、前記噴霧パターンとなる噴霧角度は殆ど変動せず、噴霧範囲内での液量分布および打力分布を略均等にできる。
【0042】
図5の表に前記実施形態のスプレーノズルを用いた実験結果を示す。
図5の表において、Pa(空気圧):MPa
Pw(液圧) :MPa
Qa(空気量):NL/min
Qw(液量) :L/min
H(ノズル直下からの測定位置):mm
なお、表中の50%噴角とは、流量分布が一番高い値を100とし、それに対して50%の比率の広がり寸法と、噴霧高さより三角関数で算出した角度を指す。
【0043】
図5の表に示すように、空気量(Qa)は一定の200NL/minとし、液量(Qw)を1.0L/min→2.0L/min→10.0L/min→20.0L/min→30.0L/min→40.0L/minと変えても、50%噴角は111°→111°→112°→109°→111°→109°と3度しか変動しなかった。また、流量分布および打力分布もほぼ均等であった。
【0044】
このように、本発明のスプレーノズル10は液流量制御範囲のターンダウン比を1:40と広げることができ、従来の2倍のターンダウン比を得ることができる。そのため、鋳片の厚さ寸法の相違、スプレーノズルの設置領域、噴霧時間帯に応じて液流量を変えて対応させることができ、多品種小量生産の要請に答えることができる。
【0045】
本発明は前記実施形態に限定されず、整流板は図6(A)(B)(C)に示す変形例の構成としてもよい。
図6(A)に示す第1変形例の整流板18では、中心から8本の仕切板18sを放射状に設けた形状、所謂、羽根タイプとしている。
図6(B)に示す第2変形例の整流板18では、中央円筒部18eの外周面から8本の仕切板18fを等角度間隔で突出した形状、所謂ベーンタイプとしている。
図6(C)に示す第3変形例の整流板18は、断面円形の本体18iに90度間隔をあけて4つの穴18hを分離流路として設け、穴あけタイプとしている。該穴あけタイプとすると、分離流路をすべて断面円形にでき、隅部を発生させない利点がある。
【0046】
図7(A)(B)に第2実施形態のスプレーノズルを示す。
該第2実施形態のスプレーノズルでは、ノズル本体1の主流路1aの前端に連通する主孔11−2を断面長円形状とし、その長辺方向Y1を両側の断面長円形状の副孔12ー2、13ー2の長辺方向Y1と平行に配置し、短辺方向Y2も平行に配置している。
【0047】
前記主孔11−2の後端の短辺方向Y2の短寸径に対して長辺方向Y1の長寸径は1:1〜1.2、好ましくは1:1〜1.4としている。
前記主孔11−2の長辺側の両側部分に副孔12−2、13−2の対向する長辺側部が重なり、クロス斜線で示すラップ部分Z1、Z2を形成している。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
図8(A)(B)に第2実施形態の副孔12−2、13−2の形状を変えた変形例を示す。主孔11−2は前記第1実施形態と同様の断面円形としている。
図8(A)では、両側の副孔12−2、13−2は、主孔11−2と連続しない反対側の長辺12s、13sを直線状ではなく外方へ円弧形状に膨出させ、両側の副孔12−2、13−2を断面略楕円形状としている。該形状とすると、副孔12−2、13−2から主孔11−2へ側方から流入する流体量が増加でき、噴霧角度を大きくできる。
【0049】
図8(B)では、両側の副孔12−2、13−2は、主孔11−2と連続しない反対側の長辺を長さ方向中心に向けて内向き傾斜させ、各副孔12−2、13−2の外側長辺12m、13mをそれぞれ瓢箪形状としている。該形状とすると副孔12−2、13−2から主孔11−2へ側方から流入する流体量が減少でき、噴霧角度を小さくできる。
【0050】
さらに、前記第1実施形態では混合アダプタを液体供給管と気体供給管に接続して、気液混合流体を噴霧する二流体ノズルとしているが、液体供給管のみ流体供給管3に接続し、整流アダプタ2を通して第1実施形態のノズル本体1に液体のみを流入させ、液体を微粒化して噴射する一流体ノズルとしてもよい。
さらに、ノズル本体に整流アダプタを介して連続する流体供給管は直管状ではなく、屈曲した曲げ配管でもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ノズル本体
2 整流アダプタ
3 気液混合流体供給管
4 混合アダプタ
1a、2a、3a、4a 主流路
5 圧縮空気供給管
6 液体供給管
10 スプレーノズル
11 主孔
12、13 副孔
14 切り込み
14a、14b ガイド凹部
15 噴口
18 整流板
Z1、Z2 ラップ部分
X 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9