特許第6089021号(P6089021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6089021エポキシ化脂肪酸エステル可塑剤を有する熱安定化ポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089021
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】エポキシ化脂肪酸エステル可塑剤を有する熱安定化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20170220BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20170220BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20170220BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20170220BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08K5/1515
   C08K5/098
   C08K5/07
   H01B3/44 B
   H01B3/44 P
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-237002(P2014-237002)
(22)【出願日】2014年11月21日
(62)【分割の表示】特願2012-532270(P2012-532270)の分割
【原出願日】2010年9月29日
(65)【公開番号】特開2015-83686(P2015-83686A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】61/247,329
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/288,713
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/247,383
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/247,427
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー,バラット,アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルズ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ムンドラ,マニッシュ
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−300544(JP,A)
【文献】 特開昭64−065156(JP,A)
【文献】 特開2005−089569(JP,A)
【文献】 特開平11−158486(JP,A)
【文献】 特開2001−316549(JP,A)
【文献】 特開2000−103872(JP,A)
【文献】 特開平10−001584(JP,A)
【文献】 特開昭62−091548(JP,A)
【文献】 特開2008−239849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00 − 27/24
C08K 3/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂と、
20〜60重量%のエポキシ化脂肪酸エステルと、
第1金属塩、第2金属塩及びβジケトンを含む熱安定化組成物と
を含むポリマー組成物であって、
前記βジケトンが、パルミトイルベンゾイルメタン及びステアロイルベンゾイルメタンを含む、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記βジケトンがジベンゾイルメタンをさらに含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物がフタレート無含有である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
導体と、
前記導体上の被覆と
を含む被覆導体であって、
前記被覆は、ポリマー組成物を含み、
前記ポリマー組成物は、
(i)塩化ビニル樹脂、
(ii)20〜60重量%のエポキシ化脂肪酸エステル、及び
(iii)第1金属塩、第2金属塩、及びβジケトンを含む熱安定化組成物
を含み、
前記βジケトンは、パルミトイルベンゾイルメタン及びステアロイルベンゾイルメタンを含む、前記被覆導体。
【請求項5】
前記ポリマー組成物は、
酸化防止剤、及び
充填剤
さらに含み、
前記充填剤は、タルク、炭酸カルシウム、焼成クレー、ホワイティング、フラー土、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、 二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、親水性ヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドシリカ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、以下のそれぞれの出願の一部継続出願であり、優先権を主張する:米国特許
出願第61/247,427号、2009年9月30日出願;米国特許出願第61/24
7,329号、2009年9月30日出願;米国特許出願第61/247,383号、2
009年9月30日出願;及び米国特許出願第61/288,713号、2009年12
月21日出願。前述のそれぞれの出願の内容は、参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、軟性及び柔軟性をポリマー樹脂に付与するために添加される化合物又は化合
物の混合物である。フタル酸ジエステル(「フタレート」としても知られている)は、ポ
リ塩化ビニル(PVC)及び他のビニルポリマーから形成されるポリマー生成物などの多
くの柔軟なポリマー生成物において既知の可塑剤である。
【0003】
フタレート可塑剤は、近年、フタレートの環境に対する悪影響及びフタレートに曝露され
たヒト(特に子供)に対する有害作用の可能性について心配する公共利益団体による厳し
い監視下にある。
【0004】
エポキシ化植物油(例えば、エポキシ化ダイズ油、ESO)は、ポリ塩化ビニル(PV
C)などの塩化ビニル樹脂の補助可塑剤及び補助安定剤としてフタル酸ジエステルの有効
な代替物であることが知られている。エポキシ化植物油可塑剤は、従来、ポリマーマトリ
ックスに少ない割合(典型的には、5〜15重量%以下)でしか使用されず、それは大量
(15重量%超)の存在が、しみ出し(「はみ出し」)をもたらす傾向があるからである
。エポキシ化植物油は、高温で劣化する傾向も有する。そのような劣化は、熱老化により
ポリマーが脆性になり、変色することを引き起こすので問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリマー組成物に可塑剤として適応されたときにしみ出さないエポキシ化脂肪酸エステ
ルの必要性が存在する。はみ出しがなく、熱的に安定もしているエポキシ化脂肪酸エステ
ル可塑剤を有するポリマー組成物の必要性が更に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ化脂肪酸エステル及び熱安定化組成物から構
成されるポリマー組成物を提供する。熱安定化組成物は、はみ出しを低減/排除し、ポリ
マー組成物を熱的に安定化する。特に、熱安定化組成物は、脂肪酸エステルの分解を防止
することにより、押出及び/又は熱老化の際にポリマー組成物を安定化する。
【0007】
本開示は、ポリマー組成物を提供する。実施形態では、ポリマー組成物が提供され、塩
化ビニル樹脂、エポキシ化脂肪酸エステル及び熱安定化組成物を含む。熱安定化組成物は
、第1金属塩、第2金属塩及びβジケトンを含む。
【0008】
本開示は、被覆導体を提供する。実施形態では、被覆導体が提供され、導体及び導体上
の被覆を含む。被覆は、(i)塩化ビニル樹脂、(ii)エポキシ化脂肪酸エステル及び(
iii)熱安定化組成物を含むポリマー組成物を含む。熱安定化組成物は、第1金属塩、第
2金属塩及びβジケトンを含む。
【0009】
本開示の利点は、ポリマー組成物に使用されたときに低減されたループはみ出し(loop
spew)をもたらす又はループはみ出しをもたらさないバイオ系可塑剤である。
【0010】
本開示の利点は、フタレート無含有及び/又は鉛無含有のバイオ系に基づいた可塑剤で
ある。
【0011】
本開示の利点は、温室効果ガスを低減するバイオ系可塑剤である。
【0012】
本開示の利点は、使用者がLEEDクレジットを得ることを可能にするバイオ系可塑剤
である。
【0013】
本開示の利点は、使用者が炭素クレジットを得ることを可能にするバイオ系可塑剤であ
る。
【0014】
本開示の利点は、フタレート無含有及び/又は鉛無含有であるワイヤ及びケーブル用途
の被覆である。
【0015】
本開示の利点は、ワイヤ/ケーブル被覆として適用されるポリマー組成物に使用される
ときに、ループはみ出しをほとんど又は全く生じないフタレート無含有バイオ系可塑剤で
ある。
【0016】
本開示の利点は、一次可塑剤としてエポキシ化脂肪酸エステルを含有するポリマー組成
物である。
【0017】
本開示の利点は、単独可塑剤としてエポキシ化脂肪酸エステルを含有するポリマー組成
物である。
【0018】
本開示の利点は、一次可塑剤としてエポキシ化脂肪酸エステルを含有する、ワイヤ及び
ケーブル用途の被覆である。
【0019】
本開示の利点は、単独可塑剤としてエポキシ化脂肪酸エステルを含有する、ワイヤ及び
ケーブル用途の被覆である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、ポリマー組成物を提供する。ポリマー組成物は、塩化ビニル樹脂、エポキシ
化脂肪酸エステル及び熱安定化組成物を含む。熱安定化組成物は、第1金属塩、第2金属
塩及びβジケトンを含有する。
【0021】
塩化ビニル樹脂
「塩化ビニル樹脂」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1つの水素が塩化物基
に代えられている反復ビニル基を有するポリマーである。塩化ビニル樹脂を、塊状重合、
溶液重合、懸濁重合及び乳化重合のような非限定手順により調製することができる。適切
な塩化ビニル樹脂の非限定例には、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビ
ニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−エチ
レンコポリマー、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、塩化ビニル−スチレンコポリマー
、塩化ビニル−イソブチレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化
ビニル−スチレン−無水マレイン酸ターポリマー、塩化ビニル−スチレン−アクリロニト
リルコポリマー、塩化ビニル−ブタジエンコポリマー、塩化ビニル−イソプレンコポリマ
ー、塩化ビニル−塩素化プロピレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニ
ルターポリマー、塩化ビニル−マレエートコポリマー、塩化ビニル−メタクリレートコポ
リマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−ビニルエーテルコポリ
マー及びそのブレンド、並びにアクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリ
ル−ブタジエン−スチレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−エ
チル(メタ)アクリレートコポリマー及びポリエステルなどの塩素無含有合成樹脂とのブ
レンド、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーが含まれる。
【0022】
ポリマー組成物は、約10又は15又は20又は25又は30又は35又は40重量%
〜約90又は85又は80又は75又は70又は65又は60重量%の量で塩化ビニル樹
脂を含有する。重量パーセントは、ポリマー組成物の総重量に基づいている。
【0023】
実施形態において、塩化ビニル樹脂はポリ塩化ビニルである。
【0024】
エポキシ化脂肪酸エステル(EFA)
ポリマー組成物は、エポキシ化脂肪酸エステルを含む。ポリマー組成物は、1つ、2つ
、3つ又はそれ以上のエポキシ化脂肪酸エステルを含有することができる。用語「エポキ
シ化脂肪酸エステル」(又は「EFA」)は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1
つのエポキシド基を含有する少なくとも1つの脂肪酸部分を有する化合物である。「エポ
キシ基」は、酸素原子が、既に互いに結合している2個の炭素原子のそれぞれに結合して
いる、3員環状エーテル(オキシラン又はアルキレンオキシドとも呼ばれる)である。
【0025】
適切なエポキシ化脂肪酸エステルの非限定例には、天然に生じるエポキシ化油、エポキ
シ化ダイズ油(ESO)、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ
化アマニ油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化ナタネ油、エポキシ化ベニバナ油、エポ
キシ化トール油、エポキシ化キリ油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒ
マシ油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化2
−エチルヘキシルステアレート、エポキシ化ステアリン酸ステアリル、3,4−エポキシ
シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートエポキシ化ダ
イズ油、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化パーム油、エポキシ
化脂肪酸メチルエステル、前述のそれぞれのエポキシ化誘導体及び前述の任意の組み合わ
せなどのエポキシ化動物及び植物油が含まれる。天然に生じるエポキシ化油の非限定例は
、ベルノニア油である。
【0026】
ポリマー組成物は、以下の可塑剤の1つ以上を単独で又はEFAに加えて含有すること
ができる:エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロ
ヘキセンジエポキシド及びこれらの任意の組み合わせ。
【0027】
エポキシ化脂肪酸エステルは、多様な方法で調製することができる。脂肪酸を、アルコ
ール(モノオール又はポリオール)と反応させて、エステル化、エステル交換又はエステ
ル置換反応により、続いてこれらのエステル化、エステル交換又はエステル置換反応の生
成物のエポキシ化により、脂肪酸とアルコールの間にエステル結合を作り出すことができ
る。特定の理論に束縛されることなく、エポキシ化がエステル化、エステル交換又はエス
テル置換反応の生成物の極性及び可溶性のパラメータを増大し、エポキシ化脂肪酸エステ
ルとポリ塩化ビニル樹脂との相溶性の増加をもたらすと考えられる。
【0028】
天然油を出発材料として使用することができる。この場合、天然油を鹸化して脂肪酸に
し、次に上記に開示されたようにアルコールでエステル化することができる。次に、低分
子量エステルをエポキシ化する。不飽和エステルを過酸によりエポキシ化することができ
る。
【0029】
あるいは、脂肪酸のグリシジルエステルを、エピクロロヒドリン又は関連する化学薬品
を介して調製することができる。なお別の代替的実施形態において、トリグリセリドをア
ルコールでエステル交換し、次に不飽和脂肪酸エステルを過酸でエポキシ化することが可
能である。
【0030】
実施形態において、エポキシ化脂肪酸エステルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル
及び2−エチルヘキシルエステルを含む任意のエポキシ化脂肪酸C〜C14エステルで
ありうる。更なる実施形態において、エポキシ化脂肪酸エステルは、脂肪酸メチルエステ
ルのエポキシドである。
【0031】
脂肪酸メチルエステルのエポキシドの調製の非限定例はダイズ油により開始し、ここで
ダイズ油をメタノールでエステル交換して、油中に脂肪酸のメチルエステルを作る。不溶
性のためにグリセロールを反応生成物から除去する。酢酸エチル中の過酢酸の溶液を使用
して、脂肪酸の二重結合をエポキシ化する。過酸を35%未満の過酸及び摂氏35度未満
に保持して、爆ごうを防止する。完了した後、酢酸エチル及び生成物酢酸を真空ストリッ
プにより除去する。
【0032】
EFAはポリマー組成物において可塑剤として機能する。「可塑剤」は、それが添加さ
れるポリマー樹脂(典型的には熱可塑性ポリマー)の弾性率及び引張り強さを低下し、柔
軟性、伸び、衝撃強さ及び引き裂き強さを増加する物質である。可塑剤は、それが添加さ
れるポリマー樹脂の融点を低下し、ポリマー樹脂のガラス移転温度を低下し及び/又はポ
リマー樹脂の加工性を向上することもできる。
【0033】
ポリマー組成物は、約10又は15又は20又は25又は30又は35又は40重量%
〜約90又は85又は80又は75又は70又は65又は60重量%の量でエポキシ化脂
肪酸エステルを含有する。重量パーセントは、ポリマー組成物の総重量に基づいている。
【0034】
実施形態において、EFAは、約3又は4又は5又は6〜約12又は10又は8のオキ
シラン指数(オキシラン酸素の率)を有する。
【0035】
実施形態において、EFAは、5未満又は3未満又は2未満又は0〜5未満のヨウ素価
(ヨウ素g/100g)を有する。
【0036】
実施形態において、エポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ化ダイズ油である。
【0037】
実施形態において、EFAは、ポリマー組成物に存在する一次可塑剤である。更なる実
施形態において、EFAは、ポリマー組成物に存在する単独可塑剤である。
【0038】
実施形態において、EFAは、バイオ系可塑剤組成物である。「バイオ系可塑剤組成物
」は、本明細書で使用されるとき、植物由来材料から構成される可塑剤組成物である。バ
イオ系可塑剤組成物は、温室効果ガス排出を低減し、使用者が炭素及び/又はLEED(
エネルギーと環境に配慮したデザインにおけるリーダーシップ(Leadership in Energy a
nd Environmental Design))クレジットを得ることを可能にするので有利である。
【0039】
本開示の組成物はフタレート無含有でありうるが、実施形態において、可塑剤組成物は
、フタレート(例えば、ジ−イソノニルフタレート、ジアリルフタレート、ジ−2−エチ
ルヘキシル−フタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート及びジイソト
リデシルフタレート)、トリメリテート(例えば、トリオクチルトリメリテート、トリイ
ソノニルトリメリテート及びトリイソデシルトリメリテート)、シトレート、硬化ヒマシ
油のGrindsted(登録商標)Soft−N−Safeアセチル化モノグリセリド
(Daniscoの製品)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸のHexamoll(
登録商標)DINCHジイソノニルエステル(BASFの製品)、ベンゾエート及びアジ
ピン酸ポリエステルが含まれるが、これらに限定されない他の可塑剤を含むこともできる
【0040】
熱安定化組成物
ポリマー組成物は、熱安定化組成物を含む。熱安定化組成物は、(i)第1金属塩、(
ii)第2金属塩及び(iii)ジケトンを含む。
【0041】
それぞれの金属塩の金属は、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウ
ム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリ
ウム)、亜鉛、アルミニウム、スズ及び/又はアルキルスズでありうる。適切な金属塩の
非限定例には、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸
塩などの有機カルボン酸塩、リン酸ステアリル、リン酸ジステアリル、リン酸フェニル及
びリン酸ジフェニルなどのリン酸塩、並びにこれらの塩基性塩、炭酸塩及び硫酸塩、これ
らの金属酸化物及び金属水酸化物が含まれる。
【0042】
実施形態において、金属塩は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリ
ン酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマ
レエートなどの有機スズ化合物から選択される。
【0043】
実施形態において、第1金属塩の金属は亜鉛であり、第2金属塩の金属は、カルシウム
又はバリウムから選択される。
【0044】
実施形態において、第1金属塩はステアリン酸亜鉛である。第2金属塩はステアリン酸
カルシウムである。
【0045】
実施形態において、第1金属塩はステアリン酸亜鉛である。第2金属塩はステアリン酸
バリウムである。
【0046】
熱安定化組成物は、ハイドロタルサイト、ゼオライト、潤滑剤及び/又は過塩素酸塩を
含むこともできる。
【0047】
ジケトン
熱安定化組成物は、βジケトンなどのジケトンを含む。適切なマルチケトン及びβジケ
トン化合物の非限定例には、アセチルアセトン、トリアセチルメタン、2,4,6−ヘプ
タトリオン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセ
チルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロ
ヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジ
ベンゾイルメタン(Rhodiastab(登録商標)83)、パルミトイルベンゾイル
メタン、ステアロイルベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4−オクチ
ルベンゾイル)メタン、ベンゾイルジアセチルメタン、4−メトキシベンゾイルベンゾイ
ルメタン、ビス(4−カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2−カルボキシメチルベン
ゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,
6−ジメチル−2,4−ジオキシシクロヘキサン−1−カルボン酸メチルエステル、2−
アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2−ベンゾイルシクロヘキサン及び前述の任意の
組み合わせが含まれる。パルミトイルベンゾイルメタンとステアロイルベンゾイルメタン
の適切な混合物の非限定例は、Rhodiastab(登録商標)50である。
【0048】
実施形態において、熱安定化組成物は鉛無含有である。適切な鉛無含有熱安定化組成物
の非限定例には、Mark(登録商標)6797、Mark(登録商標)6777ACM
、Therm−Chek(登録商標)RC215P、Therm−Chek(登録商標)
7208、Naftosafe(登録商標)EH−314、Baeropan(登録商標
)MC90400KA、Baeropan(登録商標)MC90400KA/1、Bae
ropan(登録商標)MC9238KA−US、Baeropan(登録商標)MC9
0249KA及びBaeropan(登録商標)MC9754KAが含まれる。
【0049】
熱安定化組成物は、約0.1又は0.2又は0.4又は0.6重量%〜約10.0又は
7.0又は5.0重量%の量でポリマー組成物に存在する。重量パーセントは、ポリマー
組成物の総重量に基づいている。
【0050】
実施形態において、熱安定化組成物の個別の成分(第1金属塩、第2金属塩及びジケト
ン)は、1つの化合物に全てが存在していなくてもよく、ポリマー組成物に別個に添加さ
れうる。
【0051】
ポリマー組成物は、一般に、従来の乾式ブレンド又は湿式ブレンド法に従って調製され
る。ブレンド過程から得られる混合物を、Banburyバッチミキサ、Farrel連
続ミキサ又は一軸若しくは二軸押出機などのミキサにより更に混合することができる。
【0052】
実施形態において、本発明のポリマー組成物は、本明細書に開示されている可塑剤をP
VC粉末に吸収させて乾燥ブレンドを作製することより作製される。Henschelミ
キサ又はリボンブレンダが含まれるが、これらに限定されない任意に適切な方法/装置を
使用して、乾燥ブレンドを作製することができる。ポリマー組成物は、PVD及び可塑剤
に加えて他の添加剤を含有することができる。次に乾燥ブレンドを、更に、溶融ブレンド
(例としては押し出し)により混合し、任意の所望の形状(膜、ペレットなど)に形成す
ることができる。
【0053】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドする。溶融ブレンドポリマー組成物を小
板に成形する。
【0054】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、約D10
又はD20又はD30〜約D70又はD60又はD50のショア硬度を有する。ショア硬
度は、ASTM D 2240に従って測定される。
【0055】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、ASTM
D 638に従い、30ミル厚の小板から切断したドッグボーンにより測定して、11
3℃で168時間熱老化した後に約70%を超える又は約80%を超える又は90%を超
える引張り強さ保持率を有する。
【0056】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、ASTM
D 638に従い、30ミル厚の小板から切断したドッグボーンにより測定して、13
6℃で168時間熱老化した後に約70%を超える又は80%を超える又は90%を超え
る引張り強さ保持率を有する。
【0057】
実施形態では、本発明のポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、
ASTM D 638に従い、30ミル厚の小板により測定して、113℃で168時間
熱老化した後に約30%を超える又は35%を超える又は40%を超える又は70%を超
える又は約80%を超える又は90%を超える又は95%を超える引張り伸び保持率を有
する。
【0058】
実施形態では、本発明のポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、
ASTM D 638に従い、30ミル厚の小板により測定して、136℃で168時間
熱老化した後に約30%を超える又は35%を超える又は40%を超える又は70%を超
える又は80%を超える又は90%を超える引張り伸び保持率を有する。
【0059】
引張り強さ及び引張り伸びは、それぞれ、ASTM D−638に従い、圧縮成形小板
から切断した(i)未老化及び(ii)熱老化ドッグボーン試験片において測定した。
【0060】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、変色を示
さない(すなわち、色を保持する)。色は、目視検査により決定される。
【0061】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、23℃で
48時間曝露された後、表面に僅かなしみ出し物(はみ出し物)を示すか又は全く示さな
い。しみ出しの存在は、ループはみ出し試験により決定される。
【0062】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、113℃
で7日間老化した後、表面に僅かなしみ出し物(はみ出し物)を示すか又は全く示さない
。しみ出し物の存在は、目視検査により決定される。
【0063】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、136℃
で7日間老化した後、表面に僅かなしみ出し物(はみ出し物)を示すか又は全く示さない
。しみ出し物の存在は、目視検査により決定される。
【0064】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融しブレンドし、小板に成形する。136℃で7日
間曝露した後、30ミル厚の成形小板から切断した直径1.25インチの試験片は、元の
重量(すなわち、熱老化前の重量)の96%超又は96.5%超又は97.0%超を維持
する。
【0065】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、20分を
超える又は25分を超える又は30分を超える、200℃での酸化誘導時間を示す。
【0066】
実施形態では、ポリマー組成物を溶融ブレンドし、小板に成形する。小板は、113℃
で8週間老化した後、300%未満又は250%未満又は200%未満のセカント弾性率
保持率を示す。
【0067】
添加剤
前述のポリマー組成物のいずれも以下の添加剤の1つ以上を含むことができる:充填剤
、酸化防止剤、難燃剤(三酸化アンチモン、酸化モリブジック及びアルミナ水和物)、ド
リップ防止剤、着色剤、潤滑剤、低分子量ポリエチレン、ヒンダードアミン光安定剤(少
なくとも1つの第二級又は第三級アミン基を有する)(「HALS」)、UV光線吸収剤
(例えば、o−ヒドロキシフェニルトリアジン)、硬化剤、増進剤及び遅延剤、加工助剤
、結合剤、耐電防止剤、核剤、滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界
面活性剤、エキステンダー油、酸掃去剤、金属不活性化剤、並びにこれらの任意の組み合
わせ。
【0068】
実施形態において、本発明のポリマー組成物は充填剤を含む。適切な充填剤の非限定例
には、タルク、炭酸カルシウム、焼成クレー、ホワイティング、フラー土、ケイ酸マグネ
シウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、 二酸化チタン、酸化マ
グネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、親水性ヒュームドシリカ、疎水性
(表面処理)ヒュームドシリカ及び前述の任意の組み合わせが含まれる。焼成クレーの非
限定例は、Satintone(登録商標)SP−33及びPolyfil(登録商標)
70である。
【0069】
実施形態において、本発明のポリマー組成物は酸化防止剤を含む。適切な酸化防止剤の
非限定例には、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ
ヒドロ−シンナメート)]メタン、ビス[(ベータ−(3,5−ジtert−ブチル−4
−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス
(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert
−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−
ブチルフェノール)及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒド
ロキシ)ヒドロシンナメートなどのヒンダードフェノール;トリス(2,4−ジ−ter
t−ブチルフェニル)ホスファイト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホニトなど
のホスファイト及びホスホニト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジ
プロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;多様なシロキ
サン;重合化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1
,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4
,4’−ビス(アルファ,アルファ−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル
−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン、並びに他のヒ
ンダードアミン劣化防止剤又は安定剤が含まれる。適切な酸化防止剤の非限定例には、T
opanol(登録商標)CA、Vanox(登録商標)1320、Irganox(登
録商標)1010、Irganox(登録商標)245及びIrganox(登録商標)
1076が含まれる。酸化防止剤(又は複数の酸化防止剤)を、本開示の可塑剤(又は可
塑剤組成物)に添加することができる。酸化防止剤を、ポリマー組成物の重量に基づいて
0.01〜5重量%の量で使用することができる。
【0070】
実施形態において、本発明のポリマー組成物は潤滑剤を含む。適切な潤滑剤の非限定例
には、ステアリン酸、ステアリン酸の金属塩、パラフィンロウ及びポリエチレングリコー
ルが含まれる。潤滑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。潤滑剤を熱安
定化組成物と組み合わせることもできる。
【0071】
実施形態において、本発明のポリマー組成物は加工助剤を含む。適切な加工助剤の非限
定例には、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸の金属塩;ス
テアリン酸、オレイン酸又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアルアミド、オレアミド、エル
カアミド又はN,N'−エチレンビス−ステアルアミドなどの脂肪酸アミド;ポリエチレ
ンロウ;酸化ポリエチレンロウ;酸化エチレンのポリマー;酸化エチレンと酸化プロピレ
ンのコポリマー;植物ロウ;石油ロウ;非イオン性界面活性剤;並びにポリシロキサンが
含まれる。加工助剤を、組成物の重量に基づいて0.05〜5重量%の量で使用すること
ができる。
【0072】
実施形態において、ポリマー組成物は安定剤及び酸化防止剤を含む。最適な安定剤及び
酸化防止剤のパッケージによって、本発明のポリマー組成物は、高温での長時間乾燥又は
湿潤絶縁抵抗試験に必要な用途及び温度が136℃までの高さの他の厳しい用途に適して
いる。
【0073】
本発明のポリマー組成物(単数又は複数)は、本明細書に開示されている2つ以上の実
施形態を含むことができる。
【0074】
被覆導体
本発明のポリマー組成物の前述の特性は、ワイヤ及びケーブルの被覆用途(ジャケット
、絶縁)、特に高温電線/ケーブル用途などの物品に十分に適している。したがって、本
開示は被覆導体を提供する。「導体」は、任意の電圧(DC、AC又は過渡)でエネルギ
ーを移動する伸長形状(ワイヤ、ケーブル、ファイバ)の要素である。導体は、典型的に
は、少なくとも1つの金属線又は少なくとも1つの金属ケーブル(例えば、アルミニウム
若しくは銅)であるが、光ファイバも含まれうる。
【0075】
導体は、単一のケーブル又は一緒に束ねられた複数のケーブル(すなわち、ケーブル心
線又は心線)でありうる。「ケーブル」及び同様の用語は、保護絶縁体、ジャケット又は
シース内の少なくとも1本のワイヤ又は光ファイバを意味する。典型的には、ケーブルは
、典型的には共通の保護絶縁体、ジャケット又はシース内で一緒に束ねられている2本以
上のワイヤ又は光ファイバである。ジャケット内部の個別のワイヤ又はファイバは、裸で
ありうる、覆われていることがある又は絶縁されうる。結合ケーブルは、電線及び光ファ
イバの両方を含有することができる。被覆導体は、柔軟、半剛性又は剛性でありうる。
【0076】
被覆は、導体上に位置する。被覆は、絶縁層及び/又は半導体層などの1つ以上の内側
層でありうる。被覆は、外側層(「ジャケット」又は「シース」とも呼ばれる)を含むこ
ともできる。被覆は、本明細書に開示されている本発明のポリマー組成物のいずれかを含
む。本明細書で使用されるとき、「上に」(「on」)は、被覆と導体の直接的な接触又
は間接的な接触を含む。「直接的な接触」は、被覆が導体と直ちに接触し、被覆と導体の
間に介在層(単数若しくは複数)がない及び/又は介在物質(単数若しくは複数)がない
配置である。「間接的な接触」は、介在層(単数若しくは複数)及び/或いは介在構造(
単数若しくは複数)又は材料(単数若しくは複数)が導体と被覆の間に位置している配置
である。被覆は、導体を完全に又は部分的に覆うことができるか、そうでなければ取り囲
む又は包み込むことができる。被覆は、導体を取り囲む単独成分でありうる。あるいは、
被覆は、金属導体を包み込む多層ジャケット又はシースの1つの層でありうる。
【0077】
被覆は、本発明のポリマー樹脂を含む。ポリマー樹脂は、本明細書に開示されている任
意のポリマー樹脂でありうる。ポリマー樹脂は、(i)塩化ビニル樹脂、(ii)エポキシ
化脂肪酸エステル、及び(iii)熱安定化組成物を含む。熱安定化組成物は、第1金属塩
、第2金属塩及びβジケトンを含む。
【0078】
実施形態において、エポキシ化脂肪酸エステルは、被覆における一次可塑剤である。更
なる実施形態において、エポキシ化脂肪酸エステルは、被覆における単独可塑剤である。
【0079】
実施形態において、被覆に存在するエポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ化ダイズ油
である。
【0080】
被覆は、本発明の組成物について上記に考察された特性のいずれかを有することができ
る。実施形態において、被覆導体は、UL−1581に従って測定する熱試験に合格する
【0081】
本発明のポリマー組成物は、予想外には、柔軟性、低い可塑剤揮発性、低い移動(はみ
出しが少ない/ない)、低い粘度及び高い熱安定性の特性を示し、同時にエポキシ化脂肪
酸エステルを一次可塑剤又は単独可塑剤として組成物に含有している。本発明のポリマー
組成物は、予想外には、過酷な136℃熱老化試験に対抗する及び/又は打ち勝つ。導体
上に被覆として押し出されたとき、本発明のポリマー組成物は、予想外には、高温での過
酷な乾燥及び湿潤絶縁抵抗試験(例えば、湿潤では75℃又は乾燥では97℃)に対抗す
る及び/又は打ち勝つ。
【0082】
適切な被覆導体の非限定例には、大衆消費電子製品用のたわみ配線などのたわみ配線、
電源ケーブル、携帯電話及び/又はコンピュータ用の充電器線、コンピュータデータコー
ド、電源コード、機器配線材料、建設用電線、自動車用電線及び家電用アクセサリコード
が含まれる。
【0083】
本発明の被覆導体は、本明細書に開示されている2つ以上の実施形態を含むことができ
る。
【0084】
本明細書に開示されている組成物を含むジャケットを有する、被覆ワイヤ又は被覆ケー
ブル(任意の絶縁層を有する)などの被覆導体は、多様な種類の押出機、例えば一軸又は
二軸型により調製することができる。従来の押出機の記載は米国特許第4,857,60
0号において見出すことができる。共押出し及び押出機の例は、米国特許5,575,9
65号において見出すことができる。典型的な押出機は、上流末端にホッパ、下流末端に
ダイを有する。ホッパは、スクリュを含有するバレルに供給する。下流末端では、スクリ
ュとダイの末端の間にスクリーンパック及びブレーカープレートがある。押出機のスクリ
ュ部分は、供給区画、圧縮区画及び計量区画の3つの区画、並びに後面加熱領域及び前面
加熱領域の2つの領域に分かれていると考慮され、区画と領域は上流から下流へと連続し
ている。代替的には、上流から下流へと連続している軸に沿って多数の加熱領域(2つを
超える)が存在することができる。2つ以上のバレルを有する場合、バレルは直列に連結
されている。それぞれのバレルにおける長さ対直径の比は、約15:1〜約30:1の範
囲である。
【0085】
本開示のワイヤ及びケーブル構造(すなわち、被覆金属導体)は、本発明の組成物を導
体上又は絶縁導体の束上に押し出して、絶縁導体の周囲に被覆(又はジャケット)を形成
することによって作製される。ジャケット又は絶縁体の厚さは、所望の最終使用用途の要
件によって決まる。ジャケット又は絶縁体の典型的な厚さは、約0.010インチから約
0.200インチ又は約0.015インチから約0.050インチである。本発明の組成
物を、予め作製された組成物から押し出してジャケットにすることができる。通常、本発
明の組成物は、押出機への供給が容易なようにペレットの形態である。ワイヤ及びケーブ
ルのジャケット又は絶縁体は、本発明の組成物をペレット化する別個の工程を経ることな
く、混合押出機から直接押し出すことができる。この1工程混合/押出過程は、組成物の
1つの熱履歴工程を省く。
【0086】
ナイロン層を、絶縁体を覆うように押し出すこともでき、従来のTHHN、THWN及
びTHWN−2構造などである。
【0087】
本開示の実施形態の非限定例を下記に提供する。
【0088】
実施形態E1では、ポリマー組成物が提供され、塩化ビニル樹脂、エポキシ化脂肪酸エ
ステル及び熱安定化組成物を含む。熱安定化組成物は、第1金属塩、第2金属塩及びβジ
ケトンを含む。E2。エポキシ化脂肪酸エステルが約3重量%〜約12重量%のオキシラ
ン指数を有する、E1のポリマー組成物。E3。エポキシ化脂肪酸が0〜5未満のヨウ素
価を有する、E1〜E2のいずれかのポリマー組成物。E4。エポキシ化脂肪酸がエポキ
シ化ダイズ油である、E1〜E3のいずれかのポリマー組成物。E5。熱安定化組成物が
2つの異なる金属を含み、それぞれの金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネ
シウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム及びスズからなる
群より選択される、E1〜E4のいずれかのポリマー組成物。E6。第1金属塩が亜鉛を
含み、第2金属塩が、バリウム及びカルシウムからなる群より選択される金属を含む、E
1〜E5のいずれかのポリマー組成物。E7。熱安定化組成物が、ジベンゾイルメタン、
ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン及びこれらの組み合わせ
からなる群より選択されるβジケトンを含む、E1〜E6のいずれかのポリマー組成物。
E8。ASTM D 3291に従って測定して0〜2のループはみ出し値を有する、E
1〜E7のいずれかのポリマー組成物。E9。UL1581及びASTM D 638に
従って測定して、136℃で168時間の熱老化後に約30%を超える引張り伸び保持率
を有する、E1〜E8のいずれかのポリマー組成物。
【0089】
実施形態E10では、ポリマー組成物が提供され、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ化ダ
イズ油及び熱安定化組成物を含む。熱安定化組成物は、第1金属塩、第2金属塩及びβジ
ケトンを含む。E11。熱安定化組成物が、ステアリン酸亜鉛、並びにジベンゾイルメタ
ン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン及びこれらの組み合
わせからなる群より選択されるβジケトンを含む、E10のポリマー組成物。
【0090】
実施形態E12では、被覆導体が提供され、導体及び導体上の被覆を含む。被覆は、実
施形態E1〜E11のいずれかのポリマー組成物を含む。
【0091】
定義
元素周期表に対する全ての参照は、CRC Press,Inc.、2003により出
版され著作権保有されている元素周期表を参照する。また、基又は複数の基に対するあら
ゆる参照は、基を番号付けするためにIUPAC系を使用するこの元素周期表に反映され
ている基又は複数の基である。特に異なる記述がない、内容から示唆されない又は当該技
術において慣用ではない限り、全ての部及び率は、重量に基づいており、全ての試験方法
は、この開示の出願日の時点で最新のものである。米国の特許実務の目的において、任意
の参照特許、特許出願又は公報の内容は、特に、合成技術、生成物及び加工設計、ポリマ
ー、触媒、定義(本開示において特に提供されている任意の定義と不一致ではない程度)
及び当該技術における一般的知識に関して、その全体が参照として組み込まれる(又はそ
の同等の米国版が参照としてそのように組み込まれる)。
【0092】
本開示の数値範囲は近似値であり、したがって、特に示されない限り、範囲外の値を含
むことができる。数値範囲は、任意のより低い値と任意のより高い値との間に少なくとも
2単位の分離があるのであれば、1単位ずつ増加する下限及び上限値以上の全ての値を含
む。例として、例えば分子量、メルトインデックスなどの組成的、物理的又は他の特性が
100〜1,000である場合、意図は、100,101、102などの全ての個別の値
及び100〜144、155〜170、197〜200などの部分範囲は、明確に列挙さ
れることである。1未満である値又は1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を
含有する値を含有する範囲では、1単位は、適切であれば0.0001、0.001、0
.01又は0.1であることが考慮される。10未満(例えば、1〜5)の一桁の数を含
有する範囲では、1単位は典型的には0.1であると考慮される。これらは、何が特に意
図されるかの例にすぎず、列挙される最低値と最高値の間の数値の可能な組み合わせは、
全て、本開示に明確に記述されていると考慮されるべきである。数値範囲は、とりわけ、
組成物及び/又は被覆における成分、添加剤及び組成物における他の多様な成分の量、並
びにこれらの成分が定義される多様な性質及び特性について本開示内において提供される
【0093】
化学化合物に関して使用されるとき、特に示されていない限り、単数形は、全ての異性
体形態を含み、その逆もある(例えば、「ヘキサン」はヘキサンの全ての異性体を個別的
又は集合的に含む)。用語「化合物」及び「錯体」は、有機、無機及び有機金属化合物を
意味するために交換可能に使用される。用語「原子」は、イオン状態にかかわらず、すな
わち、電荷若しくは部分電荷を有するか又は別の原子に結合しているかにかかわらず、元
素の最小構成成分を意味する。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)又は同等
の技術により決定される結晶融点を欠いているポリマーを意味する。
【0094】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」及び同様の用語は、2つ以上のポリマーのブレン
ド、並びにポリマーと多様な添加剤とのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混
和性であっても、なくてもよい。そのようなブレンドは、相分離しても、しなくてもよい
。そのようなブレンドは、透過電子顕微鏡分光法、光拡散、X線拡散及び当該技術におい
て既知の他の任意の方法により決定される1つ以上のドメイン構成を含有しても、しなく
てもよい。
【0095】
「組成物」及び同様の用語は、2つ以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。
【0096】
用語「含む」、「含まれる」、「有する」及びこれらの派生語は、任意の追加の成分、
工程又は手順の存在を、これらが特に開示されているかにかかわらず、除外することを意
図しない。疑念を回避するために、用語「含む」の使用により特許請求される全ての組成
物は、特に記述のない限り、任意の追加的な添加剤、補助剤又は化合物を、ポリマーであ
るか又はそうでないかにかかわらず含むことができる。対照的に、用語「から実質的にな
る」は、操作性に必須ではないもの以外は、後に続く任意の列挙他の任意の成分、工程又
は手順の範囲を除外する。用語「からなる」は、特に叙述又は提示されていない任意の成
分、工程又は手順を除外する。用語「又は」は、特に記述のない限り、個別のみならず任
意の組み合わせで提示されたメンバーを意味する。
【0097】
実施形態において、本明細書に開示されている組成物は、フタレート無含有である。用
語「フタレート無含有の組成物」は、本明細書で使用されるとき、フタレートを欠いてい
るか、そうでなければフタレートがない組成物である。「フタレート」は、以下の構造(
I):
【0098】
【化1】
【0099】
[式中、R及びR’は、同一又は異なっていてよい]を含む化合物である。R及びR’は
、それぞれ、1〜20個の炭素原子を有する置換/非置換ヒドロカルビル基から選択され
る。本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」は、水素原子
及び炭素原子のみを含有する置換基を意味し、分岐鎖又は非分岐鎖、飽和又は不飽和、環
状、多環式、縮合又は非環式の種及びこれらの組み合わせが含まれる。ヒドロカルビル基
の非限定例には、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シ
クロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、アラルキル、アルキルアリー
ル及びアルキニル基が含まれる。位置3、4、5及び6は、それぞれ、水素又は他の部分
で占有されうる。
【0100】
用語「ポリマー」(及び同様の用語)は、同一又は異なる種類のモノマーを反応(すな
わち、重合)させることにより調製された高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモ
ポリマー及びコポリマーが含まれる。
【0101】
試験方法
熱安定化組成物におけるジケトンの存在は、安定化されたTHFによる1重量%での抽
出、続く液体注入GC−MSにより決定される。ベータ−ジケトンの同定は、質量スペク
トルの解釈及び外部標準液との比較を介して実施される。
【0102】
ヨウ素価は、油中の不飽和度を測定し、AOCS Official Method
Cd 1−25(g I/100g)に従って決定される。
【0103】
ループはみ出しは、180°ループ曲げの内側に生じた圧縮応力に起因してはみ出した
可塑剤の量を評価することにより、ポリ(塩化ビニル)プラスチックにおける可塑剤の相
溶性を決定するASTM D 3291に従って測定される。簡潔には、この方法を使用
して、可塑化ポリ(塩化ビニル)シートの試験片をおよそ180°の弧に沿って曲げ、こ
れらを所望の形状に保持するように設計されたジグに固定する。試験片を制御温度(すな
わち、23℃)に保持し、特定の時間間隔で試験片を取り外し、逆方向に180°に曲げ
、ループの内側の成形物を目視検査及び乾燥人差し指でその領域を拭うことにより、可塑
剤のはみ出しの証拠について検査する。表1は、ループはみ出しの値のランク付けを示す
【0104】
【表1】
【0105】
200℃での酸化誘導時間(OIT)は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定
される。DSCセルを、器具が高純度インジウム(融点=156.6℃)を使用する温度
に正確に較正されていることを確実にするために、前もって確かめる。実験の前に、DS
Cセルが200.0℃の等温温度に達すること及び窒素及び酸素パージガスがDSCパー
ジガス入口に接続されていることを確実にする。試料質量のおよそ10〜15mgを開放
アルミニウムパンで使用する。最も一貫性のあるOITの結果は、単一ディスク試験片を
使用して得られる。そのように成形された小板材料を使用して、試料が均質であり、試験
結果に最小限の影響を与えることを確実にする。試料を、窒素パージ下、20℃/分の速
度により室温から特定の温度で加熱する。試料を、窒素パージ下、特定の温度で5分間保
持して、試料及びDSCセルが標的温度で熱的に平衡になるようにする。5分間保持した
後、ガスを窒素から酸素パージに替える。試料を、有意な酸化発熱反応が得られるまで、
酸素パージによる等温条件下で保持する。これが生じるために必要な時間は、試験される
材料の相対的な酸化安定性によって決まる。実験は、有意な発熱の発生が得られた後にお
いてのみ停止される(すなわち、mW>2.00の場合、次のセグメントが終了される)
。OIT値は、DSCデータ分析ソフトウエアにおける発生オプションを使用して確立さ
れた発生時間として定義される。
【0106】
オキシラン指数(オキシラン酸素含有量)は、AOCS Official Meth
od Cd 9−57に従って決定される。
【0107】
ポリマー組成物における可塑剤の相溶性も、確定された時間(例えば7日間)にわたっ
て高温(例えば、113℃又は136℃)で老化した成形又は押出試験片の目視検査によ
って評価される。押出試験片は、ワイヤの形態(すなわち、導体を覆って押し出された絶
縁体)でありうる。
【0108】
ショア硬度は、ASTM D 2240に従って決定される。
【0109】
被覆導体(押出ワイヤ)の表面平滑性は、ANSI/ASME B46.1に従い、日
本のMitutoyo製の表面粗さ測定装置を使用して測定される。
【0110】
未老化試験片、113℃又は136℃又は60℃(QUVチャンバ及び90%の相対的
湿度)で8週間まで老化した試験片の引張り強さ(TS)、引張り強さ保持率(TSR)
、引張り伸び(TE)、引張り伸び保持率(TER)及びセカント弾性(2インチ/分)
は、成形小板から切断したドッグボーン又は被覆導体(押出ワイヤ)から取り外した管状
絶縁体のいずれかにより、ASTM D 638及びUL 1581/2556に従って
決定される。
【0111】
用語「UL 1581」は、電線、ケーブル及び可撓コードのUnderwriter
s Laboratoriesの参照標準(Underwriters Laboratories Reference Stan
dard for Electrical Wires, Cables, and Flexible Cords)である。UL 1581は
、導体、絶縁体、ジャケット及び他の被覆について、試料調製、試料選択及び条件付けに
ついての方法、並びにワイヤ及びケーブルの標準に求められる測定及び計算についての特
定の詳細を含有する。
【0112】
500ボルトの直流による23℃での体積抵抗率(オーム−cm)は、ASTM D
257に従って測定される。直径3.5インチの試験片を、40ミル厚成形小板から切断
し、Hewlett Packard 4329A High Resistance
Meterに接続したHewlett Packard 16008A Resisti
vity Cellを使用して試験する。
【0113】
136℃で7日後の重量保持(%)は、30ミル厚成形小板から切断した直径1.25
インチの試験片で測定される。
【0114】
湿潤絶縁抵抗(WIR)は、UL 83/2556に従って、14 AWG固体銅導体
及び0.015インチの絶縁体厚のワイヤ試料で測定される。試料の長さは14フィート
であり、10フィートが水に浸漬されたコイルであり、両端の2フィートが、電源へのリ
ード線として作用する。試料は、水浴により75℃及び600VのACで36週間まで老
化される。絶縁抵抗は、Quadtech 1868Aメグオームメータにより500V
のDCを60秒間適用することにより測定される。最初の測定は、6時間水浸した後、電
圧を適用しないで実施される。後の測定は全て1週間に1回の頻度で行われる。
【0115】
例としてであって限定ではなく、本開示の例を提供する。
【実施例】
【0116】
実施例1〜6及び比較試料(CS)1〜8の成分を下記の表2に提供する。
【0117】
【表2】
【0118】
多様な材料の物質安全データシートから得られた(安定化されたTHFにより1重量%
で抽出され、続いて液体注入GC−MSにより決定されたジケトンの存在を除く)多様な
熱安定化組成物の組成を、表3に提供する。重量パーセントは、熱安定化組成物の総重量
に基づいている。
【0119】
【表3】
【0120】
多様な熱安定化組成物の分析試験を実施して、Rhodiastab 83(ジベンゾ
イルメタン)及びRhodiastab 50(パルミトイルベンゾイルメタンとステア
ロイルベンゾイルメタンの混合物)などのβジケトンの存在を調べる。比較試料2、3及
び4(CS2、CS3及びCS4)の熱安定化組成物は、βジケトンを含有しない。
【0121】
以下の手順を使用して、実施例1〜6及びCS1〜8の組成物を調製する。
−可塑剤を60℃に少なくとも60分間予熱し、使用前に振とうする。
−個別の成分を計量する。
−最初に、可塑剤組成物をソーキングしてPVC粉末することにより「乾燥ブレンド」
を作製し、次に溶融混合物を作製する。
−以下の手順を「乾燥ブレンド」の調製に使用する。
(a)へらを使用して容器において全て(可塑剤及び充填剤を除く)を混合することに
より、「固体混合物」を作製する。
(b)シグマブレードを有する「40cm」Brabenderミキシングボウルを
90℃及び40rpmで使用する。
(c)2分間温めた後、固体混合物を加える。30秒間混合する。
(d)可塑剤を加える。360秒間(6分間)混合する。
(e)クレー充填剤を加える。60秒間混合する。
(f)停止させ、「乾燥ブレンド」を取り出す。
−続いて「乾燥ブレンド」を、以下の手順を使用して溶融混合する。
(a)カムローターを有する「40cm」Brabenderミキシングボウルを4
0rpm設定で使用する
(b)「乾燥ブレンド」を加え、180℃で2分間混合する。
【0122】
ミキシングボウルから取り出したブレンド組成物を、180℃で5分間圧縮成形し、得
られた小板の色を記録する(クリーム色が望ましい)。硬度、重量、引張り強さ、伸び(
2インチ/分)を、30ミル厚成形小板から切断した未老化試験片及び113℃又は13
6℃で168時間老化した試験片で測定する。熱老化試験片を、表面のしみ出し物(はみ
出し物)の証拠についても視覚的に検査する。体積抵抗率を、40ミル厚成形小板から切
断した試験片により23℃で測定する。ショア硬度を、250ミル厚の成形試験片で測定
する。結果を下記の表4に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
実施例1〜6は、熱老化の前後に満足のいく特性を示す。対照的に、熱安定剤なしで作
製された比較試料1(CS1)は、136℃で老化した後、劣っている特性、すなわち、
琥珀色(劣化を示す)、より高い密度、より多い重量損失及び不十分な引張り伸び保持率
を示す。熱安定化組成物としてステアリン酸亜鉛を含有する比較試料2、5及び7(CS
2、CS5及びCS7)は、136℃で老化した後、相当量のしみ出し(はみ出し)及び
はるかに劣っている引張り伸び保持率をもたらす。ジケトンのない金属塩の混合物である
比較試料3及び4(CS3及びCS4)も琥珀色を示し、有意な劣化が溶融混合及び圧縮
成形工程の際に生じたことを示している。熱安定化組成物としてステアリン酸カルシウム
を含有する比較試料6及び8(CS6及びCS8)は、136℃で老化した後、有意な変
色、しみ出し(はみ出し)及び劣っている引張り伸び保持率をもたらす。
【0125】
実施例1〜6は、混合金属石鹸及びβジケトンを含有する熱安定化組成物の0.2〜1
0重量%を有するPVC/ESOが優れた特性を生じることを実証している。
【0126】
実施例7及び比較試料9〜11
実施例7及び比較試料9〜11の成分を下記の表5に提供する。
【0127】
【表5】
【0128】
以下の手順を使用して、実施例7及びCS9〜11の組成物を調製する。
−可塑剤を60℃に少なくとも60分間予熱し、使用前に振とうする。
−個別の成分を計量する。
−最初に、可塑剤をソーキングしてPVC粉末することにより「乾燥ブレンド」を作製
し、次に溶融混合物を作製する。
−以下の手順を「乾燥ブレンド」の調製に使用する。
(a)へらを使用して容器において全て(可塑剤及び充填剤を除く)を混合することに
より、「固体混合物」を作製する。
(b)シグマブレードを有する「250cm」Brabenderミキシングボウル
を90℃及び90rpmで使用する。
(c)2分間温めた後、固体混合物を加える。30秒間混合する。
(d)可塑剤を加える。360秒間(6分間)混合する。
e)充填剤を加える。60秒間混合する。
f)停止させ、「乾燥ブレンド」を取り出す。
−続いて「乾燥ブレンド」を、以下の手順を使用して溶融混合する。
(a)カムローターを有する「250cm3」Brabenderミキシングボウルを
40rpm設定で使用する。
(b)「乾燥ブレンド」を加え、180℃で2分間混合する。
【0129】
ミキシングボウルから取り出したブレンド組成物を、180℃で5分間圧縮成形し、得
られた小板の色を記録する(クリーム色が望ましい)。重量、引張り強さ/伸び(2イン
チ/分)を、30ミル厚成形小板から切断した未老化試験片及び113℃又は136℃又
は60℃(QUVチャンバ及び90%相対湿度)で8週間まで老化した試験片で測定する
。熱老化試験片を、表面のしみ出し物(はみ出し物)の証拠についても視覚的に検査する
。酸化誘導時間も測定する。結果を表6に示す。
【0130】
【表6】
【0131】
CS9〜11と比較して、実施例7の組成物は、高温で8週間まで老化した後、はるか
に優れた酸化誘導時間;高温での重量保持(UV及び90%相対湿度の高い湿度に曝露さ
れたときでも);セカント弾性率保持率及び引張り伸び保持率を示す。
【0132】
実施例8及び9
実施例8及び9の成分を下記の表7に提供する。
【0133】
【表7】
【0134】
以下の手順を使用して、実施例8及び9の組成物を調製する。
−可塑剤を60℃に少なくとも60分間予熱し、使用前に振とうする。
−個別の成分を計量する。
−最初に、可塑剤をソーキングしてPVC粉末することにより「乾燥ブレンド」を作製
し、次に溶融混合物を作製する。
−以下の手順を「乾燥ブレンド」の調製に使用する。
(a)へらを使用して容器において全て(可塑剤及び充填剤を除く)を混合することに
より、「固体混合物」を作製する。
(b)Henschel型ハイインテンシティミキサを使用して、最初に固体混合物を
60秒間フラクシングし、次に可塑剤を360秒間(6分間)かけて添加及び混合し、最
後にクレーを加え、更に90秒間混合することにより、3kgの「乾燥ブレンド」を設定
温度90℃及び1800rpmで作製する。
(c)停止させ、「乾燥ブレンド」を取り出す。
−続いて「乾燥ブレンド」を、45rpm及びゾーン1=170℃、ゾーン2=175
℃、ゾーン3=180℃、ダイ=185℃の設定温度プロフィールで円錐形二軸押出機(
25:1 L/D)を使用して溶融混合する。続いて押出束を空冷し、ペレット化する。
【0135】
ペレットを180℃で5分間圧縮成形する。試験片を、体積抵抗率及びショア硬度を除
いた全ての特性を試験するために、30ミル成形小板から切断する。体積抵抗率を、40
ミル厚成形小板から切断した試験片で測定する。ショア硬度を、250ミル厚の成形試験
片で測定する。またペレットを使用して、25:1一軸押出機を40rpm及び170℃
、175℃、180℃、185℃の設定温度で使用して0.064インチ(14AWG)
固体銅導体上に被覆することにより、ワイヤ/ケーブルを作製する。被覆導体の外径は、
およそ0.094インチ(すなわち、およそ0.015インチ厚の絶縁体)である。ワイ
ヤ押出しの際にダイ圧力が留意される。結果を下記の表8及び9に示す。ワイヤの75℃
での湿潤絶縁抵抗測定値を表10に示す。
【0136】
実施例8及び9の組成物は、(1)はみ出しのない平滑ケーブル被覆をもたらす。(1
)はみ出しのない平滑ケーブル被覆は、(2)136℃で熱老化した後に優れた引張り特
性保持率を有し、(3)優れた電気特性を有する。特に、ワイヤの長時間湿潤絶縁抵抗は
優れており、0.115メガオーム/1000フィートの最低合格要件を十分に越えてお
り、24週間後に1週間あたり2%未満の絶縁抵抗の減少という安定基準に合格している
【0137】
【表8】
【0138】
【表9】
【0139】
【表10】
【0140】
本開示は、本明細書に含有されている実施形態及び例示に限定されるのではなく、以下の特許請求の範囲内に入る実施形態の一部及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更形態を含むことが、特に意図される。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 塩化ビニル樹脂と、
エポキシ化脂肪酸エステルと、
第1金属塩、第2金属塩及びβジケトンを含む熱安定化組成物と
を含む、ポリマー組成物。
[2] 前記エポキシ化脂肪酸エステルが約3重量%〜約12重量%のオキシラン指数を有する、[1]に記載のポリマー組成物。
[3] 前記エポキシ化脂肪酸が0〜5未満のヨウ素価を有する、[1]または[2]に記載のポリマー組成物。
[4] 前記エポキシ化脂肪酸がエポキシ化ダイズ油である、[1]から[3]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[5] 前記熱安定化組成物が2つの異なる金属を含み、それぞれの金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム及びスズからなる群より選択される、[1]から[4]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[6] 前記第1金属塩が亜鉛を含み、前記第2金属塩が、バリウム及びカルシウムからなる群より選択される金属を含む、[1]から[5]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[7] 前記熱安定化組成物が、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるβジケトンを含む、[1]から[6]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[8] ASTM D 3291に従って測定して0〜2のループはみ出し値を有する、[1]から[7]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[9] ASTM D 638に従って測定して、136℃で168時間の熱老化後に約30%を超える引張り伸び保持率を有する、[1]から[8]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[10] 導体と、
導体上の被覆とを含み、該被覆が、
(i)塩化ビニル樹脂;
(ii)エポキシ化脂肪酸エステル;及び
(iii)第1金属塩、第2金属塩及びβジケトンを含む熱安定化組成物
を含むポリマー組成物を含む
被覆導体。