特許第6089042号(P6089042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6089042糖尿病及び関連症状の治療のための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089042
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】糖尿病及び関連症状の治療のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20170220BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170220BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20170220BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A61K31/198ZMD
   A61K9/08
   A61P3/10
   A23L33/175
   A23L2/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-542296(P2014-542296)
(86)(22)【出願日】2012年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-533689(P2014-533689A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012000557
(87)【国際公開番号】WO2013077893
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】61/629,633
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509031062
【氏名又は名称】エマウス メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】ニイハラ,ユタカ
【審査官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/038014(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/107307(WO,A1)
【文献】 田中 弘吉他,久留米医学会雑誌,1981年,Vol.44, No.9,10,p.654-661
【文献】 Samocha-Bonet D, et al.,The Journal of Nutrition,2011年 7月,Vol.141,p.1233-1238
【文献】 糖尿病用薬,治療薬マニュアル 2007,2007年,p.743-747
【文献】 Tashima CM, et al.,Dig Dis Sci,2007年,Vol.52,p.1233-1241
【文献】 Opara EC, et al.,The journal of nutrition,1996年,Vol.126, No.1,p.273-279
【文献】 佐用義孝 他,2型糖尿病患者に対するDPP−4阻害薬シタグリプチンの投与6ヵ月間の臨床効果に関する検討,Therapeutic Research,2011年 4月,Vol.32, No.4,p523-529
【文献】 内田大学 他,2型糖尿病におけるシタグリプチンの治療効果の検討,Progress in Medicine,2011年 3月,Vol.31,p911-916
【文献】 柳澤守文 他,DPP−4阻害薬シタグリプチンの2型糖尿病に対する有用性の検討−血糖日動変動の影響についてSMBGを用いた検討−,医学と薬学,2010年,Vol.64, No.6,p887-894
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00−9/72
A61P 3/10
A23L 33/00
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HbA1C値を6.1%以下に低下させるための組成物であって、
該組成物はL−グルタミンまたはL−グルタミン塩を含み、
HbA1C値が6.1%より高い人に、1日に0.15g/体重kg〜7.0g/体重kgの前記L−グルタミンまたはL−グルタミン塩を、3ヶ月間にわたって経口摂取させた後、前記人のHbA1C値が6.1%以下に低下する、組成物。
【請求項2】
前記組成物がL−グルタミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が水溶液の一部として経口摂取される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
記人は、前記L−グルタミンまたはL−グルタミン塩の経口摂取の開始前に測定されたHbA1C値が6.5%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年11月21日に出願された米国仮特許出願第61/629,633号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、糖尿病及び関連症状を治療するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、L−グルタミン、その塩またはその誘導体を含む組成物、及びそのような組成物の糖尿病及び関連症状の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病(diabetes mellitus)は、糖尿病(diabetes)とも称され、高血糖値の人における代謝疾患群である。糖尿病の人は、血糖値を調節するインスリンを十分に生産できないか、生産されたインスリンにその人の細胞が適切に反応できない。
【0004】
糖尿病には、1型、2型及び妊娠糖尿病という3つの主要な型がある。1型糖尿病では、身体がインスリンを生産できなくなる。2型糖尿病では、人の細胞がインスリンを正常に使用できないインスリン抵抗性によるものである。妊娠糖尿病は、2型糖尿病についての前病歴のない、特定の妊娠中の女性が経験するものである。
【0005】
糖尿病は、1種以上の血液検査を通じて得られる測定値により診断される。例えば、以下の試験及び関連する値は、糖尿病を示す典型的なものである:空腹時血漿グルコース値が7.0mmol/L以上(126mg/dL以上);75g経口グルコース負荷(例えば、グルコース負荷試験)の2時間後における血漿グルコース値が11.1mmol/L以上(200mg/dL以上);随時血漿グルコース値が11.1mmol/L以上(200mg/dL以上)及び高血糖症の症状;糖化ヘモグロビン値(すなわち、HbA1C値)が6.5%以上。
【0006】
高血糖症の症状は、特に限定されないが、過剰な喉の渇き、疲労、頻尿、空腹、体重低下及び高トリグリセリド血症を含み得る。血中トリグリセリド値が200mg/dLを超えると、その人は高トリグリセリド血症とされ、500mg/dLを超える値は非常に高いと考えられる。通常のトリグリセリド値は、一般的に150mg/mL未満である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
糖尿病及びその関連症状の治療に用いられ得る、さらなる組成物及び方法のための技術が求められている。これが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、糖尿病及び関連症状を治療するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、L−グルタミン、その塩またはその誘導体を含む組成物、及びそのような組成物の糖尿病及び関連症状の治療における使用に関する。
【0009】
方法の態様では、本発明は糖尿病の治療方法を提供する。該方法は、糖尿病の人に対し、L−グルタミン、L−グルタミン塩またはL−グルタミン誘導体を、1日に0.05g/体重kg〜10.0g/体重kg経口摂取させることを含む。
【0010】
別の方法の態様では、本発明は高トリグリセリド血症の治療方法を提供する。該方法は、高トリグリセリド血症の人に対し、L−グルタミン、L−グルタミン塩またはL−グルタミン誘導体を、1日に0.05g/体重kg〜10.0g/体重kg経口摂取させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、L−グルタミン(1)及びL−グルタミン塩及び誘導体(2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、糖尿病及び関連症状を治療するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、L−グルタミン、その塩またはその誘導体を含む組成物、及びそのような組成物の糖尿病及び関連症状の治療における使用に関する。
【0013】
L−グルタミンの構造を、図1の化合物1に示す。L−グルタミン塩及び誘導体を、図1の化合物2として示す。L−グルタミン塩及び誘導体は、特に限定されないが、化合物2において以下の置換基を有する:
1はNH2である。
2はNH2、NH3+、NH3Br、NH3OPO3H、NH3OC(O)CH3(すなわち、酢酸塩)、NH3OC(O)CHCHCO2H(すなわち、フマル酸塩(トランスオレフィン))、NH3OC(O)CH(OH)CH(OH)CO2H(すなわち、酒石酸塩)、NH3OC(O)CHCHCO2H(すなわち、マレイン酸塩(シスオレフィン))、NH3OC(O)CH2C(OH)(CO2H)CH2CO2H(すなわち、クエン酸塩)、NH3OC(O)CO2H(すなわち、シュウ酸塩)、NH3OS(O)2OH(すなわち、メタンスルホン酸塩)、NH3OS(O)264CH3(すなわち、p−トルエンスルホン酸塩)及びNH3OC(O)C(O)CH2CH2CO2H(すなわち、α−ケトグルタル酸塩)である。
3はOH、O-、ONa、OK、OCa、OLi、ONH2(CH265)CH2CH2NHCH266(すなわち、ベンザチン塩)、ON(CH2CH3)2CH2CH2OC(O)C63ClNH2(すなわち、クロロプロカイン塩)、ON(CH3)3CH2CH2OH(すなわち、コリン塩)、ONH2(CH2CH2OH)2(すなわち、ジエタノールアミン塩)、ONH3CH2CH2OH(すなわち、エタノールアミン塩)、ONH3CH2CH2NH2(すなわち、エチルジアミン塩)、ONH2(CH3)CH2CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH2OH(すなわち、メグルミン塩)、ONH3C(CH2OH)3(すなわち、トロメタミン塩)、ONH3C(CH3)3(すなわち、t−ブチルアミン塩)、ON(CH2CH3)2CH2CH2OC(O)C64NH2(すなわち、プロカイン塩)、NHCH(CH3)CO2H、NHCH(CH(CH3)2)CO2H、NHCH(CH(CH3)(CH2CH3))CO2H、NHCH(CH2CH(CH3)2)CO2H、NHCH(CH2CH2SCH3)CO2H、NHCH(CH265)CO2H、NHCH(CH265OH)CO2H、NHCH(CH286N)CO2H、NHCH2CO2H、NHCH(CH2CH2C(O)NH2)CO2H、NHCH(CH2C(O)NH2)CO2H、NHCH(CH(OH)CH3)CO2H、NHCH(CH2OH)CO2H、NHCH(CH2CH2CO2H)CO2H、NHCH(CH2CO2H)CO2Hである。
【0014】
一般的に、単一の化合物(例えば、L−グルタミン)が、糖尿病または関連症状のための治療を求めている人に投与される。しかしながら、所定の場合において、2つ以上の化合物の混合物が投与されてもよい。例えば、L−グルタミンは、1つ以上のL−グルタミン塩または誘導体と共に投与されてもよい。
【0015】
L−グルタミン、その塩、誘導体または混合物は、あらゆる適切な方法により投与されてもよい。例えば、所定の場合において、水溶液として投与されてもよい。該溶液は、L−グルタミン、塩または誘導体のみを溶解成分として有していてもよく、他の薬学的に許容可能な化合物を含んでいてもよい。そのような化合物には、特に限定されないが、例えば、緩衝剤及び香料が含まれる。
【0016】
L−グルタミン、その塩、誘導体または混合物の投与され得る方法の他の例は、特に限定されないが、以下を含む:液体(水またはジュース)中の懸濁物としての投与;粉末として、または他の形態(例えば、錠剤またはカプセル)の固体としての投与;食品(例えば、ヨーグルト)との混合物としての投与。水溶液と共に投与される場合、上述の投与形態は、他の薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。
【0017】
本発明に従う、L−グルタミン、塩または誘導体の投与される量は、一般的に、0.05g/体重kg〜10.0g/体重kgの範囲である。多くの場合、該量は、0.10g/体重kg〜8.0g/体重kgの範囲である。所定の場合には、該量は、0.15g/体重kg〜7.0g/体重kgの範囲である。
【0018】
L−グルタミン、その塩または誘導体は、一般的に、人に対して1日1回投与される。しかしながら、該化合物は、指定された場合には、1日1回を超えて投与されてもよい。
【0019】
本発明に従う組成物は、血糖値を測定するいくつかの異なる試験により決定される糖尿病を治療するために用いられてもよい。以前の試験において空腹時血漿グルコース値が7.0mmol/L以上であった人では、L−グルタミン、その塩または誘導体の少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間または3ヶ月間の投与の後、空腹時血漿グルコース値は、一般的に6.9mmol/L以下に低下する。多くの場合、6.8mmol/L以下または6.7mmol/L以下に低下する。
【0020】
以前の試験において該血漿グルコース値が11.1mmol/L以上であった人では、75g経口グルコース負荷試験の2時間後、該血漿グルコース値は、一般的に11.0mmol/L以下に低下する。多くの場合、該値は10.9mmol/L以下または10.8mmol/L以下に低下する。所定の場合には、該値は、10.7mmol/L以下に低下する。
【0021】
以前の試験において糖化ヘモグロビン値が6.5%以上であった人では、糖化ヘモグロビン値は、一般的に6.4%以下に低下する。多くの場合、該値は6.3%以下または6.2%以下に低下する。所定の場合には、該値は6.1%以下に低下する。
【0022】
本発明に従う組成物は、高トリグリセリド血症を含む糖尿病の所定の症状を治療するためにもまた用いられてよい。以前の試験において血中トリグリセリド値が500mg/dL以上であった人では、L−グルタミン、その塩または誘導体の少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間または3ヶ月間の投与の後、血中トリグリセリド値は、一般的に200mg/dL以下に低下する。所定の場合では、該血中トリグリセリド値は180mg/dL以下または160mg/dL以下に低下する。以前の試験において血中トリグリセリド値が200mg/dL以上であった人では、血中トリグリセリド値は、一般的に190mg/dL以下に低下する。多くの場合、該トリグリセリド値は180mg/dL以下、170mg/dL以下、160mg/dL以下または150mg/dL以下に低下する。
【0023】
本発明の組成物が糖尿病を治療するために用いられる場合、それらは糖尿病を治療するために用いられる他の方法と組み合わせられてもよい。例えば、組成物は、インスリン増感剤、分泌促進剤及び/またはα−グルコシダーゼ阻害剤と組み合わせて投与されてもよい。インスリン増感剤は、特に限定されないが、例えば、ビグアナイド(例えば、メトホルミン(グルコファージ))、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン(アバンディア)、ピオグリタゾン(アクトス))を含む。分泌促進剤は、特に限定されないが、例えば、スルホニル尿素(例えば、トルブタミド(オリナーゼ)、アセトヘキサミド(ジメロール)、トラザミド(トリナーゼ)、クロルプロパミド(ジアビネス)、グリピジド(グルコトロール)、グリブリド(ダイアベータ、ミクロナーゼ、およびグリナーゼ)、グリメピリド(アマリール)、またはグリクラジド(ダイアミクロン))及び非スルホニル尿素(例えば、レパグリニド(プランジン)およびナテグリニド(スターリックス))を含む。α−グルコシダーゼ阻害剤は、特に限定されないが、例えば、ミグリトール(グリセット)及びアカルボース(プレコース/グルコバイ)を含む。
【0024】
本発明の組成物が高トリグリセリド血症を治療するために用いられる場合、それらは高トリグリセリド血症を治療するために用いられる他の方法と組み合わせられてもよい。例えば、組成物は、スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、ナイアシン、魚油及びオメガ3酸エチルエステル処方薬と組み合わせて投与されてもよい。スタチン系薬剤は、特に限定されないが、例えば、アトルバスタチン(リピトール)、フルバスタチン(レスコール)、ロバスタチン(メバコール)、プラバスタチン(プラバコール)、ロスバスタチン(クレストール)及びシンバスタチン(ゾコール)を含む。フィブラート系薬剤は、特に限定されないが、例えば、フェノフィブラート(トリコール)及びゲムフィブロジル(ロピッド)を含む。オメガ3酸エチルエステル処方薬は、特に限定されないが、例えばオマコールを含む。
【実施例】
【0025】
実験結果
HA1Cの低下
ある人の測定された糖化ヘモグロビン値(すなわち、HbAlC値)は6.9%であった。その人に、L−グルタミンを水溶液として1日30g経口摂取させた。L−グルタミン投与の3ヶ月後、その人のHbA1C値を測定したところ、6.1%であった。
【0026】
トリグリセリドの低下
ある人の測定された血中トリグリセリド値は500mg/dLであった。その人に、L−グルタミンを水溶液として1日30g経口摂取させた。L−グルタミン投与の3ヶ月後、その人の血中トリグリセリド値を測定したところ、150mg/dLであった。
図1