【実施例】
【0050】
実施例
セクションA.脱細胞化(パートI)
実施例1−脱細胞化用の固形臓器の調製
死後の血栓形成を避けるため、ドナーラットを、400 Uのヘパリン/ドナー体重(kg)で全身ヘパリン化した。ヘパリン化に続いて、心臓および隣接する大血管を慎重に摘出した。
【0051】
ヘパリン(2000 U/ml)を含む生理食塩液(0.9%)中に前記心臓を置き、さらなる処理を行うまで5℃で維持した。無菌条件下で心臓および大血管から結合組織を除去した。下大静脈および左右の肺静脈を左右の心房の遠位から、Monofil社製の非吸収性の結紮糸を用いて結紮した。
【0052】
実施例2−カニューレの挿入および固形臓器の灌流
心臓を、灌流するために脱細胞化装置上にマウントした(
図1)。胸部下行動脈(descending thoracic artery)にカニューレを挿入し、逆行性の冠灌流を可能とした(
図1、カニューレA)。胸動脈の分枝(例えば腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈)を結紮した。肺動脈にカニューレを、その分枝が左右の肺動脈に入るまで挿入した(
図1、カニューレB)。上大静脈にカニューレを挿入した(
図1、カニューレC)。この配置により、逆行性と順行性の両方の冠灌流が可能となる。
【0053】
大動脈カニューレ(A)に陽圧が加わると、灌流が、冠動脈から毛細血管床を介して冠静脈系を通り、右心房および上大静脈へと生じた(C)。上大静脈カニューレ(C)に陽圧が加わると、灌流が、右心房、冠静脈洞、および冠静脈から、毛細血管床を介して冠動脈および大動脈カニューレ(A)へと生じた。
【0054】
実施例3−脱細胞化
心臓を脱細胞化装置にマウントした後に、定常的な冠血流を再び確立するために、灌流液1 Lあたり1〜5 mmolのアデノシンを含む、カルシウム非含有の冷たいヘパリン化リン酸緩衝液によって順行性の灌流を開始した。冠灌流圧および流量を測定し、ならびに冠血管抵抗(coronary resistance)を計算することで冠血流を評価した。安定した冠血流を15分間流した後に、界面活性剤をベースとした脱細胞化処理を開始した。
【0055】
手順の詳細は以下に記載するが、簡単に説明すると、心臓を界面活性剤で順行的に灌流した。灌流後に、該心臓を緩衝液(例えばPBS)で逆行的に洗い流すことができる。次に該心臓を、抗生物質を含むPBSで、および続いてDNase Iを含むPBSで灌流した。次に該心臓を、微生物の混入を抑えるために、および後の微生物の混入を防ぐために1%塩化ベンザルコニウムで灌流し、ならびに続いてPBSで灌流して、臓器から任意の残存性の細胞成分、酵素、または界面活性剤を洗い流した。
【0056】
実施例4−ラットの死体の心臓の脱細胞化
雄のヌードラット(250〜300 g)8匹から心臓を摘出した。切開直後に大動脈弓にカニューレを挿入し、該心臓を所定の界面活性剤で逆行的に灌流した。4種類の異なる界面活性剤をベースとした脱細胞化プロトコル(後述)を、(a)細胞成分の除去、ならびに(b)血管構造の保存の可能性および有効性に関して比較した。
【0057】
脱細胞化は一般に、以下の段階を含むようにした:固形臓器の安定化、固形臓器の脱細胞化、固形臓器の再生および/または中和、固形臓器の洗浄、臓器表面に残存する任意のDNAの分解、臓器の殺菌、ならびに臓器の恒常性維持。
【0058】
(A)脱細胞化プロトコル#1(PEG)
心臓を、100 U/mlのペニシリン、0.1 mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンBを含む200 mlのPBSで、再循環せずに洗浄した。次に該心臓を、35 mlのポリエチレングリコール(PEG;1 g/ml)で最長30分間、手動で再循環しながら脱細胞化した。次にこの臓器を500 mlのPBSで最長24時間、再循環用ポンプを使用して洗浄した。洗浄段階を少なくとも2回(各回少なくとも24時間)繰り返した。該心臓を35 mlのDNase I(70 U/ml)に少なくとも1時間、手動で再循環しながら曝露した。この臓器を再度、500 mlのPBSで少なくとも24時間にわたって洗浄した。
【0059】
(B)脱細胞化プロトコル#2(Triton Xおよびトリプシン)
心臓を、100 U/mlのペニシリン、0.1 mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンBを含む200 mlのPBSで少なくとも約20分間、再循環せずに洗浄した。次に該心臓を、0.05%トリプシンで30分間かけて脱細胞化した後に、5% Triton-Xおよび0.1%水酸化アンモニウムを含む500 mlのPBSで約6時間かけて灌流した。該心臓を脱イオン水で約1時間にわたって灌流した後に、PBSで12時間にわたって灌流した。次に該心臓を3回(各24時間)、再循環用ポンプを使用して500 mlのPBSで洗浄した。該心臓を35 mlのDNase I(70 U/ml)で1時間かけて手動で再循環しながら灌流し、さらに500 mlのPBSで2回(各回少なくとも約24時間)、再循環用ポンプを使用して洗浄した。
【0060】
(C)脱細胞化プロトコル#3(1% SDS)
心臓を、100 U/mlのペニシリン、0.1 mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンBを含む200 mlのPBSで少なくとも約20分間、再循環せずに洗浄した。該心臓を、再循環用ポンプを使用して、1% SDSを含む500 mlの水で少なくとも約6時間かけて脱細胞化した。次に該心臓を脱イオン水で約1時間洗浄し、およびPBSで約12時間洗浄した。該心臓を500 mlのPBSで3回(各回少なくとも約24時間)、再循環用ポンプを使用して洗浄した。次に該心臓を35 mlのDNase I(70 U/ml)で約1時間、手動で再循環しながら灌流し、および500 mlのPBSで3回(各回少なくとも約24時間)、再循環用ポンプを使用して洗浄した。
【0061】
(D)脱細胞化プロトコル#4(Triton X)
心臓を、100 U/mlのペニシリン、0.1 mg/mlのストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアムホテリシンBを含む200 mlのPBSで少なくとも約20分間、再循環せずに洗浄した。次に該心臓を、再循環用ポンプを使用して、5% Triton Xおよび0.1%水酸化アンモニウムを含む500 mlの水で少なくとも6時間かけて脱細胞化した。次に該心臓を脱イオン水で約1時間、続いてPBSで約12時間にわたって灌流した。該心臓を500 mlのPBSで3回(各回少なくとも24時間)、再循環用ポンプを使用して灌流することで洗浄した。次に該心臓を35 mlのDNase I(70 U/ml)で約1時間、手動で再循環しながら灌流し、および500 mlのPBSで3回(各回約24時間)、洗浄した。
【0062】
最初の実験では、脱細胞化装置を層流フード内に据えた。心臓を60 cm H
2Oの冠灌流圧で灌流した。必須ではないものの、上記の実験で記載された心臓を脱細胞化用チャンバー内にマウントし、抗生物質を含むPBSに完全に浸して再循環モードで72時間にわたって5 ml/分の連続流で灌流し、細胞成分および界面活性剤を可能な限り洗い流した。
【0063】
脱細胞化の成功は、組織切片中における筋フィラメントおよび核の不在と定義した。血管構造の保存の成功は、2%エバンスブルーによる灌流と、これに続く組織切片の包埋によって評価した。
【0064】
極めて効率のよい脱細胞化は、最初に心臓を、脱イオン水に溶解したイオン性界面活性剤(1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、約0.03 M)で順行的に定常冠灌流圧で灌流し、続いて非イオン性界面活性剤(1% Triton X-100)で順行的に灌流してSDSを除去し、およびおそらく、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質が再生することで生じた。心臓を間欠的にリン酸緩衝液で逆行的に灌流することで、閉塞した毛細血管および小血管を通した。
【0065】
実施例5−脱細胞化された臓器の評価
脱細胞化後に血管構造が損なわれていないことを証明すべく、血管基底膜を染色して大血管および微小血管の密度を定量するために、脱細胞化された心臓をランゲンドルフ灌流を介してエバンスブルーによって染色する。さらに、ポリスチレン粒子を心臓中に、および心臓を通って灌流することで、血管漏出のレベルを示す冠動脈容積(coronary volume)を定量することが可能であり、かつ冠動脈流出液(coronary effluent)および組織切片を解析することで灌流の分布を評価できる。以下の3つの基準の組み合わせを評価し、摘出された脱細胞化されていない心臓を比較する:(1)ポリスチレン粒子の均一な分布、(2)あるレベルにおける漏出の有意な変化、(3)微小血管密度。
【0066】
繊維の方向を、一軸または二軸の応力が加わる試料にリアルタイムで応用可能な、Tower et al. (2002, Fiber alignment imaging during mechanical testing of soft tissues, Ann Biomed Eng., 30(10):1221-33)の偏光顕微鏡法によって評価する。ランゲンドルフ灌流中に、脱細胞化されたECMの基本的な機械的特性(コンプライアンス、弾性、破裂圧)を記録し、および摘出直後の心臓と比較する。
【0067】
セクションB.脱細胞化(パートII)
実施例1−ラット心臓の脱細胞化
12週齢の雄のF344フィッシャーラット(Harlan Labs, PO Box 29176 Indianapolis, IN 46229)に、100 mg/kgのケタミン(Phoenix Pharmaceutical, Inc., St. Joseph, MO)、および10 mg/kgのキシラジン(Phoenix Pharmaceutical, Inc., St. Joseph, MO)を腹腔内注射して麻酔した。左大腿静脈を介した全身ヘパリン化(American Pharmaceutical Partners, Inc., Schaumberg, IL)後に胸骨正中切開術を行って心膜を開いた。胸骨後方の脂肪体を除去し、上行性胸部大動脈を切開して、その分枝を結紮した。大静脈および肺静脈、肺動脈および胸部大動脈を切断し、胸部から心臓を摘出した。充填済みの1.8 mmの大動脈カニューレ(Radnoti Glass, Monrovia, CA)を上行大動脈に挿入することで、逆行性の冠灌流(ランゲンドルフ)を可能とした。心臓を、10μMのアデノシンを含むヘパリン化PBS(HyClone, Logan, UT)による75 cm H
2Oの冠灌流圧における15分間の灌流後に、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)または1%ポリエチレングリコール1000(PEG 1000)(EMD Biosciences, La Jolla, Germany)、または脱イオン水を溶媒とする1% Triton-X 100(Sigma, St. Louis, MO)で2〜15時間かけて灌流した。続いて、脱イオン水による15分間の灌流、および脱イオン水を溶媒とする1% Triton-X (Sigma, St. Louis, MO)による30分間の灌流を行った。次に心臓を、抗生物質を含むPBS(100 U/mlのペニシリン-G(Gibco, Carlsbad, CA)、100 U/mlのストレプトマイシン(Gibco, Carlsbad, CA)、および0.25μg/mlのアムホテリシンB(Sigma, St. Louis, MO))で124時間かけて連続的に灌流した。
【0068】
1% PEG、1% Triton-X 100、または1% SDSのいずれかによる逆行性の灌流の420分後に、PEGおよびTriton-X 100による灌流は、浮腫状の不透明な外観を誘導したが、SDSによる灌流は、より劇的な変化を生じ、不透明な要素を穏やかに洗い流すことで、ほぼ半透明の移植片が得られた。3つ全てのプロトコルが行われた心臓は、肉眼的にはインタクトであり、(77.4 mmHgの定常冠灌流圧における)灌流プロトコル中に、冠動脈の破損または大動脈弁不全の証拠は認められなかった。冠血流は、全3通りのプロトコルにおいて、灌流の最初の60分間は低下し、後にSDSによる灌流中に正常に戻ったが、Triton-X 100およびPEGによる灌流では上昇したままであった。SDSによる灌流は、計算された冠血管抵抗(最大250 mmHg.s.ml
-1)の最高の初期上昇を誘導し、Triton-XおよびPEGによる灌流では、それぞれ最大200 mmHg.s.ml
-1および最大150 mmHg.s.ml
-1であった。
【0069】
界面活性剤で灌流した心組織の組織切片を使用したところ、観察時間中における脱細胞化は、PEGとTriton-X 100で処理した心臓の両方において不完全なことが判明し;ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色により、核および横紋のある繊維の存在が明らかとなった。これとは対照的に、核または収縮性のフィラメントはSDS灌流心臓の切片中に検出されなかった。しかしながら、血管構造およびECM繊維の方向は、SDSで処理した心臓では保存されていた。
【0070】
初期の脱細胞化後にECMからイオン性のSDSを除去するために、臓器をTriton-X 100で30分間かけて灌流した。加えて、全ての界面活性剤を完全に洗い流すために、および生理学的pHを再び確立するために、脱細胞化された臓器を、脱イオン水およびPBSで124時間にわたって十分に灌流した。
【0071】
実施例2−ラット腎臓の脱細胞化
腎臓の摘出に際しては、全ての腹膜内容物を湿らせたガーゼで包み、後腹膜腔が露出するように慎重に側方に動かした。腸間膜血管を結紮して切断した。腹部大動脈を結紮し、腎動脈の起始部(take off)の下部で切断した。胸部大動脈を横隔膜のすぐ上で切断し、1.8 mmの大動脈カニューレ(Radnoti Glass, Monrovia, CA)を使用してカニューレを挿入した。後腹膜から腎臓を慎重に摘出し、腎動脈に加わる張力を最小限に抑えるために無菌のPBS(HyClone, Logan, UT)に浸した。ヘパリン化PBSによる15分間の灌流後に、脱イオン水を溶媒とする1% SDS(Invitrogen, Carlsbad, CA)による2〜16時間の灌流、および脱イオン水を溶媒とする1% Triton-X(Sigma, St. Louis, MO)による30分間の灌流を行った。次に肝臓を、抗生物質を含むPBS(100 U/mlのペニシリン-G(Gibco, Carlsbad, CA)、100 U/mlのストレプトマイシン(Gibco, Carlsbad, CA)、0.25μg/mlのアムホテリシンB(Sigma, St. Louis, MO))で124時間にわたって連続的に灌流した。
【0072】
SDSによる420分間の灌流と、これに続くTriton-X 100による灌流によって、腎ECMの足場が、血管系および臓器の構造は損なわれずに完全に脱細胞化された。エバンスブルーによる灌流によって、血管系が、脱細胞化された心臓ECMと同様にインタクトであることが確認された。脱細胞化された腎皮質をモバット・ペンタクローム(Movat pentachrome)によって染色した結果、インタクトな細胞または核は存在せず、糸球体ならびに近位および遠位の曲尿細管の基底膜はインタクトであることが判明した。脱細胞化された腎髄質の染色の結果、尿細管および集合管の基底膜がインタクトであることが判明した。脱細胞化された腎皮質のSEMでは、糸球体および尿細管の基底膜がインタクトであることが確認された。糸球体内における周囲の近位および遠位の尿細管と糸球体の毛細血管基底膜との間に糸球体の輪郭を形成するボーマン嚢などの特徴的な構造は保たれていた。脱細胞化された腎髄質のSEM画像から、腎盂内に至る髄質の錐体は損なわれておらず、腎乳頭に至る集合管の基底膜はインタクトであることが判明した。したがって、腎臓の主要な超微細構造の全ては、脱細胞化後にインタクトであった。
【0073】
実施例3−ラット肺の脱細胞化
肺(気管を含む)を胸部から慎重に摘出し、肺動脈に加わる張力を最低限に抑えるために、滅菌済みのPBS(HyClone, Logan, UT)に浸した。ヘパリン化PBSによる15分間の灌流後に、脱イオン水を溶媒とする1% SDS(Invitrogen, Carlsbad, CA)による2〜12時間の灌流、および脱イオン水を溶媒とする1% Triton-X(Sigma, St. Louis, MO)による15分間の灌流を行った。次に肺を、抗生物質を含むPBS(100 U/mlのペニシリン-G(Gibco, Carlsbad, CA)、100 U/mlのストレプトマイシン(Gibco, Carlsbad, CA)、0.25μg/mlのアムホテリシンB(Sigma, St. Louis, MO))で124時間にわたって連続的に灌流した。
【0074】
SDSによる180分間の灌流と、これに続くTriton-X 100による灌流によって、気道および血管が損なわれていない、完全に脱細胞化された肺のECM足場が得られた。組織切片をモバット・ペンタクロームで染色したところ、コラーゲンやエラスチンなどの主要構造タンパク質を含む肺のECM成分に加えて、プロテオグリカンなどの可溶性成分の存在も確認された。しかしながら、核またはインタクトな細胞は保持されていなかった。気道は、主要分枝から終末細気管支〜呼吸細気管支、肺胞管および肺胞に至るまで保存されていた。毛細血管レベルに下降する肺動脈、および肺静脈に由来する血管床はインタクトなままであった。脱細胞化された肺のSEM顕微鏡写真から、気管支、肺胞、および血管基底膜が保存されており、細胞が保持された証拠はないことがわかった。肺胞間中隔ならびに中隔基底膜に主要な構造支持体を提供する弾性繊維および細網繊維の網目構造は、肺間質内の毛細血管の密な網を含めてインタクトであった。
【0075】
脱細胞化された気管のSEM顕微鏡写真から、ECM構造が、脱細胞化された硝子軟骨輪、および気道上皮を含まない粗い管腔基底膜を伴い、インタクトであることが判明した。
【0076】
実施例4−ラット肝臓の脱細胞化
肝臓の摘出に関しては、大静脈を腹部正中切開によって露出させ、切開し、マウスの大動脈カニューレ(Radnoti Glass, Monrovia, CA)を使用してカニューレを挿入した。肝動脈および肝静脈、ならびに胆管を切断し、ならびに肝臓を腹部から慎重に摘出し、および門脈に加わる張力を最小限とするために無菌PBS(HyClone, Logan, UT)に浸した。ヘパリン化PBSによる15分間の灌流に続いて、脱イオン水を溶媒とする1% SDS(Invitrogen, Carlsbad, CA)による2〜12時間の灌流、および脱イオン水を溶媒とする1% Triton-X(Sigma, St. Louis, MO)による15分間の灌流を行った。次に肝臓を、抗生物質を含むPBS(100 U/mlのペニシリン-G(Gibco, Carlsbad, CA)、100 U/mlのストレプトマイシン(Gibco, Carlsbad, CA)、0.25μg/mlのアムホテリシンB(Sigma, St. Louis, MO))で124時間、連続的に灌流した。
【0077】
SDSによる120分間の灌流と、これに続くにTriton-X 100よる灌流は、完全に脱細胞化された肝臓を生じるのに十分であった。脱細胞化された肝臓をモバット・ペンタクローム染色することによって、中心静脈、ならびに肝動脈、胆管、および門脈を含む門脈空間(portal space)を伴う特徴的な肝臓構造の保持が確認された。
【0078】
実施例5−脱細胞化臓器の評価に使用される方法および材料
組織学および免疫蛍光法
パラフィン包埋された脱細胞化組織を対象に、製造業者(American Mastertech Scientific, Lodi, CA)の指示書通りにモバット・ペンタクローム染色を行った。簡単に説明すると、脱パラフィン化済みのスライドを、Verhoeffの弾性染色液で染色し、洗浄し、2%塩化第二鉄で区別し、洗浄し、5%チオ硫酸ナトリウム中に配置し、洗浄し、3%氷酢酸でブロックし、1%アルシアンブルー溶液で染色し、洗浄し、クロセインスカーレット−酸性フクシンで染色し、洗浄し、1%氷酢酸に浸し、5%リンタングステン酸で脱染し、1%氷酢酸に浸し、脱水し、アルコール性サフラン溶液に浸し、脱水し、マウントし、さらにカバーで覆った。
【0079】
脱細胞化組織を対象に免疫蛍光染色を行った。凍結切片(脱細胞化組織)ではなく、パラフィン包埋組織(再細胞化組織)を対象に、以下の手順で抗原賦活化を行った:パラフィン切片を脱ろうし、連続的なアルコール勾配に従ってキシレンを2回(各5分間)交換して再水和し、さらに冷水道流水で洗浄した。次にスライドを抗原賦活化溶液(2.94 gのクエン酸三ナトリウム、22 mlの0.2 M塩酸溶液、978 mlの超純水、およびpH 6.0に調整)中に配置し、30分間煮沸した。水道水の流水による10分間の洗浄後に免疫染色を開始した。凍結切片を1X PBS(Mediatech, Herndon, VA)を溶媒とする4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)で室温で15分間かけて固定した後に染色した。スライドを、1X PBSを溶媒とする4%ウシ胎児血清(FBS; HyClone, Logan, UT)で、室温で30分間かけてブロックした。試料を室温で1時間、希釈した一次抗体(Ab)および二次抗体と連続的にインキュベートした。各段階間に、スライドを1X PBSで3回(各5〜10間)洗浄した。コラーゲンI(ヤギポリクローナルIgG(Cat. No. sc-8788), Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)、コラーゲンIII(ヤギポリクローナルIgG(Cat. No. sc-2405), Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)、フィブロネクチン(ヤギポリクローナルIgG(Cat. No. sc-6953), Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)、およびラミニン(ウサギポリクローナルIgG(Cat. No. sc-20142), Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)に対する一次Abをブロッキング緩衝液との1:40の希釈率で使用した。二次抗体のウシ抗ヤギIgGフィコエリシン(phycoerythin)(Cat. No. sc-3747, Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)、およびウシ抗ウサギIgGフィコエリシン(Cat. No. sc-3750, Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)をブロッキング緩衝液との1:80の希釈率で使用した。スライドを、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(Vectashield、Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA)を含む硬化マウント用(hardening mounting)溶媒中でカバーガラス(Fisherbrand 22 x 60, Pittsburgh, PA)で覆った。画像を、Nikon Eclipse TE200倒立顕微鏡(Fryer Co. Inc., Huntley, IL)に接続したImagePro Plus 4.5.1(Mediacybernetics, Silver Spring, MD)を使用して、ImagePro Plus 4.5.1(Mediacybernetics, Silver Spring, MD)を使用して記録した。
【0080】
走査型電子顕微鏡による観察
正常組織および脱細胞化組織を灌流し、0.1 Mカコジル酸緩衝液(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)を溶媒とする2.5%グルタルアルデヒド(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)で15分間かけて固定した。次に組織を0.1 Mカコジル酸緩衝液で2回、15分間かけて洗浄した。固定後の処理を、1%四酸化オスミウム(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)を使用して60分間かけて行った。次に組織試料を、EtOH濃度を上昇させながら(50%で10分間、70%で10分間を2回、80%で10分間、95%で10分間を2回、100%で10分間を2回)、脱水した。次に組織試料を対象に、Tousimis Samdri-780A(Tousimis, Rockville, MD)で臨界点乾燥を行った。Denton DV-502A真空蒸着装置(Denton Vacuum, Moorestown, NJ)内で30秒間の金/パラジウムのスパッターコーティングによってコーティングを行った。走査型電子顕微鏡の画像を、Hitachi S4700電界放射型走査型電子顕微鏡(Hitachi High Technologies America, Pleasanton, CA)を使用して得た。
【0081】
機械的試験
ラットの左心室から心筋組織の断面を、中心領域が約5 mm x 5 mmとなるように、かつ断面の軸が心臓の外周方向および長軸方向に配置されるように切り出した。組織断面の初期厚をマイクロメーターで測定したところ、組織断面の中心部で3.59±0.14 mmであった。断面を、脱細胞化されたラット左心室組織からも、同じ方向で、かつ同じ中心領域のサイズとなるように切り出した。脱細胞化された試料の初期厚は238.5±38.9μmであった。加えて、フィブリンゲルの機械的特性を試験し、別の組織工学用足場を、血管組織および心臓組織の作製に使用した。フィブリンゲルを十字型の鋳型に最終濃度が6.6 mgのフィブリン/mlとなるように流し込んだ。フィブリンゲルの平均的な厚みは165.2±67.3μmであった。全ての試料を、2軸性の機械的試験装置(mechanical testing machine)(Instron Corporation, Norwood, MA)に鉗子を介して固定し、PBSに浸し、さらに40%のひずみに等二軸的(equibiaxially)に伸ばした。静的で受動的な機械的特性を正確に探すために、試料を4%のひずみの増分で伸ばし、各ひずみ値で少なくとも60秒間、弛緩するようにした。力の値を特定の軸方向(5 mm x初期厚)の断面積によって規格化することで、力を工学的応力に変換した。工学的応力を、初期の長さによって規格化される変位として計算した。2つの軸間のデータ、ならびに試料群間のデータを比較するために、接線係数を以下の式によって計算した:
[T(ε=ひずみ40%)-T(ε=ひずみ36%)]/ひずみ4%
上式で、Tは工学的応力であり、εは工学的ひずみである。接線係数の値の平均をとり、2つの軸(外周方向および長軸方向)間で、ならびに群間で比較した。
【0082】
実施例6−脱細胞化臓器の生体適合性の評価
生体適合性を評価するために、1 ccの標準増殖培地(イスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco, Carlsbad, CA)、10%ウシ胎児血清(HyClone, Logan, UT)、100 U/mlペニシリン-G(Gibco, Carlsbad, CA)、100 U/mlストレプトマイシン(Gibco, Carlsbad, CA)、2 mmol/L L-グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)、0.1 mmol/L 2-メルカプトエタノール(Gibco, Carlsbad, CA))に懸濁した100,000個のマウス胚性幹細胞(mESC)を、ECM切片上に、および対照プレート上に、特定の成長因子による刺激またはフィーダー細胞による支持を行うことなく播種した。4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を10μg/mlの濃度で細胞培養用の培地に添加して細胞核を標識することで、細胞の付着および増殖の定量が可能となった。画像をUV光下で、およびベースラインと、その24時間後、48時間後、および72時間における位相差を、Nikon Eclipse TE200倒立顕微鏡(Fryer Co. Inc., Huntley, IL)に接続したImagePro Plus 4.5.1(Mediacybernetics, Silver Spring, MD)を使用して記録した。
【0083】
脱細胞化されたECMは、細胞の生存、付着、および増殖に適合性であった。播種されたmESCはECM足場上に生着し、マトリックスへの浸潤を細胞播種の72時間以内に開始した。
【0084】
実施例7−脱細胞化臓器の評価
SDSによって脱細胞化されたしたラット心臓の冠動脈血管床の大動脈弁の能力および完全性を、2%エバンスブルー色素によるランゲンドルフ灌流で評価した。左心室への色素の充満は観察されず、大動脈弁が損なわれていないことがわかった。巨視的には、冠動脈の最大4番目の分岐点までの充満が、色素の漏れの徴候なしに確認された。組織切片については、大動脈および大静脈(150μm)ならびに小動脈および小静脈(20μm)の灌流が、後のエバンスブルーで染色された血管基底膜の赤色蛍光によって確認された。
【0085】
心臓の主要ECM成分の保持を確認するために、SDSで脱細胞化されたECM足場の免疫蛍光染色を行った。この染色によって、コラーゲンIおよびIII、フィブロネクチン、ならびにラミニンなどの、心臓の主要ECM成分の存在が確認されたが、インタクトな核、または心臓ミオシン重鎖もしくはサルコメアのαアクチンを含む収縮性要素の保持の証拠は認められなかった。
【0086】
SDSによって脱細胞化された心臓ECMの走査型電子顕微鏡(SEM)による観察では、繊維の方向および組成が、組織の厚み全体にわたって、細胞の存在しない大動脈壁および大動脈弁の弁尖で保存されていることが判明した。脱細胞化された左右の心室壁は、ECM繊維の組成物(網(weave)、柱(strut)、コイル)および方向を保持していたが、筋繊維は完全に除去されていた。両心室の保持されたECM内に、内皮細胞または平滑筋細胞のない異なる直径のインタクトな血管基底膜が観察された。さらに、インタクトな心外膜基底層の下部の緻密な心外膜繊維の薄層は保持されていた。
【0087】
脱細胞化された心組織の機械的特性を評価するために、2軸試験を実施して、心臓の組織工学における人工的なECM足場として高頻度で使用されるフィブリンゲルと比較した。正常なラットの心室組織および脱細胞化試料は、応力-ひずみ挙動に関して高度に異方性を示した。逆にフィブリンゲル試料では、応力-ひずみ特性は2つの主要な方向間で極めて類似していた。応力-ひずみ挙動の方向依存性は、正常ラットの心室および脱細胞化群の全試料に見られ、かつ応力-ひずみ特性の等方性は、フィブリンゲル群の全試料について典型的であった。
【0088】
これら2群間における、また心臓の主軸間における応力-ひずみ特性を比較するために、外周方向と長軸方向の両方について、ひずみ率40%における接線係数を計算した(方程式については実施例5を参照)。いずれの方向についても、脱細胞化試料群は、正常ラットの心室およびフィブリンゲルの試料群より有意に高い係数を示したことに注目されたい。しかしながら、正常ラットの心室と脱細胞化マトリックスの両方に関しては、2方向の係数間に有意差があったが、フィブリンゲルに関しては有意差はなかった。
【0089】
インタクトな左心室組織の場合、40%ひずみにおける応力は、長軸方向では5〜14 kPaを、および外周方向では15〜24 kPaを変動し、以前に公開されているデータと矛盾しなかった。ラットの心室組織も、ラットの脱細胞化された心室組織も、外周方向は長軸方向より堅く、これは心臓の筋繊維の方向に起因する可能性が極めて高い。繊維の方向は、心臓組織の厚みを通して変化するが、繊維の大部分は外周方向を向いているために、この方向が堅くなると考えられる。脱細胞化組織は、インタクトな組織より有意に堅かった。これも、細胞外マトリックスが細胞そのものより堅く、かつECMと細胞の組み合わせがECM単独の場合ほど堅くないと考えられることから推定される。脱細胞化組織の接線係数の値は、比較的大きく見えるが、精製エラスチンのヤング係数の値(約600 kPa)よりわずかに大きいだけであり、1本のコラーゲン繊維のヤング係数(5 Mpa)より小さく、よって本明細書で決定された値は妥当な範囲内にある。
【0090】
実施例8−他の臓器または組織の脱細胞化
ラットの心臓、肺、腎臓、および肝臓に加えて、本明細書に記載された灌流脱細胞化プロトコルを、骨格筋、膵臓、小腸および大腸、食道、胃、脾臓、脳、脊髄、および骨格に応用することで同様の結果が得られた。
【0091】
実施例9−ブタ腎臓の脱細胞化
ブタの腎臓を、ヘパリン化した雄の個体から摘出した。摘出臓器の灌流を可能とするために、腎動脈にカニューレを挿入し、15分間PBSで灌流して血液を洗い流した。脱イオン水を溶媒とする27 Lの1% SDSによる灌流を35.5時間かけて50〜100 mmHgの圧力で行った。脱イオン水を溶媒とする1% Triton-Xによる灌流を、ECM足場からSDSを除去するために開始した。次に、脱細胞化された腎臓の洗浄および緩衝を、抗生物質を含むPBSによる120時間の灌流により行って界面活性剤を除去し、生体適合性のあるpHを得た。
【0092】
臓器の清澄化は、灌流開始から2時間以内に観察された。灌流の12時間で、透明な白色が優勢となった。臓器が半透明の白色になった時点で脱細胞化を終了した。
【0093】
実施例10−脱細胞化心臓の移植
F344ラットの心臓を、Ao弁から遠位の大動脈にカニューレを挿入して、他の全ての大血管および肺静脈を結紮することで準備した(ただし、肺動脈幹の左の分枝(二分岐部から遠位)および下大静脈(IVC)は除く)。ランゲンドルフ逆行性冠灌流、および2リットルの1% SDSによる12〜16時間の灌流によって、脱細胞化が達成された。次に心臓を、35 mLの1% Triton-Xで30〜40分間かけて再生後、抗生物質および抗真菌剤を含むPBSで72時間かけて洗浄した。IVCを結紮後に移植を行った。
【0094】
大型(380〜400 g)のRNUラットを、脱細胞化心臓の受入用に準備した。鈍角のモスキート鉗子を、宿主個体のIVCと腹部Aoの両方にあて、吻合領域が確実に摘出されるようにした。脱細胞化心臓の大動脈を、宿主の腹部大動脈に、腎分岐部の近位かつ下部に8-0縫合用絹糸を使用して吻合した。脱細胞化心臓の肺動脈幹の左枝を、肺動脈幹に加わる物理的応力を最小限に抑えるために、宿主のIVCの最も近い領域に吻合した。
【0095】
両血管を宿主個体に縫合後に鉗子を解放し、脱細胞化心臓を宿主個体の血液で満たした。レシピエント個体の腹部大動脈圧が、脱細胞化された心臓および大動脈中について視覚的に観察された。脱細胞化心臓は膨張し、血液によって赤味が生じた。吻合部位で出血はほとんど見られなかった。鉗子の解放(灌流の開始)の3分後にヘパリンを投与し、心臓を撮影して腹部内に配置し、吻合部位に加わる応力を最小限に抑えた。腹部を無菌的に閉鎖して個体の回復をモニタリングした。移植の55時間後に個体を安楽死させ、脱細胞化心臓を外植して観察した。ヘパリンが投与されなかった個体には、切開時および評価時に大きな血栓がLVに見られた。血液は心臓の左右の冠動脈にも観察された。
【0096】
他の移植実験では、両血管を宿主個体に縫合後に鉗子を解放し、脱細胞化心臓を宿主個体の血液で満たした。レシピエント個体の腹部大動脈圧を、脱細胞化された心臓および大動脈について肉眼で観察した。脱細胞化心臓は膨張して赤味を示し、出血は吻合部位でほとんど見られなかった。鉗子の解放(灌流の開始)の3分後にヘパリンをIP注射で投与した(3000 IU)。心臓を撮影し、吻合部位に加わる応力を最小限に抑えるように腹部内に配置した。腹部を無菌的に閉鎖し、個体の回復をモニタリングした。個体が、移植から約48時間後に出血により死んでいることを確認した。移植時間は現在、55〜70分の範囲にある。
【0097】
セクションC.再細胞化
実施例1−心臓ECM切片の再細胞化
脱細胞化されたECMの生体適合性を評価するために、1つの脱細胞化心臓の1 mm厚の切片を、筋原繊維細胞および内皮細胞株とともに培養した。2 x 10
5個のラットの骨格筋芽細胞、C2C12マウスの筋芽細胞、ヒトの臍帯内皮細胞(HUVEC)、およびウシの肺内皮細胞(BPEC)を組織切片上に播種し、ならびに標準的な条件で7日間にわたって共培養した。筋原細胞はECMを通して移動し、およびECM内で拡大し、ならびに繊維の当初の方向に並んでいた。これらの筋原細胞には、増殖の増加、およびECM切片の十分に再集団化した大きな部分が見られた。内皮細胞株には、浸潤性の低い増殖パターンが見られ、移植片の表面上に単層を形成していた。これらの条件では、検出可能な抗増殖性作用は認められなかった。
【0098】
実施例2−冠灌流による心臓ECMの再細胞化
冠灌流による脱細胞化された心臓ECMの表面および内部への再生細胞の播種の効率を決定するため、脱細胞化された心臓を臓器チャンバーに移し、酸素付加培養用培地で、細胞培養条件(5% CO
2、湿度60%、37℃)で連続的に灌流した。120 x 10
6個のPKH標識HUVEC(50 mlの内皮細胞成長培地に懸濁)を40 cm H
2Oの冠灌流圧で注入した。冠流出液を採取して細胞数をカウントした。次に流出液を再循環させ、再び灌流して最大数の細胞を送り込んだ。再循環を2回繰り返した。3回目の後に、約90 x 10
6個の細胞が心臓内に保持されていた。心臓を、500 mlの再循環用の酸素付加内皮細胞培養用培地で120時間かけて連続的に灌流した。次に心臓を摘出し、凍結切片用に包埋した。HUVECは、心臓全体で動脈および静脈の残渣に限局していたが、血管外ECMの全体に完全に分散してはいなかった。
【0099】
実施例3−新生ラットの心臓細胞による脱細胞化ラット心臓の再細胞化
新生ラットの心筋細胞の単離および調製
1日目に、1〜3日齢のSPFフィッシャー344の新生仔(Harlan Labs, Indianapolis, IN)8〜10匹に、5%イソフルレン(Abbott Laboratories, North Chicago, IL)を吸入させ、70% EtOHを噴霧して鎮静させ、さらに胸骨切開を無菌的に速やかに行った。心臓を摘出後に直ちに、HBSS;新生仔の心筋細胞単離系に由来する試薬#1(Worthington Biochemical Corporation, Lakewood, NJ)を含む氷上の50 mlコニカルチューブ内に移した。上清を除去し、心臓全体を冷HBSSで1回、激しく攪拌しながら洗浄した。この心臓を、5 mlの冷HBSSを含む100 mmの培養皿に移し、付着組織を除去し、残存する組織を1 mm
2未満の小片に刻んだ。さらにHBSSを添加して、総プレート容量を9 mlとし、これに1 mlのトリプシン(試薬#2、Worthingtonキット)を添加して最終濃度を50μg/mlとした。プレートを5℃の冷却器内で一晩、インキュベートした。
【0100】
2日目に、プレートを冷却器から取り出し、無菌フード内で氷上に置いた。組織およびトリプシンを含む緩衝液を、氷上の50 mlコニカルチューブに広口ピペットを使用して移した。トリプシン阻害剤(試薬#3)を1 mlのHBSS(試薬#1)で再構成し、50 mlのコニカルチューブに加えて穏やかに混合した。この組織に、液体の表面上に60〜90秒間空気を通すことで酸素を添加した。次に、この組織を37℃に加温し、および5 mlのリーボビッツ(Leibovitz)L-15で再構成したコラゲナーゼ(300単位/ml)をゆっくりと加えた。この組織を、37℃に加温した振盪浴中に45分間置いた。次に、10 mlのピペットを使用してこの組織を10回滴定して(3 ml/秒)、細胞を遊離させ、次に0.22μmのフィルターで濾過した。この組織をさらに5 mlのL-15培地で洗浄し、2回目の滴定を行い、同じ50 mlのコニカルチューブ中に回収した。次に細胞溶液を室温で20分間インキュベートし、50 xgで5分間、遠心分離して細胞を沈殿させた。上清を穏やかに除去し、細胞を、Neonatal-Cardiomyocyte培地を使用して所望の容積に再懸濁した。
【0101】
培地および溶液
全ての培地を滅菌濾過し、5℃の冷却器内で暗条件で保存した。Worthington単離キットは、推奨培地であるリーボビッツL-15を培養用に含む。この培地は、2日目の組織処理のみに使用した。プレーティング時は、本明細書に記載された交代性のカルシウム含有培地を使用した。
WorthingtonリーボビッツL-15培地:リーボビッツ培地の粉末を、1 Lの細胞培養グレードの水を使用して再生した。リーボビッツL-15培地は、140 mg/mlのCaCl、93.68 mg/mlのMgCl、および97.67 mg/mlのMgSを含む。
新生仔心筋細胞培地:イスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco, Cat. No. 12440-053)に、10%ウシ胎児血清(HyClone)、100 U/mlペニシリン-G(Gibco)、100 U/mlストレプトマイシン(Gibco)、2 mmol/L L-グルタミン(Invitrogen)、および0.1 mmol/L 2-メルカプトエタノール(Gibco, Cat. No. 21985-023)を加え、使用前に無菌処理した。必要に応じて、アムホテリシン-Bを添加した(最終濃度0.25μg/ml)。この培地を、1.2 mMのCaCl(Fisher Scientific, Cat. No. C614-500)、および0.8 mMのMgCl(Sigma, Cat. No. M-0250)で強化した。
【0102】
再細胞化のインビトロ培養解析
生体人工心臓の作製の第一歩として、単離されたECMを、新生仔の心臓由来の細胞で再細胞化した。完全に脱細胞化された心臓(本明細書に記載された手順で作製)に、50 x 10
6個の新たに単離したラット新生仔の心筋細胞、線維芽細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞を組み合わせて注入した。次に心組織を切片化し、切片をインビトロで培養して、脱細胞化されたECMの生体適合性、および結果として得られた構築物の心筋環(myocardium ring)形成能力を試験した。
【0103】
結果として生じた環の内部において、わずかな収縮が、24時間後に微視的に認められ、移植された細胞が、脱細胞化ECMに付着して生着可能なことが証明された。微視的には、細胞はECM繊維の方向に沿って配向していた。免疫蛍光染色によって、心臓ミオシン重鎖を発現する心筋細胞の生存および生着が確認された。4日以内に、収縮性の細胞パッチ(cell patch)の塊が脱細胞化マトリックス上に観察され、これは8日目には同期的に収縮する組織環(tissue ring)に進行した。
【0104】
10日目に、これらの環を2本のロッドの間にマウントし、収縮力をさまざまな前負荷条件で測定した。環は、4 Hzの頻度に電気的にペースアップ可能であり、最大0.65 gの前負荷の下で最大3 mNの収縮力を生じた。したがって、この再細胞化のインビトロ組織培養法では、人工ECM構築物を使用して最適化された人工心組織の環によって生じる力と同等に有効な力を生じる収縮性組織が得られた。
【0105】
灌流による脱細胞化心臓の再細胞化
再細胞化された(50 x 10
6個の単離直後の新生ラットの心筋細胞、線維芽細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞)の足場を、前負荷および後負荷(1日目:前負荷4〜12 mmHg、後負荷3〜7 mmHg)、拍動性冠血流(1日目:7 ml/分)、および無菌の心臓組織培養条件(5% CO
2、60% H
2O、37℃)における電気刺激(2日目:1 Hz)の漸進的な増加による拍動性の左心室の膨満を含む、ラットの心臓生理学を模した、灌流可能なバイオリアクター(n=10)内にマウントした。灌流後の臓器の培養は、1〜4週間維持した。圧力、流量、およびEKGを、培養時間の全体を通じて、15分毎に30秒間記録した。新生期の生体人工心臓の映像を、細胞播種の4日後、6日後、および10日後に記録した。
【0106】
細胞播種から10日後に、左心室圧(LVP)の記録用の左心室への圧力プローブの挿入を含む、より詳細な機能評価を行い、刺激周波数を0.1 Hz〜10 Hzに次第に上昇させながら壁の運動を映像で記録し、さらにフェニレフリン(PE)による薬理学的刺激を行った。再細胞化された心臓は、1回のペースに対して自発的な収縮を伴う収縮性の反応を示し、続いてLVPの対応する上昇を伴うペース収縮を示した。1回のペースの後、心臓は3回の自発的な収縮を示し、次に細動状態へと変換した。刺激による収縮と同様に、自発的な脱分極は、LVPの対応する上昇と、安定的な伝導パタ−ンの発生の形成をおそらく示す記録可能なQRS波とを生じた。
【0107】
刺激頻度を0.4 Hzに高めると、平均2回の自発的な収縮が各誘導収縮後に生じ;1 Hzまでのぺーシング頻度では1回のみの自発的な収縮が生じ;および5 Hzのぺーシング頻度では、自発的な収縮は生じなかった。最大捕捉率(maximum capture rate)は、成熟心筋の場合の250 msの不応期と一致する5 Hzであった。100μMのPEによる灌流後、通常の自発的な脱分極が1.7 Hzの頻度で生じ、LVPにおける対応する上昇とカップリングしていた。
【0108】
10日目における組織学的解析によって、細胞の分散および生着が、左室壁の層全体(0.5〜1.2 mm)にわたることが明らかとなった。心筋細胞は、心室の繊維の方向に並び、かつ成熟心筋に類似した緻密な器質化した移植片の領域、および発生中の心筋と類似した、それほど稠密でない未成熟の移植片の領域を形成した。心臓ミオシン重鎖の免疫蛍光染色によって、心筋細胞の表現型が確認された。高い毛細血管密度が、新たに発生した心筋の全体にわたって維持されており、毛細血管間の平均距離は約20μmであり、これは成熟ラット心筋について報告された値と同等であった。内皮細胞の表現型は、フォンビルブラント因子(vWF)に関する免疫蛍光染色で確認された。細胞の生存は、移植片の全層を通じて維持されており、冠灌流の全体に酸素および栄養が十分に供給されていることがわかった。
【0109】
その他の態様
本発明を、本発明の詳細な説明と関連して説明したが、以上の説明は説明目的であって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を制限する意図はないと理解されたい。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲に含まれる。