【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
岡山秀彰、他,偏波無依存Si導波路Braggグレーティングの検討,第59回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,応用物理学会,2012年 2月29日,18a−GP4−15,p.05-124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光の伝搬方向に垂直な厚み方向に非対称であり、TM(Transverse Magnetic)偏波基本伝搬モードの伝搬定数とTE(Transverse Electric)偏波1次伝搬モードの伝搬定数とが等しくなる導波路コア幅を含むテーパ形状の導波路コアで構成される偏波回転素子と、
請求項2〜6のいずれか一項に記載の導波路型光回折格子であって、TE偏波基本伝搬モードの伝搬定数とTE偏波1次伝搬モードの伝搬定数とが等しくされた導波路型光回折格子を備え、
前記偏波回転素子と前記導波路型光回折格子とが導波方向に直列に接続されている
ことを特徴とする光波長フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、
図1〜3は、この発明の実施形態に係る構成例を示すものであり、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の構成素材及び設計条件等を用いることがあるが、これら構成素材及び設計条件等は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。
【0025】
≪導波路型光回折格子の基本構成≫
図1を参照して、導波路型光回折格子の周期構造(導波路の等価屈折率を周期的に変化させてある構造)を構成する基本形態につき説明する。
図1に示す導波路型光回折格子はその等価屈折率の変化の周期が一定に設定されたブラッグ反射型光回折格子である。ここでは、等価屈折率を変化させるための基本形態を説明することを目的に、周期については変調を加えていない単純な構成を取り上げているが、この発明の導波路型光回折格子は、後述するようにこの周期が変調されている。
【0026】
図1に示す導波路型光回折格子は、この導波路型光回折格子を構成する導波路コア3がクラッド層2で囲まれ、導波路コア3とクラッド層2は基板1上に形成されている。例えば、導波路コア3と基板1はシリコン材で形成され、クラッド層2は酸化シリコン材で形成される。ここでは、導波路コア3に導波方向に沿って左側導波路領域L、中央導波路領域C及び右側導波路領域Rを設定する。
【0027】
ここで、説明の便宜上、
図1に示すように、導波方向をz軸方向とし、導波路の幅方向をy軸方向、導波路の深さ方向をx軸方向と定義する。
【0028】
図1では、TM偏波が導波路型光回折格子に入力されて(入力光4a)、ブラッグ反射されてTE偏波として出力される(出力光4b)様子を示している。あるいは、TE偏波が導波路型光回折格子に入力されて(入力光4a)、ブラッグ反射されてTM偏波として出力される(出力光4b)様子を示していると想定してもよい。
【0029】
入力光4aの偏波方向と出力光4bの偏波方向とが互いに直交する直交偏波の関係となるようにするには、導波路コア3の左側導波路領域Lと右側導波路領域Rがx軸方向(導波路コアの厚み方向)に非対称となっていることが必要である。
【0030】
一般に、導波路を伝搬する光の光線の方向は、導波路の中心方向とは一致せず、一定の角度で傾いている。従って、導波路を伝搬するTE偏波及びTM偏波の振動方向を示す振幅ベクトルは、導波方向をz軸方向にとった場合、x軸成分、y軸成分の外にz軸成分を有している。
【0031】
すなわち、入力光4aと出力光4bが互いに同一の伝搬横モードであって、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの深さ方向(x軸方向)に非対称となるように形成されていて、これによって、TM偏波成分とTE偏波成分が共通でもっている伝搬方向の電場成分(z軸方向成分)を介してTM偏波成分とTE偏波成分が交換される。そして、このような構成とすることによって、導波路型光回折格子において、伝搬するTM偏波成分とTE偏波成分の重なり積分で与えられる回折効率を大きくすることができる。すなわち、TM偏波である入力光4aに対して出力光4bはTE偏波となり、TE偏波である入力光4aに対して出力光4bはTM偏波となる。つまり、入力光の偏波に対して出力光の偏波は直交偏波となり、入力光の偏波方向に依存せず同一の強度の出力光が得られることとなる。
【0032】
図1(A)は、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rに、導波方向に対して垂直方向に周期的に抉られた箇所を設けて、これ以外の箇所は導波路の厚みをそのまま残して形成された導波路型光回折格子を示している。以後、この形態の導波路型光回折格子をタイプAということもある。
【0033】
タイプAの導波路型光回折格子では、左側導波路領域Lの幅と右側導波路領域Rの幅は等しく、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rには、周期的に抉られた箇所(以後、第1の箇所3aという)が設けられている。第1の箇所3aではx軸方向の掘り込みの深さDを中央導波路領域Cの導波路の厚みより小さくしている。この結果、第1の箇所3aには、導波路コアが残るため、x軸方向(導波路コアの厚み方向)に非対称となる。
【0034】
第1の箇所3aは、中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置されている。左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの第1の箇所3a以外の箇所である第2の箇所3bは、中央導波路領域Cの導波路の厚みと等しくしてある。第3の箇所3cは、中央導波路領域Cを形成している導波路コアの部分である。
【0035】
第1の箇所3aを、中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置することによって、タイプAの導波路型光回折格子に対する入力光4aと出力光4bが互いに同一の伝搬横モードとなるように設定できる。
【0036】
第1の箇所3aの中央導波路領域Cの導波路の厚みから抉る掘り込みの深さDを小さく形成するほど製造プロセスが容易である。一方、掘り込みの深さDを浅くすると、導波路コア3に励起される伝搬横モードが多数発生し、分離されて出力される出力光の波長及び伝搬横モードに複数の雑音成分(選択されるべき波長及び伝搬横モード以外の光成分)を含み、波長選択が十分行われない恐れが生じる。
【0037】
導波路コア3を伝搬する光は、中央導波路領域Cを伝搬する光電場成分が感応する屈折率よりも、左側導波路領域L及び右側導波路領域Rを伝搬する光電場成分が感応する屈折率が実質的に小さい。1次伝搬モードの光電場分布は導波路コア3の両側面で強く導波路コア3の中心で弱い、これに対して基本伝搬モードの光電場分布は、導波路コアの中心で強く、導波路コアの両側面で弱い。このため1次伝搬モードの等価屈折率は、基本伝搬モードの等価屈折率より小さい。したがって、TM偏波成分の基本伝搬モードに対する等価屈折率よりも、TE偏波成分の1次伝搬モードに対する等価屈折率が小さくなる。
【0038】
その結果、TE偏波基本伝搬モードからTE偏波1次伝搬モードへの回折波長と、TE偏波基本伝搬モードからTM偏波基本伝搬モードへの回折波長との波長差を大きくすることができ、TE偏波1次伝搬モードへの回折波とTM偏波基本伝搬モードへの回折波とを分離しやすくなる。すなわち、タイプAの導波路型光回折格子によれば、出力光は雑音成分(選択されるべきブラッグ反射光以外の波長成分)が少なく優れた波長選択性が実現され、かつ、優れた偏波面選択性が実現される。
【0039】
図1(B)は、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの抉られた箇所以外の箇所の厚みが0となるように形成された導波路型光回折格子の実施形態を示している。以後、この形態の導波路型光回折格子をタイプBということもある。
【0040】
タイプBの導波路型光回折格子は、
図1(B)に示すように、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rの第2の箇所3bが完全に除去されてこの部分の厚みが0となるように形成されている。すなわち、第1の箇所3a(この部分の導波路コアの厚みは中央導波路領域Cの厚みからDだけ削減されている)を残して、第2の箇所3bには導波路コアが存在しないように形成されている。左側導波路領域Lの幅と右側導波路領域Rの幅は等しく、第1の箇所3aは中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置されている。第3の箇所3cは、中央導波路領域Cを形成している導波路コアの部分である。
【0041】
タイプBの導波路型光回折格子では、第2の箇所3bが完全に除去されてこの部分の厚みが0となるように形成される。このため、中央導波路領域Cを伝搬する光電場成分が感応する屈折率と、左側導波路領域L及び右側導波路領域Rを伝搬する光電場成分が感応する屈折率との差がより効果的に大きくされている。したがって、波長選択性に優れる導波路型光回折格子となる。第2の箇所3bの厚みが0となるように形成することによって、TM偏波基本伝搬モードに対する等価屈折率よりも、TE偏波1次伝搬モードに対する等価屈折率がより効果的に小さくできる。そのため、TE偏波基本伝搬モードからTE偏波1次伝搬モードへの回折波長が、TE偏波基本伝搬モードからTM偏波基本伝搬モードへの回折波長から離れるという効果が得られる。したがってタイプBの導波路型光回折格子によれば、より一層、出力光は雑音成分が少なく優れた波長選択性が実現され、かつ、優れた偏波面選択性が実現される。
【0042】
タイプA及びタイプBの導波路型光回折格子において、第1の箇所3aを、中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置することによって、導波路コア3に対する入力光4aと出力光4bが互いに同一次数の伝搬横モードとなるように設定できる。
【0043】
図1(C)は、導波路の左側導波路領域Lと右側導波路領域Rに周期的に切込みを入れてあり、導波方向に垂直な方向に切断した断面形状が台形に形成された導波路型光回折格子を示している。以後、この形態の導波路型光回折格子をタイプCということもある。
【0044】
タイプCの導波路型光回折格子は、
図1(C)に示すように、導波方向に垂直な方向に切断した断面形状Sが台形(両底角をθとしてある)となっている。そして、導波路コア3の両側面に、導波方向に垂直な方向に、等間隔で溝3aを形成して、回折格子を構成している。断面形状を台形とすることで、導波路コア3の左側導波路領域Lと右側導波路領域Rがx軸方向(導波路コアの厚み方向)に非対称となっている。
【0045】
溝3aは中心部分3cに対して互いに反対称に形成されている。これによって、タイプCの導波路型光回折格子に対する入力光4aと出力光4bが互いに同一次数の伝搬横モードとなるように設定できる。
【0046】
タイプCの導波路型光回折格子を伝搬する光の光線の方向は、導波路の中心方向とは一致せず、一定の角度で傾いている。従って、導波路を伝搬するTE偏波及びTM偏波の振動方向を示す振幅ベクトルは、x軸成分、y軸成分の外にz軸成分を有している。そして、z軸方向に垂直な方向に切断した断面形状が非対称である導波路(ここでは台形導波路)によれば、この導波路を伝搬するTE偏波及びTM偏波のZ軸方向成分の重なりを大きく設定することが可能となる。このため、TE偏波及びTM偏波のz軸方向成分を介してTE偏波とTM偏波をカップリングさせることができる。
【0047】
<周期を変調させた導波路型光回折格子>
図2を参照して、導波路型光回折格子に設定される変調周期構造について説明する。
【0048】
上述の導波路型光回折格子の基本構成では、周期を変調していない例を説明した。しかしながら、この発明の導波路型光回折格子には、この周期が一定の規則の下で変調され、かつ、この導波路型光回折格子を入力方向に進行する前進波と入力方向とは逆方向に進行する反射波との間の位相差を調整する位相調整部が設けられている。そこで、この発明の導波路型光回折格子に設定される変調周期構造及び位相調整部について
図2を参照して説明する。
【0049】
図2は、導波路型光回折格子を構成する導波路コアの平面形状を概略的に示す図であり、周期の変調のタイプを3通りに分けて示してある。
図2では、説明の便宜上、導波路型光回折格子を構成する導波路コアに導波方向に沿って左側導波路領域L、中央導波路領域C、右側導波路領域Rを設定する。左側導波路領域Lの幅と右側導波路領域Rの幅は等しい。
【0050】
図2(A)を参照して、導波路型光回折格子を構成する導波路コアに周期構造を破る位相シフト部32が設けられており、位相シフト部32を含んで位相調整部(PAP: Phase adjustment portion)が設定されている導波路型光回折格子(以後、位相シフトタイプの導波路型光回折格子ということもある)について説明する。
【0051】
左側導波路領域Lと右側導波路領域Rには、位相調整部PAPを除き周期的に溝Fが設けられ、溝Fは、中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置されている。位相シフトタイプの導波路型光回折格子は、周期的に溝Fが設けられた通常のタイプの導波路型光回折格子を等しい長さに区切った第1ユニット31aと第2ユニット31bを、位相調整部PAPを挟んで接合して構成される。
【0052】
そして、位相調整部PAPの部分の導波方向に沿った長さをQと定義する。長さQは、位相調整部PAPの部分において、前進波の位相と反射波の位相の和が、位相調整部PAPの部分を伝搬する光の偏波状態に関わらず一定値となるように設定する。
図2(A)に示す導波路型光回折格子において、この長さQは次のように決められる。第1ユニット31aと第2ユニット31bに形成されている溝Fの周期をΛとし、fを2以上の整数として、Q=Λ/fとする。
【0053】
ここでf=2であれば1/4波長シフト構造となる。f=2の構造では、ブラッグ反射波長スペクトルの中央に、光が透過する狭い波長帯域が生じる。fの値を3、4、…と変えて長さQを設定するとこの波長透過帯域は、波長スペクトルにおいてブラッグ反射帯域の端から他の端まで移動していく。
【0054】
第1ユニット31aと第2ユニット31bにおいて、溝Fを、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rとで互いに反対称となるように設けてある。このように溝Fの位置を互いに反対称となるように設けることによって、この導波路型光回折格子に対する入力光4aと出力光4bとを互いに同一の、構造によっては偏波の異なる、伝搬横モードとすることができる。
【0055】
図2(A)では第1ユニット31aと第2ユニット31bの二つのユニットしか使用していないが、第1ユニット31aと第2ユニット31bの二つのユニットと同一形状のユニット構造を三つ以上直列に配置して構成することもできる。このようにユニット構造の数を変えることによって、反射スペクトル特性を変えることが可能である。
【0056】
図2(B)を参照して、導波路型光回折格子を構成する導波路コアが、周期構造が形成されていない非光回折格子領域と、この非光回折格子領域に隣接して設けられる周期構造が形成された光回折格子領域とからなるユニット領域が導波方向に複数連続して設けられており、非光回折格子領域に位相調整部PAPが設定されている導波路型光回折格子(以後、サンプルドグレーティングタイプの導波路型光回折格子ということもある)について説明する。
【0057】
左側導波路領域Lと右側導波路領域Rには、位相調整部PAPを除き周期的に溝Fが設けられ、溝Fが形成されている位置は、中央導波路領域Cを中心として左右反対称の位置に配置されている。
【0058】
図2(B)には、第1ユニット33a、第2ユニット33b、及び第3ユニット33cが示してあるが、各ユニットにおいて、周期的に溝Fが形成されている光回折格子領域34と、溝Fが形成されていない非光回折格子領域35が設けられている。このような同種のユニットを複数直列に接続することによって、サンプルドグレーティングタイプの導波路型光回折格子が形成される。第1ユニット33a等の各ユニットの導波方向に沿った長さをユニット周期Zsとすると、ブラッグ反射波長スペクトルには、n
gfを前進波の群屈折率とし、n
gbを反射波の群屈折率として、次式(1)で与えられる波長周期で複数の反射ピークが現れる。
Δλ=λ
2/[(n
gf+n
gb)Zs] (1)
また、位相調整部PAPは、周期構造が形成されていない非光回折格子領域35に、隣接して配置されたユニット間の境目から長さQにわたって設定されている。
【0059】
図2(C)を参照して、光回折格子としての周期がチャープされて形成されたユニット領域が、導波路コアの導波方向に複数連続して設けられており、隣接するユニット領域の境界を中心として位相調整部PAPが設定されている導波路型光回折格子(以後、超周期グレーティングタイプの導波路型光回折格子ということもある)について説明する。
【0060】
左側導波路領域Lと右側導波路領域Rには、溝Fが設けられ、溝Fが形成されている位置は、中央導波路領域Cを中心として左右非対称の位置に配置されている。位相調整部PAPは、隣接して配置されるユニット間の境目(周期構造が形成されていない非光回折格子領域の中心)を含んで長さQにわたって設定されている。
【0061】
図2(C)には、第1ユニット36a、第2ユニット36b、及び第3ユニット36cが示してある。第1〜第3ユニットに加えて、一つ以上の同種のユニットを直列に接続することによって、超周期グレーティングタイプの導波路型光回折格子が形成される。第1ユニット36a等の各ユニットの導波方向に沿った長さをユニット周期Zsとすると、周期がチャープされた超周期グレーティングがZsの周期で繰り返す構造になっている。超周期グレーティングにおけるチャープの掛け方を調整することによって、ブラッグ反射波長スペクトルにおいて、複数のブラッグ反射ピークの高さを揃えることが可能となる。
【0062】
ここで、
図2(A)〜(C)で示した導波路型光回折格子の動作特性を説明する。
図2(A)〜(C)に示した導波路型光回折格子には位相調整部PAPが設けてある。この位相調整部PAPの導波方向に沿った長さをQとし、位相調整部PAPで生じる、前進波の位相と反射波の位相の和をφとする。この場合、導波路型光回折格子における反射によって偏波あるいはモード変換が生じるので、前進波の位相と反射波の位相の和φは、kを真空中における前進波と反射波の波数、n
fを前進波の等価屈折率、n
bを反射波の等価屈折率として、次式(2)で与えられる。
φ=kQ(n
f+n
b) (2)
図2(A)〜(C)で示した導波路型光回折格子への入力光が、TE偏波入力では、n
f=n(e)、n
b=n(m)であるが、TM偏波入力では、n
f=n(m)、n
b=n(e)である。ここで、n(e)はTE偏波基本伝搬モードの等価屈折率、n(m)はTM偏波基本伝搬モードの等価屈折率である。入力光がTE偏波であってもTM偏波であっても位相調整部PAPで同じ位相φが生じるので、偏波無依存な特性が期待される。
【0063】
位相調整部PAPにおいて、前進波がTE偏波基本伝搬モードで反射波がTE偏波1次伝搬モードである場合は、n
f=n(e0)、n
b=n(e1)である。一方、前進波がTE偏波1次伝搬モードで反射波がTE偏波基本伝搬モードである場合は、n
f=n(e1)、n
b=n(e0)である。ここで、n(e0)はTE偏波基本伝搬モードの等価屈折率、n(e1)はTE偏波1次伝搬モードの等価屈折率である。このような場合であっても、位相調整部PAPで同じ位相φが生じるので、偏波無依存な特性が期待される。
【0064】
≪光波長フィルタ≫
図3を参照して、偏波回転素子と、上述の
図2を参照して説明した導波路型光回折格子が導波方向に直列に接続された光波長フィルタにつて説明する。この光波長フィルタは、偏波変換機能とブラッグ回折作用を別々に実現して、全体として偏波変換しながら偏波無依存で光波長フィルタを実現する素子である。
【0065】
図3に示す光波長フィルタを構成する入出力導波路22、偏波回転素子21、導波路型光回折格子23の導波路コアがクラッド層(図示を省略してある)で囲まれ、導波路コアとクラッド層は基板(図示を省略してある)上に形成されている。例えば、導波路コアと基板はシリコン材で形成され、クラッド層は酸化シリコン材で形成される。
【0066】
図3(A)に示す光波長フィルタは、偏波回転素子21として幅テーパ導波路が使われている。偏波回転素子21を構成している導波路コアは、導波方向に垂直に切断した断面形状が長方形であり、導波路コアの光の伝搬方向に沿った両側にテラス状構造21sが形成されている。偏波回転素子21において、テーパ形状の導波路コアの導波路幅とテラス状構造21Sの寸法(テラス部分の幅と厚み)とが偏波回転が発現する条件を満たす個所が存在する。このため、TM偏波基本伝搬モードの光とTE偏波基本伝搬モードの光のいずれか一方、あるいは両者が混合された入力光がテーパ形状の導波路コアへ入力されると、TM偏波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転させてTE偏波1次伝搬モードに変換して、TE偏波基本伝搬モードの光に対しては無変換で出力される。
【0067】
図3(B)に示す光波長フィルタは、偏波回転素子21として幅テーパ導波路が使われており、偏波回転素子21を構成している導波路コアは、導波方向に垂直に切断した断面形状が台形であり、偏波回転が発現する条件を満たす導波路幅となっている個所が存在する。このため、TM偏波基本伝搬モードの光とTE偏波基本伝搬モードの光のいずれか一方、あるいは両者が混合された入力光がテーパ形状の導波路コアへ入力されると、TM偏波基本伝搬モードの光に対しては偏波回転させてTE偏波1次伝搬モードに変換して、TE偏波基本伝搬モードの光に対しては無変換で出力される。
【0068】
図3(A)あるいは
図3(B)に示す光波長フィルタのいずれにおいても、入出力導波路22、偏波回転素子21、導波路型光回折格子23が、この順で導波方向に直列に接続されている。入出力導波路22へは入力光6aが入力され、出力光6bが出力される。導波路型光回折格子23はTE偏波基本伝搬モードをTE偏波1次伝搬モードに変換して出力する素子である。また、この逆にTE偏波1次伝搬モードをTE偏波基本伝搬モードに変換して出力する素子である。
【0069】
導波路型光回折格子23として、上述の
図2(A)〜(C)で示した導波路型光回折格子が利用でき、また、導波路型光回折格子23において、TE偏波基本伝搬モードをTE偏波1次伝搬モードに回折する周期としている。
【0070】
以上説明したように、
図3(A)及び(B)の何れに示した光波長フィルタであっても、入出力導波路22への入力光6aがTE偏波基本伝搬モードである場合、偏波回転素子21をそのまま通過し、導波路型光回折格子23でTE偏波1次伝搬モードに変換され、再び偏波回転素子21に入力されてTM偏波基本伝搬モードに変換されて出力光6bとして出力される。すなわち、この場合は、導波路型光回折格子23で波長選択(光波長フィルタリング)され、TE偏波基本伝搬モードからTM偏波基本伝搬モードに変換される。
【0071】
また、入出力導波路22への入力光6aがTM偏波基本伝搬モードである場合、偏波回転素子21でTE偏波1次伝搬モードに変換され、導波路型光回折格子23でTE偏波1次伝搬モードからTE偏波基本伝搬モードに変換され、再び偏波回転素子21に入力される。その後、TE偏波1次伝搬モードからTE偏波基本伝搬モードに変換されて出力光6bとして出力される。すなわち、この場合は、導波路型光回折格子23で波長選択され、TM偏波基本伝搬モードからTE偏波基本伝搬モードに変換される。
【0072】
いずれにしても、
図3(A)及び(B)に示す光波長フィルタによれば、TM偏波基本伝搬モードの入力光に対しても、TE偏波基本伝搬モードの入力光に対しても、偏波方向にかかわらず光波長フィルタリングが実行される。しかも、入力光の偏波方向と出力光の偏波方向は直交する方向となる。導波路型光回折格子23を入力方向に進行する前進波と入力方向とは逆方向に進行する反射波は次数の異なるモードであり、これらの間の位相差を調整する位相調整部が設けられている。位相調整部は、当該位相調整部において生じる前進波の位相と反射波の位相の和が、入力モード次数に関わらず一定値となるように設定されている。
【0073】
≪動作特性のシミュレーション≫
図4〜6を参照して、3次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法を使用して、
図2(A)〜(C)に示す形態の導波路型光回折格子の動作をシミュレーションした結果について説明する。
図4〜6において、横軸は波長をμm単位で目盛って示してあり、縦軸はブラッグ反射率をdB目盛で目盛って示してある。
【0074】
図4に、位相調整部として1/4波長シフト構造を設けた場合について、
図2(A)に示した位相シフトタイプの導波路型光回折格子の反射スペクトル及び透過スペクトルを示す。
図4(A)は反射スペクトルを示す図であり、
図4(B)は透過スペクトルを示す図である。ここでは、
図1(A)に示したタイプAの導波路型光回折格子を対象にシミュレーションを行った。シリコン導波路コアの厚みは300 nm、シリコン導波路コアの全幅は600 nm、左側導波路領域L、及び右側導波路領域Rの幅はそれぞれ150 nm、溝の深さDは80 nm、位相シフトタイプの導波路型光回折格子の全長は100μmとしてある。
【0075】
TE偏波が入力されてTM偏波として出力されたブラッグ反射率及び透過率を薄色の実線で示し、TM偏波が入力されてTE偏波として出力されたブラッグ反射率及び透過率を破線で示してある。1/4波長シフト構造特有の、ブラッグ反射域内の中央にシャープな透過ピーク(
図4(A)において下向きの矢印で示すディップ)が現れている。
図4に示すように、TE偏波入力とTM偏波入力に対してほぼ同じ波長特性が得られている。
【0076】
図5は、
図2(B)に示したサンプルドグレーティングタイプの導波路型光回折格子の反射スペクトルを示す図である。ここでは、
図1(B)に示したタイプBの導波路型光回折格子を対象にシミュレーションを行った。シリコン導波路コアの厚みは300 nm、シリコン導波路コアの全幅は600 nm、左側導波路領域L、及び右側導波路領域Rの幅はそれぞれ150 nm、左側導波路領域L、及び右側導波路領域Rにおける第1の箇所3aは、
図1(B)に示すDを80 nm、サンプルドグレーティングタイプの導波路型光回折格の全長は100μmとしてある。各ユニットの長さZsは25μmである。各ユニットにおいて半分の長さにわたって光回折格子が設けられている。
【0077】
図5において、TE偏波が入力されてTM偏波として出力されたブラッグ反射率を薄色の実線で示し、TM偏波が入力されてTE偏波として出力されたブラッグ反射率を破線で示してある。
図5に示すように、TE偏波入力とTM偏波入力に対してほぼ同じ波長特性が得られている。
【0078】
図6は、
図2(C)に示した超周期グレーティングタイプの導波路型光回折格子の反射スペクトルを示す図である。
図1(B)に示したタイプBの導波路型光回折格子を対象にシミュレーションを行った。シリコン導波路コアの厚みは300 nm、シリコン導波路コアの全幅は600 nm、左側導波路領域L、及び右側導波路領域Rの幅はそれぞれ150 nm、左側導波路領域L、及び右側導波路領域Rにおける第1の箇所3aは、
図1(B)に示すDを80 nm、超周期グレーティングタイプの導波路型光回折格子の全長は100μmとしてある。周期は313 nm〜323.5 nmの範囲でチャーピングしてある。各ユニットの長さZsは25μmである。
【0079】
図6において、TE偏波が入力されてTM偏波として出力されたブラッグ反射率を薄色の実線で示し、TM偏波が入力されてTE偏波として出力されたブラッグ反射率を破線で示してある。
図6に示すように、TE偏波入力とTM偏波入力に対してほぼ同じ波長特性が得られている。
【0080】
図7に、
図3(A)に示した光波長フィルタの反射スペクトル及び透過スペクトルを示す。
図7(A)は反射スペクトルを示す図であり、
図7(B)は透過スペクトルを示す図である。
図7において、TE偏波が入力されてTM偏波として出力されたブラッグ反射率及び透過率を薄色の実線で示し、TM偏波が入力されてTE偏波として出力されたブラッグ反射率及び透過率を破線で示してある。ここでは、偏波回転素子21として幅テーパ導波路を使用し、テーパ形状の導波路コアの部分を導波方向に垂直に切断した断面形状が長方形であり、この幅テーパ導波路部の両側がテラス状構造21sとされているものとした。また、導波路型光回折格子23として
図1(A)に示したタイプAの導波路型光回折格子とし、位相調整部PAPとして1/4波長シフト構造を設けた場合についてシミュレーションを行った。
【0081】
導波路型光回折格子23のシリコン導波路コアの厚みは300 nm、シリコン導波路コアの全幅は600 nm、左側導波路領域L、及び右側導波路領域Rの幅はそれぞれ150 nm、溝の深さDは80 nm、タイプAの導波路型光回折格子の全長は100μmとしてある。光回折格子としての周期は305 nmとしてある。また、偏波回転素子21はテラス状構造で厚みは導波路型光回折格子23と同じで、テラス部分を含めた導波路幅は550から650nmまでテーパし、テラス部分の幅は片側150nmに設定した。テラス状構造は、
図3(A)に示す段差Dを80nmに設定して実現されているものとした。
【0082】
図7に示すように、TE偏波入力とTM偏波入力に対してほぼ同じ波長特性が得られている。また、導波路型光回折格子23として
図1(A)に示したタイプAの導波路型光回折格子を用いた関係で、1/4波長シフト構造特有の、ブラッグ反射域内の中央にシャープな透過ピーク(
図7(A)において下向きの矢印で示すディップ)が現れている。
【0083】
広い波長帯域にわたってブラッグ反射を得るためには、回折効率の高い導波路型光回折格子が必要であるが、
図3(A)に示した光波長フィルタの構造は、導波路型光回折格子23において、前進波と反射波が共に偏波方向が等しいTE偏波同士であるため回折効率(反射率)が高い。このため、
図3(A)に示した光波長フィルタに利用する導波路型光回折格子23は好適な構造である。この種のグレーティングには向いている。なお、ブラッグ反射域内の中央ピークは、フラット特性になっているが、これは導波路型光回折格子23内での多重反射の影響と思われる。
【0084】
図8は
図3(A)に示した光波長フィルタの反射スペクトルを示す図である。ここでは、光波長フィルタの導波路型光回折格子23として
図2(C)に示した超周期グレーティングタイプの導波路型光回折格子を採用した以外は、
図7でシミュレーションを行った光波長フィルタと同一の構造である。導波路型光回折格子23の全長は100μmとしてある。周期は313 nm〜323.5 nmの範囲でチャーピングしてある。各ユニットの長さZsは25μmである。
【0085】
図8において、TE偏波が入力されてTM偏波として出力されたブラッグ反射率を薄色の実線で示し、TM偏波が入力されてTE偏波として出力されたブラッグ反射率を破線で示してある。
図8に示すように、複数のブラッグ反射ピークが現れており、TE偏波入力とTM偏波入力に対してほぼ同じ波長特性が得られている。複数のブラッグ反射ピークが現れるのは、光波長フィルタの導波路型光回折格子23として超周期グレーティングタイプの導波路型光回折格子を採用した結果である。
【解決手段】導波路型光回折格子であって、この導波路型光回折格子を構成する導波路コアは、導波方向に沿って左側導波路領域L、中央導波路領域C、右側導波路領域Rが設定されている。この導波路型光回折格子の周期は、左側導波路領域Lと右側導波路領域Rにおいて厚み方向に非対称な構造として形成されている。そして、周期は、変調されている。更に、この導波路型光回折格子を入力方向に進行する前進波と入力方向とは逆方向に進行する反射波との間の位相差を調整する位相調整部PAP(長さQ)が設けられており、位相調整部PAPにおいて生じる、前進波の位相と反射波の位相の和が位相調整部PAPへの入力光の偏波状態に関わらず一定値となるように設定されている。