(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6089087
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】パイプ抱持バンド取付具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/08 20060101AFI20170220BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20170220BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20170220BHJP
F16L 3/127 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
F16L3/08 D
F16B35/06 G
F16B2/08 H
F16L3/127
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-226522(P2015-226522)
(22)【出願日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】岩田 充智
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−129917(JP,U)
【文献】
実開昭53−145231(JP,U)
【文献】
実開平06−054981(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/08
F16B 2/08
F16B 35/06
F16L 3/127
E04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中央に設けられた凹部が建築構造物の表面に向けられて添設される基板部と、該基板部の前記凹部側の板面より突出した、前記建築構造物に固定される軸状の固定部と、前記基板部の板面より該固定部とは反対の方向に突出した、パイプ抱持バンドを取り付けるための板状の取付部とを備えたパイプ抱持バンド取付具であって、
前記取付部はその基端部に、前記基板部の板面と当接する当接部と、該当接部よりも突出した固定片部とを有した形状とされ、前記基板部は前記凹部に前記固定片部が挿通する挿通孔を有し、前記固定部はその基端部に、前記固定片部の先端が係合する係合溝を有しており、
前記固定片部は、前記当接部と前記基板部の板面との間に隙間ができ雨水が浸入したとしても、外方へ流れやすくなるように、その幅方向の両側に前記当接部が配されて凸字状に突出しており、かつ、前記固定片部の幅寸法が前記当接部の幅寸法よりも大とされており、
前記取付部および前記固定部の両基端部どうしは、前記固定片部と前記係合溝とが係合した状態で、前記凹部において溶接固定されていることを特徴とするパイプ抱持バンド取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁などの建築構造物の表面に沿って上下方向等に配されるパイプを取り付けるためのパイプ抱持バンドを固定するパイプ抱持バンド取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(a)〜(c)に示したように、従来のパイプ抱持バンド取付具110は、外壁3などの建築構造物の表面に添設される基板部111と、パイプ固定用のパイプ抱持バンド(本図には不図示。
図3参照)を取り付けるための長方形板状の取付部112と、外壁3に固定される軸状のねじ体などで構成された固定部113とを連結して構成されている。基板部111は略中央に凹部111aを有しており、固定部113はその凹部111a(の底)に突出形成され、取付部112は凹部111aの外面側に突出形成されている。
【0003】
基板部111の凹部111a(
図4(c)参照)の中央部には、3部材を上記のように連結するために、
図4(a)に示したような分離した2つの挿通孔111bが形成されている。一方、取付部112の基端部(基板部111および固定部113に連結固定するための端部)には、基板部111の挿通孔111bに挿通される凹字状に、二股に突出した固定片部112aが形成されている。
【0004】
図4(c)に示したように、基板部111の挿通孔111bに固定片部112aが挿通され、その挿通孔111bより凹部111a側に飛び出た固定片部112a間に固定部113の基端部である頭部113aが挟み込まれ、その嵌合部位が溶接されることで3部材が連結されている。
【0005】
このように、パイプ抱持バンド取付具110は3部材がしっかりと連結固定しており、取付部112の板面を側方に向けた状態にして固定部113を外壁3に固定することで使用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−31269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の連結構造では、取付部112の固定片部112aの成形誤差などにより、固定部113の頭部113aが固定片部112a間にしっかりと嵌合しない場合があり、溶接されているとはいえ、両部材の接合が弱くなるおそれがある。また両部材間のずれも起こりやすい。
【0008】
しかも、取付部112の固定片部112aは脚様の二股形状であるため、取付部112の幅寸法によっては各固定片部112aが細くなり、固定片部112aの基部の強度が落ちる可能性があり、折れのおそれもある。
【0009】
特に、3部材の連結のための溶接は美観を考慮して基板部111の凹部111a側のみでなされ、表面側ではなされていないため、取付部112の固定片部112a間の凹底(基板部111の板面への当接部)と、基板部111の板面との間にわずかな隙間ができることもある。そのようなものでは建築構造物に取り付けた後に、上記隙間に雨水が浸入し、浸入した水分は両側の挿通孔111bへと流れる。そのため、固定片部112aの基部の劣化を早めるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、パイプ抱持バンド取付具を構成する3部材が分離しにくく、かつ強度にすぐれたパイプ抱持バンド取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のパイプ抱持バンド取付具は、略中央に設けられた凹部が建築構造物の表面に向けられて添設される基板部と、基板部の凹部側の板面より突出した、建築構造物に固定される軸状の固定部と、基板部の板面より固定部とは反対の方向に突出した、パイプ抱持バンドを取り付けるための板状の取付部とを備えたパイプ抱持バンド取付具であって、取付部はその基端部に、基板部の板面と当接する当接部と、当接部よりも突出した固定片部とを有した形状とされ、基板部は凹部に固定片部が挿通する挿通孔を有し、固定部はその基端部に、固定片部の先端が係合する係合溝を有してお
り、固定片部は、当接部と基板部の板面との間に隙間ができ雨水が浸入したとしても、外方へ流れやすくなるように、その幅方向の両側に当接部が配されて凸字状に突出しており、かつ、固定片部の幅寸法が当接部の幅寸法よりも大とされており、取付部および固定部の両基端部どうしは、固定片部と係合溝とが係合した状態で、凹部において溶接固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載のパイプ抱持バンド取付具によれば、取付部の固定片部と固定部の係合溝とを係合する構造であるため、連結された両部材は一体感が得られ、両者のずれは発生しにくい。また、取付部と固定部とがしっかりと結合するため、基板部を含む3部材が分離する可能性は低い。
【0015】
また、請求項1に記載のパイプ抱持バンド取付具によれば、固定片部が両側に当接部を配して突出しているので、両側の当接部が基板部の板面に当接し、取付部と基板部との一体感が向上する。また、固定片部が二股にならず、取付部の幅方向の中央に凸字状に配されているため、幅寸法を大きくでき、固定片部の基部の強度を向上させることができる。さらに、当接部が取付部の幅方向の両端に形成されているため、当接部と基板部の板面との間に隙間ができ、その隙間に雨水が浸入したとしても、外方へ流れやすくなっているため、当接部が中央に形成されているものに比べて、固定片部の基部近傍に多くの雨水が集中することがなく、固定片部の基部の劣化を遅らせることができる。
【0016】
さらに、請求項1に記載のパイプ抱持バンド取付具によれば、固定片部の幅寸法を当接部の幅寸法よりも大きくしてあるので、固定片部の基部の強度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るパイプ抱持バンド取付具の分解斜視図、(b)は同斜視図である。
【
図2】(a)はパイプ抱持バンド取付具の分解縦断面図、(b)は同縦断面図である。
【
図3】パイプ抱持バンド取付具の使用態様の一例を示す斜視図である。
【
図4】従来のパイプ抱持バンド取付具の説明図である。(a)はパイプ抱持バンド取付具の分解斜視図、(b)はパイプ抱持バンド取付具の斜視図、(c)はパイプ抱持バンド取付具の取付状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図3をもとに説明する。まず、パイプ抱持バンド取付具10の基本構成について説明する。
【0019】
本パイプ抱持バンド取付具10(以下、取付具10という)は、略中央に設けられた凹部11aが建築構造物の表面に向けられて添設される基板部11と、基板部11の凹部11a側の板面より突出した、建築構造物に固定される軸状の固定部13と、基板部11の板面より固定部13とは反対の方向に突出した、パイプ抱持バンド30を取り付けるための板状の取付部12とを備えている。
【0020】
取付部12はその基端部に、基板部11の板面と当接する当接部12bと、当接部12bよりも突出した固定片部12aとを有した形状とされる。基板部11は凹部11aに固定片部12aが挿通する挿通孔11bを有している。固定部13はその基端部に、固定片部12aの先端が係合する係合溝13cを有している。取付部12および固定部13の両基端部どうしは、固定片部12aと係合溝13cとが係合した状態で、凹部11aにおいて溶接固定されている。
【0021】
ついで、
図1および
図2に示した取付具10について詳述する。
この取付具10は、これを構成する基板部11、固定部および取付部の3部材のいずれもがステンレス等の金属よりなり、各部材が溶接等で一体化されて形成されている。以下、3部材について順次説明し、さらにそれらの連結構造について説明する。なお、以下では、取付具10を外壁3に取り付けることを前提として、取付部12側を前方、固定部13側を後方として前後表記する。
【0022】
外壁3に取り付けた場合に前方に配される取付部12は、
図3に示したように、パイプ抱持バンド30を取り付けるための部位であり、パイプ抱持バンド30の取付片部31が板状の取付部12を挟持するようにして固定されるようになっている。この取付部12には、一対の取付片部31をそれぞれ2箇所の挿通孔31aを通じて、ボルト33、ナット34で固定するための長孔12cが開設されている。
【0023】
パイプ抱持バンド30は、上記取付片部31を延出させた環状のバンド部32を備えており、そのバンド部32で、竪樋などのパイプ35を抱持できる構成となっている。
【0024】
取付具10において取付部12の後方に配されている基板部11は、凸状に幅方向の中央部が突出した形状となっている。また、この突出部の突出高さ寸法は基板部11の凹部11aの底の板厚寸法よりも大きく、凹部11a側(凹部11aの底面よりも後方)に突出している。この突出部が上述の固定片部12aであり、その幅方向の両側の端部が上述の当接部12bである。
【0025】
取付部12の後方に配されている基板部11は、取付具10を外壁3に取り付けた際に外壁3の表面に添設される部位であり、その平面中央の凸部の裏側には、前方の取付部12と後方の固定部13を連結させるための部位である凹部11aが形成されている。換言すれば、基板部11は後方より見れば鍋形状となっており、取付具10が外壁3に取り付けられた際に、基板部11の外周の環状部11cが外壁3に接触するように形成されている。
【0026】
この基板部11の凹部11aの底には、前後に貫通する矩形の挿通孔11bが開設されている。この挿通孔11bは、上述したように取付部12の固定片部12aが挿通される孔であり、固定片部12aが挿通され得るように固定片部12aの断面形状に合致した寸法、形状の孔となっている。
【0027】
基板部11の後方に配されている固定部13は、六角形状の頭部13aとねじ部13bとを有したねじ体(ボルト体)とされ、その頭部13aには上述の取付部12の固定片部12aと係合するための係合溝13cが形成されている。
【0028】
図1(a)(b)および
図2(a)(b)に示したように、取付部12の固定片部12aが基板部11の挿通孔11bに挿通され、凹部11aより後方に突出した固定片部12aの先端と、固定部13の係合溝13cとが凹部11a内において係合した状態で、凹部11aの底面を含む連結部位が溶接され、固定されている。なお、不図示ではあるが、固定部13の頭部13aの前端面は凹部11aの底面に当接していることが望ましい。
【0029】
取付具10として以上の3部材が連結された状態では、取付部12の当接部12bが基板部11の板面に当接している。なお、当接部12bと基板部11の板面との間にわずかな隙間ができたものであってもよい。
【0030】
このように、取付部12と固定部13とは、固定片部12aが基板部11を貫通した状態で、貫通した固定片部12aと係合溝13cとが係合して溶接固定された連結構造となっているため、連結された両部材は一体感が得られ、両者のずれは発生しにくい。また、取付部12と固定部13とが基板部11の凹部11aの底面においてしっかりと結合するため、これら3部材が分離する可能性はほとんどない。
【0031】
また、取付部12の固定片部12aは、その幅方向の両側に当接部12bが配されて凸字状に形成されているので、取付具10として結合された状態では、両側の当接部12bが基板部11の前方板面に当接あるいは近接している。そのため、取付部12と基板部11との一体感は向上する。さらに、固定片部12aが二股になっておらず、取付部12の幅方向の中央に凸字状に配されているため、幅寸法を大きくでき、固定片部12aの基部12aaの強度を向上させることができる。よって、固定片部12aが曲がったり折れたりする可能性は低い。
【0032】
特に本図例のものは、固定片部12aの幅寸法(W1)を両当接部12bの幅寸法(W2×2)よりも大きくしてあるため、固定片部12aの基部12aaの強度をさらに高めることができる(
図2(a)参照)。そのため、固定片部12aの基部12aaでの折れなどの損傷は発生しにくい。
【0033】
さらに、本図例の取付具10は当接部12bが取付部12の幅方向の両端に形成されているため、当接部12bと基板部11の板面との間に隙間ができ雨水が浸入したとしても、外方へ流れやすくなる。そのため、当接部12bが中央に形成されているものに比べて、固定片部12aの基部12aaの周辺(挿通孔11bの近傍)へ到達する水分の量が多くなるおそれはなく、この部位の水分による劣化を遅らせることができる。特に、当接部12bの幅寸法(W2)を小さくすれば当然に、当接部12bと基板部11の板面との隙間に入り込む水分の量は少なくなるので、水分による固定片部12aの劣化をさらに遅らせることができる。
【0034】
なお、取付部12の固定片部12aの形状としては本実施形態のものに限られず、種々の形状が許容される。固定片部12aと当接部12bとが階段形状でもよいし、凹字状(固定片部12aが二股形状)でもよい。固定片部12aはどのような部位に突出していてもよく、固定部13の係合溝13cに係合する構造であればよい。
【符号の説明】
【0035】
10 パイプ抱持バンド取付具
11 基板部
11a 凹部
11b 挿通孔
11c 環状部
12 取付部
12a 固定片部
12aa 基部
12b 当接部
12c 長孔
13 固定部
13a 頭部
13b ねじ部
13c 係合溝
30 パイプ抱持バンド
31 取付片部
32 バンド部
33 ボルト
34 ナット
35 パイプ
【要約】
【課題】パイプ抱持バンド取付具を構成する3部材が分離しにくく、かつ強度にすぐれたパイプ抱持バンド取付具を提供する。
【解決手段】取付部12はその基端部に、基板部11の板面と当接する当接部12bと、当接部12bよりも突出した固定片部12aとを有した形状とされ、基板部11は凹部11aに固定片部12aが挿通する挿通孔11bを有し、固定部13はその基端部に、固定片部12aの先端が係合する係合溝13cを有しており、取付部12および固定部13の両基端部どうしは、固定片部12aと係合溝13cとが係合した状態で、凹部11aにおいて溶接固定されている。
【選択図】
図1