(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
揚重機に吊り下げられるとともにエレベータ巻上機を吊り下げて、エレベータの機械室よりも下方に設けられた昇降路の上部に、前記揚重機によって前記エレベータ巻上機を揚重して設置するためのエレベータ巻上機の設置治具であって、治具本体と、前記治具本体に設けられ、前記揚重機に吊り下げられる被吊下部と、前記治具本体に設けられ、前記エレベータ巻上機を吊り下げる巻上機吊下部と、前記治具本体から上方に突出し、互いに離間して、前記昇降路の天井に当接可能な2つの突出部と、を備え、前記被吊下部は、一方の前記突出部から他方の前記突出部に向かう方向に直交する方向であって水平方向で見たときに、一方の前記突出部と他方の前記突出部との間に配置されていることを特徴とするエレベータ巻上機の設置治具。
前記突出部は、互いに離間した複数の突出部分割体を有し、前記突出部分割体の各々の高さは、別々に調節可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ巻上機の設置治具。
エレベータの機械室よりも下方に設けられた昇降路の上部に、エレベータ巻上機を揚重して設置するエレベータ巻上機の設置方法であって、上方に突出する2つの突出部を有する設置治具を揚重機に吊り下げるとともに、前記設置治具に前記エレベータ巻上機を吊り下げる工程と、前記設置治具を前記揚重機によって上昇させて、前記設置治具の2つの前記突出部を前記昇降路の天井に当接させる工程と、2つの前記突出部が前記昇降路の天井に当接した状態で、前記エレベータ巻上機を前記昇降路内の設置位置に設置する工程と、設置された前記エレベータ巻上機から前記設置治具を取り外す工程と、を備えたことを特徴とするエレベータ巻上機の設置方法。
前記機械室内に揚重機を設置する工程、を更に備え、前記揚重機を設置する工程の前に、前記機械室に設置されていた既設巻上機と、前記既設巻上機が巻き上げていた既設主ロープとが撤去されており、前記設置治具に前記エレベータ巻上機を吊り下げる工程において、前記設置治具は、前記揚重機に揚重機側吊下部材を介して連結され、前記揚重機側吊下部材は、前記昇降路の天井に設けられた、撤去された前記既設主ロープが通過していた主ロープ用孔を通過することを特徴とする請求項7に記載のエレベータ巻上機の設置方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1乃至
図4を用いて、第1の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。ここでは、まず、本実施の形態によるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法を好適に適用し得るリニューアル前後のエレベータ装置の構成について
図1および
図2を用いて説明する。
【0011】
図1には、リニューアル前のエレベータ装置1aが示されている。
図1に示すように、エレベータ装置1aは、昇降路2内を昇降可能な乗りかご3と、乗りかご3に既設主ロープ4aを介して連結された釣合錘5と、既設主ロープ4aを介して乗りかご3及び釣合錘5を昇降させる既設巻上機6aと、を備えている。このうち既設巻上機6aは、昇降路2よりも上方に設けられた機械室7に設置されている。既設主ロープ4aは、既設巻上機6aに連結された既設トラクションシーブ8aに巻き掛けられている。このような構成において、既設巻上機6が既設トラクションシーブ8aを回転駆動することにより、既設主ロープ4aが巻き上げられ、乗りかご3および釣合錘5がそれぞれ昇降する。なお、
図1においては、便宜上、既設主ロープ4のうち乗りかご3の側の部分の図示は省略している。後述する
図2においても同様である。
【0012】
次に、リニューアル後のエレベータ装置1bについて
図2を用いて説明する。
図2に示すように、リニューアル後のエレベータ装置1bでは、機械室7に設置されていた既設巻上機6aおよび既設主ロープ4a(
図1参照)が撤去されている。この既設巻上機6aの代替えとして、機械室7ではなく、昇降路2の上部に新設巻上機6bが設置されている。この新設巻上機6bは、昇降路2の側壁にアンカーボルトを用いて固定されたブラケット(何れも図示せず)に、ビーム9を介して設置されている。なお、図示しないが、乗りかご3用のガイドレールと釣合錘5用のガイドレールに、鋼材により一体的に構成されたやぐらが取り付けられ、このやぐらに、マシンベッドを介して新設巻上機6bが設置される場合もある。新設巻上機6bには新設トラクションシーブ8bが連結されており、新設トラクションシーブ8bには、新設主ロープ4bが巻き掛けられている。新設主ロープ4bは、乗りかご3および釣合錘5に連結されている。このような構成において、新設巻上機6bが新設トラクションシーブ8bを回転駆動することにより、新設主ロープ4bが巻き上げられ、乗りかご3および釣合錘5がそれぞれ昇降する。
【0013】
本実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具および設置方法は、
図1に示すエレベータ装置1aから、
図2に示すエレベータ装置1bにリニューアルする場合、とりわけ、昇降路2の上部に新設巻上機6bを揚重して設置する場合に好適に適用され得る。
【0014】
次に、
図3を用いて、本実施の形態によるエレベータ巻上機の設置治具(以下、単に設置治具と記す)について説明する。設置治具20は、揚重機10に吊り下げられるとともに新設巻上機6b(エレベータ巻上機)を吊り下げて、エレベータの機械室7よりも下方に設けられた昇降路2の上部に、揚重機10によって新設巻上機6bを揚重して設置するための治具である。
【0015】
図3に示すように、本実施の形態による設置治具20は、治具本体21と、治具本体20の上面に設けられた被吊下部22と、を備えている。このうち治具本体21は、後述する突出部24が昇降路2の天井2a(機械室7の床)に当接した場合に水平方向に延びるような矩形状に形成されている。この場合、治具本体21は、例えば、角パイプ状の部材によって形成することができ、または、2つの溝形鋼を向かい合わせて互いに溶接して角パイプ状に形成することができる。なお、
図3においては、後述する当接部24が昇降路2の天井2aと離間しているにもかかわらず、便宜上、治具本体21が水平に配置されている状態を示している(後述する
図5も同様)。この状態において、本実施の形態による治具本体21は、その長手方向が水平方向に延びるように矩形状に形成されている。そして、本明細書においては、「上部」、「下部」、「上方」などの方向を示す用語は、設置治具20が、
図3に示すような状態に配置されている場合を想定して使用するものとする。
【0016】
被吊下部22は、揚重機10に吊り下げられるように構成されている。本実施の形態においては、被吊下部22は、揚重機10に揚重機側チェーン11(揚重機側吊下部材)を介して連結されている。揚重機10は、昇降路2よりも上方に設けられた機械室7内に設置されている。揚重機側チェーン11は、昇降路2の天井2a(機械室7の床)に設けられた主ロープ用孔13を通過していることが好適である。この主ロープ用孔13は、
図1に示すリニューアル前のエレベータ装置1aにおいて、機械室7内に設置されていた既設巻上機6aが巻き上げていた既設主ロープ4aが通過していた孔となっている。
【0017】
治具本体21の下面には、新設巻上機6bを吊り下げる巻上機吊下部23が設けられている。新設巻上機6bは、巻上機側チェーン12(巻上機側吊下部材)を介して巻上機吊下部23に連結されて、設置治具20に吊り下げられるようになっている。
【0018】
治具本体20の上面から、2つの突出部24が上方に突出している。これらの突出部24は、設置治具20が昇降路2の上部に揚重された場合に、昇降路2の天井2aに当接可能になっている。より具体的には、突出部24の上面24aが天井2aに当接し得る。2つの突出部24は、水平方向に互いに離間しており、
図3に示す形態では、治具本体21の長手方向の両端部に配置されている。
【0019】
被吊下部22は、一方の突出部24から他方の突出部24に向かう方向(
図3における左右方向)に直交する方向であって水平方向で見たときに、一方の突出部24と他方の突出部24との間に配置されている。すなわち、
図3の紙面に垂直な方向で見たときに、被吊下部22は、2つの突出部24の間に配置されている。そして、被吊下部22は、治具本体21の水平方向中心からずれた位置(
図3に示す形態では中心から右側にずれた位置)に配置されている。
【0020】
巻上機吊下部23は、治具本体21の一方(
図3に示す形態では右側)の端部に配置されている。
図3に示す形態では、治具本体21の右側の端部に配置された突出部24よりも下方に配置されている。
【0021】
次に、このように構成からなる本実施の形態における作用について説明する。ここでは、
図1に示すエレベータ装置1aから、
図2に示すエレベータ装置1bにリニューアルする際に、昇降路2の上部に新設巻上機6bを揚重して設置する設置方法について説明する。
【0022】
まず、
図3に示すように、機械室7内に揚重機10が設置される。なお、機械室7に設置されていた既設巻上機6a(
図1参照)と、既設巻上機6aが巻き上げていた既設主ロープ4aとは、この揚重機10を設置する時点ですでに撤去されていることが好適である。
【0023】
続いて、設置治具20が揚重機10に吊り下げられるとともに、設置治具20に新設巻上機6bが吊り下げられる。
【0024】
この場合、まず、上方に突出する2つの突出部24を有する設置治具20を準備する。
【0025】
続いて、設置治具20の被吊下部22が、揚重機10に揚重機側チェーン11を介して連結される。このことにより、設置治具20が揚重機10に吊り下げられる。この際、揚重機側チェーン11は、昇降路2の天井2aに設けられた、エレベータ装置1aの既設主ロープ4aが通過していた主ロープ用孔13を通過することが好適である。一方、設置治具20の巻上機吊下部23に、巻上機側チェーン12を介して新設巻上機6bが連結される。このことにより、設置治具20に新設巻上機6bが吊り下げられる。
【0026】
設置治具20が揚重機10に吊り下げられるとともに設置治具20に新設巻上機6bが吊り下げられた後、設置治具20および新設巻上機6bが揚重機10によって上昇して、設置治具20の2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接する。
【0027】
この場合、まず、設置治具20の2つの突出部24のうちの一方の突出部24が昇降路2の天井2aに当接するまでは、設置治具20が揚重機10から上方に向く力を受けて、設置治具20および新設巻上機6bは上昇する。この間、設置治具20の治具本体21は、
図4(a)に示すように、巻上機吊下部23の側の端部が、新設巻上機6bの重さによって下方に位置づけられるように傾く。このように傾いた状態で設置治具20および新設巻上機6bが上昇していくと、
図4(b)に示すように、一方(
図4に示す左側)の突出部24が昇降路2の天井2aに当接する。当該一方の突出部24が天井2aに当接した後においても、設置治具20は揚重機10から上方に向く力を受ける。このことにより、
図4(c)に示すように、天井2aに当接した左側の突出部24と天井2aとの接点を支点にして、設置治具20が
図4における反時計回りの方向に回動する。このため、設置治具20の治具本体21の傾きが徐々に小さくなっていき、新設巻上機6bは更に上昇する。その後、
図4(d)に示すように、他方(
図4に示す右側)の突出部24が昇降路2の天井2aに当接する。このことにより、2つの突出部24が天井2aに当接し、設置治具20の回動が停止する。また、新設巻上機6bが昇降路2の上部に達し、新設巻上機6bの上昇が停止する。
【0028】
その後、2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接した状態で、新設巻上機6bが昇降路2の設置位置に設置される。より具体的には、昇降路2の側壁には、アンカーボルトを用いて固定されたブラケットにビーム9が予め固定されている。昇降路2の上部に達した新設巻上機6bは、設置治具20に吊り下げられた状態で、このビーム9上に移動される。2つの突出部24が天井2aに当接した状態においても、設置治具20は揚重機10から上方に向く力を受けている。このことにより、昇降路2の上部に達した設置治具20および新設巻上機6bの姿勢を安定化させることができる。ビーム9上に移動した新設巻上機6bは、ビーム9に取り付けられる。このようにして、新設巻上機6bが設置位置に設置される。
【0029】
新設巻上機6bが設置位置に設置された後、設置治具20が新設巻上機6bから取り外される。より具体的には、巻上機側チェーン12が新設巻上機6bから取り外される。そして、巻上機側チェーン12、設置治具20および揚重機側チェーン11が撤去されて、揚重機10が撤去される。
【0030】
このようにして、新設巻上機6bが昇降路2の上部に揚重されて設置され、新設巻上機6bの設置作業が終了する。
【0031】
このように本実施の形態によれば、設置治具20が、治具本体21から上方に突出する2つの突出部24を有している。このことにより、新設巻上機6bを吊り下げた設置治具20が昇降路2の上部に達した場合に、2つの突出部24を昇降路2の天井2aに当接させることができる。これら2つの突出部24を天井2aに当接させた状態で、設置治具20が揚重機10から上方に向く力を受けることにより、設置治具20の姿勢を安定化させることができる。このため、昇降路2の上部に達した設置治具20および新設巻上機6bの姿勢を安定化させることができる。この結果、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率を向上させて作業時間を短縮させることができる。とりわけ、昇降路2の上部に達した設置治具20および新設巻上機6bの姿勢を安定化させることができるため、新設巻上機6bを設置位置にスムースに移動させることができる。このため、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率を向上させることができる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、設置治具20を揚重機10に連結する揚重機側チェーン11は、昇降路2の天井2aに設けられた、リニューアル前のエレベータ装置1aの既設主ロープ4aが通過していた主ロープ用孔13を通過している。このことにより、天井2aに、揚重機側チェーン11を通過させるために、新たに孔を設けることを不要にできる。このため、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率を向上させて、作業時間を短縮させることができる。
【0033】
なお、上述した本実施の形態においては、設置治具20に新設巻上機6bを吊り下げた後、設置治具20の2つの突出部24のうちの一方が昇降路2の天井2aに当接する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、設置治具20に新設巻上機6bが吊り下げられる前に、2つの突出部24のうちの一方の突出部24を、天井2aに当接するようにしてもよい。すなわち、新設巻上機6bを、昇降路2の底部ではなく、上部またはその近傍から昇降路2内に搬入する場合がある。この場合には、
図4(b)に示すように一方の突出部24を天井2aに当接させた後、設置治具20に新設巻上機6bが吊り下げられるようにしてもよい。この状態において、設置治具20が揚重機10から上方に向く力を受けることにより、
図4(c)に示すように設置治具20が回動して新設巻上機6bを上昇させることができ、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率を向上させることができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
次に、
図5を用いて、本発明の第2の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。
【0035】
図5に示す第2の実施の形態においては、治具本体の両端部に、昇降路の側壁に当接する振れ止め部材が設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図5において、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
図5に示すように、本実施の形態においては、治具本体21の両端部に、昇降路2の側壁2bに当接する振れ止め部材30が設けられている。この振れ止め部材30は、治具本体21に対して取り外し可能に取り付けられていることが好適である。この場合、振れ止め部材30は、設置治具20の2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接した後に治具本体21に取り付けることができる。このことにより、設置治具20および新設巻上機6bを上昇させている間、治具本体21から振れ止め部材30を取り外しておくことができ、設置治具20および新設巻上機6bをスムースに上昇させることが可能になる。
【0037】
振れ止め部材30の長さが調節可能に構成されていることが好適である。このことにより、設置治具20の2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接した後に、治具本体21と昇降路2の側壁2bとの間の距離に応じて、振れ止め部材30の長さを調整することができる。このため、振れ止め部材30を昇降路2の側壁2bにより一層確実に当接させることができ、設置治具20および新設巻上機6bの姿勢をより一層安定化させることができる。
【0038】
振れ止め部材30は、治具本体21の長手方向(
図5における左右方向)の両端部に取り付けられていればよいが、これに限られることはない。例えば、治具本体21の前後方向(奥行き方向)に取り付けられるようにしてもよい。この場合においても、設置治具20の振れ止めを行うことができ、設置治具20の姿勢を安定化させることができる。
【0039】
このように本実施の形態によれば、治具本体21の両端部に、昇降路2の側壁2bに当接する振れ止め部材30が設けられている。このことにより、新設巻上機6bを吊り下げた設置治具20が振れる(揺れる)ことを防止できる。このため、設置治具20の姿勢をより一層安定化させることができる。この結果、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率をより一層向上させて作業時間をより一層短縮させることができる。
【0040】
なお、上述した本実施の形態においては、振れ止め部材30が、治具本体21に取り外し可能に取り付けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、振れ止め部材30は、治具本体21の内部に装着されていてもよい。この場合、設置治具20の2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接した後に、振れ止め部材30が、昇降路2の側壁2bの側に進出して当該側壁2bに当接するようにしてもよい。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、
図6を用いて、本発明の第3の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。
【0042】
図6に示す第3の実施の形態においては、突出部の高さが別々に調節可能になっている点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図6において、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図6(a)、(b)に示すように、本実施の形態においては、設置治具20の突出部24の各々の高さは、別々に調節可能になっている。
【0044】
より具体的には、
図6(a)、(b)に示すように、突出部24は、治具本体21の側に設けられた本体側部材41と、昇降路2の天井2aの側に設けられた天井側部材42と、を有している。このうち本体側部材41および天井側部材42は、パイプ状(好適には角パイプ状)に形成されていることが好適である。そして、本体側部材41内に、天井側部材42の少なくとも一部が収容され、本体側部材41と天井側部材42とが互いに摺動可能になっている。天井側部材42を天井2aの側に進出させたり、本体側部材41内に後退させたりすることにより、突出部24の高さが調節可能になっている。より具体的には、本体側部材41と天井側部材42は、ピン43によって固定されている。本体側部材41には、このピン43が貫通して装着されるピン孔44が設けられており、天井側部材42には同様のピン孔45が複数設けられている。このことにより、本体側部材41のピン孔44の位置と、天井側部材42の一のピン孔45の位置とを合せてピン43を装着することによって、突出部24の高さを所望の高さに調節することができる。
【0045】
本体側部材41がパイプ状に形成されているため、本体側部材41の下面には、本体側板46が取り付けられている。このことにより、パイプ状の本体側部材41を、治具本体21に容易かつ確実に取り付けることが可能になっている。また、天井側部材42もパイプ状に形成されているため、天井側部材42の上面には、天井側板47が取り付けられている。このことにより、この天井側板47が、昇降路2の天井2aに当接し、治具本体21の姿勢の安定化を図っている。
【0046】
このように本実施の形態によれば、設置治具20の突出部24の各々の高さが、別々に調整可能になっている。このことにより、2つの突出部24を昇降路2の天井2aに当接する際に、各突出部24の高さを別々に調整することができる。このため、天井2aに凹凸が形成されている場合であっても、設置治具20の治具本体21を水平方向に向けることができる。このため、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率をより一層向上させることができる。
【0047】
なお、上述した本実施の形態においては、本体側部材41内に、天井側部材42の少なくとも一部が収容されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、天井側部材42内に、本体側部材41の少なくとも一部が収容されるようにしてもよい。また、天井側部材42のピン孔45が複数設けられている例について説明したが、これに限られることはなく、本体側部材41のピン孔44が複数設けられていてもよい。更に言えば、突出部24の高さが調節可能であれば、突出部24の構成は任意である。
【0048】
(第4の実施の形態)
次に、
図7を用いて、本発明の第4の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。
【0049】
図7に示す第4の実施の形態においては、突出部が、別々に高さを調節可能な複数の突出部分割体を有している点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図7において、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
図7に示すように、本実施の形態においては、設置治具20の突出部24の各々は、互いに離間した複数の(ここでは4つ)突出部分割体50を有している。突出部分割体50の各々の高さは、別々に調節可能になっている。
【0051】
より具体的には、
図7に示すように、突出部分割体50は、治具本体21の側に設けられた本体側分割部材51と、昇降路2の天井2aの側に設けられた天井側分割部材52と、を含んでいる。このうち本体側分割部材51および天井側分割部材52は、パイプ状(好適には角パイプ状)に形成されていることが好適である。そして、本体側分割部材51内に、天井側分割部材52の少なくとも一部が収容され、本体側分割部材51と天井側分割部材52とが互いに摺動可能になっている。天井側分割部材52を天井2aの側に進出させたり、本体側分割部材51内に後退させたりすることにより、突出部分割体50の高さが調節可能になっている。より具体的には、本体側分割部材51と天井側分割部材52は、ピン53によって固定されている。本体側分割部材51には、このピン53が貫通して装着されるピン孔54が設けられており、天井側分割部材52には同様のピン孔55が複数設けられている。このことにより、本体側分割部材51のピン孔54の位置と、天井側分割部材52の一のピン孔55の位置とを合せてピン53を装着することによって、突出部分割体50の高さを所望の高さに調節することができる。
【0052】
一の突出部24の4つの突出部分割体50は、単一の本体側板56に取り付けられている。このことにより、パイプ状の突出部分割体50を、治具本体21に容易かつ確実に取り付けることが可能になっている。一方、突出部分割体50には、
図6に示すような天井側板47は取り付けられていない。
【0053】
このように本実施の形態によれば、設置治具20の各突出部24の突出部分割体50の各々の高さが、別々に調整可能になっている。このことにより、2つの突出部24を昇降路2の天井2aに当接する際に、各突出部24の高さ、とりわけ各突出部分割体50の高さを別々に調整することができる。このため、天井2aに、比較的細かい凹凸が形成されている場合であっても、設置治具20の治具本体21を水平方向に向けることができる。このため、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率をより一層向上させることができる。
【0054】
なお、上述した本実施の形態においては、本体側分割部材51内に、天井側分割部材52の少なくとも一部が収容されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、天井側分割部材52内に、本体側分割部材51の少なくとも一部が収容されるようにしてもよい。また、天井側分割部材52のピン孔55が複数設けられている例について説明したが、これに限られることはなく、本体側分割部材51のピン孔54が複数設けられていてもよい。更に言えば、突出部分割体50の高さが調節可能であれば、突出部分割体50の構成は任意である。
【0055】
(第5の実施の形態)
次に、
図8および
図9を用いて、本発明の第5の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。
【0056】
図8および
図9に示す第5の実施の形態においては、巻上機吊下部が、治具本体に対して水平方向に移動可能である点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図8および
図9において、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
図8および
図9に示すように、本実施の形態においては、設置治具20の巻上機吊下部23は、治具本体21に対して水平方向に移動可能になっている。
図8に示す形態では、巻上機吊下部23は、巻上機吊下部23に設けられたローラ62によって、治具本体21に対して移動可能になっている。
【0058】
より具体的には、
図8および
図9に示すように、巻上機吊下部23は、角パイプ状に形成された治具本体21の下部21aを貫通し、治具本体21の外側から内側に延びている。治具本体21の下部21aには、
図9に示すように、治具本体21の長手方向(
図9における紙面に垂直な方向)に延びるスリット60が設けられており、このスリット60を巻上機吊下部23が貫通している。この巻上機吊下部23の内側の部分に、ローラ支持板61を介してローラ62が回転可能に設けられている。一方、治具本体21の内面には、ローラ62を案内するローラガイド63が設けられている。ローラガイド63は、治具本体21の長手方向に、スリット60に沿うように延びている。このようにして、ローラガイド63上をローラ62が転動することにより、巻上機吊下部23は、治具本体21に対して水平方向に移動することができる。なお、巻上機吊下部23が、治具本体21に対して水平方向に移動可能であれば、移動可能とする構成は、
図8および
図9に示す構成に限られることはない。
【0059】
このように本実施の形態によれば、設置治具20の巻上機吊下部23は、治具本体21に対して水平方向に移動可能になっている。このことにより、2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接した後、新設巻上機6bを治具本体21に対してスムースに水平方向に移動させることができる。このため、新設巻上機6bを設置位置に容易に移動させることができ、昇降路2の上部への新設巻上機6bの設置作業の効率をより一層向上させることができる。
【0060】
(第6の実施の形態)
次に、
図10および
図11を用いて、本発明の第6の実施の形態におけるエレベータ巻上機の設置治具およびエレベータ巻上機の設置方法について説明する。
【0061】
図10および
図11に示す第6の実施の形態においては、治具本体は、被吊下部に対して水平方向に回転可能である点が主に異なり、他の構成は、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図10および
図11において、
図1乃至
図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
図10および
図11に示すように、設置治具20の治具本体21は、被吊下部22に対して水平方向に回転可能になっている。
【0063】
より具体的には、
図11に示すように、治具本体20の上部21bにベアリング70が設けられている。このベアリング70は、治具本体21の内側側に配置されている。そして、ベアリング70の外輪は治具本体21に嵌着され、被吊下部22から下方に延びるシャフト(図示せず)が、ベアリング70の内輪に嵌着されている。このようにして、治具本体21は、被吊下部22に対して水平方向に(上下方向に延びる軸を中心に)回転することができる。なお、治具本体21が、被吊下部22に対して水平方向に回転可能であれば、回転可能とする構成は、
図10および
図11に示す構成に限られることはない。
【0064】
このように本実施の形態によれば、治具本体21は、被吊下部22に対して水平方向に回転可能になっている。このことにより、2つの突出部24が昇降路2の天井2aに当接した後、新設巻上機6bを被吊下部22に対してスムースに水平方向に2次元的に移動させることができる。このため、新設巻上機6bを設置位置に容易に移動させることができ、昇降路2の上部への新設熱巻上機6bの設置作業の効率をより一層向上させることができる。
【0065】
以上述べた実施の形態によれば、昇降路の上部への巻上機の設置作業の効率を向上させて作業時間を短縮させることができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【解決手段】実施の形態によるエレベータ用巻上機の設置治具20は、治具本体21と、治具本体21に設けられ、揚重機10に吊り下げられる被吊下部22と、治具本体21に設けられ、エレベータ巻上機6bを吊り下げる巻上機吊下部23と、治具本体21から上方に突出し、互いに離間して、昇降路2の天井に当接可能な2つの突出部24と、を備えている。被吊下部22は、一方の突出部24から他方の突出部25に向かう方向に直交する方向であって水平方向で見たときに、一方の突出部24と他方の突出部24との間に配置されている。