(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089097
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】化粧シートの製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
B32B 38/14 20060101AFI20170220BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20170220BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20170220BHJP
B32B 23/02 20060101ALI20170220BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20170220BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
B32B38/14
B32B38/18 E
B32B5/28 Z
B32B23/02
E04F13/00 B
E04F15/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-507561(P2015-507561)
(86)(22)【出願日】2013年5月6日
(65)【公表番号】特表2015-521119(P2015-521119A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2013059388
(87)【国際公開番号】WO2013167533
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】102012207845.2
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512162258
【氏名又は名称】サーフェス テクノロジーズ ゲーエムベーハー アンド カンパニー,カーゲー
【氏名又は名称原語表記】SURFACE TECHNOLOGIES GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】ホフ, エゴン
【審査官】
清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−129957(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01319524(EP,A1)
【文献】
特開平10−138439(JP,A)
【文献】
特開平09−290487(JP,A)
【文献】
特開2000−024589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
E04F 15/00−15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧板の製造方法における化粧シートの使用であって、前記方法が、
化粧シートをキャリアプレート上に付着させるステップ;
前記キャリアプレートに付着させた化粧シートの片面に化粧を印刷するステップ;
前記化粧を印刷した後に紫外線照射を用いた架橋により化粧シート中のポリマーを硬化するステップ;及び
前記化粧シート上にカバー層を塗布するステップ
を含み、
前記化粧シートが、
印刷されていないセルロース繊維の不織布を準備するステップ;
水性分散液媒体および紫外線照射により架橋可能なポリマーを含む水性分散液を前記不織布に含浸するステップ;
乾燥により前記含浸不織布から前記水性分散液の前記水性分散液媒体を除去するステップ;
を含む方法によって製造され、
前記水性分散液の前記水性分散液媒体を除去した後、前記含浸不織布中のポリマーを硬化する前に前記化粧が印刷される、化粧シートの使用。
【請求項2】
前記紫外線照射により架橋可能なポリマーが、少なくともウレタン及びエチレン性不飽和単位を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記紫外線照射により架橋可能なポリマーが、エステル単位を更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の化粧シートの使用。
【請求項4】
印刷されていない紙が前記不織布として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シートの使用。
【請求項5】
前記水性分散液の固形分が少なくとも35重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シートの使用。
【請求項6】
前記乾燥が、赤外線、熱気、マイクロ波、及び/又は加熱ローラーにより実施されることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シートの使用。
【請求項7】
前記印刷が、オフセット印刷、フレキソ印刷、及び/又はデジタル印刷プロセスにより実施されることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シートの使用。
【請求項8】
前記印刷が、インクジェット、転写、又はレーザー印刷プロセスにより実施されることを特徴とする、請求項1に記載の化粧シートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の層、例えば木材、木質系材料、プラスチックでできたキャリア層、及びカバー層又は保護層と共に化粧板(decorative laminate)の製造に用いられるような化粧シートの製造方法に関する。そのような化粧板は、例えば、壁又は床仕上げ材として及び家具の製造に用いられる。本発明は更に、化粧板の製造における化粧シートの使用に関する。
【0002】
そのような積層板(laminate)では、装飾(decor)は、別の材料、例えば木材、セラミック、天然又は人工の石を模倣したものであってもよく、あるいは、芸術的又は実用的側面を考慮したものであってもよい。通常、装飾は、幾分透明な鋳造樹脂(duroplastic)の層により摩耗から保護されている。カバー層の表面に、装飾と空間的に関係し、模倣する材料の表面構造に真似て同期させた細孔(synchronous pore)として知られる構造を設けることも一般的である。
【0003】
化粧は、従来、硬化型ワニス又は合成樹脂を含浸し、キャリアと摩耗抑制外側カバー層との間に配置される、印刷された紙、その他の方法でパターンを設けられた紙、又はその他のセルロース不織布の形態で実現される。通常、含浸された化粧紙の製造には、印刷及び含浸の別個の製造ステップが必要であり、これらは通常、実際の積層板製造の外部の工場で行われ、大きなコスト要因である。また、化粧紙の含浸材料はカバー層のワニス又は合成樹脂と相溶性(compatible)である必要があり、これは特にワニス及び合成樹脂との接触において予測不可能である。
【0004】
この技術のもう1つの問題は、化粧紙の含浸において、紙の寸法が変化するので、装飾と表面構造との空間的関係(同期した細孔)を維持する必要がある場合、その後のプロセス中でこれを考慮しなければならないことである。これは製品が頻繁に変更される場合特に困難である。
【0005】
アミノプラストを含浸した化粧紙は更に、切断へりからカバー層を通過することにより積層板に浸透する水に感受性である。湿った領域における応用では、そのような積層板の要素は更に、特に側端での水の浸透に対して密封されていなければならない。
【0006】
最後に、化粧紙はしばしば含浸によりその柔軟性を失い、巻くことができないが、キャリアのサイズに切断されるシートの形態で取り扱う必要がある。
【0007】
特許文献1は、繊維強化プラスチックシートの連続的な製造方法であって、自己架橋基を有する合成樹脂で不織布を含浸し、その後、加熱加圧処理に供する方法を記載している。
【0008】
特許文献2は、化粧板を製造するためのプリプレグの製造方法であって、熱硬化性樹脂を非コート紙に塗布し、前記樹脂を架橋しないまま、残留湿気が約3%となるようにプリプレグを調整する方法を開示している。
【0009】
特許文献3は、化粧紙の製造方法であって、紙を印刷した後、脂肪族ポリカーボネート含有アニオン性ポリウレタン分散液を塗布する方法を記載している。その後、その紙をアミノプラスト樹脂に含浸する。これは、含浸樹脂を節約すること、アミノプラスト樹脂の含浸の際に紙の伸びを低減すること、及び化粧紙の耐光性を向上させることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】西独国特許出願公開第1704598号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10134302号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/089086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、セルロース不織布の化粧シートの製造方法であって、セルロースの完全な含侵および耐水性を付与する含浸をもたらし、先行技術より簡便な方法で含浸することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、主請求項に係る方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
紫外線照射により架橋可能なポリマーの水性分散液を含浸剤として用い、含浸物を乾燥させ、紫外線照射による架橋によりポリマーを硬化させた場合に、化粧板樹脂のその他の層(例えばカバー層)中で用いられる樹脂(特にアミノプラスト)と相溶性であり、良好な結合をもたらし、完全に耐水性である、元のセルロース不織布と比べて寸法変化がない化粧シートを簡便な方法で得ることができることが見出された。
【0014】
不織布を安定化するための必要に応じて用いる少量のバインダーを除いて、本発明に従って用いられるセルロース繊維できた不織布は、好ましくは、更なる含浸剤を含まない。その単位面積当たりの重量は通常50〜200g/m
2である。より好ましくは、前記不織布は紙である。前記紙の単位面積当たりの重量の好ましい範囲は70〜100g/m
2である。装飾表面の技術分野で知られている印刷原紙を適宜用いることができる。これらは通常含浸されず、非処理キャリア材料の色及び構造が隠されるように、着色されてもよく、顔料物質を含んでもよい。
【0015】
本発明の方法では、セルロース繊維製の不織布は、印刷された状態で含浸させてもよく、印刷されていない状態で含浸させてもよい。第1のケースでは、含浸及び乾燥後に、架橋可能なポリマーを紫外線照射によって架橋及び硬化する。第2のケースでは、紫外線照射の前に、含浸及び乾燥した不織布に装飾を印刷しなければならない。この第2の実施形態の利点の1つは、装飾の印刷に必要なインクが非含浸不織布の印刷の場合より最大50%少ないことである。これは、インク全体が含浸不織布の表面に残り、見えない不織布の内部に吸収されないためであると考えられる。含浸及び乾燥されているがまだ照射されていない不織布上での印刷のもう1つの利点は、よりクリアでよりシャープな印刷イメージである。明らかに、前記インクは原紙に印刷した場合より滲まない傾向がある。
【0016】
本発明に係る方法で用いられる紫外線照射により架橋可能なポリマーは、水性分散液の形態であり、必要に応じて分散剤として好適な界面活性剤を含んでよい。前記ポリマーは、多価アルコールのアクリル酸エステル等の、重合化の後であってもエチレン性不飽和基を有する架橋可能なコモノマー、例えばアクリレート及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物、を含むコポリマーでもよい。
【0017】
前記架橋可能なポリマーは、好ましくは、エチレン性不飽和コモノマーに加えて、既知の様式でジイソシアナート及びジオールによって構成され得るウレタン単位(urethane unit)を含む。アニオン性分散液が特に好ましい。
【0018】
架橋可能なコモノマー及びウレタン単位に加えてエステル単位を含むポリマーが更に好ましい。前記ポリマーは、ブロックコポリマーとして存在してもよい。例えば、ジオール、好ましくは脂肪族ポリエステルジオールを用いることによりポリエステルブロックをコポリマーに組み込むことができる。
【0019】
本発明に従って用いられる紫外線照射により架橋可能なポリマーの水性分散液は、好ましくは、固形分が少なくとも35重量パーセントである。前記分散液は、消泡剤及び増粘剤等の更なる助剤(auxiliary)を含んでよい。ポリマー分散液の面コーティング(areal coating)は、ポリマーの乾燥面密度(dry areal density)が10〜40g/m
2得られるものが好ましく、10〜20g/m
2得られるものがより好ましい。一般的に、坪量がより大きく、細孔容積がより大きなセルロース不織布は、より高いポリマー面密度を必要とする。
【0020】
不織布の含浸は、不織布をポリマー分散液に浸漬する等、公知の方法によって行うことができる。しかし、面密度を正確に制御できる適用方法、例えばローラーコーティング又はカーテンコーティングが好ましい。ローラーコーティングでは、逆圧ローラー(counter−pressure roller)により含浸剤が不織布にプレスされる。例えば塗工機(paper coating machine)で用いられるようなドクターブレード技術を用いることもできる。ステンレス鋼又は硬質ゴム製のローラーを用いるローラーコーティングプロセスが好ましい。
【0021】
含浸のために、適切な増粘剤、例えばポリウレタンをベースとする組成物を用いて、ポリマー分散液の粘度を増大させることができる。
【0022】
不織布の含浸後、乾燥により水性分散液媒体を除去する。乾燥は、赤外線照射、熱気(例えば循環空気中又はノズルドライヤー中)、マイクロ波、加熱ローラー、又はこれらのプロセスの組合せ等の物理的手段により実施することができる。ここで、含浸された不織布は耐水性が向上するので、分散されたポリマーの成膜温度を超える場合に有利になる。水自体に加え、必要に応じて存在させるアルコール等の極性補助分散剤(polar auxiliary dispersion agent)は、乾燥プロセス中に除去される水性分散液媒体に属する。
【0023】
本発明に係る方法が特別有利であるのは、含浸セルロース不織布が乾燥状態で柔軟且つ非粘着性であり、このため、何の問題もなく巻回してその後の使用のために保存及び輸送できることである。セルロース不織布は、必要であれば、例えば、含浸装置もしくは印刷装置の幅、又は、化粧板の製造を目的としたキャリアプレートの寸法に合わせるために、本発明に係る方法の任意の段階でカットすることができる。
【0024】
不織布が含浸プロセスの前にまだ印刷されていない場合、これは含浸プロセスの後、しかし紫外線照射による架橋の前に、本発明に従って行われる。照射の後では印刷インクの付着が充分ではないことが見出された。印刷方法として、主にオフセット印刷、フレキソ印刷、及びデジタル式の方法、例えばインクジェット、転写、又はレーザー印刷が考慮される。
【0025】
本発明で、特に好ましいのはデジタル印刷プロセスである。この理由は、パターンが規則的に繰り返される既製の印刷フォームで作業する必要がないからである。パターンの反復のため、木材等の天然材料を模倣するだけは不完全である。反復の印象を避けるために各印刷の後に印刷フォームを変更することは非効率的である。しかし、デジタル印刷を用いることで、多数の異なるパターンをデジタルフォーマットでストックすることができ、設定時間の合間に、印刷フォームの変更に時間を費やす必要がなくなる。この利益は、模倣すべき材料が製造中に変更された(例えば別の木材材料が選択された)としても得られる。
【0026】
デジタル印刷プロセスの更なる利点は、それが通常、非接触様式で作動することである。これにより、既に含浸及び乾燥されているがまだ紫外線照射されてないセルロース不織布の表面がダメージを受けるという状況が回避される。印刷プロセスとして、例えば、固定式又は移動式のプリントヘッドを用いるインクジェット印刷プロセス、白黒又はカラーのトナーパウダーを用いるようなレーザー印刷プロセス、及び熱転写
プロセスが考慮される。
放射線硬化性の印刷インクの使用が、含浸の評価にどうしても必要な紫外線照射において不織布中の含浸剤と印刷インクとの強力な結合が実現されるので、好ましい。しかし、本発明では、他の印刷インク、例えば水又は溶媒をベースとしたインクも好適である。
【0027】
特殊な視覚効果を作るために、2つのプロセスステップで、すなわち含浸プロセスの前及び後で装飾を印刷することもできる。これは、例えば金属的に反射する(metallically reflective)又はオパール色に光る(opalescent)印刷インクを用いる場合に好ましいことがある。
【0028】
本発明は更に、化粧板の製造方法における本発明に係る化粧シートの使用を含む。そのような方法は、少なくとも
・化粧シートをキャリアプレート上に付着させるステップ;及び
・化粧シート上にカバー層を付着させるステップ
を含む。
【0029】
キャリアプレートとして、任意の好適な材料、例えば木材、木質系材料、例えばチップボード及びファイバーボード、ベニヤ板、熱硬化性及び熱可塑性材料のシート、生物学的繊維材料、例えば麻繊維(hemp fiber)、セルロース繊維(紙、厚紙等)、又は藁のシート、セラミック材料、例えば焼成粘土、コンクリート、プラスター、及び前記材料の2種以上の複合物、例えばプラスターボード又は繊維強化プラスチックが考慮される。表面により強い欠陥を有するキャリアプレートでは、化粧シートを付着する前にこれらの欠陥を補うためにプライマー層を塗布することが必要になり得る。
【0030】
キャリアプレート上に化粧シートを付着させるためには、接着剤(adhisive)又は接着剤(glue)を用いることが好ましい。例としては、ホットメルト接着剤(adhesive)、分散液接着剤(adhesive)、二液型接着剤(adhesive)、尿素ホルムアルデヒド接着剤(glue)が(必要に応じて硬化剤と共に)含まれる。必要な場合又は好ましい場合、圧力及び/又は熱を加えることにより接着剤(adhesive)又は接着剤(glue)の効果を増大させることができる。
【0031】
装飾を保護するためのカバー層が、キャリアプレートに付着した化粧シートに塗布される。この目的のためには、当該技術分野で公知の全ての材料及びプロセスが好適である。例えば、いわゆるオーバーレイ(overlay)を用いることができる。オーバーレイは、通常、アミノプラスト等の合成樹脂が含浸されたセルロース不織布からなる。一方、例えば化粧層の上にアミノプラスト又はアミノプラスト前駆体の水溶液を塗布して乾燥することにより、セルロースを含まないカバー層を塗布することもできる。合成樹脂又は樹脂前駆体の粉末を化粧シート上に広げ、少なくとも部分的に溶融させることにより、連続層を形成することもできる。カバー層はおそらく放射線硬化性ワニスから形成することもできる。この場合、カバー層の最終的な硬度は照射によって得ることができる。摩耗を低減する成分、例えばコランダム、シリコンカーバイド、ガラス等の硬質粒子をカバー層に組み込んでもよい。
【0032】
好ましくは、カバー層は、アミノプラスト樹脂又はその前駆体、例えばアミノ化合物及びアルデヒド化合物、例えばそれぞれメラミン及びホルムアルデヒド、のオリゴマーからなる。最終的な硬度を得るためには、この材料を更に熱処理に供さなければならず、これは圧力下で有利に行われる。この目的のために、好ましくはキャリアプレート、化粧シート、及びカバー層を含む全層スタックを圧縮及び/又は加熱する。これは、例えばいわゆるショートサイクルプレス(short-cycle press)を用いて行われてもよく、あるいはダブルベルトプレス(double belt press)を用いて連続的に行われてもよい。圧縮の前又は最中に、例えば好適なエンボスプレートによる、例えば木材の細孔(pore)を模倣するための表面構造をカバー層表面にエンボスすることができる。本発明に係る方法の利点は、含浸前に装飾が印刷された場合に化粧シートが含浸及び乾燥プロセスによる寸法の変化を受けず、そのため、印刷された装飾と表面構造との位置の一致が維持されることである。
【0033】
本発明に係る方法の実施形態の例を以下に説明する。
【実施例】
【0034】
単位面積当たりの重量が80g/m
2の巻取紙(paper web)を一対のローラーでガイドする。ローラーはどちらも、スクィージーデバイス(squeegee device)を用いて固形分が50wt%のウレタン−アクリルワニス−エステルコポリマーの分散液で20g/m
2でコーティングされている。紙との接触において、分散液が紙中にプレスされる。コーティングプロセス後、巻取紙をドライヤーに通過させ、その中で巻取紙は赤外線を照射され、排出される。ドライヤー通過後、巻取紙は、印刷ステーションを通過し、そこでデジタルインクジェット印刷プロセスにより巻取紙の片面に4色の装飾を印刷される。その後、巻取紙は両面からの紫外線照射に供される。すると、このようにして作製された化粧シートは耐水性であり、巻いて保存することができる。あるいは、これはすぐに、必要に応じて連続運転中で、尿素ホルムアルデヒド接着剤(glue)を用いてHDFボード上に接着され得る。この状態でも、中間製品、すなわち化粧シートが付着したキャリアプレートを必要に応じてその後の使用のために保存することができる。化粧板を仕上げるために、ここで、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂前駆体の水溶液を化粧表面に塗布し、乾燥し、ショートサイクルプレス(short-cycle press)を用いて約170℃で20秒間プレスする。こうして、エンボスプレートを用いて細孔構造に合致する装飾が表面にエンボスされる。
【0035】
事前印刷された化粧紙を含浸に用いる場合、印刷プロセスを省略し、残りのプロセスステップは同様に行う。
【0036】
添付の図面に図解されている更に2つの実施形態の例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、非印刷セルロース不織布を用いる本発明に係る方法の第1の実施形態を示す図である。
【0038】
【
図2】
図2は、事前印刷された化粧紙を用いる本発明に係る方法の第2の実施形態を示す図である。
【0039】
図1は、本発明に係る方法の第1の実施形態例における連続的(successive)ステップを示す図である。ここで、下線を引いた用語は好ましい手順を表し、これにより本発明を特に好ましく利用することができる。第1に、例えば非印刷紙(特に印刷原紙)であり得るセルロース不織布に本発明に係る含浸剤を含浸する。その後、含浸したセルロース不織布を乾燥させる。この状態で、不織布は、巻いて保存することができ、あるいは既に印刷されていてもよい。しかし、好ましくは、ここで不織布をキャリアプレート上に付着させ、好ましくはデジタル印刷プロセスにより、化粧パターンを印刷する。このステップの後、含浸が充分に硬化するまで紫外線照射プロセスを行う。ここで、カバー層、例えばオーバーレイ(カバー層材料が含浸された裏打ち層(backing layer))、樹脂前駆体の溶液、又は必要に応じて用いる放射線硬化性塗料が化粧パターンに塗布され得る。最後に、圧力及び/又は熱の下、加熱プレス中でカバー層をキャリアプレート及び化粧層に結合させ、必要に応じて、構造化されたプレスプレートを用いてカバー層表面に表面構造をエンボスする。この好ましい手順において、運転が連続的(continuous)になるように1つのプロセスステップにもう1つのプロセスステップをすぐに続けてよく、これにより、大ロットでかなりのコスト優位性が可能となる。一方、含浸及び乾燥させたセルロース不織布は、印刷され、紫外線照射され、キャリアプレート上に結合させる前に、巻き上げて途中で保存することができ、必要に応じてカバー層を塗布し、層状の複合構造をプレス及びエンボスする。ここで、印刷プロセス及び紫外線照射の後でも装飾材料を巻き上げて保存できることは利点である。これにより、例えば製品の転換が頻繁な小ロットの製造が容易になる。キャリアプレート上に化粧層を結合させた後に製造プロセスを中断して中間製品を保存することも可能である。
【0040】
図2は、本発明に係る第2の実施形態を例示する図である。ここでは、既に印刷された化粧紙から始める。化粧紙に最初に本発明に係る組成物を含浸し、乾燥し、紫外線照射に供する。好ましくは(下線が引かれたプロセスステップ)、ここでこれを巻き上げ、その後の使用のために中間保存する。しかし、これをすぐに又は中間保存後にキャリアプレート上に結合させてよく、前述したようにカバー層を塗布してもよい。ここで今度は、層パッケージを圧力及び/又は熱で処理することができ、必要に応じて表面への構造のエンボス加工も行う。