特許第6089100号(P6089100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089100
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20170220BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20170220BHJP
   H02K 1/28 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
   H02K15/03 Z
   H02K1/28 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-513361(P2015-513361)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2013002828
(87)【国際公開番号】WO2014174552
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷 良二
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−115666(JP,A)
【文献】 特開昭61−142950(JP,A)
【文献】 特開昭61−121750(JP,A)
【文献】 特開平10−336962(JP,A)
【文献】 特開平11−267934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びて回転可能に支持されたシャフトと、
前記シャフトに取り付けられた回転子と、
前記回転子を回転可能に支持する複数の軸受と、
前記回転子の半径方向外側との間に間隙を形成して前記回転子の半径方向外側を囲むほぼ円形の開口が形成されて軸に垂直な方向に広がった鋼板が軸方向に積層された固定子鉄心を備えた固定子と、
前記軸受および前記固定子を支持するフレームと、
を有し、前記シャフトに取り付けられた前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入することにより組み立て可能な回転電機であって、
前記回転子は、
軸に垂直な方向に広がった複数の鋼板が軸方向に積層された回転子鉄心と、
前記回転子鉄心内に挿入された複数の永久磁石と、
前記回転子鉄心を軸方向にはさんで配置されてそれぞれが軸に垂直な方向に広がった平円板状の2枚のクランパと、
前記2枚のクランパが互いに近づく方向に引っ張り力がかけられるように配置された複数の締め付けボルトと、
前記2枚のクランパのうちで前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入する際に先に挿入される側の先端クランパに配置されて、前記先端クランパおよび前記回転子鉄心よりも半径方向外側に突出し、前記固定子鉄心よりも軟らかい材料からなり、ねじによって前記先端クランパに着脱可能に取り付けられた摺動部と、
を有すること、を特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記先端クランパの前記回転子鉄心と反対側の面に取り付けられて、前記摺動部よりも半径方向内側に配置された内部ファンをさらに有すること、を特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
水平方向に延びて回転可能に支持されたシャフトと、
前記シャフトに取り付けられた回転子と、
前記回転子を回転可能に支持する複数の軸受と、
前記回転子の半径方向外側との間に間隙を形成して前記回転子の半径方向外側を囲むほぼ円形の開口が形成されて軸に垂直な方向に広がった鋼板が軸方向に積層された固定子鉄心を備えた固定子と、
前記軸受および前記固定子を支持するフレームと、
を有し、前記シャフトに取り付けられた前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入することにより組み立て可能な回転電機であって、
前記回転子は、
軸に垂直な方向に広がった複数の鋼板が軸方向に積層された回転子鉄心と、
前記回転子鉄心内に挿入された複数の永久磁石と、
前記回転子鉄心を軸方向にはさんで配置されてそれぞれが軸に垂直な方向に広がった平円板状の2枚のクランパと、
前記2枚のクランパが互いに近づく方向に引っ張り力がかけられるように配置された複数の締め付けボルトと、
前記2枚のクランパのうちで前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入する際に先に挿入される側の先端クランパに配置されて、前記先端クランパおよび前記回転子鉄心よりも半径方向外側に突出し、前記固定子鉄心よりも軟らかい材料からなる摺動部と、
前記先端クランパの前記回転子鉄心と反対側の面に取り付けられて、前記摺動部よりも半径方向内側に配置された内部ファンと、
を有し、
前記内部ファンの軸方向先端の外周部に緩衝部が配置されていること、を特徴とする回転電機。
【請求項4】
前記摺動部は、前記先端クランパに前記固定子鉄心よりも軟らかい材料をコーティングして形成されていること、を特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記内部ファンは、軸方向先端に向かって先細りであること、を特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記摺動部は樹脂製であること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記摺動部は、前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入する際に先に挿入される側の先端に向かって細くなるような面取りが形成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記先端クランパに取り付けられて前記回転子鉄心と反対側の軸方向に向かって突出し、前記固定子鉄心よりも軟らかい材料からなる案内部をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項9】
前記案内部は、前記先端クランパに着脱可能に取り付けられていること、を特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
前記案内部は、前記固定子鉄心よりも軟らかい材料をコーティングして形成されていること、を特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【請求項11】
前記案内部は樹脂製であること、を特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項12】
前記案内部は、前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入する際に先に挿入される側の先端に向かって細くなるような面取りが形成されていること、を特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子に永久磁石を用いた回転電機に係り、回転子の挿入組立作業の作業性を改善できる回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
インナロータを備えた電動機などの回転電機では、固定子とその内側に配置される回転子が狭いギャップをはさんで対向する構造となっている(特許文献1参照)。このような回転電機を製造工場内で製造する際に、固定子の内側へ回転部分を挿入するに当たっては、専用の治具を用いることができる。
【0003】
一方、かかる回転電機の保守などのために、回転電機の製造工場の外で、専用の治具を用いずに、固定子の内側から回転部分を取り出して再度固定子の内側へ挿入することが必要な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−47188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インナロータの回転子に永久磁石が用いられている回転電機において、回転子を固定子の内側へ挿入するときに、永久磁石の磁力によって回転子が固定子鉄心に引き寄せられることがある。その場合に、回転子と固定子鉄心とが衝突して、固定子鉄心の内面に傷が付く恐れがあり、作業性が悪い。また、回転子と固定子鉄心とが衝突したさいに生ずる金属粉が回転電機の性能劣化の原因になることもありうる。
【0006】
この発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、インナロータの回転子に永久磁石が用いられている回転電機において、回転子を固定子の内側へ挿入するときの作業性を改善し、また、回転子と固定子鉄心とが衝突することによって生ずる金属粉の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る回転電機の一つの態様は、水平方向に延びて回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトに取り付けられた回転子と、前記回転子を回転可能に支持する複数の軸受と、前記回転子の半径方向外側との間に間隙を形成して前記回転子の半径方向外側を囲むほぼ円形の開口が形成されて軸に垂直な方向に広がった鋼板が軸方向に積層された固定子鉄心を備えた固定子と、前記軸受および前記固定子を支持するフレームと、を有し、前記シャフトに取り付けられた前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入することにより組み立て可能な回転電機であって、前記回転子は、軸に垂直な方向に広がった複数の鋼板が軸方向に積層された回転子鉄心と、前記回転子鉄心内に挿入された複数の永久磁石と、前記回転子鉄心を軸方向にはさんで配置されてそれぞれが軸に垂直な方向に広がった平円板状の2枚のクランパと、前記2枚のクランパが互いに近づく方向に引っ張り力がかけられるように配置された複数の締め付けボルトと、前記2枚のクランパのうちで前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入する際に先に挿入される側の先端クランパに配置されて、前記先端クランパおよび前記回転子鉄心よりも半径方向外側に突出し、前記固定子鉄心よりも軟らかい材料からなり、ねじによって前記先端クランパに着脱可能に取り付けられた摺動部と、を有すること、を特徴とする。
本発明に係る回転電機の他の一つの態様は、水平方向に延びて回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトに取り付けられた回転子と、前記回転子を回転可能に支持する複数の軸受と、前記回転子の半径方向外側との間に間隙を形成して前記回転子の半径方向外側を囲むほぼ円形の開口が形成されて軸に垂直な方向に広がった鋼板が軸方向に積層された固定子鉄心を備えた固定子と、前記軸受および前記固定子を支持するフレームと、を有し、前記シャフトに取り付けられた前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入することにより組み立て可能な回転電機であって、前記回転子は、軸に垂直な方向に広がった複数の鋼板が軸方向に積層された回転子鉄心と、前記回転子鉄心内に挿入された複数の永久磁石と、前記回転子鉄心を軸方向にはさんで配置されてそれぞれが軸に垂直な方向に広がった平円板状の2枚のクランパと、前記2枚のクランパが互いに近づく方向に引っ張り力がかけられるように配置された複数の締め付けボルトと、前記2枚のクランパのうちで前記回転子を前記固定子鉄心の前記開口に軸方向に挿入する際に先に挿入される側の先端クランパに配置されて、前記先端クランパおよび前記回転子鉄心よりも半径方向外側に突出し、前記固定子鉄心よりも軟らかい材料からなる摺動部と、前記先端クランパの前記回転子鉄心と反対側の面に取り付けられて、前記摺動部よりも半径方向内側に配置された内部ファンと、を有し、前記内部ファンの軸方向先端の外周部に緩衝部が配置されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、インナロータの回転子に永久磁石が用いられている回転電機において、回転子を固定子の内側へ挿入するときの作業性を改善し、また、回転子と固定子鉄心とが衝突することによって生ずる金属粉の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る回転電機の第1の実施形態における組立完了状態を示す全体立面図であって、上半を断面図で、下半を外形図で示す図である。
図2】本発明に係る回転電機の第1の実施形態における回転子挿入作業開始前の状況を示す全体立断面図である。
図3】本発明に係る回転電機の第1の実施形態における回転子挿入作業の初期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
図4】本発明に係る回転電機の第1の実施形態における回転子挿入作業の終期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
図5】本発明に係る回転電機の第2の実施形態における回転子挿入作業の初期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
図6】本発明に係る回転電機の第2の実施形態における回転子挿入作業の終期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
図7】本発明に係る回転電機の第3の実施形態における内部ファンの先端上部を示す要部拡大立断面図である。
図8】本発明に係る回転電機の第4の実施形態における回転子挿入作業の初期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本発明に係る回転電機の実施形態について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る回転電機の第1の実施形態における組立完了状態を示す全体立面図であって、上半を断面図で、下半を外形図で示す図である。図2は、本発明に係る回転電機の第1の実施形態における回転子挿入作業開始前の状況を示す全体立断面図である。図3は、本発明に係る回転電機の第1の実施形態における回転子挿入作業の初期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。図4は、本発明に係る回転電機の第1の実施形態における回転子挿入作業の終期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
【0012】
本発明に係る第1の実施形態の回転電機である電動機10では、図1および図2に示すように、フレーム11内に固定子12が取り付けられ、2個の軸受13がフレーム11に支持されている。水平方向に延びたシャフト14が、軸受13に回転支持されている。シャフト14の外側に回転子15が取り付けられている。
【0013】
固定子12は、固定子鉄心16と、固定子コイル17とを有する。固定子鉄心16は、回転軸に垂直に広がる多数枚の鋼板を回転軸方向に積層して構成されている。固定子鉄心16には、軸方向に延びる複数のスロット(図示せず)が形成され、これらのスロット内に固定子コイル17(図2参照)が配置されている。固定子コイル17の軸方向端部はコイルエンド19で互いに接続される。固定子鉄心16の半径方向中心部にはほぼ円形の開口20が形成され、この開口20内に、回転子15が半径方向のギャップを介して配置されている。
【0014】
回転子15は、回転軸に垂直に広がる多数枚の鋼板を回転軸方向に積層して構成された回転子鉄心21と、回転子鉄心21内に挿入された複数個の永久磁石22とを有する。回転子鉄心21の軸方向の両端に先端クランパ23と後端クランパ24が配置されている。先端クランパ23と後端クランパ24は中央に開口を有して回転軸に垂直に広がる円板状であって、回転子鉄心21を構成する各鋼板よりも板厚が厚い。
【0015】
先端クランパ23と後端クランパ24は、それらを貫通する複数本の締め付けボルト25とこれらに螺合するナット26とによって、互いに近づく方向に締め付けられていて、その締め付け力により、回転子鉄心21を構成する多数枚の鋼板が互いに締め付けられている。
【0016】
この開口20内に軸方向から、回転子15が、シャフト14および軸受13とともに挿入されて組み立てられる。このとき、フレーム11の負荷側端部から回転子15等が挿入され、反負荷側のクランパである先端クランパ23が奥側になる。
【0017】
先端クランパ23の外周に沿って摺動部30が取り付けられている。摺動部30は環状であって、先端クランパ23および回転子鉄心21の外周よりも半径方向外側に突出している。摺動部30は、固定子鉄心16の開口20やコイルエンド19に接する部分に当接しても固定子鉄心16やコイルエンド19を損傷しないように、固定子鉄心16やコイルエンド19よりも軟らかい材料とし、ある程度の機械的強度、耐摩耗性、耐熱性を持つものである。たとえばエンジニアリングプラスチックなどの樹脂製であって、より具体的には、テフロン(商品名)、MCナイロン(商品名)などが好適である。
【0018】
図3および図4に示すように、摺動部30は、固定子鉄心16と反対側の軸方向(すなわち反負荷側)に突出し、またその先端部には面取り部31が形成されている。すなわち、面取り部31では、軸方向先端に向かってしだいに細くなっている。また、この摺動部30は、先端クランパ23にねじ32によって着脱可能に取り付けられている。
【0019】
図1に示すように、シャフト14の反負荷側先端付近には外部ファン60が取り付けられ、外部ファン60の外側はファンカバー61で覆われている。
【0020】
この実施形態の回転電機を設置した後に、保守などの目的で、回転子15などをフレーム11外に取り出し、再びフレーム11内に戻す場合がある。そのような再組み立ての場合に、はじめに、図2に示すように、シャフト14に回転子15および軸受13を取り付けた状態で、固定部分と回転部分の軸を合わせ、回転部分を軸方向に水平に移動する。なお、このとき、ファンカバー61はフレーム11から外されており、外部ファン60はシャフト14から外されている。
【0021】
一般に、固定子12の開口20と回転子鉄心21との間の半径方向ギャップは小さく、しかも回転子鉄心21に永久磁石22が挿入されていることから、回転子鉄心21または先端クランパ23が固定子12の開口20の表面に衝突することが懸念される。しかし、この実施形態では、摺動部30が先端クランパ23の半径方向外側および軸方向先端に突出しているため、固定子12の開口20の表面やコイルエンド19に衝突するのは、摺動部30になる。摺動部30は固定子鉄心16やコイルエンド19よりも軟らかい材料であることから、この衝突があっても固定子鉄心16やコイルエンド19の損傷を抑制することができる。また、固定子鉄心16やコイルエンド19の損傷による金属粉の発生を抑制することができ、金属粉の発生による回転電機の性能劣化を抑制することができる。
【0022】
また、摺動部30はねじ32によって着脱可能に取り付けられているので、摺動部30の損傷が進んだ場合は摺動部30を新品と取り替えることもできる。
【0023】
また、摺動部30の先端に面取り部31が形成されていることにより、摺動部30の先端が固定子鉄心16に衝突しにくく、また、衝突した場合にも、固定子鉄心16や摺動部30の先端の損傷が少なくてすむ。また、回転部の挿入作業が円滑になる。
【0024】
上記説明では、摺動部30は先端クランパ23にねじ32によって着脱可能に取り付けられているものとしたが、必ずしも着脱可能でなくてもよく、たとえば、接着剤で取り付けても、また、コーティングしてもよい。これにより、固定子鉄心16の損傷と、金属粉の発生を抑制できる。
【0025】
なお、上記説明では、摺動部30は固定子鉄心16およびコイルエンド19よりも軟らかい材料であるとしたが、回転子15などを固定子12内に挿入する際にコイルエンド19との干渉が問題にならないような場合は、摺動部30は固定子鉄心16よりも軟らかい材料であればよい。
【0026】
[第2の実施形態]
図5は、本発明に係る回転電機の第2の実施形態における回転子挿入作業の初期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。図6は、本発明に係る回転電機の第2の実施形態における回転子挿入作業の終期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
【0027】
この実施形態の回転電機の先端クランパ23の回転子鉄心21の反対側すなわち反負荷側には内部ファン40が取り付けられている。内部ファン40は、回転子鉄心21の反対側に軸方向に突出して設けられている。しかし、内部ファン40は、摺動部30よりも半径方向外側に突出せず、しかも軸方向先端に向かって半径方向に小さくなるように構成されている。それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0028】
内部ファン40は、回転子15とともに回転してフレーム11内の空気を循環させて冷却することができる。
【0029】
この実施形態によれば、内部ファン40を備えた回転電機においても、第1の実施形態と同様に、回転子15などを固定子12内に挿入するに当たり、固定子鉄心16やコイルエンド19の損傷と、金属粉の発生を抑制することができる。特に、内部ファン40の先端を先細りにしたため、内部ファン40の先端が固定子鉄心16やコイルエンド19に衝突するのを抑制できる。
【0030】
[第3の実施形態]
図7は、本発明に係る回転電機の第3の実施形態における内部ファンの先端上部を示す要部拡大立断面図である。
【0031】
この実施形態は第2の実施形態の変形であって、内部ファン40の外側先端に面取り部41が形成されている。そして、その面取り部41周辺に緩衝部42が形成されている。緩衝部42は、固定子鉄心16やコイルエンド19よりも軟らかい材料とし、ある程度の機械的強度、耐摩耗性、耐熱性を持つものである。たとえばエンジニアリングプラスチックなどの樹脂製であって、より具体的には、テフロン(商品名)、MCナイロン(商品名)などが好適である。緩衝部42は、内部ファン40の表面に、ねじ止めや接着によって取り付けるか、コーティングによって付着させてもよい。
【0032】
この実施形態によれば、回転子15などを固定子12内に挿入するに当たり、第2の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、固定子鉄心16やコイルエンド19の損傷と、金属粉の発生をさらに抑制することができる。
【0033】
[第4の実施形態]
図8は、本発明に係る回転電機の第4の実施形態における回転子挿入作業の初期の回転子先端上部とその周辺を示す要部立断面図である。
【0034】
この実施形態は第1の実施形態の変形であって、先端クランパ23の回転子鉄心21の反対側に軸方向に突出して案内部50が取り付けられている。案内部50は、外周直径が摺動部30の外周直径よりも小さいほぼ円筒形であって、先端に向かって細くなっている。案内部50は、ねじ32により、摺動部30とともに先端クランパ23に取り付けられている。
【0035】
案内部50は、固定子鉄心16の開口20内に挿入される際に、固定子鉄心16やコイルエンド19に当接しても固定子鉄心16やコイルエンド19を損傷しないように、固定子鉄心16やコイルエンド19よりも軟らかい材料とし、ある程度の機械的強度、耐摩耗性、耐熱性を持つものである。たとえばエンジニアリングプラスチックなどの樹脂製であって、より具体的には、テフロン(商品名)、MCナイロン(商品名)などが好適である。
【0036】
上記以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0037】
この実施形態では、案内部50が軸方向先端に突出しているため、回転子15などを固定子12内に挿入するときに、固定子12の開口20の表面やコイルエンド19に初めに衝突するのは、案内部50になる。案内部50は先端に向かって細くなっているので固定子鉄心16やコイルエンド19に衝突するのを抑制でき、回転部の挿入作業が円滑になる。また、かりに接触しても、案内部50が固定子鉄心16やコイルエンド19よりも軟らかい材料であることから、この衝突があっても固定子鉄心16やコイルエンド19の損傷を抑制することができる。また、固定子鉄心16やコイルエンド19の損傷による金属粉の発生を抑制することができ、金属粉の発生による回転電機の性能劣化を抑制することができる。
【0038】
また、案内部50は摺動部30と同様にねじ32によって着脱可能に取り付けられているので、案内部50の損傷が進んだ場合は案内部50を新品と取り替えることもできる。
【0039】
[他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
10 電動機
11 フレーム
12 固定子
13 軸受
14 シャフト
15 回転子
16 固定子鉄心
17 固定子コイル
19 コイルエンド
20 開口
21 回転子鉄心
22 永久磁石
23 先端クランパ
24 後端クランパ
25 締め付けボルト
26 ナット
30 摺動部
31 面取り部
32 ねじ
40 内部ファン
41 面取り部
42 緩衝部
50 案内部
60 外部ファン
61 ファンカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8