特許第6089118号(P6089118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089118
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】コイルエンド成形装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20170220BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20170220BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20170220BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H02K15/04 F
   H02K3/04 J
   H01F41/10 C
   H01F27/28 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-551581(P2015-551581)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2014082265
(87)【国際公開番号】WO2015083827
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-252000(P2013-252000)
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克也
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴憲
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】川浦 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 央幸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宏春
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/017125(WO,A1)
【文献】 特開平6−261505(JP,A)
【文献】 特開2005−80488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H01F 27/28
H01F 41/10
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの一端から延出されたリード線部に、第1曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を成形するコイルエンド成形装置であって、
互いに接近離間可能であると共に、互いに接近して前記リード線部を接近離間方向とは異なる方向に沿って曲げることにより、前記少なくとも2つの第1曲げ部を成形する第1および第2成形型を備え、
前記少なくとも2つの第1曲げ部の少なくとも何れか1つは、当該1つの第1曲げ部以外の第1曲げ部とは逆向きに曲げられ、
前記第1および第2成形型の一方は、前記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が前記第1および第2成形型によって前記リード線部に成形される間に、前記リード線部と非接触となって該リード線部の前記最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにする逃げ部を有することを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコイルエンド成形装置において、
前記第1および第2成形型の他方は、前記少なくとも2つの第1曲げ部に対応した複数の曲面を含む第1成形面を有し、
前記逃げ部は、前記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が前記第1および第2成形型によって前記リード線部に成形される間に、前記第1成形面の前記最遊端側の第1曲げ部に対応した曲面と対向するように前記第1および第2成形型の一方に形成された凹部であることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載のコイルエンド成形装置において、
前記第1および第2成形型の一方は、前記リード線部と平行に延在すると共に、前記第1および第2成形型が互いに接近するにつれて前記第1成形面に近接するように傾斜する押圧面を有し、
前記凹部は、前記押圧面側で開口するように形成されることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のコイルエンド成形装置において、
前記第1および第2成形型の一方は、他方に対して接近離間可能な移動型であり、前記第1および第2成形型の他方は、固定型であることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のコイルエンド成形装置において、
前記第1および第2成形型は、前記リード線部の前記最遊端側の第1曲げ部よりも遊端側を拘束しないように構成されることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のコイルエンド成形装置において、
前記リード線部には、3つの第1曲げ部が成形され、前記3つの第1曲げ部のうちの最基端側の1つが残余の2つとは逆向きに曲げられることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のコイルエンド成形装置において、
前記第1および第2成形型は、互いに接近して前記第1曲げ方向と直交する第2曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも1つの第2曲げ部を成形するように構成されることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のコイルエンド成形装置において、
前記コイルは、平角線を巻回することにより形成され、
前記第1曲げ方向は、フラットワイズ方向であることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のコイルエンド成形装置において、
前記第1および第2成形型は、前記リード線部を前記接近離間方向に直交する方向に沿って曲げるように構成されることを特徴とするコイルエンド成形装置。
【請求項10】
互いに接近離間可能な第1および第2成形型を用いて、コイルの一端から延出されたリード線部を該第1および第2成形型の接近離間方向とは異なる方向に沿って曲げることにより、前記リード線部に第1曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を成形するコイルエンド成形方法であって、
前記第1および第2成形型を互いに接近させて、前記少なくとも2つの第1曲げ部の少なくとも何れか1つが当該1つの第1曲げ部以外の第1曲げ部とは逆向きに曲がるように、前記リード線部に前記少なくとも2つの第1曲げ部を成形するステップを含み、
前記第1および第2成形型によって前記リード線部に前記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が成形される間に、前記リード線部の前記最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにすることを特徴とするコイルエンド成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの一端から延出されたリード線部に第1曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を成形するコイルエンド成形装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータを構成するコイルとして、矩形断面を有する線材(平角線)を巻回して形成されると共に、一端に渡線(リード線部)を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このコイルは、絶縁部材を介してステータコアに装着される。また、コイルの渡線は、フラットワイズ方向(断面の長辺と略直交する方向)に曲げられた2つのフラットワイズ曲げ部を有しており、当該渡線の端部は、対応する他のコイルの渡線とは反対側の端部に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−110122号公報
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1に記載された回転電機のコイルにおいて、リード線部の2つのフラットワイズ曲げ部は、同じ向きに曲げられているが、リード線部(渡線)同士の干渉を抑制しつつ回転電機をコンパクト化するために、リード線部に少なくとも何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた2つ以上のフラットワイズ曲げ部を形成する必要が生じることがある。しかしながら、リード線部に対して上述のような少なくとも何れか1つが残余のものとは逆向きに曲げられた2つ以上のフラットワイズ曲げ部を一対の成形型により一括して成形すると、遊端側のフラットワイズ曲げ部に比べて基端側のフラットワイズ曲げ部での線材の伸び量が大きくなることにより、リード線部の寸法誤差が増加したり、基端側のフラットワイズ曲げ部における電気抵抗が増加したりするおそれがある。また、このような寸法誤差や電気抵抗の増加は、矩形(長方形)状の断面以外の例えば正方形状の断面を有するリード線部に対し、一対の成形型によって断面の一辺と略直交する方向への曲げ加工を施す場合にも同様に起こり得る。
【0005】
そこで、本発明は、コイルの一端から延出されたリード線部に、第1曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を何れか1つが残余の第1曲げ部とは逆向きに曲がるように一対の成形型により一括して高精度に成形することを主目的とする。
【0006】
本発明によるコイルエンド成形装置は、
コイルの一端から延出されたリード線部に、第1曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を成形するコイルエンド成形装置であって、
互いに接近離間可能であると共に、互いに接近して前記リード線部を接近離間方向とは異なる方向に沿って曲げることにより、前記少なくとも2つの第1曲げ部を成形する第1および第2成形型を備え、
前記少なくとも2つの第1曲げ部の少なくとも何れか1つは、当該1つの第1曲げ部以外の第1曲げ部とは逆向きに曲げられ、
前記第1および第2成形型の一方は、前記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が前記第1および第2成形型によって前記リード線部に成形される間に、前記リード線部と非接触となって該リード線部の前記最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにする逃げ部を有することを特徴とする。
【0007】
このコイルエンド成形装置は、互いに接近離間可能な第1および第2成形型を備え、第1および第2成形型を互いに接近させて、コイルの一端から延出されたリード線部を接近離間方向とは異なる方向に沿って曲げることにより、当該リード線部に少なくとも何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を成形するものである。そして、このコイルエンド成形装置において、第1および第2成形型の一方は、リード線部に上記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が成形される間に、リード線部と非接触となって当該リード線部の最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにする逃げ部を有する。このように、第1および第2成形型の一方に逃げ部を設けて少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が成形される間(塑性変形するまで)にリード線部の最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにする(塑性変形させないようにする)ことで、線材の伸び量が大きくなるのを抑制しながらリード線部の基端側の第1曲げ部を成形した上で、最遊端側の第1曲げ部を成形することが可能となる。これにより、各第1曲げ部における寸法誤差や電気抵抗の増加を抑制すると共に、コイルに対するリード線部の遊端部の位置の精度を向上させることができる。従って、このコイルエンド成形装置によれば、コイルの一端から延出されたリード線部に、少なくとも何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を一対の成形型により一括して高精度に成形することが可能となる。
【0008】
また、前記第1および第2成形型の他方は、前記少なくとも2つの第1曲げ部に対応した複数の曲面を含む第1成形面を有してもよく、前記逃げ部は、前記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が前記第1および第2成形型によって前記リード線部に成形される間に、前記第1成形面の前記最遊端側の第1曲げ部に対応した曲面と対向するように前記第1および第2成形型の一方に形成された凹部であってもよい。これにより、第1および第2成形型を互いに接近させて少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部を成形する間に、リード線部の最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分と第1および第2成形型の一方との接触を断つことが可能となり、第1および第2成形型によりリード線部の最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分が拘束されないようにすることができる。
【0009】
更に、前記第1および第2成形型の一方は、前記リード線部と平行に延在すると共に、前記第1および第2成形型が互いに接近するにつれて前記第1成形面に近接するように傾斜する押圧面を有してもよく、前記凹部は、前記押圧面側で開口するように形成されてもよい。これにより、第1および第2成形型によりリード線部の最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分が拘束されないようにしながら、第1および第2成形型の一方の押圧面によりリード線部を第1および第2成形型の他方の第1成形面に押し付けて少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部を成形することが可能となる。
【0010】
また、前記第1および第2成形型の一方は、他方に対して接近離間可能な移動型であってもよく、前記第1および第2成形型の他方は、固定型であってもよい。これにより、固定型によりリード線部を支持した状態で移動型を固定型に接近させることで、コイルの一端から延出されたリード線部に、少なくとも何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を一対の成形型により一括して高精度に成形することが可能となる。
【0011】
更に、前記第1および第2成形型は、前記リード線部の前記最遊端側の第1曲げ部よりも遊端側を拘束しないように構成されてもよい。これにより、少なくとも2つの第1曲げ部間における線材の伸び量のバラツキを抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記リード線部には、3つの第1曲げ部が成形されてもよく、前記3つの第1曲げ部のうちの最基端側の1つが残余の2つとは逆向きに曲げられてもよい。
【0013】
更に、前記第1および第2成形型は、互いに接近して前記第1曲げ方向と直交する第2曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも1つの第2曲げ部を成形するように構成されてもよい。これにより、第1および第2成形型を互いに接近させることにより、少なくとも2つの第1曲げ部および少なくとも1つの第2曲げ部をより短時間のうちにリード線部に成形することが可能となる。
【0014】
また、前記コイルは、平角線を巻回することにより形成されてもよく、前記第1曲げ方向は、フラットワイズ方向であってもよい。
【0015】
更に、前記第1および第2成形型は、前記リード線部を前記接近離間方向に直交する方向に沿って曲げるように構成されてもよい。
【0016】
本発明によるコイルエンド成形方法は、
互いに接近離間可能な第1および第2成形型を用いて、コイルの一端から延出されたリード線部を該第1および第2成形型の接近離間方向とは異なる方向に沿って曲げることにより、前記リード線部に第1曲げ方向に沿って曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を成形するコイルエンド成形方法であって、
前記第1および第2成形型を互いに接近させて、前記少なくとも2つの第1曲げ部の少なくとも何れか1つが当該1つの第1曲げ部以外の第1曲げ部とは逆向きに曲がるように、前記リード線部に前記少なくとも2つの第1曲げ部を成形するステップを含み、
前記第1および第2成形型によって前記リード線部に前記少なくとも2つの第1曲げ部のうちの最遊端側の1つよりも基端側の第1曲げ部が成形される間に、前記リード線部の前記最遊端側で第1曲げ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにすることを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、コイルの一端から延出されたリード線部に、少なくとも何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた少なくとも2つの第1曲げ部を一対の成形型により一括して高精度に成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のコイルエンド成形装置により成形されるコイルの一例を示す斜視図である。
図2】本発明のコイルエンド成形装置を示す側面図である。
図3】本発明のコイルエンド成形装置を示す平面図である。
図4】第1成形型を示す斜視図である。
図5】第1成形型を示す正面図である。
図6】第2成形型を示す斜視図である。
図7】第2成形型を示す平面図である。
図8】第2成形型を示す側面図である。
図9】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す斜視図である。
図10】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す斜視図である。
図11】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す斜視図である。
図12】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す平面図である。
図13】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す模式図である。
図14】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す斜視図である。
図15】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す平面図である。
図16】本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す模式図である。
図17】(a),(b)および(c)は、本発明のコイルエンド成形装置によるリード線部の成形手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明のコイルエンド成形装置により成形されるコイルの一例を示す斜視図である。同図に示すコイル10は、図示しないロータと共に例えば電気自動車やハイブリッド自動車の走行駆動源および/または発電機として用いられる3相交流電動機を構成する電動機用ステータ(図示省略)に含まれるものである。コイル10は、矩形断面を有する平角線を複数回にわたって巻回することにより形成され、その一端からは長尺のリード線部11が延出されると共に、その他端からは短尺の接続端部12が延出されている。なお、電動機用ステータは、少なくとも1つのコイル10と、当該コイル10とはリード線部の構成が若干異なる複数のコイルと、図示しないステータコアとを含み、ステータコアは、円環状に配列される複数の分割コアと、当該複数の分割コアが固定される固定リングとを有する。コイル10は、図示しない絶縁部材を介して対応する分割コアに装着され、電動機用ステータ(ステータコア)は、軸方向における両側から熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等のモールド樹脂により被覆される。
【0021】
図1に示すように、コイル10のリード線部11は、エッジワイズ方向(第2曲げ方向:断面の短辺と略直交する方向)に沿って曲げられた2つのエッジワイズ曲げ部(第2曲げ部)e1およびe2と、フラットワイズ方向(第1曲げ方向:断面の長辺と略直交する方向)に沿って曲げられた3つのフラットワイズ曲げ部(第1曲げ部)f1,f2およびf3とを有する。本実施形態において、2つのエッジワイズ曲げ部e1,e2および3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3は、リード線部11がコイル10の外周側からステータコアの軸方向における図中上方に向けて延びると共に当該軸方向に対して直角に屈曲し、一旦ステータ外周側に向かってから再度ステータ内周側に向かい、遊端部11aが図中上方に向けて延びるように成形される。すなわち、2つのエッジワイズ曲げ部e1およびe2は、互いに逆向きに曲げられ、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3のうちの最基端側のフラットワイズ曲げ部f1は、残余のフラットワイズ曲げ部f2およびf3とは逆向きに曲げられる。
【0022】
図2は、コイル10のリード線部11の成形に用いられるコイルエンド成形装置20を示す側面図であり、図3は、コイルエンド成形装置20を示す平面図である。これらの図面に示すように、コイルエンド成形装置20は、コイル10のリード線部11に複数のエッジワイズ曲げ部e1,e2および複数のフラットワイズ曲げ部f1〜f3を成形するための第1成形型21および第2成形型22と、コイル10を支持するコイル支持部25とを含む。
【0023】
第1成形型21は、コイルエンド成形装置20の設置箇所に据え付けられるベース部200に支持ブロック201を介して固定される固定型であり、図4および図5に示すように、コイル10のリード線部11にエッジワイズ曲げ部e2を成形するための第1エッジワイズ成形面210と、リード線部11にフラットワイズ曲げ部f1〜f3を成形するためのフラットワイズ成形面(第1成形面)215とを有する。第1エッジワイズ成形面210は、略L字状に形成され、図中Z方向に沿って延びる受圧面(支持面)211と、当該受圧面211に連続すると共にエッジワイズ曲げ部e2に対応した曲面212と、曲面212に連続すると共に図中X方向と概ね平行に延びる受圧面213とを含む。第1エッジワイズ成形面210、すなわち受圧面211、曲面212および受圧面213は、何れも図中Y方向に延在する。
【0024】
また、フラットワイズ成形面215は、図中Z方向に延びると共に長手方向における略中央部が図中上方に窪んだ凹面であり、フラットワイズ曲げ部f1に対応した曲面216と、フラットワイズ曲げ部f2に対応した曲面217と、フラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面218と、リード線部11の遊端部11aを押圧する押圧面219とを含む。図5に示すように、フラットワイズ曲げ部f1に対応した曲面216および押圧面219は、図中下方に突出する凸面である。これに対して、フラットワイズ曲げ部f2に対応した曲面217およびフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面218は、図中上方に窪む凹面である。更に、第1成形型21には、フラットワイズ成形面215よりも第2成形型22側(図2における右側)に位置すると共に第2成形型22に近づくにつれて図中上方に傾斜する緩やかな曲面状のガイド面214が形成されている。
【0025】
第2成形型22は、ベース部200に固定されて図2において左右すなわちX方向(接近離間方向)に沿って延びるガイドレール200rにより移動自在に支持されると共に電動モータあるいは流体圧シリンダ等を含む図示しない駆動ユニットにより駆動されてガイドレール200rの延在方向すなわち図2におけるX方向に沿って進退移動可能な移動ステージ202により支持される移動型である。第2成形型22は、図2等において実線矢印で示す方向に移動して固定型である第1成形型21に接近すると共に図2等において点線矢印で示す方向に移動して第1成形型21から離間することができる。そして、第2成形型22は、図6に示すように、コイル10のリード線部11にエッジワイズ曲げ部e2,e3を成形するための第2エッジワイズ成形面220と、リード線部11にフラットワイズ曲げ部f1〜f3を成形するためのフラットワイズ成形部225とを有する。
【0026】
第2エッジワイズ成形面220は、図6から図8に示すように、フラットワイズ成形部225よりも移動ステージ202に固定される第2成形型22の基端部側に位置すると共に、第1成形型21の第1エッジワイズ成形面210と平行に延在するように第2成形型22に形成される。図示するように、第2エッジワイズ成形面220は、第1エッジワイズ成形面210の受圧面211と対向するように図中Z方向に延びる押圧面221と、当該押圧面221に連続すると共にエッジワイズ曲げ部e2に対応した曲面212と、曲面212に連続すると共に第1エッジワイズ成形面210の受圧面213と対向するように第2成形型22の遊端に向けて図中X方向と概ね平行に延びる押圧面223と、当該押圧面223に連続すると共に図中Z方向へと屈曲する曲面である押圧面224とを含む。
【0027】
また、フラットワイズ成形部225は、図6から図8に示すように、第2エッジワイズ成形面220よりも第2成形型22の遊端側(第1成形型21側)に位置するように当該第2成形型22に形成される。図示するように、フラットワイズ成形部225は、フラットワイズ曲げ部f1に対応した曲面226と、フラットワイズ曲げ部f2に対応した曲面227と、フラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面228と、曲面226〜228よりも第2成形型22の遊端側(第1成形型21側)に形成された押圧面229と、逃げ部230とを含む。
【0028】
図6に示すように、フラットワイズ曲げ部f1に対応した曲面226は、図中下方に窪む凹面である。これに対して、フラットワイズ曲げ部f2に対応した曲面227およびフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面228は、図中上方に突出する凸面である。これらの曲面226〜228は、第2エッジワイズ成形面220よりも第2成形型22の遊端側(第1成形型21側)に形成される。また、押圧面229は、図中Z方向に延在すると共に、図中X方向に沿って第2成形型22の基端側から遊端側に向かうにつれてベース部200に近接するように形成された平坦な傾斜面である。図示するように、押圧面229と、それよりも第2成形型22の基端側に配置される曲面226、227等との間には、緩やかな曲面状のガイド面が形成されている。
【0029】
フラットワイズ成形部225の逃げ部230は、リード線部11の最遊端側に成形されるフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面228と、押圧面229との連なりを断つように押圧面229側で開口すると共に図中X方向に延びるように第2成形型22に形成された凹部である。逃げ部230は、第1および第2成形型21,22によりリード線部11に3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3のうちの最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2が成形される間、第1成形型21のフラットワイズ成形面215のフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面218と対向すると共にリード線部11と非接触となる。図示するように、逃げ部230の外周と、周囲の押圧面229や曲面228等との間には、緩やかな曲面状のガイド面が形成されている。
【0030】
コイル支持部25は、図3において実線で示すように、リード線部11が図中Z方向に沿って延在するようにコイル10を支持可能に構成される。また、コイル支持部25は、当該コイル支持部25により支持されて水平に延びるコイル10のリード線部11のフラットワイズ方向すなわち図中Y方向に延びる回転軸25aを有し、図示しない駆動ユニットにより駆動されて回転軸25aの軸心周りに図3における時計方向に回動することができる。更に、コイルエンド成形装置20は、リード線部11に最基端側のエッジワイズ曲げ部e1を成形するための図示しない曲げガイド部を含む。曲げガイド部は、コイル支持部25により支持されたコイル10のリード線部11を両側からガイドする一対のガイド部材と、リード線部11の最基端側のエッジワイズ曲げ部e1の曲げ支点となる円柱状の曲げ支点部とを有する。
【0031】
これにより、コイル支持部25を回転軸25aの軸心周りに回動させることで、リード線部11を曲げ支点部の周りにエッジワイズ方向に曲げて当該リード線部11に最基端側のエッジワイズ曲げ部e1を成形することが可能となる。なお、曲げ支点部は、その外周面(円柱面)がリード線部11(その側面)と接触するように配置され、その軸心は、エッジワイズ曲げ部e1の成形に際してリード線部11がコイル支持部25と曲げガイド部とに対して移動しないようにコイル支持部25の回転軸25aの軸心からオフセットされる。これにより、エッジワイズ曲げ部e1の成形に際してリード線部11が曲げ支点部と擦れ合って損傷するのを抑制することが可能となる。また、本実施形態において、コイル支持部25の回転軸25aの軸心は、コイル支持部25を回動させることによりエッジワイズ曲げ部e1を成形するに際してリード線部11がコイル支持部25および曲げガイド部に対して移動しないように、すなわち第1および第2成形型21,22により保持(拘束)されたリード線部11の遊端側およびリード線部11のコイル支持部25により支持されている基端側の両方が拘束された状態でリード線部11が伸びないように、曲げ支点部からオフセットされる。これにより、エッジワイズ曲げ部e1の成形に際して、リード線部11が伸びて細くなるのを抑制することが可能となる。
【0032】
次に、本発明によるコイルエンド成形方法、すなわち上述のコイルエンド成形装置20を用いたコイル10のリード線部11の成形手順について説明する。
【0033】
コイルエンド成形装置20を用いたリード線部11の成形に際しては、移動ステージ202を図2に示す待機位置まで移動させ、第2成形型22を第1成形型21から離間させておく。更に、コイル支持部25を図3において実線で示す初期位置まで回動させると共に、真っ直ぐに延びるリード線部11を有するコイル10をコイル支持部25に支持させ(図3および図4参照)、図示しない曲げガイド部の一対のガイド部材の間にリード線部11を配置する。このようにコイル10がコイル支持部25にセットされると、リード線部11の第1成形型21側の側面は、第1成形型21の第1エッジワイズ成形面210に含まれる受圧面211の一部と当接し、リード線部11は、図中Z方向に沿って真っ直ぐに延在する(図3の実線、図5の二点鎖線参照)。なお、本実施形態では、リード線部11の成形に先立って、遊端部11aから表面に施された被膜が予め除去される。
【0034】
続いて、図9に示すように、移動ステージ202の図示しない駆動ユニットにより第1エッジワイズ成形面210と第2エッジワイズ成形面220との間隔がリード線部11の幅に一致するように移動ステージ202および第2成形型22をX方向に沿って待機位置から予め定められた距離だけ第1成形型21に向けて移動(接近)させていく。移動ステージ202および第2成形型22が第1成形型21に接近するのに伴って、第2成形型22のフラットワイズ成形部225を構成する押圧面229は、図10に示すように、リード線部11の第2成形型22側の側面のエッジ部と当接し、当該リード線部11を第1成形型21のフラットワイズ成形面215に向けて押圧する。すなわち、第1成形型21の受圧面211によりX方向に支持されたリード線部11には、第2成形型22から押圧面229と直交する方向の力が付与され、リード線部11の曲面216との当接部と押圧面219との当接部との間の部分が徐々にフラットワイズ成形面215の曲面217,218に接近するように弾性変形していく。
【0035】
更に、移動ステージ202および第2成形型22が第1成形型21に接近するのに伴って、図11および図12に示すように、リード線部11が第2成形型22のフラットワイズ成形部225を構成する曲面226,227と当接するようになると、リード線部11の一部が第2成形型22の曲面226により第1成形型21のフラットワイズ成形面215の曲面216に押し付けられて塑性変形する。また、これに並行して、リード線部11の一部が第2成形型22の曲面227により第1成形型21のフラットワイズ成形面215の曲面217に押し付けられて塑性変形する。これにより、リード線部11に基端側の2つのフラットワイズ曲げ部f1およびf2が成形されることになる。
【0036】
そして、本実施形態のコイルエンド成形装置20では、リード線部11に基端側の2つのフラットワイズ曲げ部f1およびf2が成形される間(塑性変形するまでの間)、図12および図13に示すように、第2成形型22のフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面228と押圧面229との間に形成された凹部である逃げ部230がリード線部11を介して第1成形型21のフラットワイズ成形面215のフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面218と対向する。すなわち、リード線部11に基端側の2つのフラットワイズ曲げ部f1およびf2が成形される間、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分(フラットワイズ曲げ部f3に対応した部分)は、第1成形型21のフラットワイズ成形面215の曲面218により押圧されて弾性変形するが、逃げ部230の存在により第2成形型22によって拘束される(第2成形型22に押し付けられる)ことはない。また、本実施形態において、第2成形型22は、図13に示すように、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分よりも遊端側の部分が第1成形型21の押圧面219により押圧されても、当該遊端側の部分と当接しないように構成されている。
【0037】
これにより、コイルエンド成形装置20では、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3のうちの最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1およびf2が成形される間に、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分や、それよりも遊端側の部分が拘束されないように(塑性変形させないように)することができる。この結果、線材の伸び量が大きくなるのを抑制しながらリード線部11の基端側のフラットワイズ曲げ部f1およびf2を成形することが可能となる。
【0038】
リード線部11に基端側の2つのフラットワイズ曲げ部f1およびf2が成形された後、移動ステージ202および第2成形型22が更に第1成形型21に接近していくと、図14および図15に示すように、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分が第2成形型22のフラットワイズ成形部225を構成する曲面228と当接する。これにより、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分が第2成形型22の曲面228により第1成形型21のフラットワイズ成形面215の曲面218に押し付けられて塑性変形し、リード線部11に最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3が成形されることになる。
【0039】
また、本実施形態において、第2成形型22は、図16に示すように、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分よりも遊端側の部分、すなわち被膜が除去されている遊端部11aが第1成形型21の押圧面219等により押圧されても、当該遊端側の部分と当接しないように構成されている。これにより、コイルエンド成形装置20では、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3のうちの最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3が成形される間に、当該フラットワイズ曲げ部f3よりも遊端側の部分が拘束されないようにすることができる。この結果、線材の伸び量が大きくなるのを抑制しながらリード線部11の最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3を成形することが可能となる。
【0040】
上述のように、コイルエンド成形装置20では、線材の伸び量が大きくなるのを抑制しながらリード線部11の各フラットワイズ曲げ部f1〜f3を成形することができる。この結果、各フラットワイズ曲げ部f1〜f3における寸法誤差や電気抵抗の増加を抑制すると共に、コイル10に対するリード線部11の遊端部11aの位置の精度を向上させることが可能となる。従って、コイルエンド成形装置20によれば、コイル10の一端から延出されたリード線部11に、何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3を第1および第2成形型21,22により一括して高精度に成形することができる。
【0041】
リード線部11に3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3が成形された後、移動ステージ202および第2成形型22が更に第1成形型21に接近していくと、リード線部11の第2成形型22側の側面、すなわち本実施形態では遊端部11aの側面の一部が第2成形型22の第2エッジワイズ成形面220の押圧面224と当接する。これにより、第1成形型21に対する第2成形型22の接近に伴って、第2成形型22の第2エッジワイズ成形面220の押圧面224からエッジワイズ曲げ部e2を成形するための荷重がリード線部11の遊端部11aに付与される。この結果、リード線部11の遊端部11aは、図17(a)および図17(b)に示すように、第1成形型21の第1エッジワイズ成形面210の受圧面213に向けてエッジワイズ方向に沿って曲げられていく。そして、最終的に、リード線部11の遊端部11aは、第2成形型22の第2エッジワイズ成形面220の曲面222により第1成形型21の第1エッジワイズ成形面210の曲面212に押し付けられて塑性変形し、それにより最遊端側のエッジワイズ曲げ部e2が成形される。
【0042】
このように、コイルエンド成形装置20では、第1および第2成形型21,22を互いに接近させることにより、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3に加えて、最遊端側のエッジワイズ曲げ部e2をリード線部11に成形することができる。また、本実施形態において、第1および第2成形型21,22は、エッジワイズ曲げ部e2の成形に際してリード線部11の最遊端側でエッジワイズ方向に沿って曲がる部分よりも遊端側の部分、すなわち被膜が除去されている遊端部11aと少なくとも両者が同時に当接しないように構成されている。これにより、リード線部11の遊端部11aを拘束することなく最遊端側のエッジワイズ曲げ部e2を成形することができる。従って、エッジワイズ曲げ部e2での線材の伸び量の増加を抑制し、リード線部11の寸法誤差やエッジワイズ曲げ部e2での電気抵抗の増加を抑制することが可能となる。
【0043】
上述のようにして、リード線部11には、移動ステージ202および第2成形型22が移動し始めてから待機位置から予め定められた距離だけ移動するまでの間(第1エッジワイズ成形面210と第2エッジワイズ成形面220との間隔がリード線部11の幅に概ね一致するまでの間)に、第1および第2成形型21,22によってフラットワイズ曲げ部f1〜f3と、エッジワイズ曲げ部e2が成形される。移動ステージ202および第2成形型22は、X方向に沿って待機位置から予め定められた距離だけ移動した段階で停止させられ、停止位置に保持される。なお、移動ステージ202および第2成形型22を停止位置に保持する際には、第2成形型22から第1成形型21に向けたX方向の荷重(トルク)を付与してもよく、移動ステージ202および第2成形型22を送りねじ等の作用により機械的に停止位置に保持してもよい。
【0044】
第1成形型21に対する移動ステージ202および第2成形型22の接近移動を停止させた後、図示しない駆動ユニットにより第2成形型22が第1成形型21から離間するように移動ステージ202をX方向に沿って待機位置へと移動させる。次いで、図3において破線で示すように、図示しない駆動ユニットを作動させてコイル支持部25を回転軸25aの軸心周りに図3における時計方向に回動させる。これにより、第1および第2成形型21,22によってリード線部11の遊端側を保持(拘束)した状態で、コイル10を支持したコイル支持部25の回動により図示しない曲げ支点部を支点としてリード線部11をエッジワイズ方向に沿って曲げて最基端側のエッジワイズ曲げ部e1を成形することができる。この結果、コイル10に対するリード線部11の遊端部11aの位置の精度を確保しながら最基端側のエッジワイズ曲げ部e1を成形することが可能となる。
【0045】
本実施形態では、コイル支持部25を初期位置から図3において破線で示すように時計回りに90°だけ回動させることにより最基端側のエッジワイズ曲げ部e1の成形が完了する。そして、リード線部11に対する複数のエッジワイズ曲げ部e1,e2および複数のフラットワイズ曲げ部f1,f2,f3の成形が完了した後、コイル10をコイル支持部25から取り外す。
【0046】
以上説明したように、コイルエンド成形装置20は、互いに接近離間可能な第1および第2成形型21,22を含み、第1および第2成形型21,22を互いに接近させて、コイル10の一端から延出されたリード線部11を接近離間方向(X方向)とは異なる方向(Y方向すなわちフラットワイズ方向)に沿って曲げることにより、当該リード線部11に、何れか1つ(f1)が残余(f2,f3)とは逆向きに曲げられた3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3を成形するものである。そして、コイルエンド成形装置20において、第2成形型22は、リード線部11に3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3のうちの最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2が成形される間にリード線部11と非接触となって当該リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにする逃げ部230を有する。
【0047】
このように、第2成形型22に逃げ部230を設けて最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2が成形される間(塑性変形するまで)にリード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分を拘束しないようにする(塑性変形させないようにする)ことで、線材の伸び量が大きくなるのを抑制しながらリード線部11の基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2を成形した上で、最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3を成形することが可能となる。これにより、各フラットワイズ曲げ部f1〜f3における寸法誤差や電気抵抗の増加を抑制すると共に、コイル10に対するリード線部11の遊端部11aの位置の精度を向上させることができる。従って、コイルエンド成形装置20によれば、コイル10の一端から延出されたリード線部11に、何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3を第1および第2成形型21,22により一括して高精度に成形することが可能となる。
【0048】
また、コイルエンド成形装置20において、第1成形型21は、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3に対応した複数の曲面216,217および218を含むフラットワイズ成形面215を有し、第2成形型22の逃げ部230は、リード線部11に最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2が成形される間にフラットワイズ成形面215の最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3に対応した曲面218と対向する凹部とされる。これにより、第1および第2成形型21,22を互いに接近させて最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2を成形する間に、リード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分と第2成形型22との接触を断つことが可能となり、第1および第2成形型21,22によりリード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分が拘束されないようにすることができる。
【0049】
更に、コイルエンド成形装置20において、第2成形型22は、Z方向すなわちコイル支持部25により支持されたコイル10のリード線部11と平行に延在すると共に、第1および第2成形型21,22が互いに接近するにつれて第1成形型21のフラットワイズ成形面215に近接するように傾斜する押圧面229を有し、凹部である逃げ部230は、押圧面229側で開口するように第2成形型22に形成される。これにより、第1および第2成形型21,22によりリード線部11の最遊端側でフラットワイズ方向に沿って曲がる部分が拘束されないようにしながら、第2成形型22の押圧面229によりリード線部11を第1成形型21のフラットワイズ成形面215に押し付けて最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも基端側のフラットワイズ曲げ部f1,f2を成形することが可能となる。
【0050】
また、コイルエンド成形装置20では、固定型である第1成形型21の受圧面211によりリード線部11を支持した状態で、移動型である第2成形型22を第1成形型21に接近させることによりフラットワイズ曲げ部f1〜f3が成形される。これにより、コイル10の一端から延出されたリード線部11に、何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3を第1および第2成形型21,22により一括して高精度に成形することが可能となる。ただし、コイルエンド成形装置20において、第1成形型21を移動型として構成すると共に第2成形型22を固定型として構成してもよいことはいうまでもない。
【0051】
更に、コイルエンド成形装置20において、第1および第2成形型21,22は、互いに接近してエッジワイズ方向に沿って曲げられた最遊端側のエッジワイズ曲げ部e2を成形するように構成される。これにより、第1および第2成形型21,22を互いに接近させることにより、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3および1つのエッジワイズ曲げ部e2をより短時間のうちにリード線部11に成形することが可能となる。なお、第1および第2成形型21,22は、互いに接近してエッジワイズ方向に沿って曲げられた複数のエッジワイズ曲げ部を成形するように構成されてもよい。また、第1および第2成形型21,22の何れか一方のエッジワイズ成形面を省略すると共に、第1および第2成形型21,22の他方に接近離間可能な第3成形型をコイルエンド成形装置20に設けて、第1および第2成形型21,22の他方と第3成形型とによって少なくとも1つのエッジワイズ曲げ部をリード線部11に成形してもよい。この場合、第1および第2成形型21,22の他方に第3成形型が接近するのに連動して、図3において時計方向に回動してエッジワイズ曲げ部e1を成形するように第3成形型およびコイル支持部25を構成してもよい。
【0052】
また、コイルエンド成形装置20において、第1および第2成形型21,22は、リード線部11の最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも遊端側の部分(少なくとも被膜が除去された遊端部11a)を拘束しないように構成される。これにより、3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3間における線材の伸び量のバラツキを抑制すると共に、エッジワイズ曲げ部e2での線材の伸び量の増加を抑制することが可能となる。なお、フラットワイズ曲げ部f1〜f3やエッジワイズ曲げ部e1,e2の成形に先立って、リード線部11の遊端部11aの被膜が除去されない場合には、当該被膜の厚みを考慮しながら、リード線部11の最遊端側のフラットワイズ曲げ部f3よりも遊端側の部分を拘束しないように第1および第2成形型21,22を構成すればよい。
【0053】
更に、コイルエンド成形装置20において、第1および第2成形型21,22は、リード線部11に最基端側のフラットワイズ曲げ部f1が残余のフラットワイズ曲げ部f2,f3とは逆向きに曲げられた3つのフラットワイズ曲げ部f1〜f3を成形するように構成されるが、これに限られるものではない。すなわち、フラットワイズ曲げ部f2またはf3が残余とは逆向きに曲げられてもよく、第1および第2成形型21,22は、互いに接近することにより少なくとも何れか1つが残余とは逆向きに曲げられた2つ以上のフラットワイズ曲げ部をリード線部11に成形するように構成されてもよい。
【0054】
また、コイルエンド成形装置20の成形対象となるリード線部11は、矩形(長方形)状の断面を有するものに限られず、正方形状、円形状あるいは楕円形状の断面を有するものであってもよい。これらの場合、フラットワイズ方向に対応した第1曲げ方向は、導線の断面(正方形)の一辺、一つの直径、あるいは短径と直交する方向となり、エッジワイズ方向に対応した第2曲げ方向は、導線の断面(正方形)の上記一辺と直交する他の辺、上記一つの直径と直交する他の直径、あるいは長径と直交する方向となる。
【0055】
そして、上記コイルエンド成形装置20の第1および第2成形型21,22の接近離間方向は、Y方向(第1曲げ方向)と、Z方向(コイル支持部25により支持された曲げ加工前のコイル10のリード線部11の延在方向)との双方と直交するX方向には限られない。すなわち、当該接近離間方向は、X方向に延びる軸と、Z方向に延びる軸とにより構成される平面(XZ平面)と平行に延びる方向であれば、X方向に対して傾斜した方向であってもよい。また、第1曲げ方向は、X方向と(接近離間方向)とZ方向(曲げ加工前のコイル10のリード線部11の延在方向)との双方に直交するY方向には限られない。すなわち、第1曲げ方向は、XZ平面と交差する方向であれば、Y方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。また、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、フラットワイズ曲げ部を有するリード線部を一端に備えるコイルの製造産業において利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17