特許第6089125号(P6089125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポスコの特許一覧

特許6089125エッジの過メッキを防止するための電気メッキ装置
<>
  • 特許6089125-エッジの過メッキを防止するための電気メッキ装置 図000002
  • 特許6089125-エッジの過メッキを防止するための電気メッキ装置 図000003
  • 特許6089125-エッジの過メッキを防止するための電気メッキ装置 図000004
  • 特許6089125-エッジの過メッキを防止するための電気メッキ装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089125
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】エッジの過メッキを防止するための電気メッキ装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/10 20060101AFI20170220BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C25D17/10 A
   C25D7/06 P
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-562897(P2015-562897)
(86)(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公表番号】特表2016-513752(P2016-513752A)
(43)【公表日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】KR2013011554
(87)【国際公開番号】WO2014168314
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0038912
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ハ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、 フォン ウ
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ヨン シク
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−239796(JP,A)
【文献】 特開2009−173952(JP,A)
【文献】 特表2002−514267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00− 9/12
C25D 13/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を中心に一定距離離隔して設けられた陽極の間でメッキを施す前記鋼板の電気メッキ装置において、
前記鋼板のエッジ部に近接して設けられ、前記エッジ部と前記陽極との通電を遮断する陰極エッジマスクと、
前記陰極エッジマスクの上下部にそれぞれ離隔して設けられ、前記エッジ部と前記陽極との通電を遮断する陽極エッジマスクとを含み、
前記陰極エッジマスクは不導体で形成され、
前記陽極エッジマスクは、伝導性素材で形成され、前記陽極と向き合う面に不導体層を有することを特徴とする、エッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置。
【請求項2】
前記陽極エッジマスクは、その結合位置に応じて、前記エッジ部と前記陽極との通電を遮断する面積を増減させることを特徴とする、請求項1に記載のエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置。
【請求項3】
前記陰極エッジマスクの一側面に連結される支持部と、
前記支持部の上下方向に延設され、前記支持部および前記陽極エッジマスクに結合する連結部と、
前記支持部の一端に結合して陰極エッジマスクを前後進させるマスク駆動部と、
前記陽極エッジマスクに前記鋼板の方向に2つ以上設けられ、前記連結部に結合する位置調節ホールとをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置。
【請求項4】
前記陰極エッジマスクは、前記鋼板が接する面に、内部に前記鋼板が通過し得るように溝が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載のエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置。
【請求項5】
前記溝は前記鋼板の方向に広く傾斜するように設けられたことを特徴とする、請求項4に記載のエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気メッキ装置に係り、より詳しくは、鋼板のエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車用鋼板や電気製品の外装材などに使用される鋼板は、焼鈍工程を経た後、使用目的に要求される耐食性を持たせるために電気亜鉛メッキ工程を経る。
一般的に、電気メッキを施すときにメッキ電流が鋼板のエッジ部位に集中する現象により、その部位のメッキ付着量が他の部位に比べて多くなるか、デンドライト(dendrite)形態の亜鉛成長が起こってメッキ欠陥を誘発するなどの問題が発生する。不溶性陽極を使用するメッキ設備では、鋼板の幅を超える部位では陽極が向かい合う形となり、様々な原因によりその部位の陽極間には電位差が発生して陽極表面の酸化イリジウム皮膜が破壊される問題が発生し、陽極の寿命が短縮される現象が現れる。
【0003】
これをより詳しく説明すると、連続して鋼板に電気亜鉛メッキを施す際に、電気の特性上、鋼板のエッジ部位に電流が集中する現象が現れ、これにより次の2つの問題が発生する。
【0004】
第一に、エッジ部位のメッキ付着量が他の部位に比べて増加するエッジの過メッキ問題が発生する。このようなエッジの過メッキは、メッキを施した後、コイル状に巻き取る過程で、エッジ部の過多なメッキ付着により鋼板に屈曲を誘発するから、コイルを小さな単位で製作するしかないため、運送費や生産性に多くの問題を引き起こしてきた。
【0005】
第二に、エッジ部位に発生するデンドライト形態の亜鉛付着問題である。このような形態で付着した亜鉛は非常によく剥がれるため、ロールなどを始めとするメッキ設備に付着してメッキ鋼板の表面に跡形の不良を誘発する問題が発生し、特に伝導ロールに付着する場合、付着した亜鉛粉を中心に伝導ロールに亜鉛がメッキされる現象に起因する亜鉛ピックアップ現象をもたらし、生産に多くの問題を引き起こす。
【0006】
このような問題を解決するために、従来は、図1のような形態のエッジマスクを適用してきた。図1に示すように、陰極(cathode)の役割を果たす鋼板1を中心に一定距離離隔して上部陽極(anode)2および下部陽極(anode)3が位置し、鋼板1の両端、すなわちエッジ部の電流集中を遮断するためのエッジマスク(edge mask)4を適用してきた。
【0007】
ところが、エッジ部の電流を遮断するためには鋼板のエッジ部位に正確にエッジマスクを接近させる必要が生じるが、実際鋼板に電気メッキを施す設備では鋼板が幅方向に左右に移動する蛇行現象が発生するため、鋼板とエッジマスク間の間隔が10mm以下の近接が難しく、これによりエッジ部の過メッキによる電流密度の減少に限界を持っていた。
また、鋼板のエッジ部の電流密度の減少はラインの生産性に直結するが、特に、後メッキ(片面55g/m)作業の際に印加される電流密度が増加するにつれて、エッジ部の電流密度の集中現象はさらに増加する。このようなエッジ部の電流密度の増加は、後メッキラインの作業速度に制限されるため、生産性が急激に低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するために案出されたもので、その目的は、鋼板のエッジ部における電流密度の減少のために、既存の陰極エッジマスクに陽極エッジマスクを追加することにより、鋼板のエッジ部の過メッキを防止することができる電気メッキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置は、鋼板を中心に一定距離離隔して設けられた陽極の間でメッキを施す鋼板の電気メッキ装置において、前記鋼板のエッジ部に近接して設けられ、前記エッジ部と前記陽極との通電を遮断する陰極エッジマスクと、前記陰極エッジマスクの上下部にそれぞれ離隔して設けられ、前記エッジ部と前記陽極との通電を遮断する陽極エッジマスクとを含むことを特徴とする。
【0010】
前記陽極エッジマスクは、前記エッジ部と前記陽極との通電を遮断する面積を増減させることができる。
前記陰極エッジマスクの一側面に連結される支持部と、前記支持部の上下方向に延設され、前記支持部および前記陽極エッジマスクに結合する連結部と、前記支持部の一端に結合して陰極エッジマスクを前後進させるマスク駆動部と、前記陽極エッジマスクに前記鋼板の方向に2つ以上設けられ、前記連結部に結合する位置調節ホールとをさらに含むことができる。
【0011】
前記陰極エッジマスクは、鋼板が接する面に、内部に鋼板が通過し得るように設けられる溝を有してもよい。
前記溝は、鋼板の方向に広く傾斜するように設けられてもよい。
前記陰極エッジマスクおよび前記陽極エッジマスクはそれぞれ不導体により形成することができる。
前記陽極エッジマスクは、伝導性素材で形成され、陽極と向き合う面に不導体層を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置によれば、鋼板の蛇行によって陰極エッジマスクが鋼板のエッジ部に近接しない場合でも、陽極エッジマスクによって、鋼板のエッジ部に集中する電流密度を減少させることができるため、電気メッキ時のエッジ部の電流集中による過メッキ現象およびデンドライト形態の析出による不良および操業問題を解決することができる。また、亜鉛片面メッキ量55g/m以上への後メッキ作業の際にもラインの稼働速度を70〜100mpm以上に増加させることにより、生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の連続電気メッキ水平セルの陽極およびエッジマスクを示す概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るエッジマスクの側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るエッジマスクの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図していない。ここで使用される単数形態は、フレーズがこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在または付加を除外させるものではない。
【0015】
別に定義してはいないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解される意味と同一の意味を持つ。通常使用される辞典に定義されている用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を持つと追加解釈され、定義されていない限り、理想的または公式的な意味で解釈されない。
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置について説明する。
【0017】
従来は、陰極エッジマスクを鋼板のエッジ部に近接させ、鋼板のエッジ部に印加される電流密度を減少させることにより、エッジ部の過メッキ現象を防止したが、本発明では、陰極エッジマスクに陽極エッジマスクを追加し、鋼板のエッジ部側に印加される電流密度を減少させることにより、エッジ部の過メッキを革新的に改善した。
【0018】
また、前記陽極エッジマスクは、陽極を覆う面積、すなわち鋼板のエッジ部と陽極との通電を遮断する面積が増減できるため、鋼板のエッジ部の電流密度を調節することが可能である。
【0019】
図2は本発明の一実施形態に係るエッジマスクの側面図である。図3は本発明の一実施形態に係るエッジマスクの斜視図である。図2および図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る陰極エッジマスク11は、鋼板のエッジ部に近接して設けられ、鋼板のエッジ部と陽極との通電を遮断することになる。このような陰極エッジマスク11は、鋼板の方向に内部に溝が設けられており、鋼板に連続メッキを施すときにエッジ部を溝の内部に通過させることにより、陽極と鋼板のエッジ部との通電を遮断することができる。
【0020】
前記溝は、鋼板の方向に広く傾くように設けられることが好ましい。鋼板の連続メッキの際に鋼板の幅方向に左右に移動する蛇行現象が生じるため、鋼板と陰極エッジマスク間11の間隔が変化しても、衝突することなく鋼板のエッジ部の電流密度を安定的に減少させることができる。
【0021】
また、陰極エッジマスク11の他側面には支持部13が連結され、前記支持部13の一端は陰極エッジマスク11を前後進させるマスク駆動部16に連結される。よって、鋼板の連続メッキの際に、鋼板の蛇行現象が発生する場合に陰極エッジマスク11を鋼板の方向に前後進させることにより、陰極エッジマスク11の位置を調節することができる。前記マスク駆動部16は、前後進が可能な装置であって、例えば、シリンダー装置であってもよい。前記マスク駆動部は、精密な制御のためにサーボモーターで駆動できる。
【0022】
前記支持部13には、上下方向に延設されて陽極エッジマスクを結合させることが可能な連結部14が結合する。このような連結部14は、支持部13を貫通するように形成されてもよく、両側に2つのロード状に形成されてもよい。
【0023】
前記連結部14が陽極エッジマスク12の位置調節ホール15に挿入されることにより、陽極エッジマスク12と連結部14とが結合できる。陽極エッジマスク12は、陰極エッジマスク11を挟んで2つが平行に向かい合う形で結合でき、前記位置調節ホール15が鋼板の方向に2つ以上設けられるため、連結部14に結合する位置調節ホール15の位置に応じて、陽極を覆う面積を調節することにより、鋼板のエッジ部の電流密度を調節することができる。
【0024】
一方、陰極エッジマスク11および陽極エッジマスク12は不導体で形成できる。また、陽極エッジマスク12によって覆われた部分の未メッキ問題を防止するために、陽極エッジマスク12は伝導性素材で形成できる。このとき、陽極2、3との通電を防止するために、陽極のエッジマスク12は陽極2、3と向き合う面に不導体層が形成できる。この場合、陽極エッジマスク12によって覆われる面に対して未メッキ問題が発生することを防止することができる。
【0025】
図4は本発明の一実施形態に係るエッジ部の過メッキを防止するための電気メッキ装置の概略断面図である。
【0026】
鋼板1は、負電荷を帯びて陰極の役割を果たし、2つの陽極2、3の間で進行しながら電気メッキが施されることになる。このとき、鋼板1の両側面のエッジ部は、電流密度が集中し、過度にメッキが行われるおそれがある。一次的に陰極エッジマスク11が近接して配置されることにより、エッジ部の電流密度を減少させることになる。このとき、陰極エッジマスク11と鋼板のエッジ部との間隔が広がっても、陰極エッジマスク11と陽極2、3との間に形成された陽極エッジマスク12によって陽極が覆われることになり、エッジ部の電流密度を減少させることが可能である。
【0027】
また、鋼板の進行の際に鋼板の幅方向に蛇行現象が発生して、鋼板1のエッジ部と陰極エッジマスク11との間隔がやや広くなるとしても、陽極エッジマスク12が陰極エッジマスク11よりも鋼板1の方向にさらに長く形成されることにより、エッジ部に電流密度が急激に増加するのを防止することができる。
【0028】
鋼板の厚さおよび種類に応じて、連結部14に結合する陽極エッジマスク12の結合溝15の位置を変更することにより、陽極エッジマスク12により通電が遮断される面積を調節することができる。
【0029】
一方、鋼板1の蛇行の程度が激しくなる場合、支持部13に連結される駆動部16の動作によって陰極エッジマスク11と陽極エッジマスク12の全体位置を鋼板1の幅の変化に応じて対応するように調節することができる。
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想または必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解することができるだろう。
【0030】
よって、上述した実施形態は、あらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は前記の詳細な説明よりは後述の特許請求の範囲によって定められるものである。特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形形態も本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4