【実施例】
【0025】
以下、実施例を図面を参照して説明する。
【0026】
(実施例1)
表1に示す糸密度(本/25mm)及びTex番手(g/1000m)を有するガラス繊維織布の両面にPTFE粒子水系分散液を塗布した後、150℃で乾燥し、340℃で焼成することにより、ガラス繊維織布の両面にPTFE樹脂層を形成し、A4サイズ(長辺が297mm、短辺が210mm)で、厚さが0.12〜0.18mmのシート状振動板2を得た。得られた振動板2中のPTFE含有率及び振動板2の厚さを下記表1に示す。
【0027】
振動付与手段3として、株式会社エフ・ピー・エス製のハイブリッドスピーカー「FPS0105HY−02」を用意した。振動付与手段3のサイズは、W18mm×H150mm×D10.2mmであった。
【0028】
振動付与手段3を振動板2の中央部に両面粘着テープで固定し、スピーカ機能を有する構造部材1を得た。
【0029】
(実施例2〜6及び比較例2)
PTFE含有率及び厚さを下記表1に示すように変更すること以外は、実施例1と同様にしてスピーカ機能を有する構造部材1を得た。実施例2,4,5の振動板2には、市販の複合シート(中興化成工業株式会社製)を使用したので、その製品名を表1に記載した。
【0030】
(実施例7〜30及び比較例3〜6)
ガラス繊維織布の糸密度(本/25mm)及びTex番手(g/1000m)と、PTFE含有率と、厚さとを下記表2〜表5に示すように変更すること以外は、実施例1と同様にしてスピーカ機能を有する構造部材1を得た。実施例7〜30の振動板2のうち、市販の複合シート(中興化成工業株式会社製)を使用したものは、その製品名を表2〜表5に記載した。
【0031】
得られた実施例1〜30及び比較例2〜6の構造部材について、音響評価試験を行った。音響評価試験で使用した音響評価システムを
図4を参照して説明する。スピーカ機能を有する構造部材1の振動板2の両方の短辺を張力付与試験機の空気圧式グリップ6a,6bで挟んで上下方向に移動することによって、振動板2の面方向に張力を加えた。ラジオカセットレコーダー7(ビクター製の製品名「RD−N8」)をアンプ8(株式会社エフ・ピー・エス製 FPS−YJ9736)に配線9によって接続し、アンプ8を振動付与手段3に配線10によって接続した。
【0032】
試験に使用した音楽は、NHKラジオ体操第1とした。この音楽を選択したのは、声及び音楽が聞き取りやすく、また、認知度が高いためである。まず、ラジオカセットレコーダー7にアンプ8及び構造部材1が取り付けられていない状態で音源ボリュームを15にしてNHKラジオ体操第1を再生し、ラジオカセットレコーダー7から2m離れた地点で聞いた。この時の聞こえ方を基準音声とした。
【0033】
図4に示す音響評価システムにおいて、アンプ8が最大ボリューム10Wの条件の下、ラジオカセットレコーダー7の音源ボリュームを15にしてNHKラジオ体操第1を再生し、実施例1〜30及び比較例2〜6の構造部材1の振動板2の第2の面(振動付与手段3が固定されている面とは反対側の面)から距離D(2m)離れた地点11で聞いた。この時の聞こえ方の基準音声からの劣化度合いを国際電気通信連合の規格番号ITU−TP.800及びITU−RBS.1284に準じた方法で5段階で評価した。その結果を下記表1〜表5に示す。また、評価基準を下記表6に示す。なお、評価試験は、振動板2に張力を加えない状態(荷重が0)と、張力付与試験機の空気圧式グリップ6a,6bで挟んで上下方向に移動することによって振動板2の面内方向に張力を加えた状態とで行った。振動板2に加える荷重は、20,40,60,80,100(N/110mm)の5段階に設定した。
【0034】
一方、比較例1として、振動板2を用いず、振動付与手段3のみをアンプ8に接続したシステムを作製した。振動付与手段3を机上に配置し、アンプ8が最大ボリューム10Wの条件の下、ラジオカセットレコーダー7の音源ボリュームを15にしてNHKラジオ体操第1を再生し、振動付与手段3から2m離れた地点で聞いた。この時の聞こえ方の基準音声からの劣化度合いを下記表1に併記する。
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
表1〜表5から明らかなように、実施例1〜30のスピーカ機能を有する構造部材によると、振動板に張力を加えている場合もそうでない場合も、3以上の評価を得られた。これに対し、振動板を使用しない比較例1では、評価が1で、音声の劣化が著しかった。
【0041】
表1において、フッ素樹脂含有量が異なる以外は同様な構成を有する比較例2及び実施例1〜6を比較すると、フッ素樹脂含有量が10重量%の比較例2では、評価が2ないし3であるのに対し、フッ素樹脂含有量が20重量%以上の実施例1〜6では、評価が3〜5で、2以下の評価が皆無であった。
【0042】
表2における比較例3及び実施例7〜12を比較すると、フッ素樹脂含有量が10重量%の比較例3では、評価が3のみであるのに対し、フッ素樹脂含有量が20重量%以上の実施例7〜12では、評価が3〜5であった。
【0043】
表3における比較例4及び実施例13〜18を比較すると、フッ素樹脂含有量が10重量%の比較例4では、評価が3のみであるのに対し、フッ素樹脂含有量が20重量%以上の実施例13〜18では、評価が3〜5であった。
【0044】
表4における比較例5及び実施例19〜24を比較すると、フッ素樹脂含有量が10重量%の比較例5では、評価が2ないし3であるのに対し、フッ素樹脂含有量が20重量%以上の実施例19〜24では、評価が3〜5であった。
【0045】
表5における比較例6及び実施例25〜30を比較すると、フッ素樹脂含有量が10重量%の比較例6では、評価が2ないし3であるのに対し、フッ素樹脂含有量が20重量%以上の実施例25〜30では、評価が3〜5であった。
【0046】
表1〜表5の結果から、ガラス繊維織布の糸密度及びTex番手を変化させてもフッ素樹脂含有量が20重量%以上の場合には、音声の劣化が少なく、スピーカとして十分な機能を発揮できることがわかる。また、表1〜表5の結果から、フッ素樹脂含有量が多い方が音の再現性に優れる傾向があることがわかる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 耐熱性繊維織布と、前記耐熱性繊維織布の両面に形成されたフッ素樹脂とを含み、前記フッ素樹脂の含有量が20重量%以上であることを特徴とする振動板。
[2] 前記フッ素樹脂が、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリフッ化ビニリデン及びエチレン四フッ化エチレン共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類からなり、前記耐熱性繊維織布が、ガラス繊維織布、アラミド繊維織布、カーボン繊維織布及びステンレス鋼繊維織布からなる群から選択される少なくとも1種類からなることを特徴とする[1]記載の振動板。
[3] [1]または[2]に記載の振動板と、
前記振動板に振動を付与するための振動付与手段とを備えることを特徴とするスピーカ機能を有する構造部材。
[4] 前記振動板の一方の面に前記振動付与手段が取り付けられ、かつ前記振動板の他方の面が映写幕として用いられることを特徴とする[3]記載のスピーカ機能を有する構造部材。