特許第6089135号(P6089135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジアングス フーシェン バイオテクノロジー有限公司の特許一覧

特許6089135食用油の酸化反応における安定状態を改善又は維持する方法。
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089135
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】食用油の酸化反応における安定状態を改善又は維持する方法。
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/06 20060101AFI20170220BHJP
   C11B 5/00 20060101ALI20170220BHJP
   C11B 3/10 20060101ALI20170220BHJP
   C11B 1/10 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A23D7/06
   C11B5/00
   C11B3/10
   C11B1/10
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-117278(P2016-117278)
(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公開番号】特開2017-6123(P2017-6123A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】201510343543.8
(32)【優先日】2015年6月19日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515267862
【氏名又は名称】ジアングス フーシェン バイオテクノロジー有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】シミング リー
(72)【発明者】
【氏名】デーエ リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンホン リュウ
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−115185(JP,A)
【文献】 特開平07−227227(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/055327(WO,A1)
【文献】 特開昭62−181398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1種類の親水性の天然酸化防止剤を、5〜200℃の温度状態にある高い極性を有する油であるプロピレングリコールカプリレート中に混合することによって親水性の天然酸化防止剤を0.04〜50重量%含有している酸化防止剤と油との混合物を得る工程、
b.上記酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物を、食用油中に当該親水性の天然酸化防止剤が重量を基準として10〜1000ppmの濃度を有するように混合する工程
によって食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項2】
親水性を有する天然の酸化防止剤がポリフェノールを含有する組成物、植物から抽出された抗酸化物、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、クエルセチン、エスペリジン、プテロスティルベン、プロアンソシアニジン、カルノシン酸の何れかであり、かつポリフェノールを含有している組成物が、少なくとも緑茶、黒茶、白茶、及びウーロン茶の何れかであり、しかも植物から抽出された抗酸化物が、りんご、オレンジ又は柑橘類、ブルーベリー、ローズマリー、及び胡麻の何れかから抽出された抗酸化物であることを特徴する請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項3】
少なくとも1個の親水性を有する天然の酸化防止剤を、超音波振動によってプロピレングリコールカプリレートに混合することを特徴とする請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項4】
少なくとも1個の親水性を有する天然の酸化防止剤を、プロピレングリコールカプリレートへの混合が、25〜40℃の温度にて行われることを特徴とする請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態をする方法。
【請求項5】
親水性の天然酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物に対する食用油の混合に先立ち、極性を有する酸化成分を食用油から除去するために、シリカゲルクロマトグラフィーを介して、食用油を濾過し、非極性の揮発性溶剤を作用させることによって、シリカゲルから食用油を抽出し、かつ食用油から当該非極性の揮発性溶剤を蒸発によって除去するという事前処理を施すことを特徴とする請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項6】
食用油が魚油であることを特徴とする請求項記載の食用油の酸化反応における安定状態をする方法。
【請求項7】
非極性であって揮発性の溶剤がヘキサンであることを特徴とする請求項記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項8】
シリカゲルが食用油に対して占める体積比が1:1から1:20であることを特徴とする請求項記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項9】
親水性の天然酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物が溶液であることを特徴とする請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項10】
親水性の天然酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物が天然の酸化防止剤を0.04〜20重量%有していることを特徴とする請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法。
【請求項11】
親水性の天然酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物を食用油中に混合したに、親水性を有する天然の酸化防止剤が重量を基準として100〜200ppmの濃度であることを特徴とする請求項1記載の食用油の酸化反応における安定状態を改善又する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油の酸化反応における安定化を技術分野としている。
【背景技術】
【0002】
食用油、特に魚油及び大豆油のような、所謂健康に資する食用油は、多量の単価不飽和脂肪酸及び/又は多価不飽和脂肪酸を含んでいる。
【0003】
これまでの研究成果によれば、例えばω―3不飽和脂肪酸の場合のように、多価不飽和脂肪酸は、血液のコレステロール値を低下させ、かつ血管における疾患の頻度を減少させるという効果を有している。
【0004】
但し、これらの不飽和脂肪酸における二重結合の存在によって、当該不飽和脂肪酸の脂質は、酸化しやすい状態にあり、その結果、不飽和脂肪酸における性状が変質し、かつ不飽和脂肪酸が所定の密度を有する状態にて残存し得る期間もまた限定されることにならざるを得ない。
【0005】
食用油の酸化を防止するために、種々の酸化防止剤が使用されている。
【0006】
しかしながら、脂質に対する酸化防止剤として通常使用されているブチルハイドロキシトル塩(BHT)及びブチルハイドロキシノール(BHA)の2成分は、身体における腫瘍の発生の原因となるという指摘がされている。
【0007】
他の酸化防止剤として周知であるビタミンEは、少なくとも魚油における過酸化物値を減少するには効果がないことが判明している。
【0008】
これに対し、茶から採取された没食子酸エピガロカテキン(EGCG)及びローズマリーから採取されたカルノシン酸のような天然の酸化防止剤は、身体に対し極めて安全であると共に、抗癌作用という健康上好ましい側面を発揮することができる。
【0009】
然るに、従来これらの酸化防止剤は高い親水性を有するが故に、油脂における使用には不適当であると見做されていた。
【0010】
かくして、長期間に亘って、健康に資するような性状を有し得る食用油の実現が要請されている。
【0011】
ここに、適切な酸化防止剤を検出し、しかも食用油の酸化における安定性を改善し得るような効果的かつ経済的な方法を開発することが必要とされている。
【0012】
このような要請に対応して、例えば特許文献1では、所定量の大豆レシチン(ホスファチジルコリン)0.1%〜1%、緑茶から抽出されたポリフェノール0.01%〜1%、没食子酸プロピル0%〜0.1%の2種又は3種の混合物0.1%〜1%を酸化防止剤として食用油に配合する構成を提唱している。
【0013】
特許文献1によれば、過酸化物値の数値は、前記酸化防止剤を配合した場合には、配合しない場合に比し、60℃にて20日又は40日を経た段階にて少ない数値を呈する一方(表2及び表3)、酸化防止剤と食用油とを混合機によって均一に混合することによって、風味の良い食用油が得られたこと(実施例1及び実施例2)が明らかにされている。
【0014】
しかしながら、特許文献1の場合には、少なくとも2種類の酸化防止剤を必要とする一方、食用油に対して0.1%〜1%の比率を必要としているが、これらの酸化防止剤が高価であることを考慮するならば、前記の混合の比率は決して妥当ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公平7−83677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、微量の親水性の天然酸化防止剤を使用することによって、食用油における酸化反応の安定状態を改善する方法を提供することを基本的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
a.少なくとも1種類の親水性の天然酸化防止剤を、5〜200℃、好ましくは10〜100℃、更に好ましくは25〜40℃の温度状態にある高い極性を有する油であるプロピレングリコールカプリレート中に混合することによって親水性の天然酸化防止剤を0.04〜50重量%、好ましくは0.04〜40重量%、更に好ましくは0.04〜20重量%含有している酸化防止剤と油との混合物を得る工程、
b.上記酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物を、食用油中に当該親水性の天然酸化防止剤が重量を基準として10〜1000ppm、好ましくは50〜500ppm、更に好ましくは100〜200ppmの濃度を有するように混合する工程
によって食用油の酸化反応における安定状態を改善する方法、
からなる。
【発明の効果】
【0018】
上記基本構成に基づく本発明の場合には、高い極性を有するプロピレングリコールカプリレートを媒介として、親水性である天然酸化防止剤が精々1000ppmという微量な状態にて食用油中に分散することによって双方が十分混合する結果、食用油の酸化反応における安定状態を改善又は維持すると共に、抗癌作用等の健康向上という効果を得ることができる。
【0019】
上記混合状態を維持し得ることについて説明するに、前記aの工程におけるプロピレングリコールカプリレートが有している極性基(例えばHO−)が親水性の天然酸化防止剤と親和性を有する一方、自らの油性による疎水基が食用油との間に親和性を有することによる界面活性作用によって、bの混合を実現し、更には当該混合状態を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
食用品に使用する場合には、天然酸化防止剤の方が人工合成による酸化防止剤よりも、安全であってかつ好ましい状況にある。
【0021】
本発明の方法においては、魚油及び大豆油のような疎水性の食用油に、親水性の天然酸化防止剤を分散する場合に、高い極性を有するプロピレングリコールカプリレートを、前記のような界面活性作用を伴う中間溶剤として採用している。
【0022】
このような方法においては、プロピレングリコールカプリレートと空気との界面における天然の酸化防止剤の分散が助長され、上記天然の酸化防止剤による酸化防止機能は更に向上することになる。
【0023】
親水性の天然酸化防止剤としては、ポリフェノールを含有する組成物、植物から抽出された抗酸化成分、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、クエルセチン、エスペリジン、プテロスティルベン、プロアンソシアニジン、カルノシン酸を例示することができるが、これらに限定される訳ではない。
【0024】
ポリフェノールを含有する組成物には緑茶、黒茶、白茶及びウーロン茶の少なくとも1種類が含まれており、植物抽出された抗酸化成分としては、りんご、オレンジ又は柑橘類、ブルーベリー、ローズマリー、及び胡麻から抽出された抗酸化成分の少なくとも1種類が含まれている。
【0025】
親水性の天然酸化防止剤の一代表例は、EGCGであり、他の代表例はカルノシン酸である。
【0026】
他方、プロピレングリコールカプリレートは、高い極性を有する油に該当する。
【0027】
酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物の状態は、溶液である。
【0028】
少なくとも1種類の親水性の天然酸化防止剤をプロピレングリコールカプリレートに混合する典型的な処理方法は、超音波振動によって実現される。
【0029】
本発明に適用可能な食用油としては、魚油、及び他の野菜油が存在する。
【0030】
本発明の方法においては、食用油につき、親水性の天然酸化防止剤とプロピレングリコールカプリレートとの混合物に混合する前に、極性を有する酸化成分を除去するという事前処理工程を特に選択して実施することもできる。
【0031】
このような事前処理工程においては、最初にシリカゲルによるクロマトグラフィーを介して食用油を濾過し、次に非極性の揮発性溶剤を加えることによって、シリカゲルから食用油を抽出し、最終的には当該非極性の揮発性溶剤を食用油から蒸発することによって除外している。
【0032】
上記の事前処理においては、ヘキサン及び他の非極性を有する揮発性溶剤を採用することが出来るが、食用油に対するシリカゲルの体積比率は、1:1〜1:20である。
【実施例】
【0033】
本発明の実施に関する詳細事項については、以下の実施例によって更に説明するとおりである。
【0034】
そして、本発明の特徴、課題及び作用効果は、以下の記載及び特許請求の範囲から明瞭に把握することができる。
【0035】
以下に記載する実施例は、個別の具体例として説明されているが、決して他の例示による構成内容の開示を限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
EGCGに基づく魚油における酸化反応に対する安定状態の改善
1.2gのEGCGを8gのプロピレングリコールカプリレートに溶解し、超音波振動によって、澄んだ透明の溶液を生成した。
【0037】
溶解は、25℃〜40℃の温度範囲にて行われたが、当該温度は超音波振動の程度によって左右された。
【0038】
このようにして得られた酸化防止用油溶液は、EGCGを13重量%の濃度にて含有していた。
【0039】
次に魚油から極性を有している酸化成分を除去するために、ヘキサンが湿式収容法によってシリコンゲルを使用している分離コラム中に充填された。
【0040】
90gの魚油(大型ニシン油)がシリコンゲルを使用した分離コラムに順次添加された。
【0041】
その場合の魚油に対するシリコンゲルの体積比率は1:1である。
【0042】
真空ポンプによる濾過方法を以下のように遂行した。
【0043】
シリコンゲル分離コラムを、180mlのヘキサンによって洗浄した後、当該ヘキサンは真空状態にて蒸発した。
【0044】
ヘキサンの真空状態による蒸発の後に、70mlの精製された魚油を得ることが出来た。
【0045】
EGCGを含有している酸化防止用の油の溶液を、精製された魚油に対し、1:749の比率にて配合したうえで、旋回運動の下に、強力に混合することによって、当該魚油との混合物が澄んだ透明状態に至った。
【0046】
上記透明状態によって、EGCGと魚油とが酸化防止用油溶液の界面活性作用によって混合し合っていることを確認することが出来る。
【0047】
このようにして得られた魚油の混合物は、EGCGを173ppmの濃度にて含有していた。
【0048】
魚油の混合物の過酸化物値が3日間60℃の暗室に貯蔵された後に測定された。
【0049】
過酸化物値の検出のために、2.00±0.02gの魚油の混合物は、試験用サンプルとして100mlの容積を有し、かつガラスによって封印されているエルレンマイヤーフラスコ(三角フラスコ)中に収容された。
【0050】
次に、12mlの酢酸とクロロホルムとの混合溶液(体積比率は3:2である)が前記フラスコ中に添加され、当該混合による試料が完全に溶解するに至る迄、当該フラスコに対する旋回運動を継続した。
【0051】
0.2mlの飽和ヨウ化カリウム溶液が上記フラスコに添加され、1分間に亘って旋回された後、30mlの蒸留水が当該フラスコ中に添加され、かつ当該フラスコをクロロホルム層からヨウ化物が抽出されるに至る迄、力強く振動した。
【0052】
最終的には、0.1N(0.1規定)のチオ硫酸ナトリウム、即ち7.9g/Lのチオ硫
【0053】
酸ナトリウムが酸化ヨウ化物を滴定するための指標としてでんぷん溶液と共に使用され、当該滴定は、上側の水性層における青灰色が消滅するに至る迄継続された。
【0054】
このような結果によって、173ppmの濃度によるEGCGを含有している魚油の混合物における過酸化物値が、コントロールの場合、即ちEGCGを添加せずに上記と全く同一のプロセスを経た場合(以下、このように天然酸化防止剤を添加せずに同一のプロセスを経た場合を「コントロールの場合」と略称し、当該コントロールによるサンプルを「コントロールのサンプル」と略称する。)に比し、15.2%減少していることを示している。
【0055】
通常、魚油中におけるBHAの最も高い含有量は0.2g/kg、即ち200ppmである。
【0056】
然るに、従前からの集計によれば、同等の条件の下に200ppmのBHAを含有している魚油のサンプルはコントロールのサンプルに比し過酸化物値が精々7.8%減少するに過ぎない。
【0057】
このようにして得られたEGCGと魚油との混合物は、コントロールのサンプルに比し、当初の段階において風味において優れているだけでなく、3日を経た段階では風味が格段に優れていることが確認された。
【0058】
かくして、実施例1の方法は、EGCG173ppmという微量な含有量でありながら、魚油の酸化に対する安定状態を改善するという予想外の効果を提示している。
【実施例2】
【0059】
カルノシン酸に基づく、魚油における酸化反応に対する安定状態の改善
1.2gのカルノシン酸を8gのプロピレングリコールカプリレート中に溶解し、かつ超音波振動によって澄んだ透明の溶液を生成した。
【0060】
溶解は、25℃〜40℃の温度範囲にて行われたが、当該温度は超音波振動の程度によって左右された。
【0061】
このようにして得られた酸化防止用油溶液は、カルノシン酸を13%の濃度にて含有していた。
【0062】
前記魚油は、実施例1の手法にしたがって、シリコンゲルのクロマトグラフィーを介して精製された。
【0063】
カルノシン酸を含有している酸化防止用の油の溶液を、精製された魚油に対し、1:749の比率にて配合したうえで、旋回運動の下に、強力に混合することによって、当該魚油との混合物が澄んだ透明状態に至り、カルノシン酸と魚油との混合を確認することが出来た。
【0064】
このようにして得られた魚油の混合物は、カルノシン酸を173ppmの濃度にて含有していた。
【0065】
上記魚油の混合物は、3日間暗い部屋にて60℃にて貯蔵された後に、実施例1の手法にしたがって過酸化物値の測定が行われた。
【0066】
その結果、カルノシン酸を173ppmの濃度にて含有している魚油の混合物の過酸化物値は、コントロールの場合に比し、41.9%減少していた。
【0067】
このようにして得られたカルノシン酸と魚油との混合物は、コントロールのサンプルに比し、当初の段階において風味において優れているだけでなく、3日を経た段階では風味が格段に優れていることが確認された。
【0068】
かくして、実施例2の方法は、カルノシン酸173ppmという微量な含有量でありながら、魚油の酸化状態を改善するという予想外の効果を呈している。
【0069】
実施例1及び同2の結果は、魚油という極めて酸化しやすい食用油の場合であっても、極めて微量な天然の酸化防止剤によって特許文献1の表2及び表3に示されるような過酸化物値の減少の程度に匹敵するか、又は経過した日数が一桁小さいことを考慮するならば、上記程度を凌駕するような過酸化物値の減少状態を推認することが出来る。
【0070】
したがって、魚油以外の食用油の場合にも、本発明の方法によって酸化反応における安定状態を充分改善することができる。
【0071】
このような効果を発揮し得る原因は、aにおいて配合の対象となったプロピレングリコールカプリレートの界面活性作用によって親水性の天然酸化防止剤と魚油及び大豆油等の食用油の緊密な混合状態が確保されたことに由来している。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、魚油及び他の食用油における酸化反応の安定状態を改善する一方、天然酸化防止剤による健康増進効果を確保し得ることから、食用油を含有する全食品分野に利用することが出来る。