(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記アスファルトと前記潤滑性固化材の合計量100重量%に対する、潤滑性固化材の含有量が1〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアスファルト混合物。
  前記潤滑性固化材と前記アルカリ性添加材とが、「潤滑性固化材:アルカリ性添加材」の重量比で、100:10〜100:300の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアスファルト混合物。
  請求項1〜5のいずれかに記載のアスファルト混合物に、硬化促進剤を添加し、前記潤滑性固化材と前記アルカリ性添加材とを鹸化反応あるいは中和反応させることで、強度を向上させることを特徴とする舗装方法。
  請求項1〜5のいずれかに記載のアスファルト混合物に、アルカリ性添加剤および硬化促進剤を添加し、前記潤滑性固化材と前記アルカリ性添加材とを鹸化反応あるいは中和反応させることで、強度を向上させることを特徴とする舗装方法。
【背景技術】
【0002】
  通常、加熱アスファルト混合物は、舗装施工便覧等に示されるように、初期転圧温度は110〜140℃の範囲内で行われている。しかし、加熱アスファルト混合物は、舗設直後から大きな強度が得られるものの、その可使時間は混合物の温度が低下するまでの時間であり、そのため、少量の混合物を数回に分けて使用する場合や、長時間混合物を運搬する場合、さらには、薄層オーバーレイ工法など施工厚さが薄く敷きならし直後に大幅な温度低下がともなう場合などにおいては、その適用が困難となる。
【0003】
  そのため、中温化技術を使用した加熱アスファルト混合物や、常温施工型のアスファルト混合物が検討されている。中温化技術を使用した加熱アスファルト混合物、すなわち中温化アスファルト混合物は、一般的には加熱アスファルト混合物の可使温度範囲を下限側に30℃程度広げることができるとされている。また、常温施工型のアスファルト混合物は、常温(100℃以下)での施工が可能とされるアスファルト混合物である。
【0004】
  常温あるいは中温域で施工可能なアスファルト混合物として、たとえば、アスファルト混合物の粘度を、鉱物油等を使用して強制的に低下させる、いわゆるカットバックアスファルト混合物が提案されている。カットバックアスファルト混合物は、特許文献1に示すように鉱物油等のカットバック材でアスファルトを軟質化させ、カットバック材の揮発に伴って、アスファルト混合物の強度を発現させるものである。しかし、上記したようにアスファルト混合物を、鉱物油等を使用してカットバックし、施工時の粘度を強制的に低下させる方法では、例えば、道路の交通開放時点の混合物強度が極端に低下すると共に、養生時間が長くなるという欠点が存在した。
【0005】
  あるいは、アスファルト乳剤を用いた常温施工型のアスファルト混合物も提案されているが、該混合物は、骨材を加熱、乾燥させる必要がないが、強度が比較的小さく、また、アスファルト乳剤の分解速度を考慮しなければならず、使用できる範囲が限定されてしまう場合があった。また、アスファルト乳剤を用いた常温アスファルト混合物は、舗装施工後のアスファルト乳剤の分解前に雨が降ったりすると、乳剤が流れ出してしまうというおそれがあった。
【0006】
  これに対し、特許文献2では、常温で施工可能な常温施工型のアスファルト混合物として、カットバック材としてトール油脂肪酸を使用し、トール油脂肪酸(たとば、非特許文献1参照)の作用により、アスファルト混合物の粘度を低下させることにより、常温での施工を可能とするものである。そして、この特許文献2の技術では、施工後においては、カットバック材としてのトール油脂肪酸が、セメントと反応することで硬化剤として作用し、これにより、十分な強度を発現するものである。
【0007】
  一方で、常温あるいは中温域で施工可能なアスファルト混合物においても、施工後の舗装体に対し、さらなる強度の向上や、耐久性の向上、たわみ性の向上など、各種特性の向上が求められており、そのため、これらの特性を向上可能な常温あるいは中温域で施工可能なアスファルト混合物が望まれていた。
 
【発明を実施するための形態】
【0016】
  本発明のアスファルト混合物は、骨材と、アスファルトと、潤滑性固化材と、アルカリ性添加材とを混合してなるアスファルト混合物であり、潤滑性固化材が、炭素数6〜30の飽和脂肪酸を50〜100重量%の割合で含有することを特徴とするものである。本発明のアスファルト混合物は、施工時に、硬化促進剤を添加することにより、潤滑性固化材が、アルカリ性添加材に由来するアルカリ成分と鹸化反応または中和反応することで、強度が向上するものである。なお、本発明において、硬化促進剤としては、たとえば、水などを挙げることができる。
 
【0017】
  ここで、本発明において、鹸化反応または中和反応としては、脂肪酸アルカリ塩を生成させる反応であればよく、たとえば、脂肪酸エステルにアルカリ水を加えることにより、脂肪酸アルカリ塩(石鹸)とグリセリンを生成する鹸化法や、高級脂肪酸をアルカリ水で中和する中和法等が挙げられる。
  また、鹸化反応においては、アルカリ性添加材を固形状態で添加した場合には、水などの溶媒が存在しない場合には、一般的には反応は開始しない。その一方で、水などの溶媒が存在する場合には、「潤滑性固化材中の脂肪酸および樹脂酸+アルカリ性添加材+水=石鹸(固体)」の反応(鹸化反応または中和反応)が起こり、石鹸が生成し、これにより、強度が発現するものである。
 
【0018】
  ここで、本発明のアスファルト混合物は、アスファルトと、骨材と、潤滑性固化材と、アルカリ性添加材とを含有してなるものであるが、そのミクロ構造は、次の通りとなっていると考えられる。すなわち、粘性の低い潤滑性固化材と、アルカリ性添加剤とから構成される潤滑膜が、アスファルト被膜が形成された骨材の間に介在しており、これにより、潤滑性効果を発現すると考えられる。そして、これにより、鹸化反応または中和反応前における舗装体は、低粘度状態に保たれている。すなわち、本発明において、潤滑性固化材は、施工前においては、常温から中温域(たとえば、25〜140℃、好ましくは40〜130℃)におけるアスファルト混合物の粘度を低下させるカットバック材として作用するものである。
 
【0019】
  そして、このような本発明に係るアスファルト混合物を、施工した後、硬化促進剤(たとえば、水)を散布し、ローラで転圧する。あるいは、ローラで転圧した後、硬化促進剤(たとえば、水)を散布する。これにより、アスファルト混合物中に含まれる潤滑性固化材と、アルカリ性添加材とが、硬化促進剤(たとえば、水)により、鹸化反応または中和反応し、固化するため、強度を向上させることが可能となる。なお、本発明に係るアスファルト混合物を用いて、舗装を行なう際には、締固め方法としては、ローラ転圧による方法に限定されず、舗装の目的に応じて適宜選択すればよいが、舗装の目的によっては、たとえば、踏み固めによる方法などを採用してもよい。
 
【0020】
  次に、本発明のアスファルト混合物を構成する各材料について説明する。本発明のアスファルト混合物は、骨材と、アスファルトと、潤滑性固化材と、アルカリ性添加材とを含有してなる。
 
【0021】
  骨材としては、特に制限はなく、砕石、砂、石粉など、通常の舗装用アスファルトに用いられるものを適宜用いることができ、密粒度や開粒度など、いずれの粒度範囲の骨材を制限なく用いることができる。一例を挙げると、目開きが2.36mmの篩目を通過する粒子の比率である、2.36mmフルイ通過質量百分率が15〜80%の範囲にあるものを用いることができる。
 
【0022】
  また、アスファルトとしては、特に制限はなく、ストレートアスファルトおよび改質アスファルトなどを制限なく用いることができる。
 
【0023】
  なお、本発明においては、骨材およびアスファルトとして、通常の骨材に代えて、再生骨材を用いてもよい。
 
【0024】
  また、本発明においては、潤滑性固化材として、炭素数6〜30の飽和脂肪酸を50〜100重量%の割合で含有するものを用いる。本発明においては、潤滑性固化材として、炭素数6〜30の飽和脂肪酸を50〜100重量%の割合で含有するものを用いることにより、施工前においては、常温あるいは中温域において、アスファルト混合物の粘度を低下させるカットバック材として作用することで、常温あるいは中温域での施工を可能としながら、これを用いて固化させることにより得られる舗装体を、強度が高く、耐わだち性およびたわみ性に優れたものとすることができるものである。本発明において、潤滑性固化材中における、炭素数6〜30の飽和脂肪酸の含有割合は、強度、耐わだち性およびたわみ性をより一層改善できるという観点より、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは100重量%である。すなわち、強度、耐わだち性およびたわみ性をより改善できるという観点からは、潤滑性固化材としては、実質的に、炭素数6〜30の飽和脂肪酸のみからなるものが好ましい。
 
【0025】
  また、本発明において、潤滑性固化材として用いる飽和脂肪酸としては、炭素数が6〜30のものであればよいが、炭素数が6〜24のものが好ましく、炭素数が6〜20のものがより好ましく、炭素数6〜14のものがさらに好ましい。すなわち、潤滑性固化材中において、炭素数が6〜24の飽和脂肪酸が上記割合(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは100重量%)で含まれることが好ましく、炭素数が6〜20の飽和脂肪酸が上記割合(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは100重量%)で含まれることがより好ましく、炭素数6〜14の飽和脂肪酸が上記割合(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは100重量%)で含まれることがさらに好ましい。
 
【0026】
  また、本発明において、潤滑性固化材として用いる飽和脂肪酸としては、潤滑性固化材に含まれる飽和脂肪酸全体に対して、炭素数6〜14のものが90重量%(特に、95重量%以上)以上の割合で含まれていることが好ましく、炭素数8〜12のものが90重量%(特に、95重量%以上)以上の割合で含まれていることがより好ましい。
 
【0027】
  また、本発明において、潤滑性固化材として用いる飽和脂肪酸としては、炭素数の異なる複数種類の飽和脂肪酸を含有するものを用いてもよいが、得られる舗装体の強度、耐わだち性およびたわみ性をより一層改善できるという観点より、潤滑性固化材として用いる飽和脂肪酸中における、炭素数が同一である飽和脂肪酸の含有割合が70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることがより好ましい。なお、炭素数が同一である飽和脂肪酸が70重量%以上の割合で含まれるとは、たとえば、潤滑性固化材に含まれる全飽和脂肪酸中において、炭素数が8であるカプリル酸が70重量%以上の割合で含まれる状態や、炭素数が10であるカプリン酸が70重量%以上の割合で含まれる状態などを意味する。また、異性体が存在する場合には、これらの異性体をも含めて上記割合とすることが好ましい。
 
【0028】
  さらに、本発明においては、潤滑性固化材として、炭素数6〜30の飽和脂肪酸に加えて、炭素数12〜24の不飽和脂肪酸を含有するものを用いてもよく、炭素数12〜24の不飽和脂肪酸をも含有させることにより、より低い温度での施工を可能なものとすることができる。炭素数12〜24の不飽和脂肪酸を含有させる場合における、潤滑性固化材中の、炭素数12〜24の不飽和脂肪酸の含有割合は、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜45重量%である。また、炭素数12〜24の不飽和脂肪酸を含有させる場合における、潤滑性固化材中の、炭素数6〜30の飽和脂肪酸の含有割合は、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは55〜85重量%である。これらの含有割合を上記範囲とすることにより、得られる舗装体の強度、耐わだち性およびたわみ性を良好なものとしながら、より低い温度での施工を可能なものとすることができる。
 
【0029】
  潤滑性固化材として用いる不飽和脂肪酸としては、炭素数が12〜24のものであればよいが、炭素数が14〜20のものが好ましく、炭素数が14〜18のものがより好ましい。すなわち、潤滑性固化材中において、炭素数が14〜20の不飽和脂肪酸が上記割合(好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜45重量%)で含まれることが好ましく、炭素数が14〜20の不飽和脂肪酸が上記割合(好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜35重量%)で含まれることがより好ましい。なお、潤滑性固化材として用いる不飽和脂肪酸としては、通常は、炭素数の異なる複数種類の不飽和脂肪酸が混合されてなるものが用いられる。
 
【0030】
  本発明のアスファルト混合物中における、潤滑性固化材の含有量は、アスファルトと潤滑性固化材の合計量100重量%に対して、好ましくは1〜60重量%であり、好ましくは3〜50重量%である。また、中温域での施工(たとえば、40〜120℃)に用いるという観点からは、潤滑性固化材の含有量は、アスファルトと潤滑性固化材の合計量100重量%に対して、15〜30重量%であることがより好ましく、常温での施工(たとえば、25〜40℃)に用いるという観点からは、35〜50重量%であることがより好ましい。潤滑性固化材の添加量を上記範囲とすることにより、他の特性を悪化させることなく、得られる舗装体の強度、耐わだち性およびたわみ性を適切に高めることが可能となる。また、潤滑性固化材の添加量が増加するに伴い可使温度範囲も広がるため、潤滑性固化材の添加量は、施工条件にあわせて決定することができる。
 
【0031】
  また、本発明で用いる潤滑性固化材の酸価は、特に限定されないが、好ましくは170〜420mgKOH/gであり、より好ましくは180〜400mgKOH/g、さらに好ましくは190〜390mgKOH/gである。
 
【0032】
  アルカリ性添加材としては、硬化促進剤(たとえば、水)の作用により、アルカリ成分となる化合物であればよく特に限定されず、飽和脂肪酸を中和するために、硬化促進剤の作用により、低い水素イオン濃度(すなわち、pHが大きい)を呈するものが望ましく、石鹸作製において、通常用いられる水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を用いることも可能であるが、環境的な観点より、一般的な土木材料として使用されるセメントの中でも、硬化促進剤の作用によって低い水素イオン濃度を呈する普通セメント(普通ポルトランドセメント)が好ましく用いられる。普通ポルトランドセメントとしては、たとえば、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO
2)、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO
2)、カルシウムアルミネート(3CaO・Al
2O
3)、カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3)、硫酸カルシウム(CaSO
4・2H
2O)などを主成分とするものを用いることができる。なお、アルカリ性添加材としては、これ以外にも、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、マグネシウムイオン(Mg
2+)、カルシウムイオン(Ca
2+)等の金属イオンを含む水溶液もしくは、水を添加することで上記のイオンに分解する金属塩を含む粉末、若しくは炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、炭酸水素カリウム(KHCO
3)などが使用できる。本発明のアスファルト混合物中における、アルカリ性添加材の含有比率は、「潤滑性固化材:アルカリ性添加材」の重量比で、100:10〜100:300の範囲内であることが好ましく、100:15〜100:40の範囲内であることがより好ましい。
 
【0033】
  また、本発明のアスファルト混合物には、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、上記以外に、アスファルト舗装の分野において、通常用いられるその他の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、特に限定されないが、たとえば、フィラー、植物繊維、顔料、凍結防止剤などが挙げられる。
 
【0034】
  以下、本例のアスファルト混合物の製造方法について、説明する。
 
【0035】
  まず、骨材を混合装置内に仕込み、骨材のドライミキシングを行なう。ドライミキシングは、骨材を100〜170℃、好ましくは100〜140℃、より好ましくは110〜130℃に加熱した状態で行なう。ドライミキシングの温度および時間は、特に限定されないが、ドライミキシングの温度は、通常、100〜140℃、好ましくは110〜130℃であり、ドライミキシングの時間は、通常、1秒〜1分程度である。本例においては、骨材を上記温度に加熱した状態で用いることにより、骨材に含まれる水分量を制御することができ、これにより、得られるアスファルト混合物の保存安定性を向上させることができる。
 
【0036】
  次いで、混合装置に、アスファルトを添加し、骨材とアスファルトとの混合を行なう。本例においては、アスファルトを130〜170℃、好ましくは140〜160℃に加熱した状態として、混合装置内に添加し、次いで、骨材とアスファルトとの混合を行なう。なお、この際における混合温度および混合時間は、骨材表面にアスファルト層が均一に形成されるような条件とすればよく特に限定されないが、混合温度は、通常、100〜140℃、好ましくは110〜130℃であり、混合時間は、通常、1秒〜5分程度である。
 
【0037】
  次いで、混合装置に、潤滑性固化材を添加し、上記にて得られた混合物と、潤滑性固化材との混合を行なう。なお、潤滑性固化材は、常温で、あるいは、30〜55℃程度に加温して用いることが好ましい。また、この際における混合温度および混合時間は、特に限定されないが、混合温度は、通常、100〜140℃、好ましくは110〜130℃であり、混合時間は、通常、1秒〜5分程度である。
 
【0038】
  次いで、混合装置に、アルカリ性添加材を添加し、上記にて得られた混合物と、アルカリ性添加材との混合を行なう。この際における混合温度および混合時間は、特に限定されないが、混合温度は、通常、100〜140℃、好ましくは110〜130℃であり、混合時間は、通常、1秒〜5分程度である。
 
【0039】
  なお、本例においては、まず、骨材とアスファルトとを混合し、次いで、潤滑性固化材、アルカリ性添加材の順に添加・混合することにより、得られるアスファルト混合物を、骨材の表面にアスファルト被膜が形成され、このアスファルト被膜の表面に潤滑性固化材からなる層が形成され、さらに、この潤滑性固化材からなる層の表面を、固体状のアルカリ性添加材が覆うような構成とすることができる。そして、これにより、アルカリ性添加材と、硬化促進剤との反応効率を上げることができ、アルカリ性添加材の添加量を比較的少なくした場合でも、硬化促進剤を添加した際における強度向上効果を充分に発現可能なものとすることができる。また、アルカリ性添加材の添加量を比較的少なくすることにより、得られるアスファルト混合物を保存安定性に優れたものとすることができる。
 
【0040】
  次いで、上記にて得られた混合物を、温度100〜130℃に保った状態で、混合装置から取り出すことにより、本例のアスファルト混合物を製造することができる。
 
【実施例】
【0041】
  以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0042】
<実施例1>
  骨材、ストレートアスファルト、潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)、および普通ポルトランドセメントを、2軸パグミル型ミキサ(1バッチ:30〜60kg)に、この順にて配合し、混合を行うことで、アスファルト混合物を得た。なお、この際において、骨材の加熱温度は110〜130℃、アスファルトの加熱温度は150〜165℃、その他の部材は常温とした。また、実施例1で用いた潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)は、以下の性状を有するものである。
  ・成分比率:カプロン酸(炭素数6の飽和脂肪酸)1重量%、カプリル酸(炭素数8の飽和脂肪酸)98重量%、カプリン酸(炭素数10の飽和脂肪酸)1重量%
  ・酸価:382〜390
  ・ヨウ素価:1.0以下
【0043】
  また、実施例1は、ストレートアスファルトと潤滑性固化材との合計100重量%に対する、潤滑性固化材の配合量が20重量%であるアスファルト混合物を、表1に示す合成粒度を有する骨材を使用し、以下の配合比で作製した。
  骨材:100重量部
  ストレートアスファルト:4.74重量部
  潤滑性固化材:1.18重量部
  普通ポルトランドセメント:1.78重量部
【0044】
【表1】
【0045】
<実施例2>
  潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)の代わりに、潤滑性固化材(商品名「MCFA−10」、ミヨシ油脂株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を30〜35℃に加温した状態で使用した。
  また、実施例2で用いた潤滑性固化材(商品名「MCFA−10」、ミヨシ油脂株式会社製)は、以下の性状を有するものである。
  ・成分比率:カプリル酸(炭素数8の飽和脂肪酸)1重量%、カプリン酸(炭素数10の飽和脂肪酸)98重量%、ラウリン酸(炭素数12の飽和脂肪酸)1重量%
  ・酸価:322〜328
  ・ヨウ素価:1.0以下
【0046】
<実施例3>
  潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)の代わりに、潤滑性固化材(商品名「ラウリン酸98」、ミヨシ油脂株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を40〜45℃に加温した状態で使用した。
  また、実施例3で用いた潤滑性固化材(商品名「ラウリン酸98」、ミヨシ油脂株式会社製)は、以下の性状を有するものである。
  ・成分比率:カプリン酸(炭素数10の飽和脂肪酸)1重量%、ラウリン酸(炭素数12の飽和脂肪酸)98重量%、ミリスチン酸(炭素数14の飽和脂肪酸)1重量%
  ・酸価:277〜283
  ・ヨウ素価:1.0以下
【0047】
<実施例4>
  潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)の代わりに、潤滑性固化材(商品名「MXST」、ミヨシ油脂株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を50〜55℃に加温した状態で使用した。
  また、実施例4で用いた潤滑性固化材(商品名「MXST」、ミヨシ油脂株式会社製)は、以下の性状を有するものである。
  ・成分比率:ステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)を主として含む飽和脂肪酸の混合物。
  ・酸価:190〜210
  ・ヨウ素価:10.0以下
【0048】
<実施例5>
  潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)の代わりに、潤滑性固化材としてカプロン酸(炭素数6の飽和脂肪酸)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を50〜55℃に加温した状態で使用した。
【0049】
<実施例6>
  潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)の代わりに、潤滑性固化材としてベヘン酸(炭素数22の飽和脂肪酸)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を50〜55℃に加温した状態で使用した。
【0050】
<比較例1>
  潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)の代わりに、潤滑性固化材(トール油脂肪酸、商品名「ハートールFA−1」、ハリマ化成グループ社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。
  なお、比較例1で用いたトール油脂肪酸(商品名「ハートールFA−1」、ハリマ化成グループ社製)は、以下の性状を有するものである。
  ・「脂肪酸:樹脂酸」=98.5:1.5(重量比)
  ・不けん化物含有量:2.0重量%
  ・脂肪酸の成分比率:パルミチン酸1〜3重量%、ステアリン酸1〜3重量%、オレイン酸40〜50重量%、リノール酸35〜45重量%
  ・樹脂酸の種類:ロジン
  ・酸価:194mgKOH/g
【0051】
<実施例7>
  潤滑性固化材として、潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)0.59重量部と、潤滑性固化材(商品名「ラウリン酸98」、ミヨシ油脂株式会社製)0.59重量部との2種(重量比=1:1)を併用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を50〜55℃に加温した状態で使用した。
【0052】
<実施例8>
  潤滑性固化材として、潤滑性固化材(商品名「ラウリン酸98」、ミヨシ油脂株式会社製)0.59重量部と、潤滑性固化材(商品名「PM200」、ミヨシ油脂株式会社製)0.59重量部との2種(重量比=1:1)を併用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を50〜55℃に加温した状態で使用した。
  なお、実施例8で用いた潤滑性固化材(商品名「PM200」、ミヨシ油脂株式会社製)は、以下の性状を有するものである。
  ・成分比率:パルミチン酸(炭素数16の飽和脂肪酸)11重量%、ステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)4重量%、パルミトレイン酸(炭素数16の不飽和脂肪酸)1重量%、オレイン酸(炭素数18の不飽和脂肪酸)41重量%、リノール酸(炭素数18の不飽和脂肪酸)37重量%、リノレン酸(炭素数18の不飽和脂肪酸)6重量%
  ・酸価:195〜203
  ・ヨウ素価:112〜122
【0053】
<実施例9>
  潤滑性固化材として、潤滑性固化材(商品名「MCFA−8」、ミヨシ油脂株式会社製)0.393重量部と、潤滑性固化材(商品名「ラウリン酸98」、ミヨシ油脂株式会社製)0.393重量部と、潤滑性固化材(商品名「MXST」、ミヨシ油脂株式会社製)0.393重量部との3種(重量比=1:1:1)を併用した以外は、実施例1と同様にして、アスファルト混合物を得た。なお、アスファルト混合物を作製する際には、潤滑性固化材を50〜55℃に加温した状態で使用した。
【0054】
<実施例1〜9、比較例1のアスファルト混合物の評価>
  そして、このようにして得られた実施例1〜9、比較例1のアスファルト混合物を、締固め温度まで加熱したモールド(型枠)内へ投入した後、水分を添加し、締固め(両面50回)を行い、温度20℃、湿度60%の条件で7日間養生を行うことで、供試体を得た。そして、得られた供試体を用いて、以下のマーシャル試験、ホイールトラッキング試験、および曲げ試験を行った。
【0055】
(マーシャル試験)
  上記にて得られた供試体を用いて、マーシャル安定度の測定を行った。マーシャル安定度の測定は、60℃で行った。マーシャル安定度(kN)の値が高いほど、早期に安定かつ高強度な供試体が得られると判断することができるため望ましい。
【0056】
(ホイールトラッキング試験)
  上記にて得られた供試体を用いて、「舗装試験法便覧」((社)日本道路協会、昭和63年11月発行)の「3−7−1」、「3−7−3」に準じて、試験温度60℃にて、ホイールトラッキング試験を行うことで、動的安定度(回/mm)を求めた。動的安定度(回/mm)の値は、高いほど、強度が高く、わだち掘れの発生を軽減でき、耐わだち性に優れるための望ましい。
【0057】
(曲げ試験)
  上記にて得られた供試体を用いて、「舗装調査・試験法便覧 B005」に準じで、試験温度−10℃にて、曲げ試験を行うことで、破断時のひずみ(×10
−3mm/mm)を求めた。曲げ試験においては、破断時のひずみが大きいほど、たわみ性に優れ、ひび割れの発生を軽減できるための望ましい。
【0058】
  マーシャル試験、ホイールトラッキング試験、および曲げ試験による試験結果を表2、表3に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
  表2、表3より、炭素数6〜30の飽和脂肪酸を50〜100重量%の割合で含有する潤滑性固化材を使用した場合には、不飽和脂肪酸を主成分とするトール油脂肪酸を使用した場合と比較して、安定度(マーシャル試験)、動的安定度(ホイールトラッキング試験)、および破断時のひずみ(曲げ試験)に優れる供試体を得ることができ、強度、耐わだち性、およびたわみ性に優れていることが確認できる。
 
 
【課題】施工後、比較的短い時間で強度を発現可能であり、かつ、強度が高く、耐わだち性およびたわみ性に優れた舗装体を与えることのできるアスファルト混合物を提供すること。
【解決手段】骨材と、アスファルトと、潤滑性固化材と、アルカリ性添加材とを混合してなるアスファルト混合物であって、前記潤滑性固化材が、炭素数6〜30の飽和脂肪酸を50〜100重量%の割合で含有することを特徴とするアスファルト混合物を提供する。