【実施例】
【0025】
〔実施例1の構成〕
図1ないし
図4に基づいて本発明の実施例1を説明する。
本発明に係る複合型電線では、例えば自動車に装備されたABS(アンチロック・ブレーキングシステム)やEPB(エレクトリック・パーキングブレーキ)などの電装品の駆動用のセンサ(図示せず)から電気制御ユニット(ECU)への信号伝送のために搭載されている。電源としては、薄型矩形状の電池を単体の二次電池として左右方向に沿って複数個並列させて重ね合せた電池集合体(セル一列積層体)を用いている。
【0026】
複合型電線1(ex.φ0.40mm)においては、
図1に示すように、被覆絶縁母材2(ex.φ0.40mm)内に、例えば二箇所の撚線部3を設けている。二箇所の撚線部3のうち一方を電池集合体の正極に接続し、他方を電池集合体の負極に接続するようになっている。各撚線部3は、子撚線部4
(=中径撚線部8)を後述する芯線9の周りに撚り合わせて成る親撚線部5として構成されている
(撚線部3=親撚線部5)。
子撚線部4については、
図2(a)の上部および左右のそれぞれに示すように、中心細線6(ex.φ0.07mm)と、中心細線6の外周部に密着配置した複数の細径線7(ex.φ0.07mm)とから成る細径線群を中径撚線部8として構成している
(子撚線部4=中径撚線部8)。中径撚線部8は、絶縁被覆7A(例えば、ポリエチレン)により一体的に埋設された状態に形成されている。中径撚線部8
における細径線7同士は略密着する状態にあるものの、
細径線群間に微小な隙間が生じていてもよい。
【0027】
すなわち、子撚線部4においては、一本の中心細線6の外周部に第1層として6本の細径線7を設定し、第2層として12本の細径線7を設定している。第1層および第2層として細径線7の本数を上記のように設定することにより、中心細線6の回りに第1層の細径線7と第2層の細径線7とを同芯配置することが可能となる。
【0028】
これにより、子撚線部4の最外層の細径線7群が他の層から芯ズレすることがなくなり、撚線装置の成型ダイス(図示せず)により、子撚線部4の径寸法が所定値になるように圧縮成型可能となる(圧縮率:ex.1%〜20%の範囲)。
この場合、第1層としては、6本の細径線7から成る細径線群とし、第2層としては、12本の細径線7から成る細径線群とし、中心細線6および各細径線7の直径が一様に等しく0.07mmであることから、「3/19/φ0.07」の記述方式が慣用的に使われている。なお、子撚線部4の細径線7群は撚り合せ構造に限らず、素線群を同芯的に密着配置するようにしてもよい。
【0029】
撚線部3でもある親撚線部5については、
図2(b)に示すように、芯線9と、この芯線9の外周部に複数の中径撚線部8を密着配置状態に撚り合わせて構成した大径撚線部10(ex.φ0.35mm)としている
(親撚線部5=大径撚線部10)。芯線9の外周面は、中径撚線部8の一部が面接触状態に密着するように曲面状部9aを成している。
【0030】
芯線9は、例えば柔軟性に富むポリウレタン樹脂により、
図3(a)に示すように、横断面が凹型の曲面三角形状に形成されている。芯線9は、
図3(b)に示すように、線長回り方向Nに捻ることにより、螺旋状の捩じれ溝9bを構成し、捩じれ溝9bに沿って中径撚線部8が配置されている。これにより、中径撚線部8の一部が捩じれ溝9bの内周面(曲面状部9a)に面接触状態に密着し、芯線9に対する中径撚線部8の配置状態を安定させている(
図4(a)、(b)参照)。
【0031】
なお、中心細線6、細径線7、子撚線部4
(=中径撚線部8)および大径撚線部10
(=撚線部3かつ親撚線部5)は、いずれも断面円形状に形成され、銅合金(Cuに対して0.01重量%〜0.3重量%以内で、Sn、Ni、In、Zn、Cr、Al、Pのうち一種または二種以上の添加を許容している)により設けられている。また、芯線9は、ポリウレタン樹脂に代わって、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・メチレンゴム)などのラバーライクな樹脂材により形成してもよい。
【0032】
〔実施例1の効果〕
実施例1では、子撚線部4を中心細線6と
細径線7から成る中径撚線部8
として構成し、大径撚線部10
(=親撚線部5)は、芯線9の外周部に複数の中径撚線部8(=子撚線部4)を密着配置状態に撚り合わせて構成している。こ
れにより、
大径撚線部10(=親撚線部5)に高強度、耐衝撃性、高屈曲性能および高耐振動性を確保することができる。
【0033】
また、中心細線6と複数層(第1層、第2層)の
細径線7とが同芯配置となるように、各層の細径線7の本数を設定しているので、細径線7から成る細径
線群の成型ダイスによる圧縮成型を可能とし、接続端子への取付け時に絶縁被覆7Aを剥いでも素線がばらけること
がない。
しかも、芯線9の外周面は、中径撚線部8の一部が面接触状態に密着するように曲面状部9aを成す。この結果、外周の中径撚線部8同士が局部的に圧接し合うものと異なり、曲面状部9aに対する応力が均等に分配されるようになって断線の虞がなくなる。
【0034】
また、中径撚線部8の細径線7は19本であり、大径撚線部10を構成する中径撚線部8は3束に設定している。このため、高強度、高屈曲性能および高耐振動性を確保しながらも軽量化を達成する点で有利となる。
なお、複合型電線1における撚線部3は、二箇所に代わって一箇所だけ設けた単線として構成してもよく、3束以上の複数配置するようにしてもよい。
【0035】
〔実施例2の構成〕
図5および
図6は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、
図5(a)に示すように、芯線9を線長方向に沿って中空に形成し、その内部を中空部9cとした上で、線長回り方向Nに捩じって形成したことである(
図5(b)参照)。
この場合、
図6に示すように、複合型電線1(大径撚線部10)を第1コネクタ11と第2コネクタ
12との間に接続した状態では、第1コネクタ11と第2コネクタ
12との間が芯線9の中空部9cを介して連通する。この結果、芯線9の中空部9cが負圧にならず、湿気を帯びた外気を中空部9cに吸引侵入させることがなくなり、検出用のセンサなどの電子部品に対する被水を抑制することができる。
【0036】
〔実施例3の構成〕
図7は本発明の実施例3を示す。実施例3が実施例1と異なるところは、芯線9の横断面積が内方に向かって凹となるように、曲面四角形、曲面五角形および曲面六角形に形成したことである(
図7(a)、(b)、(c)参照)。これらの曲面状部9a(9b)には、子撚線部4の一部が面接触するように密着状態に当接している。
【0037】
〔実施例4の構成〕
図8は本発明の実施例4を示す。実施例4が実施例3と異なるところは、芯線9を中空にし、その内部に線長方向に沿う中空部9cを設けたことである(
図8(a)、(b)、(c)参照)。
このため、実施例4では、実施例2において、複合型電線1(大径撚線部10)を第1コネクタ11と第2コネクタ12との間に接続する際、実施例2と同様な効果を得ることができる。
【0038】
〔実施例5の構成〕
図9は本発明の実施例5を示す。実施例5が実施例4と異なるところは、芯線9の線長方向に沿う中空部9cが芯線9の横断面形状に沿った形状となっていることである(
図9(a)、(b)、(c)、(d)参照)。
このように中空部9cを形成しても、複合型電線1(大径撚線部10)を第1コネクタ11と第2コネクタ12との間に接続する際、実施例2と同様な効果が得られる。
【0039】
なお、芯線9を超弾性部材(形状記憶ポリマー)により形成し、周囲温度の上昇に伴って、芯線9が線長回り方向Nに捩じり変形し、中径撚線部8の細径線7が芯線9の外表面に沿って撚線方向に巻き締まるように設定してもよい。
【0040】
この場合、芯線9が線長回り方向Nに捩じり変形して、中径撚線部8の細径線7が芯線9の周りに撚線方向に巻き締まるため、中径撚線部8のバラケを効果的に防ぐことができる。
この芯線9が周囲温度の上昇に伴って、線長回り方向Nに捩じり変形する場合、芯線9は実施例1のように、内周面に曲面状部9aを有する捩じれ変形前の直線状になっていてもよく、あるいは捩じれ溝9bを有する捩じれ状に
なっていてもよい。
【0041】
〔変形例〕
(a)芯線10としては、ポリウレタン樹脂に代わって、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)あるいはシンジオタクチックポリスチレン(SPS)などのエンジニアリングプラスチック材料を用いてもよい。また、被覆絶縁母材2としても、ポリエチレンの外、上記プラスチック材料から所望のものを選択してもよい。
【0042】
(b)一本の中心細線6の外周部に第1層として6本の細径線7を設定し、第2層として12本の細径線7を設定したが、これに限らず、第1層の細径線7と第2層の細径線7との本数関係は、中心細線6の回りに第1層の細径線7と第2層の細径線7とを同芯配置可能であればよい。細径線7は第1層および第2層に限らず、第3層、第4層、第5層など複数層に同芯配置してもよい。