特許第6089150号(P6089150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089150
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】不活化ロタウイルスの調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/15 20060101AFI20170220BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A61K39/15
   A61P31/12 171
【請求項の数】25
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-527120(P2016-527120)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公表番号】特表2016-525120(P2016-525120A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】US2014047164
(87)【国際公開番号】WO2015010002
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】61/856,294
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515115459
【氏名又は名称】ノバルティス ティーアゲズントハイト アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,ブレント,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート,ジョン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】レイムニッツ,ミッチェル,ジェイ.
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/032913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活化ロタウイルスを製造する方法であって、活性ロタウイルスを含有するある体積の細胞培養物上清を、前記ロタウイルスが不活化する温度に直接加熱することを含み、前記細胞培養物上清は、200〜500mOsmの範囲のオスモル濃度、1mM〜15mMの範囲の二価カチオン塩濃度、ならびに1〜20重量/体積%の範囲の糖および/または糖アルコールの1つ以上を有さない、方法。
【請求項2】
前記不活化ロタウイルスは、免疫原性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活化ロタウイルスの免疫原性は、化学的に不活化されたロタウイルスの免疫原性より優れている、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ロタウイルスは、ウシロタウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度は60〜80℃である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記温度は70℃である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養物上清の前記温度は15分〜240分間維持される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養物上清の前記温度は15分〜60分間維持される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養物上清の前記温度は60分間維持される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞培養物上清を凍結することをさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞培養物上清を、少なくとも2つの別個の工程で加熱することを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞培養物上清のpHは、7.6±0.1である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により不活化されたロタウイルスを含む、組成物。
【請求項14】
アジュバントをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1種以上の薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
ロタウイルス以外の1種以上の感染因子に由来する1種以上の抗原をさらに含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
非ヒト対象における免疫応答を刺激する方法であって、請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記対象は、ウシ属動物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物は、前記対象に、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内、鼻腔内、および経口からなる群より選択される経路を介して投与される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
非ヒト対象における免疫応答を刺激するための、請求項13〜16のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
前記対象は、ウシ属動物である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物は、前記対象に、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内、鼻腔内、および経口からなる群より選択される経路を介して投与される、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
非ヒト対象における免疫応答を刺激するための医薬の製造における、請求項13〜17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
前記対象は、ウシ属動物である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物は、前記対象に、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内、鼻腔内、および経口からなる群より選択される経路を介して投与される、請求項23または24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養物上清から直接の不活化ロタウイルスの製造に関する。同じく開示されるのは、細胞培養物上清から直接製造された不活化ロタウイルスを含有する組成物である。
【背景技術】
【0002】
ウイルスワクチンのなかには、不活化ウイルスを含有する種類のものがある。活性または感染性ウイルスは、それらがもはや感染性ではなく、もはや複製して子孫ウイルスを産生することができないように、不活化することができる。しかしながらワクチンにおいて有効であるためには、不活化ウイルスは、対象に投与される時点で、依然として、免疫応答を刺激する能力を保持(すなわち、免疫原性を保持)していなければならない。
【0003】
ロタウイルスを不活化する様々な方法が存在する。1つの方法では、ロタウイルスを、化学物質により不活化することができる。1つの例において、β−プロピオラクトンをその化学物質として用いることができる。
【0004】
ロタウイルスを不活化する別の方法では、ロタウイルスの加熱(熱的不活化)を用いることができる。ロタウイルスを加熱不活化する既知の方法では、そのウイルスが典型的に見つかる環境からウイルスを単離または精製して、それから熱的不活化する。1つの例において、培養細胞で増殖したロタウイルスを、ウイルスに感染していない細胞が増殖している細胞培養の培地または上清から単離して、それから加熱すなわち熱的不活化を行う(PCT国際公開第2009/032913号)。1つの例において、次いで、単離されたロタウイルスを、特定のオスモル濃度(例えば、200〜500mOsm)、特定の二価カチオン塩濃度(約1mM〜15mMの範囲)、ならびに特定量の糖および/または糖アルコール(約1〜20w/v%の範囲)を有する水性緩衝液に懸濁させる(PCT国際公開第2009/032913号)。単離したロタウイルスを、特定のオスモル濃度、二価カチオン濃度、ならびに糖/糖アルコール濃度を有する水性緩衝液に懸濁させてから、熱的に不活化させる。
【発明の概要】
【0005】
活性または感染性ロタウイルスを含有する細胞培養物上清を加熱することにより、この細胞培養物上清から不活化ロタウイルスを製造する方法が開示される。1つの例において、ロタウイルスは、ウシロタウイルスである。1つの例において、不活化ロタウイルスを製造する方法は、活性ロタウイルスを含有するある体積の細胞培養物上清を、ロタウイルスが不活化する温度に直接加熱する工程を含む。通常、直接加熱された細胞培養物上清のロタウイルスを検査して、加熱温度および時間が十分であることならびに活性または感染性ウイルスがもはや存在しないことを確実にする。1つの例において、細胞培養物上清は、200〜500mOsmの範囲のオスモル濃度、約1mM〜15mMの範囲の二価カチオン塩濃度、ならびに約1〜20重量/体積%の範囲の糖および/または糖アルコールの1つ以上を有さない。
【0006】
不活化ロタウイルスは免疫原性である。通常、加熱不活化ロタウイルスの免疫原性は、化学的に不活化した、例えば、β−プロピオラクトンで化学的に不活化したロタウイルスの免疫原性より優れている。様々な例において、細胞培養物上清は、加熱前に濾過することができる。熱的不活化後、不活化ロタウイルスを細胞培養物上清から単離することができる。培養細胞上清中のロタウイルスの熱的不活化は、少なくとも約60℃、あるいは65℃、70℃、75℃、または80℃のいずれかの温度に加熱することにより達成することができる。これらの温度は、通常、ある期間維持され、維持された後は、ロタウイルスは不活化している。様々な例において、この期間は、15分、60分、120分、240分、および他の期間が可能である。通常、細胞培養物上清の実質的に全体積を、所定の時間、不活化温度に加熱する。1つの例において、細胞培養物上清の全体積を、所定の時間、不活化温度に加熱する。1つの例において、本方法はまた、凍結工程も含むことができる。細胞培養物上清の凍結工程は、少なくとも約12時間、または他の期間、行うことができる。場合によっては、加熱し、次いで凍結させた細胞培養物上清を、解凍して再加熱することができ、1つの例において、最初の加熱工程と同じ温度および同じ期間、再加熱することができる。1つの例において、細胞培養物上清のpHは、7.6±0.1である。
【0007】
別の例において、不活化ロタウイルスを製造する方法は、ロタウイルスに感染した培養細胞から活性ロタウイルスを含有する細胞培養物上清を収集する工程およびある体積の細胞培養物上清をロタウイルスが不活化する温度に直接加熱する工程を含む。様々な例において、1つ以上の追加工程を含ませることができる。例えば、細胞培養物上清を、直接加熱工程の前に濾過してもよく、細胞培養物上清を、直接加熱した後に凍結させてもよく、および/または細胞培養物上清を直接加熱した後に、細胞培養物上清からロタウイルスを単離してもよい。通常、ロタウイルスを直接加熱後に検査して、活性、感染性ウイルスが存在しないことを確実にする。
【0008】
同じく開示されるのは、本明細書に開示される方法により不活化したロタウイルスを含む組成物である。本組成物は、開示される方法により不活化したロタウイルスの他に、1種以上のアジュバントおよび/または薬学的に許容可能な担体も含有することができる。様々な組成物が、ロタウイルスの他に1種以上の感染因子からの抗原も含有することができる。
【0009】
同じく開示されるのは、対象において免疫応答を刺激する方法であり、本方法は、対象に、本明細書に開示される方法により不活化したロタウイルスを含有する組成物を投与する工程を含む。1つの例において、対象は、ウシ属動物である。1つの例において、組成物は、対象に、少なくとも2回投与される。複数回の投与は、1つの例において、約2〜12週間の様々な長さの期間をおいて、離すことができる。本方法において、組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内(intranodal)、鼻腔内、および経口のように、様々な経路を用いて対象に投与することができる。
【0010】
同じく開示されるのは、特許請求される組成物を対象に投与することにより産生される抗体である。抗体は、抗体を動物に投与することによりロタウイルスを中和する方法において使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書中、「ロタウイルス」は、レオウイルス科(Reoviridae)ファミリーに属するロタウイルスのいずれかを意味する。ロタウイルスは、ヒトまたは動物種に感染することができ(例えば、A、B、C、D、E、F、および/またはGロタウイルスのグループのいずれか)、ロタウイルスとして、それらのあらゆる株、血清型、遺伝子型、および/または合併結合変異ウイルスが挙げられる。1つの例において、ロタウイルスは、ウシ属動物に感染する。本明細書に記載される方法を用いて調製することができる、市販されているヒト用ワクチンの例として、Rotarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)、RotaTeq(登録商標)(Merck Sharp & Dohme Corp.)、および/またはROTOVAC(Bharat Biotech International)を挙げることができる。本明細書に記載される方法を用いて調製することができる、市販されているヒト用ワクチンの例として、ウマロタウイルスワクチン(Pfizer)、仔ウシロタウイルス下痢ワクチン(不活化)、Rotavec(登録商標)Corona(Merck Sharp & Dohme Animal Health)、Calf−Guard(Pfizer Animal Health)などを挙げることができる。本明細書に記載される方法はまた、ウシ、ウマ、およびブタの個体/集団など、非ヒト動物用ワクチンを調製するのにも使用することができる。
【0012】
本明細書中、「活性ロタウイルス」または「生ロタウイルス」は、感染性であるまたは複製して子孫ウイルスを産生することができるウイルスを意味する。
【0013】
本明細書中、「不活性ロタウイルス」または「死ロタウイルス」は、感染性ではないまたは複製して子孫ウイルスを産生することができないロタウイルスを意味する。そのようなウイルスは、場合により、死滅または不活化とも称される。本明細書中、不活性ロタウイルスは、活性ロタウイルスを加熱処理することにより製造される。
【0014】
本明細書中、「細胞培養物上清」または「培養物上清」は、培養細胞の増殖を支持するのに使用されている媒体を意味する。通常、本明細書中、細胞はロタウイルスに感染しており、細胞培養物上清は、感染細胞により産生された活性子孫ロタウイルスを含有する。
【0015】
本明細書中、「ある体積の細胞培養物上清を直接加熱する工程」は、ロタウイルスに関しては、通常、細胞培養物上清からロタウイルスを予め単離または精製することをまったく行わずに、ロタウイルスの完全な不活化をもたらす温度および時間で細胞培養物上清を加熱する工程を示す。したがって、細胞培養物上清中のウイルスの熱的不活化の前に、細胞培養物上清からのロタウイルスの単離または精製は行われていない。
【0016】
本明細書中、「単離ロタウイルス」は、細胞培養物上清から単離されたまたは精製されたロタウイルスを意味する。1つの例において、ロタウイルスは、高速遠心(ウイルスをペレット化する)により細胞培養物上清から単離することができ、次いで、水性緩衝液に懸濁させることができる。次いで、ロタウイルスを含有する水性緩衝液を加熱して、その中のロタウイルスを熱的に不活化することができる。本明細書に開示される本発明の方法は、細胞培養物上清からロタウイルスを単離する必要がない。
【0017】
細胞培養物上清から直接得られるロタウイルス
本明細書に開示されるのは、活性ロタウイルスを含有するある体積の培養物上清を、ロタウイルスが不活化する温度に直接加熱することにより(例えば、熱的不活化)不活化ロタウイルスを製造する方法、およびそのようにして不活化したロタウイルスを含有する組成物である。「生ロタウイルスを含むある体積の細胞培養物上清を直接加熱する工程」は、典型的には、活性(例えば、生きた、感染性の、複製により子孫ウイルスを産生することができる)ロタウイルスを含有する培養物上清に、ロタウイルスを不活化するため熱を加える前、処理用に収集する以外は、処理も操作も行わないこと(例えば、「前処理」無し)を意味する。ウイルスは、加熱処理前に、培養物上清から単離も精製もされていない。不活化ロタウイルスは、通常、活性がなく、感染性がなく、複製して子孫ウイルスを産生することができない(例えば、非増殖性)ウイルスを示す。不活化ロタウイルスは、死滅させられた、死、および/または非増殖性であると示すことができる。通常、少なくともワクチンに含ませるという目的のためには、不活化ロタウイルスは、対象に投与される時点で、免疫原性(例えば、免疫応答を刺激する能力)を保持していることが望ましい。通常、本明細書に記載される方法は、細胞培養物上清に含有される活性ロタウイルスの完全不活化をもたらす−活性ロタウイルスは残存しない。
【0018】
開示される方法から得られる不活化ロタウイルスは、免疫原性であり、これは、対象にこの不活化ロタウイルスを投与することが対象における免疫応答を刺激または生じさせることを意味する。通常、本明細書に記載される方法を用いて不活化されたロタウイルスは、1つの例において、β−プロピオラクトンを用いて化学的に不活化されたロタウイルスを等量で投与するのと比べて、対象においてより良い免疫応答を刺激する(すなわち、熱的不活化ロタウイルスの方が免疫原性が高い)。したがって、熱的不活化ロタウイルスの免疫原性は、化学的不活化ロタウイルスの免疫原性より優れている。したがって、熱的不活化ロタウイルスの免疫原性は、例えば、化学的不活化ロタウイルスの免疫原性より優れている可能性がある。対象における免疫応答は、当該分野で既知の様々な方法を用いて測定することができる。
【0019】
ロタウイルスを含むある体積の細胞上清(例えば、これは培養細胞上清とも称することができる)を直接加熱する工程の1つの例において、不活化するための処理(例えば、加熱など)の前に、培養物上清を濾過することができる(例えば、70、1.0および/または0.45μmシリンジフィルターなどを用いて)が、ある特定の実施形態において、この濾過は、培養物上清の前処理とは見なされないだろう。濾過は、通常、細胞片を取り除くかもしれないが、ウイルスを培養物上清から単離または精製することはない。しかしながら、濾過が行われる場合、濾過は、典型的には、少なくとも1回の加熱工程の後である(例えば、実施例1のとおり)。先行技術のプロセスは、典型的には、ロタウイルスを不活化する前に、ある種の単離工程、精製またはウイルス濃縮工程を必要とする。本明細書に記載される方法は、典型的には、不活化前の単離工程を必要としない。すなわち、本明細書に開示される方法において、ロタウイルスは、加熱不活化の前に、「単離される」(例えば、培養細胞上清からの分離など、そのウイルスが典型的に見つかる環境から分離される)必要がない。
【0020】
開示される方法の1つの例において、ロタウイルスに感染している培養細胞から培地が収集され、随意に、細胞片は除去される(例えば、濾過または低速遠心により)が、ロタウイルスは、細胞培養培地から単離または精製されることはない。次いで、ロタウイルスを含有する培地を加熱処理して、ロタウイルスを熱的不活化する。
【0021】
また、本明細書に記載される方法は、ロタウイルスが、不活化前に、何か特定の希釈剤緩衝液に含まれていることを必要としない。通常、ロタウイルスは、加熱処理前に、ウイルスが活性を維持することができる(例えば、ウイルスを不活化しない条件の)任意の液体環境に存在することができる。例えば、細胞培養物上清(または培養細胞上清)は、上清が適切な出発物質となるために、何か特定のオスモル濃度、塩の種類および/または濃度(例えば、何か特定の種類および/または量の二価カチオン塩、例えばCaCl、MgCl、および/またはMgSOなど)、糖または糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、グルコース、スクロース、ラクトース、マルトース、および/またはトレハロース)を示すことを要求されない(もっとも、これらの要件のうち1つ以上が、使用される細胞培養培地の種類に応じて、存在する可能性はある)。本明細書に記載される方法は、予め定められたオスモル濃度、塩および/または塩濃度、糖または糖アルコールを有する希釈剤緩衝液に入ったロタウイルスを最初に調製することなく、ロタウイルスの不活化を提供する(もっとも、繰り返すが、これらの要件のうち1つ以上が、使用される細胞培養培地の種類に応じて、存在する可能性はある)。例えば、希釈剤緩衝液(リン酸緩衝液、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、HEPES緩衝液、マレイン酸緩衝液、PIPES緩衝液、MOPS緩衝液、MOPSO緩衝液、ヒスチジン緩衝液、および/またはNaHCO緩衝液などのような水性緩衝液)は、特定のpH(例えば、pH5〜9)の有無に関わらず、加熱不活化の前に、必要とはされないが、存在する可能性はある。また、これらの方法は、何か特定のアミノ酸、ビタミン、および/またはそのようなものなどの有無、またはそれらが何か特定の量であることを必要としない。いくつかの実施形態において、次いで、本明細書に記載される方法は、細胞培養物上清において示されおよび/または存在する任意の特定のオスモル濃度、塩または塩濃度、糖および/または糖アルコール、緩衝液、アミノ酸および/またはビタミン、pHを規定することなく、生ロタウイルス(例えば、ウシロタウイルス)を含むある体積の任意の種類の細胞培養物上清を直接加熱する工程を提供する。すなわち、様々な実施形態において、不活化されるべきロタウイルスは、哺乳類細胞を培養するのに適した任意の細胞培養培地(例えば、特には、そのような細胞によるロタウイルス(例えば、ウシロタウイルス)の感染および産生を支持するもの)に含まれているまたは存在することができる。
【0022】
開示される方法の1つの例において、熱的不活化されるべきロタウイルスを含有する培養細胞上清は、200〜500mOsmの範囲のオスモル濃度、約1mM〜15mM)の範囲の二価カチオン塩濃度、ならびに約1〜20w/v%の範囲の糖および/または糖アルコール、のうちの1つ以上を有さない。二価カチオン塩の例として、CaCl、MgCl、およびMgSOを挙げることができるがこれらに限定されない。糖類は、単糖類であっても二糖類であってもよい。糖類および糖アルコールの例として、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、グルコース、スクロース、ラクトース、マルトース、およびトレハロースを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0023】
すなわち、本明細書に開示されるプロセスの利点は、当業者が、簡単に細胞培養物上清を得ることができ、最初にどのような前処理および/または精製工程も行わずに、これを処理し始めることができるということである。もちろん、そのような工程は、加熱不活化工程の後および/または工程間に行うことができ、最終的に、単離された、不活化ロタウイルスおよび/またはその免疫原性抗原を提供する。
【0024】
ロタウイルスの熱的不活化
不活化は、活性ロタウイルスを含む細胞培養物上清を得て、これをロタウイルスが不活化する温度に加熱することにより、達成することができる。生きた、感染性および/または増殖性感染性ロタウイルスは、典型的には、細胞に感染してその中で子孫を産生することができるものである。非感染性および/または非増殖性感染性ロタウイルスは、細胞に感染することができないおよび/または細胞中で子孫を産生することができないロタウイルスである。いくつかの実施形態において、細胞培養物上清の加熱に用いられるおよび/または加熱で到達する温度は、ロタウイルスが不活化する温度(「不活化温度」、例えば、約70℃、例えば、65℃、67℃、69℃、70℃、72.5℃、75℃、77.5℃、または80℃など)である。加熱工程は、典型的には、容器(例えば、管またはフラスコ)内で行われる。加熱後、細胞培養物上清を新たな容器に移すことができる。いくつかの実施形態において、複数回の加熱工程が用いられる。そのような実施形態において、第一の加熱工程は、最初の加熱工程と称することができる。最初の加熱工程には、随意に、凍結工程が続いてもよく、凍結工程では、細胞培養物上清は、適切な温度(例えば、約−80℃)で、適切な長さの時間(例えば、1時間〜一晩(例えば、8時間)またはそれ以上)凍結される。随意の凍結工程は、典型的には、新たな容器で行われる。次いで、この凍結工程に、第二の加熱工程が続いてもよく、例えば、第二の加熱工程は、最初の加熱工程とほぼ同じ条件(例えば、不活化温度)を用いて不活化ロタウイルス調製物を製造する。次いで、不活化ロタウイルス調製物を、必要になる(例えば、検査用および/またはワクチンに使用する)まで凍結しておくことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、最初の加熱工程は、ロタウイルスを不活化するのに要求される唯一の加熱工程であってもよい(例えば、第二の加熱工程は必要でないかもしれない)。そのような実施形態において、最初の加熱工程は、培養物上清の全体積の温度を不活化温度に上昇させ、直ちに次の工程(例えば、凍結)を行うことにより、行うことができる。すなわち、そのような実施形態において、細胞培養物上清は、全体積が不活化温度に到達し次第、さらに処理される(例えば、次の工程が行われる)。他の実施形態において、培養物上清は、適切な長さの時間(例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、または150分のいずれか)、不活化温度に維持してから、さらに処理する(例えば、次の工程を行う)ことができる。第二の加熱工程は、最初の加熱工程について記載されたとおりに行うことができる(例えば、全体積が不活化温度に到達し次第、または適切な長さの時間、不活化温度に維持した後に、さらに処理される)。凍結工程は、典型的には、第一の加熱工程と第二の加熱工程を離す。凍結工程はまた、培養物上清中に含まれるロタウイルスが不活化するように加熱された培養物上清の貯蔵のためにも用いることができる。
【0026】
ある特定の実施形態において、本プロセスは、細胞培養物上清の温度を、適切な長さの時間(例えば、約2時間)、適切な温度(例えば、約70℃)に上昇させる工程、随意に、続いて、適切な長さの時間(例えば、約8時間)、加熱後の細胞培養物上清を凍結する工程、次いで、随意に、細胞培養物上清を、適切な長さの時間(例えば、約2時間)、適切な温度(例えば、約70℃)に再加熱する工程を含むことができる。次いで、培養物上清を、適切なフィルター(例えば、10または70μmフィルター)で濾過することができる。
【0027】
加熱したロタウイルスが不活化しているかを確認する検査
典型的には、ウイルスが不活化するように処理されたロタウイルスの調製物は、検査により、調製物に活性ウイルスが存在しないことを確認する(すなわち、調製物が不活化ウイルスのみを含有することを確認する)。用いられる検査は、通常、活性ウイルス(例えば、生きた、感染性の、複製して子孫ウイルスを産生することができるもの)を検出するものである。検査の一例において、ウイルスを不活化するように処理された調製物または調製物の一部分を用いて、ロタウイルスによる感染を許容する任意の細胞を感染させる。調製物に活性ウイルスが存在するかどうかは、例えば、上記のとおり、細胞を固定し、細胞中のロタウイルスを同定する試薬で染色することにより、判定することができる。活性ウイルスを検出する他の方法として、感染中心アッセイまたは子孫ウイルスが細胞により産生されているかどうかを判定するアッセイの使用を考えることができる。様々な方法を用いることができる。
【0028】
例えば、細胞培養物上清を得ることができる細胞として、ロタウイルスによる感染およびロタウイルスの複製を許容する任意の細胞(例えば、MA104、MDBK、VERO、および他の細胞)を挙げることができる。細胞は、例えば、プレート上で、ローラーボトル中で、バイオリアクター中で、または当該分野で既知の任意の手段を用いて、増殖させることができる。適切な細胞培養物上清を製造するため、細胞を、適切な量(例えば、0.003のMOI)の生ウシロタウイルスの存在下、適切な長さの時間(例えば、2時間)、適切な条件(例えば、37℃、5%CO)下で培養することができる。次いで、各試料を濾過し(例えば、シリンジフィルター(例えば、1.0μm)を用いて)、新たな容器に溜める。次いで、試料を、例えば、本明細書に記載されるとおり加熱により処理し、随意に新たな容器に移すことができる。試料は、典型的には、処理後に凍結されるので、各試料を、非不活化試料(例えば、陽性対照試料)と一緒に解凍することができる。次いで、試験試料を濃縮(例えば、10倍)することができる。次いで、各検査試料の系列希釈物(例えば、10倍の系列希釈物)を調製することができる。次いで、確立された試験細胞(3日間培養物、単層、100%コンフルエンス(例えば、MA104細胞)を洗浄し、培地を適切な培地(例えば、0%DME(HyClone))に交換することができる。次いで、検査試料を、試験細胞を含有する各ウェル/バイオリアクター(例えば、GE中空繊維、RFP−50−C−3MA)に添加し、続いて適切なインキュベーション期間(例えば、37℃、5%COで2時間)の間、ロタウイルスを細胞に吸着させることができる。次いで、細胞を洗浄し、培地(例えば、20ml/LのL−グルタミン(ASL31012)および2ml/Lのトリプシンを含有するDME(HyClone))を再供給することができる。適切な長さの時間(例えば、3日)後、細胞を固定し(例えば、80%アセトンを用いて)、ロタウイルスを同定する試薬(例えば、ウシロタウイルスモノクローナル抗体、続いて検出試薬(例えば、二次抗体)など)で染色し、そして細胞に抗ロタウイルス抗体が存在するかどうかを分析することができる。典型的には、ロタウイルスは、どの陰性対照においても、またはロタウイルスが不活化されている試料においても、検出されないだろう。対照的に、陽性対照試料およびロタウイルスが不活化されていない試料は、陽性染色されるだろう。
【0029】
熱的不活化ロタウイルスの使用
本明細書に記載される方法を用いて、対象に投与するためのワクチンを製造することができる。本明細書に使用される場合、「対象」または「宿主」は、典型的には個体を意味する。対象または宿主として、家畜動物、例えばネコおよびイヌ、牧畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、およびヤギ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、および鳥類を挙げることができる。いくつかの実施形態において、対象または宿主は、霊長類またはヒトなどの哺乳類が可能である。
【0030】
すなわち、本開示はまた、本明細書に記載されるとおり不活化されたロタウイルスを含む組成物を対象に投与することにより、対象においてロタウイルスに特異的な免疫応答を刺激するおよび/または対象にロタウイルスに対する免疫を与える方法も記載する。本開示はまた、投与に用いられる、不活化ロタウイルスおよびロタウイルス含有組成物も記載する。そのような方法および組成物として、そのような不活化ロタウイルス(または不活化ロタウイルスを含む調製物)と1種以上の薬学的に許容可能な担体を組み合わせて、対象に投与するのに適した製剤としたものが挙げられる。例えば、適切な薬学的担体およびその製剤は、例えば、Remington’s: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams & Wilkins(2005)に記載されているだろう。適切な量の薬学的に許容可能な塩を製剤に用いて、製剤を等張性にすることができる。薬学的に許容可能な担体の例として、滅菌水、生理食塩水、リンガー液のような緩衝液、およびブドウ糖溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、通常、約5〜約8または約7〜約7.5である。薬学的組成物はまた、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存料、界面活性剤、アジュバント、免疫賦活薬も含むことができる。当業者には当然のことながら、例えば投与される組成物の投与経路および濃度によって、特定の担体がより好ましい可能性がある。
【0031】
薬学的組成物は、1種以上の活性成分、例えば抗菌剤、抗炎症剤、および麻酔剤なども含むことができる。薬学的組成物は、不活化ロタウイルスの他に、他の因子由来の追加抗原も含むことができる。複数の因子由来の抗原を含有するそのような組成物は、混合ワクチンと呼ぶことができる。
【0032】
免疫応答を刺激するまたは向上させるために、アジュバントも含ませることができる。アジュバントの適切なクラスの非限定的な例として、とりわけ、ゲル型のもの(すなわち、水酸化アルミニウム/リン酸アルミニウム(「アルミニウムアジュバント」))、リン酸カルシウム、微生物起原のもの(ムラミルジペプチド(MDP))、細菌体外毒素(コレラ毒素(CT)、天然コレラ毒素サブユニットB(CTB)、大腸菌(E.coli)不安定毒素(LT)、百日咳毒素(PT)、CpGオリゴヌクレオチド、BCG配列、破傷風トキソイド、モノホスホリルリピドA(MPLA)(例えば、大腸菌、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、またはシゲラ・エクセリ(Shigella exseri)のMPLA)、粒子状アジュバント(生分解性、重合体微粒子)、免疫賦活性複合体(ISCOM)、油乳濁液および界面活性剤系アジュバント(フロイント不完全アジュバント(FIA)、微小流体乳濁液(MF59、SAF)、サポニン(QS−21)、Emusligen(登録商標)(例えば、Emulsigen(登録商標)D))、合成物(ムラミルペプチド誘導体(ムラブチド、threony−MDP)、非イオン性ブロック共重合体(L121)、ポリホスファゼン(PCCP)、合成ポリヌクレオチド(ポリA:U、ポリI:C)、サリドマイド誘導体(CC−4407/ACTIMID)、RH3リガンド、またはポリラクチドグリコリド(PLGA)微粒子、3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が挙げられる。これらの毒素のいずれかについての、断片、相同体、誘導体、および、融合体も、それらがアジュバント活性を保持するかぎりにおいて、適切である。
【0033】
免疫学的組成物は、例えば、宿主(例えば、動物)に投与すると、組成物(例えば、不活化ロタウイルス)に含まれるロタウイルス抗原(例えば、免疫原)に対する免疫応答を誘導するまたは向上させる、薬学的組成物および/または製剤が可能である。そのような応答として、上記のとおり、抗体の生成(例えば、B細胞の刺激を通じて)またはT細胞に基づく応答(例えば、細胞溶解性応答)を挙げることができ、これらは保護的なものであっても、中和するものであっても(例えば、そうでなくても)よい。保護的または中和免疫応答は、ロタウイルス(またはそれを含有する細胞)にとって有害であるが、宿主にとって有益である(例えば、感染を減らすまたは防ぐことにより)ものが可能である。本明細書に使用される場合、保護的または中和抗体および/または細胞応答は、本明細書に記載されるとおりに調製されたロタウイルスおよび/またはそれを保有する細胞と反応することができる。これらの抗体および/または細胞応答は、動物で試験した場合、ロタウイルス感染の重篤度、時間、および/または死亡率を低下または抑制することができる。免疫学的組成物は、宿主に投与すると、治療的(例えば、典型的には活性感染中に投与される)および/または予防的(例えば、典型的には活性感染前または後に投与される)および/または中和免疫応答をもたらすものが可能である。そのような免疫学的組成物も、ワクチンと見なすことができる。
【0034】
すなわち、いくつかの実施形態において、ロタウイルス感染を治療および/または予防する方法も提供される。哺乳類に少なくとも1回以上の有効用量の本明細書に記載されるとおりに調製された不活化ロタウイルス(例えば、および/またはそれを含む1種以上の組成物および/または製剤)を投与する工程を含む、哺乳類宿主においてロタウイルスにより引き起こされるまたはロタウイルスが関与する1種以上の疾患症状を治療する方法も提供される。通常、対象に不活化ロタウイルスを投与することは、対象において、ロタウイルスに特異的な免疫応答を刺激する。不活化ロタウイルスは、適切な投薬量で投与することができる。不活化ロタウイルスは、1回以上投与することができる;投与が複数回行われる場合、各投与は、同用量でも異なる用量でもよい。ある特定の実施形態において、不活化ロタウイルスおよび/またはその抗原は、任意の経路および適切な投薬量で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の回数で投与することができる。適切な投与経路として、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内、鼻腔内、および/または経口を挙げることができる。各投薬は、互いに時間を離すこともでき、その間隔は同じでも異なっていてもよい。例えば、投薬は、約6、12、24、36、48、60、72、84、もしくは96時間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1.5年、2年、3年、4年、5年、または任意の長さの時間のいずれかの前、後、および/または間において、これらの長さの時間のいずれかで離すことができる。いくつかの実施形態において、不活化ロタウイルスは、単独で投与することもできるし、他の作用剤(例えば、抗生物質、他のワクチン、栄養剤など)と組み合わせて投与することもできる。そのような他の作用剤は、およそ、同時に、または異なる時点および/または頻度で、投与することができる。そのような方法の他の実施形態もまた、当業者が容易に確認できるかぎりにおいて、適切であるだろう。
【0035】
同じく提供されるのは、抗体の産生を惹起する方法であり、この抗体は保護的および/または中和抗体が可能であり、および/または本明細書に記載されるとおりに調製された不活化ロタウイルスに対して反応性であることができる。そのような抗体を使用する組成物および方法も、本明細書に提供される。様々な種類の抗体を調製し利用する方法が、当業者に周知であり、使用に適しているだろう(例えば、Harlow, et al. Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988; Harlow, et al. Using Antibodies: A Laboratory Manual, Portable Protocol No. 1, 1998; Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)); Jones et al. Nature, 321:522−525 (1986); Riechmann et al. Nature, 332:323−329 (1988); Presta (Curr. Op. Struct. Biol., 2:593−596 (1992); Verhoeyen et al. (Science, 239:1534−1536 (1988); Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86−95 (1991); Marks et al., Bio/Technology 10, 779−783 (1992); Lonberg et al., Nature 368 856−859 (1994); Morrison, Nature 368 812−13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845−51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65−93 (1995);ならびに、米国特許第4,816,567号;同第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号を参照)。ある特定の用途において、抗体は、ハイブリドーマ上清または腹水に含まれていることが可能であり、そのまま直接利用することも、標準技法を用いて濃縮してから利用することも可能である。他の用途において、抗体は、例えば、塩析による分画(salt fractionation)およびイオン交換クロマトグラフィー、あるいは固相支持体(アガロースビーズなど)と共役結合したプロテインA、プロテインG、プロテインA/G、および/またはプロテインLリガンドを用いるアフィニティークロマトグラフィー、あるいはそれら技法の組み合わせを用いて、さらに精製することができる。抗体は、任意の適切な様式で貯蔵することができ、そのような様式として、凍結調製物(例えば、約−20℃または−70℃)として、凍結乾燥された形状で、または通常の冷蔵条件下(例えば、約4℃)が挙げられる。液状で貯蔵する場合、トリス緩衝生理食塩水(TBS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)などの適切な緩衝液を利用することが好ましい。抗体およびそれらの誘導体は、in vitroまたはin vivo用の本明細書に記載される組成物に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、1種の抗体、複数の抗体、および/または抗体混合物は、ロタウイルスと反応性であることができ、ロタウイルス感染を予防するおよび/または処置する(例えば、受動免疫化により)のに用いることができる。当業者は、抗体を作り使用する他の方法(例えば、ロタウイルスを検出するためのものなど)を利用することもでき、そのような他の方法もまた、当業者が容易に確認できるかぎりにおいて、使用に適しているだろう。
【0036】
本明細書に記載される材料のどれであっても、その材料が持つ有用性(例えば、免疫原性)は、当業者に既知の様々な方法のいずれかによりアッセイすることができ、そのような方法として、本明細書に記載されるもの(例えば、哺乳類細胞を用いたウイルス血清中和アッセイ)が挙げられる。本明細書に記載されるアッセイの任意の1種以上、または任意の他の1種以上の適したアッセイを用いて、意図した目的に対する、本明細書に記載される材料の任意のものの適切性を判定することができる。当然のことながら、これらの方法は例示であり、限定するものではない;他のアッセイも適切であるかもしれない。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるとおりに不活化したロタウイルスを含む組成物および/または製剤は、免疫原性性質(例えば、宿主への投与に続く、検出可能なおよび/または中和および/または保護的免疫応答を含む)を示すことが好ましい。中和および/または保護的免疫応答の存在は、不活化ロタウイルスが投与された個体(例えば、ヒトまたは他の動物)におけるロタウイルスによる感染が、その材料を投与されていない対象と比較して、影響を受けている(例えば、低下する)ことを示すことにより、実証することができる。そのような判定を行うのに使用できる適切な動物モデルとして、例えば、本明細書の実施例において記載されるとおり、ウサギおよび/またはウシを挙げることができる。例えば、1種以上の実験動物(例えば、ウサギ、ウシ、または同様のモデル)に、本明細書に記載されるとおりに調製した不活化ロタウイルスを投与し(例えば、皮下、筋肉内、皮内、鼻腔内で)、次いで、適切な長さの時間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週)後、アッセイして抗ロタウイルス抗体および/または免疫細胞(例えば、T細胞)の産物を同定する、および/または生ロタウイルスに曝露させてその動物が感染から保護されるかどうかおよび/または感染の重篤度が低下するかどうかを判定することができる。動物は、標準技法(例えば、ウイルス中和アッセイ、ELISA)を用いて、投与および/または曝露に続いて、免疫機能(例えば、T細胞活性、抗体産生)を監視することができる。全抗体応答についてまたは特定のサブタイプの発現について血清を分析することができる。得られたデータに対して統計分析(例えば、フィッシャーの正確確率検定、ウィルコクソン検定、マン・ホイットニー検定、または他の検定)を行うことができる。すなわち、不活化ロタウイルス、ならびに/またはそれを含む組成物および/もしくは製剤を、本明細書に記載されるとおりに調製して(例えば、免疫原性組成物)、ロタウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または処置に使用することができる。
【0037】
本開示は、生ロタウイルスを含むある体積の細胞培養物上清を、ロタウイルスが不活化する温度に直接加熱することにより、不活化ロタウイルスを製造する、1種以上の方法を提供する。細胞培養物上清は、任意の特定の緩衝液、オスモル濃度、塩濃度、糖、糖アルコール、pH、アミノ酸、および/またはビタミンを、含むまたは示してもよいし、欠いていてもよい。細胞培養物上清は、本明細書に記載される方法で用いるのに適するように、予め定められた緩衝液、オスモル濃度、塩濃度、糖、糖アルコール、pH、アミノ酸、および/またはビタミンを示す必要はない。細胞培養物上清は、典型的には、哺乳類細胞から生ウシロタウイルスを製造することを許容する細胞培養培地を含むおよび/またはその細胞培養培地に由来する。上記で説明したとおり、「生ロタウイルスを含むある体積の細胞培養物上清を直接加熱する」は、典型的には、活性(例えば、生)ロタウイルスを含む培養物上清を、ロタウイルス不活化のための熱を加える前に、処理用に収集する以外は、すなわちロタウイルスの不活化をもたらす可能性があるいかなるやり方でも、処理しない(例えば、無「前処理」)ことを意味する。いくつかの方法において、不活化ロタウイルスは、不活化後に細胞培養物上清から単離される。いくつかの実施形態において、培養物上清の実質的に全体積(例えば、70、80、90、95、または99%)を、不活化温度に加熱することができ、および場合によっては、培養物上清の全体積を不活化温度に加熱する。ある特定の実施形態において、不活化温度は、少なくとも約60℃〜約80℃(例えば、約60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、65℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、または80℃のいずれか)である。いくつかの実施形態において、培養物上清(例えば、実質的に全体積または全体積)の温度は、少なくとも約15分〜少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12時間のいずれかの間、維持される。ある特定の実施形態は、さらに、加熱後に培養物上清を凍結する工程を含むが、この工程は随意である。ある特定の実施形態は、さらに、少なくとももう1回、培養物上清を後で加熱する工程を含む(例えば、最初の加熱工程および/または凍結工程後の加熱工程)。最初の加熱および後からの加熱の温度は、略同一であってもよい。いくつかの実施形態において、培養物上清のpHは、7.6±0.1である。本開示はまた、本明細書に記載される方法のいずれかにより調製された不活化されたロタウイルス(例えば、ウシロタウイルス)および/またはロタウイルス(例えば、ウシロタウイルス)抗原を含む組成物も提供する。同じく提供されるのは、そのような組成物で動物に免疫を与える方法である。いくつかの実施形態において、動物はウシである。いくつかの実施形態において、組成物は、動物に少なくとも2回投与されてもよく、そのような投与は、時間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および/または12週間のいずれか)をおいて離すことができる。組成物は、任意の適切な経路、例えば皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内、鼻腔内、および/または経口で、動物に投与することができる。本開示はまた、抗体を製造する方法、そのような方法(例えば、1種または複数の抗体を単離する工程をさらに含む)により製造された1種または複数の抗体、およびそのような抗体を含む組成物も提供する。そのような抗体を使用する方法(例えば、in vitroまたはin vivoでロタウイルス(例えば、ウシロタウイルス)を中和する方法(例えば、動物(例えば、ウシ)にそのような1種または複数の抗体を投与することによる))も提供する。
【0038】
「約」、「およそ」などの用語は、数値の列挙または範囲に先行する場合は、その列挙または範囲の中の各個別の値の直前にこの用語が先行しているかのように、その列挙または範囲の中の各個別の値それぞれにかかる。この用語は、数値がその値そのものであるか、その値に近いか、その値と同様な値であることを意味する。例えば、いくつかの実施形態において、「約」または「およそ」である、特定の値は、その値の99%、95%、または90%である値を示している可能性がある。例として、培養物上清の体積が1Lである場合、「約」または「およそ」1Lは、0.99、0.95、または0.9Lに等しい可能性がある。別の例として、温度が70℃である場合、「約」または「およそ」70℃は、69℃、66℃、または63℃に等しい可能性がある。当然のことながら、これらは例にすぎない。
【0039】
随意のまたは随意にとは、その後に記載される事象または状況が、起こる可能性もあるし起こらない可能性もあり、かつその記載が、その事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば、随意に組成物は組み合わせを含むことができる、という語句は、この記載が、組み合わせ(すなわち、組み合わせの個々の要素)の存在および不在の両方を含むように、組成物が異なる分子の組み合わせを含むこともできるし、組み合わせを含まないこともできることを意味する。
【0040】
範囲は、本明細書において、1つのおよその特定値から、および/または別のおよその特定値までとして表すことができる。そのような範囲が表示される場合、別の態様では、1つの特定値からおよび/または他方の特定値までが含まれる。同様に、先行詞「約」または「およそ」を使用することで、値がおよそとして表示される場合、当然のことながら、特定の値は、別の態様を形成する。さらに当然のことながら、範囲のそれぞれの端点は、他方の端点に関連して、および他方の端点と独立しての両方で有意である。範囲(例えば、90〜100%)は、その範囲自体を含むとともにその範囲内の各個々の値を、各値が個別に列挙されたかのように含むという意味である。
【0041】
予防する、予防している、および予防という用語が、本明細書において、所定の症状の所定の処置に関連して使用される場合(例えば、感染を予防している)、この用語は、処置された患者が、臨床上観察可能なレベルでその症状を発症することがまったくないか、または彼/彼女がその処置を受けなかった場合よりもゆっくりとおよび/もしくは軽い度合いでその症状を発症する、のいずれかをもたらすことを意味する。これらの用語は、患者がなんであれその症状の態様をまったく経験しない状況のみに限定されない。例えば、ある処置は、症状の所定の徴候をもたらすことが予想される刺激に患者が曝露する間、その処置が与えられると、患者の経験する症状の病状がそうでなかった場合に予想されるよりも少ないおよび/または軽くなるならば、その症状を予防したと言うことができる。ある処置は、患者が感染の顕性症候を軽度にしか表さなくなることで、感染を「予防する」ことができる;これは、感染微生物によるいずれかの細胞の浸透がまったく存在しなかったはずであるということを意味しない。
【0042】
同様に、低下させる、低下している、および低下は、本明細書において、所定の処置を用いた感染の危険性に関連して使用される場合(例えば、ロタウイルス感染の危険性を低下させる)、典型的には、対象が感染を発症するのを、処置(例えば、開示されるポリペプチドを用いた投与またはワクチン接種)がない場合の感染の発症の対照レベルすなわち基準レベルと比較して、よりゆっくりとまたはより低い度合いにすることを示す。感染の危険性の低下は、患者が感染の顕性症候を軽度にしか表さないまたは感染の症候を遅れて表す結果となる可能性がある;これは、感染微生物によるいずれかの細胞の浸透がまったく存在しなかったはずであるということを意味しない。
【0043】
本開示内で引用される参照は全て、本明細書により、参照としてその全体が援用される。ある特定の実施形態を、以下の実施例でさらに記載する。これらの実施形態は、例示としてのみ提供されるものであり、いかなる方法においても特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0044】
実施例1:ロタウイルスの加熱不活化
ロタウイルスを調製するため、MA104(サル腎臓細胞)を、バイオリアクター中、4.0g/LにてCytodex−3マイクロキャリアを用いて培養した。バイオリアクターには、細胞1.5×10個/mlを15Lの作業体積で播種した。3〜7日後、またはマイクロキャリアビーズが95%超のコンフルエンスに達した時点で、各バイオリアクターを、0.003(核数の計数により測定)の感染多重度(MOI)でウシロタウイルス(BRV)に感染させる準備をした。細胞を感染させる前に、BRVを、新鮮なDMEM培地(14.85L)中で、1〜3時間、37℃でインキュベートした。この培地は、IX型トリプシン(IX型トリプシン原液を22.5ml、L−グルタミンおよびゲンタマイシン/アンホテリシンBも含む)を含ませることで、BRV培地とした。BRV培地をバイオリアクターに加える前に、最短でも5分間、マイクロキャリアビーズを沈降させて、使用済み培地の約90%を除去した。次いで、加温した新鮮な培地(12.5LのDMEM培地、IX型トリプシンを含む)をポンプでバイオリアクターに入れた。次いで、BRV培地2.5Lをそこに加えた。いったん感染が完了したら(例えば、POが、回復することなく20%のセットポイントを超えるまで移動した後、24時間以内)、約15〜20分間、約75rpmでの振盪撹拌を行ってから、収穫した。
【0045】
次いで、収穫したウイルスを加熱不活化実験に用いた。これらの実験では、収穫した材料を70℃に加熱し、8時間にわたって、15分ごとに試料10mlを採取した。4時間後、加熱した材料を別の容器に移して、残りの4時間のインキュベーションを70℃で完了した。各試料を1.0μmシリンジフィルターで濾過し、新たな容器に溜めた。次いで、各濾過試料を70℃の循環水浴に2時間入れて(2時間の間に2回振盪撹拌し)、新たな容器(10ml滅菌バイアル)に移した。これらの実験において、次いで、各試料を−80℃の冷凍庫に一晩入れておいた。次いで、試料を70℃の循環水浴に2時間入れて(2時間の間に2回振盪撹拌し)、新たな容器に移した。次いで、これらの試料を検査するまで−80℃の冷凍庫に貯蔵しておいた。
【0046】
BRVを、β−プロピオラクトン(BPL)を用いて化学的にも不活性化させた。BRV感染したMA104細胞培養物上清約500mlを用意した。この方法では、不活性化させようとするロタウイルス含有細胞培養物上清1リットル毎に、冷却した滅菌水18mlにBPL溶液(10%)2mlを加えた。次いで、混合物を、最大で24時間、4℃で混合した。次いで、混合物を4℃で貯蔵した(典型的には、全不活化時間を52時間未満で提供する)。加熱不活性化試料で使用したのと同じ方法を使用して、ロタウイルスが不活化されたかどうかを判定する検査を行うために、1〜2mlを採取した。
【0047】
試料を検査するために、各試料を、非不活化試料(例えば、陽性対照試料)と一緒に解凍した。次いで、各試料の10倍系列希釈物を調製した。確立された試験MA104細胞(3日培養物、単層、100%コンフルエンス)を洗浄し、培地を無血清DME(HyClone)に交換した。次いで各試験試料1mlずつ試験細胞を含有する各ウェルに添加し、続いて2時間の時間でインキュベーション(37℃、5%CO)を行って、吸着させた。次いで、血清を含有せずに20ml/LのL−グルタミン(ASL31012)および2ml/Lのトリプシンを含有する再供給培地DME2mlを加えた。3日間培養後、細胞を、80%アセトンを用いて固定し、BRVに特異的なモノクローナル抗体で染色し(PBSで1:1000に希釈した82×100NAHで、37℃で2時間、PBSで1:1000に希釈したFITCヤギ抗マウス抗体#55493で、37℃で2時間染色した)、蛍光を検出することで分析した。ロタウイルスは、陰性対照ウェルのどれにおいても検出されず、加熱不活化試料の希釈物を含有するウェルでのみわずかに検出された。陽性対照試料のウェルは、全てロタウイルス陽性であった。完全に不活化したウイルスのみを、さらなる実験に用いた。
【0048】
別の検査では、MA104細胞を1〜2日間培養したもの(≧70%コンフルエンス)を、先の検査について記載したとおりに調製した(例えば、培養培地を除去して無血清DMEに置き換えた)。ロタウイルス検査試料を、生ロタウイルス含有培養物上清を1または2時間70℃に加熱し、続いて、不活化検査を行うまで−80℃で凍結させておくことで調製した(例えば、1工程不活化プロセス)。他のロタウイルス検査試料は、生ロタウイルス含有培養物上清を1または2時間70℃に加熱し、続いて−80℃で凍結させ、続いて、第二の加熱不活化工程を70℃で1または2時間行い、不活化検査を行うまで−80℃で凍結させておくことで調製した(例えば、2工程不活化プロセス)。次いで、試験MA104細胞を様々なロタウイルス検査試料とともに、最短でも3日間インキュベートし、細胞変性(cyotpathic)効果(CPE)について観察した。CPEは、陰性対照細胞または加熱不活化試料(1時間、2時間、1工程、または2工程不活化プロセス)のどれにおいても観察されず、このことは、各プロセスが、細胞培養培地に存在するロタウイルスを完全に不活化したことを示す。対照的に、CPEは、陽性対照試料の全てで観察された。
【0049】
実施例2:加熱不活化ロタウイルスの免疫原性
A.ウサギでの実験
この実験は、従来のβ−プロピオラクトン不活化プロトコルを用いて調製したBR(BPL−BR)または実施例1に記載の加熱不活化手順を用いて調製したBR(「HI−BR」と名付ける)で免疫を与えたウサギ(これまでにウシロタウイルス抗原(BR)に曝露したことがない)の血清学的応答を比較した。Emulsigenで免疫賦活した6種のワクチン(30% Emulsigen D)で検査した。抗原を投与する前に、ウサギを出血させて、ベースラインとなる幾何平均力価(GMT)を得た。ウサギには、0(±2)日目に、1.25mlの初回抗原刺激用量を皮下投与し、20(±2)日目に追加免疫用量を皮下投与した。処置群は、表1に示すとおりに体系化された:
【0050】
【表1】
【0051】
検査血清は、35日目(例えば、ワクチン接種後日数(DPV)が約14日)に得た。35日目血清のGMTを、ウイルス中和アッセイ(VNA)およびELISAを用いて、抗ロタウイルス抗体含有量についてアッセイした。VNAは、検査血清試料を、56〜58℃の水浴に入れて、30〜60分間加熱不活化することにより、行った。MA104細胞(4〜6日単層物)を、検査血清を希釈培地(DMEM、2%L−グルタミン、5%FBS、0.2ml/Lのゲンタマイシン、0.2ml/LのアンホテリシンB)で系列希釈したものと接触させた。ロタウイルスは、ウイルス希釈培地(DMEM、2%L−グルタミン、700ml/LのIX型トリプシン、0.2ml/Lのゲンタマイシン、0.2ml/LのアンホテリシンB)で、50〜500FAID50/mlのウイルス(FAID50/ml=1mlあたりの50%蛍光抗体感染用量)を含有するように調製し、室温で45〜60分間混合した。次いで、このウイルス溶液を、希釈培地で1:20,000〜25,000に系列希釈し、系列希釈物を、血清試料とともに50〜70分間インキュベートした。次いで、ウイルス血清混合物(陽性対照および陰性対照と一緒に)をMA104細胞に添加し、細胞を37℃(5%COインキュベーター)で、2〜3日間培養した。次いで、細胞を洗浄し、80%アセトンを用いて固定し(30±5分)、抗BRV一次抗体とともにインキュベートし、続いて二次蛍光抗体とともにインキュベートした。力価を、Spearman−Karber方法を用いて計算し、所定の希釈度の指標ウェルの50%超でウイルス増殖を阻害する血清希釈物の逆数として記録した。ELISAは、標準手順を用いて行った。これらの実験の結果を表2にまとめる:
【0052】
【表2】
【0053】
表2からわかるとおり、加熱不活化したBRは、ウイルス中和アッセイまたはELISAによる測定によれば、BPL不活化したBRよりもはるかに強い抗体反応をもたらした。
【0054】
B.ウシでの実験
この実験は、これまでにロタウイルスでワクチン接種されたことがないウシ属動物(天然のBRV宿主)に、従来のβ−プロピオラクトン不活化プロトコル(BPL−BR)を用いて調製したウシロタウイルス抗原(BR)または実施例1に記載の加熱不活化手順(HI−BR)を用いて調製したウシロタウイルス抗原(BR)を投与して、血清学的応答を比較した。Emulsigenで免疫賦活した6種のワクチン(30% Emulsigen D)で検査した(表3)。動物には、0日目に5mlの初回抗原刺激用量を筋肉内(IM)投与(頚部にて)し、検査84日目(免疫化から12週間後)に追加免疫用量を投与(同じくIM)した。検査0日目(出血前;動物は、初乳受動導入のため、典型的には、いくらかの抗BRV抗体を有する)、14、28、56、84、98、および112日目に採取した血清試料から、抗体レベルを測定した。いったん採取したら、血清を−20℃で貯蔵した。ウイルス中和アッセイは、基本的に上記に記載のとおりに行ったが、ただしウイルス溶液は、希釈培地で、1:2、次いで10−1、10−2、10−3、10−4、および10−5と系列的に希釈した。処置群は、表3に示すとおりに体系化された:
【0055】
【表3】
【0056】
この検査の結果を表4に示す:
【0057】
【表4】
【0058】
表4からわかるとおり、加熱不活化したBRは、ウイルス中和アッセイによる測定によれば、BPL不活化したBRよりもはるかに強い抗体反応をもたらした。
【0059】
好適な実施形態に関して、ある特定の実施形態を記載してきたものの、当然のことながら、当業者には改変および修飾が思い浮かぶだろう。したがって、添付の請求項は、以下の請求項の範囲内にあるそのような等価の改変を全て包含するものとする。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 不活化ロタウイルスを製造する方法であって、活性ロタウイルスを含有するある体積の細胞培養物上清を、前記ロタウイルスが不活化する温度に直接加熱することを含む、方法。
[2] 前記細胞培養物上清は、200〜500mOsmの範囲のオスモル濃度、約1mM〜15mMの範囲の二価カチオン塩濃度、ならびに約1〜20重量/体積%の範囲の糖および/または糖アルコールの1つ以上を有さない、[1]に記載の方法。
[3] 前記不活化ロタウイルスは、免疫原性である、[1]に記載の方法。
[4] 前記不活化ロタウイルスの免疫原性は、化学的に不活化されたロタウイルスの免疫原性より優れている、[3]に記載の方法。
[5] 前記化学的に不活化されたロタウイルスは、β−プロピオラクトンを用いて不活化されたものである、[4]に記載の方法。
[6] 前記細胞培養物上清は、加熱の前に濾過される、[1]に記載の方法。
[7] 前記不活化ロタウイルスは、前記ロタウイルスが不活化された後に、前記細胞培養物上清から単離される、[1]に記載の方法。
[8] 前記ロタウイルスは、ウシロタウイルスである、[1]に記載の方法。
[9] 前記温度は、少なくとも約60℃である、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記温度は、約60〜80℃である、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記温度は、約65℃、70℃、75℃、および80℃のいずれかからなる群より選択される、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記培養物上清の前記温度は、少なくとも約15分間維持される、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 前記培養物上清の前記温度は、少なくとも約60分間維持される、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[14] 前記培養物上清の前記温度は、少なくとも約120分間維持される、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[15] 前記培養物上清の前記温度は、少なくとも約240分間維持される、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[16] 前記細胞培養物上清は、実質的に全体積が前記温度に加熱される、[1]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17] 前記培養物上清は、全体積が前記温度に加熱される、[16]に記載の方法。
[18] 前記細胞培養物上清を凍結することをさらに含む、[1]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19] 前記凍結する工程は、少なくとも約12時間行われる、[18]に記載の方法。
[20] 前記細胞培養物上清を、少なくとも2つの別個の工程で後から加熱することをさらに含む、[18]または[19]に記載の方法。
[21] 最初の加熱および後からの加熱の温度は、略同一である、[20]に記載の方法。
[22] 前記細胞培養物上清のpHは、7.6±0.1である、[1]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23] 不活化ロタウイルスを製造する方法であって、
ロタウイルスに感染した培養細胞から、活性ロタウイルスを含有する細胞培養物上清を収集することと、
ある体積の前記細胞培養物上清を、前記ロタウイルスが不活化する温度に直接加熱することと
を含む、方法。
[24] 前記細胞培養物上清は、200〜500mOsmの範囲のオスモル濃度、約1mM〜15mMの範囲の二価カチオン塩濃度、ならびに約1〜20重量/体積%の範囲の糖および/または糖アルコールの1つ以上を有さない、[23]に記載の方法。
[25] 前記不活化ロタウイルスは、免疫原性である、[23]に記載の方法。
[26] 前記不活化ロタウイルスの免疫原性は、化学的に不活化されたロタウイルスの免疫原性より優れている、[25]に記載の方法。
[27] 前記化学的に不活化されたロタウイルスは、β−プロピオラクトンを用いて不活化されたものである、[26]に記載の方法。
[28] 活性ウイルスが存在しないことを確実にするために、直接加熱された前記細胞培養物上清中の前記ロタウイルスを検査する工程をさらに含む、[23]に記載の方法。
[29] 直接加熱する工程の前に、前記細胞培養物上清を濾過する工程をさらに含む、[23]に記載の方法。
[30] 直接加熱された前記細胞培養物上清から前記不活化ロタウイルスを単離する工程をさらに含む、[23]に記載の方法。
[31] 直接加熱された前記細胞培養物上清を凍結する工程をさらに含む、[23]に記載の方法。
[32] [1]〜[31]のいずれかに記載の方法により不活化されたロタウイルスを含む、組成物。
[33] アジュバントをさらに含む、[32]に記載の組成物。
[34] 1種以上の薬学的に許容可能な担体をさらに含む、[32]に記載の組成物。
[35] ロタウイルス以外の1種以上の感染因子に由来する1種以上の抗原をさらに含む、[32]に記載の組成物。
[36] 対象における免疫応答を刺激する方法であって、[32]〜[35]のいずれかに記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[37] 前記対象は、ウシ属動物である、[36]に記載の方法。
[38] 前記組成物は、前記対象に、少なくとも2回投与される、[36]に記載の方法。
[39] 前記2回の投与は、時間間隔をおいて行われる、[38]に記載の方法。
[40] 前記時間は、約2〜12週間である、[39]に記載の方法。
[41] 前記組成物は、前記対象に、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、結節内、鼻腔内、および経口からなる群より選択される経路を介して投与される、[36]〜[40]のいずれかに記載の方法。
[42] [32]〜[35]のいずれかに記載の組成物を、対象に投与することにより産生される、1種または複数の抗体。
[43] [36]〜[41]のいずれかに記載の方法を用いて産生される、[42]に記載の1種または複数の抗体。
[44] [42]に記載の1種または複数の抗体を動物に投与することにより、ロタウイルスを中和する方法。
[45] 前記動物は、ウシ属である、[44]に記載の方法。