(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
大麦の茎及び/又は葉の粉砕物及び/又はその乾燥粉末を含有することを特徴とする、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)の増殖用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
【0010】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、大麦の茎及び/又は葉(茎葉)を原料の一つとして用いることを特徴の一つとしている。本発明では、大麦の茎葉を用いることによって、特定のビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスを良好に増殖させることができる。
【0011】
大麦は、例えば精麦用として、具体的には、麦味噌、麦茶、焼酎、ビールなどの原料として一般的に用いられているものである。本発明においては、大麦の茎及び/又は葉を用いる。大麦の茎葉は、大麦の葉、茎又はその両方であり、葉及び茎はそれぞれその一部又は全部であってもよい。
【0012】
大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。大麦の茎葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、大麦の茎葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
【0013】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、大麦の茎葉として、該茎葉から得られる各種の加工物、すなわち、大麦の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、茎葉の乾燥粉末、茎葉の粉砕物及びその乾燥粉末(以下、粉砕物の乾燥粉末のことを「粉砕末」ともいう)、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末(以下、細片化物の乾燥粉末のことを「細片化末」ともいう)、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末(以下、搾汁の乾燥粉末のことを「搾汁末」ともいう)、茎葉のエキス及びその乾燥粉末(以下、エキスの乾燥粉末のことを「エキス末」ともいう)等が挙げられる。
【0014】
例えば、大麦の茎葉を粉砕物及びその乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、大麦の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
【0015】
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。
【0016】
熱水処理としては、80〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水または水蒸気中で、茎葉を60〜180秒間、好ましくは90〜120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を用いることが好ましく、これらの塩を熱水中に溶解させておくことで、茎葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。
【0017】
蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20〜40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限されないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、大麦の茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
【0018】
また、殺菌処理とは当業者に通常知られている処理であれば特に限定されないが、例えば、温度、圧力、電磁波、薬剤等を用いて物理的又は化学的に微生物細胞を殺滅させる処理であるということができる。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0019】
また、乾燥処理としては、特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉の水分含量が10質量%以下、特に5質量%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、好ましくは40℃〜140℃、より好ましくは80〜130℃にて加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
【0020】
また、粉砕処理としては特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの粉砕用の機器や器具を用いて、当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された大麦の茎葉は必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものを茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、さらなる加工時に大麦の茎葉の粉末が取り扱いやすくなり、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、大麦の茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易である。
【0021】
具体的な粉砕末の製造方法(乾燥粉末化の方法)としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号を公報参照)。また例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報、特許第3428956号公報を参照)も挙げられる。また例えば、大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003−033151号公報、特許第3277181号公報を参照)も挙げられる。
【0022】
大麦の茎葉を細片化する方法は特に限定されないが、例えば、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.1mm以下、なお更に好ましくは0.05mm以下となるように細片化され、流動性を有するようになる。細片化物は凍結乾燥や熱風乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(細片化末)とすることもできる。
【0023】
大麦の茎葉を搾汁する方法は特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の茎葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー、等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法があげられる。より具体的には、特開平8−245408号公報や特開平9−47252号公報、特開平5−7471号公報、特開平4−341153号公報に記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。搾汁液は、必要に応じて濃縮してもよいし、凍結乾燥や熱風乾燥、噴霧乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(搾汁末)とすることもできる。
【0024】
また、大麦の茎葉のエキスを得る方法は特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて撹拌や加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよいし、凍結乾燥や熱風乾燥、噴霧乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(エキス末)とすることもできる。
【0025】
大麦の茎葉が乾燥粉末である場合、その特性は特に限定されないが、例えば、その安息角について、20°〜80°が好ましく、30°〜70°がより好ましく、40°〜60°がさらに好ましく、45°〜55°がなおさらに好ましい。なお、安息角の測定方法は、安息角測定器(アズワン、ASK−01)を用いて、サンプル約50gを高度12cmから半径4.3cmのシャーレ中央に落下させ、次いで山型に堆積したサンプルの高さを測定し、次いでシャーレの半径及び堆積したサンプルの高さから下記式にて安息角を算出できる。
安息角=tan−1(b/a)×180÷π
(式中、a=シャーレ半径、b=堆積したサンプルの高さを表わす。)
【0026】
本発明に用いられる大麦の茎葉が乾燥粉末である場合、水不溶性食物繊維を含み得る。乾燥粉末に含まれる水不溶性食物繊維は、乾燥質量換算で20質量%以上、好ましくは30質量%以上含有することが好ましく、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜60質量%含有することがより好ましい。
【0027】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、大麦の茎葉の加工物を用い、任意の形態とすることができる。本発明のビフィズス菌増殖用組成物の形態としては、飲食などの経口摂取に適した形態、例えば、粉や顆粒、細粒等の粉末状、タブレット(チュアブル)状、球状、カプセル状、カプレット状、液状等の形状が挙げられる。尚、カプセル状の経口組成物は、ソフトカプセル及びハードカプセルが含まれる。
【0028】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、大麦の茎葉のみからなるものであってもよいが、大麦の茎葉以外に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、タンパク質、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維等の食物繊維、ミネラル類、植物又は植物加工品、藻類、乳酸菌、酵母等の微生物等を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、でんぷん等の糖類、オリゴ糖類、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、賦形剤、ビタミン類、栄養補助剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、食品添加物、調味料等を挙げることができる。これらその他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。その他の成分の含有量は、本発明のビフィズス菌増殖用組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0029】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスの増殖作用を良好とする観点から、粉末状や液体状であることが好ましい。ビフィズス菌増殖用組成物に含まれる大麦の茎葉の加工物としては、特定の加工物の形態に限定されるものではない。しかしながら、より一層高いビフィズス菌増殖効果を得る観点等から、大麦の茎葉の加工物は、茎葉の乾燥粉末、粉砕物及びその乾燥粉末、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、茎葉のエキス及びその乾燥粉末から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、粉砕物及びその乾燥粉末がより好ましい。
【0030】
本発明では、ビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスを増殖対象とする。ビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスは、ヒト由来のビフィズス菌である。近年ビフィズス菌の摂取が腸内細菌叢のバランスを改善するのに寄与するといわれている。また、ビフィズス菌は免疫賦活作用や抗アレルギー作用或いは抗ガン作用等、各種の作用を有することや、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンK、その他ビタミンB群を生成することも知られている。
【0031】
本発明で用いるビフィズス菌の入手方法としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販品を用いることができる。
【0032】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物の調製方法としては、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビフィズス菌増殖用組成物を粉末状等の固体の形態の組成物とする場合、大麦の茎葉の加工物そのものを用いることによって調製できる。
【0033】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、ビフィズス菌1質量部に対して0.1質量部以上であれば良く、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。ビフィズス菌増殖用組成物が0.1質量部以上であると、効率良くビフィズス菌を増殖させることが可能となる。
【0034】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物における大麦の茎葉の含有量としては、増殖の具体的な形態や目的等に応じて適宜選択することができるが、下限値としては、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。大麦の茎葉の含有量が、0.001質量%以上であると、効率良くビフィズス菌を増殖させることが可能となる。
【0035】
このようなビフィズス菌増殖用組成物は、以下に示す、ビフィズス菌用培地及びビフィズス菌の培養方法において好適に用いることができる。
【0036】
(ビフィズス菌用培地及びビフィズス菌の培養方法)
ビフィズス菌用培地は、ビフィズス菌増殖用組成物を含有してなり、更に必要に応じてビフィズス菌の生育に好適な成分を含有してなる。ビフィズス菌の培養方法は、ビフィズス菌用培地を用いてビフィズス菌を培養する方法である。
【0037】
ビフィズス菌増殖用組成物及びビフィズス菌用培地は、上述のビフィズス菌である、ビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスを増殖させるためのものである。
【0038】
ビフィズス菌増殖用組成物を、ビフィズス菌用培地及びビフィズス菌の培養方法に用いる場合は、無機塩類を含む溶媒に、固体の形態のビフィズス菌増殖用組成物を分散又は溶解して分散液又は溶解液等の液体の形態のビフィズス菌増殖用組成物を調製する方法等が挙げられる。この場合、任意の培地成分を溶媒に分散又は溶解するタイミングは、大麦の茎葉の加工物の溶媒への分散又は溶解と同時である必要はなく、大麦の茎葉の加工物を分散又は溶解した前、又は後のいずれであってもよい。無機塩類を含む溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられるが、これらの中でも、リン酸緩衝生理食塩水(以下「PBS」ともいう。)が好ましい。ビフィズス菌用培地における培地成分としては、ビフィズス菌増殖用組成物を含有するものであれば、特に制限はなく、通常ビフィズス菌に使用される培地の成分の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコース、オリゴ糖等の炭素源;ポリペプトン、酵母エキス、カゼイン等の窒素源;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類などのビフィズス菌の生育に好適な成分などが挙げられる。リン酸緩衝生理食塩水と大麦の茎葉の粉末を含有するビフィズス菌増殖用組成物とからなる液体培地が、好適にビフィズス菌を増殖させることができる点で好ましい。また、ビフィズス菌増殖用組成物を含む液体培地を、前培養において用いてもよく、本培養において用いてもよい。
【0039】
ビフィズス菌用培地における大麦の茎葉の好ましい含有量としては、ビフィズス菌増殖用組成物中の大麦の茎葉の好ましい含有量として上記で上げた量と同様の量を挙げることができる。
【0040】
ビフィズス菌用培地における滅菌条件としては、大麦の茎葉に変質が生じず、ビフィズス菌に用いることができる培地を滅菌できる条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、115℃〜126℃、15分間〜30分間で高圧蒸気滅菌することが好ましい。
【0041】
ビフィズス菌の培養条件(培地中のpH、溶存酸素、培養温度、及び培養時間等)としては、通常ビフィズス菌に使用される培養条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、生体内においてビフィズス菌を増殖させるものであり得る。また本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、生体外においてビフィズス菌を増殖促進させるものであってもよい。
【0043】
本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、これを用いることにより、安価かつ簡便に、ビフィズス菌を増殖させることができるので、例えば、ビフィズス菌を含有する素材等の添加物として好適に利用することができる。また、同様に、本発明のビフィズス菌増殖用組成物を含有するビフィズス菌用培地は、これを用いることにより、安価かつ簡便に、ビフィズス菌を増殖させることができるので、ビフィズス菌の培養に好適に用いることができ、安全性にも優れるため、例えば、ビフィズス菌を含有する素材等の添加物として好適に利用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。
【0045】
〔製造例1〕
原料として、出穂前に刈り取った大麦の茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕処理し、大麦茎葉の粉砕末試料を得た。
【0046】
〔実施例1〕
製造例1で得られた大麦の茎葉の粉砕末試料について、生体内でのビフィズス菌増殖効果のモデル試験として、以下の増殖試験を実施した。大麦の茎葉の粉砕末試料の増殖対象として、ビフィドバクテリウム・ロンガムを用いた。これに対し、製造例1で得られた粉砕末試料を、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)の増殖に用いた例を比較例とした。
【0047】
<ビフィズス菌増殖試験>
(ビフィズス菌用の粉砕末試料入り培地の作製)
製造例1で得られた大麦の茎葉の乾燥粉砕末試料0.1gを試験管に量りとり、食品衛生検査指針に準じて作製したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mLで懸濁させた。これをオートクレーブにて121℃、20分の条件で滅菌し、ビフィズス菌用培地を得た。
【0048】
(ビフィズス菌の前培養)
ビフィズス菌(白色微粉末)の乾燥菌体約10mgを試験管にとり、MRS Broth(MERCK社製)10mLで懸濁させ、37℃で約24時間嫌気培養した。
【0049】
(ビフィズス菌の本培養)
「ビフィズス菌の前培養」で得られた懸濁液を10000倍まで段階希釈した希釈液0.1mLを、「ビフィズス菌用の粉砕試料入り培地の作製」で得られたビフィズス菌用培地10mLに添加したものを2セット用意し、一方は希釈液添加時点のものを静置培養開始時点(0時間)の培養液とした。他方は37℃、24時間の条件で、嫌気条件下で静置培養を行い、静置培養終了時点(24時間)の培養液とした。
【0050】
(ビフィズス菌の菌数測定)
「ビフィズス菌の本培養」で得られた、静置培養0時間及び24時間の培養液それぞれから、ビフィズス菌のDNAを採取し、リアルタイムPCR法にて菌数測定を行った。上記各培養液から、ビフィズス菌のDNAを、DNA抽出キット(Takara製)で抽出し、得られたDNAを鋳型DNAとした。これにビフィズス菌特異的プライマーを用いてリアルタイムPCRにてビフィズス菌の検出を行った。PCRコンディションは95℃5秒、60℃30秒で40サイクルとした。PCR反応液は、2×PCR Buffer(Takara社製)を5μL 、各プライマー(濃度:10pmol/μL)を0.8μL、鋳型DNA0.8μL、滅菌水3μLとした。プライマーとしては、後述する配列のものを用いた。ビフィズス菌の菌数は既知の菌数の各ビフィズス菌をスタンダードとして定量した。具体的には、増殖対象のビフィズス菌を、菌濃度を1.4×10
9CFU/mLから1.0×10
5CFU/mLまでの4段階に希釈したものを上記と同様にDNA抽出してリアルタイムPCRにより増幅した増幅産物量を測定することにより検量線を作成した。結果を下記表1に示す。
【0051】
プライマーの配列:
Bifidobacterium属
Foward :TCGCGTCYGGTGTGAAAG(配列表に記載の配列1)
Reverse :CCACATCCAGCRTCCAC(配列表に記載の配列2)
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す結果から、本発明の製造例1である大麦の茎葉の粉砕末を用いてビフィズス菌を培養すると、比較例であるビフィドバクテリウム・ブレーベは1.60倍の増殖率であるのに対してビフィドバクテリウム・ロンガムは813.87倍と高い増殖率であり、ビフィドバクテリウム・ロンガムは大麦の茎葉の粉砕末を用いることで良好に増殖することがわかった。
【0054】
〔実施例2〕
製造例1で得られた大麦の茎葉の粉砕末試料について、大麦の茎葉の粉砕末試料の増殖対象として、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスを、比較例としてビフィドバクテリウム・ブレーベを用い、ビフィズス菌の本培養における静置培養時間を72時間とした以外は実施例1と同様にして、生体内でのビフィズス菌増殖効果のモデル試験を実施した。結果を下記表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示す結果から、本発明の製造例1である大麦の茎葉の粉砕末を用いてビフィズス菌を培養すると、比較例であるビフィドバクテリウム・ブレーベは1.56倍の増殖率であるのに対してビフィドバクテリウム・アドレセンティスは30.67倍と高い増殖率であり、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスは大麦の茎葉の粉砕末を用いることで良好に増殖することがわかった。
【0057】
以上より、ビフィズス菌増殖用組成物として大麦の茎葉を用いることで、特定のビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ロンガム及びビフィドバクテリウム・アドレセンティスが良好に増殖することがわかった。
【課題】特定のビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、及び、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)について、簡便かつ安価に増殖させることができ、しかもその増殖促進効果が高い組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の組成物は、前記のビフィズス菌を増殖させるためのビフィズス菌増殖用組成物であって、大麦の茎及び/又は葉の粉砕物及び/又はその乾燥粉末を含有する。