特許第6089169号(P6089169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089169
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】輸液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20170227BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20170227BHJP
   G01F 1/20 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
   A61M5/168 532
   A61M5/172
   A61M5/168 510
   A61M5/168 550
   !G01F1/20 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-84894(P2013-84894)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-204897(P2014-204897A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年4月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石坂 欣也
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1992/017227(WO,A2)
【文献】 国際公開第1996/014892(WO,A2)
【文献】 特開平02−038816(JP,A)
【文献】 米国特許第04533350(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/172
G01F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と受光素子とを含む滴落検知器を含み、点滴筒内を滴落する点滴が通過する水平面位置に対向して前記発光素子と前記受光素子とが配置されており、前記発光素子と前記受光素子とが作る複数の光軸が前記点滴筒内の前記水平面をスキャニングする機能を持ち、前記点滴が前記発光素子と前記受光素子間を通過するあいだに1回以上のスキャンニングを行うことが可能であり、
前記滴落検知器は、前記発光素子と前記受光素子とを、各々複数含み、
各スキャンニングにおいて、それぞれの素子を独立した組み合わせで順次受発光させて、前記受光素子が受けた各光軸の受光電圧を得、障害物を通過していない光軸を受光した受光素子から得られる受光電圧を基準として、前記基準よりも低い受光電圧の光軸がある場合は、前記低い受光電圧の光軸の存在をもって、点滴及び前記点滴が繋がった連続流を検知する、輸液ポンプ。
【請求項2】
前記輸液ポンプは、点滴筒内に連続流が発生した場合に警報を発生する警報発生部を含む、請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の輸液ポンプを用いた点滴及び前記点滴が繋がった連続流の検出方法であって、
各スキャンニングにおいて、それぞれの素子を独立した組み合わせで順次受発光させて、前記受光素子が受けた各光軸の受光電圧を得、障害物を通過していない光軸を受光した受光素子から得られる受光電圧を基準として、前記基準よりも低い受光電圧の光軸がある場合は、前記低い受光電圧の光軸の存在をもって、点滴及び前記点滴が繋がった連続流を検知する、点滴及び前記点滴が繋がった連続流の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液セットの点滴筒内を落下する連続流の検知が可能な輸液ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプは、薬液等を正確に持続輸液できる装置として、医療分野で広く使用されている。その際輸液ポンプに取り付けられ患者に接続する輸液セットは、滅菌されたディスポーザブル品であり、輸液セットの入口部分には流量を目視確認できる様に点滴筒が設けられている。
【0003】
輸液ポンプの流量制御方法は主に2種類有り、その一つの点滴数制御は、点滴筒から落下(滴落)する点滴を検知し、単位時間当たりの点滴数を設定値に合わせるようにモータの回転速度をフィードバック制御する。もうひとつの制御方法として容量制御があり、輸液セットの特性に合わせモータの回転速度を一定に維持し流量制御している。
【0004】
医療において輸液の処置は、体内に薬剤等を注入する行為であるため、患者に与えるリスクが高いとされている。その為、輸液の処置を行う輸液ポンプも医療機器の中でリスクの高いレベルに分類され、その安全性を確保するシステムとして滴落検知器がある。
【0005】
滴落検知器は点滴筒内を滴落する点滴を捉え、輸液ポンプ本体にその滴落タイミングを送信する。輸液ポンプは設定された流量と、滴落タイミングから求められた単位時間あたりの滴数を比較し、流量の制御や警報発生を行う。
【0006】
輸液セットに備えられている点滴筒には20滴/mLと60滴/mLの物があり、20滴/mLの点滴筒は20個の滴落で約1mLとなるような点滴口(ノズル)が取り付けられている。同様に、60滴/mLの点滴筒は60個の滴落で約1mLとなるような点滴口(ノズル)が取り付けられている。滴落検知器を備えた輸液ポンプは、この滴落を確実に捉えることが流量制御や流量監視の安全性を確保する為に重要な性能となる。
【0007】
滴落検知器の点滴検知は、点滴通過位置に対向して発光素子・受光素子を配置することで、点滴通過時に光の屈折や遮光により受光素子に入る光量の変化を利用し、受光素子の電圧変化で検知している。
【0008】
点滴の滴落は流量が早くなるに連れて滴間隔が狭くなり、最終的に滴がつながり連続流となる。この時点で点滴口(ノズル)より落下する流体の形は、一本の円柱形となる。
【0009】
連続流によって作られたこの円柱が発光素子と受光素子の間にある状態は、受光素子に入る光量の時間的変化が発生しないため、滴落検知器は点滴として検知できない。よって、この状態は、輸液の流れていない状態と同一とポンプ本体は判断してしまう。
【0010】
特許文献1、2ともに点滴筒内を滴落する点滴1滴の容量を知る為に、その滴の形状を受光側の検知器にて測定し容量計算する方法を示した特許である。点滴筒内を落下する連続流については分割された部分が無い為、これらの特許文献1、2では検知することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−62371号公報
【特許文献2】特開平8−229119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、輸液流量が早くなることにより点滴が連続流となった時、輸液ポンプは液が流れていない状態と区別できなくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、点滴筒26に対し水平方向に発光素子23・受光素子24を配置し、点滴筒内の水平面に複数の光軸を向けスキャニングすることで、滴落する点滴を位置情報として捉えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の滴落検知器1は、点滴筒の点滴口(ノズル)27から落下する滴落を、対向する発光素子23・受光素子24間を通過する時間情報ではなく、位置情報として捉えるため、輸液流量の早い場合に生じる連続流25も検知可能となる。よって、輸液が高速で流れてしまう異常流量(フリーフロー等)の検知が可能であり、警報を発生させ事故を未然に防ぐことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は輸液ポンプの制御の流れを示した動作説明図である。
図2図2は輸液ポンプに輸液セットと滴落検知器を取り付けた図である。
図3図3は点滴検知のための発光素子・受光素子の検知高さ示した側面図である。
図4図4図3の検知位置水平断面図で、発光素子・受光素子を水平面に複数個配置した図である。(実施例1)
図5図5は1個の発光素子から受光素子に向けた光軸を示した説明図である。(実施例1)
図6図6は発光素子が全て動作した時点の全ての光軸を示した説明図である。(実施例1)
図7図7は各光軸に対する受光素子の出力電圧を、光軸上に障害物の無い基準電圧31と障害物のあるときの出力電圧32を比較した説明図である。(実施例1)
図8図8は発光素子の光軸を、機械的にスキャンニングする構造とした場合の説明図である。(実施例2)
図9図9は実施例2の受光素子電圧を示した説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0016】
滴落検知器内部の発光素子23・受光素子24を、点滴筒を挟む形で水平面内に複数個対向させ配置する。それぞれの素子を独立した組み合わせで順次受発光することで、滴落検知器を通過する点滴又は連続流25が、どの受発光の組み合わせを通過しているか検知でき位置情報として検出することができる。
【実施例1】
【0017】
図3は、本発明の実施例1である滴落検知器1の発光素子23・受光素子24の配置を示した図である。点滴が通過する位置28で、点滴筒を挟む様に発光素子・受光素子を対向させ配置する。
【0018】
発光素子23a〜23e受光素子24a〜24eは図4の水平断面図の状態で複数個ずつ配置し、それれの素子が独立して動作するようなシステムとして構成する。
【0019】
図5水平断面図の発光素子23aを発光させた時、受光素子24a〜24eまで順次動作させ、発光素子23aにより作られた光軸23a-a〜23a-eの光量を測定する。
【0020】
23a-a〜23a-eの光量を測定後、発光素子23aを停止し次に発光素子23bを発光させ、同様に受光素子24a〜24eまで順次動作させ、発光素子23bにより作られた光軸の光量を測定する。この動作を発光素子23eまで繰り返し、光軸23a-a〜23e-eまで25個の光量データを蓄える。なお、光軸23a-a〜23e-eまでの光量データは、点滴が光軸を通過するよりも十分に短い時間で取得する。
【0021】
点滴筒26の点滴口(ノズル)27から流れ出る点滴あるいは連続流25の検知は、それらが光軸上にある場合、光を屈折や遮光させる為光軸データ23a-a〜23e-eが変化する事を利用して行う。
【0022】
具体的には、光軸上に障害となる物が何もない場合、各発光素子23a〜23e受光素子24a〜24eの特性を考慮し光量による出力電圧を補正し、基準31となる一定出力電圧とする。点滴や連続流が光軸上にある場合32、その受光電圧が他の光軸より低下する事で検知する。
【実施例2】
【0023】
図8の実施例は、滴落検知器内部の発光素子23が水平方向に光軸を機械的に回転角度35で回転することのできる構造を持ち、受光素子24はその回転する光軸をすべて検知できる受光面34を持っている。
【0024】
発光素子23から出る光軸33が受光面34を一回スキャンニングする時間は、点滴が光軸を通過するよりも十分に短い時間で最低1スキャンニングを終了する必要がある。受光素子から得られる出力電圧36は、光軸が点滴または連続流を通過する際に、屈折や遮光により急激に低下する。この電圧を微分することで、変化の大きい部分を抽出し、点滴または連続流の有無を判定する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
滴落検知器を備えた輸液ポンプが、本特許の連続流を検知可能な機能を有した場合、使用者のミスや装置の不具合で滴落が連続流となるような異常状態が検知可能となり、警報を発生し医療過誤を未然に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0026】
1 滴落検知器
2 輸液セット(点滴筒)
3 輸液ポンプ
4 表示部
5 設定値入力部
23 発光素子
23a-a〜23e-e 光軸
24 受光素子
25 点滴筒20滴/mLの連続流
26 点滴筒
27 点滴口
28 滴落検知位置
31 障害物のない場合の受光電圧
32 点滴又は連続流のある場合の受光電圧
33 光軸
34 受光面
35 回転角度
36 受光素子から得られる出力電圧
40 発光部
42 滴落受光部
43 滴落検知部
44 設定値入力部・制御部
45 ポンプ各設定項目入力
46 モータ駆動部
47 モータ
48 装液部
49 警報発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9