【実施例】
【0016】
図1は本発明の一実施例としての熱交換器20の構成の概略を示す構成図であり、
図2は熱交換器20を
図1のB側から見たときの構成の概略を示す構成図であり、
図3は熱交換器20を
図1のC側から見たときの構成の概略を示す構成図である。実施例の熱交換器20は、積層した熱交換用チューブ30の内側に流れる水などの熱交換媒体と隣接する熱交換用チューブ30の間に流れる空気などの被熱交換媒体との熱交換により、熱交換媒体を被熱交換媒体より冷却または加熱する熱交換器として構成されており、図示するように、複数の熱交換用チューブ30を積層した積層体の上面,下面,両側面に上面プレート22a,下面プレート22b,側面プレート24a,24bを取り付け、積層体に形成される流入用流路42に流入管26を取り付け、積層体に形成される流出用流路44に連絡管50を挿入し、上面プレート22aの流入管26とその近傍を除く上面に流出用部材60を取り付けて、構成されている。実施例では、熱交換器20が発光ダイオードを用いた劇場用スポットライト装置に発光ダイオードを冷却するために組み込まれ、熱交換媒体としては冷却水を用い、被熱交換媒体としては外気(空気)を用いた場合を具体例として説明する。
【0017】
図4は熱交換用チューブ30の構成の概略を示す構成図であり、
図5は熱交換用チューブ30の
図4におけるD−D断面を示す断面図であり、
図6は熱交換用チューブ30の
図4におけるE−E断面を示す断面図である。熱交換用チューブ30は、厚みが0.1mmのステンレス材料による板材や0.2mmのアルミニウム材料による板材に折り曲げ加工や孔開け加工などを施して基本的には外周にフィン33が取り付けられた凹形の流路形成部32として形成された一対のチューブ部材31を向かい合うよう配置し、フィン33などの当接する部位をろう付けなどを用いて接合することによって構成されている。実施例では、厚みが0.2mmのアルミニウム材料による板材を用いて、長さが120mm,幅が16mm,厚みが1.8mmの熱交換用チューブとした。
【0018】
熱交換用チューブ30の扁平面の長手方向の一端(
図4中左側)にはフランジ部36aが形成された貫通孔36bが形成されており、熱交換用チューブ30の扁平面の長手方向の他端(
図4中右側)にはフランジ部37aが形成された貫通孔37bが形成されている。この貫通孔36a,37aは、各チューブへの冷却水(熱交換媒体)の流入口と流出口を構成すると共に、熱交換用チューブ30を積層して熱交換器20を構成したときに、積層方向にそれぞれ連通して冷却水(熱交換媒体)の流入用流路42,流出用流路44を形成する。なお、実施例では、貫通孔36bについて直径6mmの円孔とし、貫通孔37bについては直径8mmの円孔とした。
【0019】
熱交換用チューブ30を構成するチューブ部材31の長手方向の中央にはリブ34が形成されている。このリブ34は、一対のチューブ部材31の接合部をなし、冷却水(熱交換媒体)の圧力などによるチューブの変形(膨らみ)を抑制する。また、チューブ部材31には、リブ34の両側に外側に凸となるエンボス35a〜35fが等間隔となるよう形成されている。このエンボス35a〜35fは、隣接する熱交換用チューブ30のエンボス35a〜35fと当接することにより、冷却水(熱交換媒体)の圧力などによるチューブの変形を抑制する。
【0020】
図7は、熱交換用チューブ30のフランジ部37a近傍を連絡管50と共に拡大して示す拡大図である。熱交換用チューブ30のフランジ部37aには、3つの凸形の位置決め部38a〜38cが形成されており、連絡管50が挿入されたときに連絡管50に当接してその位置決めを行なう。
【0021】
図8は連絡管50の構成の概略を示す構成図であり、
図9は連絡管50を
図8のF側からみたときの構成の概略を示す構成図である。連絡管50は、ステンレス材料やアルミニウム材料により熱交換器20を構成したときに下端が下面プレート22bに当接すると共に上端が流出用部材60の箱体の天井に当接する長さの円管として形成されており、下端には長さL1に亘って断面が半円状となるよう流入部52が形成されていると共に、上端には長さL2に亘って断面が半円状となるよう流出部56が形成されている。流入部52の長さL1は、例えば、熱交換用チューブ30の厚みの数倍程度とするのが好ましく、実施例では、熱交換用チューブ30の厚み1.8mmの約5倍の10mmとした。流出部56の長さL2については後述する。また、連絡管50の流入部52より下側であって、熱交換器20を構成したときに上面プレート22aに当接する最上に位置する熱交換用チューブ30やその近傍、即ち、流出用流路44の流出口近傍の位置に貫通孔としての流入孔54が形成されている。この流入孔54は、空気が流入することができる程度の径を有する必要があり、実施例では直径3mmの円孔とした。
【0022】
流出用部材60は、
図1や
図2に示すように、ステンレス材料による板材やアルミニウム材料による板材により箱体として形成されており、
図1の裏面側の略中央に流出管64を備える。
図10は、流出用部材60を
図3におけるG−G断面から見た断面図である。流出管64は、一端が流出用部材60の箱体から延出するように、且つ、他端が流出用部材60の箱体の内側に当接するように取り付けられており、略中央から他端側(図中右側)は、長さL5に亘って断面が半円状となるよう形成されている。このため、流出管64の箱体内部の開口部66は箱体の内部の約中央となる。実施例では、流出用部材60の連絡管50に沿った長さ(
図10における長さL3)を30mmとし、流出管64に沿った長さ(
図10における長さL4)を30mmとした。
【0023】
連絡管50の流出部56の長さL2について説明する。流出部56の長さL2は、流出用部材60の内部の気体(例えば、空気)が連絡管50を介して下面プレート22b近傍の熱交換用チューブ30に逆流しないように、流出用部材60の長さL3の半分程度が好ましい。実施例では、流出部56の長さL2として、流出用部材60の連絡管50に沿った長さL3の半分より若干長い18.5mmとした。また、実施例では、厚さ1.8mmの熱交換用チューブ30を65個積層するものとし、上面プレート22aと下面プレート22bとを厚さ1.5mmとし、連絡管50の長さを147mmとした。即ち、実施例の熱交換器20は、劇場用スポットライト装置に組み込まむため、
図1において、高さが150mm、幅が120mm、厚み(
図2における横幅)が30mmの小型の熱交換器とした。
【0024】
次に、実施例の熱交換器20の機能について説明する。いま、実施例の熱交換器20が発光ダイオードを用いた劇場用スポットライト装置に組み込まれ、
図1の手前または裏面側にファンが取り付けられた場合を考える。発光ダイオードを冷却した冷却水は発光ダイオードによって加熱された状態で流入管26から熱交換器20に流入する。冷却水は、流入用流路42から各熱交換用チューブ30に流入し、外気との熱交換により冷却されて流出用流路44に流出し、その多くは流出用流路44における連絡管50の外側の流路を通って流出用部材60に流れ込み、流出管64から流出して、再び発光ダイオードの冷却に用いられる。劇場用スポットライト装置は、スポットライトを当てる対象の動作や対象の変更により水平方向への回転だけでなく垂直方向へも回転する。このため、冷却水の加熱により気化した空気や外部から僅かに混入した空気は、熱交換器20の姿勢にもよるが、熱交換器20の下面プレート22b近傍(
図1における下端近傍)の熱交換用チューブ30や上面プレート22a近傍(
図1における上端近傍)の熱交換用チューブ30に溜まる。実施例の熱交換用チューブ30では、下面プレート22b近傍の熱交換用チューブ30に溜まる空気は、連絡管50の流入部52から連絡管50の内側に流入して流出用部材60に運ばれる。また、上面プレート22a近傍の熱交換用チューブ30に溜まる空気は、連絡管50の流入孔54から連絡管50の内部に流入して流出用部材60に運ばれる。このため、空気が熱交換用チューブ30に溜まってチューブ内の冷却水の良好な流れが阻害されることによる熱交換能力の低下を抑制することができる。流出用部材60に溜まった空気は、流出管64の開口部66が流出用部材60の箱体の約中央に配置されるから、流出用部材60の内容量の約半分程度に至るまで流出管64からは流出しない。このため、空気が混入した冷却水が発光ダイオードの冷却に用いられた後に熱交換器20に戻ってくることによって混入した空気によって熱交換用チューブ30内の冷却水の良好な流れが阻害されるのを回避することができる。
【0025】
以上説明した実施例の熱交換器20によれば、熱交換用チューブ30を積層して形成される冷却水(熱交換媒体)の流出用流路44の内側に、下面プレート22bに当接する端部を流入部52として形成した連絡管50を設置することにより、下面プレート22b近傍の熱交換用チューブ30に溜まった空気を連絡管50を介して流出用部材60に流出することができる。この結果、冷却水の加熱により気化した空気や外部から僅かに混入した空気が下面プレート22b近傍の熱交換用チューブ30に溜まって冷却水(熱交換媒体)の良好な流れが阻害されるのを抑制することができ、熱交換器20の熱交換能力が低下するのを抑制することができる。しかも、連絡管50の上面プレート22aが取り付けられた熱交換用チューブ30の位置やその近傍の位置に流入孔54を形成したので、上面プレート22a近傍の熱交換用チューブ30に溜まった空気を連絡管50を介して流出用部材60に流出することができる。この結果、冷却水(熱交換媒体)の加熱により気化した空気や外部から僅かに混入した空気が上面プレート22a近傍の熱交換用チューブ30に溜まって冷却水(熱交換媒体)の良好な流れが阻害されるのを抑制することができ、熱交換器20の熱交換能力が低下するのを抑制することができる。
【0026】
また、実施例の熱交換器20によれば、流出用流路44の流出口や連絡管50の流出部56を含むように流出用部材60を取り付け、流出管64の開口部66を流出用部材60の箱体の内部の約中央に配置することにより、流出用部材60に溜まった空気の容量が流出用部材60の内容量の約半分程度に至るまでは、流出用部材60に溜まった空気が流出管64から流出するのを抑止することができる。このため、空気が混入した冷却水が流出管64から流出して熱交換器20に戻ってくることにより、混入した空気によって熱交換用チューブ30内の冷却水の良好な流れが阻害されるなどの不都合を回避することができる。
【0027】
更に、実施例の熱交換器20によれば、熱交換用チューブ30のフランジ部37aに連絡管50が挿入されたときに連絡管50に当接するように3つの凸形の位置決め部38a〜38cを形成したので、連絡管50の位置決めを容易に行なうことができ、連絡管50の組み付け性を良好なものとすることができる。
【0028】
また、実施例の熱交換器20によれば、連絡管50を熱交換器20を構成したときに下端が下面プレート22bに当接すると共に上端が流出用部材60の箱体の天井に当接する長さとして形成したから、連絡管50の組み付けを容易なものとすることができる。また、流出用部材60の流出管64を、一端が流出用部材60の箱体から延出すると共に他端が流出用部材60の箱体の内側に当接する長さとして形成したから、流出管64の組み付けを容易なものとすることができる。
【0029】
実施例の熱交換器20では、連絡管50の上面プレート22aが取り付けられた熱交換用チューブ30の位置やその近傍の位置に流入孔54を形成するものとしたが、こうした流入孔54は1つに限られず、複数個形成するものとしてもよいし、こうした流入孔54を形成しないものとしてもよい。
【0030】
実施例の熱交換器20では、連絡管50を熱交換器20を構成したときに下端が下面プレート22bに当接すると共に上端が流出用部材60の箱体の天井に当接する長さとして形成するものとしたが、連絡管50の上端が流出用部材60の内部に到達していればよいから、連絡管50は、上端が流出用部材60の箱体の天井に当接する長さとして形成されていないものとしてもよい。
【0031】
実施例の熱交換器20では、熱交換用チューブ30のフランジ部37aに連絡管50に当接するように3つの凸形の位置決め部38a〜38cを形成するものとしたが、連絡管50に当接してその位置決めができればよいから、2つの凸形の位置決め部や4つ以上の凸形の位置決め部を形成するものとしてもよい。また、連絡管50の位置決めができればよいから、積層した全ての熱交換用チューブ30のフランジ部37aに位置決め部を形成する必要はなく、一部の熱交換用チューブ30のフランジ部37aに位置決め部が形成されているものとしてもよい。さらに、積層した全ての熱交換用チューブ30のフランジ部37aに位置決め部を形成しないものとしてもよい。この場合、上面プレート22aや下面プレート22bに位置決め部を形成するものとしてもよい。
【0032】
実施例の熱交換器20では、流出用部材60の流出管64を、一端が流出用部材60の箱体から延出すると共に他端が流出用部材60の箱体の内側に当接する長さとして形成するものとしたが、流出管64の他端は流出用部材60の箱体の内側に当接する長さとして形成されていないものとしてもよい。
【0033】
実施例の熱交換器20では、熱交換用チューブ30の積層体に流出用部材60を取り付けるものとしたが、こうした流出用部材60を備えないものとしてもよい。この場合、熱交換媒体の流路のうち熱交換用チューブ30の積層体から離れた位置に流出用部材60に相当する空気溜めを設けるのが好ましい。
【0034】
実施例の熱交換器20では、熱交換器20が発光ダイオードを用いた劇場用スポットライト装置に発光ダイオードを冷却するために組み込まれた場合を具体例としたが、熱交換器20は劇場用スポットライト装置以外の装置や設備に組み込まれるものとしてもよい。
実施例の熱交換器20は、水平方向や垂直方向に回転する装置や設備に組み込まれたときに、特にその機能を発揮する。
【0035】
実施例の熱交換器20では、熱交換用チューブ30としてリブ34やエンボス35a〜35fを形成するものとしたが、これらを備えないものとしてもよい。また、熱交換用チューブ30の表面やフィン33に波状の凹凸を形成するものとしてもよいし、熱交換用チューブ30の間にフィンを取り付けるものとしてもよい。
【0036】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、熱交換用チューブ30が「熱交換用チューブ」に相当し、流入用流路42が「流入用流路」に相当し、流出用流路44が「流出用流路」に相当し、連絡管50が「連絡管」に相当する。また、流出用部材60が「流出用部材」に相当する。
【0037】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。