【実施例】
【0011】
図1は、フライアッシュの加熱焼成装置2を含む加熱改質システム1の構成を示すブロック図である。
【0012】
フライアッシュの加熱改質システム1は、フライアッシュ原粉に含有されている未燃カーボンを加熱し燃焼させることによりフライアッシュの改質を行う加熱焼成装置2と、投入されたフライアッシュ原粉を貯留するフライアッシュ貯留器3と、貯留されているフライアッシュ原粉を加熱焼成装置2に定量的に供給する定量供給装置4と、加熱焼成装置2で改質された高温のフライアッシュを冷却する冷却設備5と、加熱燃焼処理時に加熱焼成装置2が排出する排気ガスに含まれる塵等を除去する除塵装置6と、除塵装置6で塵等が除去された排気ガスを加熱改質システム1外に排出する排気装置7と、を備えている。
【0013】
尚、加熱焼成装置2は、誘導加熱により未燃カーボンを加熱する電力加熱装置8(加熱装置)と、未燃カーボンを燃焼させる炭素高温酸化炉9(燃焼炉)とを備えている。
また、フライアッシュ原粉は、シリカ(SiO2)が主成分であり、アルミナ(Al2O3)が含まれていても良い。
【0014】
<フライアッシュ貯留器>
フライアッシュ貯留器3は、軸心が上下方向を向いた内部が中空の筒状で、上端に投入口3cが設けられ、当該筒状の下部は下方に向かって縮径し、当該筒状の下部下端には、連結口3aを下端に備えた連結管3bが連結されている。そして、連結口3aを介して、フライアッシュ貯留器3は、定量供給装置4の供給管17に連結されている。
【0015】
フライアッシュ貯留器3は、投入口3cに投入されたフライアッシュ原粉を貯留し、重力落下により連結口3aから定量供給装置4へフライアッシュ原粉を供給する。これにより、フライアッシュ貯留器3は、フライアッシュ原粉を原料とする原料ホッパーとして機能する。
【0016】
フライアッシュ貯留器3は、予熱装置10を備えている。
予熱装置10は、炭素高温酸化炉9の排気ガス口9aに一端が連結されて排気ガスを吸引する余熱供給パイプ13と、この余熱供給パイプ13の他端に連結されてフライアッシュ貯留器3の近接位置で前記排気ガスを循環させる環状の余熱循環パイプ11と、余熱循環パイプ11に一端が連結されて前記排気ガスを他端の除塵装置6へ排出するための排出パイプ14と、排出パイプ14の途中に設けられて排気ガスの排気の実行/停止を切り替えるコントロール弁16と、余熱循環パイプ11で循環する排気ガスの温度を検知して前記コントロール弁16による排気の実行/停止の切り替え信号とする温度センサ15と、を備えている。
【0017】
これにより、炭素高温酸化炉9の排気ガス口9aから余熱供給パイプ13を通じて200℃以上の高温の排気ガスの供給を受け、この高温の排気ガスをフライアッシュ貯留器3の近傍で余熱循環パイプ11により循環させてフライアッシュ貯留器3内のフライアッシュ原粉を予熱し、余熱循環パイプ11内の排気ガスの温度が予め設定された所定温度にまで低下するとコントロール弁16により弁を開いて排出パイプ14から排気ガスを除塵装置6へ排出する。排気ガスの排出により余熱循環パイプ11の排気ガスが減少するに伴って余熱供給パイプ13から200℃以上の高温の排気ガスが供給され、低下していた余熱循環パイプ11内の排気ガスの温度が高温となって所定温度に維持される。
【0018】
尚、所定温度は、この実施例では、200℃に設定されているが、200℃に限るものではない。
最終的に、余熱循環パイプ11から排出された低温の排気ガスは、除塵装置6を介して、排気装置7から加熱改質システム1外に排出される。
【0019】
<定量供給装置>
図2に示すように、定量供給装置4は、円筒状で、軸心が略水平方向を向いている供給管17と、供給管17の軸心上に配置され軸回りに回転可能なシャフト18と、シャフト18の外周面に周設されシャフト18と共に回転することにより供給管17内部において予熱されたフライアッシュ原粉を搬送するスクリュー19と、シャフト18を軸回りに回転駆動させる駆動装置20とを備えている。
【0020】
供給管17は、その後端が電力加熱装置8に設けられている加熱処理管21の一端のフランジ21dにフランジ17dで連結されている。すなわち、供給管17と加熱処理管21は、内径が同径で連結口17aを介して一直線に連結されている。供給管17の前段側周壁には、上面に流入口17bが開口され、当該開口にフライアッシュ貯留器3の連結口3aが連結されている。供給管17の前端は、封止板17cにより封止されている。
【0021】
シャフト18は、封止板17cを貫通して一端が供給管17の連結口17a付近まで到達するよう配置されている。封止板17cから供給管17の外方に突出したシャフト18は、供給管17の外部で、シャフト18が挿通する一対の軸受け20a、20bにより、回転可能に支持されている。
【0022】
スクリュー19は、螺旋状の羽根で、シャフト18と共に、供給管17の径方向内側に収容されている。尚、スクリュー19の外径やピッチは、予熱されたフライアッシュ原粉の性状や押し出し量により適宜選定される。
【0023】
駆動装置20は、電動モータ20gと、電動モータ20gの回転軸20fに取り付けられている駆動用スプロケット20cと、シャフト18の後端に取り付けられている従動用スプロケット20dと、駆動用スプロケット20cと従動用スプロケット20dとを連結するチェーン20eとを備えている。これにより、電動モータ20gの回転力は、回転軸20fを介して、駆動用スプロケット20cに伝達され、さらに、チェーン20eを介して、従動用スプロケット20dに伝達され、最後に、従動用スプロケット20dが取り付けられたシャフト18に伝達される。
【0024】
この構造により、シャフト18に伝達される電動モータ20gからの回転力により、スクリュー19は、供給管17内部においてシャフト18と共にシャフト18の軸回りに回転する。他方、フライアッシュ貯留器3に貯蔵されている予熱されたフライアッシュ原粉は、重力により、供給管17の前段側周壁に開設された流入口17bを介して、供給管17の前段に供給され、隙間なく詰まった状態となる。供給管17の前段に供給された予熱されたフライアッシュ原粉は、スクリュー19により、隙間なく詰まった状態のまま供給管17の後方側に徐々に送り出される。そして、供給管17の後端にまで送り出された予熱されたフライアッシュ原粉は、連結口17aを介して、電力加熱装置8の加熱処理管21に供給される。
【0025】
また、予熱されたフライアッシュ原粉が移動した後の供給管17の前段には、後続の予熱されたフライアッシュ原粉がフライアッシュ貯留器3から重力落下して連続して供給され、隙間なく詰まった状態が維持される。このため、電動モータ20gの回転数を所定の値に一定に制御することで、予熱されたフライアッシュ原粉を単位時間当たり所定の一定量で電力加熱装置8に連続して供給できる。尚、隙間なく詰まっているとは、フライアッシュ原粉中の隣り合う粒子間の微小な隙間さえも無いということではなく、隣り合う粒子同士が接触して重なり合っている状態であることを指す。なお、供給管17およびその後段の加熱処理管21内においてフライアッシュ原粉が隙間なく詰まった状態とは、内部空間の半分以上詰まっている状態とすることができ、7割以上詰まっている状態とすることが好ましい。
【0026】
<加熱焼成装置>
加熱焼成装置2は、フライアッシュ原粉(特に内部に含まれている未燃カーボン)を加熱する電力加熱装置8(加熱装置)と、未燃カーボンを燃焼させる炭素高温酸化炉9(燃焼炉)とを備えている。
【0027】
<電力加熱装置>
電力加熱装置8は、加熱処理管21と、誘導コイル22と、高周波誘導加熱電源(高周波インバータ)23と、誘導コイル22と高周波誘導加熱電源23との間に接続された高周波変換器フィーダ24と、高周波誘導加熱電源23の出力をコンピュータ制御する制御装置25と、加熱処理管21に取り付けられ温度の測定をする温度センサTSと、を備えている。
【0028】
加熱処理管21は、軸心が略水平方向を向いた内部が中空の円筒状である。加熱処理管21の円筒状の内径は、200ミリメートル以下とすることができ、100ミリメートル以下が好ましく、この実施例では100ミリメートル以下に構成されている。尚、加熱処理管21を、円柱状の中心軸を内部に備えた円筒状としてもよい。この場合、加熱処理管21における円筒状の内周面と中心軸表面との距離(半径方向距離)を100ミリメートル以下とすることができ、50ミリメートル以下とすることが好ましい。加熱処理管21の円筒状の両端には、フランジ21d、21eが設けられている。加熱処理管21の前端のフランジ21dは、定量供給装置4の供給管17に連結され、加熱処理管21の後端のフランジ21eは、炭素高温酸化炉9の投入部30に連結されている。供給管17と加熱処理管21と投入部30とは、管の内径が同一であり、軸心がつながるように一直線上に配置接続されている。加熱処理管21は、鉄を多く含んだ炭素材で作製されている。尚、加熱処理管21は、最低でも発火温度(自燃温度)である600℃の耐熱性のある磁性体金属で作製するのが好ましい。また、加熱処理管21の内面は、凹凸を設ける必要はなく、フライアッシュ原料が滑り動くような表面粗さの細かいもので良い。こうすることで、フライアッシュ原粉をスムーズに移動させつつ加熱することができる。なお、加熱処理管21の内面は、鏡面のようにまで磨いた表面でなければ、若干の凹凸があってもよい。
【0029】
誘導コイル22は、加熱処理管21の外周に巻き付けるように設けられている。誘導コイル22は、前段から後段に向かって複数段階に設けられ、この実施例では、前段コイル22a、中段コイル22b、及び後段コイル22cの3つのコイルで構成されている。そして、前段コイル22aは、加熱処理管21の前段部21aに巻かれ、中段コイル22bは、加熱処理管21の中段部21bに巻かれ、後段コイル22cは、加熱処理管21の後段部21cに巻かれている。
【0030】
また、温度センサTSは、各段の誘導コイル22に対応して夫々1つずつ設けられ、この実施例では、加熱処理管21の前段部21a、中段部21b、及び後段部21cに、温度センサTS1,TS2、及びTS3が、夫々設けられている。そして、温度センサTS1,TS2、及びTS3が測定し得られた各測定温度のデータは、制御装置25に取得される。
【0031】
高周波誘導加熱電源23は、高周波の交流電流を出力することのできる電源である。高周波誘導加熱電源23が出力する高周波は、20kHz〜200kHzとすることができ、20kHz〜100kHzとすることが好ましい。また、高周波誘導加熱電源23は、外部信号による出力制御が可能である。高周波誘導加熱電源23は、各段の誘導コイル22に対応して、電源23a、電源23b、及び電源23cの3台が用意されており、夫々高周波変換器フィーダ24a、高周波変換器フィーダ24b、及び高周波変換器フィーダ24cを介して、前段コイル22a、中段コイル22b、及び後段コイル22cに接続されている。
【0032】
制御装置25は、加熱処理管21の前段部21a、中段部21b、及び後段部21cの温度が、夫々各設定温度T1,T2,及びT3に一定に保持されるように、高周波誘導加熱電源23の出力の制御をする。設定温度T3は、未燃カーボンの発火温度(自燃温度)以上に設定するのが好ましく、設定温度T2は設定温度T3の2/3程度の温度に設定するのが好ましく、設定温度T1は設定温度T3の1/3程度の温度に設定するのが好ましい。尚、上述の2/3程度の温度や1/3程度の温度は、摂氏0℃を基準とする発火温度の2/3程度や1/3程度の温度をいう。この実施例では、前段部21a、中段部21b、及び後段部21cの設定温度T1,T2,及びT3は、夫々200℃、400℃、及び600℃に設定されている。このように、前段から後段へ段階的に温度を高めており、加熱前の温度から最後段の加熱温度まで線形に温度が上昇するように各位置での加熱温度を線形に設定している。最後段となる後段部21cの設定温度T3を発火温度(自燃温度)である600℃とし、その前段の設定温度をそれより低くしておくことで、途中で発火(自燃)が始まり暴走することを防止している。また、制御装置25は、上述の定量供給装置4に備えられた電動モータ20gとも信号線で接続されており、電動モータ20gの回転数の制御もできるようになっている。
【0033】
加熱処理管21の前段部21aには、加熱処理管21に連結された定量供給装置4から、予熱されたフライアッシュ原粉が隙間なく詰まった状態で供給される。このとき、供給され始めた最初の部分のフライアッシュ原粉は崩れながら供給されて上部まで詰まっていなくとも、フライアッシュ原粉が押し出されてくるにつれて加熱処理管21の管内の上部までフライアッシュ原粉が詰まった状態になっていく。こうして、フライアッシュ原粉は、前段部21a、中段部21b、後段部21cと順番に押し出され、加熱処理管21の各部内に詰まった状態となっていく。従って、加熱処理管21内において、フライアッシュ原粉は、撹拌されることがなく、流動も殆どなく、フライアッシュ原粉同士の相対位置があまり変化しない詰まった状態で移動していく。
【0034】
前段コイル22a、中段コイル22b、後段コイル22cには、高周波変換器フィーダ24a,24b,24cを介して、電源23a,23b,23cから夫々交流電流が出力される。これにより、交流電流が流れる前段コイル22a、中段コイル22b、後段コイル22cの周り、すなわち前段部21a、中段部21b、後段部21cの各内部に、磁界が生じる。磁性体金属により形成されている加熱処理管21は、前段部21a、中段部21b、後段部21cの各位置において、当該磁界に誘導されて渦電流が流れるようになる。そして、加熱処理管21に流れる渦電流は、加熱処理管21自身の抵抗により熱を発生し(すなわち誘導加熱される)、この熱により、前段部21a、中段部21b、後段部21c内のフライアッシュ原粉を熱する。さらに、フライアッシュ原粉に数%程度含まれている未燃カーボンは、導電性を有しているため、前段部21a、中段部21b、後段部21cにて夫々誘導加熱される。
加熱処理管21の内部は、フライアッシュ原粉が詰まっていて酸素(空気)が殆ど無い状態、言い換えれば未燃カーボンの発火(自燃)に必要な量の酸素(空気)が無い状態、さらに言えば、フライアッシュ原粉に酸素(空気)が殆ど触れない状態(フライアッシュや未燃カーボン等の粒子が互いに接触し合っている隙間に存在している酸素(空気)程度しか触れない状態)に保たれている。このため、加熱処理管21の内部で未燃カーボンが発火(自燃)して想定温度よりも温度上昇することを防止できる。
【0035】
制御装置25は、温度センサTS1,TS2,TS3が測定した測定温度データを取得する。制御装置25は、取得した夫々の測定温度が前段部21a、中段部21b、後段部21cの各設定温度T1,T2,T3と比較して、高い部位には出力低下の信号を、逆に低い部位には出力上昇の信号を、電源23a,23b,23cに夫々送信する。信号を受信した電源23a,23b,23cは、自身の受信信号に従って、出力を低下もしくは上昇させる。このようにして、温度センサTS1,TS2,TS3の測定温度データを基に、制御装置25が電源23a,23b,23cの出力を制御することにより、前段部21a、中段部21b、後段部21cの各温度は、夫々設定温度T1,T2,T3に近づけられ、一定に保持される。
【0036】
ところで、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンの含有量は、数%程度であるが、一定ではなく、ばらつきがあり、しかも、正確に把握することが困難である。そのため、未燃カーボンの含有量の違いにより、誘導加熱による未燃カーボンの発熱量は変動する。この発熱量の変動は、さらに、前段部21a、中段部21b、後段部21cの温度を変動させる原因となる。そのため、前段部21a、中段部21b、後段部21cの温度を、設定温度T1,T2,T3に一定に保持するためには、上述の電源23a,23b,23cの出力を大きく増減させなければならない場合も生じ得る。しかし、電源23a,23b,23cには、適正な出力範囲があり、その適正な出力範囲を超えての出力は、電源23aに過重な負荷が掛かり、好ましいものではない。そこで、電源23a,23b,23cの出力の制御に加えて、加熱処理管21に供給される単位時間あたりのフライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボン量が一定になるような新たな制御を付加している。すなわち、温度センサTS3の測定温度データを基に、後段部21cの温度が設定温度T3に一定になるように、制御装置25は、定量供給装置4に備えられた電動モータ20gの回転数を増減させるようになっている。つまり、制御装置25は、電動モータ20gの回転数の制御も行うようになっている。
【0037】
ここで、電源23a,23b,23cの出力の制御については、温度センサTS1,TS2,TS3の測定温度データを基に夫々個別に実行し、電動モータ20gの回転数の制御については、最後段である温度センサTS3の測定温度データを基に実行する。このようにすることで、各制御を簡潔にしつつ、電力加熱装置8の加熱処理管21から炭素高温酸化炉9へ供給する際のフライアッシュ原粉の温度を目的の温度(この実施例では600℃)に確実に高めることができる。
【0038】
以上のように、制御装置25は、電源23cの出力の制御に加えて、電動モータ20gの回転数の制御も組み合わせたカスケード制御を行っている。そのため、未燃カーボンの微妙な温度調整が可能である。これにより、後段部21c内のフライアッシュ原粉の温度は、後段部21cの設定温度T3に、より精度よく保持される。
【0039】
このようにして、加熱処理管21内に供給されたフライアッシュ原粉が、酸素の供給が無くほぼ無酸素状態の加熱処理管21内を移動する間に、フライアッシュ原粉及びこれに含まれる未燃カーボンは、前段コイル22a、中段コイル22b、及び後段コイル22cの誘導加熱により段階的に加熱される加熱処理管21によって段階的に加熱される。そして、設定温度T3にまで加熱された未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉は、次工程の炭素高温酸化炉9に投入される。
【0040】
尚、設定温度T3は、この実施例では、600℃に設定されているが、未燃カーボンの発火温度(例えば600℃)に対して少なくとも200℃低い温度(例えば400℃)より高く設定された予熱設定温度以上に設定してもよい。
【0041】
また、この実施例では、加熱処理管21内のフライアッシュ原粉を加熱するのに、誘導加熱を用いたが、誘導加熱に限るものではない。加熱処理管21内のフライアッシュ原粉をほぼ無酸素状態で加熱できるのであれば、例えば、外部熱源を用いて、加熱処理管21の外部から加熱する、あるいは加熱処理管21の軸心部に加熱装置を設けて内側から加熱するようにしてもよい。
【0042】
また、この実施例では、未燃カーボンを発火温度以上にまで昇温するために、加熱処理管21を3つの段部に分けて、各段部の設定温度を段階的にT1、T2、及びT3に設定し、3段階で加熱しているが、3段階に限るものではなく、適宜の複数段階とすることができる。この複数段階は、例えば1〜5段階で加熱するなど、適宜の段階とすることが好ましい。
【0043】
<炭素高温酸化炉>
図3に示すように、炭素高温酸化炉9は、軸心が略水平方向を向いた内部が中空の円筒状の窯である炉体26と、炉体26を軸心の回りに回転可能に下部で支持する炉体支持部27と、炉体26の一端部を覆う投入側フード28と、炉体26の他端部を覆う排出側フード29とを備えた回転式の炉である。
【0044】
炉体26は、全体が略円筒形状であり、投入側フード28に接続される一端にカバー部26bが設けられている。このカバー部26bは、中心に孔の空いた円盤状であり、円盤の外周部が円筒形状の一端の縁に接続された形状となっている。
【0045】
炉体26の内部には、内側へ凸となる凸状部が内周面に沿ってスクリュー状に連続するスクリュー羽根26cが設けられている。
【0046】
炉体26のスクリュー羽根26cおよびカバー部26bを含む内面(内側表面)は、酸化アルミ系の耐火材により被覆されて内ライニング26aが形成されている。この内ライニング26aを設けることにより、炉体26は、フライアッシュ原粉が含有する
酸化バナジウムに起因する高温下での金属腐食を回避することができ、1000℃程度の耐火性を有することができる。
【0047】
また、この内ライニング26aは、左官職人が家屋や塀の壁に漆喰や土壁を塗ったような凹凸のある仕上がりになっており、金属表面よりも荒い表面になっている。この凹凸は、高低差の平均値が50ミクロン以上ある凹凸とすることができ、高低差の平均値が1cm〜5cmとすることが好ましい。内ライニング26aの凹凸により、摩擦力が向上し、自燃するフライアッシュ原粉が炉体26の内面で撹拌されずに塊のような状態で滑るように相対移動することを防止し、凹凸によってフライアッシュ原粉を撹拌させることができる。
炉体26の外部には、室内の温度上昇を防止する適宜の冷却装置(図示省略)が設けられている。
【0048】
炉体支持部27は、炉体26の外周面を下方で回転可能に支持する回転体27aと、回転体27aを設置する設置台27bと、回転体27aに取り付けられた従動側スプロケット27cにチェーン27dを介して連結された駆動側スプロケット27eを駆動する駆動モータ27fとを備えている。これにより、駆動モータ27fの回転数を制御することにより、炉体26の軸心回りの回転速度を変えることができ、設定した回転速度で炉体26を回転させ続けることができる。
【0049】
投入側フード28には、電力加熱装置8で加熱されたフライアッシュ原粉を炉体26内に投入するための投入部30と、炉体26内で発生した燃焼ガスを排気ガスとして排出するための排気ガス口9aとが設けられている。
【0050】
投入部30は、投入側フード28を前後に貫通する管で、軸心が炉体26の中心軸とほぼ一致し、一端が電力加熱装置8の加熱処理管21の後端のフランジ21eに連結され、他端が炉体26内で開口し投入口30aを形成している。投入部30の内経は加熱処理管21の内径と同一であり、投入部30の軸心が加熱処理管21の軸心と一致するように構成されている。そして、投入口30aの開口面30bは上方を向いている。この投入口30a付近は、円筒形で続いてきた管の下部が上方へ湾曲した漏出防止部30cが設けられている。
【0051】
これにより、電力加熱装置8で加熱された未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉は、加熱処理管21から投入部30へ押し出されて供給され、さらに投入口30aから炉体26内に押し出されて投入される。このとき、投入部30内で押し出されてきたフライアッシュ原粉は、漏出防止部30cによってすぐにこぼれ落ちずにせき止められ、さらに押し出されてきた後に上向きの投入口30aから溢れるように炉体26内に投入される。これにより、投入部30内にフライアッシュ原粉が隙間なく詰まっている状態を維持し、特に、加熱処理管21内にフライアッシュ原粉が隙間なく詰まっている状態を維持することができる。従って、フライアッシュ原粉が崩れ出て投入部30内や加熱処理管21内に酸素のある空間が生じることを防止し、投入部30内や加熱処理管21内に燃焼ガスや酸素等が侵入し難いようにし、この酸素のある空間によってフライアッシュ原粉の未燃カーボンが燃焼(発火)することを防止できる。
【0052】
なお、投入口30aは、開口の最下端が投入部30の上端と同じ高さからそれより上になるように形成してもよい。この場合、フライアッシュ原粉が投入口30aの開口全面を覆った状態を確実に保ちつつ溢れるようにフライアッシュ原粉を投入できるため、投入口30aから投入部30内部への酸素(空気)の流入を確実に防止でき、投入部30内や加熱処理管21内でフライアッシュ原粉中の未燃カーボンが発火(自燃)し始めることをより確実に防止できる。
【0053】
炭素高温酸化炉9は、内部空間に対して少量のフライアッシュ原粉の供給を受け、この少量のフライアッシュ原粉を撹拌しつつ加熱して燃焼させる。なお、炭素高温酸化炉9内のフライアッシュ原粉の量は、内部空間に対して半分以下とすることができ、30%以下とすることが好ましく、10%以下とすることがより好ましく、5%以下とすることがさらに好ましい。
【0054】
排気ガス口9aには、上述の余熱供給パイプ13が連結されている。余熱供給パイプ13には、余熱供給パイプ13から分岐された排気ガス管31が連結されている。排気ガス管31は、熱交換器32を経由して、除塵装置6(
図1参照)に連結されている。そのため、排気ガス口9aから排出されて排気ガス管31内を流動する高温の排気ガスは、熱交換器32で冷却された後、除塵装置6に送られる。
【0055】
排出側フード29には、炉体26内に空気(一次エア)と共に燃料を噴出させ燃焼させる助燃バーナー33と、炉体26内に空気(三次エア)を吹き込む複数の吹き込みノズル34と、排出口35が設けられている。
【0056】
助燃バーナー33は、燃料を燃焼させて炉体26内を高温に加熱する。助燃バーナー33は、炉体26の中心軸上に位置し、燃料を噴出させる噴出孔33aがフライアッシュ原粉の投入口30aに対向するように配置されている。
【0057】
複数の吹き込みノズル34は、助燃バーナー33の周囲を囲むようにして配置され、排出側フード29の炉体26内に面する内面に沿って、助燃バーナー33を中心として回転機構(図示せず)により旋回する。詳述すると、複数の吹き込みノズル34は、助燃バーナー33から等距離の位置で互いの間隔も等距離となるように複数が配置されて、炉体26の回転軸方向に見ると吹き込みノズル34が多角形の頂点をなす。この実施例では、炉体26の回転軸方向に見て四角形の各頂点をなすように4つの吹き込みノズル34が配置されている。各複数の吹き込みノズル34は、空気(三次エア)をフライアッシュ原粉の移動方向(
図3における右方向)と逆方向(
図3における左方向)へ対向流として同量かつ等速で送り込み、助燃バーナー33の周囲の空気量がほぼ等しくなるようにしている。
【0058】
助燃バーナー33に供給される空気(一次エア)と吹き込みノズル34から炉体26内に吹き込まれる空気(三次エア)は、外の空気が押込ファン36により取り込まれ熱交換器32を介して炉体26内に送り込まれた空気である。そのため、空気(一次エア)と空気(三次エア)は、熱交換器32において、排気ガス管31を流動する高温の排気ガスとの熱交換により加熱される。これにより、炉体26内部の温度に対する空気(一次エア、三次エア)の温度が低すぎることを防止し、空気(一次エア、三次エア)が炉体26内の温度を低下させることをできるだけ防止している。さらに、これらの一次エアおよび三次エアが炭素高温酸化炉9におけるフライアッシュ原粉投入側に配置された排気ガス口9aから余熱供給パイプ13へ排出されるために、吹き込みノズル34から排気ガス口9aへ向かう対向流が確実に生じ、効率良い酸素供給(空気供給)および燃焼を実施できる。
【0059】
このように、加熱された空気(一次エア)と空気(三次エア)が供給された炉体26内で、複数の吹き込みノズル34が、助燃バーナー33を取り巻くようにして旋回しながら空気(三次エア)を吹き込んでいるため、燃焼効率が高く、また、燃焼に必要な酸素量の供給の制御が容易である。
【0060】
排出口35は、排出側フード29の下部に設けられ、冷却設備5に連結されている。
【0061】
投入部30の投入口30aから炉体26内に投入されたフライアッシュ原粉は、軸心回りに回転する炉体26内で、スクリュー羽根26cにより撹拌されながら、排出口35に向かって徐々に移動する。この移動の間に、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンは、高温の酸素雰囲気中で燃焼(酸化)されて二酸化炭素と熱を発し除去される。この時の炉体26内の温度は、800〜900℃になっている。そして、排出口35に到達したフライアッシュ原粉は冷却設備5
に排出される。
【0062】
尚、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボン量は変動するため、燃焼時間は適宜増減させる必要がある。このため、処理するフライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボン量に応じて、炉体支持部27に設けられた駆動モータ27fの回転数を調整する。これにより、炉体26の軸心回りの回転速度が変わり、回転するスクリュー羽根26cにより炉体26内を移動するフライアッシュ原粉の移動速度が調整されて、燃焼時間の増減を調整することができる。こうして、フライアッシュ原粉の移動速度を小さくすれば、炉体26内での滞留時間が長くなって燃焼時間が増加し、逆に移動速度を大きくすれば、炉体26内での滞留時間が短くなって燃焼時間が減少する。
【0063】
<除塵装置>
図1に示したように、除塵装置6は、前段のサイクロン6aと後段のバグフィルター6bとを備えている。前段のサイクロン6aには、フライアッシュ貯留器3の予熱装置10から、温度が低下した排気ガスを排出するための排出パイプ14と、炭素高温酸化炉9の排気ガス口9aから排出された後、熱交換器32で冷却された排気ガスが流動する排気ガス管31とが、連結されている。
【0064】
除塵装置6は、排出パイプ14及び排気ガス管31を介して流入した排気ガスに含まれ粉塵等を、サイクロン6aとバグフィルター6bを用いて除去した後、粉塵等が除去された排気ガスを排気装置7に排出する。
【0065】
<排気装置>
排気装置7は、除塵装置6で粉塵等が除去された排気ガスを誘引ファン7aで誘引した後、排気塔7bを介して加熱改質システム1外に排出する。
【0066】
<冷却設備>
冷却設備5は、炭素高温酸化炉9の排出口35から排出された、含有する未燃カーボンが燃焼により減少したフライアッシュ原粉を受け入れ、冷却処理する。
【0067】
以上の構成と動作により、加熱改質システム1は、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンを除去して1%未満にすることができる。加熱焼成装置2は、燃焼炉(炭素高温酸化炉9)へ供給するフライアッシュ原粉中の少なくとも未燃カーボンを、未燃カーボンの発火温度に対して少なくとも200℃低い温度より高く設定された加熱設定温度以上に加熱する加熱装置(電力加熱装置8)を、燃焼炉(炭素高温酸化炉9)の前段に備えているため、燃焼炉自体を小規模にすることができ、それにより設備投資を抑制できる。また、燃焼炉で使用する燃料が少なくて済むため、エネルギーコストも抑制できる。
【0068】
詳述すると、炭素高温酸化炉9のみによってフライアッシュ原粉を常温(室温)から発火温度まで加熱しようとすると、助燃バーナー33によって大量の燃料と空気を消費して炉体26内部の空間ごとフライアッシュ原粉を加熱する必要がある。このために炉体26内部の広い空間を長く確保する必要が生じる。
【0069】
これに対して、発火温度に近く設定されている加熱設定温度以上に電力加熱装置8で加熱しておくことで、炭素高温酸化炉9では、フライアッシュ原粉を発火温度まで高めてさらに未燃カーボンを燃焼除去させる一連の流れのうち、発火温度から未燃カーボンを燃焼除去させる部分のみを処理すればよくなる。このため、処理するフライアッシュ原粉に対して炭素高温酸化炉9によって燃焼させている時間を短縮できる(常温から発火温度まで燃焼させる時間を省略できる)ため、フライアッシュ原粉を燃焼させながら炉体26内で移動させる距離を短縮できる。従って、距離を短縮する分だけ炉体26を小型にでき、炭素高温酸化炉9全体のサイズを小さくできる。
【0070】
さらに、加熱装置は、燃焼炉へ原粉を搬送する搬送管(加熱処理管21)を備え、搬送管内に酸素を供給せずに、未燃カーボンを加熱設定温度以上に加熱する酸素不要加熱手段により構成されている。これにより、搬送管(加熱処理管21)内での空気を必要とする内部燃焼によらずに未燃カーボンを加熱することができるようになる。そのため、加熱装置は大規模化せず、また、熱効率がよい。すなわち、電力加熱装置8は、炉体26内のように空気を供給した燃焼空間を必要とせず、加熱処理管21内に隙間なく詰まっている状態でフライアッシュ原粉を加熱するため、炭素高温酸化炉9と比べて半分以下、さらに言えば1/5以下の大きさにできる。そして、加熱処理管21の周囲からフライアッシュ原粉を直接的に加熱することができるため、効率良く加熱することができる。特に、フライアッシュ原粉中の未燃カーボンを誘導加熱で加熱できるために、直接加熱を実現できる。
【0071】
加熱装置(電力加熱装置8)は、エネルギー密度の高い高周波電源を用いて、高周波電源から交流電流が供給された誘導コイルの近傍に配置された加熱処理管21を誘導加熱により集中的に加熱する。そのため、未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉の高速加熱が可能であり、エネルギー効率も良い。また、装置規模を小さくすることができ、省スペースでコンパクトである。
【0072】
燃焼炉(炭素高温酸化炉9)は、加熱装置(電力加熱装置8)で加熱された未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉を燃焼炉内に投入する投入口30aと、投入口30aと対向する位置でフライアッシュ原粉が燃焼し改質された改質フライアッシュが排出される排出部(排出口35)とを備え、燃焼炉内において、排出部側に、助燃バーナー33(燃焼手段)の燃料の噴出孔33aが配置されている。これにより、燃焼炉の炉体26内に流入するフライアッシュ原粉の流れと助燃バーナー33から噴出する燃焼ガスの流れとが対向流となるため、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンの燃焼反応が促進される。
【0073】
また、投入口30aの開口面30b
が上方を向いており、漏出防止部30cが設けられているため、開口面30bから溢れ出るようにしてフライアッシュ原粉が炉体26内に投入される。そのため、炉体26内の燃焼ガスや酸素等は、フライアッシュ原粉が詰まった投入部30の管内に、さらには加熱装置に侵入し難くなっている。従って、電力加熱装置8内では燃焼が生じ難くなっており、電力加熱装置8内で意図せずフライアッシュ原粉中の未燃カーボンが発火して温度が上昇しすぎることを防止できる。
【0074】
加熱装置(電力加熱装置8)において、定量供給装置4が加熱装置へ供給するフライアッシュ原粉の供給量と高周波電源(高周波誘導加熱電源23)の出力の少なくとも一方を調整して、フライアッシュ原粉に含まれる未燃カーボンを加熱するようになっている。そのため、未燃カーボンの微妙な温度調整が可能である。
【0075】
尚、本願発明と実施形態の対応において、
燃焼炉は、炭素高温酸化炉9に対応し、
撹拌手段は、炉体26、スクリュー羽根26c、及び炉体支持部27に対応し、
酸素供給手段は、吹き込みノズル34に対応し、
燃焼手段は、助燃バーナー33に対応し、
加熱装置は、電力加熱装置8に対応し、
搬送管は、加熱処理管21に対応し、
酸素不要加熱手段は、誘導コイル22、高周波誘導加熱電源23、高周波変換器フィーダ24、及び制御装置25に対応し、
誘導コイルは、誘導コイル22、前段コイル22a、中段コイル22b、及び後段コイル22cに対応し、
高周波電源は、高周波誘導加熱電源23、電源23a、電源23b、及び電源23cに対応し、
投入口は、投入口30aに対応し、
排出部は、排出口35に対応し、
噴出孔は、噴出孔33aに対応し、
開口面は、開口面30bに対応するが、本願発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
【0076】
例えば、電力加熱装置8は、加熱処理管21内に詰まっているフライアッシュ原粉を加熱できる設備であればよく、加熱処理管21の周囲にヒーターを設けて加熱する構成としてもよい。また、加熱処理管21の外から加熱することに限らず、加熱処理管21内の軸心位置に適宜のヒーターを配置しておき、このヒーターと加熱処理管21の間にフライアッシュ原粉が詰まっている状態とし、ヒーターの熱によって周囲のフライアッシュ原粉を加熱してもよい。これらの構成の場合であっても、酸素供給を必要とせずにフライアッシュ原粉をコンパクトに加熱することができる。