(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089240
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】分岐アダプタ
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
H02J3/14
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-77602(P2013-77602)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-204525(P2014-204525A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】船橋 達治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博之
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−046518(JP,A)
【文献】
特開2011−101536(JP,A)
【文献】
特開平06−303706(JP,A)
【文献】
特開2012−203991(JP,A)
【文献】
特開2012−125091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分電盤の一つの分岐ブレーカの二次側に接続される分岐アダプタであって、この分岐アダプタにより分岐されるとともに負荷がそれぞれ接続される複数の分岐線と、各分岐線の電流を計測する計器用変流器と、いずれかの分岐線の電流が設定値を超えた場合に、他の分岐線への電力供給を停止する開閉手段とを備えたことを特徴とする分岐アダプタ。
【請求項2】
前記設定値の設定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の分岐アダプタ。
【請求項3】
いずれかの分岐線の電流が設定値以上かつ設定時間以上流れた場合に、他の分岐線への電力供給を停止することを特徴とする請求項1記載の分岐アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤の分岐ブレーカに接続される分岐アダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤には、20Aもしくは30Aの分岐ブレーカが複数設置されている。例えば電磁調理器等、電流が10アンペアを超える高負荷については、専用線を設け分岐ブレーカに直接接続する必要があることが、内線規程3605−3に明示されている(以下、専用線化という)。しかし、その他の低負荷に対しては、分岐ブレーカに分岐アダプタを接続して複数の分岐線を形成し、複数の負荷に同時に給電できるようにしている。
【0003】
他方、高負荷は上述した電磁調理器等の固定設備のみに限られず、着脱を繰り返す移動型の機器や、複数箇所での使用が想定される機器等も考えられ、どのコンセントタップに高負荷が接続されるのかを特定できない場合もある。その際には、高負荷を接続する可能性がある箇所をすべて専用線化しなければならず、その工事にはコストがかかるという問題があった。さらに、一度専用線化してしまうと、例え低負荷の使用であっても直接分岐ブレーカと接続して負荷を使用することとなり、分岐アダプタを介して分岐線を複数形成した際と比較して、コンセントタップ数が減少してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、専用線化をしなくとも、分岐線を形成した上で、高負荷が接続され電流が設定値を超える場合に、新たな機器の使用を制限する装置例が特許文献1に記載されている。しかし、新たに接続する機器を早急に使用する必要がある場合には、別の分岐ブレーカに接続されているコンセントタップを使用しなければならなかった。
【0005】
また特許文献2においては、分岐アダプタ内の分岐線の回路に優先順位をつけ、高優先順位の負荷が使用された際には低優先順位の負荷を使用禁止とする例が挙げられているが、あらかじめ接続する負荷に優先順位を設定する必要があり、接続する負荷の優先順位が自明でない場合には、本来使用を必要とする負荷が低優先順位となり、使用不可となる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−191573号公報
【特許文献2】特開2004−129477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、分岐線を形成した上で、負荷の接続箇所、接続順序および優先順位に関わらず、他の分岐線への電力供給を停止する機能を有する分岐アダプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、分電盤の
一つの分岐ブレーカ
の二次側に接続される分岐アダプタであって、
この分岐アダプタにより分岐されるとともに負荷がそれぞれ接続される複数の分岐線と、各分岐線の電流を計測する計器用変流器と、いずれかの分岐線の電流が設定値を超えた場合に、他の分岐線への電力供給を停止する開閉手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記設定値の設定手段を備えていることを特徴とし、また請求項3の発明は、電流が設定値以上かつ設定時間以上流れた場合に、他の分岐線への電力供給を停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、負荷の接続箇所、接続順序および優先順位に関わらず、開閉器の開路動作により他の分岐線の電流を遮断することで、他の分岐線への給電を停止することが可能となる。これにより、専用線化の工事を必要とせず、着脱を繰り返す移動型の機器や、複数箇所での使用が想定される機器等といった高負荷を接続した場合において、安定した電力供給が可能となる。また、低負荷を接続した際には専用線化することなく分岐回路として使用できるため、複数の機器を同時に使用することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、前記設定値は任意に変更可能であることから、接続する高負荷の電流値があらかじめ自明である場合には、設定値を細かく設定することが可能となり、設定値が変更不可の場合と比較して、コンセントタップに接続可能となる機器の自由度を増やすことが可能となる。また、請求項3記載の発明によれば、設定値の他、設定時間以上流れたことを検出して他の分岐線への給電を停止することを可能としており、一時的に生じる始動電流やノイズの侵入による影響で、他の分岐線の電流を遮断することを防止し、分岐回路として安定して電力供給を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の全体構造を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の分岐アダプタ内部の構造を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1に示すように、分電盤1に形成された主幹ブレーカ2には、母線バー3を介して分岐ブレーカ4が接続されている。さらに、分岐ブレーカ4の負荷側は分電盤1外の分岐アダプタ5に接続され、分岐アダプタ5内部では複数の負荷に接続するための分岐線6が2つに枝分かれして構成されており、それぞれ負荷端子側のコンセントタップ7に接続されている。なお、本実施形態では2つの分岐線としたが、それ以上の分岐線を形成することもできる。
【0014】
図2は分岐アダプタ5内部の構造を示した図であり、分岐アダプタ5内部には第1分岐線10および第2分岐線11の電流を導通、遮断する第1開閉器12および第2開閉器13を備えており、前記開閉器12、13の開閉動作は判定部14により制御されている。また、第1分岐線10および第2分岐線11の電流はそれぞれ計器用変流器15により計測され、その計測値が判定部14に入力される。判定部14は前述のとおり、計測値に応じて各開閉器12、13の開閉動作を行うことにより、第1分岐線10または第2分岐線11の電流を導通、遮断することができる。
【0015】
第1開閉器12および第2開閉器13は初期状態においてともに閉じられているため、低負荷がそれぞれのコンセントタップ7に接続された場合は、両方の機器を同時に使用することが可能となる。
【0016】
本実施形態のように、例えば高負荷8が第1分岐線10のコンセントタップ7に接続され、電流が設定値(例えば分岐ブレーカ4の定格の50%)を超えた場合、計器用変流器15がその計測値を分岐アダプタ5内部の判定部14に入力する。判定部14は第2開閉器13を開路し第2分岐線11の電流を遮断することで、第1分岐線10のみを導通させる。したがって、高負荷8が接続された場合は、
図1に示すように、専用線9によって分岐ブレーカ4に接続された場合と同様の回路を形成することになる。なお、この機序は第2分岐線11のコンセントタップ7における低負荷の接続の有無に影響されることはなく、また第2分岐線11のコンセントタップ7に高負荷8が接続された場合には、本実施形態とは反対に、第1開閉器12が開路し、第1分岐線10の電流を遮断することにより、第2分岐線11を専用線化する。
【0017】
また、分岐アダプタ5には設定部16が備えられており、設定部16は前記設定値を変更することが可能であり、設定値の変更情報は判定部14に入力される。判定部14は前述の通り、設定値に基づいて第1開閉器12および第2開閉器13の開閉動作を行うことで、第1分岐線10もしくは第2分岐線11の電流を導通、遮断する。これにより、接続する高負荷の電流値があらかじめ自明である場合には、設定値を細かく設定することが可能となり、設定値が変更不可の場合と比較して、コンセントタップ7に接続可能となる機器の自由度を増やすことが可能となる。
【0018】
なお、高負荷8の接続により第1分岐線10を専用線化した後に、機器の使用が終了し第1分岐線10の電流が設定値(例えば分岐ブレーカ4の定格の40%)を下回った場合には、第2開閉器13を閉じることにより、第1分岐線10および第2分岐線11が導通した初期状態に戻るものとする。また、機器の使用終了後に第2開閉器13を閉路する設定値も変更可能にするものでも良い。
【0019】
以上のように、高負荷8が接続された第1分岐線10に電流が設定値以上流れた場合に、第2分岐線11の電流を遮断し、第1分岐線10を専用線化することとしたが、判定部14にて電流のほか電流が流れる時間を検出して遮断するものであっても良い。コンセントタップ7に接続された機器に電源を投入した際に生じる始動電流や、コンセントタップ7に接続されるケーブル内ノイズの侵入等による影響で、一時的に電流が大きくなることがある。そのため、高負荷8に電流が設定値以上かつ設定時間以上流れた場合のみ第2分岐線11の電流を遮断することにより、分岐回路として使用する際には、安定した電力供給が可能となるものである。なお、設定値と同様に、設定部16は設定時間を変更可能としてもよい。
【0020】
以上のように、負荷の接続箇所、接続順序および優先順位に関わらず、1つの分岐線の電流が設定値以上流れた場合には、第1開閉器12もしくは第2開閉器13の開路動作により他の分岐線の電流を遮断することで、負荷が接続された分岐線を専用線化することができ、他の分岐線への給電を停止することが可能となる。これにより、専用線化の工事を必要とせず、着脱を繰り返す移動型の機器や、複数箇所での使用が想定される設備等といった高負荷を接続した場合において、安定した電力供給が可能となる。なお、電流が設定値に達したか否かは、一定時間における平均値をもって判定することが望ましい。
【符号の説明】
【0021】
1 分電盤
2 主幹ブレーカ
3 母線バー
4 分岐ブレーカ
5 分岐アダプタ
6 分岐線
7 コンセントタップ
8 高負荷
9 専用線
10 第1分岐線
11 第2分岐線
12 第1開閉器
13 第2開閉器
14 判定部
15 計器用変流器
16 設定部