(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面側に患者を乗せることができる十分な面積を有するマット部と、このマット部を裏面側で支持する架台と、この架台の基端側を軸支するとともに該架台を傾倒するための駆動部を具有する基部と、前記架台の基端側に設けられた足置き部とを備え、前記架台を水平姿勢から起立姿勢までの範囲における姿勢変化が可能なティルト台において、
前記マット部は、患者の上半身を乗せる上部マットと、患者の上腿を乗せる中間マットと、患者の下腿を乗せる下部マットとに分離されており、
前記上部マットは、架台に固定されており、前記中間マットは、前記上部マットに近接する位置において前記上部マットの端部または前記架台に回動自在に支承されており、前記下部マットは、前記中間マットに近接する位置において該中間マットとの間で回動自在な状態で連結されるとともに、その反対側が前記架台にスライド可能な状態で支持されており、
前記架台には、前記中間マットと前記下部マットとで形成される表面を、前記マット部の表面側へ屈曲させるように、前記中間マットまたは前記下部マットのいずれか一方を駆動する駆動手段が具備されており、
前記足置き部は、前記架台に固定される板状の足置きベース部と、この足置きベース部の表面に摺接され、患者の足底を当接させる足底当接部とを備え、該足底当接部は、前記下部マットに近接する位置において該下部マットとの間で回動自在な状態で連結され、該下部マットの移動に伴って、前記足置きベース部に対して傾斜可能に設けられていることを特徴とするティルト台。
前記駆動手段は、前記中間マットに対して前記架台に支承される部分を中心として回動させるように、該架台から進退可能に駆動するものであって、サーボモータと、このサーボモータによって正逆方向に回転する回転体と、この回転体に一端が接続され、該回転体の回転に応じて他端が進退の方向へ移動するリンク部とを備えるものである請求項1または2に記載のティルト台。
前記足置き部は、前記架台に固定される板状の足置きベース部と、この足置きベース部の表面に摺接され、患者の左右の足底を個別に当接させる二つの足底当接部とを備え、
前記足底当接部は、前記左右の下部マットに近接する位置において該下部マットとの間で一つずつ独立して回動自在な状態で連結され、該下部マットの移動に伴って、前記足置きベース部に対して傾斜可能に設けられているものである請求項4に記載のティルト台。
さらに、前記サーボモータの回転角度および回転速度を制御するとともに、中間マットと下部マットの表面を屈曲状態としたときの停止時間および正逆方向への回転を転換したときの停止時間を制御する制御部を備えている請求項4ないし6のいずれかに記載のティルト台。
さらに、前記アクチュエータの進退駆動のタイミング、進退距離および進退速度を制御するとともに、前進時または後退時における停止時間を制御する制御部を備えている請求項8に記載のティルト台。
前記左右の中間マットが隣接する適宜範囲を中間領域とし、該中間領域の中間マットを着脱可能にするとともに、該中間領域には出没可能なサドル部が設けられている請求項4ないし9のいずれかに記載のティルト台。
前記架台には、さらに、両側部から延出する棒状の二つのアームレストが先端を対向させた状態で回動可能に設けられ、それぞれのアームレストの先端近傍に支持される二つの補助テーブルを備えている請求項1ないし10のいずれかに記載のティルト台。
前記マット部は、前記架台に固定される下層ベッドの表面上に積層された状態で設けられており、前記駆動手段は、前記下層ベッドを貫通し、または該下層ベッドの側面から前記マット部を屈曲させるように駆動するものである請求項1ないし12のいずれかに記載のティルト台。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような従来のティルト台は、患者を水平状態から起立状態へと変化させることができる構成であることから、起立訓練に一定の成果をもたらすものであった。しかしながら、起立性低血圧を起こす原因は、前記のように、下半身に多量の血液が流入し、心臓へ戻る血液が減少することから上半身の血圧が低下することによるものであるため、患者の姿勢を起立状態とした場合、ティルト台に乗った状態のままでめまいを起こすこともあり、患者に不安を与えることとなっていた。また、長期臥床患者が起立姿勢となった場合、自身の体重を支えることができず、患者自身が不安定な姿勢となってしまうことがあり、これまた患者に不安を与えることとなっていた。
【0007】
このような不安を解消するため、または、過度な血流の集中を緩和させるために、補助者(付添人または看護師等)が、患者の上腿または下腿を持ち上げるなどして、膝や足首などの関節を曲げ伸ばすような予備的な運動を行うことがあった。これは、予め下半身を動かすことにより、徐々に下半身への血流を増加させることに伴って、血圧が徐々に上昇させるためであり、予め血圧を上昇させることによって、起立姿勢時における下半身への急激な血流による血圧の低下を緩やかにすることを目的としている。
【0008】
しかしながら、上記のような予備的な運動は、補助者が行うものであることから、そのための労力が過酷にならざるを得なかった。そのため、予備的な運動を補助することができる装置が切望されていた。
【0009】
さらに、人工膝、股関節または大腿骨等に関する手術(例えば、人工股関節全置換術、人工膝関節全置換術、股関節骨折手術など)の後には、深部静脈血栓症のリスクが高くなり、重篤な場合には肺血栓閉栓症に発展することが予見されるものであった。そのため、一般的には、術後の早期離床を促すなどにより、下腿を運動させて血栓を予防するほか、弾性ストッキングを使用して静脈の血流速度を増加させ、または間欠的空気圧迫法によって、短時間における静脈血の環流を促進させることが行われていた。
【0010】
しかしながら、大腿骨近位部骨折のように高齢者に多い症例の場合には、当該高齢者に早期の離床を促すことが難しく、また、間欠的空気圧迫法を使用する場合には、既に深部静脈血栓症が発症していないことを予め確認しなければならず、術後の患者の全てに対応できるものではなかった。そこで、早期の離床が困難な患者に対しても、離床した状態に類似する運動が可能となるように、患者に対する訓練を補助する装置がこれまた切望されていた。
【0011】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、起立訓練を行う患者に対し、起立姿勢の前に下半身の予備的運動を支援し、また、深部静脈血栓症を予防するための運動を支援し得るティルト台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、表面側に患者を乗せることができる十分な面積を有するマット部と、このマット部を裏面側で支持する架台と、この架台の基端側を軸支するとともに該架台を傾倒するための駆動部を具有する基部と、前記架台の基端側に設けられた足置き部とを備えるティルト台において、前記マット部は、患者の上半身を乗せる上部マットと、患者の上腿を乗せる中間マットと、患者の下腿を乗せる下部マットとに分離されており、前記上部マットは、架台に固定されており、前記中間マットは、前記上部マットに近接する位置において前記上部マットの端部または前記架台に回動自在に支承されており、前記下部マットは、前記中間マットに近接する位置において該中間マットとの間で回動自在な状態で連結されるとともに、その反対側が前記架台にスライド可能な状態で支持されており、前記架台には、前記中間マットと前記下部マットとで形成される表面を、前記マット部の表面側へ屈曲させるように駆動する駆動手段が具備されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、マット部は、上部マット、中間マットおよび下部マットに分離されるものであるが、中間マットと下部マットとで形成される面がフラットな状態とする場合には、従来のティルト台と同様に、患者が仰臥位(仰向け寝)でマット部に乗った状態により、水平姿勢と起立姿勢とに変化させることが可能となり、また、水平姿勢から起立姿勢までの範囲における任意の状態において、中間マットと下部マットとで形成される面を屈曲させることにより、当該屈曲に伴って患者の膝などの関節を曲げるように誘導することができる。
【0014】
ここで、中間マットのうち、上部マットに近接する位置が架台に回動自在に支持されていることから、上記屈曲の際の中間マットは、当該支持される部分を中心として傾斜することとなる。このとき、中間マットの自由端側(架台に支承されていない側)は、下部マットに回動可能な状態で連結されていることから、下部マットの当該連結部分を架台から離れる方向へ(すなわち、架台が水平な状態において上昇させるように)案内することとなる。また、下部マットのうち、中間マットに連続しない側が架台にスライド可能な状態で支持されることから、上記屈曲の際には、当該スライド可能な部分が移動して、当該屈曲による直線距離の変化に対応できるものである。そして、前記のような屈曲状態を解消させる(再びフラットな状態に戻す)ことにより膝などの関節を伸びた状態へ誘導させることができることから、上記の屈曲とその解除を繰り返すことにより、患者の膝などの関節の曲げ伸ばし運動を繰り返し誘導することができる。
【0015】
なお、上部マットおよび下部マットにおける「上部」および「下部」とは、患者の起立姿勢を基準とするものであり、水平姿勢においても「上部」および「下部」が維持される意味で使用する表現ではない。
【0016】
本発明は、上記構成における足置き部が、前記架台に固定される板状の足置きベース部と、この足置きベース部の表面に摺接され、患者の足底を当接させる足底当接部とを備え、前記足底当接部は、前記下部マットに近接する位置において該下部マットとの間で回動自在な状態で連結されるように構成することができる。
【0017】
上記構成によれば、足置き部の全体が固定されるものではなく、足置きベース部のみが固定され、この表面に摺接される足底当接部が下部マットとの間で回動自在に連結されることから、下部マットの変動(中間マットと下部マットによる屈曲)に伴って足底当接部の表面が傾斜することとなるものである。これにより、足底当接部に当接する患者の足は、足首の関節を曲げるように誘導されることとなるのである。なお、下部マットの変動に伴う足底当接部の変化は、中間マットおよび下部マットの表面が屈曲するように変化する際、下部マットのスライド部分が移動することに伴うものであり、また、下部マットのスライド部分の移動により、足底当接部との連結部分がスライド方向へ移動するため、当該部分は足置きベース部から離れ、足置きベース部に摺接する部分との間が、当該足置きベース部に対して傾斜する状態となるのである。これにより、マット部に乗った状態の患者の足首に対して、つま先を伸ばす方向への誘導を可能にするものである。
【0018】
さらに、本発明は、上記構成における駆動手段が、前記中間マットに対して前記架台に支承される部分を中心として回動させるように、該架台から進退可能に駆動するものであって、サーボモータと、このサーボモータによって正逆方向に回転する回転体と、この回転体に一端が接続され、該回転体の回転に応じて他端が進退の方向へ移動するリンク部とを備えるように構成することができる。
【0019】
上記構成によれば、サーボモータによって速度等が制御されつつ正逆方向に回転駆動される回転体によって、中間マットの自由端側(架台に支承されていない側)を架台に対して進退(架台が水平状態で昇降)させることができ、この自由端の昇降によって、支承される位置を中心として中間マットを回動させ、下部マットをも揺動させることができるのである。
【0020】
また、本発明は、表面側に患者を乗せることができる十分な面積を有するマット部と、このマット部を裏面側で支持する架台と、この架台の基端側を軸支するとともに該架台を傾倒するための駆動部を具有する基部と、前記架台の基端側に設けられた足置き部とを備えるティルト台において、前記マット部は、患者の上半身を乗せる上部マットと、患者の左右の上腿を個別に乗せる左右の中間マットと、患者の左右の下腿を個別に乗せる左右の下部マットとに分離されており、前記上部マットは、架台に固定されており、前記左右の中間マットは、それぞれ前記上部マットに近接する位置において前記上部マットの端部または前記架台に個別に回動自在に支承されており、前記左右の下部マットは、それぞれが前記中間マットに近接する位置において該中間マットとの間で個別に回動自在な状態で連結されるとともに、その反対側が前記架台にスライド可能な状態で支持されており、前記架台には、前記左右の中間マットと前記左右の下部マットとが形成するそれぞれの表面を、前記マット部の表面側へ個別に屈曲させるように駆動する駆動手段が具備されていることを特徴とするものである。
【0021】
上記構成によれば、中間マットおよび下部マットが左右に分離されていることから、マット部に仰臥位として乗せられる患者は、この左右の中間マットおよび下部マットに合わせて片脚ずつ乗せることができる。そして、左右両方が個別に作動(屈曲)することにより、両足を個別に運動させることができる。この個別の運動は、作動のタイミングを調整することにより、左右交互に屈伸運動をさせることができるほか、片側のみを屈伸させるように、または左右を同時に同じように作動させることも可能である。また、このような作動は、患者が起立姿勢となっている場合も同様である。
【0022】
なお、左右の中間マットおよび下部マットに分かれて患者の両足が個別に設置できるように、各マットに脚の固定用ベルトを設けてもよい。固定用ベルトの装着により、片方の脚の動きが他方の脚(またはマット)の動きの影響を受けることを回避し、想定される関節の屈伸を確実に実施させることができる。
【0023】
本発明は、上記構成における足置き部が、前記架台に固定される板状の足置きベース部と、この足置きベース部の表面に摺接され、患者の左右の足底を個別に当接させる二つの足底当接部とを備え、前記足底当接部は、前記左右の下部マットに近接する位置において該下部マットとの間で一つずつ独立して回動自在な状態で連結される構成とすることができる。
【0024】
上記構成によれば、左右の脚を独立して運動させる際に、足首の関節についても左右個別に運動させることができる。この足底当接部は、下部マットに連動することから、左右の下部マットが交互に作動する場合は、左右の足首の関節を交互に屈伸させることができ、また、片側のみを作動させる場合は当該片側の足首の関節を屈伸させ、さらに、同時に下部マットを作動させる場合には、左右の足首の関節を同時に屈伸させることとなる。
【0025】
また、本発明は、上記構成における駆動手段が、前記左右の中間マットに対して前記架台に支承される部分を中心として回動させるように、該架台から進退可能に駆動するものであって、単一のサーボモータと、このサーボモータの回転駆動を左右に伝達する伝達部と、この伝達部から伝達される回転駆動力によって正逆方向に回転する回転体と、この回転体に一端が接続され、該回転体の回転に応じて他端が進退の方向へ移動するリンク部と、前記伝達部と前記回転体との間にそれぞれ設置される電磁クラッチ部とを備えるように構成することができる。
【0026】
上記構成によれば、単一のサーボモータにより速度等が制御されつつ回転体を回転駆動できるうえ、電磁クラッチ部の作動により、伝達部から回転体へ伝達されるべき回転駆動力を伝達状態と非伝達状態とを選択することができる。この場合、サーボモータが単一であることから、左右の電磁クラッチをともに接続する(駆動力の伝達状態とする)ことにより、左右の脚に対して同時に同様に運動をさせるように誘導することができるほか、間欠的に接続する(接続と切断を交互に繰り返す)ことにより、左右の脚を交互に運動させるように誘導することも可能となる。
【0027】
さらに、本発明は、上記構成において、前記サーボモータの回転角度および回転速度を制御するとともに、中間マットと下部マットの表面を屈曲状態としたときの停止時間および正逆方向への回転を転換したときの停止時間を制御する制御部を備える構成とすることができる。
【0028】
上記構成によれば、サーボモータによる回転角度および回転速度が制御されることとなり、起立訓練を受ける患者の状態に応じた運動を行うことができる。このとき、回転角度や回転速度は、前記伝達部または回転体にエンコーダを設置することにより、制御された状態で回転角度等が伝達されているか否かをフィードバック制御することができる。また、屈曲状態としたときの停止時間を制御することにより、膝関節等を曲げた状態で所定時間維持させることができ、回転方向を正逆に変換するとき(すなわち屈曲しない状態)の停止時間を制御することにより、膝関節等の屈伸運動の始動の時期を調整することも可能となる。
【0029】
また、本発明は、上記構成の駆動手段が、前記架台の左右に個別に設けられた進退方向へ駆動するアクチュエータによって、前記下部マットが前記架台に支持される側を強制的にスライドさせる方向へ駆動するものとしてもよい。
【0030】
上記構成の場合には、下部マットのスライド部分を強制的に移動させることによって、中間マットと下部マットとの両端の距離を短縮させ、結果的に両者の連結部分を回動させつつ屈曲させることができる。また、二つのアクチュエータが左右の下部マットに対して個別に設置されることから、左右に分かれる中間マットと下部マットの屈曲を個別に制御することができる。このとき、同時に同様の駆動状態とすれば、両脚は同様の運動を行うように誘導され、左右で異なる駆動状態とすれば、両脚が異なる動きとなるような運動に誘導させることとなる。このとき、単純に両脚を交互に屈伸させることのほか、時差式に駆動させることにより、歩行時のようなタイミングで両脚を動作させるように誘導することも可能となる。
【0031】
さらに、本発明は、上記構成において、前記アクチュエータの進退駆動のタイミング、進退距離および進退速度を制御するとともに、前進時または後退時における停止時間を制御する制御部を備える構成とすることができる。
【0032】
上記構成によれば、アクチュエータによる駆動の距離を制御することにより、屈曲状態における角度を調整し、駆動の速度を制御することにより、屈曲および伸長の速度を調整し、前進時または後退時における停止時間を制御することにより、屈曲状態での停止時間または伸長状態での停止時間を調整することができる。そして、このアクチュエータは左右に個別に設置されることから、患者の左右の脚の状態(関節等を曲げられる程度など)に応じて、個別の角度や速度によって運動させるように誘導することも可能となる。
【0033】
また、本発明は、上記各構成において、前記左右の中間マットが隣接する適宜範囲を中間領域とし、該中間領域の中間マットを着脱可能にするとともに、該中間領域には出没可能なサドル部が設けられるように構成してもよい。
【0034】
上記構成によれば、中間マットは上腿を乗せることができるマットであるところ、この左右の中間マットの境界には、患者の股関節が位置することとなるため、この股関節の位置にサドルを設けることにより、起立姿勢時においてサドルに着座できる構成とすることができる。このとき、中間マットの左右の境界における適宜範囲を中間領域として、当該領域の中間マットを部分的に取り外すことができるようになり、マットが取り除かれた中間領域の範囲内において、中間マットの裏面側に没する状態でサドルを設置し、このサドルを表面側へ出没可能とすることにより、必要な場合にのみサドルを表面側に出現させて使用することができるのである。このサドルは、起立訓練に不慣れな患者が起立姿勢となった際のめまい等により脱力した場合にためのものであり、患者の不安の解消のために設置されるものである。
【0035】
本発明においては、さらに、前記架台に、両側部から延出する棒状の二つのアームレストが先端を対向させた状態で回動可能に設けられ、それぞれのアームレストの先端近傍に支持される二つの補助テーブルを備える構成とすることができる。
【0036】
上記構成によれば、起立姿勢または起立姿勢に近い状態となる際に、アームレストを回動させることによって、患者の前方(胸部前方付近)にアームレストを配置することができるとともに、患者は、このアームレストと補助テーブルとの双方に腕、肘、手首等を乗せることができることとなり、起立姿勢における体重を腕で支えることができるものである。
【0037】
上記構成の場合においては、前記アームレストの先端に、それぞれ有角状に折曲してなるグリップ部を備える構成としてもよい。
【0038】
このような構成の場合には、起立姿勢または起立姿勢に近い状態となったとき、患者がグリップ部を把持することにより、自身の姿勢を上半身によって支えることが可能となる。なお、折曲の角度は、直交方向でも良いが、患者が握りやすい角度としてアームレストの軸線方向に対して約60°の方向とすることが好ましい。
【0039】
また、本発明においては、前記マット部が、前記架台に固定される下層ベッドの表面上に積層された状態で設けられており、前記駆動手段は、前記下層ベッドを貫通し、または該下層ベッドの側面から前記マット部を屈曲させるように駆動するものとすることができる。
【0040】
上記構成によれば、マット部は、下層ベッドの表面上に積層される構成であるため、既存のティルト台を利用することができる。すなわち、既に存在するティルト台は、患者が仰臥位で乗ることができる広さのベッド部分が架台に固定されており、当該ベッドが架台と一体となって傾倒可能に構成されていることから、患者の起立訓練を行うことができるものである。そこで、このベッドを下層ベッドとして、その表面に前記マット部を積層することにより、当該マット部の表面に患者が乗ることにより、下半身の関節の屈伸運動を行う機能を付加させることができるのである。なお、マット部を駆動するための駆動手段は、架台に設置されるものであるため、当該駆動手段による前記中間マットまたは下部マットの駆動は、下層ベッドを貫通させ、または下層ベッドの側面の外方を利用して駆動力を伝達するものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、起立訓練を行う患者の上腿を乗せることができる中間マットと、下腿を乗せることができる下部マットとで構成される表面を屈曲することによって、ティルト台に乗った状態(マット部に仰臥位となった状態)の患者に対し、膝関節や足首関節などの下半身の関節の屈伸運動を誘導させることができることから、当該患者の下半身に対する予備的運動を支援することができるものである。
【0042】
この下半身の関節の屈伸運動は、患者が水平姿勢となっている状態で行われるものであるから、中間マットと下部マットとが連結される部分を上昇させる(両マットを山形に屈曲させる)ことにより、膝の位置が上昇し、股関節の屈曲とともに膝関節の屈曲を誘導し、この誘導により関節の屈伸運動を可能にするものである。また、足底当接部が下部マットに連結される構成の場合には、上記関節の屈曲と同時に足首の関節を伸長させることができ、下半身の各関節を屈伸させることにより、下半身への血流を増加させ、起立姿勢時における急激な血流の変化を緩和させることができる。
【0043】
さらに、上述のような下半身の屈伸運動は、起立姿勢において実施することも可能である。この場合、例えば、片方の脚を屈伸させることにより、他方の脚に重心が移動し、その脚に負荷をかけることが可能となり、現実の歩行に近い動作を誘導し、リハビリテーション効果が期待される。また、人工膝、股関節または大腿骨等の手術後などに問題となる深部静脈血栓症の予防には、片方の脚に荷重をかけるとともに、下半身の関節を屈伸させることにより、下腿の静脈の血流速度を増加させることができ、深部静脈血栓症の予防に資することができる。特に、深部静脈血栓症の予防には、下腿三頭筋を収縮させることが効果的であるとされていることから、足底当接部を連動させる構成の場合には、足首の関節を屈伸させるように誘導でき、これにより下腿三頭筋を収縮させることができる。従って、さらに深部静脈血栓症の予防効果を発揮させることができる。
【0044】
このように、予備的運動の場合には、ティルト台に患者が仰臥位で乗った状態において、中間マットまたは下部マットを駆動手段によって駆動することにより可能となるため、補助者が労力を要して補助する必要がないものである。また、患者が起立姿勢の状態で作動させる場合は、歩行状態に近似する訓練を行うことができる。さらには、マット部は、架台の傾倒状態に応じて任意の角度とすることができるため、歩行訓練に対する患者の慣れの程度や当日の患者の状況等に応じて適宜調整することができる。そして、水平状態から段階的に角度を大きくすることによって、本格的な歩行訓練前の予備的訓練をも可能にするものである。
【0045】
なお、下層ベッドの表面にマット部を積層する構成にあっては、既存のティルト台を利用しつつ下半身の関節の屈伸運動を誘導させる機能を付加させることができることとなる。この場合、既存のティルト台は、架台を傾倒し得る機能を備え、当該架台に強固に固定されたベッド(下層ベッド)を備えているため、当該ベッド(下層ベッド)の表面にマット部を積層することにより、マット部が下層ベッドの表面において屈曲することとなるものである。また、アームレストを設けた構成は、架台の側部から延出する二つのアームレストの先端によって補助テーブルを支持させることにより肘や手首等を広い面積によって支持できることとなり、起立姿勢における屈伸運動の際における患者の安定を支援することとなる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態の概略を示す図である。この図に示すように、ティルト台の概略の構成は、土台となる基部1と、この基部1に対して回動可能に軸支された架台2と、この架台2に支持されるマット部3とを備えている。
【0048】
基部1は、略直方体形状に設けられ、内部は中空であるが、この内部には図示せぬ油圧装置および制御装置を備え、全体として比較的大重量となっている。油圧装置は、架台2を回動するための油圧シリンダ11を作動させるためのものであり、制御装置は、後述する各部の作動を制御するためのものである。制御装置に対して制御信号を入力するための操作部12,13が基部の側面に設けられ、この操作部12,13には、各種のスイッチ類とともに、制御状態を表示する表示部が設けられている。また、基部1の一端側の縁部には、軸支用の支持部14,15が適宜間隔を有して立設されている。この支持部14,15は、架台2を回動自在に軸支するためのものである。
【0049】
架台2は、適宜間隔を有して配置される長尺な二本の縦フレーム21,22と、この両フレーム21,22の中間に介在される複数の角筒状または断面コ字状の横フレーム23,24,25とで、矩形の周辺部を形成しつつ適宜個所で補強された構造となっている。なお、図では、一つの縦フレーム21を破断させて描いているが、これは、架台2の内部構造をわかりやすくするためであり、本来的には連続したものである。各フレーム21〜25は、いずれも金属製で構成され、各接点を溶接によって強固に固着されている。上記縦フレーム21,22の一端には、基部1に軸支されるために軸部26が貫設されており、この軸部26の両端を前記基部1の支持部14,15に支持されることによって、回動自在な状態で基部1に装着できるようになっている。また、一部の横フレーム25には、基部1の油圧シリンダ11の先端部を連結するための連結部27が設けられている。この連結部27が油圧シリンダ11の進退駆動を受けることにより、前記軸部26を中心に架台2を回転させることができるものである。
【0050】
また、架台2には、後述するように、マット部3を駆動するために駆動手段4が、中央付近に設けられている。さらに、軸部26の近傍に位置する横フレーム23には足置き部5,6が固定されており、この足置き部5,6が架台2の外方(軸部26よりも外側)に位置するように設置されている。また、この足置き部5,6とは、反対側の端部には、アームレスト7,8が回動可能に設けられている。このアームレスト7,8は、回動させることにより先端部分をマット部3の表面側に配置することができるものであり、起立姿勢時の患者が腕を乗せることができるものである。なお、このアームレスト7,8は、後述のように、補助テーブルを設ける構成とすることができ、また、先端を折曲してグリップ部を設ける構成とすることも可能である。
【0051】
マット部3は、大別すると上部マット31、中間マット32、および下部マット33に分離して構成されている。上部マット31は、患者が仰臥位(仰向け寝)の姿勢となった状態において、当該患者の上半身を乗せるためのものであり、中間マット32は上腿を、下部マット33は下腿を乗せるためのものである。中間マット32および下部マット33は、さらに左右に分離しており、それぞれ左右の中間マット32a,32bと、左右の下部マット33a,33bで構成されている。これらが分離されていることから、それぞれが個別に架台2に設置されるものであり、上部マット31は固定領域であるため、全体として固定的に設置されるが、中間マット32および下部マット33は、可動領域であるため、その一部が架台に設置されるものである。
【0052】
中間マット32および下部マット33の設置の状態を具体的に説明すれば、中間マット32については、上部マット31に近接する位置の端縁(これを上縁という場合がある)が回動可能な状態で架台2に連結されるとともに、下部マット33に近接する位置の端縁(これを下縁という場合がある)が下部マット33の端縁との間で回動可能に連結されている。また、下部マット33ついては、中間マット32に近接する位置の端縁(これを上縁という場合がある)が前述のように中間マット32の下縁に連結されるとともに、その反対側の端縁(これを下縁という場合がある)を架台2に回動可能な状態で連結されている。また、この下部マット33の下縁は、架台2の縦フレーム21,22に連結されるものであり、さらに、この縦フレーム21,22の長手方向に沿ってスライド可能としている。
【0053】
なお、これらのマット31,32,33は、マットと称しているが、全体が柔軟な素材で構成されるものではなく、架台2との固定状態を強固にし、かつ、患者の重量を支えるために、裏面側には木製等の板状部材が設けられ、この板状部材の表面側に柔軟な素材が積層された状態となっている。
【0054】
ここで、中間マット32および下部マット33の可動のための駆動手段4について詳述する。駆動手段4は、前述のとおり、架台2に装着されるものであり、専ら、縦フレーム21,22の間に形成される領域に設置されている。
【0055】
図2は、基部1に架台2を装着した状態(マット部3を除いた)状態を示す図である。この図に示すように、駆動手段4は、基部1の油圧シリンダ11が作動する領域から外れた位置に設けられており、当該油圧シリンダ11とは、独立して駆動力を提供するようになっている。駆動手段4の構成は、概略として、サーボモータ41、伝達部42、回転体43およびリンク部44を備えている。サーボモータ41は、制御装置による制御信号に基づいて所定の回転速度により、正逆方向へ所定の回転角度まで回転駆動するものであり、伝達部42は、二種類の傘歯車45,46を介在させることにより、回転方向を変換しつつサーボモータ41の回転駆動力を伝達するものである。この伝達の際には、二種類の傘歯車45,46の歯数を異ならせており、減速機としても機能させている。
【0056】
回転体43は、本実施形態ではプーリによって構成されており、出力側の傘歯車46の回転力によって回転する小径プーリ47との間にタイミングベルト48を介在することによって回転可能としている。ここでも、小径プーリ47と回転体43との外径を異ならせることにより減速機能を発揮させている。なお、本実施形態では、出力側の傘歯車46と小径プーリとの間に電磁クラッチ49を介在させている。電磁クラッチ49を介在させることにより、傘歯車46から供給される回転駆動力の小径プーリ47への伝達について、伝達状態と非伝達状態とを操作することができる。すなわち、本実施形態では、図示のとおり、2個の回転体43を備えており、左右両側(左右の中間マット32a,32b)への駆動力を提供できるように構成していることから、左右のいずれか一方のみへの駆動力の提供を選択的に行うことができるようになっているのである。因みに、両方の電磁クラッチ49を伝達状態とすることにより、左右両方へ同時に駆動力を提供することも可能である。
【0057】
リンク部44は、棒状に形成されたリンクロッドで構成されており、基端側が回転体43の外周縁近傍に連結されている。従って、回転体43が回転することにより、このリンク部44の基端の位置が変動することとなり、他端(先端)に駆動力が伝達されるのである。このリンク部44の先端は、中間マット32a,32bの裏面に回動可能な状態で連結されるものであり、上述のとおり、中間マット32a,32bの上縁が回動可能に基台2に連結されることから、当該中間マット32a,32bとともにリンク機構が形成され、結果的に、リンク部44が揺動しつつ進退方向へ駆動することとなるものである。
【0058】
なお、図示を省略しているが、上記構成の駆動手段4は、数ヶ所において架台2に支持されるものであり、駆動手段4が架台2と一体的に設けられるものである。また、その一部として、架台2の縦フレーム21,22には軸受部28が設けられ、回転体43の枢軸を支持することができるようになっている。
【0059】
上記のような構成により、架台2にマット部3を設置することにより、患者をマット部3の表面に乗せながら、起立訓練を可能にするのである。
図3(a)は、架台2にマット部3を設置した状態を示している。この図に示すように、マット部3は、5枚のマット31,32a,32b,33a,33bに分離されているが、相互に僅かな隙間を形成するものの、全体として単一のマット部3として架台2に装着されるものである。そして、患者がマット部3の表面に乗った際には、上半身が上部マット31によって支えられ、下半身が中間マット32a,32bおよび下部マット33a,33bによって支えられるようになっている。中間マット32a,32bおよび下部マット33a,33bには、患者の上腿または下腿を固定するための固定ベルト30を適宜個所に設けることができる。図は、右側の中間マット32bおよび下部マット33bにのみ固定ベルト30を設置した状態が示されているが、左側にも同様に設置することができる。また、図に例示されている固定ベルト30は、両側に分離した帯状体によって構成されており、両者の先端に面ファスナ等を設けることによって連続させることができるものである。また、架台2に設置される足置き部5,6は、マット部3を設置した状態において、下部マット33a,33bの下縁の近傍に位置するようになっており、患者が乗った状態において、足底が足置き部5,6の近くに位置するようにしている。これにより、架台2を傾倒させて起立姿勢となった際に、患者が滑り落ちないようにしているのである。なお、この足置き部5,6の位置は、患者の身長等に応じて位置を調整することができるように構成してもよい。
【0060】
そして、前述の駆動手段4を操作することにより、中間マット32a,32bおよび下部マット33a,33bの表面の角度が変化することとなる。この状態を
図3(b)に示す。なお、
図3(b)は、左右の中間マット32a,32bに対し同様の駆動力を伝達させた状態を示している。この図に示すように、中間マット32a,32bが回動することとなり、その下縁が架台2から離れる方向(マット部3が水平状態において上昇する方向)へ移動することとなるのである。この中間マット32a,32bの回動に伴って、下部マット33a,33bの上縁は中間マット32a,32bの下縁に引っ張られて上昇し、下部マット33a,33bの下縁は、縦フレーム21,22の表面をスライドして、上記角度変化に伴う直線距離の変化に対応するようになっている。この一連の作動により、中間マット32a,32bと下部マット33a,33bの表面が山形(表面側に隆起する状態)に屈曲されるのである。
【0061】
また、駆動手段4による伝達状態(電磁クラッチ49)を操作して、左右の中間マット32a,32bのいずれか一方のみを回動させることもできる。この場合を
図4に示す。なお、
図4(a)は、左側の中間マット32aのみに駆動力を伝達して回動させた状態を示し、また、
図4(b)は、右側の中間マット32bのみを回動させた状態を示している。これらの図に示されているように、駆動力が伝達された側の中間マット32a(または32b)のみが回動するため、これに伴う下部マット33a(または33b)とともに表面が山形となるように屈曲するものである。このように、左右の32a,33a(または32b,33b)の表面を選択的に山形に屈曲させることができることから、定期的(周期的)に左右を交代させるように作動することも可能である。
【0062】
なお、中間マット32a,32bの回動は、駆動手段4の正転方向への回転によって駆動力が伝達されるものであるが、元の状態への復元に際しては、駆動手段4が逆転方向へ回転することによって行われる。従って、原則的には、駆動力の伝達状態(電磁クラッチ49)の操作は、正転後に逆転して復元した際に行われるものである。その際、固定ベルト30(
図3(a)参照)を使用することにより、患者の脚部(上腿および下腿)は、中間マット32a,32bおよび下部マット33a,33bの屈曲状態に伴った速度等によって、屈伸するように誘導されるのである。
【0063】
次に、ティルト台の全体の作動態様について説明する。ティルト台は、起立訓練を行うべき患者に対して、起立姿勢を維持させることが主たる目的であるため、当然のことながら、マット部3の表面が鉛直方向となるまで変化させることができるものである。この状態を
図5に示す。
図5(a)は水平姿勢としている場合を示しており、
図5(b)は徐々に傾倒し、起立姿勢に到達する状態を示している。
【0064】
上記の姿勢の変化(傾倒の状態)は、基部1に内蔵される駆動装置(油圧装置)によって油圧シリンダ11を伸長させることによって行うことができる。従って、油圧シリンダ11を収縮させることにより、起立姿勢から再び水姿勢へ戻すことができるものである。すなわち、油圧シリンダ11の伸縮によって、基部1の支持部14,15に支持される軸部26を中心に、架台2が回動することとなるため、油圧シリンダ11の長さに応じて架台2の回動の角度が決定し、傾倒の状態を適宜変更することができるのである。また、アームレスト7,8は架台2に軸部70を介して支持されていることから、起立姿勢の際にアームレスト7,8の軸部70を中心に回動させることにより、その先端71,81(
図1)を患者の胸部前方に移動させることができる。なお、図示を省略しているが、このアームレスト7,8を所定の位置で固定するために、軸部70とアームレスト7,8とが固定ネジによって固定できるようになっている。
【0065】
また、足置き部5,6は、架台2に固定されていることから、架台2の傾倒に伴って、その位置および角度が変化するものである。この足置き部5,6は、矩形の表面を有する略板状の部材で構成され、その表面がマット部3の側に向かって配置されている。矩形表面の一辺(板状の端縁)がマット部3の表面から直交方向に大きく突出するように配置され、マット部に仰臥位で乗った患者の足底を矩形表面に当接できる状態を維持しつつ、架台2とともに可動させることができるようになっている。なお、この足置き部5,6は、軸部26の近傍に固定されて軸部26よりも架台2の外側に設置されていることから、架台2が水平姿勢となる場合は、架台2と同程度の高さに位置しているが、起立姿勢へ変化させる場合には、軸部26を中心に下方へ回動することとなり、起立姿勢の状態では、十分に低い位置まで移動させることができるようになっている。起立姿勢では、患者は足置き部5,6の矩形表面上に立った状態となるため、その位置を低くして患者の不安を緩和させるようにしているのである。
【0066】
次に、
図6を参照しつつ、中間マット32および下部マット33の可動状態を詳述する。可動のための駆動力の伝達は前述したとおりであり、駆動手段によって中間マット32に駆動力を伝達し、この駆動力によって両マット32,33を屈曲させるものである。そこで、中間マット32は、その上縁側の裏面と架台2の上面との間に、蝶番91などの連結手段を介在させることにより、回動可能な状態で連結するのである。このように、中間マット32の上端側を架台2に固定することにより、架台2に対して相対的に回動できるものである。なお、回動の方向は、中間マット32の表面を矩形にするときの上縁側の直線状の端縁を中心とするものであり、中心線を架台2の長手方向(縦フレームの長手方向)に対して直交方向とすることにより、架台2が水平な状態において、上縁を支点に下縁を上昇させることができるのである。また、蝶番91を使用する場合、中間マット32の表面と上部マット31の表面とがほぼ同一平面となる状態を基準とし、その状態から両表面が有角的となる方向へ回動できるものが使用される。
【0067】
また、中間マット32の下縁側と下部マット33の上縁側とが連結されている。この連結には、蝶番92などの連結手段を介在させることによって回動可能な状態とすることができる。当該連結手段は、架台2には連結される両マット32,33のみが連結されるものであることから、中間マット32が回動することによる下縁の上昇(架台2を水平とした場合における上昇)に伴って、下部マット33の上縁を同時に上昇することとなるのである。他方、下部マット33の下縁は、架台2に連結されるものであることから、上縁が上昇することにより、下縁が架台2の表面に位置するため、結果的に下部マット33の表面は、中間マット32と反対側に傾斜することとなる。また、下部マット33の下縁側は、架台2に対してスライド可能となっているため、中間マット32の回動の際に、中間マット32の上縁端から下部マットの下縁端までの距離の変化に応じて、当該下部マット33の下縁がスライドすることとなるのである。
【0068】
上記のようなスライド可能な連結には、スライダ式の連結具93を介在させることができる。一般的なスライダ式連結具は、断面略C字状とする長尺な本体部と、この本体部の内部に長手方向に沿って摺動可能な摺動部と、この摺動部の一部を本体部から突出させた突出部とを備えたものである。このスライダ式連結具の本体部と摺動部の突出部とを、異なる部材にそれぞれ連結することにより、摺動部が本体部の長手方向へのみ移動できる状態で両部材を連結することができるのである。本実施形態では、このスライダ式の連結部93における摺動部の摺動方向が、架台2の長手方向(縦フレームの長手方向)となるように、本体部を架台2に固定している。そして、摺動部の突出部に、下部マット33の下縁を連結することにより、当該下縁をスライド可能な状態としているのである。なお、下部マット33の下縁は、下部マット33が傾斜する際に、摺動部に対して回動することとなるため、本実施形態では、摺動部の突出部と下部マット33の下縁との間に回動軸を介在させ、回動可能にしている。この回動は、蝶番などを利用することにより、当該蝶番の回動軸を中心に回動させることも可能である。
【0069】
なお、
図6では、架台2とマット部3との間に間隙を有するように示されているが、これは、各部の連結状態をわかりやすくするためであり、架台2によってマット部3が支持できるように、間隙部分の適宜個所には補強部材等が設けられるものである。また、架台2を水平な状態に維持する場合、上部マット31に作用する重量を分散して支持するため、基部1の上面部を隆起させた形状とし、または基部1から支持部を立設して、これらを架台2の裏面側に当接させるように構成してもよい。
【0070】
本実施形態は上記のように作動するものであることから、架台2を水平な状態とする場合(
図6(a))には、上部マット31、中間マット32および下部マット33の表面は同じ水平面となっている。このとき、中間マット32の上縁から下部マット33の下縁までの距離L1は、最も離れた状態となっている。この状態から、中間マット32を少し回動させることにより(
図6(a))、下部マット32の下縁と下部マット33の上縁は、ともに上昇して上部マット31の表面よりも高くなり、両マット32,33の表面が山形に屈曲することとなる。このとき、下部マット33の下縁はスライドすることとなり、中間マット32の上縁から下部マット33の下縁までの距離H2は、上記回動にともなって短くなっている。さらに、中間マット32を回動させることにより(
図6(c))、下部マット32の下縁と下部マット33の上縁はさらに上昇することとなり、両マット32,33の表面によって形成される山形の傾斜が大きくなる。この場合においても、下部マット33の下縁はスライドすることから、中間マット32の上縁から下部マット33の下縁までの距離H3は、さらに短くなるものである。このようなマット部3の屈曲により、このマット部3に仰臥位で乗る患者の膝の位置が高く持ち上げられ、股関節および膝関節が曲げられた状態となるのである。
【0071】
また、
図7に示すように、架台2を傾倒させた状態においても中間マット32および下部マット33を山形に屈曲させることによって、患者の下腿の関節を屈伸させることができる。すなわち、前述のとおり、架台2は、油圧シリンダ11の進退駆動によって、マット部3の表面を水平状態から鉛直状態までの範囲で変化させることができるものであることから、例えば、マット部3の全体を傾斜させた状態(
図7(a))または起立姿勢の状態(
図7(b))で、安定的に停止させることができる。そこで、このような傾斜状態または鉛直状態で駆動装置を作動させることにより下腿の屈伸運動を誘導させることができるのである。なお、駆動装置は、架台2と一体的に設けられることから、架台2の角度(マット部3の表面の角度)が変化した場合であっても、これらとともに移動することとなるものである。
【0072】
このように、本発明の第一の実施形態によれば、水平姿勢における作動の場合(
図6(c)参照)には、本格的な起立訓練を行う(架台2を起立姿勢とする)前の段階で、水平姿勢において、股関節や膝関節の屈伸運動を行うことができ、ティルト台に乗った状態で予備運動を実施できるのである。また、上述のように、中間マット32および下部マット33を左右に分離するとともに、個別に回動させることにより、左右の関節を個別に運動させることができる。これにより、左右の脚の予備運動を交互に実施することができる。また、片方のみの運動が必要な場合、例えば、片方の脚のみを負傷し、その脚についてのみリハビリを行うべき必要性がある場合には、一方のみについて屈伸運動を行うこともできる。
【0073】
また、駆動源として、サーボモータを使用していることから、その回転速度、回転角度、回転方向および始動のタイミングなどを制御することができる。回転速度を制御することにより、関節の屈伸の速度を調整でき、回転角度を制御することにより、関節を曲げる際の大きさを調整することができる。また、回転方向を制御することにより、正逆の回転方向を変更し得ることとなり、マット部の変形および復元に駆動力を作用させることができ、速度調整された状態での円滑な関節の屈伸運動を可能にすることができる。そして、始動のタイミングを制御することにより、関節を曲げた状態での一時停止および停止時間の調整を可能にし、また、間欠的な屈伸運動を可能にするものである。なお、回転速度および回転角度を所望の状態に制御するために、回転体43などの出力側にエンコーダを設け、設定された速度または角度となるようにフィードバック制御させることも可能である。また、屈伸回数を制御するためにカウンタを設ける構成とすることも可能である。
【0074】
さらに、架台2を傾倒させた状態(
図7(a)および(b)参照)には、歩行と同様の動作を可能にするため、離床できない患者に対して歩行に近似した運動を可能にするものである。すなわち、片脚を曲げた場合には、当該脚の足底は足置き部5,6から浮き上がり、他方の脚の足底部が足置き部5,6を踏んだ状態となり、当該脚側に重心を移動させるように誘導することができるのである。なお、
図7では、膝関節を曲げた状態を図示しているが、これは曲げた側の脚を示すものであって、図示しない側の脚は伸びた状態となっている。
【0075】
このように、架台2を傾倒させた状態で片方ずつの脚を屈伸するように、マット部3が誘導することにより、患者は左右交互の足で体重を支えることとなるため、歩行時と同様の体重移動を行うこととなる。このような訓練によって、体重移動による負荷を下腿に与えることができることから、下腿の静脈の血流速度を増加させることができ、深部静脈血栓症を予防する効果をも得ることができるのである。また、このような訓練は、離床によって歩行訓練(リハビリテーション)を行う前の患者であっても容易に実施することができ、架台2(マット部3)の傾斜角度を段階的に鉛直状態に近づけることにより、患者は、起立姿勢に徐々に慣れつつ、下腿の運動および深部静脈血栓症の予防を行うことができるのである。
【0076】
次に、本発明の第二の実施形態について、
図8を参照しつつ説明する。本実施形態は、第一実施形態の足置き部5,6の構成を変形したものである。
図8は、いずれも架台2を水平な状態とした場合であり、
図8(a)は中間マット32および下部マット33を屈曲させる前の状態を示し、
図8(b)は、中間マット32および下部マット33を僅かに屈曲させた状態であり、
図8(c)は大きく屈曲させた状態を示す。これらの図に示されているように、本実施形態の足置き部105は、架台2に固定される足置きベース部151と、この足置きベース部151の表面を摺接しつつ揺動する足底当接部152とを備える構成としたものである。足置きベース部151は、基本的には第一実施形態の足置き部と同様であるが、表面側(足底当接側)に足底当接部152が配置されることから、下部マット33との間に適宜間隔を有して設けられている。また、当該表面には足底当接部152が摺接されることから、平滑な平面が形成されている。
【0077】
足底当接部152は、患者の足底が当接できる程度の十分な面積を有する表面部150aを有する板状の本体部150で構成され、裏面部150bには、足置きベース部151の表面との摺接を補助するための転動体153が設けられている。この転動体153が足置きベース部151の表面を転動することにより、足底当接部152の摺接を円滑にするのである。この転動体153は、本体部150の先端150cの近傍に設けられ、本体部150が足置きベース部151の表面に対して有角的に傾斜する場合において、少なくとも転動体153が足置きベース部151に当接できるようにしている。
【0078】
また、足底当接部152の本体部150の後端150dは、下部マット33の下縁に回動可能な状態で連結されている。回動可能に連結するためには、両者間に蝶番154などの連結部材を介在させることができる。本体部150の後端150dを下部マット33の下縁に回動自在に連結されることにより、下部マット33が移動する際には、これに伴って、本体部150の後端150dが移動することとなり、足底当接部152は、足置きベース部151に対して傾斜させることができるのである。
【0079】
すなわち、水平姿勢において、マット部3を変化させない状態(
図8(a))では、下部マット33の下縁は最も足置き部105に接近した状態となっており、この状態では、足底当接部152の本体部150は、足置きベース部151に対して平行(本体部150の表面150aが足置きベース部151の表面に平行)となっており、第一実施形態の足置き部と同じ構成となっている。これに対し、マット部3を変化させた状態(
図8(b)、(c))では、下部マット33の下縁が中間マット32の回動の中心方向にスライドするため、足底当接部152の本体部150の後端150dも移動することとなる。このとき、先端150cに近接する裏面105bに設けられた転動体153が、足置きベース部151の表面を転動することにより、当該本体部150の先端150cの位置が変動するため、足底当接部152が傾倒することとなるのである。
【0080】
なお、下部マット33が僅かに変化した程度(
図8(b))では、下部マット33の表面と足底当接部152の表面150aとの角度は大きく変化しないものの、下部マット33が大きく変化した場合(
図8(c))には、下部マット33の表面と足底当接部152の表面150aとがなす角度が、鈍角となるように大きく変化することとなる。
【0081】
上記構成の第二実施形態によれば、膝関節等の屈伸のためにマット部3を変化させる場合、下部マット33の変化に伴って足底当接部152が傾倒することとなるから、患者が足底を足底当接部152に当接させた状態での屈伸を可能にするとともに、足底当接部152の変化に合わせて足底の状態を変化させることにより、足首関節を屈伸させることも可能となる。そして、足首関節が屈伸されることによって、下腿三頭筋の収縮を誘導することとなるから、患者は深部静脈血栓症の予防に効果的な運動を行うことができることとなるのである。
【0082】
このような足底当接部152の作動は、起立姿勢またはこれに近い状態における患者の運動において顕著な効果を有する。すなわち、
図9に示すように、起立姿勢の患者は、足底によって体重を支えることとなることから、足底当接部152の角度が変化することによって、必然的に足首の関節を曲げるように誘導される。そして、左右の脚を交互に屈伸することにより、交互に体重移動が誘導されることから、伸ばした側の脚は体重による負荷が与えられ、曲げた側の脚は足首関節が変化するように誘導されるのである。このような足首関節を含めた下腿の各関節の屈伸を誘導することにより、さらに現実の歩行状態に近似した運動を行うことができ、さらには、深部静脈血栓症の予防効果も増大することとなるのである。なお、
図9(a)は、マット部3の全体を傾斜させた状態であり、
図9(b)は起立姿勢の状態を示している。
【0083】
なお、図は、片方の足置き部105についてのみ表示しているが、第一実施形態と同様に左右二個所にそれぞれ設けられており、患者は左右の足底を足底当接部132に個別に当接させることができるものである。これにより、左右の脚を個別に運動させる場合、その脚の屈伸運動の際に足首関節をも屈伸させることができることとなる。
【0084】
また、患者の足首の関節が足底当接部152の表面に連動して屈伸できるように、足底当接部152に固定ベルトを設ける構成としてもよい。さらに、足底当接部152が足置きベース部151の表面上を確実に摺接できるように、足底当接部152の本体部150について、その先端150cを足置きベースに向かって付勢するように構成してもよく、または、転動体153の転動に伴って移動する回転軸の位置を規制させるようなレールを設ける構成としてもよい。
【0085】
次に、本発明の第三の実施形態について、
図10を参照しつつ説明する。本実施形態は、
図10に示すように、マット部3の可動のための駆動力をアクチュエータ104によって得るように構成したものである。このアクチュエータ104は、出力部141を直線方向に進退可能に駆動するものである。また、このアクチュエータ104を縦フレーム21,22に固定するとともに、その進退方向を縦フレーム21,22の長手方向とするものである。そして、このアクチュエータ104の出力部141の先端を下部マット33の下縁に連結することにより、当該下縁を強制的にスライドさせることによって、中間マット32および下部マット33を屈曲させ得るものである。前述のように、中間マット32と下部マット33の屈曲は、下部マット33の下縁のスライドを伴うものであることから、逆に、下部マット33の下縁のスライドを強制することにより、これに伴って中間マット32および下部マット33を屈曲させるのである。なお、出力部141の先端には、下部マット33の下縁を連結するためのブラケット142が設けられている。下部マット33との間で回動可能に連結するため、上記ブラケット142と下部マット33の下縁との間に蝶番などの連結具を介在させることができる。
【0086】
アクチュエータ104は、一般的な構造のものが使用されることから、本体部には、モータとピニオンが内蔵され、出力部141の基部が本体部の内部においてラック状となっている。従って、モータの回転力がピニオンを介してラック状基部を進退させ、その進退によって出力部141を進退方向へ駆動させるものである。そして、上記本体部に内蔵されるモータの回転速度、回転数などを制御することにより、出力部141の進退距離や新他速度を調整し、これにより、速度や角度等が調整されつつ中間マット32および下部マット33を回動させることができるのである。なお、アクチュエータを制御するための制御装置は、基部1の内部に設けられ、操作部によって入力することができる。また、制御すべき条件については、速度等に限らず、進退駆動のタイミングや停止時間なども含むことができる。
【0087】
次に、本発明の第四の実施形態について、
図11を参照しつつ説明する。本実施形態は、
図11に示すように、架台202の表面側に固定された下層ベッド203の表面に、マット部3を積層したものである。マット部3を駆動するための駆動装置4またはアクチュエータ104は、第一または第三の実施形態等同様に、架台202に設けられている。本実施形態は、専ら既存のティルト台を利用する場合の態様であり、下層ベッド203は、本来的には患者を乗せるためのベッドとして機能するものであり、架台202の作動により患者を水平姿勢から起立姿勢までの範囲内で角度を変化させ得るものである。本実施形態においては、上部マット31は、下層ベッド203の表面に積層された状態で固定されるものであり、中間マット32および下部マット33は、それぞれ回動可能な状態で設置される。中間マット32の上縁は、下層ベッド203の表面に回動自在に連結するか、または、下層ベッド203を貫通し、もしくは下層ベッド203の側方を利用して、架台202との間で連結されるものである。また、下部マット33の下縁は、下層ベッド203の表面との間でスライド可能に連結するか、または、下層ベッド203の側方を利用して、架台202との間で連結されるものである。駆動装置としてアクチュエータ104を使用する場合(
図10)には、架台202との間で連結される方法が選択される。
【0088】
また、サーボモータを使用する駆動装置4によって中間マット32を駆動する場合(
図2)には、回転体43に設けられるリンク部44が中間マット32に連結できるようにするため、リンク部44が下層ベッド203を貫通するように設ける構成とすることができる。この場合、リンク部44が揺動する範囲について、下層ベッド203に貫通孔を設けることとなる。なお、下層ベッド203を加工することが困難な場合には、下層ベッド203の側方に突出する状態で回転体43およびリンク部44を配置し、当該側方から中間マット32に連結するように構成してもよい。
【0089】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、これらは一例を示すものであって、本発明が上記の実施形態に限定される趣旨ではない。従って、第二の実施形態と第三の実施形態は、それぞれ異なる構成部材を変形しているが、第二の実施形態に示した足置き部105の構成を第三の実施形態に採用してもよいのである。さらに、いずれの場合においても第四の実施形態に示したように、下層ベッド203の表面にマット部3を積層する形態としてもよいものである。また、実施形態に示した各構成を変形することができる。すなわち、回動可能な状態で連結するための部材として蝶番を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、架台2と中間マット32との連結には、架台2の回動軸を、中間マット32には円筒部をそれぞれ設け、回動軸に対して円筒部を挿入させるように構成してもよいのである。その他の回動可能な状態による連結についても同様である。
【0090】
また、上記実施形態に他の構成部材を付加する構成としてもよい。
図12には、その変形例を示している。この変形例は、第一の実施形態において、中間マット32の一部からサドル部310を出没可能に設けたものである。架台320の横フレーム321,322に固着される支柱311を設け、サドル部310は、この支柱311の先端に回動可能な状態で設けられるものである。また、このサドル部310をマット部303の表面に出現させるために、左右の中間マット332a,332bが隣接している境界領域には、第三の中間マット(中間領域の中間マット)330が設けられている。この第三の中間マット330は左右の中間マット332a,332bから分離しており、この第三の中間マット330を着脱可能としている。従って、この第三の中間マット330を取り外すことにより、当該領域は、マット部303の裏面側と連通させることが可能となっているのである。このように連通させた領域から、架台320に設けたサドル部310を適宜な方向へ回動させることにより、マット部303の表面に出現させることができるのである。
【0091】
なお、このサドル部310は、起立姿勢となった患者が脱力等によってティルト台から転落しないために、緊急的に着座するためのものである。従って、水平姿勢となっている場合には架台320に没する状態としておき、第三の中間マット330は所定領域に装着されている。
【0092】
そして、
図13に示すように、起立姿勢へ架台303を回動させた際に、第三の中間マット330を取り外し、サドル部310を出願させるのである。なお、起立訓練が進んだ患者であって、起立姿勢において脱力の可能性がない場合には、起立姿勢においてもサドル部310を出現させることなく使用することができる。
【0093】
また、アームレスト7,8については、
図14(a)に示すように、先端の近傍に補助テーブル470,480を有するアームレスト407,408を使用してもよい。このように、適度な面積を有する補助テーブル470,480がアームレスト407,408に設置されることにより、腕や肘などが広い範囲で支持されることとなり、図示のように起立姿勢における患者の上半身を安定させることができる。この補助テーブル470,480は、患者の体重を支えるためのものであることから、腕や肘などに対する緩衝効果を得るため、少なくとも表面側には柔軟な素材で構成することが好ましい。例えば、レストアーム407,408に固着される基部については、木製合板や金属プレートなどの強固な材料で構成し、その上に皮革または合成樹脂等の柔軟な材料を積層するように構成することができる。また、上記のような積層構造の場合、両素材の中間には、緩衝効果のためにスポンジ等を使用してもよい。
【0094】
さらに、
図14(b)に示すように、アームレスト407,408の先端を折曲して、グリップ部471,481を構成させてもよい。このように、アームレスト407,408の先端にグリップ部471,481が存在することにより、患者は腕や肘などを補助テーブル470,480に乗せた状態で、手でグリップ部471,481を握ることができることから、起立姿勢において比較的不安定な状態となった場合でも、腕力によって身体を支えることができる。しかも、患者は水平姿勢から起立姿勢へと角度変化する際の体位の変化を不安に感じる場合があり、グリップ部471,481を把持できることによって心理的な安心感を得ることもできるのである。
【0095】
グリップ部471,481は、アームレスト407,408の軸線方向に対して有角状に折曲することによって構成されるものであるが、その表面に合成樹脂等の被覆部材を設けてもよい。なお、当該グリップ部471,481の折曲角度は、アームレスト407,408の軸線方向に対して直交方向としてもよいが、患者が容易に把持できるように、当該軸線方向に対して鋭角方向に(例えば60°の角度で)折曲することが好ましい。しかも、この鋭角方向への折曲は、図示のように、先端を対向させた際、折曲部分から先端にかけて徐々に間隙が小さくなる方向としてもよく、また、間隙を同じにしつつ先端が徐々にマット部3の表面から離れる方向としてもよい。さらには、上記の双方を合わせ、先端部が徐々に間隙を小さくしつつ、かつマット部3の表面から徐々に離れるような方向に折曲してもよい。そして、折曲部を含むグリップ部471,481をアームレスト407,408とは別の部材で構成し、当該グリップ部471,481をアームレスト407,408の軸回りに回転できる状態とすれば、折曲方向を適宜変化できる構成とすることができる。
【0096】
なお、上記のような変形例のほかにも種々の付加的要素を追加することが可能である。すなわち、マット部3は、各マットに分離した構成としていることから、その対向する端縁には適宜な間隙が形成されることとなるため、この間隙部を閉塞するような部材を設けてもよい。例えば、柔軟な素材による緩衝部材を間隙部分に挿入する構成とすること、または、伸縮性を有する布地によって、近接する端縁間の表面を連続するように被覆する構成がある。中間マット32および下部マット33による山形の屈曲の際には、前記端縁間に形成される間隙の大きさが変化するため、患者の皮膚等が挟まれることを防止するためである。なお、予め上記間隙を十分に大きい状態とすることにより、患者の皮膚が挟まれることが想定されないため、被覆すべき部材を設けない態様でもよい。