特許第6089255号(P6089255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 植木 雄太郎の特許一覧

<>
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000002
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000003
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000004
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000005
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000006
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000007
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000008
  • 特許6089255-漢字学習用具 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6089255
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】漢字学習用具
(51)【国際特許分類】
   G09B 1/32 20060101AFI20170227BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20170227BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   G09B1/32
   B42D15/00 301N
   G09B19/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-240622(P2015-240622)
(22)【出願日】2015年11月23日
【審査請求日】2015年12月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 小学校の漢字教室にて使用しました。1.目黒区立不動小学校教室内(住所:東京都目黒区下目黒6−11−35)において、平成27年5月23日、平成27年9月12日、平成27年9月26日、平成27年10月10日、平成27年11月21日に漢字教室教材として使用しました。 2.杉並区立方南小学校教室内(住所:東京都杉並区方南1−52−14)において、平成27年11月7日に漢字教室教材として使用しました。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515307353
【氏名又は名称】植木 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】植木 雄太郎
【審査官】 櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−207414(JP,A)
【文献】 再公表特許第2008/015825(JP,A1)
【文献】 登録実用新案第3125418(JP,U)
【文献】 特公平07−052316(JP,B2)
【文献】 特公平07−052317(JP,B2)
【文献】 国際公開第2010/131924(WO,A2)
【文献】 池袋中国語コラム,[online],株式会社イーチャイナ,2014年 7月24日,イーチャイナアカデミー池袋校ホームページ、[2016年3月29日検索],URL,http://e-chinaikb.jp/?p=8940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00−15/00
15/04−19/00
G09B 1/00− 9/56
17/00−19/26
A63F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢字の成り立ちを示す古代文字を1枚のカードに1字表示した漢字学習用であって、部首や基本漢字(象形指示文字)に限らず、古代文字意味を持つパーツに分解され、当該パーツが表す意味概念別に分類され、各概念別に特定のルールに従って色分けして表示されていることを特徴とする漢字学習用具。
【請求項2】
字の成り立ちを示す古代文字を1枚のカードに1字ずつ表示した複数枚のカードからなる漢字学習用であって、部首や基本漢字(象形指示文字)に限らず、個々の古代文字意味を持つパーツに分解され、当該パーツが表す意味概念別に分類され、各概念別に全てのカード特定のルールに従って色分けして表示され、パーツの種類に応じて複数の前記カードをグループ化することができることを特徴とする請求項1記載の漢字学習用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢字学習用具に関し、より詳しくは、漢字の成り立ちを示す古代文字を、意味を持つパーツに分解した上で、当該パーツが表す意味を概念別に色分けして表示することにより効率よく漢字を学習するための漢字学習用具に関する。
【背景技術】
【0002】
漢字を覚えるための従来の技術としては、漢字や古代文字を1字ずつそれぞれ1枚のカードに単色で記載した漢字学習用具がある。
【0003】
従来、漢字を覚えるためには漢字を繰り返しノートに書いたり、クイズ形式の電子式漢字ゲームなどを使用するなどして暗記していた。書き取りは単調な作業であり、ともすると形を覚えるだけの作業になりがちであった。罰則として大量の漢字の書き取りを児童に課すことは漢字嫌いや漢字離れを招く一因となるとして、近年では教育現場で問題にもなっている。またテレビゲームや携帯式ゲーム機器での漢字ゲームでは、1字1字の書き順や読み方については楽しく記憶できても、漢字の成り立ちから漢字を系統立てて理解するという効果まで期待できる内容のものがなかった。
【0004】
これら問題点を解消するために、漢字カードと称されるカルタ様の漢字学習用具がある。漢字の成り立ちを表す古代文字を用い、現代の漢字と古代文字を関連づけることで漢字や部首を覚えやすくする目的で作られたものである。
【0005】
特許文献1には、漢字の部首と、部首の成り立ちを示す古代文字と、古代文字の成り立ちを示す絵文字と、部首と絵文字とを関連づけて覚えるための唱え言葉を表示するカードが開示されている。これらカードは190種類の部首を12種類のグループに分類しており、部首の種類に応じて複数組の学習カードをグループ化して使することが可能である。
【0006】
また、特許文献2には、基本漢字(象形指示文字)と、基本漢字(象形指示文字)の成り立ちを示す古代文字と、古代文字の成り立ちを示す絵文字と、基本漢字(象形指示文字)と絵文字とを関連づけて暗記するための唱え言葉を表示するカードが開示されている。これらカードは象形文字や指示文字(以下、「象形指事文字」と称す。)と呼ばれる基本漢字101字より成り、その他の会意文字や形声文字(以下、「会意形声文字」と称す。)がそれらの組合せで成り立つことから、基本漢字101字を覚えることで殆どの漢字を簡単に覚えることが可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−52316号公報
【特許文献2】特公平7−52317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2のいずれの技術においても古代文字を表示したカードは1枚のカードに1字の古代文字を単色で記載しただけの構成であり、部首のもととなる漢字の成り立ちを示す古代文字カード基本漢字(象形指示文字)101の成り立ちを示す古代文字カードのみで構成される。これらの応用で基本漢字101以外の漢字の成り立ちも理解できると記載されているが、古代文字が意味を持つ複数のパーツから構成されている場合は、まず古代文字の分解作業から着手しなければならない。部首だけではなくひとつひとつの漢字の成り立ちを学習するや、基本的な象形文字以外の漢字を学習するには古代文字の分解作業が必要であり効率が悪い。特に漢字学習の初期段階にある小学校低学年児童、未就学児、外国人にとっては、会意形声文字の成り立ちを示す古代文字を、意味を持つパーツに分解する作業は困難である。
【0009】
また、特許文献1の学習カードでは190種類の部首を12種類のグループに分類しており、部首になる代表的な象形文字12種類を覚えることで全ての部首が覚えられる仕組みである旨記載されている。特許文献1の学習カードの作用は部首を覚えることに限定されているので、当該学習カードは一通り漢字を習得している学習者が部首部分の記憶定着や復習をするには適しているが、漢字の初期段階の学習者には不向きである。
【0010】
特許文献2の学習カードでは101種類の基本漢字(象形指示文字)を覚えることで、これらの組み合わせでできている会意形声文字をすべて簡単に覚えることができる旨記載されているが、漢字は長い歴史の中でまったく違うものを表す部分が同じ形に統合されてしまうこともあるため、会意形声文字を分解したものが、それぞれのパーツに対応する基本漢字(象形文字)の意味を持つとは限らない。
【0011】
たとえば、「保」という字は外観上は「人」の側身形を表すにんべんと「口」と「木」に分解されるが、「保」の成り立ちを示す古代文字を、意味を持つパーツに分解すると「人」と「子ども」と「産着」になる。子どもを表すパーツが「子」という形にならず「呆」という形に変わってしまった例である。「人」「口」「木」の成り立ちをそれぞれ知っていても、「保」の漢字の成り立ちを知ることはできない。このように、古代文字の分解は非常に高度な作業であるため、たとえ101種類の基本漢字を習得しても、すべての会意文字の成り立ちを理解することには到達し得ない。
【0012】
更に、先行技術文献記載のいずれの漢字学習用具も、漢字の部首と基本漢字(象形指示文字)の暗記には役立つが、漢字の殆どを占める、より複雑な会意形声文字の学習においては、基本漢字(象形指示文字)のどの部分が会意形声文字のどの部分に対応しているかまでは分かりにくい。効率よく学習するためには、会意形声文字の成り立ちを示す古代文字カードが必要となる。
【0013】
小学校の配当漢字全体では、象形文字約16%、指示文字が約3%、会意文字が約21%、形声文字が約59%、その他は1%未満である。(分類の仕方は、研者や辞書によって多少異なるが、上記パーセンテージが大きく変わることはない。)
【0014】
小学校1年生の配当漢字80字を例にとると、80字のうち象形文字は39字、指示文字は9字、会意文字は17字、形声文字は10字、その他が5字となる。(平凡社出版福井県教育委員会発行『白川静博士の漢字の世界へ』をもとに分類したが、六書の分類は複雑であり、資料によっては別の記述が書かれているものもある。)
【0015】
1年生での象形指示文字は1年生配当漢字全体の60%、形声会意文字は34%になる。象形文字は漢字のへんつくりになるものが多いので低学年でその多くを学ぶため、上記のようなパーセンテージになる。そしてこれら象形指示文字の組み合わせにより、形声会意文字は作られる。象形指示文字の成り立ちを示す古代文字は漢字学習の初期段階にある学習者でも、単純な絵から成り立つため理解し易いが、形声会意文字はこれら象形指示文字を複数組み合わせて成り立つため、象形指示文字よりも学習の難易度は上がる。会意形声文字の成り立ちを示す古代文字カードがなければ、小学校1年生の配当漢字を全て古代文字と関連づけて学習することは難しい。
【0016】
小学校1年生の配当漢字の会意文字の中で、たとえば「学」の古代文字は4つのパーツから成っている。学習者は、「学」の古代文字が意味を持った4つのパーツに分解されるということも理解し難い。本願発明のように意味を持つパーツ別に色分け表示されていれば学習者はどのように分解されているのかが一目で理解できる。
【0017】
学校配当漢字の全体の約19%である象形指示文字の成り立ちを示す古代文字を理解することは、同じく小学校配当漢字の全体の約80%を占める形声会意文字の成り立ちを示す古代文字を理解することの一助にはなるが、象形指示文字からより複雑な形声会意文字の学習においては活用するのは難しい。
【0018】
本発明の目的は、部首や基本漢字(象形指示文字)に限らず、古代文字を意味を持ったパーツに分解し、個々のパーツを意味の概念別に全体に共通する特定のルールに従って色分けして表示することにより、ひとつひとつの古代文字がどのようにして作られたかを効率良く理解させて漢字を覚えやすくすること、同じパーツを含む古代文字同士がどのようにアレンジされて増えてきたのかまで学習者に効率良く理解させて漢字を覚えやすくすることが可能な漢字学習用具を提供することである。
【0019】
漢字学習の初期段階において、個々の漢字の成り立ちにとどまらず、漢字同士がどのように関係しどのように増えてきたかという漢字全体の発展や変化の流れを知ることは、学習者に漢字に興味を持たせ学習意欲を向上させる契機となる。漢字をばらばらに覚えるのではなく、まとまったグループとして学習することで覚えやすい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明の漢字学習用具は、部首や基本漢字(象形指示文字)に限らず、覚えようとする漢字の成り立ちを示す古代文字を、意味を持つパーツに分解し、当該分解されたパーツを、意味別に全体で共通した特定のルールに従って色分けして表示し、一目で古代文字の構成パーツを判別できるようにし、古代文字を構成する特定のパーツ別に容易にグループ化可能であることを特徴とする。
【0021】
たとえば「子」の古代文字は乳幼児の体を表している。この乳幼児の体を表す古代文字の分解パーツは「字」「学」「好」のほか「保」「流」「育」にも含まれている。「字」「学」「好」は古代文字の中に「子」のパーツを見つけることが容易であるが、「保」「流」「育」の中に「子」のパーツを一目で見出すことは難しい。複数の古代文字カードにおいて、全ての古代文字のパーツが全体に共通する特定のルールに従って色分け表示されていれば、これらをひとつのグループとして漢字学習者に示すことで、学習者は「子」の古代文字がまず先に作られ、これをもとに「字」「学」「好」「保」「流」「育」などが作られたことを理解できる。こうした繋がりと流れを知ることで、漢字を覚えやすくし、忘れにくくする。
【0022】
同様に「女」の古代文字は女性がひざまずいて両手を前で組んでいる姿を表している。この女性の姿を表す古代文字の分解パーツは「好」のほか「母」「乳」にも含まれている。「好」「母」は古代文字が色で表されていても「女」のパーツを見つけること容易であるが、「乳」は難しい。これらをひとつのグループとして漢字学習者に示すことで、学習者は「女」の古代文字がまず先に作られ、これを元に「好」「母」「乳」などが作られたことを理解できる。こうした繋がりと流れを知ることで、漢字を覚えやすくし、忘れにくくする。
【0023】
「子」と「女」のパーツを組み合わせることで、「好」という新しい漢字を作りだしたということも理解しうる。更に「女性が子どもをいつくしむ姿」という物語性を漢字「好」に与え、漢字を覚えやすくする。
【0024】
このような構成によれば、学習者は古代文字がどのようにして作られ、どのようにアレンジされて増えてきたのかまで容易に理解できる。特定のパーツ別にグループ化して学習することで、部首毎の機械的な暗記ではなく、成り立ちや由来別に系統立てて覚えることが可能であるため暗記効率が良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、個々の漢字の成り立ちだけではなく、古代文字を構成する意味別パーツの色彩によって、共通するパーツ別グループを作ることが容易であり、これにより、成り立ちを系統立てて覚えられる漢字学習用具を提供することが可能となる。一目で各古代文字の中の共通するパーツが認識可能であり、たくさんの漢字をグループ別に関連づけて学習できるので、覚えやすく、記憶に残る。
【0026】
本発明の学習カードは個々のパーツの意味が分からない時でも、色をヒントにしてパーツの意味を予想することができるため、漢字学習の初期段階にある小学校低学年、未就学児や外国人の漢字学習に好適である。漢字指導者は文部科学省制定の各学年配当漢字を基本に、パーツ毎に色分けされた古代文字カードであれば授業での指導対象とする漢字を選びやすく、指導計画(学習範囲や指導時間)を設定し易いという利点もある。
【0027】
古代文字を判別しやすい鮮やかな色彩で表示することにより、学習者にとって古代文字の分解されたパーツの印象は深まり、単調な記憶作業ではなく、視覚に訴えて記憶効率は高まり、楽しく学習することができる。漢字カードを併用して、カルタ形式により多人数で楽しみながらの学習も可能である。また、裏面を同一に仕上げることで、トランプの神経衰弱ゲームのように使用することも可能である。学習者や学習指導者の工夫次第で様々な使い方ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の漢字学習用具の一例を示した正面図である。
図2】本実施形態に係る漢字学習用具を説明する正面図(その1)である。(a)基本となる象形指示文字の漢字カードとその古代文字カード(b)前記(a)に表されているパーツと同じパーツを含む別の古代文字カードグループ(c)前記(b)で示した古代文字をもとにできた漢字カードグループ
図3】本実施形態に係る漢字学習用具を説明する正面図(その2)である。(a)基本となる象形指示文字の漢字カードとその古代文字カード(b)前記(a)に表されているパーツと同じパーツを含む別の古代文字カードグループ(c)前記(b)で示した古代文字をもとにできた漢字カードグループ
図4】本実施形態に係る漢字学習用具を説明する正面図(その3)である。(a)その1、その2の学習で示した象形指示文字の漢字カードを組合せてできた会意文字の古代文字カード(b)前記(a)で示した古代文字からできた漢字カード
図5】本実施形態に係る漢字学習用具を説明する正面図(その4)である。
図6】グループ化の一例を示す正面図である。(a)「足」のパーツを含むグループの古代文字カード(b)前記(a)で示した古代文字から成る漢字カード
図7】グループ化の一例を示す正面図である。(a)「子」のパーツを含むグループの古代文字カード(b)前記(a)で示した古代文字から成る漢字カード
図8】グループ化の一例を示す正面図である。(a)「木」のパーツを含むグループの古代文字カード(b)前記(a)で示した古代文字から成る漢字カード
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一部分には同一の符号を付し、一度説明した部分については適宜その説明を省略する。
【0030】
[漢字学習用具の構成]
以下、漢字記載のカードを「漢字カード」、古代文字記載のカードを「古代文字カード」と称する。漢字カードについては本願発明の古代文字カードを使用する際の補助的な漢字学習用具であり、仕様については特段の指定はなく、いかなる仕様であってもよい。(収納のし易さを考慮するならば、古代文字カードと同じ大きさにしておくとよい。)
【0031】
古代文字カードは1枚のカードに1字ずつ古代文字が表示された学習用カードであり、意味を持ったパーツに分解されていて、当該分解されたパーツが持つ意味の概念別に色分けされて表示されている。使用する色彩は全ての古代文字カードで共通する特定のルールに従って統一されている。
【0032】
共通する特定のルールとは、例えば、植物に関する物は「緑色」、人体の一部(「手」「足」など)に関する物は「オレンジ色」、人の形に関するものは「黄色」、人の呼び名(女、子等)に関する物は「ピンク色」(「女」を濃いピンク色、「子」を薄いピンク色)、家屋や木製の物は「茶色」、水に関する物は「水色」、火に関する物は「赤色」というように色分けする。それぞれの色は、前記色彩に限定されるものではなく、判別し易い色であればどの色でもよい。
【0033】
学習効果を上げるため、植物は緑色、子どもは可愛らしいピンク色、材木を使った家屋には茶色という具合に、できるだけ学習者がそれぞれのパーツの表す物の概念を連想し易い色分けのルールの下で作成するとよい。また、子どもはきれいな色彩の方が興味を示しやすく、学習意欲も高まるので暖色系、寒色系に拘わらず印象に残る鮮やかな色彩を使用するとよい。
【0034】
古代文字のパーツが表している物の概念を連想し易い色彩でルール化することにより、学習者は漢字をより記憶し易くなる。
【0035】
また、古代文字は時代により甲骨文字、金文、篆文と形の異なる複数種が発見されているため、同じ漢字の古代文字カードでも時代毎に1〜3枚作成してもよい。この場合も、色分けのルールは古代文字カード全体の前記色分けルールに従う。また、複数種作成する場合には、それぞれの識別標識をカードに付すと学習指導者にとっては特に使い易くなる。古代文字の文字種が識別できるように、識別標識(「甲」「金」「篆」や色や数字に限るものではなく、アルファベットや○□△などの図形、あるいはそれらの組合せなど、古代文字文字種が識別することができるものであればいかなる標識から構成されていてもよい。)を当該古代文字カードの同じ位置に付してもよい。(図示せず。)
【0036】
図1は小学校1年生の配当漢字である「学」の古代文字カード100である。「学」はもとの字は「學」であり、この字は4つのパーツを組み合わせた形である。A色で表示されたパーツは左右の手で教え導くことを表し、B色で表示された部分は上のパーツが交差した木を表し、下のパーツが屋根の形を表し、C色で表示したパーツは子どもを表している。
【0037】
A色を例えば日本人の肌の色を連想させるオレンジ色、B色をたとえば材木や家屋を連想させる茶色、C色をたとえば可愛いらしさを連想する薄いピンク色で表す。
【0038】
古代文字は低学年の児童にとっては上下が分かりにくいため、上下の識別が可能となるように、上下識別標識3(色や数字に限るものではなく、アルファベットや○□△などの図形、あるいはそれらの組合せなど、カードの上下が識別することができるものであればいかなる標識から構成されていてもよい。)を全ての古代文字カードの同じ位置に付す。
【0039】
同様に、配当学年の識別が可能となるように、配当学年識別標識4(たとえば1年生の漢字は「1」、2年生の漢字は「2」等)を全古代文字カードの同じ位置に付す。この識別標識は、漢字指導者用であるため、古代文字カード100の地色に近い黄色など学習者には目立たない識別表示にすると、学習の妨げにならない。
【0040】
古代文字の上下識別標識、配当学年識別標識、古代文字の文字種識別標識はそれぞれが混同しないように明確な識別標識を付す。
【0041】
古代文字カード100は、紙やプラスチックやマグネットシートでしっかりとした部材に古代文字を表示する。色紙(しきし)や厚紙に表示することにより容易に手作りすることもでき、子どもが使用をくり返しても破損することが少ない。特に色紙(しきし)で作ると、へたることがなく、手にとった際に他のにも示しやすく、文字がはっきり見えて学習の妨げにならない。色紙(しきし)は様々な形状や大きさのものがあるが、複数枚を作成する場合は全ての古代文字カードを同一素材で作る方が収納もし易く、裏返したときの見分けがつかないので、トランプの神経衰弱ゲームのように様々なゲームに活用できる。また、電子記録媒体に記録して使用することも可能である。
【0042】
次に、図2に本発明の実施形態を説明する。図中、共通するパーツを強調するために線を太くして表示している箇所がある。
【0043】
学習者自身が独習用に使用することも可能であるが、ここでは漢字指導者が指導時に使用する実施例を記載する。(a)に示すように、指導者はまず学習者に、象形指示文字の成り立ちを示す古代文字のうち、パーツに分けることができない古代文字101とその漢字11を見せて、成り立ちを説明する。本実施例の場合、「子」は子どもの形である。頭の大きな乳幼児を表していることを説明する。
【0044】
その後、(b)のように「子」の古代文字101と同じパーツが含まれる別の古代文字カード100を学習者に見せる。これによって、どの古代文字が先に作られ(本実施例の場合は基本となる「子」)、それを使って次々と古代文字102が生み出されたのだということを知ることが可能となる。
【0045】
提示した古代文字の説明をした後(c)のように、(b)で見せた古代文字101に対応する漢字12を提示する。(本実施例の場合、「字」「学」。)初めに「子」が作られ、「字」や「学」といった漢字が意味を足されて作られてきたことが、同じ色のパーツが含まれる古代文字を見比べることで理解できる。また、同じ物を表すパーツでも異なる形で存在することも読み取れる。(本実施例の場合、B色の屋根の部分。)
【0046】
ばらばらのものを記憶するよりも、繋がりを持たせて芋づる式に覚える方が記憶効率はよく、また、思い出し易いことが知られている。色分けにより、同じ色の繋がりという手がかりをもとに記憶できる。
【0047】
図3図2で示した漢字指導の次の段階(発展学習)である。図中、共通のパーツを強調するために線を太くして表示している箇所がある。
【0048】
図3(a)に示すように、次に指導者は学習者に、別の古代文字201とその漢字21を見せて、成り立ちを説明する。本実施例の場合、「女」は女性がひざまずいて両手を前で交差している形であることを説明する。
【0049】
その後、(b)のように「女」の古代文字201と同じパーツが含まれる別の古代文字カード200を学習者に見せる。これによって、どの古代文字が先に作られ(本実施例の場合は基本となる「女」)、それを使って次々と古代文字202が生み出されたのだということを知ることが可能となる。
【0050】
提示した古代文字の説明をした後(c)のように、(b)で見せた古代文字202に対応する漢字22を提示する。(本実施例の場合、「好」「母」「乳」。)
【0051】
図4図3で示した漢字指導の次の段階(発展学習)である。(a)では実施形態その1と実施形態その2で学習した漢字を組み合わせることで、新たな漢字が生み出されたことを、カードを並べて示すことで確認する。(本実施例の場合「子」+「女」=「好」。)
【0052】
図5では、実施形態その1、その2に全く関連のないように見える漢字とその成り立ちを示す古代文字を学習者に示す。(本実施例の場合は「保」。)「保」は「人」の側身形を表すにんべんと「口」と「木」から成るように思われがちであるが、古代文字は人が子どもを背負った形から成る。「木」の説明をした後であれば、「木」の古代文字の色と「保」の「木」の部分の色が異なることで成り立ちが全く別のものであることを印象づける。形が似ている現代の漢字でも、古代文字のパーツから見比べることで、もともと全く異なる象形文字だったものが長い年月を経て、同じ形に変化したことが理解できる。また、形が似た漢字の成り立ちを混同することなく理解できる。
【0053】
図6図7図8はグループ化の例である。それぞれ(a)が共通のパーツを含む古代文字であり、各図中太字で示したパーツが同じ意味のものを表し、同じ色で表示されている。(b)が当該古代文字からできた漢字である。
【0054】
このように古代文字をパーツ毎に色分けすることにより、学習者に与える印象は単色の表示よりも格段に強く、視覚的な影響が及ぼす学習効果は高くなる。また、グループ化により共通のパーツを含む漢字をまとめて覚えることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、漢字一字ずつの成り立ちではなく、古代文字の中の共通するパーツ別グループの成り立ちを系統立てて覚えられる漢字学習用具を提供することが可能となる。部首別のグループではなく、共通するパーツで自由にグループを作れるため、漢字指導者自由な発想で指導計画を設定できる。
次にグループ化の一例を示す。
【0056】
「足」のパーツを含むグループ…「止」「歩」「出」「足」「走」「先」「正」
「人の形」のパーツを含むグループ…「人」「北」「比」「化」「大」「立」「文」「交」
「子」のパーツを含むグループ…「子」「字」「学」「保」「好」「流」「育」
「女」のパーツを含むグループ…「女」「好」「母」「乳」「安」
「火」のパーツを含むグループ…「火」「光」「炎」
「木」のパーツを含むグループ…「木」「林」「森」「未」「末」「本」
「田」のパーツを含むグループ…「田」「男」「町」
「白」のパーツを含むグループ…「白」「百」
「刀」のパーツを含むグループ…「刀」「切」「分」
「口」のパーツを含むグループ…「口」「兄」「右」
「目」のパーツを含むグループ…「目」「見」「直」「植」
【0057】
前記の通り、同じ漢字でも抜き出すパーツによって別のグループを構成することができる。(「好」「見」など。)
【0058】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態に対して適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0059】
3…上下識別標識
4…配当学年識別標識
10…漢字カード
11…漢字
12…漢字
20…漢字カード
21…漢字
22…漢字
100…古代文字カード(漢字学習用具)
101…基本パーツとなる古代文字
102…基本パーツを含む古代文字
200…古代文字カード(漢字学習用具)
201…基本パーツとなる古代文字
202…基本パーツを含む古代文字
【要約】
【課題】漢字の成り立ちを示す古代文字を、意味を持つパーツ毎に色分けして表示することで、効率よく漢字を学習するための漢字学習用具を提供すること。
【解決手段】本発明の漢字学習用具は、漢字の成り立ちを示す古代文字を、意味を持つパーツに分解し、意味の概念別にパーツを特定のルールに従って色分けして表示したことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8