特許第6089272号(P6089272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089272
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】3軸磁場センサー
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   G01R33/06 R
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-531101(P2012-531101)
(86)(22)【出願日】2010年9月27日
(65)【公表番号】特表2013-506141(P2013-506141A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】US2010050398
(87)【国際公開番号】WO2011038343
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2013年9月27日
【審判番号】不服2015-21199(P2015-21199/J1)
【審判請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】12/567,496
(32)【優先日】2009年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509052894
【氏名又は名称】エバースピン テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】EverSpin Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】メイザー、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スローター、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リゾ、ニコラス
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 須原 宏光
【審判官】 大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/048018(WO,A1)
【文献】 特開2009−216390(JP,A)
【文献】 特開2005−197364(JP,A)
【文献】 米国特許第7505233(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性薄膜ベースの磁場センサーであって、
前記センサーの平面に直交する磁場を検知するホイートストンブリッジとして結合された第1、第2、第3、および第4の磁気トンネル接合センサーを備える第1のブリッジ回路を備え、
前記第1の磁気トンネル接合センサーは、
第1の基準層と、
前記第1の基準層に形成され、第1および第2の端部と第1および第2の面を有する第1の検知素子と、
前記第1の検知素子の第1の端部から離間して配置された第1の磁束ガイドであって、第1の面と直交する平面内に配置された前記第1の磁束ガイドとを含み、
前記第2の磁気トンネル接合センサーは、
第2の基準層と、
前記第2の基準層に形成され、第1および第2の端部と第1および第2の面を有する第2の検知素子と、
前記第2の検知素子の第1の端部から離間して配置された第2の磁束ガイドであって、第1の面と直交する平面内に配置された前記第2の磁束ガイドとを含み、
前記第3の磁気トンネル接合センサーは、
第3の基準層と、
前記第3の基準層に形成され、第1および第2の端部と第1および第2の面を有する第3の検知素子と、
前記第3の検知素子の第1の端部から離間して配置された第3の磁束ガイドであって、第1の面と直交する平面内に配置された前記第3の磁束ガイドとを含み、
前記第4の磁気トンネル接合センサーは、
第4の基準層と、
前記第4の基準層に形成され、第1および第2の端部と第1および第2の面を有する第4の検知素子と、
前記第4の検知素子の第1の端部から離間して配置された第4の磁束ガイドであって、第1の面と直交する平面内に配置された前記第4の磁束ガイドとを含
前記第1の磁束ガイドおよび前記第3の磁束ガイドは、前記第1、第2、第3、及び第4の磁気トンネル接合センサーの平面に磁場を案内して、前記第1の検知素子および前記第3の検知素子の磁化をより高い抵抗に向かう第1の磁化方向に回転させるように設置され、
前記第2の磁束ガイドおよび前記第4の磁束ガイドは、前記第1、第2、第3、及び第4の磁気トンネル接合センサーの平面に磁場を案内して、前記第2の検知素子および前記第4の検知素子の磁化をより低い抵抗に向かう前記第1の磁化方向とは反対の第2の磁化方向に回転させるように設置されている、強磁性薄膜ベースの磁場センサー。
【請求項2】
前記第1のブリッジ回路は、第1の成分方向の磁場を検知するものであり、
前記強磁性薄膜ベースの磁場センサーは、
前記第1の成分方向に直交する第2の成分方向の磁場を検知する第2のホイートストンブリッジとして結合された第5、第6、第7、および第8の磁気トンネル接合センサーを含む第2のブリッジ回路と、
前記第1の成分方向および前記第2の成分方向に直交する第3の成分方向の磁場を検知する第3のホイートストンブリッジとして結合された第9、第10、第11、および第12の磁気トンネル接合センサーを含む第3のブリッジ回路と、
をさらに備える、請求項1に記載の強磁性薄膜ベースの磁場センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、磁気エレクトロニクスデバイスの分野に関し、具体的には、3つの直交方向の磁場を検知するために使用されるCMOS互換磁気エレクトロニクス磁場センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
位置、運動、力、加速度、温度、圧力など、物理的パラメータを測定または検出するために最近のシステムではセンサーが広く使用される。これらおよびその他のパラメータを測定するための様々なセンサータイプが存在するが、それらはすべて様々な制約を抱えている。たとえば、電子コンパスおよび他の同様の磁気検知アプリケーションで使用されるセンサーなど、廉価な低磁場センサーは、一般に、異方性磁気抵抗(AMR)ベースのデバイスからなる。CMOSとよく整合する所要感度および適正な抵抗を達成するために、このようなセンサーのセンシングユニットは一般にサイズが約数平方ミリメートルである。モバイルアプリケーションの場合、このようなAMRセンサー構成は、費用、回路面積、および消費電力の点で高価である。
【0003】
ホール効果センサー、巨大磁気抵抗(GMR)センサー、および磁気トンネル接合(MTJ)センサーなど、他のタイプのセンサーは、外形が比較的小さいセンサーを提供するために使用されているが、このようなセンサーは、感度が不十分であり温度変化による影響を受けるなど、それぞれの問題を有している。これらの問題に対処するために、ホイートストンブリッジ構成のMTJセンサーおよびGMRセンサーが採用され感度を高めて温度に依存する抵抗変化を排除している。多くの磁気検知技術は、直交軸を除外して本質的に単一配向の印加磁場に対応している。実際に、各検知軸に対してホイートストンブリッジ構成を採用することによって地球の磁場方向を検出するために電子コンパスのアプリケーション用に2軸磁場センサーが開発されている。
【0004】
たとえば、ホールセンサーは一般に基板表面に垂直な面外磁場成分に応答するが、磁気抵抗センサーは面内の印加磁場に応答する。これらの応答軸を利用する省スペースの3軸センシングソリューションの開発は、典型的に、互いに直交角度で配置される1つまたは複数のチップを有するマルチ・チップ・モジュールを含む。磁気抵抗センサーの場合、直交面内成分は慎重なセンサー設計によって実現されるかもしれないが、面外応答は一般に垂直に取り付けられている第2のチップに接触させる垂直ボンディングまたははんだリフローによって得られる。垂直ボンディングされたチップのサイズは典型的に取扱い上の制約から決定されるようなパッドピッチに支配されるので、このような手法は垂直方向に大きく広がる完成品パッケージ、高額なダイ、および高額な組立費をもたらし、スルー・チップ・ビアを組み込む必要があるので、チップ・スケール・パッケージングが困難かつ高価になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、3次元の印加磁場に応答する単一チップ磁場センサーを形成するための改良された設計および製造プロセスの必要性が存在する。また、モバイルアプリケーションに使用される集積回路構造として効率的かつ安価に構成されうる3軸センサーが必要である。また、先に略述したような当技術分野における諸問題を克服するために改良された磁場センサーおよび製造が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
強磁性薄膜ベースの磁場センサーは、平面を有する基板と、基板の平面に平行な第1の面を有する第1の検知素子であって、第1の面に向かい合う第2の面を有し、かつ第1および第2の対向する端部を有する第1の検知素子と、基板の第1の面に非平行に配置され、かつ第1の検知素子の第1の端部と第1の面に近接する端部を有する第1の磁束ガイドとを含む第1の磁気抵抗センサーを備える。オプションの第2の磁束ガイドは、基板の第1の面に非平行に配置され、第1の検知素子の第2の端部と第2の面とに隣接する端部を有する。
【0007】
別の例示的な実施形態では、強磁性薄膜ベースの磁場センサーは、第1、第2、および第3の磁気抵抗センサーを含む。第1の磁気トンネル接合センサーは、第1のピン止め層と、第1のピン止め層に形成された第1の検知素子とを含み、第2の磁気トンネル接合センサーは、第2のピン止め層と、第2のピン止め層に形成され、第1の検知素子と直交する第2の検知素子とを含み、第3の磁気トンネル接合センサーは、第3のピン止め層と、第3のピン止め層に形成された第3の検知素子とを含み、第3のピン止め層は、第1および第2のピン止め層の各々に対して約45°で配置され、第3の検知素子は、第1および第2の端部と、第1および第2の面とを有する。磁束ガイドが基板の平面に非平行に配置され、第3の検知素子の第1の端部と第1の面とに近接する端部を有する。
【0008】
以下の詳細説明は、実際には単なる例示であり、本発明や本発明の適用または利用を制限するものではない。さらに、前述の背景または以下の詳細な説明において提示されるいかなる理論も拘束を意図するものではない。
【0009】
高透磁性材料、たとえば、ニッケル鉄(NiFe)の高アスペクト比の垂直バー(磁束ガイド)の集積によって、その端部は磁気検知素子の対向する端部または対向する面のごく近くで終点し、Z軸磁場の一部分はXY平面にもたらされる。これらの磁束ガイドは、Z方向に配向される印加磁場からの磁束を取り込む働きをし、その際に、磁束ガイドの端部近くで磁力線を実質的に水平に曲げる。磁束ガイドを非対称に配置することによって、たとえば、磁束ガイドセグメントをホイートストンブリッジの4脚(leg)のうちの2脚の検知素子の左端部上方に、また磁束ガイドを他の2脚の検知素子の右端部上方に配置することによって、水平成分が2対の脚に対して反対方向に作用して強力な差動信号を生じさせてもよい。XまたはY方向に印加される磁場は、ブリッジの4つすべての脚に等しく投影し、それによって、完全に相殺されて最終的なセンサー信号に影響しない。磁場信号のXおよびY成分を決定する磁場センサーチップに独立したブリッジが含まれ、こうして、3つすべての空間的配向の成分を有する磁場は、たとえば、磁気トンネル接合(MTJ)検知素子に基づいて単一チップ磁気抵抗検知モジュールによって正確に決定されうる。有限要素法(FEM)シミュレーションから、たとえば、幅25nm×高さ500nmで第3の方向に数μm延在する1対の高アスペクト比の磁束ガイドは、最適に配置されるとき、同じ強度の面内(x軸)磁場から測定される信号の約80%の信号を個々の素子に供給することが示されている。さらなる信号が磁束ガイドのごく近傍を通ってセンサーで得られる可能性があり、磁束ガイドの高さが増加し、ガイド形状をさらに成形する。1つの例は、検知素子の端部を越えて延在する検知素子に平行な水平セグメントを追加することである。他の例は、検知素子の外端部と整列される内部水平セグメントを備えるU字形、磁束ガイドを検知素子の平面に部分的に延在させる垂直セグメントの角度のある端部、および同様に配置された箱型構造を形成することである。これらの形状は、案内される磁束の水平成分をさらに強化してこれをセンサーのより中心部に移動する働きをする。磁束ガイドとして利用される個々の25nm幅の垂直バーを有する構造は、オーバーレイ誤差に対する余裕が有り、単一の磁束案内層と検知層との間の85nm(3σ)のずれに対して2.5%の割合で見かけのx〜z磁場変換(別個に配線されたホイートストンブリッジに対して)を生成する。
【0010】
磁束案内層は、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)プロセスフローにおいて典型的に使用される層から形成されてもよく、プロセスフローの間に、本明細書において磁束ガイドと呼ばれる高透磁性材料(典型的な磁気メモリデバイスなどにおける)で被覆されるビットラインおよびディジットラインは、メモリ記憶素子の切替えに必要な電流を低減するために存在するフィールド因子を増加させるために使用される。センサーへの応答では、溝の底に存在する被覆を取り除くために同じプロセスフローがディジットラインの底をスパッタアウトするオプションの付加的なステップを伴って使用されてもよい。磁束案内に使用される被覆の高さおよび幅が、前述の例示的なプロセスにおいて使用される、それぞれ、500nmおよび25nmの代わる最適値であるようにプロセスフローが変更されてもよい。
【0011】
バルクウエハに多軸ピン止めを提供する方法および装置を後でさらに詳しく説明するが、バルクウエハは3つの異なるピン止め方向を有する種々の基準層を備える集積回路センサーを形成するために使用されてもよく、その2つのピン止め方向は、実質的に直交しており、単一ピン止め材料堆積およびバルクウエハ設定手順によって設定される。予備段階として、強磁性および反強磁性材料の1層または複数層のスタックは、エッチングされて高アスペクト比の2次元形状を有する成形された基準層となり、形状は各基準層の所望の磁化方向の差異を示す。用いられる材料および手法に応じて、最終磁化方向は成形層の短軸または長軸に沿って配向されてもよい。たとえば、ピン止め層がミクロン規模の寸法にパターン化されるわずかに不平衡な合成反強磁性体(SAF)で形成される場合、磁化は短軸に沿った向きとなる。当業者には理解されるように、SAFの実施形態は、磁気エレクトロニクスデバイスにピン止めSAF基準層を使用することに関連して多くの利益がもたらされる。他の実施形態では、ピン止めされた固定層の厚さとパターン化構造の面内空間広がりとを制御することによって、最終磁化は長軸に沿った向きとなり得る。形状異方性を利用すると、基準層に対する所望の磁化方向間に整列される配向磁場の存在下での加熱によって基準層内に種々の磁化方向が誘導される。選択された実施形態では、基準層は、異方性の材料成分を低減するために十分に加熱され、形状および外部磁場によって磁化方向を支配することができる。こうして、配向磁場が取り除かれると、形状異方性が磁化を所望の方向に向かわせる。配向磁場を取り除くと、形成された基準層の所望の軸に沿って整列される磁化を誘導するように、基準層の磁化が緩和して基準層の形状に従う。直交性を導きやすくするためにオプションの補償磁場が印加されてもよく、その際、基準層は反強磁性ピン止め層の相転移温度以上に加熱される。たとえば、2つの基準層が互いに垂直である比較的長い寸法を有するように形成される場合、2つの基準層に対して誘導される磁化は互いに垂直に近くなる。
【0012】
ここで、本発明の様々な具体的実施形態を添付図を参照して詳しく説明する。以下の説明では様々な詳細を記述するが、本発明はこれらの具体的詳細なしで実施されてもよく、また、デバイス設計者の具体的な目標を実現するために本明細書に記載される本発明に対して、実施例によって異なるプロセス技術または設計に関わる制約の順守など、多くの実施例固有の判断がなされてもよいことが理解されよう。このような開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、これは本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。さらに、選択された態様は、本発明が制限されたり曖昧になったりしないよう、すべてのデバイスの特徴または形状を含めずに簡略断面図を参照して描かれている。また、この詳細説明では、磁場センサー設計および動作、磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)設計、MRAM動作、半導体デバイス製造、および集積回路デバイスのその他の態様に関する従来の手法および特徴が本明細書では詳しく説明されないかもしれない。一定の材料は既存のMRAM製造プロセスの一部として集積回路センサーを製造するために形成されて除去されているが、このような詳細は周知であり本発明の実施または作成方法もしくは利用方法を当業者に教示する必要があるとは考えられないので、このような材料を形成または除去する具体的な手順については以下で詳述しない。さらに、本明細書に含まれる様々な図に示される回路/部品レイアウトおよび構成は、本発明の例示的な実施形態を表わすものである。多くの代替的または追加的回路/部品レイアウトが実際の実施形態に存在していてもよいことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的な実施形態に従ってMTJセンサーを有する3つのブリッジ構成から形成される差動センサーを用いる電子コンパスの構成を示す。
図2】例示的な実施形態による図1のZ軸ブリッジ構成の部分断面図である。
図3図2の4つの磁気トンネル接合センサーの2つの有限要素シミュレーションによって計算される磁束線の図である。
図4】別の例示的な実施形態による図1のZ軸ブリッジ構成の部分断面図である。
図5】さらに別の例示的な実施形態による図1のZ軸ブリッジ構成の部分断面図である。
図6図5に示される磁束ガイドの別の形状である。
図7図5に示される磁束ガイドのさらに別の形状である。
図8図5に示される磁束ガイドのまたさらに別の形状である。
図9】センサーと被覆材との間隔に応じて単一の(差動的に配線されていない)MTJ検知素子のX感度のパーセンテージとして表わされるZ感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
さらに、本発明の他の望ましい特徴および特性は、添付図面およびこの背景を併用した以後の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
以下では、本発明の実施形態が以下の図面と関連付けて説明され、図面において同様の参照符号は同様の要素を表わす。
【0015】
説明を簡単かつ明瞭にするために、図面に示される要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されよう。たとえば、要素の一部の寸法は、明瞭さと理解を促進し改善することを目的として他の要素に比べて誇張されている。さらに、適切であると考えられる場合、対応する要素または類似する要素を表わすために参照符号が図面中で反復されている。
【0016】
図1は、それぞれ、第1の軸120(たとえば、y軸方向)、第2の軸110(たとえば、x軸方向)、および第3の軸130(たとえば、z軸方向)に沿った印加磁場の成分方向を検出する、第1、第2、および第3の差動センサー101、111、121で形成される磁場センサー100を示す。z軸方向は、図1が位置するページに入るか、あるいはこのページから出て行く点および十字線として表わされる。第1および第2のセンサー101、111の例示的な実施形態は、米国特許出願第12/433,679号明細書に記載されている。本明細書に示されるように、各センサー101、111、121は、ブリッジ構成で接続される遮蔽されていない検知素子で形成される。それゆえ、第1のセンサー101は、対応する複数のピン止め層106〜109の上方のブリッジ構成の複数の検知素子102〜105の接続から形成され、ピン止め層106〜109の各々はx軸方向に磁化される。同様に、第2のセンサー111は、対応する複数のピン止め層116〜119の上方のブリッジ構成の複数の検知素子112〜115の接続から形成され、ピン止め層116〜119の各々はピン止め層106〜109の磁化方向に垂直であるy軸方向に磁化される。さらに、第1および第2のセンサー101、111と同じ面内の第3のセンサー121は、対応する複数のピン止め層126〜129の上方のブリッジ構成の複数の検知素子122〜125の接続から形成され、ピン止め層126〜129は各々がピン止め層106〜109および116〜119の磁化方向に対して45°であるxy軸方向に磁化される。図示されたブリッジ構成101では、検知素子102、104は第1の容易軸磁化方向を有するように形成され、検知素子103、105は第2の容易軸磁化方向を有するように形成され、第1および第2の容易軸磁化方向は互いに対して直交し、ピン止め層106〜109の磁化方向から等しく異なるように配向される。第2のブリッジ構成111に関しては、第1および第2の容易軸磁化方向がピン止め層116〜119の磁化方向から等しく異なるように配向されるように検知素子112,114は、検知素子113、115に対する第2の容易軸磁化方向に直交する第1の容易軸磁化方向を有する。第3のブリッジ構成121では、検知素子122、123、124、および125はすべてピン止め層126、127、128、および129のピン止め磁化方向に直交する容易軸磁化方向を有する。第3のブリッジ構成121は、それぞれ、検知素子122〜125の右端部に隣接して配置される磁束ガイド132〜135と、検知素子122〜125の左端部に隣接して配置される磁束ガイド136〜139とをさらに含む。磁束ガイド132、137、134、および139は検知素子122〜125の上方に配置され、磁束ガイド136、133、138、および135は検知素子122〜125の下方に配置される。これら磁束ガイド132〜139の位置決めについては、後で、図2においてさらに詳しく説明する。図示されたセンサー101、111、121では、検知素子にとって遮蔽が必要でなく、特別な基準素子も必要でない。例示的な実施形態では、xおよびyセンサーに対して90°だけ互いに偏向されるように参照された検知素子の容易磁化軸を確立するために形状異方性手法を用いて各アクティブな検知素子(たとえば、102、104)を別のアクティブな検知素子(たとえば、103、105)と参照するとともに、Zセンサーに対するZ方向の印加磁場と逆に応答する検知素子を参照することによって実現される。Zセンサーの参照を以下でさらに詳しく説明する。図1に示す構成は、図2でさらに詳しく説明する第3のセンサー121の構造の利点を取り入れるためには必要でなく、例として示しているだけである。
【0017】
各々がセンサーのピン止め方向から等しく偏向され、かつ各センサーにおいて互いに直交する検知素子配向を有する、第1および第2のセンサー101、111が直交整列されるように位置決めすることによって、センサーは第1および第2の軸に沿った印加磁場の成分方向を検出しうる。磁束ガイド132〜139は、センサー121において、脚(leg)141、143と脚142、144の間に非対称に素子122〜125の反対端部の上方および下方に配置される。磁束ガイド132、134は検知素子122、124の上方に設置されるので、Z磁場からの磁束は磁束ガイド132および134によって右側に沿ってxy平面に導かれ、検知素子122および124の磁化をより高い抵抗に向かう第1の方向に回転させ得る。同様に、Z磁場からの磁束は磁束ガイド133および135によって検知素子の右側に沿ってxy平面に導かれ、これらの磁束ガイドは検知素子123、125の下方にあるので検知素子123および125の磁化をより低い抵抗に向かう第1の方向から反対の第2の方向に回転させ得る。それゆえ、センサー121は、第3の軸に沿って印加磁場の成分方向を検出しうる。好ましい実施形態では、磁束ガイドが磁場センサーの平面と直交する平面内にあるが、磁束ガイドはセンサーとともに作る角度が正確に90°でなくても機能する。他の実施形態では、磁束ガイドと磁場センサーとの角度が45°〜135°の範囲にある可能性があり、正確な角度は製造の容易さなどの他の要因に応じて選定される。
【0018】
前述の説明から分かるように、磁場センサーは、遮蔽されていない検知素子102〜105と、112〜115と、それぞれピン止めされた、あるいは基準層106〜109、116〜119、および126〜129上でブリッジ構成で接続された案内磁束を有する検知素子122〜125とを使用する差動センサー101、111、121から形成されて、印加磁場の存在および方向を検出するようにしてもよい。この構成では、磁場センサーは、良好な感度を提供するとともにブリッジ構成の温度補償特性も提供する。
【0019】
ブリッジ回路101、111、121は、磁束案内構造の様々なセンサー層および断面の磁場配向を制御するために、ごくわずかに調整するだけで既存のMRAMまたは薄膜センサー製造プロセスの一部として製造されてもよい。ピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129の各々は、1つまたは複数の下位の強磁性層で形成されてもよく、検知素子102〜105、112〜115、122〜125の各々は1つまたは複数の上位の強磁性層で形成されてもよい。検知素子102〜105、112〜115、122〜125とピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129との間には絶縁トンネリング誘電体層(図示せず)が配置されてもよい。ピン止め電極および検知電極は、その磁化方向が整列されうる磁性材料であることが望ましい。適切な電極材料と、磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)デバイスおよび他の磁気トンネル接合(MTJ)センサーデバイスの電極に一般的に使用される構造物への材料の配置とは、当技術分野において周知である。たとえば、ピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129は、1層または複数層の強磁性材料および反強磁性材料で10〜1000Å(1nm〜100nm)の範囲、また選択された実施形態では250〜350Å(25nm〜35nm)の一体的な厚さに形成されてもよい。例示的な実施例では、ピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129の各々は、単一の強磁性層と下層の反強磁性ピン止め層とで形成される。別の例示的な実施例では、各ピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129は、厚さが20〜80Å(2nm〜8nm)の合成反強磁性スタック成分(たとえば、CF(コバルト鉄)、ルテニウム(Ru)、およびCFBのスタック)と、厚さがおよそ200Å(20nm)の下層の反強磁性ピン止め層とを含む。下位の反強磁性ピン止め材料は、IrMnなどの再設定可能な材料であってもよいが、適正温度で容易に再設定されないPtMnなどの他の材料が使用されうる。形成されたピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129は、その磁化の方向が正常動作条件中に変化しない一方向にピン止めされるとき固定またはピン止め磁気層として機能する。本明細書に開示されるように、ピン止め層106〜109、116〜119、および126〜129をピン止めするために使用される材料の加熱品質によって、これらの層を形成するために採用される製作順序が変わる可能性がある。
【0020】
検知素子102〜105、112〜115、122〜125の各々の1つと、ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の各々の1つとは、磁気トンネル接合(MTJ)センサーを形成する。たとえば、ブリッジ回路121では、検知素子122およびピン止め層126がMTJセンサー141を形成する。同様に、検知素子123およびピン止め層127がMTJセンサー142を形成し、検知素子124およびピン止め層128がMTJセンサー143を形成し、検知素子125およびピン止め層129がMTJセンサー144を形成する。
【0021】
ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129は、パターン化された基準層の長軸に沿って整列する磁化方向(矢印で示される)を有する単一のパターン化された強磁性層で形成されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、ピン止め基準層は、パターン化された基準層の短軸に沿ったピン止め基準層の磁化を整列させるために使用される合成反強磁性(SAF)層で実施されてもよい。上記の内容から分かるように、SAF層は下層の反強磁性ピン止め層と組み合わせて実施されてもよいが、十分に強力な磁化を提供する適切な形状および材料を有するSAF構造を使用すると、下層の反強磁性ピン止め層は必要でなくなり、それによって、より簡単な製造プロセスが提供されてコストが削減され得る。
【0022】
検知素子102〜105、112〜125、122〜125は、10〜5000Å(1nm〜500nm)の範囲の厚さ、また選択された実施形態では10〜60Å(1nm〜6nm)の厚さの1層または複数層の強磁性材料で形成されてもよい。上位の強磁性材料は、NiFe、CoFe、Fe、CFBなどの軟磁性材料であってもよい。各MTJセンサーでは、これらの磁化方向が地球の磁場などの外部印加磁場の存在によって偏向されうるので、検知素子102〜105、112〜125、122〜125は検知層または自由磁気層として機能する。最終的に形成される検知素子102〜105、112〜125、122〜125は、パターン化された形状の長軸に沿って整列する磁化方向(矢印で示される)を有する単一強磁性層で形成されてもよい。
【0023】
ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129と、検知素子102〜105、112〜125、122〜125とは、異なる磁気特性を有するように形成されてもよい。たとえば、ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129は、これらの磁化方向が一方向にピン止めされて外部からの印加磁場によって実質的に影響を受けないように、高い保磁力を有する層を形成するとともに、ヒステリシス曲線を相殺するために強磁性薄膜に結合された反強磁性薄膜交換層で形成されてもよい。対照的に、検知素子102〜105、112〜125、122〜125は、軟磁性材料で形成されて、比較的低い異方性および保磁力を有する種々の磁化方向を提供して、検知電極の磁化方向が外部からの印加磁場によって変更され得るようにしてもよい。選択された実施形態では、ピン止め磁場の強度は検知電極の異方性磁場よりも約2桁大きいが、これらの組成を変えるために周知の手法を用いて電極のそれぞれの磁気特性を調整することによって、異なる比が採用されてもよい。
【0024】
MTJセンサーのピン止め層106〜109、116〜119、126〜129は、ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129(図1で「ピン止め方向」と表記された各センサーブリッジに対してベクトル矢印で識別される)の平面内で形状が定められた磁化方向を有するように形成される。本明細書に記載するように、ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の磁化方向は、ピン止め電極の形状異方性を用いて得られてもよく、その場合、ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の形状は、各々が単一ピン止め層に対するピン止め方向に長くてよい。あるいは、ピン止めSAF構造の場合、基準層およびピン止め層はピン止め方向に沿って短くてもよい。特に、ピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の磁化方向は、印加される配向磁場がピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の所望のピン止め方向の磁場成分を含むように、形成されたピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の最も長い配向軸に非直交的に配向される配向磁場の存在下で形成されたピン止め層106〜109、116〜119、126〜129をまず加熱することによって得られてもよい。ピン止め層の磁化方向は、少なくとも一時的に所定の方向に整列される。しかしながら、この処理中にピン止め層を適切に加熱し加熱を弱めることなく配向磁場を取り除くことによって、形成されたピン止め層106〜109、116〜119、126〜129の所望の配向軸に沿ってピン止め層の磁化が緩和する。磁化が緩和すると、ピン止め電極層の磁場方向が形成されたピン止め層106〜109、116〜119、126〜129に対して所望の方向に設定されるように、ピン止め層は焼鈍および/または冷却されうる。
【0025】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、以下のように既知のリソグラフィ処理を用いて製造されてもよい。集積回路、マイクロエレクトロニックデバイス、マイクロエレクトロ・メカニカル・デバイス、マイクロ流体素子、および光素子の製造は、何らかの方法で相互作用する複数層の材料の生成に関わる。1つまたは複数のこれらの層は、層の様々な領域が異なる電気的またはその他の特性を有するようにパターン化されてもよく、それによって、層内で相互接続されたり他の層と相互接続されたりして電気部品および電気回路を生成してもよい。これらの領域は、様々な材料を選択的に導入または除去することによって生成されてもよい。このような領域を定義するパターンは、リソグラフィ処理によって生成されることが多い。たとえば、フォトレジスト材料の層は、ウエハ基板を覆う層に適用される。このフォトレジスト材料を紫外線、電子、またはX線などの放射に選択的にさらすためにフォトマスク(透明領域および不透明領域を含む)が使用される。放射にさらされたフォトレジスト材料も、放射に晒されないフォトレジスト材料も、現像剤を適用することによって除去される。この後、残留レジストによって保護されない層にエッチングが適用されてもよく、レジストが除去されると、基板を覆う層がパターン化される。あるいは、たとえば、フォトレジストをテンプレートとして使用して構造を形成する付加的な処理も採用されうる。
【0026】
本発明の例示的な実施形態に従って図2を参照すると、第3のブリッジ回路121のMTJデバイス141〜144の構造は、ピン止め層126〜129、検知素子122〜125、および磁束ガイド132〜139を含み、すべてが誘電材料140内に形成される。磁束ガイド136は、ライン145に隣接して配置され、センサー素子122の端部の下方に配置された端部を有する。磁束ガイド133および138は、ライン146の両側の側面に配置され、センサー素子123および124の端部の下方にそれぞれ位置する端部を有する。磁束ガイド135は、ライン147に隣接して配置され、センサー素子125の端部の下方に位置する端部を有する。磁束ガイド132および137は、上のライン148によって相隔てられ、それぞれセンサー素子122および123の端部の上方に位置する端部を有し、磁束ガイド134および139は、上位ライン149によって相隔てられ、センサー素子134および139の端部の上方にそれぞれ位置する端部を有する。ライン145〜149は、銅であることが好ましいが、一部の実施形態では誘電体であってもよい。検知素子に対して安定化磁場を提供するMTJデバイス141〜144の上方に金属安定化ライン150が配置される。磁束ガイドの端部は、センサー素子に可能な限り近づけられてよく、両者の間隔は250nm以下であることが好ましい。各検知素子は、最高密度アレイの場合に可能な限り近づけられ、間隔は2.5μm未満であることが好ましい。
【0027】
図3は、z方向の磁場が検知素子122〜123に与えられる場合に図2のMTJデバイス141、142の有限要素シミュレーションによって計算される磁束線の図である。FEMモデル化は、結果として得られる磁束線160を示しており、センサーの平面内の成分を表わす。MTJデバイス141は、検知素子122の対向端部の磁束ガイド132および136によって表わされる。MTJデバイス142は、検知素子123の対向端部の磁束ガイド133および137によって表わされる。換言すると、検知素子122は磁束ガイド132および136から延在し、検知素子123は磁束ガイド133および137から延在する。Z軸130の磁場160は、矢印170で示すように、X軸120に沿って検知素子122、123で非対称応答を生成する。このように、ページの下方に向かうZ方向130の磁場160の場合、検知素子122の磁化は、ピン止め層126のピン止め方向から(より高い抵抗に)離れるように回転するが、検知素子123の磁化は、ピン止め層127のピン止め方向に(より低い抵抗に)向かって回転する。X方向120の磁場の場合、両方の素子122、123は、同じ方向の(より高いあるいはより低い抵抗に向かう)誘導磁化を示す。したがって、MTJ素子141、142を示差測定のためにホイートストンブリッジで配線し、MTJデバイス141、142の抵抗を差し引くことによって、X磁場応答が排除されて、Z磁場応答の2倍が測定される。
【0028】
図2を再び参照すると、磁束ガイド132〜139に磁化擾乱および磁区構造を誘導する可能性のある大きい磁場に暴露される場合、大きい電流パルスが金属ライン145〜149に沿って導入されて、磁束ガイドの磁区構造をリセットする可能性がある。
【0029】
別の例示的な実施形態(図4に示される)では、被覆ライン145〜149の各々が2つの独立した金属ラインに分割され、さらなる非磁束ガイド被覆(non-flux guiding cladding)(161〜168および191〜198)がこれら2本の金属ラインの間の内端部において配置される。センサー141では、左の金属ライン148の左端部の磁束ガイド161がZ磁束をその左の検知素子122に案内し、右の金属ライン145の最右端部の磁束ガイド192がZ磁束をその右の検知素子122に案内する。センサー142〜144は同様に機能し、各検知素子に隣接する金属ラインの被覆端部は、アクティブな磁束案内機能を果たす。これらのラインは分離されているので、電流は、被覆ライン145、146、182、および183を通ってページに入り、被覆ライン181、147、148、および149を通ってページから出て、常に一定の方向(この例では下方)を指し示すZ成分を有する磁場を被覆ライン端部に沿って生成するように形成され得る。これらの電流配向は、Z方向に強力な成分を有する磁場を生成する働きをすることができ、形状の較正によって、Z軸応答の機能性および感度のセルフテストとしての機能を果たすことができる。
【0030】
別の例示的な実施形態(図5参照)は、磁束ガイド132〜139において一体的に形成された延長部分152〜159を含む。延長部分152〜159は、センサー素子122〜125と同じ軸に沿って延び、磁束ガイドの水平成分を増強し、水平成分を適切な検知素子122〜125の中心にさらに移動させる。
【0031】
図2の垂直素子132〜139を含む磁束ガイドと、図5の延長部分152〜159を含む「L」字形磁束ガイドとに関して様々な例示的実施形態が示されているが、箱型または「U」字形磁束ガイドなど、上下両方の磁束ガイドに関して他の例示的実施形態が使用されてもよい。「U」字形構造(図6)では、水平NiFeセグメント171が下の金属ラインに沿って2つの垂直セグメント161、162を接続するが、箱型構造(図8)では、上の両金属ラインと同様に水平セグメント172が2つの垂直セグメントを接続する。水平セグメントは2つの垂直セグメントの磁気構造を結合して、磁場変換係数を2つの分離された垂直磁束ガイドのそれよりも10〜20%増加させるのに役立つ。箱様構造の2つの水平セグメントは、単純な垂直磁束ガイドよりも良好な結合を提供するとともに磁場変換係数を20〜40%増加させる。さらに、図6の「U」字形構造の垂直セグメントは、検知素子端部に近い領域が水平成分を有するように張り出してもよい(173、174(図7))。L字形ガイドと同様に、張り出しセグメントは、磁場変換係数をさらに拡大するための成分がまさに磁気センサーの平面内にあるように磁束を案内する。しかしながら、覆い部分が大きすぎないよう、あるいは磁束がセンサーから遮蔽されるよう注意しなければならない。
【0032】
図9は、検知素子の上方および下方に配置された幅25nm、高さ500nmの垂直セグメントに対するZ/X感度比対被覆/センサー間隔を示すグラフである。被覆を25nmの距離に近づけると、Z/X感度は約75%に上昇する。先に強調されたような断面の変更によって、あるいは磁束ガイドのアスペクト比の改善によって、さらなる要因が得られる可能性があり、たとえば、ガイドを高くしアスペクト比を大きくすると、これに比例してZ/X感度比が大きくなる。したがって、磁束ガイドを検知素子に可能な限り近づけるとともに磁気微細構造に悪影響を与えることなく、そのアスペクト比を可能な限り大きくすることが重要である。
【0033】
本明細書で開示された説明済みの例示的な実施形態は、様々なセンサー構造およびその製造方法を対象としているが、本発明は、広範な半導体プロセスおよび/またはデバイスに適用されうる本発明の創意に富んだ態様を説明する例示的な実施形態に必ずしも限定されない。それゆえ、先に開示された具体的な実施形態は、単なる例示であり、本発明に対する制限であると解釈されるべきではなく、本発明は修正され本明細書の教示の恩恵にあずかる当業者には明らかに異なるものの同等の方法で実施されてよい。たとえば、センサー構造における検知およびピン止め層の相対位置は、ピン止め層が上にあり、検知層が下にあるように反転されてもよい。また、検知層およびピン止め層は、開示されたものと異なる材料で形成されてもよい。さらに、記載された層の厚さは、開示された厚さの値から外れていてもよい。したがって、前述の説明は、本発明を記述された特定の形態に制限するものでなく、逆に、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲に含まれる可能性のあるような、代替形態、修正形態、および等効物を包含するものであり、したがって、当業者は最も広い形態において本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更、代替、および修正をなしうることを理解すべきである。
【0034】
諸問題に対する恩恵、他の優位性、および解決策を具体的な実施形態に関して先に説明してきた。しかしながら、諸問題に対する恩恵、優位性、解決策、ならびに何らかの恩恵、優位性、または解決策をもたらしめ、あるいはより顕著にならしめる可能性のあるいかなる要素も、ありとあらゆる請求項のきわめて重要な、所要の、あるいは必須な特徴または要素であると解釈されるべきではない。本明細書で使用される用語「備える」、「備えている」、またはこれらの他のいかなる変形形態も、要素の一覧を備える処理、方法、品目、または装置がこれらの要素を含むだけでなく、明示的に記載されない他の要素、あるいはかかる処理、方法、品目、または装置に固有の他の要素を含むように非排他的包含を網羅するものである。
【0035】
前述の詳細な説明では、少なくとも1つの例示的な実施形態を提示しているが、数多くの変形形態が存在することを理解されたい。また、例示的な実施形態は、単なる例であり、本発明の範囲、適用性、または構成を何らかの方法で制限するものではない。むしろ、前述の詳細な説明は本発明の例示的な実施形態を実施するための好都合なロードマップを当業者に提供するもので、添付の特許請求の範囲に記述される本発明の範囲から逸脱することなく例示的な実施形態に記載される要素の機能および配置において様々な変更がなされてもよいことが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9