(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
空調機器等においては、アクチュエータ付きボールバルブが数多く用いられており、このアクチュエータ付きボールバルブにより温度制御用の冷温水などが流量制御される。この場合、ボールバルブは、ボールに対してステムが嵌め合い構造により接続されると、これらを嵌め合い可能にするために嵌め合い部位には寸法公差が設けられている。機械加工上、この寸法公差の誤差は避けられず、寸法公差の誤差が大きい場合には嵌め合い部位に隙間が生じてガタが発生し、このガタによってアクチュエータの回転力のボールへの伝達時に開度誤差が生じることがある。開度誤差が大きくなると、流量計測などが正確でなくなるため、空調機器では正しく温度調節を実施できなくなる場合がある。
【0003】
この種のボールバルブにおける流量計測は、バルブの開度からバルブ容量係数(Cv値)を算定し、このCv値をもとに流量を計算しているので、開度誤差は流量演算値の誤差となり精度の悪い流量を得る結果となる。
【0004】
しかも、フローティング形ボールバルブの場合、中間開度において流体によって常にボール弁体が閉まる方向にアンバランストルクが発生することが知られている。ボールとステムとを嵌め合いで接続した場合、これらの隙間にアンバランストルクが加わるため開度誤差が発生しやすくなる。アンバランストルクは、円筒状の流路を有するボールバルブで発生する現象であり、空調機器等の流量制御用ボールバルブで使用される扇形の流路口を有するボールでは、さらにこのアンバランストルクが加わりやすくなる。
【0005】
ところで、開度誤差を少なくしたり、流量を良好にするボールバルブとして、例えば、特許文献1の流路開閉弁が開示されている。この流路開閉弁では、ステムであるシャフト軸の側面に一組の膨出した曲面部を形成し、ボール弁体の凹部にシャフト軸を曲面部を介して嵌合させてシャフト軸とボール弁体との回転動作のずれを低減しようとするものである。
特許文献2においては、球状の弁体と弁棒とが一体に設けられ、この弁棒に駆動軸が連結されたボールバルブの使用方法が開示されている。
特許文献3では、弁棒とボール、或は弁棒と操作部との間のアソビによる回動誤差に対して、ボールの貫通孔に設けた切り欠き溝によりボールを回転したときに微量の弁開状態に設定しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の流路開閉弁は、曲面部を介してシャフト軸をボール弁体に嵌合させることで回転動作のずれを低減しようとしているものの、程度の差こそあれ嵌合部にガタがあり、アンバランストルクが加わった場合には、開度誤差が発生してしまう。
特許文献2のボールバルブについては、長期間の使用におけるバルブ開度の誤差に基づいて、弁箱の流体通路に対して弁体の流体通路を予め所定角度ずらして流量を確保するものであるが、アンバランストルクが加わった場合には、やはり開度誤差が発生してしまう。
特許文献3のボールバルブは、ボールの貫通孔に設けた切り欠き溝で微量の弁開状態に設定しようとするものであるが、弁棒とボール、或は弁棒と操作部等との間のアソビが絶無ではなく、このアソビに起因する開度誤差が発生してしまう。
このため、これらのバルブは、高精度に温度調節をおこなう空調機器等の流量制御用として適していない。
【0008】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、ボール弁体やステムなどの加工精度を高めることなく、コストアップにもならず、しかも、接合部のガタの影響を受けずに精度の良好な位置決め制御を可能とし、さらには、ボール弁体は誤差のない位置になるため、Cv値の誤差は発生せず、誤差のないCv値を用いて精度が良好な流量を演算でき
ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、アクチュエータにステムを介して接続した
空調機器用ボールバルブのボール弁体を目標中間開度に制御するためのアクチュエータの制御方法であって、
前記ステム上端と前記アクチュエータの出力軸の下端部とが嵌め合い接続され、かつ前記ステム下端と略扇形状の二次側流路口を有するボール弁体の凹状部とが嵌め合い接続され、前記ステムと前記出力軸並びに前記ステムと前記ボール弁体の凹状部との嵌め合い接続部位には、弁閉方向側と弁開方向側のそれぞれに生じる寸法公差の誤差による隙間を有し、弁閉動作の際、
前記ステムと前記出力軸の嵌め合い接続部位の弁閉方向側の隙間と前記ステムと前記ボール弁体の凹状部の嵌め合い接続部位の弁閉方向側の隙間とを回転移動する回転角度を合算させた分だけ、前記アクチュエータの出力軸を弁閉方向にオーバーランさせるように回転駆動させて目標中間開度に制御し、その後、
前記ステムと前記出力軸の嵌め合い接続部位の弁開方向側の隙間と前記ステムと前記ボール弁体の嵌め合い接続部位の弁開方向側の隙間とを回転移動する回転角度を合算させた分だけ、前記出力軸を弁開方向に反転させることにより、前記出力軸と前記ステムと前記ボール弁体の凹状部のそれぞれの嵌め合い接続部位が弁開方向側に当接し、弁閉方向にアンバランストルクが働いても前記ボール弁体の回転が弁開方向に支持された状態で前記ボール弁体を目標中間開度に保持するようにした
空調機器のボールバルブ用アクチュエータの制御方法である。
【0012】
請求項
2に係る発明は、ボールバルブは、フローティング形ボールバルブであ
る。
【0013】
請求項
3に係る発明は、アクチュエータにおける開度検出をアクチュエータに内蔵したギア群の最終段以降である出力軸で行うようにし
た。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、ボール弁体やステムなどの加工精度を高めることなく、コストアップにもならず、しかも、接合部のガタの影響を受けずに精度の良好な位置決め制御を可能とし、さらには、ボール弁体は誤差のない位置になるため、Cv値の誤差は発生せず、誤差のないCv値を用いて精度が良好な流量を演算できる。
【0015】
しかも、ステムや出力軸の加工精度を向上させることなく、一般的な嵌め合い構造で接続してアクチュエータからステムまで正確に動力伝達でき、アクチュエータの出力軸からステムを介してボール弁体に動力伝達するときの開度誤差を抑えることができる。
【0016】
また、加工精度を高めることなくボール弁体とステムとを一般的な嵌め合い構造により接続し、コストアップを防ぎながら正確にボール弁体の開度調節をおこなうことができる。しかも、接合部のガタの影響を受けずに精度の良好な位置決め制御を可能とし、アンバランストルクが加わったときにもボール弁体の開度誤差を抑えて流量制御用として目標開度を維持できる。さらには、ボール弁体は誤差のない位置になるため、Cv値の誤差は発生せず、誤差のないCv値を用いて精度が良好な流量を演算して高精度の流量制御が可能になる。
【0017】
請求項
2に係る発明によると、トラニオン形ボールバルブに比較して構造が単純で部品点数も少なくでき、分解及び組立てが容易でメンテナンス性に優れたフローティング形ボールバルブを用いて誤差を抑えた開度調節が可能になる。
【0018】
請求項
3に係る発明によると、アクチュエータ内のギア群の最終段以降である出力軸で開度検出することにより、ギア群の歯車のバックラッシュを考慮することなく出力軸でボール弁体の正確な開度を検出することができる。そのため、この開度検出結果を利用してボール弁体を高精度に開度制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】アクチュエータ付きボールバルブの一実施形態を示した部分断面図である。
【
図2】出力軸、ステム、ボール弁体を接続した状態を示す一部切欠き断面図である。
【
図4】(a)は、
図2のB−B断面の弁閉状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面の弁閉状態を示す模式図である。
【
図5】(a)は、
図2のB−B断面における弁開操作時の第1の開度状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面における弁開操作時の第1の開度状態を示す模式図である。
【
図6】(a)は、
図2のB−B断面における弁開操作時の第2の開度状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面における弁開操作時の第2の開度状態を示す模式図である。
【
図7】(a)は、
図2のB−B断面における弁開操作時の目標開度到達状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面における弁開操作時の目標開度到達状態を示す模式図である。
【
図8】(a)は、
図2のB−B断面の弁開状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面の弁開状態を示す模式図である。
【
図9】(a)は、
図2のB−B断面における弁閉操作時の第1の開度状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面における弁閉操作時の第1の開度状態を示す模式図である。
【
図10】(a)は、
図2のB−B断面における弁閉操作時の第2の開度状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面における弁閉操作時の第2の開度状態を示す模式図である。
【
図11】(a)は、
図2のB−B断面における弁閉操作時の目標開度到達状態を示す模式図である。(b)は、
図2のC−C断面における弁閉操作時の目標開度到達状態を示す模式図である。
【
図12】(a)は、
図2のB−B断面におけるオーバーランおよび反転弁開方向回転後の弁閉操作時の目標開度到達状態を示す模式図である。(b)は、
図3のC−C断面におけるオーバーランおよび反転弁開方向回転後の弁閉操作時の目標開度到達状態を示す模式図である。
【
図13】バルブ開閉制御を示したフローチャートである。
【
図14】(a)は、開度誤差のある場合の開度とCv値との関係を示すグラフである。(b)は、開度誤差を抑えた場合の開度とCv値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明における
空調機器のボールバルブ用アクチュエータの制御方
法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、ボールバルブとバルブ用アクチュエータとを接続した状態、
図2においては、アクチュエータの出力軸、ステム、ボール弁体の接続状態を示している。
図13においては、バルブ用アクチュエータの制御方法のバルブ開閉制御時のフローチャートを示している。
【0021】
図1、
図2に示すように、本発明のバルブ用アクチュエータの制御方法で用いるバルブは、フローティング形ボールバルブであり、このバルブ本体1は、ボール弁体2、ステム4を有し、このバルブ本体にアクチュエータ3が取付けられる。
【0022】
アクチュエータ3は、ボール弁体2への回転伝達用の出力軸10を有し、この出力軸10がステム4を介してボール弁体2と接続されている。このアクチュエータ3内にはギア群13が内蔵され、図示しないモータからこのギア群13を介して回転力を出力軸10に伝達する構造になっている。アクチュエータ3は、出力軸10によりステム4を介してボール弁体2を回転してこのボール弁体2を所定開度に制御可能になっている。
図1において、出力軸10には開度検出用の開度センサ17が設けられており、ギア群13のバックラッシュの影響を排除するため、アクチュエータ3における開度検出をギア群13の最終段以降である出力軸10で行うようにしている。なお、
図1においては、ギア群13を簡略化したものを示しており、実際にはギア群13は、多数の中間歯車等を有している。
【0023】
バルブ本体1内のボール弁体2は、流入口5、流出口6を有するボデー7内の両側にボールシート(環状弁座)8、8を介して装着される。
ステム4は、ボール弁体2とアクチュエータ3との間に介在され、このステム4によりボール弁体2とアクチュエータ3とが接続される。ステム4の両端部にはそれぞれ平行二面状の凸状部11、12が形成されており、出力軸10、ボール弁体2には、これらの凸状部11、12を嵌め込み可能な平行二面状の凹状部15、16が形成されている。ボール弁体2とアクチュエータ3とは、これらの凸状部11、12と凹状部15、16との嵌め合いにより接続される。この嵌め合い接続により、アクチュエータ3の駆動で回転するステム4を介してボール弁体2を開閉自在に設け、ボール弁体2を目標となる中間開度に回転させるようになっている。
【0024】
このとき、
図4〜
図7に示すように、出力軸10の凹状部15とステム4の凸状部11、ステム4の凸状部12とボール弁体2の凹状部16との間にはそれぞれ隙間(ガタ)S1、S2が設けられる。出力軸10が回転すると、この出力軸10は、隙間S1内を空転してステムの凸状部11に当接し、その後、出力軸10の回転に追従してステム4が回転する。ステム4が出力軸10により回転すると、このステム4は、隙間S2内を空転してボール弁体2の凹状部16に当接し、ステム4の回転に追従してボール弁体2が回転する。このように、アクチュエータ3の出力軸10によりステム4を介してフローティングボールバルブのボール弁体2を回転させる際には、凹状部15と凸状部11、凸状部12と凹状部16との間の2箇所の隙間S1、S2によって開度誤差が生じることになる。
【0025】
さらに、このバルブ本体1の中間開度時には、アンバランストルクが加わることで開度誤差が生じやすくなっている。ここで、ボール弁体2に流体が流れるときのアンバランストルクの発生を
図3により説明する。
図3は、
図1のA−A断面矢視図(ボール付近の拡大図)である。弁閉状態のボール弁体2を0°、弁開状態のボール弁体2を90°とした場合、ボール弁体2が80°になった状態を
図3に示している。この場合、ボール弁体2の閉方向の回転方向は右回転となる。
【0026】
図3において、D点では流れがボール弁体2にぶつかり、このボール弁体2を閉方向に回転させる方向に力が生じる。本実施形態におけるボール弁体2は、流量制御のため、二次側流路口2aを、弁開状態になるにつれて順次開口面積を大きくするために略扇形状に設定している(
図2参照)。この流路口2aは、円筒状の流路に対して張り出し部2
bを有するため、E点ではよどみが生じ、流体は非張り出し部側F点付近に片寄ることになる。このF点において、ボール弁体2の開口部位から流れ出す方向は、ボール弁体2が閉方向に回転する回転よりとなる。G点では管壁に沿って流れた流体がボール弁体2の外周側を押し、ボール弁体2には閉方向に回転する方向に力が生じる。
これらの力をアンバランスと呼び、弁開度90°未満の状態では常にボール弁体2を閉方向に回転させる方向にアンバランストルクが働いている。特に、
図3に示す扇形の流路口2aを有するボール弁体2では、E点のよどみ現象が多く生じるためにこのアンバランストルクが大きく発生しやすくなっている。
【0027】
これらより、アンバランストルクが加わる中間開度とは、ボール弁体2が弁閉状態(0°)を越え90°未満までの状態をいう。本発明におけるバルブ用アクチュエータの制御方法は、ボール弁体2が0°を越えて90°未満までの範囲内において適用するものとする。
【0028】
本発明のバルブ用アクチュエータの制御方法では、先ず、ステム4を目標開度に対してボール弁体2とステム4との間の隙間(ガタ)S2分だけ閉方向にオーバーランさせるように回転駆動し、その後、このアクチュエータ3を反転してステム4を目標開度まで開方向に回転することにより、ボール弁体2を開方向に支持した状態で、ステム4を目標開度に保持するように制御した。
【0029】
この場合、上記したようにステム4と出力軸10とを嵌め合い接続し、このステム4と出力軸10との間のガタS1分をボール弁体2とステム4との間のガタS2分に合算して、アクチュエータ3でボール弁体2を目標の開度まで回転するようにした。
【0030】
ボール弁体2を目標の開度まで回転する際には、このボール弁体2の開度を検出するようにする。この場合、アクチュエータ3の出力軸10の回転角度を開度センサ17で測定する。これにより、ギア群13のバックラッシュに起因する誤差の影響が排除され、出力軸10の回転角度を高精度に測定できる。
【0031】
続いて、アクチュエータ3によりボール弁体2を動作させる場合を述べる。
先ず、ボール弁体2を弁閉状態から所定の中間開度まで弁開操作するときには、アクチュエータ3の出力軸10とステム4、及びステム4とボール弁体2との関係は以下のようになる。
図4(a)、
図4(b)においては、それぞれ
図2(b)のB−B拡大断面、C−C拡大断面を示しており、このとき、流体の流れる向きは
図3と同様に図の上方から下方であり、図では弁閉状態を示している。この状態からアクチュエータ3の出力軸10を弁開方向に回転(図において左回転)するとき、
図5(a)に示すように、出力軸10がステム4に対して隙間S1の角度θ1分回転する範囲ではステム4が回転することはないため、
図5(b)に示すようにステム4からボール弁体2に回転が伝達されることはない。ここで、
図5(a)に示す矢印は、弁開方向を示している。
【0032】
出力軸10がさらに回転して
図6の状態になると、
図6(a)に示すように出力軸10の回転がステム4に伝達してこのステム4が回転するが、
図6(b)においてステム4がボール弁体2に対して隙間S2の角度θ2分回転する範囲では、ステム4の回転でボール弁体2が回転することはない。
このようにして、弁閉から弁開方向に出力軸10が回転するときには、この出力軸10からボール弁体2に回転が伝達するまでに隙間S1、S2の角度θ1、θ2分だけ空転が生じる。そのため、アクチュエータ3による弁開時には、この空転の角度θ1、θ2の回転分を考慮して回転制御を実施する必要がある。
【0033】
図7(a)、
図7(b)においては、
図6の状態からさらに出力軸10を回転して所定の目標開度に到達した際のこの出力軸10、ステム4、ボール弁体2の状態を表したものである。この場合、
図7(b)に示すようにボール弁体2の凹状部16にステム4の凸状部12が接した状態にあるため、ボール弁体2に
図7(b)に示す点線方向、すなわち弁閉方向のアンバランストルクが働いても、ボール弁体2の回転がステム4の当接により防がれて弁開度が変わることが防止される。従って、この弁開操作時には、ボール弁体2が目標開度に到達すれば、それ以上オーバーランさせる必要はない。アンバランストルクが弱い場合には、
図3のボールシート8の押付け力によってボール弁体2が動かないこともあるが、この場合にも既に
図7(b)の状態に到達しているため、出力軸10、ステム4、ボール弁体2の位置関係が変わることはない。
【0034】
一方、ボール弁体2を弁開から目標の中間開度まで弁閉動作するときには、出力軸10とステム4、及びステム4とボール弁体2との関係は以下のようになる。
図8(a)、
図8(b)においては、それぞれ
図2(b)のB−B断面、C−C断面における弁開状態を示している。このとき、流体の流れる向きは
図3と同様に図の上方から下方になっている。この状態からアクチュエータ3の出力軸10を弁閉方向に回転(図において右回転)したとき、
図9(a)に示すように、出力軸10がステム4に対して隙間S1の角度θ1分回転する範囲ではステム4が回転することはないため、
図9(b)においてステム4からボール弁体2に回転が伝達されることはない。ここで、
図9(a)に示す矢印は、弁閉方向を示している。
【0035】
出力軸10がさらに弁閉方向に回転して
図10の状態になると、
図10(a)に示すように出力軸10の回転がステム4に伝達してこのステム4が回転するが、
図10(b)に示すようにステム4がボール弁体2に対して隙間S2の角度θ2分回転する範囲では、ステム4の回転でボール弁体2が回転することはない。
このように、弁開から弁閉方向に出力軸10が回転するときにも、上記の弁閉から弁開方向への回転の場合と同様に、出力軸10からボール弁体2に回転が伝達するまでに隙間S1、S2の角度θ1、θ2分だけ空転が生じる。
【0036】
図11においては、
図10の状態からステムをさらに弁閉方向に回転させてボール弁体が目標開度に到達した状態を示している。
この状態でボール弁体2にアンバランストルクが働くと、
図11(b)の点線矢印に示すようにボール弁体2が閉方向に回転し、このときボール弁体2とステム4との間の隙間S2が存在しているために、アクチュエータ3が動作していないにもかかわらずボール弁体2はステム4に当たるまで角度θ2の分だけ移動してしまう。この場合、ボール弁体2がアクチュエータ3に対して弁閉方向に余計に回転した位置で停止することになる。このずれが弁開度の誤差となる。
【0037】
この隙間S2、及び隙間S1によって生じるガタによるボール弁体2の開度誤差を抑えるために、アクチュエータ3には開度制御手段20、算出手段21が設けられている。開度制御手段20は、弁閉回転時に隙間S1、S2の角度θ1、θ2を目標値の角度(目標開度)に加えた分だけ出力軸10を弁閉方向に所定角度回転した後に、隙間S1、S2の角度θ1、θ2の分だけ出力軸10を弁開方向に回転させて目標開度に動作させるようになっており、ボール弁体2とステム4とを弁開動作時の当接状態と同様になるように回転制御し、ボール弁体2を目標開度の中間開度に位置決め保持するものである。このとき、算出手段21によって、ボール弁体2及び出力軸10とステム4との凹凸嵌合の隙間S1、S2の角度θ1、θ2が算出される。
【0038】
図11の状態から弁開度の誤差を防ぐようにする場合、ボール弁体2とステム4とのガタ分(隙間θ2)だけ閉方向にボール弁体2を回転(オーバーラン)させた後(図示せず)、
図12に示すように、ステム4をさらに角度θ2の分だけ開度制御手段20により開方向に回転させる。
このように弁開から弁閉状態にボール弁体2を回転させる際に、出力軸10とステム4との間に生じる隙間S1の角度θ1、ステム4とボール弁体2との間に生じる隙間S2の角度θ2による開度誤差を開度制御手段20により制御し、ボール弁体2の動作を常に開方向動作と同じ状態のボール弁体2、ステム4、出力軸10の関係にすることで、アンバランストルクでボール弁体2が動くことを防ぐことができる。その際、アクチュエータ3の停止位置とボール弁体2の停止位置の関係が変わることなく、ボール弁体2とステム4、ステム4と出力軸10との間のそれぞれの隙間(ガタ)S1、S2の影響を受けることのない目標開度に制御できる。
【0039】
アンバランストルクは、ボール弁体2を開方向に回転させる力を有していないため、バルブ本体1を常に開方向の動作で終了させることにより、アンバランストルクを加味した効果を利用して、低コストで精度よくボール弁体2の位置決めが可能となる。
【0040】
ここで、
図11の暫定開度の状態でボール弁体がアンバランストルクによって角度θ2だけ移動してしまっていても、その後にステム4を角度θ2だけ開方向に回転して目標開度に設定する制御には支障がない。
【0041】
ボール弁体2を回転させる場合には、算出手段21によってアクチュエータ3の流量を算出し、この流量からボール弁体2を所定の中間開度に回転制御して流量調節するようにする。
この場合、ボール弁体2の開度からバルブ容量係数(Cv値)を算出し、このCv値をもとにしてアクチュエータ3の流量を算出する。
【0042】
続いて、上述した開度制御手段20により、ボール弁体2を回転制御する場合の動作をより詳細に説明する。
図13のフローチャートにおいては、開度制御手段20により開度制御するときの動作を示している。アクチュエータ3の電源を投入し、弁閉から弁開方向に所定開度まで動作させる際には、目標値(目標開度)SPと同じ弁開度になるようにアクチュエータ3を現在開度PVから開動作させる。この場合、アクチュエータ3の出力軸10によりステム4を介してボール弁体2が回転し、目標値SPと現在開度PVとが一致したときにアクチュエータ3が停止する。
弁閉から弁開方向にボール弁体2を回転させた場合、前述したとおり回転操作後にアンバランストルクが弁閉方向に加わっても、ボール弁体2とステム4との間に隙間が無いことから、回転操作後にボール弁体2が出力軸10やステム4に対して回転することが防がれて所定の開度が維持される。
【0043】
一方、中間開度の弁開状態から目標開度まで弁閉方向に動作させる際には、ボール弁体2とステム4、ステム4と出力軸10との間の隙間S1、S2の角度θ1、θ2の和である最大ガタ量αを、目標値SPから引いた補正目標値SP´まで閉動作させる。この場合、例えば、現在開度PVが50°で目標値SPの40°に動作させ、最大ガタ量αが3°の場合には、40−3=37°の補正目標値SP´の開度まで回転させる。
回転中の現在開度PVが補正目標値SP´に達したら(現在開度PV=補正目標値SP´になったら)、さらに目標値SPである40°まで開動作させるようにする。
【0044】
現在開度PVが目標値SPまで達したら、アクチュエータ3を停止させる。このとき、開動作の場合と同様のボール弁体2、ステム4、出力軸10の状態になっているため、アンバランストルクによりボール弁体2が閉まる方向に力が働いても、このボール弁体2とステム4との間に隙間が生じることがないため、ボール弁体2の回転が確実に防がれてこのときの開度が維持される。
【0045】
上記の場合、弁開状態のボール弁体2の角度を90°、弁閉状態のボール弁体2の角度を0°としたとき、これらの弁開・弁閉状態のボール弁体2の角度を基準として、現在開度PV(50°)から目標値SP(40°)まで閉動作させる場合の動作を表したものである。所定の中間開度(50°)の弁開状態にあるボール弁体2の状態を基準とした場合には、このボール弁体2を目標値SP(40°)まで回転制御する場合、50−40=10°の回転角度に3°の最大ガタ量αを加えた13°の角度分だけ弁閉方向に回転し、次いで最大ガタ量α(3°)の分だけ弁開方向に回転すればよい。
【0046】
以上のように、本発明のバルブ用アクチュエータの制御方法は、先ず、ステム4を目標開度に対してボール弁体2とステム4との間のガタ量α分だけ閉方向にオーバーランさせるように回転駆動し、その後、アクチュエータ3を反転してステム4を目標開度SPまで開方向に回転することにより、ステム4とボール弁体2との間の閉方向のガタ量αを防ぎつつボール弁体2を開方向に支持した状態で、ステム4を目標開度に保持するように制御しているので、ボール弁体2やステム4などの加工精度を高めることなく通常の加工精度で製作したボール弁体2、ステム4、出力軸10を一体化して制御用として使用できる。これにより、コストアップを防ぎつつ、嵌合部位のガタS1、S2の影響を受けることなく、弁閉動作時のアンバランストルクを加味しながら精度よいボール弁体2の位置決めが可能となる。したがって、開度誤差を抑えながら高精度に流量制御でき、バルブ本体1の構造が複雑化したり部品点数が増加したりすることもない。
【0047】
しかも、ステム4と出力軸10との間のガタS1分をボール弁体2とステム4との間のガタS2分に合算して、アクチュエータ3でボール弁体2を目標の開度まで回転しているので、アクチュエータ3からボール弁体2までの間に生じるガタ全体による開度誤差を抑えつつボール弁体2を正確に開度調節できる。このとき、アクチュエータ3内のギア群13の最終段以降である出力軸10で開度検出をおこなっていることで、ギア群13のバックラッシュによる開度誤差の影響を排除している。
【0048】
流量制御時には、ボール弁体2の開度を算出手段21により算出し、このボール弁体2の開度をもとに算出したCv値からアクチュエータ3の流量を算出して流量調整していることから、ボール弁体2の回転時の誤差を抑えることによりCv値の誤差の発生を防ぎ、この誤差の抑えられたCv値を用いて精度の高い流量計算を実施できる。これにより高精度の弁開度調節が可能となる。
【0049】
図14(a)、
図14(b)においては、開度誤差のある場合と、本発明のバルブ用アクチュエータの制御方法により開度誤差を抑えた場合の、開度とCv値との関係をそれぞれ示している。
図14(a)に示すように、アクチュエータ付きボールバルブを位置決めすることなく開度誤差が発生する場合には、この開度誤差により同じ開度であっても弁開方向と弁閉方向に動作させたときのCv値が異なる。
一方、
図14(b)に示すように、本発明の制御方法により開度誤差を抑えた場合、弁開方向と弁閉方向への動作時において同じ開度のときのCv値の誤差の発生を防ぐことができ、これにより、この開度時のCv値を一定値にできる。
【0050】
これらにより、本発明の制御方法によるバルブ用アクチュエータを空調機器等に用いることで、ボール弁体2の開度を正確に計測しながら流量制御して目標温度等の設定に近づけることができる。