特許第6089305号(P6089305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089305
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ポインチング装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0354 20130101AFI20170227BHJP
【FI】
   G06F3/0354 450
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-196660(P2014-196660)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-71408(P2016-71408A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514245041
【氏名又は名称】今田 裕一朗
(73)【特許権者】
【識別番号】514245052
【氏名又は名称】松川 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】今田 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】松川 文雄
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−038949(JP,A)
【文献】 特開平09−091079(JP,A)
【文献】 特開平09−035066(JP,A)
【文献】 特表2002−501271(JP,A)
【文献】 特開2007−072578(JP,A)
【文献】 特開2010−176565(JP,A)
【文献】 特開2009−143373(JP,A)
【文献】 特開2010−277198(JP,A)
【文献】 特開2011−253538(JP,A)
【文献】 特表2012−518852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)透明な板と、
2)前記板の背面に設置され、前記板の正面の対象物までの距離を測定する距離測定手段と、
3)対象物と前記板との距離が所定閾値以下の対象物を目的対象物と判別する判別手段と、
4)前記距離測定手段により形成される前記板上の測定領域に設定された複数の分割領域において、分割領域毎に、前記目的対象物が占有する面積を求め、占有する面積から、前記目的対象物の位置にある分割領域を決定する決定手段と、
5)前記目的対象物の位置にある分割領域からポインチング命令を導き出す命令手段と、
を備え
分割領域の内の1つ以上の領域が、他の領域より広く分割されている、或は、他の分割領域と重複している、の少なくとも何れかである、
ことを特徴とするポインチング装置。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記距離が所定の距離以下である前記目的対象物が占有する面積に関して、前記板上に設けられた複数の分割領域毎に比較することにより、面積が最も大きい分割領域を前記目的対象物の位置にある分割領域として決定することを特徴とする請求項1のポインチング装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記距離が所定の距離以下である前記目的対象物が占有する面積が、予め定められた分割領域の面積に対し、所定割合を超えた場合に、前記目的対象物の位置にある分割領域として決定することを特徴とする請求項1又は2に記載のポインチング装置。
【請求項4】
前記距離測定手段は、赤外線発光部と赤外線受光部とで構成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポインチング装置。
【請求項5】
前記ポインチング命令は、カーソル停止動作、もしくは、カーソル移動動作とすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポインチング装置。
【請求項6】
前記目的対象物が、第1目的対象物と第2目的対象物であり、
第1目的対象物が、前記カーソル停止動作に割り当てた分割領域を選択した状態で、
第2目的対象物が、異なる分割領域を選択することでクリック動作とすることを特徴とする請求項5に記載のポインチング装置。
【請求項7】
前記カーソル停止動作のポインチング命令は、
予め定められている分割領域に加えて、他の分割領域に拡大して導き出されることを特徴とする請求項5に記載のポインチング装置。
【請求項8】
前記板上に、1カ所以上、突起もしくは切り欠きを更に設けたことを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のポインチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として産業用情報機器のディスプレイに表示されるカーソルを画面上の任意の位置に移動し、さらにクリック処理するために利用する入力装置に関し、特に足で操作するポインチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルとディスプレイを組み合わせた情報機器のディスプレイは、手の指で入力操作することが前提にある。しかし、工場の生産現場では、作業のために手がふさがり、これらの装置での入力操作がしづらいシーンが発生する。
特に、作業者が食材を扱う工場では、衛生上の観点から、作業者は手袋を装着して作業をする。例えば、おにぎり製造ラインで、内包する具の種類を変えた多品種のおにぎりを製造する場合、製造したおにぎりの種類、数量などを、作業者自身がタッチパネルを通じてディスプレイに入力する作業が頻繁に発生する。手袋を外して入力作業をすれば、食材のかすでディスプレイ面が汚れることはない。しかし、入力のたびごとに手袋をはずすことが煩わしいので、通常はディスプレイを透明フィルムで覆って使用する。その結果、手袋に付着した食材のかすがフィルムに付着し、時間経過とともにこびりついて、ディスプレイを視認しづらくなる問題が発生し、フィルムを頻繁に交換しなければならない問題が発生する。油が付着した歯車関連部品、装置の製造ラインでも、作業者は油による手の汚れを防ぐため、手袋を使用することがある。この場合も同種の問題が発生する。
【0003】
そこで、作業に直接関与しない足を使って操作する入力装置を使用することが考えられ、いくつかの発明が開示され、一部すでに商品化されている。
例えば、手操作型マウスと同様に容易に操作することができ、かつ、データの入力作業の効率を向上させることのできる足で操作する足操作型入力装置が開示されている(特許文献1を参照)。特許文献1に開示された装置においては、足裏前半分と略同形状に形成される本体と、本体前方両側面に設けられる第一及び第二のスイッチと、本体裏面に取り付けられたマウスボールと、本体前方表面に設置した足の指で挟持可能な突起部とを備えている。足で本体を床面上で動かすと、動きに合わせた方向にカーソルがディスプレイ上を移動、親指で第一のスイッチを踏み込むと左クリック、薬・小指で第二のスイッチを踏み込むと右クリック操作になる。手で操作するマウスと同様の感覚で使用が可能である。床に付けたかかとを軸につま先を左右に回転してカーソルの横移動、指・足裏の屈伸作用でカーソルの縦移動が実現できる。
【0004】
また、画面上のカーソル移動、クリック処理を足で操作することのできる足用ポインティングデバイスが開示されている(特許文献2を参照)。特許文献2に開示されたポインティングデバイスは、床面に置いたベースと、床面と略平行に、2次元に移動可能な状態でベースに取り付けられた移動部と、移動部に対して、床面に略平行に設けられた回転軸を中心として回転可能に取り付けられ、足が置かれる足置き部と、移動部のベースに対する2次元移動量を検出する可変抵抗器と、足置き部が回転した時に接点が切り替わるスイッチと、移動部の移動量に応じてディスプレイ上で移動するカーソルで位置表示する信号を発生する移動信号発生手段とを備えている。足を前後左右斜めに動かすとカーソルが移動、つま先を踏み込むと左クリック、かかとを押すと右クリック処理になる。
【0005】
また、複数のデータを入力するために複数のスイッチ領域が設けられ、スイッチ領域毎に上部電極シート、スペーサ、および下部電極シートが順に積層されたシート状のマットスイッチが開示されている(特許文献3を参照)。特許文献3に開示されたマットスイッチは、近年、ダンスダンスレボリューション(登録商標)の名称で、立位のゲーム用途に商品化されている。マウスモードへの変換ソフトウエアと組み合わせれば、手で操作するマウスと同様の機能が足の操作で実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−38387号公報
【特許文献2】特開平10−97374号公報
【特許文献3】特開平09−326216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来の技術において、特許文献1に開示された足操作型入力装置は、足の指を使ってクリック処理するので、靴などの履物を身につけて作業する工場の生産現場には、これの導入が難しい。
【0008】
特許文献2に開示された足用ポインティングデバイスは、回転軸上の足置き部に載せた足のつま先やかかとを踏み込んで足置き部をシーソー様に回転させてクリック処理する。軽く回転できるように構成すると、回転軸上の足場が悪くなり、無用なクリック処理につながる。一定以上の踏み込み力を必要とする構成とすることで足場の悪さは軽減されるが、クリック操作の際に、ディスプレイ上のカーソル位置が無用に変動しがちになり好ましいことではない。
【0009】
生産現場では水気、油気、異物などで床面が汚れていることが多い。特許文献1の足操作型入力装置では、このような床面上での使用は、マウスボールがすべり、汚染などの影響を受け、正常動作を確保しにくい。さらに、生産現場でよく見られるグレーチング構造の床面では、マウスボールが正常動作しにくいことは容易に想像できることである。
【0010】
また、生産現場では、通路床面の凹凸は作業者が通行の際、安全上の障害となることが多い。特許文献2の足用ポインティングデバイスでは、ベース上に機構部品を搭載することから、比較的大きなサイズと重さの金属製筐体となりがちである。これを床面上に配設すると、作業者が通行の際のつまずきの原因となり望ましくない。すなわち、特許文献1,2に開示された発明においては、スイッチに機構部品を採用しており、防水、防塵機能を付加しなければならないという課題も有する。
また、生産現場では、立位作業が多い。特許文献1,2に開示された技術はいずれも片足操作する構成である。これらを立位使用すると、足場が悪く、生産現場には不向きである。
【0011】
特許文献3のマットスイッチは、立位作業でも足場の悪さからくる不安は特許文献1,2に比べ少ないものの、スイッチに機構部品を使用しており、これを生産現場の通路に設置すると、未使用の際でもその上に足を踏み入れただけでスイッチが無用に動作することになり、スイッチの信頼性に課題が生じる。
【0012】
特許文献1,2に開示された技術はいずれも手で操作するマウスの置き換えの発想で構成されており、ドラッグ機能や、マウスが有する左右クリック機能も有する。しかし、生産現場で作業中に使用するタッチパネル入力に必要な機能は、カーソル移動機能とクリック処理機能であり、足で入力する場合もそれの代替え機能があれば事足りる。
【0013】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたものであり、生産作業中に使用している手を使うことなく、座位、立位双方で情報機器へのデータ入力などの作業を可能にし、足で安定操作できるポインチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のポインチング装置は、下記1)〜5)から構成される。
1)透明な板
2)板の背面に設置され、板の正面の対象物までの距離を測定する距離測定手段
3)対象物と板との距離が所定閾値以下の対象物を目的対象物と判別する判別手段
4)距離測定手段により形成される板上の測定領域に設定された複数の分割領域において、分割領域毎に、目的対象物が占有する面積を求め、占有する面積から、目的対象物の位置にある分割領域を決定する決定手段
5)目的対象物の位置にある分割領域からポインチング命令を導き出す命令手段
【0015】
本発明のポインチング装置は、これを情報機器の入力ポートに接続して入力装置として使用する場合、ユーザが透明な板の上に目的対象物となる足を載せ、足の位置を移動することで、ディスプレイ上のカーソル位置を所定の位置に移動させる信号とともに、クリック処理の信号を入力することができる。
【0016】
ここで、上記2)の距離測定手段は、赤外線発光部と赤外線受光部とで構成する距離センサが好適に用いられる。
上記)の決定手段は、距離が所定の距離以下である目的対象物が占有する面積に関して、板上に設けられた複数の分割領域毎に比較することにより、面積が最も大きい分割領域を目的対象物の位置にある分割領域として決定することが好ましい。具体的には、距離が所定の距離以下である目的対象物が占有する面積が、予め定められた分割領域の面積に対し、所定割合を超えた場合に、目的対象物の位置にある分割領域として決定する。

【発明の効果】
【0017】
本発明のポインチング装置は、透明な板の上に足を載せるだけでクリック処理が可能であり、足の指を使ったクリック処理が不要になり、靴などの履物を身につけて作業する工場の生産現場で容易に使用することができるといった効果を有する。
また、足置き部をシーソー様に回転させてのクリック処理も不要になり、足場の悪さや無用なクリック処理、さらにはクリック処理の際に、ディスプレイ上のカーソル位置が無用に変動しがちになる不具合から解放されるといった効果を有する。
【0018】
本発明のポインチング装置によれば、本体を固定して使用するため、本体を移動させてカーソルを操作する場合に発生しがちな床面の汚染や形状などの影響を受けず、正常動作を確保できる。また、機構部品が無いので、防水、防塵などへの配慮が軽減され、生産現場での使用に際し、高い信頼性が確保できる。さらに、本発明のポインチング装置は、両足での立位使用が可能で、足場が安定し、床下に埋め込み透明な板面を床面面位置に設置して使用が可能であり、作業者が通行の際につまずく原因となる問題も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ポインチング装置の使用形態を示す模式図
図2】ポインチング装置の構成を示す模式図
図3】ポインチング装置の測定領域内に設定する複数の分割領域を示す図
図4】ポインチング装置の動作フローチャート(1)
図5】ポインチング装置の動作フローチャート(2)
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0021】
本発明のポインチング装置は、情報機器に付属するディスプレイ上のカーソルを足で操作するものである。本発明のポインチング装置の実施の形態を図1に模式図で示す。1は本発明のポインチング装置、2は情報機器、3はディスプレイである。ポインチング装置1は手で操作するマウス同様、情報機器2にUSB(Universal Serial Bus)や無線接続して使用する。ポインチング装置1の制御プログラムは、ポインチング装置1に内蔵するか、制御プログラムの一部またはすべてを情報機器2が保有するCPU(Central Processing Unit)が受け持つ構成にしても良い。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図2はポインチング装置の模式図を示している。図2(1)は外観斜視図を、(2)は側面図を示している。図2において、4は透明な板であり、例えば厚み4mmのアクリル板、5は赤外線発光部と赤外線受光部とで構成された距離測定手段で、例えば、microsoft(登録商標)のKINECT(登録商標)の距離センサ、6(a)〜6(d)は透明な板4と距離センサ5との距離を、例えば34cmに保つための支柱である。7は距離センサ5の測定範囲を示す。8は透明な板4の上に置いた右足、9は透明な板4の上に置いた左足である。距離センサ5は、縦43°、横47°の測定範囲7を有し、透明な板4上に概ね縦30cm、横40cmの測定領域10を形成し、縦480ポイント、横640ポイントの測定点を有する。距離センサ5は、概ね50cm未満の高さの透明な板4上の物体との距離を、透明な物体を除きすべて0cmとして処理する。従って、透明な板4上に右足8を載せると、測定領域10内にある右足8の位置に対応する測定点は0cmと判断する。
【0023】
図3は、ポインチング装置の測定領域10に設定する分割領域を示す。11(a)〜11(i)は測定領域10に制御プログラムで設定する9つの分割領域である。下記表1は分割領域11(a)〜11(i)の測定点の数と、分割領域11(a)〜11(i)に割り当てる入力命令を示している。分割領域の内1つ以上の領域にカーソルを移動する入力命令を割り当てる。
さらに、分割領域の内1つ以上の領域にカーソルを停止する入力命令を割り当てる。
【0024】
【表1】
【0025】
0cmと判定した測定点の数を9つの分割領域11(a)〜11(i)毎にカウント、集計する。0cmの測定点の数を右足8が占有する面積と定義する。各分割領域11(a)〜11(i)に属する測定点の数を各分割領域11(a)〜11(i)の面積と定義し、各分割領域11(a)〜11(i)毎に右足8が占有する面積を求め、右足8が占有する面積が最も大きい分割領域を選択する。
【0026】
カーソルを停止する動作に割り当てた分割領域を右足8で選択しながら、左足9で分割領域11(h)を選択することでクリック処理とする。
表1において、カーソルを停止する命令を割り当てる分割領域11(i)は、測定面積を46170に増やして他の分割領域の面積34080より広くし、しかも他の分割領域と重複カウントする。重複カウントした分割領域11(i)を、図3に点線12で囲まれた領域として示す。この部分に右足8が入った時、双方の分割領域にカウントすることで、右足8が他の分割領域に移動する際の滑らかなカーソル移動が実現できる。要は、例えばカーソルを上移動させようとして分割領域11(h)にある右足8を動かした時、11(a)を経由した際に右足8が分割領域11(a)にあると判断されない程度に分割領域11(i)の面積を広くとり、分割領域11(a)の面積と重複すれば良い。
【0027】
停止の入力命令を割り当てる分割領域11(i)には、予め“+300ポイント”割り当てる。これはデフォルトでカーソルを停止させる目的で割り当てるポイントである。そのポイント数は、アクリルの透明な板4上に異物が落下した場合、右足8と誤判断してカーソルが無用な動作をすることを防ぐ目的で与えるもので、一般に右足8の占有面積に比べ、概ね1/10以下であることが望ましい。
【0028】
ここで、右足8と左足9とでポインチング装置を操作する制御プログラムについて説明する。この制御プログラムは、一般的なプログラミング言語を用いて開発したものであり、図1において、ポインチング装置1や情報機器2内のCPUで実行するプログラムである。図4および図5に制御プログラムの処理動作のフローチャートを示す。なお、図5図4中のサブルーチンS10の動作フローチャートを示す。
右足8でカーソル操作する。右足8を透明な板4の測定領域10内に置き、左足9を透明な板4の測定領域10の外に置く。距離センサ5をセットアップ(S01)した後、各ポイントで右足8の距離を測定(S02)し、閾値未満のポイントの数を領域毎に計測する(S03)。計測の結果、右足が最も入っている領域を選択し(S04)、中央の領域が最大の値であるかを判定する(S05)。中央の領域が最大の値である場合、すなわち、0cmの判定ポイント数が分割領域11(i)に最も多い場合は、カーソル移動を停止する(S06)。カーソルが停止した状態で分割領域11(h)に左足9を置き(S07)、分割領域11(h)の測定点が13000ポイント以上0cmとなった時、クリック操作と判定する(S08)。この値は、右足8が分割領域11(h)、11(i)の双方を占有した時に、右足8だけでクリック操作する不具合を解消できる値であればよい。これに対して、中央の領域が最大の値ではない場合、例えば分割領域11(d)に0cmと判定した測定点の数が最も多い時は、分割領域11(d)を選択し、カーソルを右移動する。すなわち、分割領域11(a)〜11(h)に対応して左上、上、右上、右、右下、下、左下、左と45°刻みにカーソル移動の方向を決定し(S09)、33msごとのルーチン繰り返しの度毎に1絵素移動する計算でカーソル移動量が決定され(S10)、カーソル移動処理がなされる(S11)。
【0029】
ポインチング装置は、右足8、左足9を透明な板4上に置くだけなので、クリック操作の際に、ディスプレイ3上のカーソル位置が無用に変動する従来の発明に発生しがちな問題点が解消される。
【0030】
停止動作を割り当てる分割領域11(i)は面積を広くとるとともに、“+300ポイント”の重み付けがなされているので、クリック操作後のルーチン繰り返しの際は、右足8が占有する面積が最も大きい分割領域は11(i)となり、カーソルは停止し、左に誤移動することはない。クリック処理にはプログラム上でフラッグ判定を組み合わせ、多重クリックを防止する。
【0031】
着座して、ポインチング装置を操作する際、左上、上、右上の入力命令を割り当てる3つの分割領域11(a),11(b),11(c)(上方領域)へ右足8を移動すると、距離センサ5が脛まで感知して、右足8の位置が複数の分割領域に跨りがちである。その結果、カーソルの上方領域への移動は他の方向の移動に比べ感度が落ちる不具合が発生する。そこで右下、下、左下の入力命令を割り当てる3つの分割領域11(e),11(f),11(g)(下方領域)には予め“−5500ポイント”を割り当てる。割り当てるポイント数は、着座時のユーザの脛の占有面積に算入された分を補償できる値であれば良く、この値に特定されるものではない。さらに上方領域のいずれか1つ以上の分割領域の0cmと判定された測定点の数が20000ポイントを超えた場合、他の6つの分割領域のポイント数にかかわらず3つの上方領域を比較して最大のポイント数を計測した分割領域に割り当てた命令を行うことでこの不具合が解消する。これは意図して上方領域を右足8が占有していると判定できる値であれば良い。立位で操作する場合はこれらの設定は不要である。
【0032】
選択された左上、上、右上、右、右下、下、左下、左の入力命令が割り当てられた各分割領域11(a)〜11(h)に右足8が入った時、足の占有面積に応じてカーソルの移動量を複数段階に増減して入力速度を変えることで、本発明のポインチング装置の操作性が改善できる。すなわち、右足8の移動が行われた場合、まず、選択領域の中での足の割合を測定し(S101)、選択領域内での足の割合が一定以上であるか否かを判定する(S102)。選択領域内での足の割合が一定以上である場合には、高速モードに決定し(S103)、一定以上でない場合には低速モードに決定する(S104)。この際カーソルの上方領域への移動は他の方向の移動に比べ感度が落ちるので、移動量の複数段階の閾値は、下方領域より上方領域を低く設定する。例えば、分割領域11(e),11(f),11(g)では、足の占有面積が、15000〜19999ポイントで2倍速、20000〜22999ポイントで3倍速, 23000〜27999ポイントで4倍速, 28000ポイント以上で5倍速とする。一方、分割領域11(a),11(b),11(c)では、足の占有面積が、15000〜18999ポイントで2倍速, 19000〜21999ポイントで3倍速, 22000〜24999ポイントで4倍速, 25000ポイント以上で5倍速の速さとする。
【0033】
また、透明な板4上の分割領域11(i)に、右足8が感じ取れる程度の切り欠きや突起加工を施せば、使用の際に右足8の位置決めが容易になり、ポインチング装置のブラインド使用の助けになる。突起は距離センサ5の測定に影響を与えず、しかも作業者が通行の際のつまずきの原因とならない程度の小さな突起であることが望ましい。切り欠きも足のサイズに比較して十分に小さな切り欠きであることが望ましい。同様の加工を測定領域10の周辺に行えば、使用に際して足がその加工を感じ取ることで、右足8、左足9の位置決めが容易になる。
【0034】
以上の実施例では、右足8でカーソル操作したが、逆に左足9でカーソル操作しても良い。この場合右足8を分割領域外に置いて分割領域11(d)の測定点が13000ポイント以上0cmとなった時、クリック処理と判定する構成にすれば良い。
【0035】
以上の実施例では、赤外線発光部と赤外線受光部とで構成された測定手段に、KINECT(登録商標)の距離センサを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、台湾企業のASUS(登録商標)のXtionPro、XtionPro LIVE、あるいは、イスラエル企業のPrimeSense(登録商標)のCapri1.25などを用いても良い。
【0036】
実施例では透明な板4には4mm厚のアクリル板を使用した。透明な板4は赤外線に対して透明であることが必要で、可視部の光に対し必ずしも透明である必要はない。またその厚みに対しては、着座使用の際は置いた足を支える強度が、そして立位使用の際はユーザの体重を支える強度と、足の位置と距離を測定する赤外線の透過量が確保できるものであれば特段の条件はない。
【0037】
実施例では、物体との距離が50cm未満場合、0cmと判断する距離センサ5を透明基板4と34cm離して使用した。透明基板4との距離はもっと狭めて、ポインチング装置1の厚みを薄く構成しても、足までの位置と距離の測定には問題が生じない。しかし、距離センサ5の縦と横の角度で定まる測定範囲7が狭められ、足が占有する面積が分割領域の面積に比べ大きくなり、操作性が低下する。
【0038】
以上の実施例では、赤外線発光部と赤外線受光部とで構成された距離測定手段に距離センサ5を1台使用した。これを例えば2台使用して、それぞれの距離センサ5で個別の測定範囲を受け持つように構成すれば、測定領域10を広くとることが可能になり、上記不具合が改善できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、コンピュータの入力装置に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 ポインチング装置
4 透明な板
5 距離センサ
8 右足
9 左足
10 測定領域
11 分割領域
12 重複カウントした分割領域
図1
図2
図3
図4
図5