(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
切断物を把持可能なハンドを備えた移動体で掴んで運搬可能な本体と、前記本体の一端から延出して、少なくとも一端が構造物に固定された前記切断物を把持可能な把持手段と、前記本体又は前記把持手段に取り付けて、前記把持手段で把持された前記切断物の他端側を切断する切断手段と、を備えた切断治具を前記移動体の前記ハンドで掴んで運搬する工程と、
少なくとも一端が構造物に固定された前記切断物を前記把持手段で把持する工程と、
前記切断治具から前記ハンドを離して、前記把持手段で把持された前記切断物の他端側を前記切断手段で切断する工程と、
前記切断物の他端側を前記ハンドで把持する工程と、
を有することを特徴とする切断方法。
【背景技術】
【0002】
大型プラントの解体現場では重量物が多く、作業を容易かつ安全に進めるために重機を用いた作業が行われている。
【0003】
従来の解体現場で用いられている重機として、特許文献1には、重機のアームに装着して建築物を壊す小割破砕機のアタッチメントが開示されている。この小割破砕機は、破砕機本体側の固定爪と破砕機本体に軸支された稼動爪間でコンクリートを小片に破砕する作業を行うものである。また、小口径の配管等、既設構造物からの分離が容易なものであれば、破砕機のようなアタッチメントを備えた重機で引き千切るように解体することも可能である。
【0004】
特許文献2には重機用切断アタッチメントが開示されている。このアタッチメントは、一対の可動顎に形成された切断刃を互いの内側面に摺接させながら交差させて、建物の解体時に発生する鋼材をせん断するものである。
【0005】
特許文献3には、双腕型の重機が開示されている。この重機は、作業腕を二本備えた構成であり、一方の腕に切断機、他方の腕に把持機構を装着することで、高所にある配管を支えながら切断するという作業が可能となる。
【0006】
特許文献4には、配管を径方向に切断するセーバーソーと、セーバーソーの切断スペースとなるスリットと、このスリットを挟んだ2箇所で配管を支持する配管支持治具からなる管切断装置が開示されている。また、既存の配管切断装置であるセーバーソー等では、チェーンバイスを用いて装置を配管に固定可能なものがある。チェーンの巻き付け長さを変えることで幅広い配管径に対応できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述のように大型プラントでは重量物が多く、一例として、直径が約300mm、かつ肉厚が約20mmとなる配管の鋼管1m当りの質量は、100kgを超えるものがある。このような重量物を小割破砕機で引き千切ることにより配管を切断したり、切断アタッチメントでせん断したりすることは難しい。
【0009】
また、大径配管の切断と配管の把持能力を同時に満たすような双腕型重機は、一般に形状寸法も大きくなるので、狭隘な作業場所に搬入したり、現場内で取り回したりすることが難しい場合がある。その場合、切断用重機と把持用重機をそれぞれ用意すれば、一台当りの寸法は小さくすることができる。しかし、二台合わせれば必要な作業スペースは逆に大きくなってしまうという新たな問題が発生する。
【0010】
また、チェーンバイスを用いてセーバーソーを配管に取り付ける管切断装置は、人手を介してチェーンを取り付ける必要がある。このため、高所など安全が確保できない場所で取り付けることは困難である。また、前述の大口径の配管等に適用する場合、装置が大型化してしまい人手による取り付け作業が困難となる。
【0011】
重機による大型プラントの解体工事において高所にある配管を切断・撤去する場合、切断された配管が落下するのを防ぐために、自由端側の配管を支えながら切るという動作が必要となる。既存の重機は、単独のアームに取り付けた破砕、切断アタッチメントによる一種の作業しか行うことができない。また、複数のアームを備えた重機は、大型化してしまい、狭隘な場所の作業には適していない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、狭隘な場所であっても容易に配管等の大型の切断物を切断することができる切断装置及び切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、切断物を把持可能なハンドを備えた移動体で掴んで運搬可能な本体と、前記本体から延出して、少なくとも一端が構造物に固定された切断物を把持可能な把持手段と、前記本体又は前記把持手段に取り付けて、前記把持手段で把持された前記切断物の他端側を切断する切断手段と、を備え
、前記把持手段は、前記切断物を径方向から挟んで支持する一対の支持板と、前記支持板を開閉させる開閉部と、を備え、前記切断手段は、前記切断物の肉厚よりも大きい半径の回転刃と、前記一対の支持板に前記切断物を囲むリング状に形成されたガイドレールに沿って前記回転刃を周回させる周回部と、を備えたことを特徴とする切断治具を提供することにある。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、前記把持手段に接続して前記把持手段の把持動作又は開放動作を行うとともに、前記切断手段に接続して前記切断手段の切断動作を行う駆動手段と、前記駆動手段と接続して駆動動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする切断治具を提供することにある。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の解決手段において、前記切断手段は、前記切断物の直径よりも大きい半径の回転刃と、前記回転刃を前記本体から前記把持手段の延出方向に沿って進退移動可能な進退移動部と、を備えたことを特徴とする切断治具を提供することにある。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1又は第2の解決手段において、前記把持手段は、前記切断物を径方向から挟んで支持する一対の支持板と、前記支持板を開閉移動させる開閉部と、を備え、前記切断手段は、前記切断物の肉厚よりも大きい半径の回転刃と、前記一対の支持板に前記切断物を囲むリング状に形成されたガイドレールに沿って前記回転刃を周回させる周回部と、を備えたことを特徴とする切断治具を提供することにある。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1ないし第4のいずれかの解決手段において、前記本体には、前記移動体のハンドが把持可能なグリップを取り付けたことを特徴とする切断治具を提供することにある。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、切断物を把持可能なハンドを備えた移動体で掴んで運搬可能な本体と、前記本体の一端から延出して、少なくとも一端が構造物に支持された切断物を把持可能な把持手段と、前記本体又は前記把持手段に取り付けて、前記把持手段で把持された前記切断物の他端側を切断する切断手段と、を備えた切断治具を前記移動体の前記ハンドで掴んで運搬する工程と、少なくとも一端が構造物に支持された前記切断物を前記把持手段で把持する工程と、前記切断治具から前記ハンドを離して、前記把持手段で把持された前記切断物の他端側を前記切断手段で切断する工程と、前記切断物の他端側を前記ハンドで把持する工程と、を有することを特徴とする切断方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、切断物を把持可能なハンドを備えた移動体のハンドで掴んで移動可能な本体に、切断物を把持可能な把持手段と切断物を切断可能な切断手段を形成した切断治具を用いた構成であるため、高所など人手で取り付けが困難な場所であっても、移動体を用いて切断治具を切断物に取り付けることができ、切断作業を行うことができる。
【0020】
また、切断治具は、移動体と独立して切断物を把持した状態で切断できるため、切断治具を移動させる重機は切断物を把持可能なハンドを備えた構成であれば良い。このため、移動体は把持、切断等の複数のアームを備える必要がなく、狭隘な場所であっても作業を行うことができる。
【0021】
切断中に配管を支えている必要がなければ、移動体は切断以外の作業をしていてもよく、また、複数切断治具を取り付けて同時並行で切断作業を行うようにしても良い。
【0022】
本発明によれば、上記のように、切断手段は、切断物の直径よりも大きい半径の回転刃と、回転刃を前記本体から把持手段の延出方向に沿って進退移動させる進退移動部を備えているので、切断物の径方向に回転刃が進退移動して切断することができる。このため、大口径の配管であっても切断することができる。従来、重機用切断アタッチメントで配管をせん断する場合、例えば、1m以下の場所を移動できるような小型重機に取り付け可能なアタッチメントでは、直径300mm、肉厚20mm近い鋼管を切断することは能力的に困難であった。しかし本発明によれば、大口径の配管等の切断物であっても切断することができる。
【0023】
本発明によれば、上記のように、前記把持手段は、前記切断物の径方向から挟んで支持する一対の支持板と、前記支持板を開閉移動させる開閉駆動部と、を備えている。また切断手段は、前記切断物の肉厚よりも大きい半径の回転刃と、前記支持板にリング状に形成されたガイドレールに沿って前記回転刃を周回させる周回部と、を備えているため、大口径の切断物を容易に切断することができる。また、切断手段の回転刃を小さくすることができ、治具全体の小型化を図ることができる。
【0024】
本発明によれば、上記のように、ハンドで把持可能なグリップを本体に設けているため、切断物を把持可能な移動体のハンドの形状で容易に切断治具を掴むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の切断治具及び切断方法の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0027】
図1は第1実施形態の切断治具の構成概略を示す平面図である。本実施形態の移動体(不図示)は、アームの先端に配管・機器等の切断物を掴むことができるハンド(把持機構)を備えた重機である。
図1に示すように第1実施形態の切断治具10は、移動体(不図示)のハンドで掴んで運搬可能な本体20と、前記本体20から延出して、片持ち支持された切断物14の固定側16(端部が建物などに固定されている側)を把持する把持手段30と、前記本体20に取り付けて、前記把持手段30で把持された前記切断物14の自由端側18(端部が建物などに固定されていない側)を切断する切断手段40と、前記把持手段30の把持動作又は開放動作を行うとともに、前記切断手段40の切断動作を行う駆動手段50と、前記駆動手段50の駆動動作を制御する制御手段60と、を主な基本構成としている。
【0028】
本体20は、重機などの移動体(不図示)のハンドで掴んで配管、機器などの切断箇所へ移動させることができる形態に構成されている。本体20には、把持手段30と切断手段40とグリップ22が形成されている。
【0029】
グリップ22は、重機(不図示)のハンドが掴み易いように、切断物14の外径と略同じ大きさの外径に形成している。本実施形態のグリップ22は、一例として切断物14の配管と略同じ直径を有する円柱状の突起である。このグリップ22の軸心は、切断物14の長手方向に平行となるように形成されている。このような形態のグリップ22は、切断物14を掴むことができる移動体のハンド12の形態のまま、切断治具10を掴むことができる。よって、グリップと切断物のそれぞれを掴むためにアームに装着するハンドのアタッチメントを変える必要がない。また、グリップ22を掴む方向と、切断物14を掴む方向が同一方向のため、グリップ22を把持した後、切断物14を把持する移動を容易に行なうことができる。
【0030】
把持手段30は切断物14となる配管、機器等を把持するハンドである。本実施形態の把持手段30は、本体20から延出して形成されている。把持手段30は、シリンダ機構を備え、後述する駆動手段50の油圧回路に接続している。シリンダ機構は、ピストンロッド32及び把持シリンダ34からなる。ピストンロッド32の先端にはリンク機構を介してハンド31が軸着している。このような構成のシリンダ機構は、ピストンロッド32が伸張するとハンド31の開放動作を行い、ピストンロッド32が縮小するとハンド31の把持動作を行うことができる。把持手段30は、切断物14を把持したとき、切断治具10の本体20が単独で切断物14に固定できる把持力が得られるように構成している。このような構成の把持手段30は、現場に設置された配管、機器等の切断物14を把持して本体20を切断物14に着脱可能に固定することができる。
【0031】
切断手段40は、切断物14を回転刃で切断するものである。第1実施形態の切断手段40は、配管、機器等の切断物14を切断する回転刃42と、回転刃42を進退移動させる進退移動部44を主な基本構成としている。
【0032】
回転刃42は、切断物14の直径よりも大きい半径を備えた刃物である。回転刃42には、回転モーター43が取り付けられている。回転モーター43は、後述する駆動手段50の油圧回路に接続している。なお、回転モーター43は、油圧モーターのほか電動モーターを適用することができる。
【0033】
進退移動部44は、回転刃42を本体20から切断物14へ進退移動させるものである。第1実施形態の進退移動部44は、ピストンロッド45と進退シリンダ46からなり、後述する駆動手段50の油圧回路に接続している。ピストンロッド45の先端には、回転モーター43が接続している。このような構成の進退移動部44は、回転刃の径方向と進退移動の方向が平行となる。このため、ピストンロッド45を伸張すると、切断物14に回転刃42が接近して切断することができる。また切断後、ピストンロッド45を縮小させることにより、切断物14から回転刃42が離れて、把持手段30が把持動作中の切断物14と干渉するおそれがない。
【0034】
駆動手段50は、把持手段30に接続して前記把持手段30の把持動作又は開放動作を行うとともに、前記切断手段40に接続して前記切断手段40の切断動作を行う駆動機構である。本実施形態の駆動手段50は、一例として、油圧機構を用いている。油圧機構は、油圧制御バルブ52と油圧ポンプ54と油タンク56を主な基本構成としている。
【0035】
制御手段60は、駆動手段50と電気的に接続している。制御手段60は、把持手段30のアーム31の把持動作又は開放動作を制御したり、切断手段40の回転刃42の回転動作を制御したり、進退移動部44の進退移動を制御したりする場合に、各制御信号を駆動手段50へ送信可能に構成している。本実施形態の制御手段60は、具体的に駆動手段50となる油圧制御バルブ52のバルブの開閉を行う制御信号を送っている。
【0036】
上記構成による第1実施形態の切断治具10を用いた切断方法について、以下説明する。
図2は第1実施形態の切断治具の運搬工程の説明図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図3は第1実施形態の切断治具の把持工程の説明図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図4は第1実施形態の切断治具の切断工程の平面図である。
図5は第1実施形態の切断治具の切断工程終了後の平面図である。
図6は本発明の切断治具を用いた作業現場の説明図である。
【0037】
図2に示すように移動体のハンド12で切断治具10の本体20に形成されたグリップ22を掴む。そして、把持手段30を開放動作させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。移動体のハンド12で把持された切断治具10を、移動体により切断物14まで移動させる。
【0038】
次に
図3に示すように把持手段30を把持動作させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。
図6(A)に示すように、切断治具10の把持手段30を作動させて、切断物14となる配管の両端が支持されている配管、又は少なくとも片持ち支持されている配管の固定側を把持する。そして、移動体13のハンドを開放して切断治具10からハンドを離す。これにより把持手段30で切断物14に切断治具10の本体20を単独で固定することができる。このとき、把持手段30は切断物14の固定側16を把持し、自由端側18に切断手段40が配置されるように固定している。なお、本実施形態の把持手段30は、切断物14の固定側16を必ず把持するように配置させている。しかし、切断手段40は、切断物14の自由端側18のほかにも、切断物14の両端が建物等に固定されている場合には、固定側となる位置に配置させてもよい。
【0039】
また、切断手段40の回転刃42を回転させる制御信号及び、進退移動部44を伸張させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。これにより、回転刃42が切断物14へ接近して切断物14を切断することができる。
【0040】
切断手段40による切断物14の切断工程前、または、
図6(B)に示すように、切断手段40による切断物14の切断途中で、移動体13のハンド12を移動させて、
図4に示すように切断物14の自由端側18をハンド12で把持する。
【0041】
図5に示すように、切断された切断物14は、本体20の把持手段30で把持されている配管(固定側16)と、移動体13のハンド12で掴まれている配管(自由端側18)に分離される。移動体13のハンド12で掴まれた配管を外部へ移動させて切断された配管を離す。そして、移動体13のハンド12を切断治具10の本体20のグリップ22まで移動させて本体20のグリップ22を掴む。切断治具10の把持手段30を開放すると、切断治具10が切断物14から外れる。以降、
図6(C)に示すように、次の切断箇所へ切断治具10をハンド12で移動させる。そして、
図2〜
図5と同様の動作を行なう。
【0042】
このような第1実施形態の切断治具10によれば、高所など人手で取り付けが困難な場所であっても、移動体13を用いて切断治具10を切断物14に取り付けることができ、切断作業を行うことができる。
【0043】
また、切断治具10は、移動体13と独立して切断物14を把持した状態で切断できるため、切断治具10を移動させる移動体13は切断物14を把持可能なハンド12を備えた構成であれば良い。このため、移動体13は把持、切断等の複数のアームを備える必要がなく、狭隘な場所であっても作業を行うことができる。
【0044】
次に第2実施形態の切断治具の実施形態について、以下説明する。
図7は第2実施形態の切断治具の構成概略を示す側面図であり、(A)は支持板の開放状態であり、(B)は支持板の把持状態を示している。
図8は第2実施形態の切断治具の切断手段の拡大図である。
【0045】
第2実施形態の切断治具10Aは、移動体のハンドで掴んで運搬可能な本体20Aと、前記本体20Aから延出して、片持ち支持された切断物14の固定側(端部が建物などに固定されている側)を把持する把持手段30Aと、前記把持手段30Aに取り付けて、前記把持手段30Aで把持された前記切断物14の自由端側(端部が建物などに固定されていない側)を切断する切断手段40Aと、前記把持手段30Aの把持動作又は開放動作を行うとともに、前記切断手段40の切断動作を行う駆動手段50Aと、前記駆動手段50Aの駆動動作を制御する制御手段60Aと、を主な基本構成としている。
【0046】
本体20Aは、重機などの移動体のハンドで掴んで配管、機器などの切断箇所へ移動させることができる形態に構成されている。本体20Aには、把持手段30Aとグリップ22Aが形成されている。なお、グリップ22Aは、第1実施形態のグリップ22と同様の構成である。
【0047】
把持手段30Aは切断物14となる配管、機器等を把持するハンドである。本実施形態の把持手段30Aは、本体20とリンク機構を介して軸着する一対の支持板70A,70Bと、開閉部72と、支持部80と、を主な基本構成としている。
【0048】
支持板70A,70Bは、一対の板間で切断物14の径方向から切断物14を挟むことができるように半円形状の凹部71が形成されている。この半円形状の凹部71は、切断物14の半径よりも大きい半径となるように設定している。
【0049】
開閉部72は、後述する駆動手段50Aの油圧回路に接続している。開閉部72は、ピストンロッド74及び開閉シリンダ76からなる。ピストンロッド74の先端には支持板70Aが軸着している。開閉シリンダ76には支持板70Bが軸着している。このような構成の開閉部72は、ピストンロッド74が伸張すると一対の支持板70A,70Bが離間して切断物14が開放される(開放動作)。一方、ピストンロッド74が縮小すると一対の支持板70A,70Bが接近して切断物14を径方向から挟むことができる。
【0050】
支持部80は、後述する駆動手段50Aの油圧回路に接続している。支持部80は、支持片82A,82Bとピストンロッド84A,84B及び支持シリンダ86A,86Bからなる。支持片82A,82Bは側面視で略クサビ形状に形成され、切断物14の外周と接触して支持できるように構成している。支持片82A,82Bは一対の支持板70A,70Bのそれぞれの凹部71に対向するように形成されている。ピストンロッド84A,84Bの先端にはそれぞれ支持片82A,82Bが接続している。支持シリンダ86A,86Bはそれぞれ支持板70A,70Bに取り付けて、ピストンロッド84A,84Bが支持板70A,70B間で挟まれた切断物14の軸心に向かって伸縮可能に構成している。このような構成の支持部80は、ピストンロッド84A,84Bが伸張すると一対の支持片82A,82Bが接近して切断物14を径方向から把持できる(把持動作)。一方、ピストンロッド84A,84Bが縮小すると一対の支持片82A,82Bが離間して切断物14を開放できる(開放動作)。
【0051】
把持手段30Aは、切断物14を把持したとき、切断治具10Aの本体20Aが単独で切断物14に固定できる把持力が得られるように構成している。このような構成の把持手段30Aは、現場に設置された配管、機器等の切断物14を把持して本体20Aを切断物14に着脱可能に固定することができる。
【0052】
切断手段40Aは、切断物14を回転刃で切断するものである。第2実施形態の切断手段40Aは、配管、機器等の切断物14を切断する回転刃42Aと、回転刃42を切断物の外周に沿って周回移動させる周回部90を主な基本構成とし、把持手段30Aの支持板70A,70Bに取り付けている。
【0053】
回転刃42Aは、切断物14の肉厚よりも大きい半径を備えた刃物である。回転刃42Aには、回転モーター(不図示)が取り付けられている。回転モーターは、後述する駆動手段50Aの油圧回路に接続している。回転刃42Aは後述する回転刃支持プレート102に軸着されている。
【0054】
周回部90は、回転刃42Aを切断物14の外周に沿って周回移動させるものである。周回部90は、ガイドレールと、台車96と、回転刃支持プレート102と、回転刃角度調整シリンダ100を備えている。
【0055】
ガイドレールは、支持板70A,70Bの側面に支持板の凹部71に沿って半円形状に形成された溝である。ガイドレールは第1及び第2ガイドレール92A,92Bからなる。第1ガイドレール92Aは第2ガイドレール92Bよりも半径が小さく形成されている。このような第1及び第2ガイドレール92A,92Bは、一対の支持板70A,70Bが接近して、支持板70A,70Bに形成された凹部71が合わさり、側面視で環状となった時、凹部71の外側を囲む二重の環状に形成された構成となる。
【0056】
支持板70A,70Bの側面の第1及び第2ガイドレール92A,92Bの間には、半円形状のインターナルギア93が形成されている。インターナルギア93は、後述する台車96のギア94が噛み合うように構成されている。
【0057】
台車96は、第1〜第3タイヤ97A,97B,97Cと、ギア94と、回転刃角度調整シリンダ100を備え、ガイドレールを周回する車である。第1〜第3タイヤ97A,97B,97Cは、第1タイヤ97Aが第2ガイドレール92Bの溝内を摺動し、第2及び第3タイヤ97B,97Cが第1ガイドレール92Aの溝内を摺動する。ギア94は、台車96に軸着されてインターナルギア93と噛み合うように構成されている。ギア94には周回モーター(不図示)が取り付けられている。周回モーターは後述する駆動手段50Aの油圧回路に接続している。
【0058】
回転刃支持プレート102は台車96に軸着されている。回転刃支持プレート102には、回転刃42A及び回転モーター(不図示)が取り付けられている。
回転刃角度調整シリンダ100は、台車96に取り付けられ、回転刃角度調整シリンダ100のピストンロッド101の先端が回転刃支持プレート102に軸着している。回転刃角度調整シリンダ100は、後述する駆動手段50Aの油圧回路に接続している。
【0059】
このような構成の周回部90は、回転刃角度調整シリンダ100のピストンロッド101を伸張すると、切断物14に回転刃42Aが接近して切断することができる。そして、台車96のギア94を周回モーターで回転させると、第1及び第2ガイドレール92A,92Bに沿って台車96が切断物14の外周を周回しながら切断することができる。
【0060】
また切断後、ピストンロッド101を縮小させることにより、切断物14から回転刃42Aが離れて、把持手段30Aが把持動作中の切断物14と干渉するおそれがない。
【0061】
駆動手段50Aは、把持手段30Aに接続して前記把持手段30Aの把持動作又は開放動作を行うとともに、前記切断手段40Aに接続して前記切断手段40Aの切断動作を行う駆動機構である。本実施形態の駆動手段50Aは、第1実施形態の駆動手段50と同様に、一例として、油圧機構を用いている。油圧機構は、油圧ポンプと油圧タンクと油圧制御バルブを主な基本構成としている。
【0062】
制御手段60Aは、駆動手段50Aと電気的に接続している。制御手段60Aは、把持手段30Aの支持板70A,70Bの把持動作又は開放動作を制御したり、切断手段40Aの回転刃42Aの回転動作を制御したりする場合に、各制御信号を駆動手段50Aへ送信可能に構成している。本実施形態の制御手段60Aは、具体的に駆動手段50Aとなる油圧制御バルブのバルブの開閉を行う制御信号を送っている。
【0063】
上記構成による第2実施形態の切断治具10Aを用いた切断方法について、以下説明する。
図9は第2実施形態の切断治具を用いた切断方法の説明図である。
【0064】
移動体のハンドで切断治具10Aの本体20Aに形成されたグリップ22Aを掴む。そして、把持手段30Aを開放動作させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。移動体のハンドで把持された切断治具10Aを、移動体により切断物14まで移動させる。
【0065】
次に把持手段30Aを把持動作させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。切断治具10Aの把持手段30Aを作動させて、切断物14となる配管の両端が支持されている配管、又は少なくとも片持ち支持されている配管の固定側を把持する。そして、移動体のハンドを開放して切断治具10Aからハンドを離す。これにより把持手段30Aで切断物14に切断治具10Aの本体20Aを単独で固定することができる。このとき、把持手段30Aは切断物14の固定側を把持し、自由端側に切断手段40Aが配置されるように固定している。なお、本実施形態の把持手段30Aは、切断物14の固定側を必ず把持するように配置させている。しかし、切断手段40Aは、切断物14の自由端側のほかにも、切断物14の両端が建物等に固定されている場合には、固定側となる位置に配置させてもよい。
【0066】
また、切断手段40Aの回転刃42Aを回転させる制御信号及び、回転刃角度調整シリンダ100のピストンロッド101を伸張させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。そして、台車96のギア94を周回モーターで回転させる制御信号を制御手段から駆動手段へ送信する。これにより、第1及び第2ガイドレール92A,92Bに沿って台車96が切断物14の外周を周回しながら、回転刃42Aで切断物14を切断することができる。
【0067】
切断手段40Aによる切断物14の切断工程前、または、切断手段40Aによる切断物14の切断途中で、移動体のハンドを移動させて、切断物14の自由端側をハンドで把持する。
【0068】
切断された切断物14は、本体20Aの把持手段30Aで把持されている配管(固定側)と、移動体のハンドで掴まれている配管(自由端側)に分離される。移動体のハンドで掴まれた配管を外部へ移動させて切断された配管を離す。そして、移動体のハンドを切断治具10Aの本体20Aのグリップ22Aまで移動させて本体20Aのグリップ22Aを掴む。切断治具10Aの把持手段30Aを開放すると、切断治具10Aが切断物14から外れる。以降、次の切断箇所へ切断治具10Aをハンドで移動させて、同様の切断作業を行なう。
【0069】
このような第2実施形態の切断治具10Aによれば、高所など人手で取り付けが困難な場所であっても、移動体を用いて切断治具10Aを切断物に取り付けることができ、切断作業を行うことができる。
【0070】
また、切断治具10Aは、移動体と独立して切断物を把持した状態で切断できるため、切断治具10Aを移動させる移動体は切断物14を把持可能なハンドを備えた構成であれば良い。このため、移動体は把持、切断等の複数のアームを備える必要がなく、狭隘な場所であっても作業を行うことができる。また、切断手段40Aの回転刃42Aを小さくすることができ、治具全体の小型化を図ることができる。