(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トンネル外近辺またはトンネル内に設置され、前記トンネルに外部から進入する車両や自然風などのトンネル外部入力データを計測・収集するトンネル外部入力計測装置と、
前記トンネル内に設置され、少なくとも、煙霧透過率計と、一酸化炭素濃度計と、断面風速計と、窒素酸化物濃度値を計測する窒素酸化物濃度計を含み、トンネル内の状態データを計測・収集するトンネル内部状態計測装置と、
前記トンネル外部入力計測装置の計測値をもとにトンネル内の自然風、交通風、汚染発生量を予測する予測部と、
前記トンネル内部状態計測装置の計測値と前記予測部の予測値をもとに前記トンネル内を換気するジェットファンの駆動を制御するジェットファン制御装置を備え、
前記ジェットファン制御装置が、
前記トンネル内部状態計測装置の計測値を受け取るとともに、前記トンネル外部入力計測装置の計測値とトンネル換気推定モデルにより前記予測部が予測した前記トンネル内の前記自然風、前記交通風、前記汚染発生量の予測値に比べて前記トンネル内部状態計測装置により実測された前記計測値が所定範囲を超えていない場合、前記受け取った計測値に基づいて、前記ジェットファンの駆動を制御し、 前記計測値が所定範囲を超えている場合、所定経過時間を経過するまでは通常の前記トンネル内部状態計測装置の前記計測値に基づく制御を一時停止して直近の制御を継続し、前記トンネル内部状態計測装置の前記計測値が前記所定範囲に戻ってから通常の前記トンネル内部状態計測装置の前記計測値に基づく制御を再開する換気制御を行ない、
前記所定経過時間を経過した後、前記煙霧透過率計の計測値のみが前記所定範囲内に戻らない場合は、霧に起因したものであると推定し、前記煙霧透過率計の計測値以外の計測値が前記所定範囲に戻らない場合は、当該計測値の測定にかかる前記トンネル内部状態計測装置に故障が発生したと判断する処理を行うことを特徴とするトンネル換気制御システム。
前記ジェットファンの運転がインバータ駆動運転であり、前記ジェットファンを定格電力以下で前記ハイブリッド適応制御部が決定した最適制御量による連続運転を可能とした請求項5に記載のトンネル換気制御システム。
【実施例1】
【0029】
本実施例1に示すトンネル換気制御システム100は、トンネル外部入力計測装置により計測されたデータをもとにトンネル換気モデルにより想定されるトンネル内部状態の正常値の範囲を推定し、当該推定にかかる正常値の範囲と、トンネル内部状態計測装置により計測された実測値とを比較し、トンネル内部状態計測装置の測定環境の一時的な変化による不具合発生の有無を確認する機能を備えたトンネル換気制御システムである。
その上で、トンネル内部状態計測装置の測定環境の一時的な変化による不具合を織り込んだ的確なフィードバック制御や、予測を用いたフィードフォワード制御とフィードバック制御を組み合わせたハイブリッド適応制御や、フィードバックループを連結したカスカード制御などの高度なジェットファン制御による省電力化を可能とした縦流換気システムとなっている。
【0030】
まず、[1]として、本発明のトンネル換気制御システム100の構成について簡単に説明し、次に、[2]として、トンネル内部状態の実測値の取得を簡単に説明し、次に、[3]として、トンネル外部入力計測装置により計測されたデータをもとにトンネル換気モデルにより想定されるトンネル内部状態の推定値の取得を簡単に説明し、次に、[4]として、ジェットファン制御装置160におけるトンネル内部状態の実測値とトンネル内部状態の推定値の比較などの各種制御処理について説明する。
【0031】
[1]本発明のトンネル換気制御システム100の構成について
実施例1にかかる本発明のトンネル換気制御システムの例を簡単に説明する。
図1はトンネル内の様子を模式的に示した図である。
図2は本発明のトンネル換気制御システム100の構成要素を示した構成図である。
図1に示すように、本発明のトンネル換気制御システム100を適用するトンネルは、トンネル内は対面交通となっている。トンネル1内には外界から吹き込む自然風Unによる自然換気力と、通行車両が持つ抵抗により生じる各車両の通行方向に生じる風圧が合成されて生じる交通風Utによる交通換気力、ジェットファン10による機械風Ujによる機械換気力が加わる。これら3つの換気力とトンネル1を流れる空気の壁面摩擦力の合成の結果、トンネル1内にトンネル内風向風速Urが生じる。
【0032】
なお、換気機器10は、トンネル1内の空気を換気する機器であり、ここでは、インバータ駆動により運転されるジェットファンである。複数台が設けられており、それらの並列運転が可能なものとなっている。換気機器10は定格電力以下で後述するように最適制御量による連続運転が可能となっている。
【0033】
トンネル換気制御システム100は、
図2の構成例では、トンネル外部入力計測装置110と、トンネル内部状態計測装置120と、モデルパラメータ推定部130と、モデル記憶部140と、予測部150と、ジェットファン制御装置160と、フィードバック補正部170を備えた構成となっている。
【0034】
トンネル外部入力計測装置110は、トンネル1に外部から進入する車両や自然風などのトンネル外部入力データを計測・収集する各種センサや計測器を備えたものである。トンネルに進入する車や風に関する実測値を用いて交通量の変化、自然風の変化等、時々刻々と変化する外界情報を取得する。
図1の構成例では、交通量計測装置(トラフィックカウンタ:TC)111、微差圧計112を備えた構成となっている。
【0035】
トラフィックカウンタ(TC)111は、トンネル1を通過する車両の台数や速度を計測するセンサであり、トンネル1の入口近くまたは出口近くに設置される。このトラフィックカウンタ111を搭載することにより、トンネル1に進入・通過する車両の台数に関して必要なデータを得ることができる。この例では台数に加えて、交通車両の大型車/小型車の車種別も検知することができるものとする。
【0036】
微差圧計112は、トンネルの入り口と出口に設けられ、トンネル入り口付近の気圧とトンネル出口付近の気圧の微小な気圧差を計測し、気圧差に基づいて発生するマクロな風としての自然換気力を導出するものである。
【0037】
トンネル外部入力計測装置110は、“[3]トンネル内部状態の推定値の取得”で述べるように、計測した交通量データや気圧差データをジェットファン制御装置160に対して出力する。
また、トンネル外部入力計測装置110は、システムが正常状態に稼働している期間では、後述する“[3]トンネル内部状態の推定値の取得”で述べるように、モデルパラメータ推定部130が定期的にモデルパラメータを更新する際、実測した交通量データや気圧差データを用いるべく、トンネル外部入力計測装置110は、実測した交通量データや気圧差データを定期的にモデルパラメータ推定部130に対して出力する構成となっている。
【0038】
次に、トンネル内部状態計測装置120は、トンネル内の状態データを計測・収集するものであり、実測データを収集するための各種センサや計測器を備えている。
この構成例では、煙霧透過率計測器(VI計測器)121、一酸化炭素濃度計測器(CO計測器)122、トンネル内風向風速計(AV計)123、窒素酸化物濃度計測器(NOx計測器)124を備えた構成例となっており、トンネル1内の煙霧透過率データと、汚染ガス濃度データと、断面風速データと、窒素酸化物濃度データを含むトンネル内状態データを計測・収集する。各計測器のセンサはトンネル1内に適宜配置されているものとする。
なお、図示していないが、放射線量計測器も搭載する構成でも良い。近年の福島原発の事故をきっかけにしてトンネル内に浮遊する粉塵の中に存在する放射線量も問題になる可能性があり、トンネル内の放射線量が高くなるとトンネルの換気量を多くするなどの制御も要求されることが有り得るからである。
【0039】
煙霧透過率データ計測器(VI計測器)121は、レーザー照射部とレーザー受光部を備え、レーザー照射部とレーザー受光部間の空気中を透過するレーザー光の割合から塵などによる汚染濃度を計測する装置である。
一酸化炭素濃度データ計測器(CO計測器)122は、トンネル1内の一酸化炭素の濃度を測定する装置である。
トンネル内風向風速計(AV計)123は、縦流換気の流れを計測するために適した位置、例えば、トンネル1の中央部近く及び出口近くに設置されている。
窒素酸化物濃度計(NOx計測器)124は、トンネル1内の窒素酸化物の濃度を測定する装置である。
【0040】
トンネル内部状態計測装置120は、後述する“[2]トンネル内部状態の実測値の取得”で述べるように、計測した煙霧透過率データや一酸化炭素濃度データや窒素酸化物濃度データやトンネル内風向風速データをジェットファン制御装置160に対して出力する。
【0041】
また、この構成では、トンネル内部状態計測装置120は、“[3]トンネル内部状態の推定値の取得”で述べるように、システムが正常状態に稼働している期間では、モデルパラメータ推定部130が定期的にモデルパラメータを更新するアルゴリズムとなっており、後述するようにトンネル内部状態計測装置120は計測した煙霧透過率データや一酸化炭素濃度データや窒素酸化物濃度データやトンネル内風向風速データを定期的にモデルパラメータ推定部130に対して出力する構成となっている。
【0042】
次に、モデルパラメータ推定部130は、トンネル外部入力計測装置110から取得したトンネル外部入力データと、トンネル内部状態計測装置120から取得したトンネル内部状態データを入力とし、定期的にそれらデータを基に、モデル記憶部140の風速モデルと交通モデルと汚染濃度モデルのパラメータを推定して更新する部分である。
【0043】
モデルパラメータ推定部130におけるパラメータ推定処理アルゴリズムについては後述するが、トンネル外部入力計測装置110から取得したトンネル外部入力データの実測データやトンネル内部状態計測装置120から取得したトンネル内状態データの実測データと、予測部150が予測した予測データとのずれの修正において、トンネル内風速モデルとトンネル内汚染濃度モデルを大型車両等価抵抗面積P1、小型車両等価抵抗面積P2、自然風風速P3をパラメータとし、各パラメータに関する線形性を利用してパラメータ推定を行うことができる。線形性を利用すればパラメータの更新を高速に行うことができ、計算コストを低減させることができる。
【0044】
モデル記憶部140は、トンネル1の諸元データに基づいたトンネル1内を流れる風をモデル化した「風速モデル」と、トンネル1内の車両交通をモデル化した「交通モデル」と、トンネル1内を通過する車両により発生する汚染物質の濃度をモデル化した「汚染濃度モデル」を保持記憶している部分であり、各モデルは予測部150による予測処理に用いられる。これら各種モデルが適したものであれば、後述する各種の予測精度が高くなる。
【0045】
予測部150は、計測装置110から取得したトンネル内データより、風速モデルと交通モデルと汚染濃度モデルを用いて、自然風Un予測、交通風Ut予測、トンネル内風速Ur予測、汚染発生量予測とを行う予測機能を備えた部分であり、自然風予測手段151と交通風予測手段152とトンネル内風速予測手段153と汚染発生量予測手段154とを備えている。
【0046】
自然風予測手段151は、トンネル外界の自然風の日量変化、週変化、月変化、年変化などの諸データに基づく自然風の予測と当該自然風によりトンネル内に生じる風向風速の予測機能と、トンネル内に吹く風の風向風速からトンネル1内における自然換気力を予測する機能を備えており、トンネル1内の風向風速の実測データと自然風により生じる風向風速の予測データとから所定時間経過後のトンネル内の自然風Unを予測する部分である。
【0047】
交通風予測手段152は、交通量の日量変化、週変化、月変化、年変化などの諸データに基づく交通量の予測機能と、交通量と車種別等価抵抗面積に基づいてトンネル1内で発生する交通風を予測する機能を備え、トラフィックカウンタ111による交通量の実測データと交通量の予測機能から得られた交通量予測データから、所定時間経過後の交通風Utを予測する部分である。
【0048】
トンネル内風速予測手段153は、トンネル内の自然風Un予測、交通風Ut予測、ジェットファン10の運転による機械換気力Pjやトンネル諸元にもとづいて、トンネル1内に生じる風速Urを予測する部分である。
【0049】
汚染発生量予測手段154は、トラフィックカウンタ111による交通量の実測データと交通量の予測機能から得られた交通量予測データと、車種別の汚染発生量予測データから所定時間経過後の汚染発生量C(t,x)を予測する部分である。なお汚染発生量についてはトンネル内の各区間における存在台数と速度に依存する。
【0050】
次に、ジェットファン制御装置160は、トンネル外部入力計測装置110とトンネル内部状態計測装置120の計測値をもとにトンネル1内を換気するジェットファン10の駆動を制御する部分である
。
ジェットファン制御装置160の詳しい制御処理は、“[4]ジェットファン制御装置160における各種制御処理”において詳しく述べるが、そのうちの一つが
、『トンネル内部状態計測装置の測定環境の異常発生判定処理』である。トンネル外部入力計測装置110の計測データと予測部150におけるトンネル換気推定モデルにより予測できるトンネル内の状態量の推定値に比べ、トンネル内部状態計測装置120により実測された計測値が所定範囲を超えているかいないかを判定する。トンネル内の状態量の推定値に比べ、トンネル内部状態計測装置120の実測値の所定範囲を超えている場合、トンネル内部状態計測装置の測定環境に異変があったとしてトンネル内部状態計測装置120の計測値に基づく制御を一時停止して直近の制御を継続する判断を行う。つまり、交通量や自然風などトンネルへの外部入力条件の変化が緩やかであるのに、トンネル内部状態計測装置120の測定環境の異変、例えば、一時的な誤動作が発生している場合、その実測値に基づいてジェットファン10の制御量を変化させてしまうと、本来、変化させなくても良いジェットファン10の制御量を変化させてしまうこととなるからである。そこで、トンネル内部状態計測装置120の値が正常値の範囲に戻ってからトンネル内部状態計測装置120の計測値に基づく制御を再開する処理とするのである。
【0051】
フィードバック補正部170は、トンネル内部状態計測装置120によりトンネル1内から得た各種検出データに基づいて汚染濃度基準を遵守するためのジェットファン10の並列運転台数と正逆方向とその回転数のフィードバック制御を行う部分である。
【0052】
ここでは、フィードバック補正部170のフィードバック補正が、断面風速目標値と計測装置110が実測した断面風速データから換気機器10の並列運転台数と正逆方向とその回転数を制御する第1のフィードバック制御と、汚染ガス濃度データおよび汚染ガス濃度目標値と、計測装置110が実測した煙霧透過率データおよび煙霧透過率目標値から換気機器10の並列運転台数と正逆方向とその回転数を制御する第2のフィードバック制御を備え、第2のフィードバックループの出力が第1のフィードバックループの入力となるカスケード制御となっている。
以上が本発明のトンネル換気制御システム100の構成である。
【0053】
[2]トンネル内部状態の実測値の取得
本発明では、ジェットファン10を駆動させる制御量は、平常時は、トンネル内部状態計測装置120が計測した実測の煙霧透過率データや一酸化炭素濃度データや窒素酸化物濃度データやトンネル内風向風速データを主としてジェットファン制御装置160
によりフィードバック補正部170に対して与えられる。
【0054】
[3]トンネル外部入力計測装置により計測されたデータをもとにしたトンネル換気モデルにより想定されるトンネル内部状態の推定値の取得
予測部150における予測について、
図3に示す制御ブロック図を参照しつつ詳しく説明する。
【0055】
まず、本発明のトンネル換気制御システム100は、トンネル内風速予測ブロックS1と汚染発生量予測ブロックS2とを備えている。
トンネル内風速予測ブロックS1は、トンネル内風速Ur予測について、以下の高速予測処理方法を採用する。
【0056】
まず、ニュートンの法則から次の[数1]式が成立する。
【数1】
ここで、Arはトンネル断面積、Lはトンネル長、ρは空気密度、Prは壁面摩擦力、Ptは交通換気力、Pnは自然換気力、Pjはジェットファン換気力である。
本式を解けばトンネル内の風速を求めることができる。
【0057】
次に、汚染発生量予測ブロックS2は、汚染発生量C(t,x)予測について、以下の高速予測処理方法を採用する。まず、移流拡散方程式は[数2]式のように書ける。
【数2】
ここで、Urはトンネル内風速、Cは汚染濃度、Dは拡散係数、tは時間、xは流下方向への距離である。
【0058】
本式を解けばトンネル各部の汚染濃度を求めることができる。
以上が本発明のトンネル換気制御システム100の任意のt秒後、トンネルの入口からの距離xで発生する汚染発生量C(t,x)の予測処理方法である。
【0059】
本発明のトンネル換気制御システム100では、トンネル内風速予測ブロックS1、汚染発生量予測ブロックS2での予測精度を上げるため、モデルのパラメータを推定して更新してゆく。各種センサから取得したトンネル内データを入力とし、トンネル1内データの変化に合わせ、モデル記憶部120の風速モデルと交通モデルと汚染濃度モデルのパラメータを推定して更新する。
【0060】
パラメータ推定では、後述するように換気機器運転の結果、センサにて得た実測データと、トンネル内風速予測ブロックS1で予測した予測データとのずれの修正において、トンネル内風速モデルを大型車両等価抵抗面積P1、小型車両等価抵抗面積P2、自然風風速P3をパラメータとし、各パラメータに関する線形性を利用してパラメータ推定を行うことができる。線形性を利用すればパラメータの更新を高速に行うことができ、計算コストを低減させることができる。
【0061】
この高速のパラメータ推定処理について詳しく説明する。
上記した[数1]式の右辺の各項は[数3]式に示すように書ける。
【数3】
ζeは入口損失係数、λは壁面摩擦抵抗係数、Amは車両等価抵抗面積、Vtは平均車両速度である。添字の(H)は大型車、(L)は小型車である。
【0062】
この[数3]式を用いて[数1]式をAm(H)、Am(L)、自然風Unに関してまとめると[数4]のようになる。
【数4】
【0063】
大型車両等価抵抗面積Am(H)をP1、小型車両等価抵抗面積Am(L)をP2、自然風風速|Ur|UrをP3とすると、[数4]式はパラメータP1、P2、P3によって[数5]式のようになる。
【0064】
【数5】
【0065】
[数5]式はパラメータP1、P2、P3に関して[数6]式のように表わすことができる。
【数6】
なお、εdは観測雑音である。
【0066】
ここで、パラメータP1、P2、P3は短時間では大きく変化しないと考えられるので、[数7]の線形性が成立していると扱うことができる。
【数7】
なお、ε1、ε2、ε3は状態雑音である。
【0067】
ここで、[数6]式を観測方程式、[数7]を状態方程式と見ることにより、離散時間確率システムのカルマンフィルタ問題に帰着することができるので、パラメータP1,P2,P3の推定を高速に行うことができることが分かる。[数6]式、[数7]式をもとに離散時間確率システムのカルマンフィルタとしてパラメータP1,P2,P3の推定を行うことにより高速にパラメータ推定を実行することができる。
【0068】
次に、汚染発生量予測ブロックS2での予測精度を上げるため、センサが収集した実測データと、汚染発生量予測ブロックS2が予測した予測データとのずれの修正において、大型車両煤煙発生量P4、小型車両煤煙発生量P5をパラメータとして整理した[数8]においてP4,P5に関して[数9]の線形性が成立していることに着目することにより離散時間確率システムのカルマンフィルタ問題としてパラメータP4,P5の推定を行うことができる。線形性を利用すればパラメータの更新を高速に行うことができ、計算コストを低減させることができる。
【0069】
この高速のパラメータ推定処理について詳しく説明する。
上記した[数3]を大型車両煤煙発生量P4、小型車両煤煙発生量P5について整理すると[数8]が得られる。
【数8】
なお、εeは観測雑音である。
【0070】
ここで、パラメータP4、P5は短時間では大きく変化しないと考えられるので[数9]が成立していると扱うことができる。
【0071】
【数9】
なお、ε4,ε5は状態雑音である。
【0072】
ここで、[数8]式を観測方程式、[数9]を状態方程式と見ることにより、線形の離散時間確率システムのカルマンフィルタ問題に帰着することができるので、パラメータP4,P5の推定を高速に行うことができることが分かる。[数8]式、[数9]式をもとに離散時間確率システムのカルマンフィルタとしてパラメータP4,P5の推定を行うことにより高速にパラメータ推定を実行することができる。
【0073】
次に、
図1に戻り、他のブロックの説明を続ける。
フィードフォワード演算ブロックC0は、基準値である煙霧透過率目標値(VI*)と汚染ガス濃度目標値(CO*)に対して、換気機器10による強制換気量と車両交通量による交通換気量とトンネル内に流れ込む自然風による自然風換気量を勘案し、トンネル内の断面風速目標値(Ur*)および換気機器制御目標値(JF*)とを決定する部分である。つまり、トラフィックカウンタからの交通量の変化をもとにVI目標値およびCO目標値を実現するための風向風量の目標値Ur*と、ジェットファン10の制御量目標値JF*をフィードフォワード演算する部分である。つまり、トラフィックカウンタから得られる車種別の交通量と車種別の発生汚染物質からトンネル内に発生が予想される汚染物質量とトンネルの長さや断面積などの諸元データから予想される煙霧透過率(VI)と一酸化炭素濃度(CO)を計算し、それらの値を目標値であるVI目標値(VI*)およびCO目標値(CO*)内に収めるために必要とされる風向風量を計算し、その値をUr目標値(Ur*)として得る。さらにそのUr目標値(Ur*)を発生させるために必要とされるジェットファン10による機械換気風Ujを計算し、その機械換気風Ujを発生させるためのジェットファン10の制御量を計算し、その値をJF目標値(JF*)として得る。
【0074】
次に、本発明のトンネル換気制御システム100における2つのフィードバック制御に関するカスケード制御について説明する。
【0075】
風速制御演算器C1は、目標値となるVI目標値(VI*)およびCO目標値(CO*)と、実際にトンネル内で計測される計測値VIおよび計測値COとの差分を受けて、換気機器の並列運転台数と正逆方向とその回転数を制御する部分であり、風向風量の調整値(ΔUr)を演算する。
図3の点線で示すように、トンネル1内の汚染量に関する第1のフィードバックループを形成している。
【0076】
換気量制御演算器C2は、風速制御演算器C1から与えられるUR目標値(Ur*)と、実際にトンネル1内においてAV計114により計測される計測値Urとの差分を受けて、換気機器の並列運転台数と正逆方向とその回転数を制御する部分であり、ジェットファン運転の調整値(ΔJF)を演算する。
図3の点線で示すように、トンネル1内の風量に関する第2のフィードバックループを形成している。
【0077】
なお、換気機器操作量制御ブロックAは、フィードフォワード演算器C0が決定した換気機器制御目標値(JF*)と、換気量制御演算器C2が決定したジェットファン運転の調整値(ΔJF)を受けて、実際にジェットファン10の運転制御を行う。
【0078】
トンネル内の風量プロセス201は、実際のトンネル1が持つトンネル風に関する系をブロックとして表したものであり、入力として換気機器であるジェットファンの駆動の強制換気力により発生する機械風と外乱にまとめられており、外乱には、トンネル1に対して吹き込む自然風とトンネル内を通行する車両により発生する交通風等がある。出力はトンネル内に実際に発生する風の風向風速Urである。
【0079】
トンネル内の汚染プロセス202は、実際のトンネル1が持つトンネル内汚染に関する系をブロックとして表したものであり、入力として風向風速URにより排気される汚染排気と外乱にまとめられており、外乱にはトンネル1に対して吹き込む自然風による排気とトンネル内を通行する車両により発生する交通風による排気等がある。出力はトンネル内に実際に発生する汚染物質の発生を示す煙霧透過率(VI)と一酸化炭素濃度(CO)である。
【0080】
トンネル内のジェットファン10は、トンネル1内の空気を換気する機器であり、ここでは、インバータ駆動により運転されるジェットファンであり、複数台あり、それらの並列運転が可能なものとなっている。
【0081】
本発明のトンネル換気制御システム100は、
図3に見るように、第2のフィードバックループの出力が第1のフィードバックループの入力となるカスケード制御となっている。
【0082】
トンネル内の物理現象として風量と汚染量を考えてみると、風量の変化は速くかつ細かく変動するが、一方、汚染量は風量の変化に伴って換気が不足したり換気が進んだりすることによりトンネル全体としてゆっくりと大きく変動するものであり、風量に比べてトンネル内汚染量は時間定数が大きな物理量となっている。つまり、風量はジェットファンの運転制御により直接的に細かく操作しやすいが、汚染量はジェットファンの運転制御では直接的ではなく間接的に操作することとなる。ただし、真に守るべき基準は煙霧透過率目標値(VI*)と一酸化炭素濃度目標値(CO*)として与えられるので、汚染量に注目して制御する必要がある。
【0083】
そこで、本発明のトンネル換気制御システム100では、トンネル内の風向風速のフィードバック制御と、トンネル内の汚染量のフィードバック制御とをカスケード制御することにより、細かく変化しやすい風向風速に対してジェットファンの運転を細かくフィードバック制御することができ、また、風向風速の変化に伴って変化があらわれる汚染量に関してカスケード制御とすることによりフィードバック制御できるので、ジェットファンの運転制御を通じて、トンネル内の汚染量を正しく制御することができ、全体として過剰換気、換気不足となるケースを少なく低減でき、省エネ運転を実現できる。
【0084】
本発明のトンネル換気制御システム100では、細かく風向風量を調節することで全体として過剰換気、換気不足となるケースを少なく低減できることを通じて省エネ運転を実現するが、その際、ジェットファン10の運転をインバータ駆動運転とすることにより高い相乗効果が得られる。つまり、インバータ駆動運転とすれば、ジェットファン駆動の正逆逆転運転や回転数の変更など定格電流により速やかに制御を行うことができ、省電力化の効果が得られる。一方、従来の誘導モータによるジェットファン運転では、運転保護インターバル時間があり、一旦停止したジェットファンは10分間運転不可であったが、上記のようにインバータ制御運転を前提とすれば、回転数は0から最大周波数まで自由にとれるため、換気力も0から最大値まで任意に設定でき、理想的な風向風量制御をきめ細かい精度で制御できるというメリットが得られる。
以上が、本発明のトンネル換気制御システム100における予測処理の例である。
【0085】
[4]ジェットファン制御装置160における各種制御処理
トンネル内部状態計測装置120の各々の煙霧透過率データ計測器(VI計測器)121、一酸化炭素濃度データ計測器(CO計測器)122、トンネル内風向風速計(AV計)123、窒素酸化物濃度データ(NOx計測器)124のいずれかまたは複数において測定環境に異常が生じ、その測定データが正常値から離れてしまう不具合が発生した場合を想定する。
【0086】
[4−1]ジェットファン制御装置160における、測定環境の異常発生判定処理
ジェットファン制御装置160
におけるトンネル内部状態計測装置120の測定環境に一時的な異常が生じたかの判定処理について説明する。
図4は測定環境の異常発生判定処理の流れを簡単に示すフローチャートである。
【0087】
まず、ジェットファン制御装置160
は、トンネル内部状態計測装置120(VI計測器121、CO計測器122、AV計123、NOx計124)から煙霧透過率データや一酸化炭素濃度データや窒素酸化物濃度データやトンネル内風向風速データの実測値を取得する。また、予測部150からトンネル内風向風速予測(自然風予測、交通風予測)、さらに汚染発生量予測(煙霧透過率予測、一酸化炭素濃度予測、窒素酸化物濃度予測)を取得する(
図4ステップS1)。
なお、放射線量についても制御を行う場合、トンネル内部状態計測装置120から放射線量の実測値を取得し、予測部150から放射線量予測を取得する。
【0088】
予測部150の各種予測は、前述したように、トンネル外部入力計測装置110のトラフックカウンタ111から取得した交通量データや微気圧計112から取得した自然風データなど、トンネルに対する外部入力条件を考慮した予測となっている。
【0089】
次に、ジェットファン制御装置160
は、実測値である煙霧透過率や一酸化炭素濃度や窒素酸化物濃度やトンネル内風向風速値が、予測部150によるトンネルに対する外部入力条件を考慮した予測と比較し、その差異が所定の範囲内にあるか否かをチェックする(
図4ステップS2)。
【0090】
このようにその差異が所定範囲(正常範囲)内にあるか否かをチェックする理由は、一般に、トンネル内の実際の煙霧透過率や一酸化炭素濃度や窒素酸化物濃度やトンネル内風向風速値が急激に変化することは通常はなく、トンネル内で火災が発生したとか、トンネル外の気候が劇的に変化したなどの事情であるか、清掃用の散水車が通過するなどトンネル内部状態計測装置120の計測器のいずれかまたは複数の測定環境が変化した事情であるか、トンネル内部状態計測装置120の計測器自体が故障したなどの事情が想定できる。まず、そういった特殊な事情が発生しているか否かは、実測値と予測値の差異が急激に発生したか否かで判断できるからである。
【0091】
もし、ステップS2において、実測値と予測値の差異が所定の範囲内にあれば(
図4ステップS2:Y)、ジェットファン制御装置160
は、VI計測器121、CO計測器122、AV計123、NOx計124における測定環境に特に異変がないものとして、これら実測データが信頼に足るものとし、そのま
まフィードバック補正部170に対して、VI計測器121、CO計測器122、AV計123、NOx計124による実測データに基づくフィードバック制御量を出力する(
図4ステップS3)。
ここで、実測値と予測値の差異についてどの程度までが正常の範囲内と扱うかについては、システムの運用により自由に設定できるが、例えば、予測値に対して上限閾値、下限閾値を設けておき、実測値がその上限閾値と下限閾値の間に収まっているか否かで判断できる。
【0092】
上限閾値、下限閾値は自由に設定できるが、例えば、予測値に対して±5%を閾値としたり、予測値に対して予測風速値±Xm、予測一酸化炭素濃度±Xppmなど絶対量による閾値としたり、いわゆる3シグマの範囲に設定したりすることができる。平均μと標準偏差σの正規分布に従う確率変数の観測値が平均値μから±1シグマの区間に入る確率は0.68程度、2シグマの区間に入る確率は0・95程度、3シグマの区間に入る確率は0.997程度であるといわれている。
【0093】
次に、この例では、予測モデルを最新のトンネル内の状態量に応じて更新するべく、モデルパラメータ推定部130がモデル記憶部140に記憶されている風速モデル、交通モデル、汚染濃度モデルの最新のトンネル内の状態量に応じてパラメータを推定・更新する(
図4ステップS4)。
【0094】
再びステップS1に戻り、ジェットファン制御装置160
は、ジェットファン制御を継続する。実測値と予測値の急激な差異が発生することなく正常運転として、ステップS1−ステップS2(Y)−ステップS3−ステップS4−ステップS1のループを継続することとなる。
【0095】
もし、ステップS2において、実測値と予測値の差異が所定の範囲内にない場合であれば(
図4ステップS2:N)、ジェットファン制御装置160
は、VI計測器121、CO計測器122、AV計123、NOx計124における測定環境に異変があったものとして、異常時の処理を開始する。
【0096】
図6は、ジェットファン制御装置160
における風速(Av)における実測値と予測値、一酸化炭素濃度(CO)における実測値と予測値の比較を簡単に示す図である。
図6において、上限下限の閾値は、たとえば、いわゆる3シグマの値とし、上限値と下限値を点線で示している。
図6において、時刻t1までは、差異が所定の範囲に収まっているが、時刻t1において、風速(Av)、煙霧透過率(VI)とも急激に変化し、上限値または下限値の閾値を超えてしまっている。この時刻t1まではステップS2では"Y"となっているが、時刻t1の時点でステップS2が"N"となる。
【0097】
図4に戻ってフローの説明を続ける。
次に、
ジェットファン制御装置160は実測値と予測値の差異が異常を示し始めてからの経過時間をチェックし(ステップS5)、所定の経過時間範囲内であれば(ステップS5:Y)ステップS6に進み、所定の経過時間範囲内を超えている場合であれば(ステップS5:N)ステップS7に進む。
この所定経過時間をチェックする理由は、トンネル内部状態計測装置120のいずれかの計測器において発生した急激な計測値の変化が、トンネル内で火災が発生した事情やトンネル外の気候が劇的に変化したなどの事情やトンネル内部状態計測装置120の計測器自体が故障したなどの継続的(恒常的)な事情であるか、または、清掃用の散水車が通過するなどトンネル内部状態計測装置120の計測器のいずれかまたは複数の測定環境が変化した一時的な事情であるかを見極めるためである。継続的(恒常的)な事情であれば、実測値と予測値の差異が異常を示し始めてからの経過時間は長く続くが、一時的な事情であれば、実測値と予測値の差異が異常を示し始めてから適度な時間で実測値が本来の値に戻るためにその差異が解消するからである。
【0098】
この所定経過時間は、例えば、1分間、3分間、10分間などシステムの運用により自由に設定できる。
測定環境の一時的な要因による異常発生の理由としては、例えば、トンネル内の清掃のために散水車が通過した場合に、多量の水しぶきがトンネル内に飛散し、その水しぶきがトンネル内部状態計測装置のセンサ部分に掛かり、一時的にトンネル内部状態計測装置が異常値を示してしまう場合がある。また、例えば、トンネル内では自動車がライト点灯して走行し、前方にある車両の凹凸の角度や特殊な塗装などの影響により、異常な光反射がトンネル内で発生し、一時的にトンネル内部状態計測装置が異常値を示してしまう場合がある。また、例えば、トンネル内を走行中の特定の車両が特に多量な煤煙を包含する排気ガスをまき散らしつつ走行したり、積載貨物の中に小麦粉やセメント粉などの粉体を含み、その粉体が荷台から偶然漏れつつ走行したりするなどの事情があり、トンネル内部状態計測装置の近辺で煤煙や粉体の浮遊量が増加した結果、一時的にトンネル内部状態計測装置が異常値を示してしまう場合などがある。
【0099】
再び、
図4の処理の説明に戻る。
経過時間が所定時間内であれば(
図4ステップS5:Y)
、継続的(恒常的)な事情による急激な計測値の変化であっても、一時的な測定環境の異常による急激な計測値の変化あっても、
ジェットファン制御装置160はトンネル内部状態計測装置120の計測値に基づくフィードバック制御を一時停止し、ジェットファンの制御量を、異常が発生する前の直近の制御量を維持継続する扱いとする(
図4ステップS6)。
【0100】
なお、火災発生による急激な計測値の変化であれば、所定時間の経過を待たずに即応してジェットファン制御を切り替える必要がある。
【0101】
再びステップS1に戻り、ジェットファン制御装置160
は、ジェットファン制御を継続する。実測値と予測値の差異が所定の範囲内に収まるまで、しばらく、ステップS1−ステップS2(N)−ステップS5(Y)−ステップS6−ステップS1のループを継続することとなる。
【0102】
もし、経過時間が所定時間内で解消した場合は、
図4ステップS2において、実測値と予測値の差異が所定の範囲内に収まることとなり、
図4ステップS3およびステップS4を介してステップS1へ戻り、このステップS5には回帰しない。
このように、散水車の通過や対向車の光反射など、本来はジェットファン駆動の運転を切り替える必要のない事情にて一時的にトンネル内部状態計測装置の計測値が急激に変化した場合でも、そのままフィードバック制御がかかるのではなく、計測値に見られる急激な変化が一時的な測定環境の変化に起因するものか否かを見極めるまで正常運転を続けることができる。
【0103】
次に、経過時間が所定時間を経過すれば(
図4ステップS5:N)、
ジェットファン制御装置160は継続的(恒常的)な事情による急激な計測値の変化の可能性があると判断する。つまり、トンネル内部状態計測装置120の計測値に基づくフィードバック制御を開始する必要があると判断し(
図4ステップS7)、
ジェットファン制御装置160は継続的(恒常的)事情に対応する処理に移る。
【0104】
[4−2]ジェットファン制御装置160による継続的(恒常的)事情に対応する処理
前述したように、経過時間が所定時間を経過すれば(
図4ステップS5:N)、
ジェットファン制御装置160は継続的(恒常的)な事情による急激な計測値の変化の可能性があると判断するが、継続的(恒常的)な事情によって、計測値の変化の仕方にも特徴がある。
【0105】
まず考えられるのは、トンネル内部状態計測装置120自体の恒常的な故障の発生である。例えば、センサ部分が劣化したり、センサ部分に異物が詰まったりして正常に稼動できなくなる不具合が発生しうる。ただし、複数個所に設置している複数のセンサにおいて同時に故障が発生する確率は低いので、例えば、どこか1箇所に配置したいずれかのトンネル内部状態計測装置120において計測値が異常であると判断された場合(ステップS7−1:Y)、
ジェットファン制御装置160は当該トンネル内部状態計測装置120自体に故障が発生したと推定できる。その一方、トンネル1内に霧が進入・発生している場合、トンネル1内の煙霧透過率計測器における煙霧透過率データは急激に増加するが、その他の計測値はあまり変化しないものと考えられる。そこで、ジェットファン制御装置160
は、トンネル1内の煙霧透過率計測器における煙霧透過率データのみが所定範囲を超え続けているか否かを調べる(ステップS7−2)。
【0106】
もし、煙霧透過率計測器が計測した煙霧透過率データのみが異常値を示している場合(ステップS7−2:Y)、
ジェットファン制御装置160は霧発生による急激な煙霧透過率データの変化があったとして霧発生時のジェットファン制御に移行するか、または、煙霧透過率計測器に故障が発生したと推定して、センサの故障アラームをシステム側に通知するなどの処理が行われる(ステップS7−3)。
【0107】
もし、煙霧透過率計測器が計測した煙霧透過率データ以外のデータが一つのみ異常を示していた場合、
ジェットファン制御装置160は当該データを計測するトンネル内部状態計測器120が故障したものと推定し、センサの故障アラームをシステム側に通知するなどの処理が行われる(ステップS7−4)。
【0108】
次に考えられるものは、トンネル内部状態計測装置120自体には故障の発生はないが、逆に、トラフィックカウンタ111などのトンネル外部入力計測装置110側に故障が発生した場合である。この場合、トンネル内部状態計測装置120による実測値はあまり変化がないが、予測部150の予測値の方が大きく変化し、その結果、両者の差異が急激に大きくなる。
【0109】
そこで、ジェットファン制御装置160
は、トンネル内の煙霧透過率データ、汚染ガス濃度データ、風速データのいずれもが所定範囲を超え続けている場合(ステップS7−5:Y)、その原因がトンネル外部入力計測装置110に恒常的な故障が発生していると判断する(ステップS7−6)。
ステップS7−3で煙霧透過率計測器に故障が発生したと判断した場合や、ステップS7−4で該当するトンネル内部状態計測器120が故障したものと判断した場合や、ステップS7−6でトンネル外部入力計測装置110に恒常的な故障が発生していると判断した場合は、
ジェットファン制御装置160は図4のステップS6に戻る(ステップS8)
。
【0110】
以上、本発明のトンネル換気制御システム100によれば、トンネル内部状態計測装置の測定環境の一時的な変化による不具合を織り込んだ的確なフィードバック制御や、予測を用いたフィードフォワード制御とフィードバック制御を組み合わせたハイブリッド適応制御や、フィードバックループを連結したカスカード制御などの高度なジェットファン制御による省電力化を可能とした縦流換気システムを提供することができる。