【文献】
BOIANA O. BUDEVSKA,APPLIED SPECTROSCOPY,2003年 2月 1日,V57 N2,P124-131
【文献】
DABLE BRIAN K,ANALYTICA CHIMICA ACTA,NL,ELSEVIER,2005年 7月15日,V544 N1-2,P71-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記既に識別されている候補スペクトルが、スペクトルライブラリからの比較スペクトルの1つを既に含んでいる場合に、前記比較ステップを省略または除外するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記既に識別されている候補スペクトルが、スペクトルライブラリからの比較スペクトルの1つを既に含んでいる場合に、前記コンピュータが前記比較ステップを省略する、請求項9に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における本発明の記述において、暗黙的または明示的に理解されているかまたは別途言明されない限り、単数形で表現される単語が複数形を含み、且つ複数形で表現される単語が単数形を含むことを理解されたい。更に、本明細書に記述する任意の所与の構成要素または実施形態について、当該構成要素について記載された可能な候補または代替物のいずれも、暗黙的または明示的に理解されているかまたは別途言明されない限り、一般に個別にまたは互いに組み合せて使用可能であることを理解されたい。更に、本明細書に示す図面が必ずしも原寸に比例して描かれている訳ではなく、いくつかの要素が単に本発明を明確にすべく描かれてもよいことを理解されたい。また、同等または類似の要素を示すために参照番号が複数の図面で重複している場合がある。また、そのような候補または代替物の任意のリストは単に説明用であって、暗黙的または明示的に理解されているかまたは別途言明されない限り、限定的ではないことを理解されたい。加えて、別途指示しない限り、本明細書および請求項で用いる含有物の量、組成、反応条件等を表す数値は、用語「約」により変更されることを理解されたい。
【0015】
従って、そうでない旨が示されていない限り、本明細書および添付の請求項に記述する数値パラメータは、本明細書に提示する主題により求めたい所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、且つ均等論の適用を請求項の範囲に限定する意図しないよう、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することにより解釈されなければならない。本明細書に提示する主題の広い範囲を記述する数値範囲およびパラメータは近似値であるものの、特定の例に記述する数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、それら個々の試験測定で得られた標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を必然的に含んでいる。
【0016】
一般的記述
系列データファイル(例:スペクトルの時系列)の分析において最も冗長なステップは、1つずつの抽出に続いて、自身が混合物であり得る個々のスペクトル分析を行うことである。そのような分析法は長時間にわたり、且つ効果的に実行するにはある程度のスキルおよび「芸術性」を必要とする。更に、そのような1つずつの抽出方法は、ユーザーが「興味深い」と思うファイルの小さい領域の分析にユーザーを制約する。そのような冗長さを新規の方法で克服すべく、本明細書に開示する実施形態は、分析対象試料の純粋成分を推定する多成分回帰(MCR)を用いる自動化された処理を含み、多くの場合、1つまたは複数のスペクトルライブラリの無制限の(そのように構成された場合)検索基準を利用する多成分検索(MCS)方法がこれに続く。そのようなMCS法は、引用文献であるRitterらによる2010年4月13日出願の米国特許第7,698,098B2号明細書「EFFICIENT SPECTRAL MATCHING(PARTICULARLY FOR MULTICOMPONENT SPECTRA)」に記述されている。
【0017】
従って、本発明のMCR−MCS組み合せ方法は、複数のユーザー間で整合性を保つ有用な処理を簡素化するだけでなく自動化する有益且つ新規のツールをユーザーに提供する。特に、本明細書に開示するMCR−MCS方法は、従来方法では見過ごされてきた微細な対象であってもユーザーにより有用な仕方で解釈可能になるようにデータの組の網羅的且つ完全な分析を行うことができる。例えば、本実施形態の有益な使用法は、各種の成分の時間的挙動を示すプロフィールの重ね合わせである。そのような結果は、顧客が求めているもの、すなわち、時限的事象の間にデータがどのように変化するかの詳細な調査を提供する。
【0018】
エンドユーザーにとって、これは状況が迅速且つ完全に把握できることを意味する。例えば、若干の添加物だけが異なる2つ以上の物質のプロフィール(いつ何が)を比較して、ユーザーに違いが説明される。同一物質が存在するが全体的な処理は異なる場合、時間変化をプロットすることで異なる製造処理がどのように物質に影響を及ぼしたかを示すことができる。重要な点として、本発明の方法はあらゆる技術レベルのユーザーが利用でき、これは例えば物質のFT−IR分析の専門知識を欠く製薬研究機関、または低スキルユーザーを抱える基礎分析研究機関であってもここでは高品質の結果が得られることを意味する。
【0019】
具体的記述
本明細書に開示する多変量成分分解(MCR)態様は、分析対象である変化する試料に含まれる混合物の予備知識を一切必要とせずに未知の混合物スペクトルの時系列の組から純粋成分の濃度到達時間プロフィールと推定スペクトルの組を回帰的に抽出する数学的方法を目的とする。従って、本出願の自動化された処理の性質が、収集したスペクトルデータのシーケンスから線形独立な因子の系列を抽出すべくMCRから始まることを理解されたい。本質的に、これらの因子は、スペクトルの系列を、それらの組成部分、すなわち組み合わされてデータを記述するスペクトルに分離したものを表す。非限定的な例として、本明細書に開示するMCR法のそのような時間系列データの組を用いて、蛍光体試料の推定された「純粋成分」(例:フルオロフォア)を、そのような個々の推定された「純粋な」成分からの定量的寄与分を得るべく各々の相対濃度と共に抽出することができる。
【0020】
動作方法として、熱重量分析(TGA)等の、しかしこれに限定されない、当業者に公知である任意の数の手段を利用して時間に対して測定された吸収スペクトルを最初に求めて、
図1Aに示すものと同様のスペクトルデータ(変化する試料から集められたスペクトル)の時系列の組が得られる。最初の目的は、スペクトルの時系列の組を構成する「純粋成分」を推定することである。
【0021】
従って、多成分回帰分析(MCR)は、分析処理を通じて線形独立なスペクトルの所望の系列を抽出できるものの、MCRソフトウェアは1または10個の成分を有するスペクトル同士を区別できず、独立した時間変化を示すスペクトルしか抽出できないことを理解されたい。例えば、アンモニアと水が同時に試料から生じている場合、MCRソフトウェアは本明細書で用いるように、アンモニアと水の混合物のスペクトルを抽出できるが、アンモニアと水のスペクトルを分離することはできない。一方、異なる時間点でイソシアン酸塩も発生する場合、たとえ結果的に得られたスペクトルがアンモニアと水の混合物のスペクトルと重なり合っていても、当該結果によりアンモニアと水の混合物およびイソシアン酸塩を識別することができる。
【0022】
具体的に
図1A、
図1Bおよび
図1Cを参照すると、これらの図は、計器に受容された後で本発明の多変量カーブ分解(MCR)方法ステップを用いて抽出された発生エポキシ試料に含まれる二酸化炭素、アンモニア、イソシアン酸、および水の例示的なデータを示している。特に、
図1Aに示すスペクトルは、試料の熱重量分析(TGA)により吸収スペクトルが得られた時点でのスナップショットを示す。ユーザーは、設計されたフロントエンドを用いてこのようなデータを集めることにより、
図1Aと同様のスペクトルの時系列ファイルを生成することができる。
【0023】
図1Bに、受容されたスペクトル(その一つを
図1Aに例示する)の時系列ファイルのMCR分析の結果として推定された純粋成分(例:二酸化炭素、アンモニア、イソシアン酸、および水)の吸収スペクトルを各々示している。最後に、
図1Bに示す推定された成分に対して結果的にMCRにより生成された時間プロフィールを
図1Cに示す。
【0024】
本明細書に開示するMCRアルゴリズムの更に一般的なより詳細な記述として、
図1Aと同様であるが時間に対して測定された吸収スペクトルの組が、当業者には公知の手段により最初に集められる。MCR埋め込みソフトウェアが、吸収スペクトルSの組(スペクトル×データ点の数)を呼び出す。MCRソフトウェアパッケージの当初の目的が、スペクトルの組を構成する「純粋成分」の推定であることに留意されたい。開始するには、純粋成分はP(純物質×データ点の数)と呼ばれ、C(スペクトル×純物質)は各スペクトル内の各純物質の量とする。
【0025】
その結果、純粋成分行列Sの所与の実際のスペクトルについて、各行が混合物のスペクトルと相関しており、以下の形が得られる。
1) S=PC
【0026】
ここに、PおよびCはベクトル行列であり、上述のように、Pは「純粋成分」(すなわち純物質×データ点の数)であり、各々スペクトル内の各純物質の量がC(スペクトル×純物質)である。また、「純粋成分」(すなわち純物質×データ点の数)が時系列ファイルから得られた推定成分の総数とほぼ同じであることが望ましい点に留意されたい。従って、上式1から得られた相関スペクトルが、最も支配的な個別成分の強度が変化する試料内でどのように変化するかに関する最良の推定を行う点が好適である。
【0027】
更に、本明細書に開示するMCR方法ステップはまた、例えば単一モダリティ(ユニモダリティ)制約、しかし、より多くの場合非負制約等の制約を有利に利用することにも留意されたい。好適な規制又は制約として、データに関する特定の知識に基づいて非負制約が多くの場合選択される。例えば、測定が不正確なため往々にして不鮮明になり得るデータ内での強度および試料濃度を高めるべく吸収度測定値は正値でなければならない。従って、非負制約を用いることでCおよびPが共に非負、すなわちc(i,j)≧0且つp(j,k)≧0であるように制約する(iは試料の数に対応し、j個の波長で分光測光度法によりk回測定される)。
【0028】
反復的処理を開始するに際して、MCRは最初に成分の数を推定しなければならない。成分の数を推定する複数の戦略が提案されてきたが、それでもなお、各々の戦略には何らかの任意性がある。当該技術は、純粋成分スペクトルおよび濃度の両方を、測定されたスペクトル時系列またはスペクトルの空間的集合から推定しなければならない。これは、交互最小二乗法と呼ばれる反復的プロシージャにより行われる。第1のステップは、純粋成分スペクトルまたは濃度プロフィールの形状に関する任意の推測を行うことである。
【0029】
純粋成分スペクトルを任意に推測する場合、全てのc
jkがc
jk≧0を満たすという制約を有するCについて最小二乗法問題S=PCを解く。これは、非負最小二乗法(NNLS)と呼ばれる反復的プロシージャによりなされる。その結果、Cの推定値が得られる。次いでこのCの推定値、すなわちスペクトルの濃度を用いて、純粋成分スペクトル(P)の新たな推定値を求める。すなわち、Pについて問題S=PCをNNLSにより解く。技術がNNLSであるという事実により、全てのp
ijがp
ij≧0を満たすことが保証される。Cについて再び解き、次いでPについて再び解くステップが、解が収束するまで続けられる。これは、いくつかの反復の後で生じるであろう。その結果は、純粋成分スペクトルPについての最小二乗法的な解、および測定されたスペクトルSの集合体を生成するスペクトルCの濃度となる。
【0030】
純粋成分の推定値が近似値であって、どの実際の物理的物質のスペクトルにも一致することが証明されていないことに留意されたい。しかし、これはMCS(多成分検索)分析の有意義な出発点である。
【0031】
その後、MCRはユーザーに対し、
図1B(すなわち、結果的に得られた推定された純粋成分)および
図1C(すなわち、各々の推定された純粋成分について結果的に得られた濃度到達時間プロフィール)に同様に示すように、推定された成分および濃度のチャートまたはプロット図を提示して時間依存性を示すことができる。
【0032】
しかし、上述のように、本発明の有利な態様が、MCR分析法をMCS(多成分検索)アルゴリズムと統合する能力であることは明らかであり、これについて引用文献であるRitterらによる2010年4月13日出願の米国特許第7,698,098B2号明細書「EFFICIENT SPECTRAL MATCHING,PARTICULARLY FOR MULTICOMPONENT SPECTRA」に同様に記述されている。そのようなMCS処理は一般に、以下により詳細に述べるように、提供されたデータベースを検索されたような個々のスペクトルの逆畳み込みを行う。MCSは従って、個々のスペクトルと元データの組の相関を求めるスペクトル相関を実行することにより、MCRから得られる各々の推定された成分を識別する。全体的な有利な結果は、多くの場合強化された正確な推定成分および
図1A、
図1Cのものと同様の時間プロフィールが得られること、すなわちユーザーに変化する試料の各成分のより高信頼度の時間依存情報を提供することである。
【0033】
ここで
図2に、MCR−MCSの統合された新たな態様を概略的な理解を可能とするよう模式的に示す。具体的には、
図2に示すP
1、P
2、P
3、...、は、MCRソフトウェアを用いて分光計から得られた推定純粋成分の時系列スペクトルを表す。MCRにより提供されたそのような推定スペクトル情報、すなわちP
1、P
2、P
3、...は次いでMCSソフトウェア態様に渡されて、既に得られた基準比較スペクトル(L
1、L
2、L
3、...、と表記)と比較される。
【0034】
図3に、
図2の推定時系列純粋成分スペクトルP
1、P
2、P
3、...がどのように比較(ライブラリ)スペクトルの一部と比較されて、純粋スペクトルが比較ライブラリスペクトルL
1、L
2、L
3、...と、どの程度一致するかを判定する様子をある程度詳しく記述する(ここでは
図3のステップ200に示す)。
【0035】
特に、ステップ200で示すように、純粋成分スペクトルP
1、P
2、P
3、...の推定時系列が光学計器(例:分光計)、データベース、または当業者に公知の任意のソースから得られ、その後上述のようにMCRを用いて処理されると、比較ライブラリスペクトル、例えばL
1、L
2、L
3、...は以下のように識別することができる。
【0036】
最初に、比較スペクトル、すなわち比較用の1つまたは複数の基準スペクトルが、1つまたは複数のスペクトルライブラリまたは他のソースからアクセスされる。MCRにより抽出された1つまたは複数の推定された純粋成分の時系列スペクトルP
1、P
2、P
3、...は次いで比較スペクトルの少なくとも一部と比較されて、スペクトルの時系列がどの程度1つまたは複数の比較スペクトルに一致するかが判定される。ユーザー定義または事前設定された一致閾値に達するかまたは上回ることにより、推定された純粋成分の時系列スペクトルP
1、P
2、P
3、...が1つまたは複数の比較スペクトルに所望の程度で一致する場合、1つまたは複数の比較スペクトルは、一致閾値が過度に高く設定されていない限り、1つまたは複数の候補スペクトルB(1)
1、B(1)
2、...B(1)
M、として識別されるものと考えられる。候補スペクトルが識別されない場合、一致閾値をより低い値に設定することができる。
【0037】
次に、推定された純粋成分の時系列スペクトルのいずれかが多成分混合物から生じた可能性について考慮する。新規の比較スペクトルが複数生成され、各比較スペクトルは、既に識別された候補スペクトルの1つと、スペクトルライブラリまたは他のソースからの比較スペクトルの1つとの組み合せである。推定された1つまたは複数の純粋成分の時系列スペクトルは次いで、これら新規の比較スペクトルの少なくともいくつかと再び比較されて、推定された純粋成分の時系列スペクトルがどの程度新規の比較スペクトルに一致するかを判定する。このステップを
図3の210に模式的に示しており、任意の数の推定された純粋成分の時系列スペクトルP
1、P
2、P
3、...が新規の比較スペクトルと比較される。
B(1)
1+L
1、B(1)
1+L
2、...B(1)
1+L
N
(すなわち、
図3のステップ200からの既に識別された候補スペクトルの1番目と、スペクトルライブラリまたは他のソースからの比較スペクトルの各々との組み合わせ)
B(1)
2+L
1、B(1)
2+L
2、...B(1)
2+L
N
(すなわち、ステップ200からの既に識別された候補スペクトルの2番目と、スペクトルライブラリまたは他のソースからの比較スペクトルの各々との組み合わせ)などであり、推定された純粋成分の時系列スペクトルが新規の比較スペクトルと比較されるまで続く。
B(1)
M+L
1、B(1)
M+L
2、...B(1)
M+L
N
(すなわち、ステップ200からの既に識別された候補スペクトルの最後と、スペクトルライブラリまたは他のソースからの比較スペクトルの各々との組み合わせ)。
【0038】
これらの比較から、例えば、新規の比較スペクトルのいずれか1つが、推定された純粋成分の時系列スペクトルP
1、P
2、P
3、...と所望の程度に一致する(一致閾値に達するかまたは上回ることにより)ことが分かった場合、新規の比較スペクトルが新規の候補スペクトルであるとみなす。これらの新規候補スペクトルを
図3のステップ210でB(2)
1、B(2)
2、...B(2)
Mと表記している。(必要に応じて、ステップ210のMがステップ200のMと必ずしも同じでなくてもよい、すなわちステップ210における候補スペクトルの数がステップ200における候補スペクトルの数と必ずしも同じである必要がないことを理解されたい)。ここに、各候補スペクトルB(2)
1、B(2)
2、...B(2)
Mは2つの成分、すなわちスペクトルライブラリまたは他のソースから得られた2つの組み合わされた基準スペクトルを表す。
【0039】
上述のステップは次いで、必要に応じて1回以上無制限に反復されてよく、各々の反復において上述のステップで識別された候補スペクトルを用いて新規の比較スペクトルが生成される。これを
図3のステップ220に例示しており、ステップ210からの候補スペクトルB(2)
1、B(2)
2、...B(2)
Mをスペクトルライブラリまたは他のソースからの比較スペクトルL
1、L
2、...L
Nと組み合せて用いて新規の比較スペクトルが生成される。次いで推定された純粋成分の時系列スペクトルP
1、P
2、P
3、...とこれらの新規の比較スペクトルの比較により、新規の候補スペクトルB(3)
1、B(3)
2、...B(3)
Mが識別される(この場合もMはステップ210および/または200のMと同じである必要はない)。候補スペクトルが何らかの所望の数の成分を含んでいる場合、例えば、新規の比較スペクトルが、スペクトルライブラリまたは他のソースから得られた所望の数の組み合わされた比較/基準スペクトルを含んでいる場合、反復を終了してよい。
【0040】
この条件を
図4のフローチャートに示しており、ステップ400は
図3のステップ200と同等であり、ステップ430は
図3のステップ210および220(当該ステップの将来の反復も)と同等であり、条件ボックス440は候補スペクトル内の成分cの数を評価して、ある最大数Cに達すると反復を停止する。代替的または追加的に、ある所望の数の候補スペクトルが識別された場合、後述するように少なくとも何らかの適格な一致度(適格な一致度は閾値一致度よりも大きい)により未知スペクトルに一致する1つまたは複数の候補スペクトルが識別された場合、あるいは他の適当な条件が生じた場合に反復を停止してもよい。
【0041】
次いで候補スペクトルの少なくとも一部をユーザーに提示してよく、好適には、(
図4のステップ450に示すように)未知スペクトルとより良く一致する候補スペクトルが最初に示されるように当該候補スペクトルがランク付けされた順序でユーザーに提示してもよい。ユーザーに提示し得る候補スペクトルの出力リストの例示的なフォーマットを
図5に示す。ここに、未知スペクトルに関する詳細事項を出力リストの見出しに示し、候補スペクトルの詳細事項がこれに続く。1番目に記載された候補スペクトルは(ランク/指標が1で記載)はポリスチレン膜のスペクトルであり、未知スペクトルに対する一致度(「一致のパーセンテージ」に略等しい)が99.58である。当該候補スペクトルのスペクトルライブラリまたは他のソースもまた記載され(ここでは「ユーザー例ライブラリ)、ライブラリ/ソース内の位置も同様である(「ソース指標」no.2で、すなわち、「ユーザー例ライブラリ」で与えられる2番目のスペクトルである)。2番目に記載された候補スペクトルは実際には、スペクトルライブラリまたは他のソースからの3つのスペクトル、すなわちトルエン(透過セル)スペクトル、ABSプラスチック(ATR修正済み)スペクトル、およびポリテトラフルオロエチレン膜スペクトルの組み合せであり、これらのスペクトルを適当な割合(後述する)で組み合わせれば、未知スペクトルと68.97の一致度が得られる。それらの累積的一致度もまた提示され、トルエンの一致度は56.96、トルエンとABSを合わせた一致度が68.92、またトルエン、ABSおよびポリテトラフルオロエチレンを合わせた一致度は68.97である。この場合も、これらのスペクトルのライブラリまたは他のソースは、自身のライブラリ/ソース内における各スペクトルの位置の指示と共に与えられる。
【0042】
追加的な尺度、特に、候補スペクトル内の各比較スペクトル(各成分/基準スペクトル)の重み、すなわち未知スペクトルとの最適一致が得られるように各比較スペクトルの調整に用いる倍率も好適に出力リストに含まれている。例えば、第1の記載された候補スペクトル(ポリスチレン膜)は5.4195の重みを有し、これは未知スペクトルが、候補スペクトルが得られた試料のポリスチレン含有量の5.4195倍含有していると推定されることを意味する。第2の記載された候補スペクトルは、トルエン、ABS、およびポリテトラフルオロエチレンの異なる重みを含み、これらの重みは、上述の比較ステップを行う間に比較スペクトル対未知スペクトルの回帰分析により決定される(すなわち、比較を行う間に未知スペクトルへの最適一致を実現するように比較スペクトル内の各種の成分/基準スペクトルが比例される)。従って、ユーザーに対し、未知スペクトル内の成分が少なくとも近似的に定量化されて示される。
【0043】
上述の方式は、「最適一致」基準スペクトルを発見し、最適一致スペクトルを他の基準スペクトルに対すると組み合せ、次いでこれらの組み合せ(当該方式では上述の組み合せステップから反復的に継続する)から更なる最適一致スペクトルを識別するものと言える。従って、本方式は、基準スペクトルL
1、L
2、...L
Nの全ての可能な組み合せを比較するのではなく、基本的に未知スペクトルとの類似性が少ない基準スペクトルを除外することにより、考慮する組み合せを大幅に減らすことができる。その結果、本方式は、特に多数の基準スペクトルが用いられる場合、および未知スペクトルが成分/基準スペクトルのより大きい組み合せについて調べられる場合に、全ての組み合せを考慮する方法よりもはるかに短い時間で高品質の一致を返し、場合によっては、以前は数時間要していた結果を数分で返す。
【0044】
推定された純粋成分の時系列スペクトルと比較スペクトルの間で上述の比較を実行する前に、本発明は、比較処理の迅速化および/またはその精度の向上、あるいはデータ処理を強化すべく、推定された純粋成分の時系列スペクトルおよび比較スペクトルの一方または両方に対して1つまたは複数の変換を実行する場合がある。例として、本発明は、データスムージング(ノイズ低減)、ピーク判定、リスケーリング、ドメイン変換(例:ベクトルフォーマットへの変換)、微分、またはスペクトルに対する他の変換のうち1つまたは複数を実行する場合がある。比較自体もまた、単に未知および比較スペクトルの間で同様の波長範囲にわたる強さ/大きさを比較する、未知および比較スペクトルをベクトル形式に変換して当該ベクトルを比較する、または他の形式を比較する等、各種の形式を想定できる。
【0045】
また、上述の方式は、候補スペクトルの識別を更に迅速化すべく変更することができる。そのような変更の一例として、既に識別されている候補スペクトルと、スペクトルライブラリまたは他のソースから得られた比較スペクトルを組み合せることにより新規の比較スペクトルを生成する際に、候補スペクトルが比較スペクトルを既に含んでいる場合には当該組み合せを省略または除外してもよい(すなわち、潜在的新規候補スペクトルとして除外するかまたは考慮対象としない)。
【0046】
より具体的な例示として、スペクトルライブラリから得られた比較スペクトルL
1が、未知スペクトルとの十分な一致により、ステップ200(
図3)でB(1)
1として選択された状況を考える。ステップ210の次の反復において、新規の比較スペクトルB(1)
1+L
1は、L
1+L
1(すなわち、基準スペクトルL
1を自身と組み合わせたもので、単に再びL
1となる)に等しいため、省略または除外することができる。従って、冗長な成分スペクトルを有する比較スペクトルの生成および/または使用を避けることにより、本方式は、新規の候補スペクトルが得られる見込みがより高い比較スペクトルのために計算時間を温存することができる。
【0047】
候補スペクトルの識別を迅速化すべく実装可能な変更の別の例として、候補スペクトルが、何らかの「適格な」一致度以上の程度で未知スペクトルに一致する場合(この適格な一致度は閾値一致度より大きい)、その中の比較スペクトル(すなわちその成分スペクトル)は、その生成されるどの新規の比較スペクトルからも除外できる。上述の方策は本質的に、候補スペクトルが既に未知スペクトルと極めて良く一致する場合(例えば、95%を超える適格な一致度を有している場合)、これで十分となり得、候補スペクトルを他のスペクトルと組み合せたとしてもより高い一致が得られるか否かを判定する必要があまり無い、というアプローチをとる。
【0048】
候補スペクトルの識別を迅速化するために行える別の変更は、未知スペクトルの1つまたは複数の成分が既知である特例な場合、例えば、既知の成分を所定量有する物質の生成を意図された処理の出力をモニタリングする場合に適用される。この場合、第1回の比較(
図3のステップ200、
図4のステップ400)を行う間、候補スペクトルB(1)
1、B(1)
2、...B(1)
Mを単に既知成分のスペクトルに設定することができる。次いで本方法の残りを実行することで、各種成分の相対比率と同様に、存在し得る任意の追加的な成分(すなわち不純物)の識別に役立つ。
【0049】
上述のように、一致閾値、すなわち比較スペクトルが候補スペクトルであるとみなすために推定された1つまたは複数の純粋成分の時系列スペクトルと比較スペクトルの間で求められる一致の程度が過度に高く設定されている場合、結果的に候補スペクトルが一切得られないことがあり得る。典型的には、一致閾値として90%の一致度が適しているが、この値は考慮するスペクトルの詳細事項に応じてより低くまたはより高く設定されてよい。
【0050】
また、一致閾値をゼロ(またはゼロに近い値)に設定することも可能であり、その場合、候補スペクトルは各々の比較スペクトルから生じることができる。例えば、一致閾値が
図3−
図4のステップ200でゼロに設定された場合、M=Nであって、B(1)
1、B(1)
2、...B(1)
Mは次いで、各々がL
1、L
2、...L
Nの1つに対応する。この場合、候補スペクトルのいくつかは実際には、未知スペクトルとの一致が良くないため、候補として相応しくない恐れがある。従って、候補スペクトルを最も高い一致度から最も低い一致度の順序でランク付けし、次いで任意の後続ステップも実行する際に最も一致度が高い候補スペクトルを最初に考慮することが有用である。この場合、計算量を減らすために、任意の後続ステップも実行する際に、最も一致度が低い候補スペクトルを除外することは有用であろう。例えば、一致度が最も高い上位10%、25%または50%の候補スペクトルだけを保持して、後続ステップでこれらを用いてもよい。
【0051】
本発明が、スペクトルデータを受信して分析するコンピュータまたは他のシステム(例:分光計)に用いられるスペクトル識別ソフトウェアに実装できるものと期待される。そのようなシステムは、環境用、産業用、または他のモニタリング設備、および本発明が有用であることが判明するであろう他の任意のシステムに設けられた可搬/携帯コンピュータ、現場測定装置、特定用途向け集積回路(ASIC)および/またはプログラム可能論理デバイス(PLD)を含んでいてよい。
【0052】
追加的な実施形態として、以下の非限定的な例は、本明細書に開示する方法で利用可能な有利なユーザー出力インターフェース態様を示す。本実施形態により潜在的に解決可能な極めて関連性が高い問題が、2つの類似物質の分析に関するものであることを理解されたい。2つのシナリオ例がある。第1は、1つのバッチでガスケットまたはOリングが故障したが、別のバッチでは正常に機能する。第2は、競争者Bが、競争者Aにより化学的に製造されたものと同様の製品をもたらしたので、Aは処理の違いを理解したいと望む。いずれの場合も、TGA−IRは多くの場合、実装にあたり、定性的および定量的データが提供される、洞察性に富んだ有利な方法である。
【0053】
従って、2つのデータ組の結合された(すなわち、逐次的ではなく同時の)分析の実行を含む本発明の「ライトボックス」(すなわち、デジタル的に重ね合わされた(または横並びに表示された))拡張を追加的に提供できると有利である。最終結果として、成分情報およびプロフィール情報のシーケンスが得られる。出力インターフェースにより、検索結果の図示およびそれらの成分の時間変化プロフィールの図示を行うことができる。重要な点は、これらの比較の違いである。
【0054】
分析を逐次的に行うように構成されている場合、検索結果の順序および発見された成分の数は潜在的に異なり得るため、比較がより複雑になる。分析を結合して実行することにより、複数の結果が成分および検索結果のランク順序の両方により紐付けられる。これにより、複数の結果がデジタル的に重ね合わされ(または横並びに表示され)て比較が容易になる「ライトボックス」方式が可能になる。
【0055】
2つのシナリオを再び参照すると、第1の場合において、重ね合わせ図により、1つの成分が欠落している、すなわち製剤エラーであるか、または、1つまたは複数の成分の温度変化プロフィールが両者の間でずれている、すなわち処理エラーであることが示され得る。第2の場合において、脱製剤プロフィールにより、A社製の既知の特徴を有する既知製品を、未知のB社製物質と比較することができ、組成または処理のいずれかの違いが再度現れる。これは最終的に、分析全体が求めていた「最終回答」、すなわちこれら2つの試料の違いを表している。
【0056】
また、本発明は概して、分子分光計用のスペクトル照合に関して有用であると述べてきたが、本発明は代替的または追加的に、質量分光法、X線分光法または他の形式の分光法に用いることができる。本発明はまた、信号が基準値に対して測定される他の形式の測定分析にも有用であろう。その場合、このような信号および基準値は本発明で言うところの「スペクトル」であるとみなしてよい。
【0057】
本明細書の各種実施形態に関して記述している特徴は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、任意の組み合せで混在および適合できることを理解されたい。異なる実施形態を選択して例示および詳述してきたが、これらは例示的であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、各種の代替および変更が可能であることを理解されたい。