【実施例】
【0027】
A.強化繊維構造体の見掛け密度
JIS L 1913 6.1(厚さ(A法))(2010)に準じて、20cm×20cmの試験片を5枚採取し、(株)大栄科学精機製作所製の全自動圧縮弾性・厚さ測定器(型式:CEH−400)を用い、圧力0.5kPaの加圧下で10秒後における各試験片の厚さを10箇所測り、その平均値を厚さとした。この厚さと長さ(20cm×20cm)、重量から、見掛け密度を少数第3位四捨五入して求めた。得られた5枚の見掛け密度の平均値を、シートの見掛け密度とした。
【0028】
B.熱伝導率
JIS A 1412−2(1999)に準じて、18mm×18mmの試験片(厚みは4mm、足りない場合は複数枚重ねて4mmにした)を採取し、アルバック理工製の定常法熱伝導率測定装置GH−1Sを用いて80℃(低温面と高温面の温度差は20℃)の値を測定した。
【0029】
C.引張強度
JIS K 7161〜7164(1994)に記載の方法に準じて、試料面内で0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°のそれぞれの方向にタイプ1BA形小型試験片を作成して引張破壊応力を測定した。全ての方向の引張破壊応力の平均を引張強度とした。
【0030】
実施例1
密度が1.38g/cm
3のPAN耐炎糸を押し込み式クリンパーでけん縮糸とした。このPAN耐炎糸を数平均繊維長76mmに切断した後、カード、クロスレイヤーでウェブとし、次いでニードルパンチによって繊維同士を交絡させて見掛け密度0.08g/cm
3のPAN耐炎糸不織布を得た。
【0031】
得たPAN耐炎糸不織布は、200℃に加熱したプレス機で加圧し、見掛け密度0.81g/cm
3とした。
【0032】
次いで窒素雰囲気中1500℃の温度まで昇温して焼成して、密度1.80g/cm
3のPAN炭素繊維からなる見掛け密度0.65g/cm
3の不織布を得た。次に、0.1Nの炭酸水素アンモニウム水溶液に浸漬して、炭素繊維1gあたり100クーロンの電解処理を行った。
【0033】
このPAN炭素繊維不織布の両面に密度が1.14g/cm
3のナイロン6フィルムを重ねた状態で、250℃に加熱したプレス機で加圧することでN6を溶融含浸して、繊維体積含有率(Vf)40%(樹脂体積含有率60%)の繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、熱伝導率と引張強度が優れていた。
【0034】
実施例2
実施例1において、ニードルパンチのかわりに水流交絡法で繊維同士を交絡させて繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、熱伝導率と引張強度が優れていた。
【0035】
比較例1
密度が1.38g/cm
3のPAN耐炎糸を5mmにカットし、4mmにカットしたPVA繊維と重量比が80:20の割合で抄造法により見掛け密度0.16g/cm
3のシートを得た。
【0036】
得た耐炎糸シートは、200℃に加熱したプレス機で加圧し、見掛け密度0.81g/cm
3とした。
【0037】
次いで窒素雰囲気中1500℃の温度まで昇温して焼成して、密度1.80g/cm
3のPAN炭素繊維からなる見掛け密度0.65g/cm
3の不織布を得た。次に、0.1Nの炭酸水素アンモニウム水溶液に浸漬して、炭素繊維1gあたり100クーロンの電解処理を行った。
【0038】
このPAN炭素繊維シートと密度が1.14g/cm
3のナイロン6フィルムを交互に32枚重ねた状態で、250℃に加熱したプレス機で加圧することでN6を溶融含浸して、繊維体積含有率(Vf)40%(樹脂体積含有率60%)の繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、引張強度は優れていたが熱伝導率が劣っていた。
【0039】
比較例2
実施例1において、耐炎糸の量とプレス圧力を調整して含浸前の見掛け密度が0.15g/cm
3、含浸後の見掛け密度が0.18g/cm
3として繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、熱伝導率と引張強度が劣っていた。
【0040】
実施例3
実施例1において、耐炎糸の量とN6の量を調整して含浸後の厚みが1mmの繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、厚み方向へ貫通した繊維がないため層間剥離などの懸念はあるものの、熱伝導率と引張強度が優れていた。
【0041】
実施例4
実施例1において、マトリックスとして密度1.14g/cm
3のエポキシ樹脂が塗布された離型シートで挟んで含浸して繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、熱伝導率と引張強度が優れていた。
【0042】
実施例5
実施例1において、プレス圧力を調整して含浸前の見掛け密度を0.12g/cm
3にして繊維強化複合材料を得た。得た繊維強化複合材料の評価結果は表のとおりであり、熱伝導率が優れていた。
【0043】
【表1】