特許第6089464号(P6089464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6089464-非接触電力伝送装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089464
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20170227BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170227BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 P
   B60L11/18 C
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-142202(P2012-142202)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-7864(P2014-7864A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】古池 剛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直
(72)【発明者】
【氏名】勝永 浩史
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】戸叶 博樹
(72)【発明者】
【氏名】松倉 啓介
(72)【発明者】
【氏名】井上 啓介
(72)【発明者】
【氏名】恒川 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】小野 琢磨
【審査官】 木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/108191(WO,A1)
【文献】 特開2011−120443(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035321(WO,A1)
【文献】 特開2011−155732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−13/00、15/00−15/42
B60M 1/00− 7/00
H02J 7/00− 7/12、 7/34− 7/36
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が入力される1次側コイルを有する1次側機器と、
非接触で前記1次側コイルから前記交流電力を受電可能な2次側コイル、前記2次側コイルにて受電した交流電力を直流電力に整流する整流部、及び負荷を有する2次側機器と、
を備えた非接触電力伝送装置において、
前記2次側機器は、
前記2次側コイルと前記整流部との間に設けられ、予め定められた固定インダクタンス及び固定キャパシタンスを有する整合と、
所定の周期でスイッチング動作するスイッチング素子を有し、前記負荷のインピーダンスに応じて、前記スイッチング動作のデューティ比を調整する調整手段と、
を備え
前記調整手段は、前記デューティ比を調整することにより、前記整流部によって整流された直流電力の電圧を、異なる大きさの電圧に変換して前記負荷に出力するDC/DCコンバータを有し、
前記2次側機器は、
前記DC/DCコンバータ及び前記負荷に対して並列に設けられた抵抗と、
前記整流部の接続先を、前記DC/DCコンバータと前記抵抗とに切り替えるスイッチと、
を備え、
前記抵抗の抵抗値は、前記整流部の出力端から前記負荷までのインピーダンスと同一に設定されており、
前記調整手段は、前記負荷のインピーダンスに関わらず、前記整合部の出力端から前記負荷までのインピーダンスが一定となるように前記デューティ比を調整することを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記1次側機器は、インダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方が可変の可変整合手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記2次側機器は車両に搭載されており、
前記負荷には、前記DC/DCコンバータから出力される直流電力が入力されることにより充電される車両用バッテリが含まれており、
前記調整手段は、前記車両用バッテリのインピーダンスに関わらず、前記整合部の出力端から前記車両用バッテリまでのインピーダンスが一定となるように前記デューティ比を調整するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源コードや送電ケーブルを用いない非接触電力伝送装置として、例えば磁場共鳴を用いたものが知られている。例えば特許文献1の非接触電力伝送装置は、交流電源と、交流電源から交流電力が入力される1次側の共鳴コイルとが設けられた給電機器を備えている。さらに、受電機器である車両には、1次側の共鳴コイルと磁場共鳴可能な2次側の共鳴コイルが設けられている。そして、1次側の共鳴コイルと2次側の共鳴コイルとが磁場共鳴することにより、給電機器から車両に交流電力が伝送される。その伝送された交流電力は、車両に設けられた整流器により直流電力に整流され、負荷としての車両用バッテリに入力される。これにより、車両用バッテリが充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような非接触電力伝送装置においては、伝送効率を高めるために、例えばインピーダンス整合を行う整合器を設ける場合がある。しかしながら、整合器の定数が固定の構成の場合、負荷に供給される電力の電力値が変化して負荷のインピーダンスが変化すると、インピーダンス整合が取れなくなる。かといって、負荷のインピーダンスの変化に追従するために、整合器の定数を可変とし、当該整合器を可変制御する構成とすると、整合器自体の複雑化や、整合器の可変制御に伴う制御の複雑化が懸念される。
【0005】
なお、上記の事情は、磁場共鳴によって非接触の電力伝送を行う構成に限られず、電磁誘導によって非接触の電力伝送を行う構成についても同様である。
本発明の目的は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、負荷のインピーダンスが変化する場合において、好適に電力伝送を行うことができる非接触電力伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、交流電力が入力される1次側コイルを有する1次側機器と、非接触で前記1次側コイルから前記交流電力を受電可能な2次側コイル、前記2次側コイルにて受電した交流電力を直流電力に整流する整流部、及び負荷を有する2次側機器と、を備えた非接触電力伝送装置において、前記2次側機器は、前記2次側コイルと前記整流部との間に設けられ、予め定められた固定インダクタンス及び固定キャパシタンスを有する整合と、所定の周期でスイッチング動作するスイッチング素子を有し、前記負荷のインピーダンスに応じて、前記スイッチング動作のデューティ比を調整する調整手段と、を備え、前記調整手段は、前記デューティ比を調整することにより、前記整流部によって整流された直流電力の電圧を、異なる大きさの電圧に変換して前記負荷に出力するDC/DCコンバータを有し、前記2次側機器は、前記DC/DCコンバータ及び前記負荷に対して並列に設けられた抵抗と、前記整流部の接続先を、前記DC/DCコンバータと前記抵抗とに切り替えるスイッチと、を備え、前記抵抗の抵抗値は、前記整流部の出力端から前記負荷までのインピーダンスと同一に設定されており、前記調整手段は、前記負荷のインピーダンスに関わらず、前記整合部の出力端から前記負荷までのインピーダンスが一定となるように前記デューティ比を調整することを特徴とする。
【0007】
かかる発明によれば、デューティ比を調整することにより、インピーダンスが調整される。これにより、負荷のインピーダンスが変化する場合、その変化に対応させてデューティ比を調整することを通じて、負荷のインピーダンスの変化に関わらず、整合の出力端から負荷までのインピーダンスが一定となるようにすることができる。この場合、整合としては、負荷のインピーダンスの変化に応じて、インダクタンス及びキャパシタンスを可変する必要がなくなるため、整合の構成の簡素化を図ることができる。特に、デューティ比を調整するという比較的簡素な制御によって、負荷のインピーダンスの変化に追従する構成としたことにより、整合を可変制御する構成と比較して、制御の簡素化を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記1次側機器は、インダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方が可変の可変整合手段を備えていることを特徴とする。かかる発明によれば、1次側機器に可変整合手段を設けることによって1次側機器内で発生する反射電力を抑制することができる。
【0010】
請求項に記載の発明は、前記2次側機器は車両に搭載されており、前記負荷には、前記DC/DCコンバータから出力される直流電力が入力されることにより充電される車両用バッテリが含まれており、前記調整手段は、前記車両用バッテリのインピーダンスに関わらず、前記整合部の出力端から前記車両用バッテリまでのインピーダンスが一定となるように前記デューティ比を調整するものであることを特徴とする。車両用バッテリは、携帯電話のバッテリ等と比較して大きな充電容量が要求される。このため、整合には、高耐圧のキャパシタンス等が要求される。このような高耐圧のキャパシタンス等を有する素子は、現実的ではない場合があったり、非常にコストが高くなったりする場合がある。さらに、上記のような素子は大型になり易いため、設置スペースを確保しにくい。
【0011】
これに対して、デューティ比を調整することにより車両用バッテリのインピーダンスの変化に追従する構成を採用したため、上記のような素子を設ける必要がない。これにより、上記のような不都合を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、負荷のインピーダンスが変化する場合において、好適に電力伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る非接触電力伝送装置の電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る非接触電力伝送装置(非接触電力伝送システム)について説明する。
図1に示すように、非接触電力伝送装置10は、地上に設けられた地上側機器11と、車両に搭載された車両側機器21とから構成されている。地上側機器11が1次側(送電)機器に対応し、車両側機器21が2次側(受電)機器に対応する。
【0015】
地上側機器11は、所定の周波数の高周波電力(交流電力)を出力可能な高周波電源12(交流電源)を備えている。高周波電源12は、系統電力を用いて正弦波の高周波電力を出力可能に構成されている。具体的には、高周波電源12は、系統電力を直流電力に整流する整流器12aと、その直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータ12bとを備えている。また、高周波電源12は、DC/DCコンバータ12bから出力された直流電力を用いて矩形波の高周波電力を生成するDC/RF変換器12cと、そのDC/RF変換器12cにて生成された矩形波の高周波電力を正弦波の高周波電力に整形するローパスフィルタ12dと、を備えている。高周波電源12は、DC/DCコンバータ12bの出力電圧を調整することにより、異なる電力値の高周波電力を出力可能に構成されている。なお、以降の説明においては、正弦波の高周波電力を、単に高周波電力と言う。
【0016】
高周波電源12から出力された高周波電力は、非接触で車両側機器21に伝送され、車両側機器21に設けられた車両用バッテリ(蓄電装置)22の充電に用いられる。具体的には、非接触電力伝送装置10は、地上側機器11及び車両側機器21間の電力伝送を行うものとして、地上側機器11に設けられた送電器13と、車両側機器21に設けられた受電器23とを備えている。送電器13には、地上側機器11に設けられた可変整合手段としての1次側整合器14を介して、高周波電力が入力される。
【0017】
送電器13及び受電器23は磁場共鳴可能に構成されている。具体的には、送電器13は、並列に接続された1次側コイル13a及び1次側コンデンサ13bからなる共振回路で構成されている。受電器23は、並列に接続された2次側コイル23a及び2次側コンデンサ23bからなる共振回路で構成されている。両者の共振周波数は同一に設定されている。
【0018】
かかる構成によれば、高周波電源12から高周波電力が送電器13(1次側コイル13a)に入力された場合、送電器13(1次側コイル13a)と受電器23(2次側コイル23a)とが磁場共鳴する。これにより、受電器23は送電器13のエネルギの一部を受け取る。すなわち、受電器23は、送電器13から高周波電力を受電する。
【0019】
車両側機器21は、受電器23にて受電した高周波電力を直流電力に整流する整流手段としての整流器24と、整流器24と車両用バッテリ22との間に設けられた調整手段としての充電器25とを備えている。充電器25は、整流器24にて整流された直流電力の電圧を、所定の大きさの電圧に変換し、当該所定の大きさの電圧の直流電力を車両用バッテリ22へ出力する。これにより、車両用バッテリ22に直流電力が入力され、車両用バッテリ22が充電される。ちなみに、車両用バッテリ22は、入力される直流電力の電力値に応じてインピーダンスが変動する負荷である。
【0020】
また、車両側機器21は、受電器23と整流器24との間に設けられた2次側整合器26を備えているとともに、充電器25と車両用バッテリ22との間に設けられ、車両用バッテリ22の充電状況を検知する検知センサ27を備えている。すなわち、受電器23(2次側コイル23a)→2次側整合器26→整流器24→充電器25→検知センサ27→車両用バッテリ22という電力伝送経路が形成されている。
【0021】
高周波電源12と送電器13との間に設けられた1次側整合器14は、インダクタンス及びキャパシタンスの少なくとも一方を可変に構成され、本実施形態ではキャパシタンスが可変に構成されている。詳細には、1次側整合器14は、コイルと可変コンデンサとからなるLC回路で構成されている。1次側整合器14は、可変コンデンサのキャパシタンスを可変させることにより、高周波電源12の出力端のインピーダンスと、1次側整合器14の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスとを整合する。なお、図示は省略するが、地上側機器11には、高周波電源12に向かう反射電力を測定する測定器が設けられている。
【0022】
なお、受電器23と整流器24との間に設けられた2次側整合器26は、固定インダクタンス及び固定キャパシタンスを備えている。つまり、2次側整合器26の定数は固定されている。
【0023】
ここで、地上側機器11は、高周波電源12、具体的にはDC/DCコンバータ12b及びDC/RF変換器12cの制御を行うとともに、1次側整合器14の制御を行う電源側コントローラ15を備えている。電源側コントローラ15は、上記測定器からの測定結果が入力されるように構成されている。このため、電源側コントローラ15は、高周波電源12に向かう反射電力を把握可能となっており、反射電力に基づいて、1次側整合器14の定数の可変制御を行う。
【0024】
また、車両側機器21は、充電器25の制御を行う車両側コントローラ28を備えている。車両側コントローラ28は、検知センサ27から検知結果が入力されるように構成されている。このため、車両側コントローラ28は、車両用バッテリ22の充電状況を把握可能となっている。
【0025】
また、車両側機器21には、充電器25と並列に接続された調整用抵抗29aが設けられているとともに、整流器24(の出力端)の接続先を充電器25と調整用抵抗29aとに切り替えるスイッチ29bが設けられている。調整用抵抗29aの抵抗値は、充電用の高周波電力を受電した際の充電器25の入力端(整流器24の出力端)から車両用バッテリ22までのインピーダンスと同一に設定されている。
【0026】
各コントローラ15,28は無線通信可能に構成されており、両者の間で情報のやり取りを行うことが可能となっている。各コントローラ15,28は、情報のやり取りを行いながら、車両用バッテリ22の充電に係る制御を実行する。
【0027】
次に、充電器25について詳細に説明する。
充電器25は、DC/DCコンバータ30を備えている。DC/DCコンバータ30は、整流器24から出力された直流電力の電圧を、異なる大きさの電圧に変換し、車両用バッテリ22に向けて出力する。
【0028】
DC/DCコンバータ30は、2つのスイッチング素子31,32と、コイル33及びコンデンサ34とを備えている。各スイッチング素子31,32は、例えばn型のパワーMOSFETで構成されている。なお、これに限られず、IGBT等を用いてもよい。
【0029】
第1スイッチング素子31のドレインは、DC/DCコンバータ30の入力端子、すなわち整流器24の出力に接続されている。第1スイッチング素子31のソースは、コイル33の一端に接続されているとともに、第2スイッチング素子32のドレインに接続されている。第2スイッチング素子32のソースは接地されている。コイル33の他端は、DC/DCコンバータ30の出力端子に接続されており、検知センサ27を介して車両用バッテリ22に接続されている。コンデンサ34の一端はコイル33の他端に接続され、他端は接地されている。
【0030】
かかる構成によれば、各スイッチング素子31,32が交互にオンとなるように定期的にスイッチング動作(オンオフ動作、チョッピング)が行われた場合、DC/DCコンバータ30の出力端子から、各スイッチング素子31,32におけるスイッチング動作のデューティ比に応じた電圧の直流電力が出力される。換言すれば、各スイッチング素子31,32の定期的なスイッチング動作により発生するパルス波のパルス幅に応じた電圧の直流電力が、DC/DCコンバータ30の出力端子から出力されるとも言える。
【0031】
充電器25は、各スイッチング素子31,32のスイッチング動作のデューティ比を制御するデューティ比調整部40を備えている。デューティ比調整部40は、各スイッチング素子31,32のゲートに接続されており、各スイッチング素子31,32のゲート電圧を制御することにより、デューティ比を制御する。換言すれば、デューティ比調整部40は、各スイッチング素子31,32のゲートに対して予め定められた周期のパルス波を出力するとともに、当該パルス波のパルス幅変調を行うものであるとも言える。
【0032】
次に、各コントローラ15,28にて実行される充電に係る制御について説明する。
車両側コントローラ28は、充電可能な位置に車両が配置された場合、詳細には送電器13(1次側コイル13a)と受電器23(2次側コイル23a)とが磁場共鳴可能な位置に車両が配置された場合、充電可能信号を電源側コントローラ15に送信する。
【0033】
電源側コントローラ15は、充電可能信号を受信した場合に、整合用の高周波電力が出力されるよう高周波電源12(詳細にはDC/DCコンバータ12b)を制御するとともに車両側コントローラ28に対して整合用の高周波電力を伝送することを通知する。当該整合用の高周波電力は、充電を行う場合に出力される充電用の高周波電力よりも電力値が小さいものである。
【0034】
車両側コントローラ28は、電源側コントローラ15から、整合用の高周波電力を伝送する旨の信号を受信すると、整流器24の出力端が調整用抵抗29aに接続されるようにスイッチ29bを切り替える。そして、電源側コントローラ15は、測定器の測定結果に基づいて、反射電力が小さくなるように1次側整合器14の定数(可変コンデンサのキャパシタンス)を調整することにより、インピーダンス整合を行う。
【0035】
その後、電源側コントローラ15は、インピーダンス整合が完了(終了)すると車両側コントローラ28に対して充電用の高周波電力を伝送することを通知し、充電用の高周波電力が出力されるよう高周波電源12を制御する。
【0036】
車両側コントローラ28は、充電用の高周波電力を伝送する旨の信号を電源側コントローラ15から受信すると、整流器24の出力端が充電器25に接続されるようにスイッチ29bを切り替える。これにより、車両用バッテリ22への充電が開始される。
【0037】
ここで、2次側整合器26の定数は、高周波電源12から受電器23の出力端までのインピーダンスと、2次側整合器26の入力端から調整用抵抗29aまでのインピーダンスとが整合するように設定されている。2次側整合器26の入力端から調整用抵抗29aまでのインピーダンスは、充電用の高周波電力を受電した際の2次側整合器26の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスと同一である。このため、充電用の高周波電力が出力され、且つ整流器24の出力端が充電器25に接続されている状況において、2次側整合器26は、整合度合いが高い状態を維持する。
【0038】
検知センサ27は、充電中定期的に車両用バッテリ22の充電量を車両側コントローラ28に送信する。
車両側コントローラ28は、検知センサ27により車両用バッテリ22の充電量が満充電に近づいたことが検知された場合、充電用の高周波電力より小さい電力値の高周波電力(以下、押し込み充電用電力という)を、高周波電源12から送電するよう電源側コントローラ15に対して指示を送る。電源側コントローラ15は、車両側コントローラ28から電力値変更の指示を受信すると、押し込み充電用電力が出力されるように高周波電源12を制御する。
【0039】
また、車両側コントローラ28は、充電用の高周波電力から押し込み充電用電力への変更に関わらず、2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが変動しないようにDC/DCコンバータ30を制御する。詳細には、車両側コントローラ28は、押し込み充電用電力を受電した際の2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが、充電用の高周波電力を受電した際の2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンス(調整用抵抗29aの抵抗値)と同じ値になるようにデューティ比を制御する。
【0040】
車両用バッテリ22の充電が完了(終了)した場合には、車両側コントローラ28は、電源側コントローラ15に充電完了信号(充電終了信号)を出力する。電源側コントローラ15は、充電完了信号を受信した場合に、高周波電力の出力を停止するよう高周波電源12を制御する。
【0041】
本実施形態における非接触電力伝送装置10の作用について以下に説明する。
高周波電源12から出力される高周波電力の電力値が変化した場合、車両用バッテリ22の入力電力の電力値が変化し、車両用バッテリ22のインピーダンスが変化する。この車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に対応させて、2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが一定となるように、各スイッチング素子31,32のスイッチング動作のデューティ比が調整される。これにより、高周波電源12から出力される高周波電力の電力値(受電器23にて受電される高周波電力の電力値)に関わらず、2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスは一定となっている。
【0042】
また、既に説明した通り、高周波電源12の出力インピーダンスと、1次側整合器14の入力インピーダンスとを整合する1次側整合器14が設けられている。これにより、反射電力が低減されている。また、反射電力が小さくなるように1次側整合器14の定数の可変制御が行われることにより、各コイル13a,23aの相対位置が基準位置からずれている場合であっても、高い整合度合いを維持することができる。
【0043】
なお、各コイル13a,23aの相対位置とは、各コイル13a,23a間の距離だけでなく、各コイル13a,23aの軸線方向、各コイル13a,23aの重ね合わせの態様等が含まれている。各コイル13a,23aの重ね合わせの態様とは、例えば送電器13及び受電器23が上下方向に配置される構成においては、上方から見た場合の1次側コイル13a及び2次側コイル23aの位置ずれ等が考えられる。
【0044】
また、1次側整合器14の定数の可変制御を行う場合には、整流器24は調整用抵抗29aに接続されている。これにより、1次側整合器14の定数の可変制御の際に、車両用バッテリ22のインピーダンスの変動を考慮する必要がない。
【0045】
さらに、1次側整合器14の定数の可変制御を行う場合には、充電用の高周波電力よりも電力値が小さい整合用の高周波電力が高周波電源12から出力されている。このため、1次側整合器14の整合に要する電力損失が低減されている。
【0046】
また、1次側整合器14の定数の可変制御が終了した後は、スイッチ29bの切り替えが行われるとともに、充電用の高周波電力が出力される。この場合、調整用抵抗29aの抵抗値は、充電用の高周波電力を受電した際の充電器25の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスと同一に設定されているため、スイッチ29bの切り替えの前後で、整流器24の出力端以降のインピーダンスが変動しないようになっている。これにより、スイッチ29bの切り替えが行われた場合であっても、各整合器14,26の整合度合いは低下しないようになっている。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)高周波電源12から出力される高周波電力の電力値の変化に伴う車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に対応させて、充電器25のDC/DCコンバータ30における各スイッチング素子31,32のスイッチング動作のデューティ比を調整する構成とした。具体的には、2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが一定となるように、デューティ比を調整する構成とした。これにより、2次側整合器26が、車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に追従する必要がない。よって、2次側整合器26の構成の簡素化を図ることができる。また、2次側整合器26の可変制御よりも比較的な簡素な制御であるデューティ比制御で、車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に追従するため、制御の簡素化を図ることができる。
【0048】
(2)特に、車両用バッテリ22は、携帯電話のバッテリ等と比較して大きな充電容量が要求される。このため、2次側整合器26には、高耐圧のキャパシタンス等が要求される。このような高耐圧のキャパシタンス等を有する素子は、現実的ではない場合があったり、非常にコストが高くなったりする場合がある。さらに、上記のような素子は大型になり易いため、設置スペースを確保しにくい。
【0049】
これに対して、本実施形態によれば、デューティ比を調整することにより車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に追従する構成を採用したため、上記のような素子を設ける必要がない。これにより、上記のような不都合を回避することができる。
【0050】
(3)1次側整合器14の定数の可変制御を行う場合には、整流器24の出力端を調整用抵抗29aに接続する構成とした。これにより、1次側整合器14の定数の可変制御において、車両用バッテリ22のインピーダンスの変動を考慮する必要がない分だけ、1次側整合器14の定数の可変制御を容易に実行することができる。
【0051】
(4)整流器24の出力端の接続先を調整用抵抗29aから充電器25に切り替えるのに伴って、高周波電源12の出力電力を、整合用の高周波電力から充電用の高周波電力に変更した。かかる構成において、調整用抵抗29aの抵抗値を、充電用の高周波電力を受電した際の充電器25の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスと同一に設定した。これにより、接続先の切り替えの前後で、整流器24の出力端以降のインピーダンスが変動しないようになっている。よって、整合と充電とを異なる電力値で実行する構成において、各整合器14,26の整合度合いの低下を抑制することができる。
【0052】
(5)各スイッチング素子31,32を有するDC/DCコンバータ30は、整流器24から出力される直流電力の電圧を、車両用バッテリ22に適した電圧に変換するものである。つまり、車両用バッテリ22を充電するためのDC/DCコンバータ30を用いて、車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に追従させることが可能となっている。これにより、既存の構成を流用することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、DC/DCコンバータ30は、2つのスイッチング素子31,32を備えていたが、これに限られず、第2スイッチング素子32を省略してもよい。この場合、第2スイッチング素子32に代えて、ダイオードを設ければよい。
【0054】
また、充電器25のDC/DCコンバータ30として降圧型のものを採用したが、これに限られず昇圧型のものであってもよい。要は、少なくとも1のスイッチング素子を有し、そのスイッチング素子におけるスイッチング動作のデューティ比に基づいて電圧を可変させるものであればよい。
【0055】
○ 車両用バッテリ22のインピーダンスが変化すると、車両用バッテリ22からの反射電力が変化することに着目すれば、車両用バッテリ22からの反射電力を測定し、その反射電力に基づいてデューティ比を調整する構成としてもよい。
【0056】
○ 実施形態では、地上側機器11及び車両側機器21に、1つずつ整合器(1次側整合器14及び2次側整合器26)を設けたが、これに限られず、例えば地上側機器11に2つの整合器を設けたり、車両側機器21に2つの整合器を設けたりしてもよく、地上側機器11及び車両側機器21双方に2つずつ整合器を設ける構成としてもよい。この場合、地上側機器11における送電器13側の整合器の定数を、送電器13からの反射電力が小さくなるように調整し、車両側機器21における受電器23側の整合器の定数を、車両用バッテリ22から受電器23への反射電力が小さくなるように調整する。そして、地上側機器11における高周波電源12側の整合器の定数を、力率を改善させるように調整し、車両側機器21における車両用バッテリ22側の整合器の定数を、車両用バッテリ22からの反射電力が小さくなるように調整する。かかる構成であっても、デューティ比を調整することにより、車両側機器21における車両用バッテリ22側の整合器を固定のインピーダンスの整合器とすることができる。
【0057】
○ 実施形態では、デューティ比を調整することを通じて、2次側整合器26の出力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスを一定にする制御を、高周波電源12から出力される高周波電力の電力値の変更を契機として実行する構成であったが、これに限られない。例えば、車両用バッテリ22の充電中定期的に車両用バッテリ22の充電量を検知し、その検知結果に基づいて車両用バッテリ22のインピーダンスを推定し、そのインピーダンスに基づいてデューティ比を調整する構成としてもよい。これにより、車両用バッテリ22の充電量の変化に伴う車両用バッテリ22のインピーダンスの変化に追従することができる。
【0058】
○ 1次側整合器14によるインピーダンス整合は、反射電力を測定し、その測定結果に基づいて行うものに限られず、例えば、1次側整合器14の入力端から調整用抵抗29aまでのインピーダンスを直接測定し、その測定結果に基づいて行う構成でもよい。
【0059】
○ また、1次側整合器14の定数は、所望の出力電力が得られるように調整してもよいし、力率が改善されるように調整してもよい。
○ 実施形態では、2次側整合器26の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが一定となるようにデューティ比が設定されている構成であったが、これに限られない。例えば、2次側整合器26の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスが予め定められた許容範囲内に収まる範囲内で、車両用バッテリ22に入力される直流電力が大きくなるようにデューティ比を調整してもよい。これにより、インピーダンス整合と、車両用バッテリ22の充電の高速化との両立を図ることができる。但し、反射電力に起因する電力損失等に鑑みれば、一定となるようにデューティ比を調整する方が好ましい。
【0060】
○ 実施形態では、スイッチング動作のデューティ比を調整する対象がDC/DCコンバータ30の各スイッチング素子31,32であったが、これに限られない。要は、スイッチング素子を有するとともに、そのスイッチング素子のスイッチング動作のデューティ比を調整することにより、インピーダンスが変化する回路を設ければよい。
【0061】
○ 送電器13に、1次側コイル13a及び1次側コンデンサ13bからなる共振回路と電磁誘導で結合する1次側誘導コイルを別途設けてもよい。この場合、1次側誘導コイルと高周波電源12とを接続し、上記共振回路は、上記1次側誘導コイルから電磁誘導によって高周波電力を受ける構成とする。同様に、受電器23に、2次側コイル23a及び2次側コンデンサ23bからなる共振回路と電磁誘導で結合する2次側誘導コイルを設け、2次側誘導コイルを用いて受電器23の共振回路から電力を取り出してもよい。
【0062】
○ 高周波電源12から出力される高周波電力の波形としては正弦波に限られず、例えばパルス波であってもよい。
○ 実施形態では、各コンデンサ13b,23bを設けたが、これらを省略してもよい。この場合、各コイル13a,23aの寄生容量を用いて磁場共鳴させる構成とするとよい。
【0063】
○ 実施形態では、非接触の電力伝送を実現させるために磁場共鳴を用いたが、これに限られず、電磁誘導を用いてもよい。
○ 実施形態では、地上側機器11は地上に設けられている構成としたが、これに限られず、車両を充電することが可能な位置に設けられていればよい。例えば、駐車スペースに車庫が設けられている場合には、車庫の壁部に設けられている構成としてもよい。
【0064】
○ 実施形態では、車両に車両側機器21が搭載されていたが、これに限られず、携帯電話等の他の機器に搭載されている構成であってもよい。
○ 実施形態では、受電器23にて受電した高周波電力は車両用バッテリ22を充電するのに用いたが、これに限られず、例えば、車両に設けられた他の電子機器等を駆動させるのに用いてもよい。要は、受電器23(2次側コイル23a)と、状況に応じてインピーダンスが変動する負荷とが接続されており、その間にDC/DCコンバータ30が設けられていればよい。
【0065】
○ 整流器24の入力端から車両用バッテリ22までの間に、整流器24の入力端から車両用バッテリ22までのインピーダンスの虚部成分が「0」に近づくように設定されたキャパシタ又はインダクタを別途設けてもよい。
【0066】
○ 実施形態では、車両側コントローラ28が、充電用の高周波電力から押し込み充電用電力への変更に係る指示を出す構成であったが、これに限られず、電源側コントローラ15が直接上記変更を行う構成であってもよい。この場合、車両側コントローラ28が定期的に車両用バッテリ22の充電量を電源側コントローラ15に送信することにより、電源側コントローラ15が車両用バッテリ22の充電量を把握可能に構成するとよい。
【0067】
○ 実施形態では、調整用抵抗29a及びスイッチ29bは、整流器24の後段に設けられていたが、これに限られず、整流器24の前段に設けてもよい。この場合、調整用抵抗29aの抵抗値を、充電用の高周波電力を受電した際の整流器24の入力端(2次側整合器26の出力端)から車両用バッテリ22までのインピーダンスと同一に設定するとよい。かかる構成によれば、受電器23が受電した整合用の高周波電力の電圧が整流器24が動作可能な電圧よりも低い場合であっても、各整合器14,26の定数の可変制御を行うことができる。
【0068】
○ 実施形態では、高周波電源12が設けられていたが、これを省略してもよい。この場合、系統電源と1次側整合器14とを接続する。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術思想について以下に記載する。
【0070】
(ロ)交流電力が入力される1次側コイルを有する送電機器から非接触で前記交流電力を受電可能な2次側コイルを有する受電機器において、
前記2次側コイルにて受電された交流電力が入力される負荷と、
前記2次側コイルと前記負荷との間に設けられ、予め定められた固定インダクタンス及び固定キャパシタンスを有する整合手段と、
所定の周期でスイッチング動作するスイッチング素子を有し、前記負荷のインピーダンスに応じて前記スイッチング動作のデューティ比を調整する調整手段と、
を備えていることを特徴とする受電機器。
【符号の説明】
【0071】
10…非接触電力伝送装置、11…地上側機器、12…高周波電源、13…送電器、13a…1次側コイル、14…1次側整合器、15…電源側コントローラ、21…車両側機器(受電機器)、22…車両用バッテリ、23…受電器、23a…2次側コイル、25…充電器、26…2次側整合器、27…検知センサ、28…車両側コントローラ、29a…調整用抵抗、29b…スイッチ、30…DC/DCコンバータ、31,32…スイッチング素子、40…デューティ比調整部。
図1