(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089493
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】濃度測定装置及び濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20170227BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/39
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-181594(P2012-181594)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-38063(P2014-38063A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】大海 聡一郎
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−077606(JP,A)
【文献】
特開平05−005698(JP,A)
【文献】
特開2010−286854(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0064748(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0095579(US,A1)
【文献】
特開2008−026190(JP,A)
【文献】
特開平09−146136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G02F 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光としてのレーザ光を発生するレーザ光源と、
光パラメトリック発振によって前記励起光から、測定対象物に対するオン波長のプローブ光及びオフ波長の参照光を同時に発生するプローブ光発生部と、
前記プローブ光発生部から出射した前記プローブ光を一方及び他方のプローブ光に分岐させると共に前記参照光を一方及び他方の参照光に分岐させるビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって分岐した前記一方のプローブ光及び前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した前記他方のプローブ光と、前記ビームスプリッタによって分岐した前記一方の参照光及び前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した前記他方の参照光とをそれぞれ別の光路に分離する光分離部と、
前記光分離部によって分離された前記一方及び他方のプローブ光を検出する第1の光検出器と、
前記光分離部によって分離された前記一方及び他方の参照光を検出する第2の光検出器と、
前記第1及び第2の各光検出器によって検出された前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の各検出信号に基づきプローブ光及び参照光の各透過率を算出し、前記各透過率から前記測定対象物の濃度を算出する濃度算出部と
を備えることを特徴とする濃度測定装置。
【請求項2】
前記濃度算出部は、前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の前記各検出信号を時間分解しながら受信することを特徴とする請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記プローブ光発生部は、前記波長変換を行う光学素子として、第2種の位相整合が得られる非線形光学結晶を有し、
前記光分離部は偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記光分離部は、前記プローブ光及び前記参照光の各波長間にカットオフ波長をもつダイクロイックミラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項5】
励起光としてのレーザ光を発生するレーザ光源と、
光パラメトリック発振によって前記励起光から、測定対象物に対するオン波長のプローブ光及びオフ波長の参照光を同時に発生するプローブ光発生部と、
前記プローブ光発生部から出射した前記プローブ光を一方及び他方のプローブ光に分岐させると共に前記参照光を一方及び他方の参照光に分岐させるビームスプリッタと、
前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した、前記一方のプローブ光及び前記一方の参照光をそれぞれ別の光路に分離する第1の光分離部と、
前記ビームスプリッタによって分岐した、前記他方のプローブ光及び前記他方の参照光をそれぞれ別の光路に分離する第2の光分離部と、
前記第1の光分離部によって分離された前記一方のプローブ光を検出する第1の光検出器と、
前記第1の光分離部によって分離された前記一方の参照光を検出する第2の光検出器と、
前記第2の光分離部によって分離された前記他方のプローブ光を検出する第3の光検出器と、
前記第2の光分離部によって分離された前記他方の参照光を検出する第4の光検出器と、
前記第1から前記第4の各光検出器によって検出された前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の各検出信号に基づきプローブ光及び参照光の各透過率を算出し、前記各透過率から前記測定対象物の濃度を算出する濃度算出部と
を備えることを特徴とする濃度測定装置。
【請求項6】
前記濃度算出部は、前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の前記各検出信号を時間分解しながら受信することを特徴とする請求項5に記載の濃度測定装置。
【請求項7】
前記プローブ光発生部は、前記波長変換を行う光学素子として、第2種の位相整合が得られる非線形光学結晶を有し、
前記第1及び第2の光分離部は偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項5または6に記載の濃度測定装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の光分離部は、前記プローブ光及び前記参照光の各波長間にカットオフ波長をもつダイクロイックミラーであることを特徴とする請求項5または6に記載の濃度測定装置。
【請求項9】
励起光としてのレーザ光を発生し、
光パラメトリック発振によって前記励起光から、測定対象物に対するオン波長のプローブ光及びオフ波長の参照光を同時に発生し、
前記プローブ光を一方及び他方のプローブ光に分岐し且つ前記参照光を一方及び他方の参照光に分岐し、
前記分岐後に前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した前記一方のプローブ光及び前記一方の参照光をそれぞれ別の光路に分離し、
前記一方及び他方のプローブ光を検出し、
前記一方及び他方の参照光を検出し、
検出された前記一方及び他方のプローブ光及び前記一方及び他方の参照光からプローブ光及び参照光の各透過率を算出し、
前記各透過率から前記測定対象物の濃度を算出する
ことを特徴とする濃度測定方法。
【請求項10】
前記一方及び他方のプローブ光は時間分解しながら検出され、前記一方及び他方の参照光も時間分解しながら検出されることを特徴とする請求項9に記載の濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いた差分吸収法により物質の濃度を測定する濃度測定装置及び濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素ガスやメタンガス等の測定対象物の濃度を測定する方法の1つとして、レーザ光を用いた差分吸収法が知られている。この方法では、測定対象物で吸収される波長(即ち、オン波長)と測定対象物で吸収されない波長(即ち、オフ波長)の各透過率を基に測定対象物の濃度を算出する。通常は回折格子やエタロン等で構成された波長切替機構を用いて、オン波長とオフ波長の光を交互に測定対象物に照射している。特許文献1乃至特許文献4は、上記の差分吸収法を用いた濃度測定装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−50894号公報
【特許文献2】特開平10−185804号公報
【特許文献3】特開2011−21996号公報
【特許文献4】特開2001−159604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の濃度測定方法では、オン波長の光の照射とオフ波長の光の照射を交互に切り替えており、各光の照射時刻にはズレが生じている。従って、測定対象物の状態の変化が早い場合は、基準となるオフ波長の透過率が各照射時刻で異なっている可能性があり、算出した濃度の信頼性が低下する恐れがある。また、波長切替機構は波長の切り替えを機械的に行っているので構造が複雑であり、各部品に対して高い加工精度や組立精度も要求される。その結果、製造コストが嵩む問題がある。
【0005】
このような事情を鑑み、本発明は、測定対象物の状態変化に影響されず、且つ、簡便な構成で当該測定対象物の濃度を精度良く測定できる濃度測定装置及び濃度測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は濃度測定装置であって、 励起光としてのレーザ光を発生するレーザ光源と、光パラメトリック発振によって前記励起光から、測定対象物に対するオン波長のプローブ光及びオフ波長の参照光を同時に発生するプローブ光発生部と、
前記プローブ光発生部から出射した前記プローブ光を一方及び他方のプローブ光に分岐させると共に前記参照光を一方及び他方の参照光に分岐させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタによって分岐した前記一方のプローブ光及び前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した前記
他方のプローブ光
と、前記ビームスプリッタによって分岐した前記一方の参照光及び前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した前記
他方の参照光
とをそれぞれ別の光路に分離する光分離部と、前記光分離部によって分離された前記
一方及び他方のプローブ光を検出する第1の光検出器と、前記光分離部によって分離された前記
一方及び他方の参照光を検出する第2の光検出器と、前記第1及び第2の各光検出器によって検出された
前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の各検出信号に基づきプローブ光及び参照光の各透過率
を算出し、前記各透過率から前記測定対象物の濃度を算出する濃度算出部とを備えることを要旨とする。
【0007】
前記第1の態様において、前記濃度算出部は、前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の前記各検出信号を時間分解しながら受信してもよい。前記プローブ光発生部は、前記波長変換を行う光学素子として、第2種の位相整合をとる非線形光学結晶を有してもよく、前記光分離部は偏光ビームスプリッタであってもよい。
前記光分離部は、前記プローブ光及び前記参照光の各波長間にカットオフ波長をもつダイクロイックミラーであってもよい。
【0008】
本発明の第2の態様は濃度測定装置であって、励起光としてのレーザ光を発生するレーザ光源と、光パラメトリック発振によって前記励起光から、測定対象物に対するオン波長のプローブ光及びオフ波長の参照光を同時に発生するプローブ光発生部と、前記プローブ光発生部から出射した前記プローブ光を一方及び他方のプローブ光に分岐させると共に前記参照光を一方及び他方の参照光に分岐させるビームスプリッタと、前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した、前記一方のプローブ光及び前記一方の参照光をそれぞれ別の光路に分離する第1の光分離部と、前記ビームスプリッタによって分岐した、前記他方のプローブ光及び前記他方の参照光をそれぞれ別の光路に分離する第2の光分離部と、前記第1の光分離部によって分離された前記一方のプローブ光を検出する第1の光検出器と、前記第1の光分離部によって分離された前記一方の参照光を検出する第2の光検出器と、前記第2の光分離部によって分離された前記他方のプローブ光を検出する第3の光検出器と、前記第2の光分離部によって分離された前記他方の参照光を検出する第4の光検出器と、前記第1から前記第4の各光検出器によって検出された前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の各検出信号に基づきプローブ光及び参照光の各透過率を算出し、前記各透過率から前記測定対象物の濃度を算出する濃度算出部とを備えることを要旨とする。
前記第2の態様において、前記濃度算出部は、前記一方及び他方のプローブ光並びに前記一方及び他方の参照光の前記各検出信号を時間分解しながら受信してもよい。前記プローブ光発生部は、前記波長変換を行う光学素子として、第2種の位相整合が得られる非線形光学結晶を有してもよく、前記第1及び第2の光分離部は偏光ビームスプリッタであってもよい。前記第1及び第2の光分離部は、前記プローブ光及び前記参照光の各波長間にカットオフ波長をもつダイクロイックミラーであってもよい。
【0009】
本発明の第
3の態様は濃度測定方法であって、励起光としてのレーザ光を発生し、光パラメトリック発振によって前記励起光から、測定対象物に対するオン波長のプローブ光及びオフ波長の参照光を同時に発生し、
前記プローブ光を一方及び他方のプローブ光に分岐し且つ前記参照光を一方及び他方の参照光に分岐し、前記分岐後に前記測定対象物を透過した又は前記測定対象物から反射した前記
一方のプローブ光及び前記
一方の参照光をそれぞれ別の光路に分離し、前記
一方及び他方のプローブ光
を検出し、前記
一方及び他方の参照光を検出し、検出された前記
一方及び他方のプローブ光及び前記
一方及び他方の参照光
からプローブ光及び参照光の各透過率
を算出し、前記各透過率から前記測定対象物の濃度を算出することを要旨とする。
前記第3の態様において、前記一方及び他方のプローブ光は時間分解しながら検出され、前記一方及び他方の参照光も時間分解しながら検出されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定対象物の状態変化に影響されず、且つ、簡便な構成で当該測定対象物の濃度を精度良く測定できる濃度測定装置及び濃度測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプローブ光発生部の構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプローブ光及び参照光の各波長と、測定対象物の吸収線の波長との関係を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る濃度測定方法によって得られる測定結果の一例である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
図2は、本実施形態に係るプローブ光発生部の構成図である。
図3は、本実施形態に係るプローブ光及び参照光の各波長と、測定対象物の吸収線の波長との関係を示す模式図である。
図4は、本実施形態に係る濃度測定方法によって得られる測定結果の一例である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の濃度測定装置は、レーザ光源22と、プローブ光発生部24と、ビームスプリッタM1と、光分離部M2と、4台の光検出器25、26、27、28と、濃度算出部29とを備える。
【0015】
レーザ光源22は、後段のプローブ光発生部24に入力される励起光(ポンプ光)23としてのレーザ光を発生する。レーザ光の波長や発振モード(パルス発振又は連続発振)は、プローブ光発生部24における波長変換の仕様(変換方法、出力波長など)に応じて選定する。本実施形態では、パルスレーザ光源であるNd:YAGレーザを使用する。Nd:YAGレーザは、基本波である1064nmのパルスレーザ光を、数ns〜数十nsのパルス幅、且つ、10Hz〜数kHzの繰り返し周波数で出力する。
【0016】
プローブ光発生部24は、励起光23の波長変換によって、測定対象物Sに対するオン波長のプローブ光10及びオフ波長の参照光12を発生する。吸収の感度を高める観点からは、
図3に示すように、プローブ光10の波長λonが測定対象物Sの吸収線14の波長に一致していることが好ましい。しかしながら、少なくとも吸収線14の波長が、プローブ光10の線幅内に含まれていれば吸収を確認することは可能である。
【0017】
図2に示すように、プローブ光発生部24は、光軸(光路)20に沿って、反射面を対向させるように配置された終端鏡32と出力鏡34とを有する。出力鏡34と終端鏡32との間隔Dは例えば20mmである。更に、終端鏡32と出力鏡34の間の光軸20上には、波長変換を行う光学素子として、非線形光学結晶36が設けられている。後述するように、非線形光学結晶36は、励起光23の光パラメトリック発振によってプローブ光10及び参照光12を発生する。
【0018】
終端鏡32は、励起光23を透過させ、且つ、非線形光学結晶36によって発生したプローブ光10及び参照光12を反射する波長特性を有する。通常、励起光23の波長はプローブ光10及び参照光12の各波長よりも短いので、終端鏡32は所謂ロングパスフィルター(LPF)である。一方、出力鏡34も、終端鏡32と同じく、プローブ光10及び参照光12を反射する波長特性を有する。従って、終端鏡32及び出力鏡34は所謂光共振器を構成する。終端鏡32及び出力鏡34のプローブ光10及び参照光12に対する反射率は50〜99.5%であり、プローブ光10及び参照光12の一部は最終的に出力鏡34から出射する。
【0019】
非線形光学結晶36は、上述したように、励起光23よる光パラメトリック発振によってプローブ光10及び参照光12を発生する。非線形光学結晶36として、例えばKTP結晶が使用される。プローブ光10の波長(オン波長)をλon、参照光12の波長(オフ波長)をλoff、励起光23の波長をλexとすると、非線形光学結晶36は、一般的な特性である(1/λex)=(1/λon)+(1/λoff)の条件を満たす波長変換を行う。本実施形態では、測定対象物が二酸化炭素ガスであるため、オン波長λon及びオフ波長λoffを、例えば2015nm及び2254nmに設定する。なお、これらオン波長λon及びオフ波長λoffは、励起光23の光軸に対する結晶の光学軸の角度を調整することで適宜変更できる。この角度調整は、例えば、非線形光学結晶36を支持する回転ステージ38によって実行可能である。
【0020】
本実施形態の非線形光学結晶36には、第2種の位相整合が得られる結晶(所謂タイプIIの結晶)を用いる。上述のKTP結晶は、この位相整合が得られる結晶である。即ち、非線形光学結晶36から出射したプローブ光10及び参照光12は何れも直線偏光であり、しかも、その偏光方向が互いに直交している。また、非線形光学結晶36におけるプローブ光10及び参照光12の強度比も既知である。
【0021】
ビームスプリッタM1は、出力鏡34から出射したプローブ光10及び参照光12の一部をそれぞれのサンプル光10p、12pとして、後段の光分離部M3に反射すると共に、その残りを透過させる。ビームスプリッタM1の反射率は予め規定されており、後述するように、反射した光の強度を測定することで、ビームスプリッタM1に入射した光の強度を逆算できる。
【0022】
光分離部M3は、ビームスプリッタM1から反射したプローブ光10のサンプル光10p及び参照光12のサンプル光12pをそれぞれ別の光路に分離する。このような機能をもつ光分離部M3は、例えば、偏光ビームスプリッタである。偏光ビームスプリッタは、誘電多層膜を入射面にもち、入射光の偏光方向に応じて当該入射光の透過または反射を行う。本実施形態では、KTP結晶における第2種の位相整合によって、プローブ光10及び参照光12の偏光方向が互いに直交している。偏光方向は、ビームスプリッタM1の反射によって影響されないので、サンプル光10p、12pの各偏光方向も互いに直交している。従って、サンプル光10p、12pが光分離部M3に入射すると、一方は反射し、他方は透過する。
図1の光分離部M3はプローブ光10のサンプル光10pを反射し、参照光12のサンプル光12pを透過させているが、この反対に、プローブ光10を透過させ、参照光12を反射してもよい。
【0023】
光分離部M3から分岐した各光路には、光検出器25、26がそれぞれ設けられている。光検出器25は、光分離部M3によって反射したプローブ光10のサンプル光10pを検出し、その強度に比例した電圧の電気信号を検出信号として出力する。一方、光検出器26は、光分離部M3を透過した参照光12のサンプル光12pを検出し、その強度に比例した電圧の電気信号を検出信号として出力する。上述したように、ビームスプリッタM1の反射率は予め規定されている。従って、光検出部25、26で検出したサンプル光10p、12pの各強度から、出力鏡34から出射した直後のプローブ光10及び参照光12の各強度を逆算できる。なお、光検出部25、26は周知の半導体検出器である。
【0024】
光分離部M2は、測定対象物Sを透過した又は測定対象物Sから反射したプローブ光10及び参照光12をそれぞれ別の光路に分離する。このような機能をもつ光分離部M2は、例えば、偏光ビームスプリッタである。上述したように、入射したプローブ項10及び参照光12のうちの一方を反射し、他方を透過させる。
図1の光分離部M2はプローブ光10を反射し、参照光12を透過させているが、この反対に、プローブ光10を透過させ、参照光12を反射してもよい。なお、光分離部M2の前段にはプローブ光10を光検出器27に集光すると共に、参照光12を光検出器28に集光するためのレンズ等の光学系(図示せず)が設けられている。
【0025】
光検出器(第1の光検出器)27は、光分離部M2によって反射したプローブ光10を検出し、光検出器(第2の光検出器)28は、光分離部M2を透過した参照光12を検出する。光検出器27及び光検出器28は、光検出器25、26と同じく、周知の半導体検出器であり、検出した光の強度に比例した電圧の電気信号を検出信号として出力する。
【0026】
濃度算出部29は、濃度測定装置の全体を制御する制御部(図示せず)の一部として構成され、各光検出器25〜28から出力されたプローブ光10、参照光12、及びこれらのサンプル光10p、12pの各検出信号を時間分解しながら受信する。プローブ光10及び参照光12の照射は、通常、複数回行われる。濃度算出部29は、照射タイミングに同期して光検出器25、26、27、28からの検出信号を受信し、これらの信号を検出信号毎に積算する。
図4はその測定結果の一例であり、光検出器25又は光検出器26によって検出されたプローブ光10のサンプル光10p又は参照光12のサンプル光12pの検出信号のピークをP1、光検出器27によって検出されたプローブ光10の検出信号のピークをP2、光検出器28によって検出された参照光12の検出信号のピークをP3で示す。この図に示すように、時刻t1に光検出器25または光検出器26からの検出信号が得られるとすると、光検出器27、28からの各信号は測定対象物Sを経由した光路差によって、時刻t1よりも遅い時刻t2に受信される。時刻t1と時刻t2の時間差は、濃度測定装置と測定対象物S間の往復距離に比例する。従って、測定対象物Sが濃度測定装置から非常に遠方にあるほど、サンプル光10p、12pからプローブ光10及び参照光12を分離することが容易になる。
【0027】
濃度算出部29は、これらの信号からプローブ光10及び参照光12の各透過率を算出し、これらの透過率から測定対象物Sの濃度を算出する。具体的には、濃度算出部29は、光検出器26と光検出器28によって得られた参照光12とそのサンプル光12pの強度比から、測定対象物Sにおける参照光12の透過率(第1の透過率)を算出する。さらに、光検出器25と光検出器27によって得られたプローブ光10とそのサンプル光10pの強度比から、測定対象物Sにおけるプローブ光10の透過率(第2の透過率)を算出する。第2の透過率は第1の透過率に、測定対象物Sへの吸収による透過率(第3の透過率)を乗じたものであるので、濃度算出部29は、第1の透過率を用いて、第2の透過率から第3の透過率を逆算し、第3の透過率から測定対象物Sの濃度を算出する。
【0028】
このように本実施形態の濃度測定では、測定対象物Sにオン波長のプローブ光と、オフ波長の参照光とを同時に照射する。従って、従来のようにプローブ光の照射と参照光の照射を切り替える機構が不要になる。従って、装置の構成が簡便なものになる。また、上記2種類の光を同時に照射しているので、測定対象物の状態変化に伴った濃度の誤差が発生しない。すなわち、測定対象物の濃度を精度良く測定できる。
【0029】
なお、本実施形態の光分離部M2はダイクロイックミラーでもよい。このダイクロイックミラーは、プローブ光10及び参照光12の各波長λon、λoff間にカットオフ波長をもつ。ダイクロイックミラーはプローブ光10及び参照光12のうちの一方を反射し、他方を透過させる。光検出器27はこれらの光の何れか一方を検出し、光検出器28はその他方を検出する。従って、偏光ビームスプリッタを使用した場合と同じく、
図4に示すような測定結果が得られる。さらに、プローブ光10及び参照光12の分離にダイクロイックミラーを用いる場合、非線形光学結晶36で発生するプローブ光10及び参照光12の各偏光状態はこれらの分離に無関係になる。従って、非線形光学結晶36は、第2種の位相整合が得られる結晶に限られず、BBOなどの第1種の位相整合が得られる結晶を用いることができる。
【0030】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を
図5に基づいて詳細に説明する。なお、
図5において、
図1乃至
図4と共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図5は、第2実施形態に係る濃度測定装置の構成図である。
【0031】
本実施形態の濃度測定装置では、ビームスプリッタM1によって取り出されたサンプル光10p、12pを、測定対象物Sを通過したプローブ光10及び参照光12の光路に戻している。つまり、本実施形態では、第1実施形態の光検出器25、26が省略され、光検出器27がプローブ光10の検出だけでなく、そのサンプル光10pの検出も行う。同様に、光検出器28は、参照光12とそのサンプル光12pを検出する。
【0032】
従って、測定対象物Sからのプローブ光10及び参照光12を集光する光学系(図示せず)と、光分離部M2との間には、光路合流部M4が設けられる。光路合流部M4は、例えばハーフミラーであり、ビームスプリッタM1によって取り出されたサンプル光10p、12pの光路と、測定対象物Sから到達したプローブ光10及び参照光12の光路を合流させ、これらの光を光分離部M2に導くものである。
【0033】
上記以外の構成については、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0034】
第2実施形態の濃度測定装置は、同一の光から派生した2つの光を同一の検出器が検出する。従って、使用する光検出器の個数が削減できると共に、濃度算出における検出器の個体差(検出効率の差など)による影響を低減できる。また、本実施形態でも、第1実施形態と同じ効果が得られる。例えば、本実施形態においても、測定対象物Sにオン波長のプローブ光と、オフ波長の参照光とが同時に照射され、従来のようにプローブ光の照射と参照光の照射を切り替える機構が不要になる。従って、装置の構成が簡便なものになる。また、上記2種類の光を同時に照射しているので、測定対象物の状態変化に伴った濃度の誤差が発生しない。すなわち、測定対象物の濃度を精度良く測定できる。
【0035】
本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0036】
10…プローブ光、10p…プローブ光のサンプル光、12…参照光、12p…参照光のサンプル光、14…吸収線、20…光軸、22…レーザ光源、23…励起光、24…プローブ光発生部、25,26,27,28…光検出器、29…濃度算出部、32…終端鏡、34…出力鏡、36…非線形光学結晶、38…回転ステージ