(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、転がり軸受等によりロータのシャフトを軸支していたところ、近年では、回転機(電動機)の高出力化および高速化に伴い、非接触式の軸受が採用されるようになってきた。そうすると、従来では、特許文献1のように、潤滑油等によって軸受を冷却できたが、非接触式の軸受では潤滑油を利用できないので、軸受の温度が上昇してしまうといった問題が生じる。特に、近年では、高出力化や高速化に加え、回転機自体の小型化も望まれ、軸受にかかるエネルギー密度も極めて高くなっており、軸受の高効率な冷却が希求される。
【0006】
また、非接触式の軸受を冷却しようとすると、気体の冷却媒体を軸受に送り込み、さらに、軸受を冷却した後に冷却媒体を排出する機構、例えば、ファンによる冷却媒体の強制流動機構を要し、コストが増加する傾向にあった。
【0007】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、低コストで、効率良く回転機の軸受を冷却可能な回転機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の回転機は、環状のステータと、ステータの環の中に挿入されるロータと、ロータのシャフトを回転自在に軸支し、ロータのラジアル方向の荷重を受けるラジアル軸受と、ロータのシャフトと一体形成され、シャフトより径の大きい円盤状のスラストカラーと、スラストカラーを通じてロータのスラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受と、を備え、シャフトとスラストカラーには、シャフトのラジアル軸受に面した部位およびスラストカラーのスラスト軸受に面した部位の内部を通り、シャフト
の外周面とスラストカラーの外周面とを連通する連通孔が設けられ
、連通孔は、スラストカラーの回転により生じる媒体の流れに対して、シャフトの連通孔から排出する媒体の流れが鋭角となるように形成されることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の他の回転機は、環状のステータと、ステータの環の中に挿入されるロータと、ロータのシャフトを回転自在に軸支し、ロータのラジアル方向の荷重を受けるラジアル軸受と、ロータのシャフトと一体形成され、シャフトより径の大きい円盤状のスラストカラーと、スラストカラーを通じてロータのスラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受と、を備え、シャフトとスラストカラーには、シャフトのラジアル軸受に面した部位およびスラストカラーのスラスト軸受に面した部位の内部を通り、シャフトの外周面とスラストカラーの外周面とを連通する連通孔が設けられ、連通孔は、シャフトの回転により生じる媒体の流れに対して、シャフトの連通孔に流入する媒体の流れが鋭角となるように形成されることを特徴とする。
【0009】
連通孔のシャフト外周面側の開口部は、ロータの回転雰囲気と連通していてもよい。
【0010】
回転機は、ステータを外周側から冷却する冷却部と、スラストカラー外周面側の開口部から排出された冷却媒体と冷却部の媒体とを熱交換させ、熱交換後の冷却媒体をロータの回転雰囲気に環流させる連通孔と、をさらに備えていてもよい。
【0011】
連通孔のシャフト外周面側の開口部は、ロータの回転雰囲気と断絶した空間に連通していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低コストで、効率良く回転機の軸受を冷却することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
回転機は、特定の軸を中心として回転する機械であり、本実施形態は、特に、磁力を通じて電気エネルギーを回転エネルギーに変換する電動機、および、磁力を通じて回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を含む。ここでは、理解を容易にするため、回転機として電動機1を挙げて説明するが、発電機についても電動機1同様に効果が生じるのは言うまでもない。
【0016】
(電動機1)
図1は、電動機1の回転軸を含む断面図であり、
図2は、ラジアル軸受16の回転軸に垂直な断面図である。
図1に示すように、電動機1は、筐体10と、ステータ(固定子)12と、ロータ(回転子)14と、ラジアル軸受16と、スラストカラー18と、スラスト軸受20とを含んで構成される。
【0017】
筐体10は、円筒状に形成され電動機1の外観を構成する。ステータ12は、筐体10内側で筐体10内面に沿って環状に複数配されたコア12aそれぞれにコイル12bを巻回して形成される。ロータ14は、シャフト14aに固定されたコア14bにコイル14cを巻回して形成され、ステータ12の環の中に挿入される。ロータ14の外周面とステータ12の内周面との間には、0.5〜1mm程度の隙間(エアギャップ)が設けられている。
【0018】
ラジアル軸受16は、ロータ14を、シャフト14aを通じて回転自在に軸支し、ロータ14のラジアル方向の荷重を受ける。具体的に、
図2に示すように、ラジアル軸受16には環状部材16a内面に沿って、薄い金属板で形成された、バンプフォイル16bおよびトップフォイル16cとからなるフォイルが形成され、トップフォイル16cがロータ14のシャフト14a外周面と対向する。
【0019】
図1に戻り、スラストカラー18は、円盤形状であり、ロータ14のシャフト14aと一体的に形成される。ただし、スラストカラー18は、別部材としてもよく、シャフト14aに固定されれば足りる。かかる円盤形状は、中心軸が重心となれば、その外形を様々な形状に形成することができる。また、円盤の半径や厚さも任意に設定でき、円柱形状も円盤に含む。
【0020】
スラスト軸受20は、スラストカラー18を狭入するように形成され、スラストカラー18を通じてロータ14のスラスト方向の荷重を受ける。ここでは、図示を省略するが、スラスト軸受20にもラジアル軸受16同様、フォイルが形成されている。また、
図1では、隙間があることを示すため、スラストカラー18とスラスト軸受20またはシャフト14aとラジアル軸受16の離間距離を比較的長く表しているが、実際には数ミクロン程度しか離れていない。また、本実施形態の電動機1の両軸受16、20は、非接触式を想定しているので、その隙間に潤滑油等の特別な液体は介在していない。
【0021】
(軸受の冷却構造)
図3は、軸受の冷却構造の比較例を説明した説明図である。上述したラジアル軸受16やスラスト軸受20では、ロータ14の回転に伴って熱が生じる。例えば、ラジアル軸受16においては、シャフト14aの回転に伴って、シャフト14aとトップフォイル16cとの微小な隙間で空気層のせん断が発生して熱が生じる。また、スラスト軸受20においても、スラストカラー18の回転に伴って、スラストカラー18とスラスト軸受20のフォイルとの微小な隙間で発熱する。
【0022】
フォイルの軸受本体側は、フォイルとその間の空気が断熱機能を果たしてしまい、上記のせん断によって発生した熱が滞ってしまう。そこで、従来、
図3に示すように、電動機の外部からファン28等の駆動源を通じて、X軸方向に向かって気体の冷却媒体を強制的に送風し、冷却媒体は、
図3中実線矢印で示すように、X軸後方のラジアル軸受16とシャフト14aとの隙間、回転空間30、X軸前方のラジアル軸受16とシャフト14aとの隙間、スラスト軸受20とスラストカラー18との隙間を順次通過して、再び、外部に排出される。こうして、冷却媒体を通じて、各軸受に生じる熱が外部に放出されることとなる。
【0023】
しかし、
図3の例では、ファン28等を用いて冷却媒体を電動機内に強制的かつ定常的に流入させなくてはならず、ファン28やその設置具のコストがかかり、占有体積も大きくなる。そこで、本実施形態では、
図1に示すように、シャフト14aの外周面とスラストカラー18の外周面とに開口部22a、22bを形成し、それぞれをシャフト14aとスラストカラー18内部に設けた連通部22cを通じて連通した連通孔22を設けることとする。また、連通孔22は、シャフト14aのラジアル軸受16に面した部位およびスラストカラー18のスラスト軸受20に面した部位の内部を通る。
【0024】
図4は、シャフト14aとスラストカラー18を抜粋した斜視図であり、
図5は、連通孔の他の構成を説明するための断面図である。
図4を参照すると、シャフト14aでは、X軸を中心とした外周の周方向に等間隔に開口部22aが配されている。また、スラストカラー18においてもX軸を中心とした外周の周方向に等間隔に開口部22bが配されている。ここで、スラストカラー18の開口部22bとスラストカラー18の中心軸との距離は、シャフト14aの開口部22aとシャフト14aの中心軸との距離より大きい。これは、スラスト方向で受け得る単位面積当たりの荷重を下げるためである。したがって、スラストカラー18の外周方向に推移するに連れ、スラストカラー18とスラスト軸受20との相対速度が高くなり、一般に、スラスト軸受20の方が、ラジアル軸受16より発熱量が高くなる。
【0025】
このような電動機1において、シャフト14aが
図4中白抜き矢印で示したようにX軸回りに回転すると、
図4中実線矢印で示したように、連通孔22内に存在する気体(冷却媒体)が、遠心力によりスラストカラー18の開口部22bから排出される。すると、連通孔22内の冷却媒体が減圧され、シャフト14aの開口部22aから新たに冷却媒体が吸引される。本実施形態の冷却媒体としては、空気を用いるが、窒素等、他の様々な気体を用いることができる。
【0026】
ここで、回転に伴って冷却媒体が排出されるか吸引されるかは、上述した開口部と中心軸との距離に基づいている。すなわち、回転体の外周面に複数の開口部を設けた場合、開口部と中心軸との距離が長い開口部(ここでは、開口部22b)の方が、開口部と中心軸との距離が短い開口部(ここでは、開口部22a)よりも、内部の冷却媒体に作用する遠心力が大きいため、開口部22bから冷却媒体が排出され、それに伴って開口部22aから冷却媒体が吸引される。
【0027】
こうして、ファン28等の特別な駆動源を用いることなく、シャフト14aの回転を利用して、シャフト14aの開口部22a、連通部22c、スラストカラー18の開口部22bを通過する冷却媒体の流れが生成され、結果的に、ラジアル軸受16およびスラスト軸受20が冷却される。
【0028】
また、
図4では、シャフト14aおよびスラストカラー18において、開口部を周方向に4つ等間隔に配したが、開口部の数や配置態様はこれに限らず、任意に決めることができる。また、開口部の大きさ、連通部22cの断面積および長さも任意に設定することが可能である。さらに、例えば
図5のように連通孔の構成を様々に形成することもできる。
【0029】
図5(a)のシャフト14aのYZ断面図に示すように、連通部22cのうち、開口部22aに延伸する連通路22c1を、シャフト14aの軸方向と平行な連通路22c2の断面外周の接線方向に設ける。このとき、シャフト14aの回転により生じるシャフト14a近傍の冷却媒体の流れ方向と連通路22c1に流入する冷却媒体の流れ方向、すなわち、
図5(a)の部分拡大図において実線矢印で示した、開口部22aにおけるシャフト14aの断面外周の接線方向と、一点鎖線で示した連通路22c1の中心線方向とが鋭角に交わることとなる。このように、シャフト14aの回転により生じる冷却媒体の流れに対して、連通路22c1に流入する冷却媒体の流れが鋭角となるように連通路22c1を形成し、冷却媒体を連通路22c1に流入し易くすることで、冷却媒体の吸引効率を向上することができる。
【0030】
一方、
図5(b)のスラストカラー18のYZ断面図に示すように、連通部22cのうち、開口部22bに延伸する連通路22c3を、シャフト14aの軸方向と平行な連通路22c2の断面外周の接線方向に設ける。このとき、スラストカラー18の回転により生じるスラストカラー18近傍の冷却媒体の流れ方向と連通路22c3から排出する冷却媒体の流れ方向、すなわち、
図5(b)の部分拡大図において実線矢印で示した、開口部22bにおけるスラストカラー18の断面外周の接線方向と、一点鎖線で示した連通路22c3の中心線方向とが鋭角に交わることとなる。このように、スラストカラー18の回転により生じる冷却媒体の流れに対して、連通路22c3から排出する冷却媒体の流れが鋭角となるように連通路22c3を形成し、冷却媒体を連通路22c3から排出し易くすることで、冷却媒体の排出効率を向上することができる。
【0031】
図6は、本実施形態の軸受の冷却構造を説明した説明図である。
図4および
図5を用いて説明した冷却構造では、上述したように、シャフト14aの開口部22a、連通部22c、スラストカラー18の開口部22bを通過する冷却媒体の流れが生成される。また、冷却媒体のシャフト14aへの吸引に関し、シャフト14aの開口部22aを、ロータ14の回転雰囲気(回転空間30)と連通させることで、ロータ14の回転により発熱した回転雰囲気中の冷却媒体を効率よく外部に排出させることもできる。このように、電動機1全体でみると、
図6中実線矢印で示すように、X軸後方のラジアル軸受16とシャフト14aとの隙間、回転空間30、連通孔22、スラスト軸受20とスラストカラー18との隙間を順次通過して、冷却媒体が外部に排出される。
【0032】
こうして、ファン等の特別な駆動源を追加することなく、既存のシャフト14aおよびスラストカラー18の外観形状を維持した簡易な構成で、効率よく軸受近傍を冷却することが可能となる。
【0033】
また、通常、シャフト14aの回転に伴う空気層のせん断に基づく発熱は、シャフト14aの回転数の上昇に応じて高まるが、本実施形態の冷却構造は、シャフト14aの回転数の上昇に応じて、遠心力によりその冷却媒体の流動速度も高まるので、特別な制御装置を介入させることなく、発熱に応じた適切な冷却効果を期待することができる。
【0034】
(冷却構造の他の形態1)
上記では、図示を省略したが、電動機1には、ステータ12の外周側から液体の媒体(例えば、水)を通じてステータ12を冷却する冷却部としての水冷ジャケット40が設けられている。ここでは、かかる水冷ジャケット40を利用して、軸受の冷却効率を高めることもできる。
【0035】
図7は、冷却構造の他の形態を説明した説明図である。ここでは、筐体10におけるスラストカラー18外周近傍から、回転空間30の特にステータ12のコイル12bよりX軸後方に連通孔42を設け、その連通孔42を水冷ジャケット40に当接させる。そして、
図7中実線矢印で示すように、回転空間30、連通孔22、連通孔42を通じて冷却媒体を完結的に循環させる。このとき、連通孔42を流通する冷却媒体と水冷ジャケット40中の媒体とを熱交換させる。
【0036】
かかる構成では、軸受近傍で生じる熱を、水冷ジャケット40を通じて放出できるので、自己完結的に放熱可能となり、より効率よく軸受近傍を冷却することができる。
【0037】
(冷却構造の他の形態2)
上述した冷却構造では、シャフト14aの開口部22aを、ロータ14の回転雰囲気(回転空間30)に連通させたが、かかる場合に限らず、例えば、シャフト14aの開口部22aを、ロータ14の回転雰囲気と断絶した空間に連通させてもよい。
【0038】
図8は、冷却構造のさらに他の形態を説明した説明図である。ここでは、シャフト14aの開口部22aをX軸後方の端部外周に設け、電動機1の外部雰囲気の空間に連通させる。したがって、
図8中実線矢印で示すように、開口部22aから外部の冷却媒体(空気)を直接吸引して、連通部22c、スラストカラー18の開口部22bに流通させることができる。
【0039】
かかる構成では、X軸後方のラジアル軸受16についても、シャフト14a内部を流通する冷却媒体によって冷却することができ、ファン等の特別な駆動源を追加することなく、既存のシャフト14aおよびスラストカラー18の外観形状を維持した簡易な構成で、効率よく全ての軸受近傍を冷却することが可能となる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。