特許第6089567号(P6089567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6089567電子部品被覆用熱硬化性接着シートおよびその製造方法ならびにそれを用いた電子部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089567
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電子部品被覆用熱硬化性接着シートおよびその製造方法ならびにそれを用いた電子部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20170227BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170227BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20170227BHJP
   H01L 25/04 20140101ALI20170227BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20170227BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20170227BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   H01L23/02 Z
   H01L25/04 Z
   C09J7/00
   C09J133/00
   C09J163/00
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-228593(P2012-228593)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80489(P2014-80489A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 宙夫
(72)【発明者】
【氏名】赤松 孝義
(72)【発明者】
【氏名】澤村 泰司
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−032434(JP,A)
【文献】 特開2000−073025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00− 23/02,23/28−23/31
H01L 25/04
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装された複数の電子部品により形成された凹凸形状に追従させて電子部品を被覆するための電子部品被覆用熱硬化性接着シートであって、炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸を必須共重合成分とする共重合体と、エポキシ樹脂と、芳香族ポリアミンおよび/またはノボラック樹脂を含む硬化剤とを含有し、炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸を必須共重合成分とする共重合体を34.1重量%以上含有し、硬化剤中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eが0.4〜1.0の範囲である熱硬化性樹脂組成物からなり、100℃での破断伸度が2500%以上であることを特徴とする電子部品被覆用熱硬化性接着シート。
【請求項2】
基板上に実装された複数の電子部品により形成された凹凸形状に追従させて電子部品を被覆するための電子部品被覆用熱硬化性接着シートの製造方法であって、炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸を必須共重合成分とする共重合体と、エポキシ樹脂と、芳香族ポリアミンおよび/またはノボラック樹脂を含む硬化剤と、沸点が70〜120℃の溶剤を含有し、硬化剤中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eが0.4〜1.0の範囲である熱硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、40℃〜80℃で30秒〜120秒加熱し、その後130℃〜160℃で40秒〜120秒加熱することを特徴とし、かつ前記電子部品被覆用熱硬化性接着シートの100℃での破断伸度が2500%以上であることを特徴とする電子部品被覆用熱硬化性接着シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法により電子部品被覆用熱硬化性接着シートを製造し、基板上に実装された複数の電子部品を覆うように電子部品被覆用熱硬化性接着シートを配置し、加熱成形して前記複数の電子部品および前記基板の表面に圧着させ、硬化させる工程を含む電子部材の製造方法。
【請求項4】
前記加熱成形をする際に、アスカーC硬度が50未満のゴム材料を用いて前記電子部品被覆用熱硬化性接着シートに圧力を加えて前記複数の電子部品および前記基板の表面に密着させることを特徴とする請求項3に記載の電子部材の製造方法。
【請求項5】
前記複数の電子部品が前記基板上にフリップチップ実装された半導体素子であることを特徴とする請求項3または4に記載の電子部材の製造方法。
【請求項6】
前記電子部品被覆用熱硬化性接着シートを密着、硬化した後の電子部品の前記基板と前記半導体素子との間に空間が存在することを特徴とする請求項5記載の電子部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に複数の電子部品が実装され、電子部品実装により形成された凹凸形状に追従させて電子部品を被覆するためのシート状熱硬化性組成物、またシート状熱硬化性組成物により被覆された電子部材、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路(IC)パッケージとして、デュアルインラインパッケージ(DIP)、スモールアウトラインパッケージ(SOP)およびクアッドフラットパッケージ(QFP)等のパッケージ形態が用いられてきた。一方、最近ではパッケージの小型化・高集積化が進み、ICチップパッケージサイズがチップサイズと同等であるCSP(チップサイズパッケージ)等が適用されてきている。また、ICとパッケージ端子との接合方法も小型化、薄型化の要求により従来金ワイヤーで接続されていたものが、ICのアクティブ面と接続端子を半田ボールや金バンプ等で接続するフリップチップ接続が主流となっている。
【0003】
一方、水晶振動子やSAWフィルタに代表される水晶デバイスは圧電現象を電気回路に応用することで、各種ICの同期基準信号、時計用、通信回路のノイズフィルタ等に活用されている。水晶デバイスは電気信号を物理振動、また物理振動を電気信号へ変換するため、素子のアクティブ面が空間に存在しなければならず、これらの素子は中空構造を持ったパッケージ形態である必要がある。従来は素子を外部環境から保護するため、素子をエンボス加工された積層セラミック内に配置し、素子と電極とをワイヤーボンディングで接続し、金属溶接で蓋をする金属封止が実施されていたが、携帯電話に代表される通信機器の小型化・薄型化に伴い、素子のアクティブ面とパッケージ基板とをフリップチップ接続し、素子−バンプ−パッケージ基板により形成された空間部分を維持し、中空構造とした状態で樹脂封止する方法が提案されている。この際、樹脂封止の方法としてシート状の封止材で基板上に素子を実装することで形成された凹凸部分を充填しつつ素子−バンプ−パッケージ基板により形成された空間部分を維持する方法や、シート状の材料を電子部品実装により形成された凹凸形状に追従させて電子部品を被覆・保護する方法(特許文献1〜3)などが提案されている。
【0004】
一方、水晶デバイスの小型化要求は更に進みつつあり、素子−素子間の距離は小さくなり、従来500μm〜1mm程度であった素子間の距離が300μm未満となっており従来提案されていた方法での樹脂封止は困難になってきた。
【0005】
具体的には素子の小型化が進む一方、素子表面のアクティブ面の面積の小型化には限界があるため、素子−素子間の距離は小さくなり、上述のシート状の材料を凹凸形状に追従させる方法では凹部まで十分追従しなかったり、シート状材料が破れてしまったりしてうまく封止できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4053483号
【特許文献2】特許第4730652号
【特許文献3】特開2003−17979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、かかる加工工程において生じる問題点を解消し、素子間距離が小さなデバイスであっても破れや凹凸形状への追従不十分といった問題を解決し、加工工程での歩留まりを向上させ、信頼性に優れた電子部品被覆用熱硬化性樹接着シートを提供すること、及びそれを用いた電子部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートは、基板上実装された複数の電子部品により形成された凹凸形状に追従させて電子部品を被覆するための電子部品被覆用熱硬化性接着シートであって、炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸を必須共重合成分とする共重合体と、エポキシ樹脂と、芳香族ポリアミンおよび/またはノボラック樹脂を含む硬化剤とを含有し、炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸を必須共重合成分とする共重合体を34.1重量%以上含有し、硬化剤中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eが0.4〜1.0の範囲である熱硬化性樹脂組成物からなり、100℃での破断伸度が2500%以上であることを特徴とする電子部品被覆用熱硬化性接着シートである。
【0009】
また、本発明においては上記電子部品被覆用熱硬化性接着シートのシート厚みが30μm以下であることが好ましい様態で含まれている。
【0010】
また、本発明の電子部品の製造方法は基板上に実装された複数の電子部品を覆うように上述の電子部品被覆用熱硬化性接着シートを配置し、加熱成形して前記複数の電子部品および前記基板の表面に圧着させ、硬化させる工程を含む電子部材の製造方法である。
【0011】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記複数の電子部品が前記基板上にフリップチップ実装された半導体素子である場合に特に好ましく適用することが出来る。
【0012】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記電子部品被覆用熱硬化性接着シートを密着、硬化した後の電子部品の前記基板と前記半導体素子との間に空間が存在する場合に特に好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートを用いることにより、素子間距離が小さなデバイスであっても破れや凹凸形状への追従不十分といった問題を解決し、加工工程での歩留まりを向上させ、信頼性に優れた電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成するために電子部品被覆用熱硬化性接着シートの物性を鋭意検討した結果、本発明に到達したものであって基板上に実装された複数の電子部品を被覆するための電子部品被覆用熱硬化性接着シートであって、100℃での破断伸度が2500%以上であることを特徴とする電子部品被覆用熱硬化性接着シートを使用することによって、基板上に複数の電子部品が実装され、電子部品実装により形成された凹凸形状を破れ等が無く、凹凸形状に十分密着、被覆、保護することにより優れた信頼性をもつ電子部材を提供することが出来る。
【0015】
以下、本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートについて詳細に説明する。本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートは、100℃での破断伸度が2500%以上であることを特徴とする。100℃での破断伸度が2500%以上であることにより電子部品実装により形成された凹凸形状を破れ等無く被覆することが可能となる。100℃での破断伸度が2500%未満の場合、特に基板上に実装された部品間の距離が300μm未満に狭くなった場合に凹凸形状を破れなく被覆することが困難となる。
【0016】
また、100℃での破断時の応力は1.1MPa以下であることが好ましい。100℃での破断応力が1.1MPa以下であることで電子部品実装により形成された凹凸形状への追従がより高まり好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。 また、破断応力が極端に低い場合、局所的に接着シートが伸びてしまい、接着シートが破れる恐れがあるため、100℃での破断応力は0.03MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることが更に好ましい。
【0017】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートを構成する樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂をそれぞれ少なくとも一種類以上含むことが耐熱性の点でより好ましい態様である。熱可塑性樹脂は、接着性、可撓性、熱応力の緩和および低吸水性による絶縁性の向上等の機能を有し、一方、熱硬化性樹脂は、耐熱性、高温での絶縁性、耐薬品性および接着剤層の強度等のバランスを実現するために重要である。
【0018】
本発明で用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂およびシアン酸エステル樹脂等公知の熱硬化性樹脂が例示され、特に、絶縁性の点でエポキシ樹脂およびフェノール樹脂が好適である。
【0019】
エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエンジフェノール等のジグリシジルエーテル、エポキシ化フェノールノボラック(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポキシ化クレゾールノボラック(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポキシ化トリスフェニロールメタン、エポキシ化テトラフェニロールエタン、エポキシ化メタキシレンジアミンおよびシクロヘキサンジエポキサイド等の脂環式エポキシ等が挙げられる。 さらに難燃性付与のために、ハロゲン化エポキシ樹脂、特に臭素化エポキシ樹脂を用いてもよい。
【0020】
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂等の公知のフェノール樹脂がいずれも使用することができる。例えば、フェノール、クレゾール、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノールおよびp−フェニルフェノール等のアルキル置換フェノール、テルペンおよびジシクロペンタジエン等の環状アルキル変性フェノール、ニトロ基、ハロゲン基、シアノ基およびアミノ基等のヘテロ原子を含む官能基を有するもの、ナフタレンやアントラセン等の骨格を有するもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノールおよびピロガロール等の多官能性フェノールからなる樹脂が挙げられる。
【0021】
熱硬化性樹脂の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して5〜200重量部が好ましく、より好ましくは20〜100重量部である。熱硬化性樹脂の添加量が5重量部未満では、加熱硬化後の接着性や接着層の破断強度の低下が著しく、リフロー耐熱性が低下するため好ましくない。また、熱硬化性樹脂の添加量が200重量部を超えると、塗工性の低下や、100℃での破断伸度が低下するため電子部品実装により形成された凹凸形状に追従させることが困難となり、破れ等が発生する。
【0022】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリルーブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴムースチレン樹脂(ABS)、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレンーブタジエンーエチレン樹脂(SEBS)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを必須共重合成分とする共重合体(アクリル樹脂)、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリウレタン等を例示することができる。また、これらの熱可塑性樹脂は、前述の熱硬化性樹脂の官能基と反応が可能な官能基を有していてもよい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基およびシラノール基等の官能基が挙げられる。これらの官能基により熱硬化性樹脂との結合が強固になり、膜強度やリフロー耐熱性が向上する。
【0023】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、100℃での破断伸度を向上させるために炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸エステルを必須共重合成分とする共重合体が特に好ましく使用できる。また、これらの共重合体についても後述の熱硬化性樹脂との反応が可能な官能基を有していてもよい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基、シラノール基等である。さらにこの場合、官能基としてカルボキシル基および/または水酸基を有する共重合体に、他の官能基を有する共重合体を混合して用いるとさらに好ましい。このような熱可塑性樹脂として、例えば、エポキシ基含有アクリルゴムHTR−860(帝国化学産業(株)製)や、エポキシ基含有アクリルゴムSGP−3(ナガセケムテックス(株)製)、カルボキシル基含有アクリルゴムSG−280DR(帝国化学産業(株)製)が例示される。
【0024】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートに用いられる樹脂組成物にオルガノポリシロキサンを添加することは何ら制限されない。オルガノポリシロキサンを添加することで100℃での破断伸度をより向上することが可能となる。オルガノポリシロキサンとしては、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーン中間体が挙げられ、この中でも破断伸度を向上させる効果の大きいシリコーンレジンが好ましい。シリコーンレジンの具体例としてはメトキシ変性レジン(メトキシ基含有;SY231、SY550以上旭化成ワッカー社製、KC89、KR500、KR9218、KR213以上信越化学工業社製)、シラノール変性レジン(シラノール基含有;SY300、SY409、SY430、IC836以上旭化成ワッカー社製、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR212、KR251、KR400、KR255、KR216、KR152以上信越化学工業社製)、シルセスキオキサン誘導体(オキセタニル基含有;OX−SQ、OX−SQ−H、OX−SQSI−20、ビニル基含有;AC−SQ以上東亜合成社製)等が挙げられる。
【0025】
オルガノポリシロキサンの含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは30重量部以上、、さらに好ましくは100重量部以上である。一方、300重量部以下が好ましく、より好ましくは200重量部以下である。この範囲であれば接着性を維持できるので好ましい。また、長期高温条件下における接着耐久性、回路腐食性、絶縁信頼性をより向上させる観点から、接着剤組成物中、好ましくは20重量%を超え、より好ましくは30重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0026】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートに用いられる樹脂組成物に、無機フィラーを添加することは何ら制限されない。無機フィラーとしては、例えば、結晶シリカ粉末、溶融シリカ粉末、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化珪素、水酸化マグネシウム、カルシウム・アルミネート水和物、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、タルク、アルミニウム、金、銀、ニッケル、鉄、クレーおよびマイカなどが挙げられる。中でも分散性点から、水酸化アルミニウム、アルミナおよびシリカが好ましい。また、本発明において、接着剤層に含まれる無機フィラーの中位径D50は、接着剤層の厚みに対して1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることが更に好ましい。中位径が接着剤シートの厚みの1/5以下であることにより、接着剤シートの破断伸びが大きくなり、破れなく凹凸形状に追従させる事が可能となる。ここでいう中位径D50とは、レーザ回折式粒子径分布測定装置等で測定された粒子の分布曲線において、積算体積が50%となる粒子径を指す。また、リフロー耐熱性の観点から、TGA(加熱重量減少測定)による5%重量減少温度(熱分解温度)が350℃以上であるシリカ、好ましくは球状シリカ粉末、さらに好ましくは溶融球状シリカが好ましく用いられる。
【0027】
また、無機フィラーと電子部品被覆用熱硬化性接着シートに用いられる樹脂組成物中の有機成分とのぬれ性を向上させるために、無機フィラーをシランカップリング剤で表面処理しても良い。シランカップリング剤の具体例としては3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが特に限定されるものではない。シランカップリング剤は単独で使用しても、上記のシランカップリング剤を混合して使用しても良く、処理に使用する量は、無機フィラー100重量部に対して0.3〜1重量部が好ましい。
【0028】
また、本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートに用いられる樹脂組成物中に、エポキシ基と架橋反応する硬化剤を添加しても良い。エポキシ基と架橋反応する硬化剤を含有することで硬化後の接着力が向上する。硬化剤の例としては、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、ジシアンジアミド、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのノボラック樹脂、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物等が使用できる。この中でも耐熱性に優れることからフェノール系の硬化剤が好ましい。これらを単独または2種以上用いても良い。
【0029】
エポキシ基と架橋反応する硬化剤を添加する場合、硬化剤中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eが0.4〜1.0の範囲であることが好ましい。
【0030】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートに用いられる樹脂組成物中に、必要に応じ硬化触媒を含有してもよい。硬化触媒としては、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、2−アルキル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、ジシアンジアミド、トリフェニルフォスフィン、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、スルフォニウム塩誘導体等公知のものが挙げられる。これらを単独または2種以上用いても良い。硬化触媒の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対し0.3〜3.0重量部の範囲にあることが好ましい。
【0031】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートに用いられる樹脂組成物には、上記の成分以外に、接着剤の特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、イオン捕捉剤などの有機成分・無機成分を添加することができる。有機成分としては、スチレン、NBRゴム、アクリルゴムおよびポリアミド等の架橋ポリマーが例示される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系やアミン系の一次酸化防止剤、イオウ系やリン系の二次酸化防止剤、が挙げられる。イオン捕捉剤としては、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン、ハイドロタルサイト系の化合物等が挙げられる。これらを単独または2種類以上混合しても良い。
【0032】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートの厚みは、好ましくは10μm〜100μmであり、より好ましくは10μm〜50μmであり、さらに好ましくは15μm〜30μmである。基板上に実装される電子部品の間隔が狭い場合、電子部品被覆用熱硬化性接着シートの厚みが薄い方がより凹凸部に追従しやすい。
【0033】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートは、好ましくはこれを取り扱う際に接着シートを保護する目的で1層以上の剥離可能な保護フィルムとを積層した構成で用いられる。たとえば、保護フィルム/接着シートの2層構成、あるいは、保護フィルム/接着シート/保護フィルムの3層構成がこれに該当する。保護フィルムは、接着シートの形態および機能を損なうことなく剥離できれば特に限定されない。たとえばポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等のプラスチックフィルム、これらにシリコーンあるいはフッ素化合物等の離型剤のコーティング処理を施したフィルムおよびこれらのフィルムをラミネートした紙、離型性のある樹脂を含浸あるいはコーティングした紙等が挙げられる。保護フィルムは、加工時に視認性が良いように顔料による着色が施されていても良い。これにより、先に剥離する側の保護フィルムが簡便に認識できるため、誤使用を避けることができる。
【0034】
接着シートの両面に保護フィルムを積層して用いる場合、それぞれの保護フィルムの接着シートに対する剥離力をF、F(F>F)としたとき、F−Fは好ましくは5Nm−1以上、さらに好ましくは15Nm−1以上である。F−Fを5Nm−1以上とすることで、目的の保護フィルムを安定して剥離することができるため作業性が良い。また、剥離力F、Fはいずれも好ましくは1〜200Nm−1、さらに好ましくは3〜100Nm−1である。この範囲であれば、保護フィルムの脱落や、接着シートの損傷等のトラブルを防ぐことができる。
【0035】
次に、本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートの製造方法の例について説明する。
【0036】
本発明のために用意された電子部品被覆用熱硬化性接着シートを構成する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を溶剤に溶解した樹脂組成物を、離型性を有する保護フィルム等の基材上に塗布し、乾燥する。乾燥条件は、上記溶剤が乾燥後の接着シートに残留しない範囲で可能な限り加える熱量を低く抑えることが好ましい。乾燥時に加える熱量が多すぎる場合、溶媒を揮発させるだけでなく、電子部品被覆用熱硬化性接着シート中に含まれる熱硬化性樹脂の反応が進行するため、100℃における破断伸度が低下するため好ましくない。一方乾燥時に加える熱量が少なすぎる場合、溶剤が乾燥後の接着剤層に残留している場合も100℃での破断伸度が低下するため好ましくない。また、乾燥する場合は最初に100℃未満の低温である程度溶媒を揮発させ、次いで150℃程度の高温で残留溶媒を低下させる方法が好ましい。溶剤を多量に含有する塗料を直接100℃以上で乾燥すると塗膜中の溶媒が突沸し、接着剤面に発泡等の欠点が発生するため好ましくない。
【0037】
100℃未満の低温である程度溶媒を揮発させるのに好ましい乾燥温度は40℃〜80℃、更に好ましくは45〜70℃程度、乾燥時間は30秒〜120秒程度である。
【0038】
上記の100℃未満の低温である程度溶媒を揮発させることで、次いで100℃以上の高温で溶媒を乾燥させても突沸等は発生せず、欠点等のない均一な接着剤面を得ることができる。100℃未満の低温である程度溶媒を揮発させたのちに100℃以上の高温で残った溶媒を揮発させるのに好ましい温度は130℃〜160℃、より好ましくは140℃から160℃程度、乾燥時間は40秒〜120秒、より好ましくは40秒〜120秒程度である。乾燥時間が40秒未満と短い場合、残留溶媒が完全に揮発せず、結果として100℃での破断伸度が低下し、乾燥時間が120秒を超えると熱硬化樹脂の硬化反応が進行し100℃での破断伸度が大きく低下する。
【0039】
残留溶媒量は0.15質量%未満であることが好ましい。残量溶媒量が0.15質量%未満であることで100℃での破断伸度が向上し、0.1質量%未満であることが更に好ましい。
【0040】
接着剤組成物を溶解させる溶剤は特に限定されないが、トルエン(沸点:110.6℃)、キシレンおよびクロルベンゼン(沸点:131.7℃)等の芳香族系、メチルエチルケトン(沸点:79.6℃)やメチルイソブチルケト(沸点:115.9℃)ン等のケトン系、ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルアセトアミド(沸点:166.1℃)およびNメチルピロリドン(沸点:202℃)等の非プロトン系極性溶剤単独あるいは混合物が好適である。この中でも揮発温度が他溶剤比比較的低い沸点が70〜120℃の範囲のものを好ましく用いることができ、中でもメチルエチルケトン(沸点:79.6℃)やメチルイソブチルケトン(沸点:115.9℃)が好ましい。塗料中で溶剤の占める好ましい量は、塗料全体を100重量部とすると、50重量部から80重量部、さらに好ましくは70重量部から80重量部である。溶剤の占める量が50重量部未満では塗料の撹拌効率が落ち、また塗料寿命が短くなるため望ましくない。また、溶剤の占める量が80重量部を超えると、塗工性が悪化するため好ましくない。
【0041】
上記のようにして保護フィルム上に電子部品被覆用熱硬化性接着シートを形成し、さらに必要に応じ離型性を有する保護フィルムをラミネートして保護フィルム/接着シート/保護フィルムの3層構成とすることができる。この場合、電子部品被覆用熱硬化性接着シートは使用直前まで外部環境から保護されるためより好ましい。
【0042】
以上のように、本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートは、好ましくは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および沸点が70〜120℃の溶剤を含む熱硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、40℃〜80℃で30秒〜120秒加熱し、その後130℃〜160℃で40秒〜120秒加熱することによって製造することができる。
【0043】
次に、本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートを使用した電子部品の製造方法について説明する。
【0044】
本発明の電子部材の製造方法は、基板上に実装された複数の電子部品を覆うように上述の電子部品被覆用熱硬化性接着シートを配置し、加熱成形して前記複数の電子部品および前記基板の表面に圧着させ、硬化させる工程を含む電子部材の製造方法である。
【0045】
基板上に実装された複数の電子部品により形成された凹凸に本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着シートを追従させるには、低硬度のゴム材料を用いて上述の電子部品被覆用熱硬化性接着シートに圧力を加えて前記複数の電子部品および前記基板の表面に密着させることが好ましい。
【0046】
低硬度のゴム材料は公知のものが使用できるが、加工温度での耐熱性の点からシリコーンゴムが好ましく、凹凸追従性の点からアスカー硬度50未満のものが好ましい。このとき、ゴム材料に付着した異物が電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物に転写することを防止するため、離型性が高く、かつ電子部品実装により形成された凹凸に追従するフィルム材料をゴム材料と電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物の間に介することが好ましい。離型製が高く、電子部品実装により形成された凹凸に追従するフィルム材料の一例として、スミライトCELシリーズ(住友ベークライト(株)製)、オピュランシリーズ(三井化学東セロ(株))製などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0047】
加工温度は電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物が凹凸に追従するよう100℃近辺とすることが好ましい。圧力を加える方式は特に限定されないが、内部に気泡が残留しないよう、公知の真空ラミネータを使用することが好ましい。真空ラミネータの一例として(株)名機製作所製真空加圧ラミネータMVLPなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。加工圧力は電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物が電子部品実装により形成された凹凸に追従できる範囲であれば特に限定されるものではないが、電子部品にかかる圧力を低くすることがより好ましい。
【0048】
本発明の電子部材の製造方法は、上述の通りフリップチップ実装された半導体素子を基板上に複数有する電子部材に好ましく用いることができ、さらには記電子部品被覆用熱硬化性接着シートを密着、硬化した後の電子部品の前記基板と前記半導体素子との間に空間が存在するような電子部材の製造に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて、本発明の半導体装置用接着剤シート等について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。まず、評価方法について述べる。
【0050】
[評価方法]
(1)接着剤外観:
作成した接着剤シートの外観につき、目視にて評価を実施した。問題無いものをOK、発泡等の欠点が存在するものをNGと判定した。
(2)接着剤シートの引っ張り伸び測定:
各実施例で作成した接着剤シートをチャック間サンプル長40mm、幅5mmの条件で引張試験器(UCT100型、(株)オリエンテック製)にて50mm/minの速度で引張り試験を行ない、破断に至るまでの応力ひずみ曲線を記録し、引っ張り伸度、破断応力を求めた。
(3)接着剤シートの残留溶媒測定
各実施例で作成した接着剤シートの残留溶媒につきガスクロマトグラフィーで測定した。
(GC−14B型、島津製作所製)サンプル重量は50mgとし、250℃25分サンプルを加熱し、揮発した気体成分につき分析を実施した。残留溶媒量はトルエン換算量とした。
(4)被覆性評価:
複数の電子部品が実装された基板の表面を電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物で被覆すす際の被覆性につき、以下の手順で評価した。
【0051】
複数の電子部品が実装された基板として、アルミナ基板上に幅0.9mm×長さ1.1mm×高さ0.5mmの評価用Siチップを高さ0.06mmの半田バンプを介してフリップチップ実装した基板を用いた。Siチップは10cm×10cmのアルミナ基板上の中心部分に5行×5列実装され、実装されたSiチップの間隔につき1.0mm、0.5mm、0.3mm、0.2mmの4種を準備した。
【0052】
アスカー硬度20のシリコーンゴム上に上記の複数の電子部品が実装された基板をSiチップが上になる様に置き、更にその上に離型フィルムを剥離した接着剤シートを置き、更に耐熱性離型フィルム“オピュラン”(三井化学東セロ(株)製)CR1031(厚み150μm)を置き、更にアスカー硬度20の厚さ2.5mmのシリコーンゴムを置き、これを真空引き時間30秒、温度100℃、真空加圧0.5MPaの条件で株式会社名機製作所製MVLPを用いて真空ラミネートを実施した。
【0053】
その後接着剤シートで被覆された基板をエアオーブン中で150℃、2時間加熱硬化処理を行った。
【0054】
接着剤による被覆後の外観につき接着剤シートがアルミナ基板上にSiチップ実装により形成された凹凸に追従しているかを顕微鏡観察により判定した。接着剤シートが破れず、かつ凹部まで十分に追従しているものを◎と判定し、接着剤シートが破れているものや、凹部まで十分に追従していない箇所が2カ所以上のものは×と判定し、接着剤シートが破れてはおらず、かつ、凹部まで十分に追従していない箇所が1カ所のみのものは○とした。
【0055】
実施例1〜31、比較例1〜12
(1)接着剤溶液の作成
下記無機粒子、エポキシ樹脂、硬化剤、熱可塑性樹脂、オルガノポリシロキサン、硬化触媒、その他添加剤を、それぞれ表1〜4に示した組成となるように配合し、固型分濃度20重量%となるようにDMF/MIBK混合溶媒に40℃で撹拌、溶解して接着剤溶液を作製した。実施例18〜20は無機粒子を表2に記載した各実施例の配合比になるように秤量し、ミキサー内で2分間混合した後、無機粒子をさらに混合しながら各実施例の配合比になるようにシランカップリング剤を霧吹きで噴霧し、シラン処理を行ったのちにその他原料、溶媒を添加、撹拌、溶解して接着剤溶液を作成した。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ(jER1001、エポキシ当量474、三菱化学(株)製、常温で固型)
エポキシ樹脂2:ο−クレゾールノボラック型エポキシ(EOCN−1020、エポキシ当量200、日本化薬(株)製、常温で固型)
エポキシ樹脂3:ジシクロペンタジエン型(HP−7200、エポキシ当量:260、大日本インキ化学工業(株)製、常温で固型)
エポキシ樹脂4:ビスフェノールA型エポキシ(jER828、エポキシ当量190、三菱化学(株)製、常温で液状、25℃での粘度:14Pa・s)
<硬化剤>
硬化剤1:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS、アミン当量62、和歌山精化工業(株)製)
硬化剤2:フェノールノボラック樹脂(PSM4326、水酸基当量105、群栄化学工業(株)製)
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂1:XF−3677:トウペ(株)製、エチルアクリレートを主成分とする水酸基含有アクリルゴム、Mw=1300000、Tg=−30℃
熱可塑性樹脂2:SGP−3(ナガセケムテックス(株)製):ブチルアクリレートを主成分とするエポキシ基含有アクリルゴム
<無機粒子>
無機粒子1:球状シリカ(SO−C5、平均粒径1.6μm、(株)アドマテックス製)
無機粒子2:球状シリカ(SO−C1、平均粒径0.3μm、(株)アドマテックス製)
<オルガノポリシロキサン>
オルガノポリシロキサン1:KR152:信越化学(株)製、Mw=500000〜800000、Rとして水酸基、メチル基、フェニル基を含むシリコーンレジン(水酸基価10重量%)、2官能シロキサン単位/3官能シロキサン単位=1以上、フェニル基含有率=30mol%以上
<硬化触媒>
硬化触媒1:2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24、ジャパンエポキシレジン(株)製)
<シランカップリング剤>
シラン1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
シラン2:3−アミノプロピルトリエトキシシラン
シラン3:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
<複素環アゾール化合物>
ベンゾトリアゾール
(2)保護フィルムへの塗工・乾燥
この接着剤溶液をバーコータで、シリコーン離型剤付きの厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業(株)製“フィルムバイナ”GT)に各実施例、比較例の乾燥厚さとなるように塗布し、以下の各条件で乾燥し、保護フィルムを貼り合わせて、本発明の接着剤シートを作製した。この熱硬化性接着剤組成物について、被覆性、破断伸度、破断応力、残留溶媒量、接着剤外観を判定した。結果を表5〜8に示す。
<乾燥条件1>50℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で60秒乾燥。
<乾燥条件2>100℃の温度で1分、次いで150℃の温度で5分(300秒)乾燥。
<乾燥条件3>50℃の温度で30秒、次いで150℃の温度で60秒乾燥。
<乾燥条件4>50℃の温度で2分(120秒)、次いで150℃の温度で60秒乾燥。
<乾燥条件5>80℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で60秒乾燥
<乾燥条件6>50℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で30秒乾燥
<乾燥条件7>50℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で40秒乾燥
<乾燥条件8>50℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で2分(120秒)乾燥
<乾燥条件9>50℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で3分(180秒)乾燥
<乾燥条件10>50℃の温度で60秒、次いで160℃の温度で60秒乾燥
<乾燥条件11>50℃の温度で60秒、次いで170℃の温度で60秒乾燥
<乾燥条件12>30℃の温度で60秒、次いで150℃の温度で60秒乾燥
<乾燥条件13>50℃の温度で60秒、次いで120℃の温度で60秒乾燥
<乾燥条件14>50℃の温度で60秒乾燥
<乾燥条件15>150℃の温度で60秒乾燥
上記の実施例から本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物は、100℃の温度領域における引っ張り伸度を規定することによって、基板上に複数の電子部品が実装され、電子部品実装により形成された凹凸形状を破れ等無く被覆する為の追従性を実現した。一方、上記の比較例は電子部品実装により形成された凹凸形状を破れ等無く被覆する為の追従性で劣っていた。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の電子部品被覆用熱硬化性接着剤組成物は基板上に複数の電子部品が実装され、電子部品実装により形成された凹凸形状を破れ等無く被覆・保護する為の追従性を実現した。特に電子部品の間隔が300μm未満の場合や電子部品の基板からの高さが600μm以上の場合にも好適に使用できる。また基板上にフリップチップ実装された半導体素子を被覆し、中空構造を形成するSAWフィルタ、通信用デバイス等の用途に好適に用いることが出来る。