(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空VTは、静電容量の小さい1次側コンデンサと、静電容量の大きい2次側コンデンサを直列に接続した回路構成を基本構成としている。1次側コンデンサには高電圧の測定対象機器が接続されるので、1次側コンデンサには高電圧がかかることとなる。真空VTの安全性の観点から、真空VTの耐電圧(特に、1次側コンデンサ近傍での耐電圧)を向上させることが求められる。
【0006】
耐電圧を低下させる要因の一つとして、電界集中による耐電圧の低下がある。例えば、特許文献2に記載の真空バルブでは、シールド先端部分を曲面状に形成することで、シールド先端部分における電界集中を抑制し、真空バルブの耐電圧を向上させている。また、特許文献3に記載の真空バルブでは、真空バルブを覆う絶縁筒中央部分に形成される電界強度を低下させることで、真空バルブの絶縁筒表面の結露による表面抵抗の低下を抑制している。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、真空VTの耐電圧の向上に貢献する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の一態様は、絶縁筒と導体筒を接合して形成される筒状の外筐と、前記絶縁筒の開放端を閉塞して設けられる1次側端板と、前記1次側端板面から前記外筐内に立設される内部1次電極と、前記1次側端板の内部1次電極が設けられる面と対向して前記外筐内に設けられる2次側端板と、前記2次側端板面から前記1次側端板方向に立設される内部2次電極と、を有し、前記内部1次電極と前記内部2次電極を対向配置して主コンデンサを形成し、当該主コンデンサが形成される空間を真空とした真空コンデンサ形計器用変圧器であって、前記内部1次電極及び前記内部2次電極の少なくとも一方の端部を曲面状に形成することを特徴としている。
【0009】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記内部1次電極と対向して設けられる1対の内部2次電極の電極間距離を、前記内部1次電極端部付近で広くすることを特徴としている。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記内部2次電極と対向して設けられる1対の内部1次電極の電極間距離を、前記内部2次電極端部付近で広くすることを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記外筐に最も近接して設けられる内部2次電極を、前記外筐に最も近接して設けられる内部1次電極よりも前記外筐に近接して設け、前記絶縁筒を、前記外筐に最も近接して設けられる内部1次電極の側面と前記外筐に最も近接して設けられる内部2次電極の側面と各々対向するように設け、前記絶縁筒と対向する内部1次電極の電極面に溝部を形成することを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記内部2次電極と対向する前記内部1次電極の端部に括れ部を形成すること特徴としている。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明の真空コンデンサ形計器用変圧器の他の態様は、上記真空コンデンサ形計器用変圧器において、前記内部1次電極と対向する前記内部2次電極の端部に括れ部を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上の発明によれば、真空VTの耐電圧の向上に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る真空コンデンサ形計器用変圧器(真空VT)について、図を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る真空VT1の要部断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る真空VT1は、1次側絶縁筒2、円筒部3及び接地円筒部4により形成される外筐5と、外筐5内に設けられる1次側コンデンサ6とを有する。なお、外筐5内に形成される2次側ケース7内には、保護継電器や計測器への出力電圧を分担する2次側コンデンサ(図示せず)が設けられる。
【0018】
1次側絶縁筒2は、例えば、セラミック材などの無機絶縁材料を円筒状に形成した部材である。1次側絶縁筒2の一方の開放端には円筒状の導電部材である円筒部3が設けられ、1次側絶縁筒2の他方の開放端には円筒状の導電部材である接地円筒部4が設けられる。なお、1次側絶縁筒2の両端面(つまり、円筒部3が接合される1次側絶縁筒2の端面及び接地円筒部4が接合される1次側絶縁筒2の端面)には、薄膜状の金属被覆(メタライズ)部2a,2bが設けられる。
【0019】
円筒部3の開放端には導電部材である1次側端板8が設けられる。一方、接地円筒部4の開放端には、導電部材である接地側端板9が設けられる。接地側端板9には、外筐5の軸を中心とした円形の孔が形成されており、この孔の外周部からから1次側端板8方向に立設して無機絶縁材料を円筒状に形成した2次側絶縁筒10が設けられる。そして、2次側絶縁筒10の1次側端板8側の開放端は導電部材である2次側端板11により密閉される。このように、円筒部3の開放端を1次側端板8で密閉し、接地円筒部4の開放端を接地側端板9、2次側絶縁筒10及び2次側端板11で密閉することで外筐5内部を真空状態にした真空部12が形成される。なお、1次側絶縁筒2に直接1次側端板8を設けて1次側絶縁筒2の開放端を密閉してもよい。また、2次側絶縁筒10と接地側端板9は、直接または導電部材である円筒部13aを介して接続される。同様に、2次側絶縁筒10と2次側端板11は、直接または導電部材である円筒部13bを介して接続される。
【0020】
1次側コンデンサ6は、1次側端板8と2次側端板11との間に形成される。1次側端板8の主面であって外筐5内周側の面には、内部1次電極8aが設けられる。内部1次電極8aは、例えば、円筒状の電極であり、2次側端板11方向に延設される。内部1次電極8aを複数設ける場合は、直径が順次小さくなる内部1次電極8aが同心円状に複数配置される。一方、2次側端板11の1次側端板8と対向する面には、内部2次電極11a,11bが設けられる。内部2次電極11a,11bは、例えば、内部1次電極8aと直径の異なる円筒状の電極であり、1次側端板8方向に延設される。内部1次電極8aと内部2次電極11a,11bは、その側面が非接触で対向するように交互に配置され1次側コンデンサ6が形成される。
【0021】
内部2次電極11a,11bのうち、最も大きい直径を有する内部2次電極11aの直径は、最も大きい直径を有する内部1次側電極8aの直径よりも大きい。つまり、内部2次電極11aの側面は外筐5の内周面に対向して設けられる。また、内部2次電極11aは、その側面が1次側絶縁筒2と接地円筒部4との接続部(金属被覆部2a)と対向するように設けられる。このように内部2次電極11aを設けることで、比較的電位の低い内部2次電極11aにより、金属被覆部2aの端部(つまり、1次側絶縁筒2の内周面近傍の金属被覆部2a部分)が保護されるようになる。なお、内部2次電極11aを金属被覆部2aよりも1mm以上1次側端板8方向に延設させることで、内部2次電極11aによる金属被覆部2aの保護効果を得ることができる。
【0022】
1次側端板8の内部1次電極8aが設けられる面の反対側の面には、測定対象(高電圧側)と接続される接続導体8bが設けられる。この接続導体8b(及び1次側端板8)と1次側絶縁筒2が絶縁モールドで被覆されモールド部14が形成される。さらに、モールド部14の外周は金属皮膜15で覆われる。
【0023】
2次側コンデンサは、2次側絶縁筒10の内周面と2次側端板11とで形成される2次側ケース7内に設けられ、2次側端板11及び接地側端板9と電気的に接続される。2次側コンデンサの分担電圧は、保護継電器(リレー)や計測器などに出力される。2次側コンデンサは、適宜周知のコンデンサを用いればよく、例えば、フィルムコンデンサが用いられる。なお、2次側ケース7内を真空にして、1次側コンデンサ6及び2次側コンデンサの両方のコンデンサを真空コンデンサとしてもよい。
【0024】
図2,3を参照して、真空VT1の内部1次電極8aまたは内部2次電極11a,11bの形状について詳細に説明する。
【0025】
まず、
図2(a)〜(e)を参照して、内部1次電極8a及びこの内部1次電極8aの端部近傍の内部2次電極11a,11b(内部1次電極16及びこの内部1次電極16の端部近傍の内部2次電極17a,17bなど)について説明する。なお、内部1次電極8aの端部近傍の各電極形状を、内部2次電極11a,11bの端部近傍の各電極形状に適用しても同様の効果を得ることができるので、内部2次電極11a,11bの端部近傍部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0026】
図2(a)は、従来技術に係る内部1次電極16及び内部2次電極17a,17bの拡大断面図である。
図2(a)に示すように、内部1次電極16の端部の形状を直線上(断面矩形状)に形成すると、電界が内部1次電極16の先端部(角部)に集中することとなる。つまり、内部1次電極16の角部近傍に形成される電界の間隔が一番狭くなっている。その結果、内部1次電極16の先端部から内部2次電極17a,17bや2次側端板11へ閃絡が発生しやすくなり、真空VTの耐電圧が低下する。
【0027】
図2(b)は、本発明の実施形態に係る真空VT1の内部1次電極の一例(内部1次電極8c)を示す図である。
図2(b)に示すように、内部1次電極8cの端部の形状は、曲面状(断面円弧状)に形成される。このように、内部1次電極8cの端部を曲率を有するように形成することで、内部1次電極8cの先端部分での電界集中が緩和される。つまり、内部1次電極8cの先端部分において、電界の間隔が
図2(a)で示した内部1次電極16の場合より広くなっている。その結果、内部1次電極8cから内部2次電極17a,17bや2次側端板11への閃絡を抑制することができる。
【0028】
図2(c)は、本発明の実施形態に係る真空VT1の内部1次電極の一例(内部1次電極8d)を示す図である。
図2(c)に示すように、内部1次電極8dは、太く形成される(例えば、最外周に設けられる内部2次電極よりも太く形成される)。このように、内部1次電極8dを太くすることで、電極の形状を電界集中が緩和される形状に加工することが容易となる。また、内部1次電極8dの先端部の曲率半径を内部1次電極8cよりも大きくとることが可能となり、内部1次電極8dの先端部分での電界集中をさらに緩和することができる。その結果、内部1次電極8dから内部2次電極17a,17bや2次側端板11への閃絡を抑制することができる。
【0029】
図2(d)は、本発明の実施形態に係る真空VT1の内部1次電極及び内部2次電極の一例(内部1次電極8d及び内部2次電極11a,11b)を示す図である。
図2(d)に示すように、内部1次電極8dに対向して設けられる1対の内部2次電極11a,11bは、その電極間距離が内部1次電極8dの端部付近で広くなるように形成される。このように、内部2次電極11a,11bの形状を、内部1次電極8dの端部が設けられる空間が広くなるように形成することで、内部1次電極8dの先端部分での電界集中が緩和される。その結果、内部1次電極8dから内部2次電極11a,11bや2次側端板11への閃絡を抑制することができる。
【0030】
図2(e)は、本発明の実施形態に係る真空VT1の内部1次電極8a及び内部2次電極11a,11bの拡大断面図である。
図2(e)に示すように、内部1次電極8aの端部は曲率を有するように形成され、さらに内部1次電極8aの端部に括れ部8eが形成される。このように内部1次電極8aの端部に括れ部8eを形成することで、内部1次電極8aの先端部分での電界集中をさらに緩和することができる。この括れ部8eの形状は特に限定されるものではなく、
図2(e)のように、断面略矩形の括れ部8eを形成する形態や、括れ部8eが内部1次電極8aの端部の曲率の延長線上に形成される形態であってもよい。なお、括れ部8eは、内部1次電極8aの端部近傍であって、内部2次電極11a,11bのいずれかと対向する面または内部2次電極11a,11bと対向する面の両側に形成することで、内部1次電極8aの端部における電界集中を緩和することができる。
【0031】
次に、
図3(a)〜(d)を参照して、1次側絶縁筒2近傍に設けられる内部1次電極8a(または内部1次電極16)及び内部2次電極11a(または内部2次電極17a,11c)の形状について詳細に説明する。
【0032】
図3(a)は、従来技術に係る内部1次電極16及び内部2次電極17aの拡大断面図である。
図3(a)に示すように、金属被覆部2aの端部と内部1次電極16の側面とが対向して設けられる場合、内部1次電極16と対向する金属被覆部2a部分が尖鋭であるため、金属被覆部2aと内部1次電極16との間で閃絡が発生するおそれがある。
【0033】
そこで、
図3(b)のように、内部1次電極16と比較して金属被覆部2aとの電位差が非常に低い内部2次電極11cを、内部1次電極16と金属被覆部2aとの間に介在させる。このように内部1次電極16と金属被覆部2aとの間に内部2次電極11cを設けることで、金属被覆部2aが内部2次電極11cで保護され、金属被覆部2aへの閃絡が防止される。しかし、この場合においても、内部2次電極11cと内部1次電極16間の電界により生じ、1次側絶縁筒2を通過する電界は、内部2次電極11c端部付近に集中してしまうおそれがある。
【0034】
電界分布が1次側絶縁筒2を均等に通過するようになっていない場合、1次側絶縁筒2付近の内部2次電極11c先端部や金属被覆部2b(1次側絶縁筒2の1次側端板8側の端部)などに電界集中が起こるおそれがある。
【0035】
図3(c)は、本発明の実施形態に係る真空VT1の内部1次電極及び内部2次電極の一例(内部1次電極8a及び内部2次電極11c)を示す図である。
図3(c)に示すように、1次側絶縁筒2と対向する内部1次電極8aの電極面に、内部2次電極11cの端部と対向する部分付近から1次側端板8側にかけて溝部8fを形成する。このように、内部1次電極8aの側面であって、1次側絶縁筒2と対向する面に溝部8fを形成することで、内部2次電極11cと内部1次電極8a間の電界により生じ、1次側絶縁筒2を通過する電界の分布をより均等にすることができる。なお、溝部8fの2次側端板11側の壁面を、内部2次電極11cと対向する面から1次側端板8側にかけて、内部1次電極8の側面と1次側絶縁筒2の内周面との距離が徐々に遠くなるように曲面状に形成することで1次側絶縁筒2を通過する電界の分布をより均等にすることができる。
【0036】
図3(d)は、本発明の実施形態に係る内部1次電極8aと内部2次電極11aの拡大断面図である。
図3(d)に示すように、内部2次電極11aの端部であって、内部1次電極8aと対向する面に括れ部11dが形成される。このように、内部2次電極11aの端部に括れ部11dを形成することで、内部2次電極11a先端の電界集中を緩和させることができ、内部2次電極11aと内部1次電極8a間の電界により生じ、1次側絶縁筒2を通過する電界の分布をより均等にすることができる。
【0037】
以上のように、本発明の真空VTによれば、1次側コンデンサを形成する電極端部における電界集中を緩和することができる。また、本発明の真空VTによれば、1次側絶縁筒を通過する電界分布を均等化することができる。その結果、真空VTの耐電圧を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明の真空VTについて具体的な実施形態を示して詳細に説明したが、本発明の真空VTは、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、そのように変更された形態も本発明の技術範囲に属する。
【0039】
例えば、本発明の真空VTは、1次側コンデンサを形成する電極の形状に係る発明であるので、真空VTの構成は、実施形態に限定されるものではなく、引用文献1の真空VTの1次側コンデンサに適用しても同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、
図2(b)〜(e)、
図3(b)〜(d)を参照して説明した内部1次電極または内部2次電極の形状は、個々の形状がそれぞれ電界集中を緩和する効果を有するので、それぞれの電極形状を個々に用いて真空VTを構成しても、各電極の形状を組み合わせて真空VTを構成しても電界集中を緩和することができ、真空VTの耐電圧を向上させることができる。
【0041】
また、1次側コンデンサを形成する内部1次電極や内部2次電極の数は、真空VTを構成するために必要な静電容量を得ることができるように適宜必要な数を設ければよい。例えば、
図4に示すように、2つの内部1次電極8a,8g、3つの内部2次電極11a,11b,11eを設けて真空VT18を構成することもできる。この場合、内部1次電極8aの端部(または、内部1次電極8gの端部)が設けられる空間が広くなるように、内部2次電極11a,11eの2次側端板11との接続部近傍の電極間距離(または、内部2次電極11e,11bの2次側端板11との接続部近傍の電極間距離)が広く形成される。同様に、内部2次電極11eの端部が設けられる空間が広くなるように、内部1次電極8a,8gの1次側端板8との接続部近傍の電極間距離が広く形成される。したがって、内部1次電極8gの電極の厚さは、1次側端板8との接続部近傍で薄くなる。同様に、内部2次電極11eの電極の厚さは、2次側端板11との接続部近傍で薄くなる。なお、真空VT18の最外周に設けられる内部2次電極11aの形状と、最内周に設けられる内部2次電極11bの形状は、実施形態に係る真空VT1と同じ形状である。