(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルム長手方向における金属との摩擦係数μkが1.2以下であり、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が0.3%以下であり、フィルムのβ晶形成能が40%以上である多孔性ポリオレフィンフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、フィルム長手方向における金属との摩擦係数μkが1.2以下であり、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が0.3%以下であ
り、フィルムのβ晶形成能が40%以上である多孔性ポリオレフィンフィルムである。
【0009】
ここで、本願においては、フィルムを製膜する方向に平行な方向を、製膜方向あるいは長手方向あるいはMDと称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向、横方向あるいはTDと称する。フィルム長手方向における金属との摩擦係数μkが1.2より大きくなると、フィルム搬送しながら耐熱層などの機能層を塗布する工程において、金属ロールとの摩擦が大きくなり金属ロール上でフィルムが滑らず搬送張力によってフィルム長手方向にシワが発生する場合がある。フィルムと金属との摩擦係数μkは1.1以下が好ましく、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.9以下である。摩擦係数μkの下限は特に限定しないが、0.1とするものである。
【0010】
また本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が0.3%を超える場合、フィルム搬送しながら耐熱層などの機能層を塗布し、機能層バインダーを乾燥する搬送工程において、フィルム長手方向にシワが発生する場合がある。アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化は0.2%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。前記のように収縮や膨張の変化率は小さいほど好ましく、膨張と収縮では収縮側になることが、乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層を塗布する工程において、搬送されるフィルムのシワ発生を抑制する観点から好ましい。これは塗布工程でフィルムが溶剤含浸した状態で搬送用金属ロールにフィルムが接触したとき膨張挙動が大きいと金属ロールとフィルムの摩擦でフィルムは幅方向への変形ができず、膨張変形した分は折れシワを形成する挙動になりやすいと考えるものである。ここで、乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層の塗布工程において、搬送されるフィルムのシワ発生を抑制させる観点から、上述した摩擦係数μkおよび、フィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化を本発明の規定する範囲内とするには、後述する、製膜時の延伸、熱処理、弛緩条件を後述する範囲内とすることにより制御可能である。
【0011】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する孔(以下、貫通孔という)を有し、ポリオレフィン樹脂を主成分とする。「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることを意味し、100質量%であっても良いことを意味する。この貫通孔を有する多孔性フィルムを得る方法としては、上記の特性を満たしていれば、製法や材質は特に限定されず、種々の方法を採用することができるが、主成分の材質はポリプロピレンを用いると、材料コストを低減できセパレータを低価格で製造できるため好ましい。製法としては、後述するβ晶法を用いると二軸延伸により生産性良く製膜可能であり好ましい。
【0012】
以下に、β晶法を例にとって、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの好ましい形態について説明する。
【0013】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、β晶形成能が40%以上であるポリプロピレンを主成分とすることが好ましい。「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であることを意味する。
【0014】
β晶法とは、キャストシートに生成させたβ晶を、縦延伸により製膜方向に配向したフィブリルとし、そのフィブリルを横延伸で開裂させながら網目を形成させることにより、多孔性ポリプロピレンフィルムを得る方法である。尚、キャストシートとは、溶融したポリオレフィン樹脂をキャストドラム上でシート状に成型した、未延伸のシートを示す。
【0015】
β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成せしめるため、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムのβ晶形成能が40%以上であることが好ましい。β晶形成能が40%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。一方、β晶形成能が90%を超えるようにするのは、後述するβ晶核剤を多量に添加したり、使用するポリプロピレン樹脂の立体規則性を極めて高くしたりする必要があり、製膜安定性が低下するなど工業的な実用価値が低い。工業的にはβ晶形成能は60〜90%が好ましく、65〜85%が特に好ましい。
【0016】
β晶形成能を40〜90%に制御するためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用したり、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いたりすることが好ましい。
【0017】
β晶核剤としては、たとえば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、コハク酸マグネシウムなどのカルボン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドに代表されるアミド系化合物、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのテトラオキサスピロ化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアンニン系顔料、キナクリドン系顔料を好ましく挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の含有量としては、ポリプロピレン組成物全体を基準とした場合に、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であればより好ましい。0.05質量%未満では、β晶の形成が不十分となり、多孔性ポリプロピレンフィルムの透気性が低下する場合がある。0.5質量%を超えると、粗大ボイドを形成し、フィルム搬送しながら耐熱層などの機能層を塗布し、機能層バインダーが乾燥するまでの塗布前後でフィルムの寸法変化が大きくなるため、搬送工程のフィルム長手方向にシワが発生する原因となりうる。
【0018】
本発明で用いるポリプロピレン樹脂には、メルトフローレート(以下、MFRと表記する)が2〜30g/10分のアイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いることが押出成形性及び孔の均一な形成の観点から好ましい。ここで、MFRとはJIS K 7210(1995)で規定されている樹脂の溶融粘度を示す指標であり、ポリオレフィン樹脂の特徴を示す物性値である。本発明においては230℃、2.16kgで測定した値を指す。本発明においてはポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスは90〜99.9%の範囲であることが好ましい。より好ましくは95〜99%である。アイソタクチックインデックスが90%未満の場合、樹脂の結晶性が低くなってしまい、製膜性が悪化したり、フィルムの強度が不十分となる場合がある。
【0019】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを形成するポリプロピレン組成物としては、ホモポリプロピレンを用いることができるのはもちろんのこと、本発明の目的を損なわない範囲であればプロピレンにプロピレン以外の単量体を共重合したランダム共重合体やブロック共重合体としてもよいし、ポリプロピレンに前記共重合体をブレンドしてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘプテン、1−ノネン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複数の押出機を用いたりラミネート法により得られる積層フィルムにおいては、少なくとも1つの層の主成分がポリプロピレン樹脂であることが好ましく、積層フィルム全体として主成分がポリプロピレン樹脂であることが更に好ましい。
【0020】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを形成するポリプロピレン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機あるいは有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましいが、ポリプロピレン組成物100質量部に対して酸化防止剤添加量は2質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。
【0021】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを形成するポリプロピレン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、無機あるいは有機粒子からなる孔形成助剤を含有させてもよい。含有量はポリプロピレン組成物100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。5質量部を超えると、セパレータとして使用したとき、脱落した粒子が電池性能を低下させたり、原料コストが高くなり、生産性が低下する場合がある。
【0022】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、フィルム長手方向のヤング率fMDと幅方向のヤング率fTDの関係が次式を満たすことが好ましい。
【0023】
0.8<fMD/fTD<2
フィルム長手方向のヤング率fMDと幅方向のヤング率fTDの関係であるfMD/fTDが0.8以下である場合、実質的に幅方向のヤング率が高くTD配向している状態になり、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の寸法変化が大きく、乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層の塗布工程において、搬送されるフィルムのシワ発生が生じやすくなる。他方、fMD/fTDが2以上の場合には、実質長手方向のヤング率が極めて高く、フィルム製造時の延伸過程では長手方向に延伸倍率を高める必要があり、縦裂けして破れるなど生産効率が低下する場合がある。上記観点からフィルム長手方向のヤング率fMDと幅方向のヤング率fTDの関係は、バランス化もしくはMDがやや高ヤング率の状態が好ましく、0.9<fMD/fTD<1.8が好ましく、1.0<fMD/fTD<1.6がより好ましい。
【0024】
また本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの長手方向のヤング率fMDは500MPa以上であることが好ましい。長手方向のヤング率fMDが500MPa未満である場合には、フィルム自体の剛性が不足し、塗布搬送工程の巻出し・巻取りで制御される搬送張力において、フィルムが変形しシワが発生する場合がある。fMDを高める場合にはフィルム製造時の延伸過程で長手方向に延伸倍率を高める必要があり、縦裂けして破れるなど生産効率が低下する場合があり、またfMD/fTDのバランスも好ましい範囲とする観点から、長手方向のヤング率fMDは500MPa以上、より好ましくは550MPa以上、さらに好ましくは600MPa以上1,200MPa以下である。本発明ではfMDの上限は特に限定しないが、実質的には2,000MPaとするものである。
【0025】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは引張試験で得られるフィルム長手方向の5%伸長時応力(f5−MD)と幅方向の5%伸長時応力(f5−TD)の関係が次式を満たすことが好ましい。
【0026】
0.7<(f5−MD)/(f5−TD)<1.8
引張試験で得られるフィルム長手方向の5%伸長時応力(f5−MD)と幅方向の5%伸長時応力(f5−TD)の関係である(f5−MD)/(f5−TD)が0.7以下である場合、実質的に幅方向のf5値が高くTD配向している状態になり、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の寸法変化が大きく、乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層の塗布工程において、搬送されるフィルムのシワ発生が生じやすくなる。他方、(f5−MD)/(f5−TD)が1.8以上の場合には、実質長手方向のf5値が極めて高く、フィルム製造時の延伸過程では長手方向に延伸倍率を高める必要があり、縦裂けして破れるなど生産効率が低下する場合がある。上記観点から引張試験で得られるフィルム長手方向の5%伸長時応力(f5−MD)と幅方向の5%伸長時応力(f5−TD)の関係は、バランス化もしくはMDがやや高f5値の状態が好ましく、0.8<(f5−MD)/(f5−TD)<1.6が好ましく、0.9<(f5−MD)/(f5−TD)<1.4がより好ましい。
【0027】
また本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの引張試験で得られるフィルム長手方向の5%伸長時応力(f5−MD)は20MPa以上であることが好ましい。(f5−MD)が20MPa未満である場合には、フィルム自体の剛性が不足し、塗布搬送工程の巻出し・巻取りで制御される搬送張力において、フィルムが変形しシワが発生する場合がある。(f5−MD)を高める場合にはフィルム製造時の延伸過程で長手方向に延伸倍率を高める必要があり、縦裂けして破れるなど生産効率が低下する場合があり、また(f5−MD)/(f5−TD)のバランスも好ましい範囲とする観点から、(f5−MD)は20MPa以上、より好ましくは23MPa以上、さらに好ましくは25MPa以上である。本発明ではfMDの上限は特に限定しないが、実質的には50MPaとするものである。
【0028】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、120℃、1時間処理後のフィルム幅方向の熱収縮率が3%以下であることが好ましい。熱収縮率が3%を超える場合は蓄電デバイス用セパレータとして使用した際に、発生した熱によって容易に収縮し短絡を引き起こす場合がある。熱収縮率は小さいほど好ましいが、実質的には0.01%程度が下限であり、蓄電デバイス用セパレータとして安全性向上の観点から120℃、1時間処理後の幅方向における熱収縮率は0.01%以上3%以下が好ましく、より好ましくは0.01%以上2%以下が好ましく、さらに好ましくは0.01%以上1%以下である。熱収縮率を好ましい範囲とするには後述する延伸、熱処理、弛緩率を適宜調整することで可能である。
【0029】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、空孔率が35〜85%であることが好ましい。空孔率が35%未満では、特に高出力電池用のセパレータとして使用したときに電気抵抗が大きくなる場合がある。一方、空孔率が85%を超えると、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張あるいは収縮の寸法変化が大きくなる場合がある。乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層を塗布する工程において、搬送されるフィルムのシワ発生を抑制する観点から、フィルムの空孔率は38〜75%であればより好ましく、40〜70%であれば特に好ましい。空孔率は、後述するキャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、熱処理工程での温度と時間、およびリラックスゾーンでの弛緩率を後述する範囲内とすることにより制御可能である。
【0030】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、透気抵抗が50〜1,000秒/100mlであることが好ましく、70〜800秒/100ml、さらに好ましくは90〜600秒/100ml、最も好ましくは100〜500秒/100mlである。透気抵抗が1,000秒/100mlを超えると、セパレータに用いたとき出力特性が低下する場合がある。出力特性の観点からは透気抵抗は低いほど好ましいが、50秒/100ml未満であると、フィルムの機械強度が低下してハンドリング性が低下したり、セパレータに用いたときサイクル特性などの電気特性が低下する場合がある。β晶法で透気抵抗を制御する場合、後述する、延伸時の条件および熱処理・弛緩処理の条件を後述する範囲内とすることにより制御可能である。
【0031】
なお、製膜機の運転条件による透気抵抗の制御を実施する場合、透気抵抗を低くしようとすると多孔性ポリオレフィンフィルムの空孔率が高くなり、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が大きくなる場合があった。そこで、本発明においては、横延伸後の熱処理条件以降の条件を後述するような特定の条件とすることにより、透気抵抗が低くかつアセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が小さい多孔性ポリオレフィンフィルムを得ることができた。
【0032】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、フィルム厚みが5〜50μmであることが好ましい。厚みが5μm未満では使用時にフィルムが破断する場合があり、50μmを超えると蓄電デバイス内に占める多孔性ポリオレフィンフィルムの体積割合が高くなりすぎてしまい、高いエネルギー密度を得ることができなくなることがある。かかる観点からフィルム厚みは10〜30μmであればより好ましく、12〜25μmであればなお好ましい。
【0033】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、本発明の効果を損ねない範囲で、様々な効果を付与する目的で積層構成をとっても構わない。積層数としては、2層積層でも3層積層でも、また、それ以上の積層数でもいずれでも構わない。積層の方法としては、共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式でも、ラミネートによる多孔性フィルム同士を貼り合わせる方法でもいずれでも構わない。積層構成とする場合には、表層を構成する樹脂にはポリエチレン系樹脂、エチレン共重合樹脂を含まないことが好ましい。表層にエチレン成分が存在すると電池用セパレータとして使用したとき耐酸化性が低下する場合がある。
【0034】
以下に本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの製造方法を具体的な一例をもとに説明する。なお、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0035】
ポリプロピレン樹脂として、MFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂99.5質量部、β晶核剤としてN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.3質量部、酸化防止剤0.2質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給して溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン原料(a)を準備する。この際、溶融温度は270〜300℃とすることが好ましい。
【0036】
次に、ポリプロピレン原料(a)を単軸の溶融押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。次に、途中に設置したフィルターにて、異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。ここでキャストドラムは、表面温度が105〜130℃であることが、キャストフィルムのβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にシートの端部の成形が、後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態から、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
【0037】
次に、得られたキャストフィルムを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、透気性とフィルム機械特性のバランスの取れたフィルムを得やすいという点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に、長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
【0038】
具体的な延伸条件としては、まず、キャストフィルムを長手方向に延伸する温度に制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としては、90〜140℃であることが好ましい。90℃未満では、フィルムが破断する場合がある。140℃を超えると、孔構造が不均一になったり、透気性が低下する場合がある。長手方向の延伸温度が高い方が長手方向のヤング率fMDが高い傾向があり、この観点から、より好ましくは110〜135℃、特に好ましくは120〜130℃である。延伸倍率としては、3〜6.5倍であることが好ましい。延伸倍率を高くするほど長手方向のヤング率fMDは向上するが、6.5倍を超えて延伸すると、次の横延伸工程でフィルム破れが起きやすくなる場合がある。延伸倍率はより好ましくは4.5〜6倍である。
【0039】
続いて、縦延伸後のフィルムの端部をクリップで把持し、長手方向の張力を保ったまま横延伸を行う。横延伸温度は、好ましくは130〜155℃である。130℃未満ではフィルムが破断する場合があり、155℃を超えると透気性が低下する場合がある。より好ましくは145〜155℃である。幅方向の延伸倍率は2〜12倍であることが好ましい。2倍未満であると、透気性が低下したり、幅方向の平面性が低下する場合がある。12倍を超えるとフィルムが破断する場合がある。幅方向の延伸倍率は高すぎると長手方向のヤング率fMDが低下する場合があるため、より好ましくは3〜10倍、更に好ましくは4〜9倍である。なお、このときの横延伸速度としては、500〜6,000%/分で行うことが好ましく、1,000〜5,000%/分であればより好ましい。面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)としては、好ましくは30〜60倍である。
【0040】
横延伸に続いて、横延伸後の幅のまま熱処理工程を行う。ここで熱処理工程は、横延伸後の幅のまま熱処理を行う熱固定ゾーン(以後、HS1ゾーンと記す)、横延伸後の幅方向にクリップ幅を狭めてフィルムを幅方向へ弛緩させながら熱処理を行うリラックスゾーン(以後、Rxゾーンと記す)、リラックス後の幅のまま熱処理を行う熱固定ゾーン(以後、HS2ゾーンと記す)の3ゾーンに分かれる。本発明においては、HS2ゾーンの後に幅方向に延伸倍率の小さな延伸(以下、微延伸ということがある)を行うことが、透気性の発現、機械物性バランス化およびアセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化を小さくする観点から好ましい。
【0041】
HS1ゾーンの温度は、140〜165℃であることが好ましい。140℃未満であると、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張あるいは収縮の寸法変化が大きくなる場合がある。165℃を超えると、フィルムの配向が緩和しすぎ、続くRxゾーンにおいて弛緩率を高くできず、透気性と機械強度との両立が困難であったり、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透気抵抗が大きくなる場合がある。透気性の発現、機械物性バランス化およびアセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化を小さくする観点から150〜165℃であればより好ましい。
【0042】
HS1ゾーンでの熱処理時間は、幅方向の熱収縮率と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましい。
【0043】
本発明におけるRxゾーンでの弛緩率は13〜35%であることが好ましい。弛緩率が13%未満であると幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。35%を超えると透気性が低下したり、幅方向の厚み斑や平面性が低下する場合がある。機械物性バランス化およびアセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化を小さくする観点から、15〜25%であるとより好ましい。
【0044】
Rxゾーンの温度は、155〜170℃であることが好ましい。Rxゾーンの温度が155℃未満であると、弛緩の為の収縮応力が低くなり、上述した高い弛緩率を達成できなかったり、幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。170℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透気性が低下する場合がある。透気性向上と熱収縮率低減の観点から、160〜165℃であるとより好ましい。
【0045】
Rxゾーンでの弛緩速度は、100〜1,000%/分であることが好ましい。弛緩速度が100%/分未満であると、製膜速度を遅くしたり、テンター長さを長くする必要があり、生産性に劣る場合がある。1,000%/分を超えると、テンターのレール幅が縮む速度よりフィルムが収縮する速度が遅くなり、テンター内でフィルムがばたついて破れたり、幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。弛緩速度は、150〜500%/分であることがより好ましい。
【0046】
HS2ゾーンの温度は、155〜165℃であることが好ましい。155℃未満であると、熱弛緩後のフィルムの緊張が不十分となり、幅方向の物性ムラや平面性低下を生じたり、幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。また、155℃未満では長手方向のヤング率fMDが不十分になる場合がある。他方165℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透気性が低下する場合がある。透気性の発現、機械物性バランス化およびアセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化を小さくする観点から、HS2ゾーンの温度は、160〜165℃であることがより好ましい。HS2ゾーンでの熱処理時間は、機械強度および幅方向の物性ムラや平面性と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましい。
【0047】
本発明においてはHS2ゾーン後の徐冷雰囲気下で幅方向に1.01〜1.1倍の微延伸を行うことがアセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化を小さくし、また収縮側とする観点からも好ましい。直前のHS1、Rx、HS2各ゾーンでは延伸による残留歪みを十分に開放する故、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の寸法変化が膨張側に大きくなり易いが、該微延伸によってMD配向を維持したままTD配向を変化することができ、その結果、膨張側に大きくなった寸法変化を小さく、さらには収縮側にすることが可能になるものと考える。微延伸速度は、100〜1,000%/分であることが好ましい。微延伸速度が100%/分未満であると、製膜速度を遅くしたり、テンター長さを長くする必要があり、生産性に劣る場合がある。1,000%/分を超えると、テンターのレール幅が広がる速度よりフィルムが微延伸する速度が遅くなり、テンフィルムが破れたり、幅方向の物性ムラや平面性の低下を生じる場合がある。微延伸速度は、150〜500%/分であることがより好ましい。また微延伸が1.1倍を超えると製膜時に破れが生じる場合がある。
【0048】
次いで微延伸後のフィルムは、横延伸機のクリップで把持した耳部を除去して製品とする。
【0049】
その後、少なくとも片面にコート層を設けて、積層多孔性フィルムとしてもよい。本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは耐有機溶剤性に優れるため、有機溶剤を用いてコーティングを実施しても高い透気性を保つことが可能である。コーティング方法としては種々の手法を用いることができ、例えば、溶剤にアセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、Nメチル2ピロリドンなどから選ばれる少なくとも1種類の有機溶剤を使用し、耐熱樹脂や無機粒子と、必要に応じてバインダーなどの添加剤を添加して塗剤を調合し、ダイコート法やグラビアコート法を用いて、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの少なくとも片面に塗工し、乾燥オーブンを用いて溶剤を乾燥させることにより積層多孔性フィルムを得ることができる。
【0050】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムおよび積層多孔性フィルムは、強度や耐熱性に優れることから、電池や電解コンデンサーのセパレータや各種分離膜、衣料、医療用途における透湿防水膜、フラットパネルディスプレイの反射板や感熱転写記録シートなど多岐に亘る用途で用いることができ、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラなどのモバイル機器などに広く使用されている蓄電デバイス用のセパレータとして好適である。
【0051】
ここで、蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタなどの電気二重層キャパシタなどを挙げることができる。このような蓄電デバイスは充放電することで繰り返し使用することができるので、産業装置や生活機器、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの電源装置として使用することができる。特に本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを用いたセパレータを使用した蓄電デバイスは、表層に耐熱層などの機能層をコーティングするための基材用多孔性フィルムとして好適である。さらに本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムに耐熱層などの機能層を付与した積層多孔性フィルムは、出力特性と安全性に優れることから電気自動車用の非水電解液二次電池に好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0053】
(1)金属との摩擦係数μk
テープ走行性試験機を用いて下記条件にてフィルム長手方向の摩擦係数μkを測定した。
【0054】
測定装置:(株)横浜システム研究所製テープ走行性試験機TBT−300型
試料寸法:幅方向10mm、長手方向:300mm(測定長:100mm)
測定環境:温度23.5℃、湿度65%RH
ガイドロール:SUS27(6mmφ,表面粗度0.2S)
巻き付け角度:90°
走行速度:3.3cm/s
初期荷重:30g
繰り返し走行回数:10回
フィルム端部をテープ走行性試験機に粘着テープで貼り付け、ガイドロールに沿わせる。装置貼り付け部と反対のフィルム端部に初期荷重おもりをつり下げ、測定をおこなった。
【0055】
入側張力T1、出側張力T2から次式を用いて摩擦係数μkを算出した。
【0056】
摩擦係数μk=(2/π)×ln(T1/T2)
なお、1回目の摩擦係数をμkとして算出した。
【0057】
(2)アセトン含浸中の寸法変化
多孔性ポリオレフィンフィルムを長手方向×幅方向:150mm×200mmの長方形にサンプルを切りだし、該サンプルの長辺の距離をデジタルノギスにて計測し、幅方向の初期寸法(L
0)とした。ついで該サンプルを株式会社生産日本社製のチャック付きポリエチレン袋ユニパックI−4(280×2,000×0.04mm)に入れ、アセトンを20ml入れポリエチレン袋のチャックを閉じ、サンプルを5分間アセトンに浸した後、ポリエチレン袋に入れたままの状態で初期寸法を計測した長辺の距離をデジタルノギスにて計測し、幅方向のアセトン浸漬時寸法(L
1)とした。次式からアセトン含浸中の寸法変化を算出した。値が負の場合は収縮、正の場合は膨張とする。
【0058】
アセトン含浸中の寸法変化={(L
1−L
0)/L
0}×100(%)
(3)長手方向のヤング率(fMD)および幅方向のヤング率(fTD)
JIS K7127(1999.)に規定された測定方法に準じて行った。多孔性ポリオレフィンフィルムを長手方向および幅方向についてそれぞれ長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。23℃65%RHの雰囲気下にて、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向および幅方向に引張試験を行った。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0059】
なお、フィルムの厚みは以下のように測定を行った。長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルの初期チャック間距離50mmの中で任意の5ヶ所について接触式のダイヤルゲージ式厚み計(JIS B−7503(1997)、PEACOCK製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子10mmφ平型、50gf荷重)を用いて、厚みを測定し、その平均値を多孔性ポリオレフィンフィルムの厚みとした。
【0060】
(4)長手方向の5%伸長時応力(f5−MD)および幅方向の5%伸長時応力(f5−TD)
上記(3)と同様にしてフィルムの長手方向および幅方向に引張試験を行った。測定は各サンプル5回ずつ行い引張伸度5%の時点の応力を応力−歪み曲線から読みとり、その平均値を求めた。
【0061】
(5)β晶形成能
多孔性ポリオレフィンフィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
【0062】
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
【0063】
(6)透気抵抗
多孔性ポリオレフィンフィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を行った。測定は試料を替えて3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気性とした。なお、フィルムに貫通孔が形成されていることは、この透気性の値が有限値であることをもって確認できる。
【0064】
(7)120℃、1時間処理での熱収縮率(幅方向)
フィルムの幅方向について、幅10mm、長さ200mmの試料を5本切り出し、両端から25mmの位置に印を付けて試長150mm(l
0)とする。次に、荷重3gを付けて120℃に保温されたオーブン内に吊し、1時間加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l
1)を測定して下記式にて求め、5本の平均値を熱収縮率とした。
【0065】
熱収縮率={(l
0−l
1)/l
0}×100(%)
(8)搬送時のシワの発生度合い
多孔性ポリオレフィンフィルムロールを幅250mmにスリットし、長さ100mのフィルムロールを得た。巻出機にフィルムロールをセットし、HCr製金属フリーロール(表面粗さRa=0.4μm)を2箇所介した状態で、搬送速度13m/分、搬送張力1.5kg/250mm幅で搬送し巻取った。搬送中、巻出機から1つ目のHCr製金属フリーロールを介するまでの区間においてフィルムが十分にアセトン浸透するようスプレーコーティングしながら5分間搬送し、HCr製金属フリーロールの1つ目と2つ目の区間で発生するMD方向の折れシワの有無を目視観察した。搬送している5分間のうち、シワが発生した時間の合計の割合を測定し、以下の基準で評価した。◎、○が合格である。
【0066】
◎:0%以上5%未満
○:5%以上10%未満
×:10%以上
(実施例1)
ポリオレフィン樹脂として、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.5質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物を得た。
【0067】
得られたポリプロピレン組成物を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから125℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、未延伸シートを得た。ついで、124℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.5倍延伸を行った。次いで縦延伸後のフィルム端部をクリップで把持させて横延伸機へ導入し、149℃で8.5倍に、延伸速度1,800%/分で延伸した。そのまま幅方向を把持したままHS1ゾーンにて163℃で熱処理し、引き続き幅方向に20%のリラックスを掛けながら163℃で熱処理を行い、最後に幅方向を把持したままHS2ゾーンにて163℃の熱処理を行い、HS2ゾーン後の徐冷雰囲気下で幅方向に1.015倍微延伸を施し、厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0068】
(実施例2)
表1に示す製造条件において実施例1の条件から横延伸倍率を6.5倍とし、横延伸倍率を151℃とした以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0069】
(実施例3)
表1に示す製造条件において実施例1の条件から延伸時のMD温度を120℃とし、熱処理条件としてHS1、Rx、HS2の各ゾーンを161℃とした以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0070】
(実施例4)
表1に示す製造条件において実施例1の条件から縦延伸倍率を5.0、縦延伸温度を115℃とし、横延伸倍率を9.0倍、Rxゾーンの弛緩処理率を17%とした以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0071】
(実施例5)
表1に示す製造条件において実施例3の条件からHS2ゾーン後の徐冷雰囲気下で幅方向の微延伸倍率を1.050倍とした以外は実施例3と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0072】
(比較例1)
表1に示す製造条件において実施例1の条件から、縦延伸倍率を5.0倍、温度を120℃、横延伸倍率を9.5倍、横延伸後のRxゾーンの弛緩処理率を17%とした以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0073】
(比較例2)
HS2ゾーン後の徐冷雰囲気下で幅方向に1.015倍微延伸を行わない以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0074】
(比較例3)
表1に示す製造条件において実施例1の条件から縦延伸倍率を5.0倍、縦延伸温度を120℃、横延伸倍率を9.5倍、横延伸温度を148℃、HS1、Rx、HS2の各ゾーンを164℃とした以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0075】
(比較例4)
表1に示す製造条件において実施例1の条件からHS2ゾーン後の徐冷雰囲気下で幅方向の微延伸倍率を1.200倍とした以外は実施例1と同様にして製膜し厚み17μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをコアに500m巻き取り製品ロールを得た。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明の要件を満足する実施例では透気性、熱寸法安定性に優れるだけでなく、フィルム長手方向における金属との摩擦係数μkが小さく、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が小さいことから、乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層を塗布する工程において、搬送されるフィルムのシワ発生を抑制し、平面性に優れ、蓄電デバイス用セパレータとして好適に用いることが可能であると考えられる。一方、比較例では、フィルム長手方向における金属との摩擦係数μkが大きく、アセトンにフィルムを浸漬させた状態におけるフィルム幅方向の膨張または収縮の寸法変化が大きいなど、乾燥速度の速い有機溶剤を用いて生産性を向上させた耐熱層などの機能層を塗布する工程において、搬送されるフィルムのシワ発生を抑制できず、平面性に劣り、蓄電デバイス用セパレータとして用いることが困難である。