(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動軸を駆動するエンジンと、前記エンジンから伝達される動力で発電すると共にバッテリから供給される電力で前記駆動軸を駆動する回転電機とを備えたハイブリッド車の制御装置であって、
ドライバの要求出力に基づいて目標出力を演算する演算手段と、
前記目標出力に基づいて前記エンジンの出力を増減制御して前記エンジンに駆動力を発生させると共に、前記増減制御の異常が検出された際は前記エンジンの出力を、電子制御スロットルの電源を落として吸気量を一定量以下に固定することで発生する所定出力に維持制御して所定駆動力を発生させるエンジン制御手段と、
前記目標出力と前記エンジンの出力とに基づいて前記回転電機を制御する回転電機制御手段と、
前記バッテリの充電容量を検出するバッテリ検出手段と、を備え、
前記増減制御の異常が検出された際に、前記バッテリ検出手段で検出された前記充電容量が所定量以上、且つ、前記目標出力が前記所定出力未満である場合は、前記エンジン制御手段は前記エンジンの前記維持制御を禁止して前記エンジンを停止させると共に、前記回転電機制御手段は前記目標出力を前記回転電機に発生させ、
前記増減制御の異常が検出された際に、前記バッテリ検出手段で検出された前記充電容量が前記所定量以上、且つ、前記目標出力が前記所定出力以上である場合は、前記エンジン制御手段は前記エンジンに前記所定出力を発生させると共に、前記回転電機制御手段は前記目標出力から前記所定出力を引いた差分を補うように前記回転電機に駆動力を発生させる
ことを特徴とする、ハイブリッド車の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.装置構成]
本実施形態に係るハイブリッド車の制御装置の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本制御装置の全体構成を示すブロック図であり、
図2は本制御装置を備えた車両の構成図である。
【0016】
図2に示すように、車両1は、エンジン(ENG)2及び回転電機(MG;以下、駆動モータという)3を駆動源とするパラレル式のハイブリッド電気自動車(HEV;ハイブリッド車)である。エンジン2は、例えば多気筒のガソリンエンジンであり、その出力軸には駆動モータ3の回転軸の一端が接続される。駆動モータ3の回転軸の他端にはトランスアクスル4が接続され、トランスアクスル4には、ドライブシャフト(駆同軸)5を介して左右の駆動輪6に接続される。したがって、この車両1は、エンジン2及び駆動モータ3の少なくとも一方の出力で車両1の駆動力を発生させて走行する。
【0017】
エンジン2は、一般的なポート噴射式のガソリンエンジンであって、ドライブシャフト5を駆動する駆動源である。エンジン2の吸気通路には、電子制御スロットル(ETV;何れも図示略)が介装される。この電子制御スロットルは、後述のエンジンECU23のエンジン制御部23aによって開度が制御される。これにより、吸気通路を流通する吸気の流量が調整され、エンジンの出力の増減制御が行われる。また、エンジン2の吸気ポートにはインジェクタ(何れも図示略)が装備され、吸気の流量に適した量の燃料がインジェクタから噴射され、燃焼室内に導入された吸気と混合される。
【0018】
駆動モータ3は、モータ(電動機)としての機能とジェネレータ(発電機)としての機能とを兼ね備えた電動発電機(MG)であり、インバータ(INV)7を介してバッテリ(BAT)8に接続される。駆動モータ3がモータとして作動するときには、バッテリ8に蓄えられた直流電力がインバータ7で交流電力に変換され、駆動モータ3に供給される。駆動モータ3で発生したモータ出力(モータ駆動力)は、トランスアクスル4を介して駆動輪6に伝達され、車両1を駆動する。
【0019】
また、車両減速時及び制動時には、駆動モータ3はジェネレータとして作動し、発電駆動(回生駆動)される。このとき、駆動輪6の回転による運動エネルギが駆動モータ3に伝達され、交流電力に変換されることにより回生制動力を発生する。そして、この交流電力はインバータ7で直流電力に変換された後、バッテリ8に充電され、駆動輪6の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0020】
駆動モータ3は、エンジン2の出力(エンジン2から伝達される動力)によってもジェネレータとして作動して発電する。つまり、駆動モータ3は、エンジン2の回転による運動エネルギが伝達されると、エンジン2の出力を交流電力に変換して、その電力をインバータ7を介してバッテリ8に充電し、エンジン2の出力を電気エネルギとして回収する。
【0021】
トランスアクスル4は、クラッチ41C及びギヤボックス41Gを内蔵した多段式の変速機(T/M)41と、ディファレンシャルギヤ(差動装置)42とを一体に形成した動力伝達装置である。トランスアクスル4は、駆動源であるエンジン2及び駆動モータ3と駆動輪6との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。変速機41は、変速段の変更時(すなわち変速中)には、まずクラッチ41Cを切断して現在のギアの噛み合いを外し、次の変速段のギアを噛み合わせた後、クラッチ41Cを接続することで変速を完了させる。
【0022】
エンジン2の出力は、駆動モータ3の回転軸を経由して変速機41に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪6に伝達される。したがって、エンジン2の出力が駆動輪6に伝達されているときに駆動モータ3がモータとして作動する場合には、エンジン2の出力と駆動モータ3の出力とがそれぞれ駆動輪6に伝達される。言い換えると、車両1の走行のために駆動輪6に伝達されるべき出力の一部がエンジン2から供給されると共に、残りが駆動モータ3から供給される。なお、エンジン2の出力が駆動輪6に伝達されているときに駆動モータ3がジェネレータとして作動する場合には、エンジン2の出力の一部を用いて駆動モータ3が発電を実施し、エンジン2の出力の残りが駆動輪6に伝達される。
【0023】
一方、駆動モータ3のみを駆動させる場合は、エンジン2では燃料噴射が行われず、エンジン2が空回り(供回り)の状態とされる。そして、変速機41のクラッチ41Cが接続中であれば、駆動モータ3の出力のみが駆動輪6に伝達されて車両1を駆動する。
【0024】
バッテリ8は、バッテリケース内に複数の電池モジュールが収容されて構成された二次電池(例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池といったエネルギ密度の高い蓄電装置)であり、駆動モータ3に対して電力を入出力可能(充放電可能)に構成されている。つまり、バッテリ8は、駆動モータ3への駆動用の電力供給と、駆動モータ3からの発電電力の充電とが可能である。各電池モジュールは、例えばそのケース内に複数の電池セルが直列に接続されて収容された組電池である。なお、バッテリケースは、車室内(例えば、車両1のトランクルーム内やインパネの内部等)の位置に固定される。
【0025】
バッテリ8は、予め使用(運用)することに適した充電率(State of Charge,SOC;充電容量)の範囲(運用充電率範囲)が設定されている。この運用充電率範囲とは、例えばバッテリ8の耐久性や、バッテリ8を搭載した電気機器が要求する出力や、バッテリ8の運用上の要請等によって定められた電池内部の充電量の目標変動範囲である。例えば、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両に搭載されるバッテリでは、この運用充電率範囲の上限値SOC
Hは70%に設定され、下限値SOC
Lは30%前後に設定され、充電率SOCが下限値SOC
L未満に追い込まれないように(低下しないように)バッテリ8が運用される。
【0026】
なお、この運用充電率範囲はバッテリの種類によって適宜設定される。また、充電率SOCとは、電池に充電されている電力を簡便に把握するための指標の一つであり、例えば満充電時の容量に対する残容量の百分率で表現され、式で表すと以下の式(1)で定義される。
【0028】
また、車両1の運転席にはアクセルペダル9が設けられ、このアクセルペダル9の近傍には、アクセル位置センサ(APS)21が設けられる。アクセル位置センサ21は、アクセルペダル9の踏み込み操作量に相当するアクセル位置A
Pを検出するものであり、このアクセル位置A
Pはドライバの要求する出力の大きさ(要求出力)に対応する。つまり、ドライバの要求する出力が大きい場合(加速要求がある場合)は、ドライバによるアクセルペダル9の踏み込み量は大きくなり、ドライバの要求する出力が小さい場合(定常走行や減速要求がある場合)は、アクセルペダル9の踏み込み量は小さくなる。アクセル位置センサ21は、例えばドライバによるアクセルペダル9の踏み込み操作量に応じた位置信号を出力する。アクセル位置センサ21で検出された情報は、随時ハイブリッドECU(HEV_ECU)20へ伝達される。
【0029】
車両1には、この他にも、車速を検出する車速センサ,エンジン2のインテークマニホールド内の圧力(インマニ圧)を検出するインマニ圧センサ,エンジン2の回転速度を検出する回転速度センサ,スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ,ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキセンサ,外気温度を検出する温度センサ等(何れも図示略)、種々のセンサが装備されており、これらのセンサで検出された各情報は、随時ハイブリッドECU20へ伝達される。
【0030】
車両1には、これら装置を制御する電子制御装置(Electronic Control Unit)が設けられる。すなわち、バッテリ8の管理や制御を実施するバッテリECU(BMU)22,エンジン2を制御するエンジンECU(ENG_ECU)23,駆動モータ3及びインバータ7を制御するモータECU(MCU)24及びトランスアクスル4を制御するトランスミッションECU(TCU)25が設けられる。
【0031】
さらに車両1には、バッテリECU22,エンジンECU(エンジン制御手段)23,モータECU(回転電機制御手段)24及びトランスミッションECU25と情報伝達可能に接続され、これらのECU22〜25を通じて車両1の統合制御を実施するハイブリッドECU20が設けられる。
【0032】
ハイブリッドECU20,バッテリECU22,エンジンECU23,モータECU24及びトランスミッションECU25は、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート、時間をカウント(計測)するタイマー等を備えたコンピュータである。なお、トランスミッションECU25の機能については、周知の技術を適用可能であるため、詳細については省略する。
【0033】
[2.制御構成]
本実施形態に係るハイブリッド車の制御装置は、エンジン2の出力を増減させる制御(増減制御)ができなくなるような異常(故障ともいう)が発生した場合であっても、ドライバの意思を反映させながら車両1を駆動するフェイルセーフ制御を実施する。
【0034】
このような制御を実現するために、ハイブリッドECU20には、演算部20a,判定部20b及び出力制御部20cとしての機能要素が設けられる。また、バッテリECU22にはSOC推定部22aが設けられ、エンジンECU23にはエンジン制御部23a及び検出部(異常検出手段)23bが設けられ、モータECU24にはモータ制御部24aが設けられる。
【0035】
ハイブリッドECU20は、ドライバからの意思(例えばアクセル位置A
Pやブレーキ油圧,シフトレバー操作等)及び車両1の走行状態(例えば車速や外気温度等)を考慮して、車両1の出力管理や電力管理等を実施する電子制御装置である。
【0036】
演算部(演算手段)20aは、ドライバの要求出力に基づいて車両1に発生させる目標出力P
TGTを演算するものである。例えば、アクセル開度A
Pと目標出力P
TGTとの関係を予めマップ化したものを記憶しておき、アクセル位置センサ21から伝達された情報をマップに適用し、目標出力P
TGTを演算する。なお、目標出力P
TGTの演算手法は特に限定されず、従来から用いられている手法が適宜採用される。
【0037】
判定部20bは、エンジンECU23からエンジン2の異常が伝達された場合に実施されるフェイルセーフ制御において、各種判定を実施するものであり、その詳細は後述する。
【0038】
出力制御部20cは、エンジン2及び駆動モータ3の少なくとも何れか一つの駆動源により、演算部20aで演算された目標出力P
TGTを車両1に発生させるものである。つまり、出力制御部20cは、演算部20aで演算された目標出力P
TGTや車両1の運転状態に応じて、エンジンECU23のエンジン制御部23aに対してエンジン2を制御するように指令を発するとともに、モータECU24のモータ制御部24aに対して駆動モータ3を制御するように指令を発する。
【0039】
例えば、出力制御部20cは、発進時や低速走行時には、エンジン制御部23aに対してエンジン2を駆動しないように指令を発するとともに、モータ制御部24aに対して駆動モータ3を駆動させるように指令を発する。これにより、発進時及び低速走行時においては、バッテリ8からの電力によりモータ走行を実施する。また、定常走行時には、エンジン2及び駆動モータ3の少なくとも一方を用いて、最も燃費の良い走行を行う。
【0040】
また、出力制御部20cは、加速走行時には、エンジン制御部23a及びモータ制御部24aに対して、それぞれエンジン2及び駆動モータ3を駆動させるように指令を発し、エンジン2及び駆動モータ3を駆動させて大きな出力を発生させる。また、減速走行時や制動時には、モータ制御部24aに対して駆動モータ3を回生駆動させるように指令を発し、モータ回生により発電を実施し、バッテリ8に充電する。このように出力制御部20cは、通常時においては従来から実施されている制御と同様の制御を実施する。
【0041】
出力制御部20cは、フェイルセーフ制御においては、エンジン制御部23a及びモータ制御部24aに対して、上記したような通常時の制御とは異なる制御指令を発するものであり、その詳細は後述する。
【0042】
バッテリECU22は、バッテリ8の状態(例えば、バッテリ8の温度や充電率SOCや劣化度合い等)を監視し、バッテリ8の状態をハイブリッドECU20へ伝達する電子制御装置である。SOC推定部(バッテリ検出手段)22aは、バッテリ8の電圧やインバータ7とバッテリ8との間に流れる電流等を検出し、これらの検出結果からバッテリ8の充電率(充電容量)SOCを推定し、検出するものである。この推定手法としては、例えばバッテリ8の初期の充電量に対し、充電された電力量を加算していく一方、放電された電力量を減算し、バッテリ8から充放電される電力量を追跡計算していく方法がある。なお、バッテリ8の充電率SOCを推定する方法は特に限定されず、種々の手法を採用可能である。
【0043】
モータECU24は、インバータ7の作動制御や、駆動モータ3の作動状態(モータとして作動させるか、ジェネレータとして作動させるか)及びモータ回転速度等を制御する電子制御装置である。モータECU24は、目標出力P
TGTとエンジン2の出力とに基づいて駆動モータ3に発生させる出力を制御する。モータ制御部24aは、出力制御部20cからの指令に基づいて、実際に駆動モータ3を制御し、モータ出力P
M及び回生力R
Mを制御するものである。
【0044】
エンジンECU23は、エンジン2のエンジン回転速度,燃料噴射量,燃料噴射時期,点火時期,電子制御スロットルのスロットル開度等、エンジン2を制御する電子制御装置である。エンジンECU23は、インマニ圧,スロットル開度,エンジン回転速度,点火時期,空燃比等に基づいてエンジン2の出力を演算(推定)する。また、エンジンECU23は、目標出力P
TGTに基づいてエンジン2の出力の増減制御を実施する。エンジン制御部23aは、ハイブリッドECU20の出力制御部20cからの指令に基づいて、実際にエンジン2を制御するものである。
【0045】
検出部(異常検出手段)23bは、エンジン2の出力の増減制御ができなくなる異常が発生したことを検出するものである。ここでいう出力の増減制御ができなくなる異常とは、例えばエンジン制御部23aが電子制御スロットルの開度を調整できなくなるような故障が電子制御スロットルに発生した場合(電子制御スロットルの制御不良)や、吸気通路と各吸気ポートとを連通するインテークマニホールドに穴が開いてしまったような場合が挙げられる。
【0046】
ここでは検出部23bは、エンジン制御部23aにより電子制御スロットルの開度調整ができなくなった場合に、「出力の増減制御ができなくなる異常が発生した」ことを検出する。この検出は、例えばエンジン制御部23aによるスロットル制御と、インマニ圧,エンジン回転速度等から演算された推定出力とを比較することで行われる。検出部23bは、このような電子制御スロットルの制御不良を検出した場合は、故障情報をハイブリッドECU20へ送信する。
【0047】
この故障情報を受信したハイブリッドECU20は、以下のフェイルセーフ制御を実施する。
まず、出力制御部20cは、エンジン制御部23aに対して、電子制御スロットルの電源を落とす(オフにする)ように指令を発する。電源を落とされた電子制御スロットルは、中間開度で固定され、エンジン2に導入される吸気量が一定量以下に固定される。
【0048】
エンジン制御部23aは、この状態でエンジン2に導入される吸気量を予め把握しており、この吸気量に適した量の燃料を噴射して混合気とし、燃焼室内で混合気に点火する。これにより、エンジン2は所定の出力(所定出力)P
Eを発生する。なお、出力P
Eとは、常に一定値でなくてもよく、適当な振れ幅を持っていて平均すると一定の出力P
Eになるようなものでもよい。ここで発生される所定のエンジン出力P
Eは、インマニ圧,エンジン回転速度,点火時期,空燃比等から演算される。
【0049】
なお、エンジン2は出力の増減制御はできなくても、燃料噴射や点火時期を制御することで出力を発生させるか否かを変更する(エンジン出力P
Eのオンオフを切り替える)ことは可能である。そこで、出力制御部20cは、判定部20bの判定結果に基づいて、エンジン制御部23aに対して出力を発生させるタイミングを指示する。出力制御部20cは、エンジン制御部23aに対する指令に加え、判定部20bの判定結果に基づいてモータ制御部24に対しても制御指令を発する。
【0050】
判定部20bは、フェイルセーフ制御において、以下の二つの判定を実施する。第一に、演算部20aで演算された目標出力P
TGTとエンジン2が発生し得る所定出力P
Eとの差分ΔP(=P
TGT−P
E)を算出し、この差分ΔPがゼロ以上であるか否かを判定する。つまり、判定部20bは、ドライバの要求する出力(目標出力P
TGT)と、エンジン2が故障時に発生し得る所定出力P
Eとを比較し、何れの出力が大きいかを判定する。判定部20bによる判定結果は、出力制御部20cに伝達される。
【0051】
出力制御部20cは、差分ΔPがゼロ以上であるという判定結果が伝達されると、エンジン制御部23aに対して直ちに所定出力P
Eを発生するように指令を発し、エンジン2の出力を所定出力P
Eに維持する維持制御を実施させ、所定駆動力を発生させる。さらに、その差分ΔPをモータ出力P
Mで補うべく、モータ制御部24aに対して、差分ΔPに相当するモータ出力P
Mを発生させるように指令を発する。つまり、差分ΔPがゼロ以上であるときは、エンジン2が所定出力P
Eを発生しても目標出力P
TGTには達しないため、足りない分の出力(すなわち、差分ΔP)を駆動モータ3で補う。
【0052】
したがってこの場合は、エンジン制御部23aは、電子制御スロットルを中間開度に固定した後、燃料噴射及び点火時期を制御して直ちに所定出力P
Eを発生させ、この所定出力P
Eを維持する維持制御を実施する。また、モータ制御部24aは、駆動モータ3をモータとして作動させ、モータアシストを実施する。そして、エンジン2の所定出力P
E及びモータ出力P
Mによって、目標出力P
TGTを車両1に発生させる。
【0053】
一方、出力制御部20cは、差分ΔPがゼロ未満(つまり、負の値)であるという判定結果が伝達されると、第二の判定結果に応じて、エンジン制御部23aに対し所定出力P
Eを発生するように指令を発する。さらに、第二の判定結果に応じて所定出力P
Eを発生させた場合に、その差分ΔPをモータ回生力R
Mで吸収すべく、モータ制御部24aに対して差分ΔPに相当するモータ回生力R
Mを発生させるように指令を発する。つまり、差分ΔPがゼロ未満であるときにエンジン2を作動させた場合は、目標出力P
TGTよりも大きな出力を発生してしまうため、余剰の出力(すなわち、差分ΔP)を駆動モータ3で吸収する。
【0054】
したがってこの場合は、エンジン制御部23aは、電子制御スロットルを中間開度に固定した後、第二の判定結果に応じて燃料噴射及び点火時期を制御し、所定出力P
Eを発生させる。また、モータ制御部24aは、第二の判定結果に応じて駆動モータ3をジェネレータとして作動させ、モータ回生を実施する。そして、エンジン2の所定出力P
E及びモータ回生力R
Mによって、目標出力P
TGTを車両1に発生させる。
【0055】
なお、出力制御部20cは、エンジン制御部23aに対してエンジン2の所定出力P
Eを発生するように指令を発した場合(つまり、エンジン2が所定出力P
Eを発生している場合)では、クラッチ41Cの切断時に駆動モータ3を回生駆動するようにモータ制御部24aに指令を発する。これは、エンジン2が所定出力P
Eを発生している場合に、停車中やシフトチェンジ時などクラッチ41Cを切るときに、エンジン2の吹け上がりを防止するためであり、駆動モータ3を回生駆動することでエンジン回転速度を抑制する。
【0056】
判定部20bは、第二に、バッテリ8の充電率SOCが所定値(所定量)SOC
TH未満であるか否かを判定する。この所定値SOC
THは、バッテリ8の運用充電率範囲内の値であって、例えば上限値SOC
Hと下限値SOC
Lとの中間値(例えば50%程度)に予め設定されている。つまり、判定部20bは、バッテリ8の充電容量に余裕があるか否かを判定する。判定部20bによる判定結果は、出力制御部20cに伝達される。
【0057】
出力制御部20cは、バッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH未満であるという判定結果が伝達されると、第一の判定結果に基づいて上記したフェイルセーフ制御を実施する。つまりこの場合は、バッテリ8の充電率SOCに受入可能な容量がありモータ回生を実施することが可能なため、エンジン2の所定出力P
Eを直ちに発生させるとともに、目標出力P
TGTとエンジン2の所定出力P
Eとの差分ΔPを駆動モータ3で補う(補完する)。
【0058】
一方、出力制御部20cは、バッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH以上であるという判定結果が伝達されると、第一の判定で差分ΔPがゼロ未満であるという結果が得られた場合に、駆動モータ3の回生駆動を禁止する。これは、バッテリ8の過充電を防止するためである。つまり、エンジン制御部23aに対して所定出力P
Eに維持する維持制御を禁止するように指令を発するとともに、モータ制御部24aに対して目標出力P
TGTに相当するモータ出力P
Mを発生するように指令を発する。
【0059】
したがってこの場合は、エンジン制御部23aは、燃料噴射及び点火を禁止して、エンジン2が所定出力P
Eを発生しないように維持制御を禁止してエンジン2を停止させる(エンジン2は空回りの状態とする)。また、モータ制御部24aは、駆動モータ3をモータとして作動させ、目標出力P
TGTを車両1に発生させてモータ走行を実施する。
以上のフェイルセーフ制御をまとめると、出力制御部20cは以下の表に示すようにエンジン2と駆動モータ3との出力制御を切り替える。
【0061】
[3.フローチャート]
次に、
図3及び
図4のフローチャートを用いて、車両ECU1で実施される各手順を説明する。
図3は、判定部20bによって第一の判定のみが行われる場合の制御手順を例示するフローチャートであり、
図4は、判定部20bによって第一の判定に加え、第二の判定が行われる場合の制御手順を例示するフローチャートである。つまり、
図3はバッテリ8の充電率SOCについては考慮しない最もシンプルな制御フローであり、
図4はバッテリ8の充電率SOCまでも考慮した制御フローである。
【0062】
図3及び
図4のフローチャートは、イグニッションキーのオンと同時に何れか一方のフローチャートがスタートされ、予め設定された所定周期で繰り返し実施される。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。
【0063】
まず、
図3のフローチャートについて説明する。
図3に示すように、ステップS10において、フラグFがF=0であるか否かが判定される。ここでフラグFは、検出部23bによりエンジン2の異常が検出されたか否かをチェックするための変数であり、F=0はエンジン2が正常である場合に対応し、F=1はエンジン2が異常である場合に対応する。フラグFの初期値はF=0に設定されている。
【0064】
エンジン2の異常が一度も検出されていないときは、フラグFがF=0であるためステップS20へ進み、検出部23bによりエンジン2の異常が検出されたか否かが判定される。異常が検出されなければ、この制御周期を終了してリターンする。一方、エンジン2の異常が検出されると、ステップS30へ進み、エンジン制御部23aにより電子制御スロットルの電源がオフにされるとともに、電子制御スロットルの開度が中間開度に固定される。そして、ステップS40においてエンジン2に所定出力P
Eを発生させ、ステップS50においてフラグFがF=1に設定される。
【0065】
ステップS60では、演算部20aにより目標出力P
TGTが演算され、ステップS70では、目標出力P
TGTから所定出力P
Eが減算されて差分ΔPが演算される。続くステップS80では、差分ΔPがゼロ以上であるか否かが判定される。差分ΔPがゼロ以上であるときは、エンジン2の所定出力P
Eだけでは目標出力P
TGTを車両1に発生させることができないため、ステップS90に進む。そして、ステップS90において、差分ΔPに相当する出力を駆動モータ3に出力させてモータアシスト走行を実施し、この制御周期を終了してリターンする。
【0066】
ステップS80での判定において、差分ΔPがゼロ以上でなければ、所定出力P
Eの方が目標出力P
TGTよりも大きいため、ステップS100へ進む。そして、駆動モータ3をジェネレータとして回生駆動させ、差分ΔPに相当する余分なエンジン出力P
Eを駆動モータ3で吸収し、この制御周期を終了してリターンする。
【0067】
リターンした後は、再度ステップS10においてフラグ判定が実施される。このとき、既に一度エンジン2の異常が検出されていれば、ステップS10からステップS60へ進み、ステップS60〜ステップS100の制御を繰り返し実施する。つまり、目標出力P
TGTが演算されて、差分ΔPがゼロ以上であればモータアシストを実施し、差分ΔPがゼロ未満であればモータ回生を実施する。これにより、エンジン2の電子制御スロットルが制御不良となった場合であっても、ドライバの要求出力に応じた走行を継続することが可能である。
【0068】
次に
図4のフローチャートについて説明する。
図4に示すように、ステップT10において、フラグGがG=0であるか否かが判定される。ここでフラグGは、上記したフラグFと同様、検出部23bによりエンジン2の異常が検出されたか否かをチェックするための変数であり、G=0はエンジン2が正常である場合に対応し、G=1はエンジン2が異常である場合に対応する。フラグGの初期値はG=0に設定されている。
【0069】
エンジン2の異常が一度も検出されていないときは、フラグGがG=0であるためステップT20へ進み、検出部23bによりエンジン2の異常が検出されたか否かが判定される。異常が検出されなければ、この制御周期を終了してリターンする。一方、エンジン2の異常が検出されると、ステップT30へ進み、エンジン制御部23aにより電子制御スロットルの電源がオフにされるとともに、電子制御スロットルの開度が中間開度に固定される。そして、ステップT40において、フラグGがG=1に設定される。
【0070】
続くステップT50では、演算部20aにより目標出力P
TGTが演算され、ステップT60では、目標出力P
TGTからエンジン2の所定出力P
Eが減算されて差分ΔPが演算される。続くステップT70ではバッテリ8の充電率SOCが推定される。そして、ステップT80において、ステップT70で推定された充電率SOCが所定値SOC
TH未満であるか否かが判定される。充電率SOCが所定値SOC
TH未満である場合は、ステップT90へ進み、エンジン2の所定出力P
Eを発生させる。
【0071】
次いで、ステップT100において差分ΔPがゼロ以上であるか否かが判定される。差分ΔPがゼロ以上であるときは、エンジン2の所定出力P
Eだけでは目標出力P
TGTを車両1に発生させることができないため、ステップT110へ進んで差分ΔPに相当する出力を駆動モータ3に出力させてモータアシスト走行を実施し、この制御周期を終了してリターンする。
【0072】
差分ΔPがゼロ以上でなければ、エンジン2の所定出力P
Eの方が目標出力P
TGTよりも大きいため、ステップT120へ進む。そして、駆動モータ3をジェネレータとして回生駆動させ、差分ΔPに相当する余分なエンジン2の所定出力P
Eを駆動モータ3で吸収し、この制御周期を終了してリターンする。
【0073】
一方、ステップT80において充電率SOCが所定値SOC
TH未満でないと判定されると、バッテリ8の充電率SOCが高い状態であるため、ステップT130へ進み、差分ΔPがゼロ以上であるか否かが判定される。差分ΔPがゼロ以上であれば、ステップT140においてエンジン2の所定出力P
Eが発生されるとともに、差分ΔPに相当する出力を駆動モータ3に出力させてモータアシスト走行を実施する。そして、この制御周期を終了し、リターンする。
【0074】
差分ΔPがゼロ以上でなければ、エンジン2に所定出力P
Eを発生させてしまうと目標出力P
TGTよりも大きな出力が発生してしまうことになるため、ステップT150へ進み、目標出力P
TGTに相当する出力を駆動モータ3に発生させる。つまり、この場合はエンジン2は作動させない(エンジン2に所定出力P
Eを発生させない)。そして、この制御周期を終了してリターンする。リターンした後は、再度ステップT10においてフラグ判定が実施される。このとき、既に一度エンジン2の異常が検出されていれば、ステップT10からステップT50へ進み、ステップT50〜ステップT150の制御を繰り返し実施する。
【0075】
つまり、目標出力P
TGT及び差分ΔPが演算されるとともに、バッテリ8の充電率SOCが推定され、充電率SOCと所定値SOC
THとが比較される。そして、充電率SOCが所定値SOC
TH未満であれば、エンジン2の出力P
Eが発生されるとともに、差分ΔPに応じてモータアシストとモータ回生とが切り替えられる。また、充電率SOCが所定値SOC
TH以上であれば、モータアシストが実施されるとともに、差分ΔPに応じてエンジン2の駆動,停止が制御される。これにより、エンジン2の電子制御スロットルが制御不良になった場合であっても、ドライバの要求出力に応じた走行を継続することが可能である。
【0076】
[4.作用]
次に、出力制御部20cによるフェイルセーフ制御について、
図5(a)及び(b)を用いて説明する。
図5(a)及び(b)は、ドライバの要求出力(アクセル位置A
P)と実際の軸出力との関係を示すグラフであり、図中に実線で示すグラフはエンジン2が正常の場合の軸出力(すなわち、ドライバの要求出力に対する目標出力P
TGT)を示し、破線で示すグラフはエンジン2の故障時の軸出力を示し、一点鎖線で示すグラフは異常時にエンジン2が発生し得る出力P
Eを示す。
図5(a)はバッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH未満の場合のグラフであり、(b)はバッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH以上の場合のグラフである。
【0077】
図5(a)に示すように、バッテリ8の充電率SOCが低い場合、出力制御部20cはドライバの要求出力に係わらず、所定出力P
Eを発生させる。目標出力P
TGTはドライバの要求出力が大きいほど大きくなるため、ドライバの要求出力が小さい場合は目標出力P
TGTの方がエンジン2の所定出力P
Eよりも小さくなり、ドライバの要求出力が大きい場合は目標出力P
TGTの方が所定出力P
Eよりも大きくなる。
【0078】
そこで、出力制御部20cは、ドライバの要求出力(アクセル位置)が所定の値A
PX未満では、エンジン2の所定出力P
Eのうち目標出力P
TGTよりもオーバーした分を利用してモータ回生により発電し、電力に変換してバッテリ8に充電する。一方、ドライバの要求出力が所定の値A
PX以上では、所定出力P
Eよりもオーバーした目標出力P
TGTをモータ出力P
Mでアシストする。なお、モータアシストできるモータ出力P
Mには限界があるため、故障時の軸出力がある値から一定となる。このようにして、出力制御部20cは、エンジン2と駆動モータ3とを用いて目標出力P
TGTを車両1に発生させる。
【0079】
図5(b)に示すように、バッテリ8の充電率SOCが高い場合、出力制御部20cは、目標出力P
TGTが所定出力P
E以上となるドライバの要求出力の値A
PX未満では、エンジン2では所定出力P
Eを発生させない。つまり、ドライバの要求出力が所定の値A
PX未満では、駆動モータ3の出力P
Mのみにより目標出力P
TGTを車両1に発生させる。一方、ドライバの要求出力が所定の値A
PX以上では、所定出力P
Eを発生させ、さらに目標出力P
TGTとエンジン2の所定出力P
Eとの差分ΔPをモータ出力P
Mでアシストする。
【0080】
このようにして、出力制御部20cは、エンジン2と駆動モータ3とを用いて目標出力P
TGTを車両1に発生させる。なお、モータアシスト走行のみを実施すると、バッテリ8の充電率SOCは低下していく。そして、バッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH未満になったら、
図5(a)に示すグラフの制御に移行する。
【0081】
[5.効果]
したがって、本制御装置によれば、エンジン2の出力の増減制御ができなくなる異常が検出された場合に、SOC推定部22aにより推定されて検出されたバッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH以上であって目標出力P
TGTがエンジン2の所定出力P
E未満である場合は、エンジン2を停止させると共に、駆動モータ3に目標出力P
TGTを発生させる。そのため、バッテリ8の過充電を防止しながら、適切にエンジン2及び駆動モータ3の少なくとも何れか一つを用いて、ドライバの要求する出力に応じた出力(目標出力P
TGT)を車両1に発生させることができる。
【0082】
これにより、エンジン2の異常が検出された場合であっても、ドライバにほとんど違和感を与えることなく走行を継続することができる。つまり、バッテリ8の保護と目標出力P
TGTを車両1に発生させることとを両立することができる。また、車両1が突然停止したり暴走したりすることがないため、安全性を確保することもできる。
【0083】
また、出力制御部20cは、エンジン2の異常が検出された場合に、バッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH以上であって目標出力P
TGTがエンジン2の所定出力P
E以上である場合は、エンジン2に所定出力P
Eを発生させるとともに、目標出力P
TGTと所定出力P
Eとの差分ΔPを補うように駆動モータ3を制御するため、エンジン2の出力の増減制御ができなくても、ドライバの要求出力に応じた駆動力で走行することができる。
【0084】
また、出力制御部20cは、エンジン2の異常が検出された場合に、バッテリ8の充電率SOCが所定値SOC
TH未満の場合は、目標出力P
TGTに係わらずエンジン2に所定出力P
Eを発生させるとともに、目標出力P
TGTとエンジン出力P
Eとの差分ΔPを、モータアシスト又はモータ回生制御により補完する。つまり、充電率SOCが所定値SOC
THに満たないときは、エンジン2は直ちに作動させ、差分ΔPを駆動モータ3で補う。そのため、エンジン2に対しては、異常の検出と同時に出力P
Eを発生させればよいため、制御負荷を軽減することができる。
【0085】
特に、モータ制御部24aは、出力制御部20cからの指令に基づいて、エンジン2の出力P
Eが目標出力P
TGTよりも大きい場合に、駆動モータ3を回生駆動して差分ΔPに相当する電力を発電させる。つまり、エンジン2の所定出力P
Eの余剰分を電力として回収することができるため、目標出力P
TGTがエンジン2の所定出力P
Eよりも大きくなった場合に備えることができる。
【0086】
さらに、モータ制御部24aは、目標出力P
TGTがエンジン2の所定出力P
Eよりも大きい場合に、駆動モータ3を駆動して差分ΔPに相当するモータ出力P
Mを発生させる。すなわち、目標出力P
TGTの不足分をモータ出力P
Mでアシストするため、エンジン2に異常が発生した場合であっても、ドライバの要求出力に応じた目標出力P
TGTを発生させることができ、ドライバにほとんど違和感を与えることなく走行を続けることができる。
【0087】
また、本実施形態では、検出部23bにより電子制御スロットルの制御不良が検出された場合に、エンジン制御部23aが電子制御スロットルの電源を落として吸気量を一定量以下に固定するため、エンジン2の出力を所定値にすることができる。これにより、目標出力P
TGTとエンジン2の所定出力P
Eとの差分ΔPを容易に求めることができ、容易にフェイルセーフ制御を実施することができる。
【0088】
また、モータ制御部24aは、駆動モータ3と駆動輪6との間に介装されたクラッチ41Cの切断時に駆動モータ3を回生駆動するため、エンジン2の回転速度を抑制し、エンジン2の吹け上がりを防止することができる。
【0089】
[6.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、車両1は上記した構成のハイブリッド車に限られず、例えばエンジン2と駆動モータ3との間にクラッチが介装されていてもよい。この場合、駆動モータ3のみを駆動させるときは、このクラッチを切断すればエンジン2を空回りさせなくて済む。このクラッチの断接状態は、例えばハイブリッドECU20の出力制御部20cで行うことができる。
【0090】
また、上記した実施形態では、電子制御スロットルの制御不良が発生した場合に実施されるフェイルセーフ制御ついて説明したが、エンジン2の出力の増減制御ができなくなる異常(故障)として、この他にインテークマニホールドに穴が開き、ドライバの要求よりも多くの空気を吸収してしまうような故障もある。
【0091】
インテークマニホールドに穴が開いてしまった場合は、エンジン2が要求されている吸気量よりも多くの吸気を吸い込んでしまうおそれがある。この場合は、インマニ圧センサで検出されるインテークマニホールド内の圧力(実インマニ圧)と、電子制御スロットルのスロットル開度及びエンジン回転速度から演算される推定インマニ圧とを比較することで異常が検出される。このような異常が検出されたら、エンジン制御部23aは実インマニ圧とエンジン回転速度とに基づいてエンジン出力P
Eを演算し、モータ制御部24aは目標出力P
TGTとエンジン出力P
Eとの差分を補うように駆動モータ3を制御すればよい。
【0092】
また、上記実施形態では、判定部20bが第二の判定として一つの所定値SOC
THとバッテリ8の充電率SOCとを比較しているが、第二の判定はこれに限られない。例えば、目標出力P
TGTが低いときのエンジン2の始動を禁止するか否かの判定閾値となる所定値SOC
THを第一所定値SOC
TH1とし、目標出力P
TGTが低いときのエンジン2の始動を許容するか否かの判定閾値となる所定値SOC
THを第二所定値SOC
TH2とする。なお、第一所定値SOC
TH1は第二所定値SOC
TH2以上の値である(SOC
TH1≧SOC
TH2)。
【0093】
すなわち、バッテリ8の充電率SOCが第一所定値SOC
TH1以上である場合は、目標出力P
TGTがエンジン出力P
E以下となったときにエンジン2を停止し、目標出力P
TGTがエンジン出力P
E以上となった時にエンジン2の出力を発生させる。この場合は、バッテリ8の電力が駆動モータ3に供給されて消費されるのみであるため、充電率SOCは低下する。そして、バッテリ8の充電率SOCが第二所定値SOC
TH2未満になったら、今度は目標出力P
TGTが低い時のエンジン2の始動を許容して、目標出力P
TGTに係わらずエンジン2の出力を発生させる。
【0094】
これにより、バッテリ8の充電率SOCは駆動モータ3が回生駆動されれば上昇し、駆動モータ3がアシスト駆動されれば低下する。そして、バッテリ8の充電率SOCが再び第一所定値SOC
TH1以上になれば、目標出力P
TGTがエンジン出力P
E以下となったときにエンジン2を停止する。これが繰り返されることで、ドライバの要求出力に応じた走行を実現できるとともに、エンジン2及び駆動モータ3の制御ハンチングを回避することができる。