(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  昇降指示部材の操作によってリフトシリンダへ作動油を給排させることによりフォークを昇降動作させるとともに、傾動指示部材の操作によってティルトシリンダへ作動油を給排させることにより前記フォークが装着されるマストを前傾動作又は後傾動作させるフォークリフトの油圧制御装置において、
  少なくとも1つの油圧ポンプと、
  前記油圧ポンプを駆動させる単一の電動機と、
  前記リフトシリンダと前記油圧ポンプの間に配設されるとともに、前記フォークを下降動作させる場合に前記リフトシリンダのボトム室から前記油圧ポンプへの作動油の流出を許容する一方で、前記フォークを停止させている場合又は上昇動作させる場合に前記リフトシリンダのボトム室から前記油圧ポンプへの作動油の流出を遮断する流出制御機構と、
  前記流出制御機構とドレイン流路の間に配設される流量制御弁と、
  前記フォークの下降動作と前記マストの前傾動作又は後傾動作の何れか一方の動作による同時動作が行われる場合、前記傾動指示部材の操作量に応じた指示速度で動作させるために必要な前記油圧ポンプの必要回転数をもとに前記電動機の駆動を制御する制御部と、
  前記油圧ポンプから吐出されるとともに前記ティルトシリンダへ流れる作動油の圧力をパイロット圧として前記流量制御弁に与えるパイロット流路と、を備え、
  前記流量制御弁は、前記同時動作の時、前記パイロット流路を通じて与えられた圧力によって開弁し、前記リフトシリンダのボトム室から流出された作動油を前記ドレイン流路へ流し、
  前記フォークの単独動作での下降動作時において前記リフトシリンダから排出される作動油の圧力によって前記電動機が回生動作不能である場合、前記制御部は、前記昇降指示部材の操作量に応じた指示速度で動作させるために必要な前記油圧ポンプの必要回転数と前記電動機の出力トルクを制限するトルク制限値とにしたがって前記電動機の駆動を制御し、前記流量制御弁は、開弁して前記リフトシリンダのボトム室から流出された作動油を前記ドレイン流路へ流すことを特徴とするフォークリフトの油圧制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、フォークリフトの油圧制御装置を具体化した一実施形態を
図1〜
図3にしたがって説明する。
  
図2に示すように、バッテリ式のフォークリフト11の車体フレーム12にはその前部にマスト13が設けられている。マスト13は車体フレーム12に対して傾動可能に支持された左右一対のマストとしてのアウタマスト13aと、その内側に昇降可能に装備されたインナマスト13bとからなる。両アウタマスト13aの後側には荷役用油圧シリンダとしてのリフトシリンダ14がアウタマスト13aと平行に固定されるとともに、リフトシリンダ14のピストンロッド14aの先端がインナマスト13bの上部に連結されている。
 
【0013】
  インナマスト13bの内側にはリフトブラケット15がインナマスト13bに沿って昇降可能に装備され、リフトブラケット15にはフォーク16が取着されている。インナマスト13bの上部にはチェーンホイール17が支承され、チェーンホイール17には、第1端部がリフトシリンダ14の上部に、第2端部がリフトブラケット15にそれぞれ連結されたチェーン18が掛装されている。そして、リフトシリンダ14の伸縮によりチェーン18を介してフォーク16がリフトブラケット15とともに昇降動される。
 
【0014】
  車体フレーム12の左右両側には荷役用油圧シリンダとしてのティルトシリンダ19の基端が回動可能に支持されるとともに、ティルトシリンダ19のピストンロッド19aの先端がアウタマスト13aの上下方向ほぼ中央部に回動可能に連結されている。そして、ティルトシリンダ19の伸縮によりマスト13が傾動される。
 
【0015】
  運転室20の前部にはステアリング21、昇降指示部材としてのリフトレバー22及び傾動指示部材としてのティルトレバー23がそれぞれ設けられている。
図2においてはリフトレバー22とティルトレバー23とが重なった状態で示されている。リフトレバー22の操作によりリフトシリンダ14が伸縮されるとともにフォーク16が昇降するようになっている。また、ティルトレバー23の操作によりティルトシリンダ19が伸縮されるとともに、マスト13が傾動するようになっている。
 
【0016】
  マスト13は、予め定めた最後傾位置から最前傾位置の間で傾動可能とされている。
図2に示すマスト13の位置を垂直位置とした場合、運転室20に接近する方向に傾動する動作が後傾動作となり、運転室20から離間する方向に傾動する動作が前傾動作となる。本実施形態のフォークリフト11の構成では、ティルトシリンダ19が伸びる方向に動作した時にマスト13が前傾動作する一方で、ティルトシリンダ19が縮む方向に動作した時にマスト13が後傾動作する。
 
【0017】
  以下、
図1にしたがって、本実施形態の油圧制御装置を詳しく説明する。
  油圧制御装置は、リフトシリンダ14及びティルトシリンダ19の動作を制御する。そして、本実施形態の油圧制御装置は、
図1に示すように、単一のポンプと該ポンプを駆動する単一のモータにより、リフトシリンダ14及びティルトシリンダ19を動作させる機構(油圧回路)を構成している。
 
【0018】
  リフトシリンダ14のボトム室14bに接続される油路としての配管K1は、油圧ポンプ及び油圧モータとして機能する油圧ポンプモータ30に接続されている。油圧ポンプモータ30には、電動機及び発電機として機能するモータ(回転電機)31が接続されている。本実施形態においてモータ31は、油圧ポンプモータ30を油圧ポンプとして作動させる場合に電動機となり、油圧ポンプモータ30を油圧モータとして作動させる場合に発電機となる。本実施形態の油圧ポンプモータ30は、一方向に回転可能な構成とされている。
 
【0019】
  リフトシリンダ14と油圧ポンプモータ30の間には、電磁比例弁としてのリフト下降用比例弁32が配設されている。リフト下降用比例弁32は、下降動作の際にボトム室14bから排出される作動油を油圧ポンプモータ30へ流通させる開状態としてその開度を任意に変更可能な第1位置32aと、作動油の流通を許容しない閉状態としての第2位置32bを取り得る。本実施形態においてリフト下降用比例弁32は、第1位置32aの時、リフトシリンダ14のボトム室14bから油圧ポンプモータ30側への作動油の流出を許容する一方で、第2位置32bの時、ボトム室14bから油圧ポンプモータ30側への作動油の流出を遮断する流出制御機構を構成する。また、油圧ポンプモータ30の吸入口30aには、チェック弁33を介して作動油を貯留する油タンクTが接続されている。チェック弁33は、油タンクTからの作動油を流通させる一方で、その逆方向からの作動油を流通させないように配設されている。
 
【0020】
  この実施形態のリフト下降用比例弁32は、圧力補償機構を有する弁である。リフト下降用比例弁32は、当該電磁比例弁32の流入側と流出側の圧力差による設定流量の変動を抑える。設定流量は、リフトレバー22の操作量に応じて設定される。そして、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出される作動油の流量が、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度に必要な流量よりも多くなる場合には、圧力補償によって流量調整がなされる。これにより、リフトシリンダ14の下降速度の急上昇が抑制される。
 
【0021】
  また、油圧ポンプモータ30の吐出口30b側の配管K1には、リフト上昇用比例弁35と、チェック弁36とが接続されている。リフト上昇用比例弁35は、油圧ポンプモータ30から吐出される作動油をボトム室14bへ流通させる開状態としてその開度を任意に変更可能な第1位置35aと、前記作動油を油路としての配管K3に接続されるティルト用比例弁37へ流通させる閉状態としての第2位置35bを取り得る。チェック弁36は、リフト上昇用比例弁35からの作動油をリフトシリンダ14のボトム室14b側へ流通させる一方で、その逆方向からの作動油を流通させないように接続されている。
 
【0022】
  油圧ポンプモータ30の吐出口30b側の配管K1には、油タンクTにフィルタ38を介して接続される油路としての配管K4と、ティルト用比例弁37に接続される油路としての配管K5とが、分岐接続されている。配管K4には、油圧上昇を防止するリリーフ弁39が接続されている。また、配管K4には、ティルト用比例弁37からの作動油を油タンクTに流通させる油路としての配管K6が接続されている。配管K5には、油圧ポンプモータ30からの作動油を流通させる一方で、その逆方向からの作動油を流通させないようにチェック弁40が接続されている。
 
【0023】
  ティルト用比例弁37は、閉状態としての第1位置37aと、開状態としてその開度を調整可能な第2位置37bと、開状態としてその開度を調整可能な第3位置37cを取り得る。第1位置37aは、リフト上昇用比例弁35からの作動油を油タンクTに流通させる。本実施形態のティルト用比例弁37は、第1位置37aを中立位置とし、制御部Sの制御によって第2位置37b又は第3位置37cの何れかの方向に動く。第2位置37bは、チェック弁40からの作動油を、ティルトシリンダ19のロッド室19rに接続される油路としての配管K7に流通させる。また、第2位置37bは、ティルトシリンダ19のボトム室19bに接続される油路としての配管K8からの作動油を、配管K6に流通させる。第3位置37cは、チェック弁40からの作動油を配管K8に流通させるとともに、配管K7からの作動油を配管K6に流通させる。
 
【0024】
  また、この実施形態においてリフト下降用比例弁32における作動油の流出側には、配管K1から分岐形成されて油タンクTに接続されるバイパス流路としての配管K2が接続されている。そして、配管K2には、配管K2を流れる作動油の流量を制御する流量制御弁34が配設されている。この実施形態において流量制御弁34は、リフト下降用比例弁32と、流量制御弁34における作動油の流出側に接続されるバイパス流路(配管K2)の間に配設されている。また、流量制御弁34には、パイロット流路としてのパイロット配管K9が接続されている。パイロット配管K9は、油圧ポンプモータ30の吐出口30b側とティルト用比例弁37側とに接続される配管K5に接続されている。このパイロット配管K9には、油圧ポンプモータ30から吐出されるとともに、ティルトシリンダ19へ作動油が流れる場合のティルト用比例弁37の背圧が与えられる。
 
【0025】
  流量制御弁34は、全閉状態としての第1位置34aと、全開状態としての第2位置34bを取り得る。この実施形態の流量制御弁34は、油圧ポンプモータ30の吸入口30a側とリフト下降用比例弁32の作動油の流出側の間の圧力によって作動するともに、配管K5に発生する圧力によっても作動する。そして、流量制御弁34は、前述した各圧力によって開閉するON−OFF弁である。
 
【0026】
  流量制御弁34が第1位置34aの場合、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出された作動油は、リフト下降用比例弁32を介して油圧ポンプモータ30の吸入口30a側に流通する。すなわち、この場合は、リフト下降用比例弁32を流通した作動油の全てが
図1に示す流量Q1となって油圧ポンプモータ30の吸入口30a側に流通する。一方、流量制御弁34が第2位置34bの場合、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出された作動油は、流量制御弁34を通じて油タンクT側に流通する。すなわち、この場合は、流量制御弁34を流通した作動油の全てが
図1に示す流量Q2となって油タンクT側に流通する。なお、
図1に示す流量Q3は、油圧ポンプモータ30によって油タンクTから汲み上げられる作動油の流量を示す。
 
【0027】
  また、油圧制御装置の制御部Sには、リフトレバー22の操作量を検出するポテンショメータ22aとティルトレバー23の操作量を検出するポテンショメータ23aとが電気的に接続されている。制御部Sは、リフトレバー22の操作量に基づくポテンショメータ22aからの検出信号をもとに、モータ31の回転を制御するとともに、リフト下降用比例弁32とリフト上昇用比例弁35の切換えを制御する。また、制御部Sは、ティルトレバー23の操作量に基づくポテンショメータ23aからの検出信号をもとに、モータ31の回転を制御するとともに、ティルト用比例弁37の切換えを制御する。
 
【0028】
  また、制御部Sには、インバータS1が電気的に接続されている。そして、モータ31には、バッテリBTの電力がインバータS1を介して供給される。なお、モータ31で生じた電力は、インバータS1を介してバッテリBTに蓄電される。
 
【0029】
  以下、本実施形態の油圧制御装置の作用を説明する。
  まず、フォーク16の上昇動作、マスト13の前傾動作、及びマスト13の後傾動作をそれぞれ単独動作させる場合について説明する。単独動作とは、フォーク16を動作させる時にはマスト13を前傾動作又は後傾動作させず、マスト13を動作させる時にはフォーク16を上昇動作又は下降動作させないことである。
 
【0030】
  フォーク16を上昇動作させる場合は、リフトシリンダ14のボトム室14bに作動油を供給する。このため、制御部Sは、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度で上昇動作させるために必要な油圧ポンプモータ30の必要回転数と、リフト上昇用比例弁35の弁開度を算出する。そして、制御部Sは、算出した必要回転数をモータ31の指令回転数としてモータ31の駆動を制御するとともに、リフト上昇用比例弁35を算出した弁開度の第1位置35aで開く。また、制御部Sは、上昇動作時、リフト下降用比例弁を第2位置32bとする。
 
【0031】
  これにより、油圧ポンプモータ30は、モータ31の回転によって油圧ポンプとして機能することで油タンクTの作動油を吸込み、その作動油を吐出口30bから吐出する。この作動油は、リフト上昇用比例弁35、及びチェック弁36を通じて、ボトム室14bに供給される。その結果、フォーク16は、リフトシリンダ14の伸長によって上昇動作する。なお、制御部Sは、上昇動作を終了させる場合、リフト上昇用比例弁35を第2位置35bとする。
 
【0032】
  また、マスト13を後傾動作させる場合は、ティルトシリンダ19のロッド室19rに作動油を供給する一方で、ボトム室19bから作動油を排出する。このため、制御部Sは、ティルトレバー23の操作量に応じた指示速度で後傾動作させるために必要な油圧ポンプモータ30の必要回転数と、ティルト用比例弁37の弁開度を算出する。そして、制御部Sは、算出した必要回転数をモータ31の指令回転数としてモータ31の駆動を制御するとともに、ティルト用比例弁37を算出した弁開度の第2位置37bで開く。また、制御部Sは、後傾動作時、リフト下降用比例弁32を第2位置32bとするとともにリフト上昇用比例弁35を第2位置35bとする。
 
【0033】
  これにより、油圧ポンプモータ30は、モータ31の回転によって油圧ポンプとして機能することで油タンクTの作動油を吸込み、その作動油を吐出口30bから吐出する。この作動油は、チェック弁40、及びティルト用比例弁37を通じて、ロッド室19rに供給される。一方、ボトム室19bの作動油は、ティルト用比例弁37を通じて、油タンクTに排出される。その結果、マスト13は、ティルトシリンダ19の収縮によって後傾動作する。なお、制御部Sは、後傾動作を終了させる場合、ティルト用比例弁37を第1位置37aとする。
 
【0034】
  一方、マスト13を前傾動作させる場合は、ティルトシリンダ19のボトム室19bに作動油を供給する一方で、ロッド室19rから作動油を排出する。このため、制御部Sは、ティルトレバー23の操作量に応じた指示速度で前傾動作させるために必要な油圧ポンプモータ30の必要回転数と、ティルト用比例弁37の弁開度を算出する。そして、制御部Sは、算出した必要回転数をモータ31の指令回転数としてモータ31の駆動を制御するとともに、ティルト用比例弁37を算出した弁開度の第3位置37cで開く。また、制御部Sは、前傾動作時、リフト下降用比例弁32を第2位置32bとするとともにリフト上昇用比例弁35を第2位置35bとする。
 
【0035】
  これにより、油圧ポンプモータ30は、モータ31の回転によって油圧ポンプとして機能することで油タンクTの作動油を吸込み、その作動油を吐出口30bから吐出する。この作動油は、チェック弁40、及びティルト用比例弁37を通じて、ボトム室19bに供給される。一方、ロッド室19rの作動油は、ティルト用比例弁37を通じて、油タンクTに排出される。その結果、マスト13は、ティルトシリンダ19の伸長によって前傾動作する。なお、制御部Sは、前傾動作を終了させる場合、ティルト用比例弁37を第1位置37aとする。
 
【0036】
  次に、
図3にしたがって、単独動作にてフォーク16を下降動作させる場合、及び同時動作にてフォーク16の下降動作とマスト13の前傾動作又は後傾動作の何れか一方の動作を行わせる場合を説明する。同時動作とは、フォーク16とマスト13を同時に動作させることである。
 
【0037】
  制御部Sは、リフトレバー22の操作によって下降動作が指示されるとステップS10を肯定判定するとともに、ティルトレバー23が操作されておらずステップS11を肯定判定した場合、単独動作にてフォーク16を下降動作させるための制御を行う。当該制御において制御部Sは、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度で下降動作させるために必要な油圧ポンプモータ30の必要回転数と、リフト下降用比例弁32の弁開度を算出する(ステップS12)。次に、制御部Sは、下降動作時にモータ31が必要以上に電力を消費しないように、モータ31の出力トルクを制限するためのトルク制限処理を行う(ステップS13)。トルク制限処理において、制御部Sは、トルク制限値として所定値(例えば、0Nm)を設定する。このトルク制限により、モータ31の力行動作が抑制される。そして、制御部Sは、ステップS12で算出した必要回転数をモータ31の指令回転数とするとともに(ステップS14)、その指令回転数とトルク制限値にしたがってモータ31の駆動を制御する。また、制御部Sは、リフト下降用比例弁32をステップS12で算出した弁開度の第1位置32aで開く。また、制御部Sは、単独動作による下降動作時、リフト上昇用比例弁35を第2位置35bとするとともに、ティルト用比例弁37を第1位置37aとする。
 
【0038】
  リフト下降用比例弁32が開弁すると、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出される作動油は、リフト下降用比例弁32を介して油圧ポンプモータ30側へ流通する。このとき、モータ31は、油圧ポンプモータ30がボトム室14bから排出された作動油を駆動力として指令回転数で動作する場合、出力トルクがマイナス側の値となり、回生動作を行う。つまり、モータ31は、油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能することで発電機として機能する。このため、発電機として動作するモータ31で生じた電力は、インバータS1を介してバッテリBTに蓄電されることになる。なお、制御部Sは、下降動作を終了させる場合、リフト下降用比例弁32を第2位置32bとする。
 
【0039】
  このような回生動作は、フォーク16の積荷が十分に重い状態での下降動作時に生じ得る。つまり、この場合の下降動作では、フォーク16や積荷の重量によってボトム室14b内の作動油が排出され易く、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度で下降動作させるために必要な流量の作動油がリフト下降用比例弁32の弁開度に合わせて油圧ポンプモータ30側に流通する。このため、油圧ポンプモータ30は、モータ31を力行側で動作させなくても、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度で下降動作させるために必要な必要回転数、すなわち指令回転数で動作する。このようにボトム室14bから排出される作動油の圧力によって回生動作を行わせることができる場合、モータ31の回生動作が行われる。そして、回生動作では、リフト下降用比例弁32の弁開度により、下降動作の速度が制御される。
 
【0040】
  なお、前述した単独操作時、リフトシリンダ14から排出された作動油は、油圧ポンプモータ30へ流通して回生動作を行わせた後、油タンクTに戻る。このため、パイロット配管K9には、流量制御弁34のパイロット圧となり得る圧力が発生しない。これにより、単独操作時の流量制御弁34は、第1位置34aを取り得る。その結果、リフトシリンダ14から排出された流量Q1の作動油は、油圧ポンプモータ30側へ流通される。
 
【0041】
  一方、流量制御弁34は、回生動作時のようにリフト下降用比例弁32の弁開度によって下降動作の速度を指示速度で制御できない場合に開弁することにより指示速度を充足させるための動作を行う。
 
【0042】
  フォーク16の積荷が軽い状態で下降動作が行われる場合は、フォーク16や積荷の重量のみによってはボトム室14b内の作動油が排出され難く、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度で下降動作させるために必要な流量の作動油が油圧ポンプモータ30側に流通し難い。このため、油圧ポンプモータ30を指令回転数で回転させて指示速度を充足させるためには、モータ31を力行動作させる必要がある。しかし、モータ31を力行動作させる場合は電力を消費することになるので、本実施形態の油圧制御装置ではトルク制限による制御を行うことで、消費電力を抑制させている。このようにトルク制限によってモータ31を制御した場合は、モータ31の回転数が抑えられることになるので、下降動作を指示速度で行わせるために必要な流量が不足することになるが、この不足分の流量を補うように流量制御弁34が動作する。
 
【0043】
  つまり、流量制御弁34は、ボトム室14bから排出される作動油の圧力によって回生動作を行わせることができない場合、リフト下降用比例弁32と流量制御弁34の間の圧力P1が下がることで開弁状態とされる。すなわち、流量制御弁34は、第2位置34bを取り得る。これにより、リフトシリンダ14から排出された流量Q2の作動油は、流量制御弁34を通じて油タンクTへ流通する。したがって、流量制御弁34が作動油の流通路となる配管K2を開くことによって前述した不足分の流量が補われることにより、下降動作の指示速度が充足されることになる。このように本実施形態の油圧制御装置では、単独動作による下降動作時、回生動作を行うことができない条件下において、モータ31の制御と流量制御弁34の作用によって消費電力を抑制しつつ、下降動作の指示速度を充足させることが実現される。
 
【0044】
  次に、
図3のステップS11を否定判定し、同時動作にてフォーク16の下降動作とマスト13の前傾動作又は後傾動作の何れか一方の動作を行わせる場合について説明する。
  この場合、制御部Sは、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度で下降動作させるために必要な油圧ポンプモータ30の必要回転数と、リフト下降用比例弁32の弁開度を算出する(ステップS15)。また、制御部Sは、ステップS15において、ティルトレバー23の操作量に応じた指示速度で前傾動作又は後傾動作させるために必要な油圧ポンプモータ30の必要回転数と、ティルト用比例弁37の弁開度を算出する。
 
【0045】
  本実施形態の油圧制御装置は、同時動作を行う場合、モータ31の指令回転数として前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数を採用する。このため、制御部Sは、ステップS15で算出した前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数をモータ31の指令回転数とする(ステップS16)。そして、制御部Sは、リフト下降用比例弁32をステップS15で算出した弁開度の第1位置32aで開くとともに、ティルト用比例弁37をステップS15で算出した弁開度の第2位置37b又は第3位置37cで開く。制御部Sは、ティルト用比例弁37を、後傾動作の場合に第2位置37bで開き、前傾動作の場合に第3位置37cで開く。また、制御部Sは、リフト上昇用比例弁35を第2位置35bとする。
 
【0046】
  この実施形態において、前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数を指令回転数としてモータ31を駆動させると、下降動作においてはモータ31の実回転数、すなわち油圧ポンプモータ30の実回転数が不足し、下降動作を指示速度で行わせるために必要な流量が不足する場合がある。このような場合は、例えば下降動作に必要な必要回転数の方が、前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数よりも大きい場合である。このため、本実施形態の油圧制御装置では、不足分の流量を補うように流量制御弁34が動作する。
 
【0047】
  同時操作時に油圧ポンプモータ30で吸い込んだ作動油がティルト用比例弁37へ流通すると、パイロット配管K9には、ティルト用比例弁37の背圧によってパイロット圧となり得る圧力P2が発生する。このため、流量制御弁34は、パイロット配管K9からの圧力P2を受圧して開弁状態とされる。すなわち、流量制御弁34は、第2位置34bとなる。したがって、流量制御弁34が作動油の流通路となる配管K2を開くことによって前述した不足分の流量が補われることにより、下降動作の指示速度が充足されることになる。実施形態の油圧制御装置では、単一の油圧ポンプモータ30及び単一のモータ31を用いて下降動作と前傾動作又は後傾動作の同時動作を行う場合において、下降動作の指示速度、及び前傾動作又は後傾動作の指示速度の両方を充足させることができる。
 
【0048】
  したがって、この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
  (1)流量制御弁34を設けることにより、下降動作に必要な必要回転数が不足する場合は、流量制御弁34が不足回転数分に相当する流量の作動油を油タンクT側に流通させる。これにより、フォーク16をリフトレバー22の操作量に応じた指示速度で下降動作させることができる。
 
【0049】
  (2)そして、フォーク16の下降動作とマスト13の前傾動作又は後傾動作を同時動作させる場合に、モータ31の指令回転数をマスト13の前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数としたときであっても、それぞれの動作を指示速度で行わせることができる。すなわち、下降動作に必要な必要回転数が不足する場合は、流量制御弁34が不足回転数分に相当する流量の作動油を油タンクT側に流通させるから、下降動作の指示速度を充足させることができる。
 
【0050】
  (3)流量制御弁34をパイロット配管K9から与えられるパイロット圧で制御するON−OFF弁とした。このため、モータ31に回生動作を行わせる場合において流量制御弁34を確実に閉弁させることができる。これにより、回生動作時にリフトシリンダ14のボトム室14bから流出される作動油がドレイン側(油タンクT側)へ漏れることを抑制し、効率的な回生を行わせることができる。
 
【0051】
  (4)また、フォーク16を単独動作で下降動作させる場合において、モータ31を力行動作させるときであっても、モータ31の制御(トルク制限)と流量制御弁34の作用により、消費電力を抑制しつつ、下降動作の指示速度を充足させることができる。
 
【0052】
  (5)リフト下降用比例弁32を圧力補償機構を有する弁としている。このため、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出される作動油の流量が、リフトレバー22の操作量に応じた指示速度に必要な流量よりも多くなる場合には、圧力補償によって流量調整が行われる。したがって、リフトシリンダ14の下降速度の急上昇を抑制できる。
 
【0053】
  (6)油圧制御装置を単一の油圧ポンプモータ30と単一のモータ31によって構成した場合であっても、流量制御弁34により各動作の指示速度を充足させることができるので、複数の油圧ポンプモータやモータによって油圧制御装置を構成する場合に比して装置全体のコスト削減を図ることができる。
 
【0054】
  なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
  ○  昇降指示部材や傾動指示部材はリフトレバー22やティルトレバー23などのレバー式に限らず、他の構造でも良い。例えば、ボタン式でも良い。
 
【0055】
  ○  
図3のステップS13のトルク制限処理で設定するトルク制限値を0Nm以上の値、例えば5Nmなどにしても良い。
  ○  
図4は、
図1に二点鎖線で囲んだ領域A1に対応する図である。そして、
図4に示すように、流出制御機構を、リフト下降用比例弁32に加えて、ポペット弁45と電磁弁46とによって構成しても良い。下降動作時には、ポペット弁45と電磁弁46が開弁するとともに、リフト下降用比例弁32の開度によって油圧ポンプモータ30側へ流出する作動油の流量が制御される。なお、流量制御弁34は、実施形態と同様に、油タンクT側へ流す流量を制御する。
 
【0056】
  ○  実施形態は、単一の油圧ポンプモータ30を備えた油圧制御装置としたが、
図5に示すように、油圧ポンプモータ30に接続されるモータ31に動力伝達装置50を介して別の油圧ポンプモータ51を接続し、複数の油圧ポンプモータ30,51を備えた油圧制御装置に具体化しても良い。この別例における動力伝達装置50は、モータ31の回転軸及び油圧ポンプモータ51の回転軸にそれぞれ連結されるとともに、油圧ポンプモータ51からモータ31への一方向にのみ駆動トルクを伝達可能で、モータ31からの駆動トルクに対しては空転して油圧ポンプモータ51への駆動トルクの伝達を行わないワンウェイクラッチである。そして、油圧ポンプモータ51の吸入口51aは、リフト下降用比例弁32における作動油の流出側と配管接続されている。これにより、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出された作動油(図中の流量Q1)は、実施形態のように油圧ポンプモータ30の吸入口30aへは流れず、油圧ポンプモータ51の吸入口51aへ流れる。また、油圧ポンプモータ51へ流入した作動油は、油タンクTに排出される。
 
【0057】
  図5に示す油圧制御装置の構成によれば、リフトシリンダ14のボトム室14bから排出されるとともにリフト下降用比例弁32を介して油圧ポンプモータ51へ流入する作動油によって油圧ポンプモータ51を油圧モータとして作動させることができる。そして、油圧ポンプモータ51が油圧モータとして作動すると、その駆動トルクが動力伝達装置50を介してモータ31へ伝達されることによってモータ31を発電機として作動させることができる。これにより、モータ31で生じた電力をインバータS1を介してバッテリBTに蓄電させることができる。すなわち、回生動作が行われる。
 
【0058】
  図5に示す油圧制御装置において単独動作にてフォーク16を下降動作させる場合は、前述したように回生動作が行われる。そして、
図5に示す油圧制御装置では、実施形態で説明したように、リフト下降用比例弁32の弁開度によって下降動作の速度を指示速度で制御できない場合、流量制御弁34が開弁することにより指示速度を充足させるための動作を行う。つまり、流量制御弁34が開弁することにより、下降動作を指示速度で行わせるために必要な流量の不足分が配管K2側(ドレイン側)へ流通する。
 
【0059】
  また、
図5に示す油圧制御装置は、フォーク16の下降動作とマスト13の前傾動作又は後傾動作の何れかを同時動作させる場合において、前述した実施形態と同様の制御内容で制御することができる。つまり、前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数を指令回転数としてモータ31を駆動させる場合において、前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数よりも下降動作に必要な必要回転数の方が小さいときには、油圧モータとして機能する油圧ポンプモータ51の駆動トルクがモータ31に伝達される。そして、この駆動トルクは、モータ31を回転させるためのアシストトルクとしてモータ31に付与されることで、消費電力を抑制しつつ、前傾動作又は後傾動作の指示速度、及び下降動作の指示速度のそれぞれを充足させることができる。また、前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数よりも下降動作に必要な必要回転数の方が大きい場合には、モータ31の指令回転数を前傾動作又は後傾動作に必要な必要回転数で制御することにより、下降動作を指示速度で行わせるために必要な流量が不足する。しかし、前述同様に、流量制御弁34が流量の不足分を補うように開弁することによって指示速度が充足される。
 
【0060】
  次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
  (イ)流出制御機構には、開度調整可能な電磁比例弁を含み、電磁比例弁は当該電磁比例弁の流入側と流出側の圧力差による設定流量の変動を抑える圧力補償機構を有する。
 
【0061】
  (ロ)制御部は、フォークの下降動作が単独で行われる場合、電動機の出力トルクを制限するトルク制限処理を行う。