特許第6089613号(P6089613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089613
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】通信機および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20170227BHJP
   H04J 13/22 20110101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04L27/26 200
   H04J13/22
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-251853(P2012-251853)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-99822(P2014-99822A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】西川 延良
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−296506(JP,A)
【文献】 特開2007−300314(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/078357(WO,A1)
【文献】 Heung-Gyoon Ryu et al.,Dummy Sequence Insertion (DSI) for PAPR Reductionin the OFDM Communication System,Consumer Electronics, IEEE Transactions on,IEEE,2004年 2月,第50巻 第1号,pp.89-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04J 11/00
H04J 13/22
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
入力信号を所定の変調方式で変調して変調信号を生成する変調手段と、
所定のデータの集合である冗長信号に基づき、前記変調信号の各要素と、所定の方向に所定の回数だけデータのシフトを行った前記冗長信号の要素とが交互に位置し、要素数が高速フーリエ変換のサイズに一致する挿入後データを生成する挿入手段と、
前記挿入後データの逆高速フーリエ変換を行うIFFT手段と、
前記IFFT手段の演算結果を合成してベースバンド信号を生成する合成手段と、
前記ベースバンド信号のピーク対平均電力比を算出し、該ピーク対平均電力比が所定の基準を満たすか否かを判断する判定手段と、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号を検出するまで、前記所定の回数を変えて、前記挿入手段、前記IFFT手段、前記合成手段および前記判定手段の処理を繰り返し行う繰り返し手段と、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号に基づき送信信号を生成して送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする通信機。
【請求項2】
前記挿入手段は、前記冗長信号として、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データの任意のシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を用いることを特徴とする請求項1に記載の通信機。
【請求項3】
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
所定の方向にシフトされた冗長信号の要素変調信号の各要素とが交互に位置する周波数領域のデータに基づいて生成された送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信手段と、
前記ベースバンド信号を直並列変換し、高速フーリエ変換を行って変換後データを生成するFFT手段と、
前記冗長信号の要素が挿入された位置に応じた前記変換後データの定めた位置にある要素を抽出し、抽出した該要素から成るデータを所定の変調方式で復調する復調手段と、
を備えることを特徴とする通信機。
【請求項4】
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
入力信号を所定の変調方式で変調して変調信号を生成する変調ステップと、
所定のデータの集合である冗長信号に基づき、前記変調信号の各要素と、所定の方向に所定の回数だけデータのシフトを行った前記冗長信号の要素とが交互に位置し、要素数が高速フーリエ変換のサイズに一致する挿入後データを生成する挿入ステップと、
前記挿入後データの逆高速フーリエ変換を行うIFFTステップと、
前記IFFTステップの演算結果を合成してベースバンド信号を生成する合成ステップと、
前記ベースバンド信号のピーク対平均電力比を算出し、該ピーク対平均電力比が所定の基準を満たすか否かを判断する判定ステップと、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号を検出するまで、前記所定の回数を変えて、前記挿入ステップ、前記IFFTステップ、前記合成ステップおよび前記判定ステップの処理を繰り返し行う繰り返しステップと、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号に基づき送信信号を生成して送信する送信ステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項5】
前記挿入ステップにおいて、前記冗長信号として、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データの任意のシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を用いることを特徴とする請求項に記載の通信方法。
【請求項6】
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
所定の方向にシフトされた冗長信号の要素変調信号の各要素とが交互に位置する周波数領域のデータに基づいて生成された送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信ステップと、
前記ベースバンド信号を直並列変換し、高速フーリエ変換を行って変換後データを生成するFFTステップと、
前記冗長信号の要素が挿入された位置に応じた前記変換後データの定めた位置にある要素を抽出し、抽出した該要素から成るデータを所定の変調方式で復調する復調ステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式の通信では、入力信号をサブキャリア変調し、IFFT(Inverse Fast Fourier Transformation:逆高速フーリエ変換)を行い、ベースバンド信号を生成する。そのため、サブキャリアの数が増え、FFT(Fast Fourier Transformation:高速フーリエ変換)サイズが大きくなると、大きなピークを持つベースバンド信号が生成され、PAPR(Peak-to-Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)が高くなるという性質を持っている。PAPRが高くなると、信号を歪みなく伝送するために広範囲において線形性を有する増幅器が必要となる。そこでPAPRを低減するための技術が開発されている。
【0003】
特許文献1の直交周波数分割多重通信装置では、PAPRを低減するため、IFFTを行う前に逐次決定法により算出した最適位相に基づきサブキャリア変調信号の位相を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OFDM方式の通信では、PAPRを低減することが課題となっている。特許文献1の直交周波数分割多重通信装置では、PAPRを低減する最適位相を算出するために繰り返し計算処理を行い、サブキャリアごとに位相を制御する必要がある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、OFDM方式の通信において、PAPRを低減し、さらにPAPRを低減するための処理を簡易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
入力信号を所定の変調方式で変調して変調信号を生成する変調手段と、
所定のデータの集合である冗長信号に基づき、前記変調信号の各要素と、所定の方向に所定の回数だけデータのシフトを行った前記冗長信号の要素とが交互に位置し、要素数が高速フーリエ変換のサイズに一致する挿入後データを生成する挿入手段と、
前記挿入後データの逆高速フーリエ変換を行うIFFT手段と、
前記IFFT手段の演算結果を合成してベースバンド信号を生成する合成手段と、
前記ベースバンド信号のピーク対平均電力比を算出し、該ピーク対平均電力比が所定の基準を満たすか否かを判断する判定手段と、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号を検出するまで、前記所定の回数を変えて、前記挿入手段、前記IFFT手段、前記合成手段および前記判定手段の処理を繰り返し行う繰り返し手段と、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号に基づき送信信号を生成して送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記挿入手段は、前記冗長信号として、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データの任意のシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を用いる。
【0010】
本発明の第2の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
所定の方向にシフトされた冗長信号の要素変調信号の各要素とが交互に位置する周波数領域のデータに基づいて生成された送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信手段と、
前記ベースバンド信号を直並列変換し、高速フーリエ変換を行って変換後データを生成するFFT手段と、
前記冗長信号の要素が挿入された位置に応じた前記変換後データの定めた位置にある要素を抽出し、抽出した該要素から成るデータを所定の変調方式で復調する復調手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
入力信号を所定の変調方式で変調して変調信号を生成する変調ステップと、
所定のデータの集合である冗長信号に基づき、前記変調信号の各要素と、所定の方向に所定の回数だけデータのシフトを行った前記冗長信号の要素とが交互に位置し、要素数が高速フーリエ変換のサイズに一致する挿入後データを生成する挿入ステップと、
前記挿入後データの逆高速フーリエ変換を行うIFFTステップと、
前記IFFTステップの演算結果を合成してベースバンド信号を生成する合成ステップと、
前記ベースバンド信号のピーク対平均電力比を算出し、該ピーク対平均電力比が所定の基準を満たすか否かを判断する判定ステップと、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号を検出するまで、前記所定の回数を変えて、前記挿入ステップ、前記IFFTステップ、前記合成ステップおよび前記判定ステップの処理を繰り返し行う繰り返しステップと、
前記所定の基準を満たす前記ベースバンド信号に基づき送信信号を生成して送信する送信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記挿入ステップにおいて、前記冗長信号として、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データの任意のシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を用いる。
【0014】
本発明の第4の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
所定の方向にシフトされた冗長信号の要素変調信号の各要素とが交互に位置する周波数領域のデータに基づいて生成された送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信ステップと、
前記ベースバンド信号を直並列変換し、高速フーリエ変換を行って変換後データを生成するFFTステップと、
前記冗長信号の要素が挿入された位置に応じた前記変換後データの定めた位置にある要素を抽出し、抽出した該要素から成るデータを所定の変調方式で復調する復調ステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、OFDM方式の通信において、PAPRを低減し、さらにPAPRを低減するための処理を簡易化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る通信機の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る通信機の異なる構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る挿入部が行う挿入処理の例を示す図である。
図4】実施の形態に係る挿入部が行う挿入処理の異なる例を示す図である。
図5】実施の形態に係る通信機が行う送信制御の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係る通信機が行う受信制御の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】実施の形態に係る通信機における挿入後データの信号点配置図の例を示す図である。
図8】実施の形態に係る通信機におけるベースバンド信号のPAPRのCCDF特性を示す図である。
図9】実施の形態に係る通信機におけるBER特性を示す図である。
図10】実施の形態に係る通信機における挿入後データの信号点配置図の例を示す図である。
図11】実施の形態に係る通信機におけるベースバンド信号のPAPRのCCDF特性を示す図である。
図12】実施の形態に係る通信機におけるBER特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。以下の説明において、IFFT(Inverse Fast Fourier Transformation:逆高速フーリエ変換)は、IFFTとIDFT(Inverse Discrete Fourier Transformation:逆離散フーリエ変換)を含む概念とする。したがって本発明の実施の形態においては、IFFTの代わりに、IDFTを行うよう構成してもよい。同様にFFT(Fast Fourier Transformation:高速フーリエ変換)は、FFTとDFT(Discrete Fourier Transformation:離散フーリエ変換)を含む概念とする。またIDFTおよびDFTを行う場合は、以下の説明におけるFFTサイズとは、DFTサイズを意味する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信機の構成例を示すブロック図である。通信機1は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式の無線通信により他の機器と通信を行う。通信機1は、アンテナ10、変調部11、直並列変換部12、挿入部13、IFFT部14、合成部15、判定部16、送信部17およびコントローラ20を備える。
【0019】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)21、RAM(Random Access Memory)23、およびROM(Read-Only Memory)24を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ20から各部への信号線が省略されているが、コントローラ20は通信機1の各部にI/O(Input/Output)22を介して接続しており、それらの処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。
【0020】
RAM23には、例えば送信フレームを生成するためのデータが記憶されている。ROM24は、コントローラ20が通信機1の動作を制御するための制御プログラムを格納する。コントローラ20は、制御プログラムに基づいて、通信機1を制御する。
【0021】
図2は、実施の形態に係る通信機の異なる構成例を示すブロック図である。上述の通信機1に受信機能をもたせるため、図2に示す通信機1はさらに復調部31、並直列変換部32、抽出部33、FFT部34、受信部35、および送受信切替部36を備える。送信機能および受信機能を備える図2に示す通信機1を用いて、通信機1が行う通信方法について以下に説明する。
【0022】
変調部11は、入力信号を所定の変調方式で変調し、変調信号を生成し、直並列変換部12に送る。所定の変調方式は、例えばQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying:四位相偏移変調)である。直並列変換部12は、変調信号を直並列変換し、挿入部13に送る。挿入部13は、直並列変換された変調信号の任意に定めた位置に所定のデータの集合である冗長信号の要素を挿入し、要素数がFFTのサイズに一致する挿入後データを生成する。挿入部13は、挿入後データをIFFT部14に送る。
【0023】
送信側と受信側で冗長信号の要素の挿入位置の情報が共有されていれば、冗長信号の要素を挿入する位置は任意に決めることができる。挿入部13は、冗長信号として、例えばランダム信号や、データのシフトを行っていない同じデータ系列との間の自己相関値が、データの任意のシフトを行ったデータ系列との間の自己相関値に比べて高い、自己相関特性を有する任意のデータ系列を用いることができる。自己相関特性を有するデータ系列を用いる場合、データの任意のシフトを行ったデータ系列は、データのシフトを行っていないデータ系列と比べて、少なくとも1の要素の値が異なる。
【0024】
自己相関特性を有するデータ系列として、例えばCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列やPN(Pseudorandom Noise:擬似ランダム雑音)系列を用いることができる。変調信号よりもPAPR(Peak-to-Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)が低い自己相関特性を有するデータ系列を冗長信号として用い、変調信号の任意に定めた位置に冗長信号の要素を挿入することで、PAPRを低減することが可能となる。
【0025】
変調信号の要素数をMとすると、直並列変換された変調信号は下記(1)式で表される。以下の説明における変調信号dは、直並列変換された変調信号を意味する。FFTサイズをNとすると、冗長信号rは下記(2)式で表される。なお冗長信号rは、直列信号であってもよいし、並列信号であってもよい。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
挿入部13は、例えばM=N/2とし、変調信号dの各要素と冗長信号rの各要素が交互に位置するように、変調信号dの各要素の直後に冗長信号rの各要素を順に挿入して、挿入後データを生成する。挿入後データは、下記(3)式で表される。式中の添え字Tは、行列を転置表示していることを表す。
【0029】
【数3】
【0030】
挿入部13は、所定のデータの集合である冗長信号rについて所定の方向に所定の回数データのシフトを行い、変調信号dの任意に定めた位置にデータのシフトを行った冗長信号rの要素を挿入してもよい。例えば左方向にk回シフトした冗長信号r(k)は、下記(4)式で表される。添え字の括弧内のkは、シフトした回数を表す。冗長信号rのデータをシフトする方向は左方向に限られず、任意である。
【0031】
【数4】
【0032】
挿入部13は、変調信号dの各要素と冗長信号r(k)の各要素が交互に位置するように、変調信号dの各要素の直後に冗長信号r(k)の各要素を順に挿入して、挿入後データを生成する。挿入後データは、下記(5)式で表される。
【0033】
【数5】
【0034】
図3は、実施の形態に係る挿入部が行う挿入処理の例を示す図である。変調信号dおよび冗長信号rの要素数を8とし、FFTサイズを16とした。横軸が要素であり、縦軸が要素の値である。説明を容易にするために、各要素の実部のみを表した。図3(a)の白い四角で表される変調信号dの任意に定めた位置に、図3(b)の斜線模様の四角で表される冗長信号rの要素を挿入し、挿入後データを生成した。図3(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、変調信号dの任意に定めた位置に冗長信号rの要素を挿入して生成した挿入後データの例である。
【0035】
図3(c)に示すように、冗長信号rの各要素が連続しないように変調信号dに冗長信号rの要素を挿入してもよいし、図3(d)、(e)に示すように、冗長信号rの一部の要素が連続するように変調信号dに冗長信号rの要素を挿入してもよい。連続する冗長信号rの要素数は、図3(d)に示すように異なってもよいし、図3(e)に示すように同じであってもよい。また図3(f)のように冗長信号rの全ての要素を変調信号dの前に挿入してもよい。図3に示すように、変調信号dの任意に定めた位置に冗長信号rを挿入することができ、冗長信号rを受信側での等化処理に用いるパイロット信号のように一定間隔で変調信号dに挿入する必要はない。
【0036】
図4は、実施の形態に係る挿入部が行う挿入処理の異なる例を示す図である。図の見方は図3と同様である。変調信号dの要素数と冗長信号rの要素数は異なる値でもよい。図4(a)は要素数が11の変調信号dであり、図4(b)は要素数が5の冗長信号rである。図4(a)に示す変調信号dに図4(b)に示す冗長信号rを挿入して図4(c)に示すように挿入後データを生成してもよい。また図4(d)は要素数が6の変調信号dであり、図4(e)は要素数が10の冗長信号rである。図4(d)に示す変調信号dに図4(e)に示す冗長信号rを挿入して図4(f)に示すように挿入後データを生成してもよい。
【0037】
IFFT部14は、挿入後データのIFFTを行い、演算結果を合成部15に送る。合成部15は、IFFT部14の演算結果を合成してベースバンド信号を生成し、ベースバンド信号を判定部16に送る。判定部16は、ベースバンド信号のPAPRを算出し、PAPRが所定の基準に合致するか否かを判定する。ベースバンド信号のPAPRが所定の基準に合致しない場合には、判定部16はその旨を挿入部13に通知する。そして挿入部13は、異なる冗長信号rを用いて新たな挿入後データを生成する。挿入部13が異なる冗長信号rを用いて新たな挿入後データを生成し、IFFT部14、合成部15、および判定部16が、新たな挿入後データに基づき上述の処理を行うことを、PAPRが所定の基準に合致するベースバンド信号を検出するまで繰り返す。PAPRが所定の基準に合致するベースバンド信号を検出するまで繰り返すことで、ベースバンド信号のPAPRを低減することが可能になる。
【0038】
挿入部13は、変調信号の任意の定めた位置に所定の方向に所定の回数シフトした冗長信号rを挿入して挿入後データを生成する場合には、PAPRが所定の基準に合致するベースバンド信号を検出するまで、シフトする回数を変えて上述の処理を繰り返す。冗長信号rとしてランダム信号を用いた場合、データの任意のシフトを行ったランダム信号と、データのシフトを行っていないランダム信号とが一致する確率は極めて低い。また冗長信号rとして自己相関特性を有するデータ系列を用いる場合、データの任意のシフトを行ったデータ系列は、データのシフトを行っていないデータ系列と比べて、少なくとも1の要素の値が異なる。ある冗長信号rのシフト回数を変えて上述の処理を繰り返すことで、予め用意した異なる複数の冗長信号rについて上述の処理を繰り返した場合と同様に、ベースバンド信号のPAPRを低減することが可能になる。
【0039】
コントローラ20は、挿入部13、IFFT部14、合成部15、および判定部16が上述の処理を繰り返すよう制御し、繰り返し手段としての動作を行う。
【0040】
ベースバンド信号のPAPRが所定の基準に合致する場合には、判定部16は、ベースバンド信号を送信部17に送る。判定部16は、予め用意した全ての冗長信号rについて上述の処理を繰り返し、最もPAPRが低いベースバンド信号を検出するように、またはPAPRが所定の値より小さいベースバンド信号を検出するように構成することができる。また判定部16は、挿入部13における冗長信号rのデータのシフトが一巡するまで上述の処理を繰り返し、最もPAPRが低いベースバンド信号を検出するように構成することができる。
【0041】
送信部17は、受け取ったベースバンド信号から送信信号を生成し、送受信切替部36およびアンテナ10を介して他の機器に送信信号を送る。
【0042】
図5は、実施の形態に係る通信機が行う送信制御の動作の一例を示すフローチャートである。変調部11は、入力信号を所定の変調方式で変調し、変調信号を生成し、直並列変換部12は、変調信号を直並列変換する(ステップS110)。挿入部13は、変調信号dの任意に定めた位置に所定のデータの集合である冗長信号rの要素を挿入し、要素数がFFTサイズに一致する挿入後データを生成する(ステップS120)。IFFT部14は、挿入後データのIFFTを行う(ステップS130)。合成部15は、IFFT部14の演算結果を合成してベースバンド信号を生成する(ステップS140)。
【0043】
判定部16は、ベースバンド信号のPAPRを算出し、PAPRが所定の基準に合致するか否かを判定する(ステップS150)。ベースバンド信号のPAPRが所定の基準に合致しない場合には(ステップS160:N)、ステップS120に戻って、異なる冗長信号rについて上述の処理を繰り返す。ベースバンド信号のPAPRが所定の基準に合致する場合には(ステップS160:Y)、送信部17は、所定の基準に合致するベースバンド信号から送信信号を生成し、送受信切替部36およびアンテナ10を介して他の機器に送信信号を送る(ステップS170)。ステップS170の送信処理が完了すると、処理を終了する。
【0044】
受信側での処理を以下に説明する。受信部35は、アンテナ10および送受信切替部36を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成し、直並列変換して、FFT部34に送る。FFT部34は、直並列変換されたベースバンド信号のFFTを行って変換後データを生成し、変換後データを抽出部33に送る。
【0045】
抽出部33は、変換後データの任意に定めた位置にある要素を抽出し、抽出した要素から成る抽出後データを生成し、並直列変換部32に送る。任意に定めた位置とは、送信側で生成した挿入後データにおける変調信号dの要素の位置である。上述のとおり、当該位置は、送信側と受信側で位置の情報が共有されていれば、任意に決めることができる。
【0046】
並直列変換部32は、抽出後データを並直列変換し、復調部31に送る。復調部31は、並直列変換された抽出後データを所定の変調方式で復調し、入力信号を復元する。
【0047】
図6は、実施の形態に係る通信機が行う受信制御の動作の一例を示すフローチャートである。受信部35は、アンテナ10および送受信切替部36を介して送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成し、直並列変換を行う(ステップS210)。FFT部34は、直並列変換されたベースバンド信号のFFTを行って変換後データを生成する(ステップS220)。抽出部33は、変換後データの任意に定めた位置にある要素を抽出し、抽出後データを生成する(ステップS230)。並直列変換部32は、抽出後データを並直列変換し、復調部31は、並直列変換された抽出後データを所定の変調方式で復調し、入力信号を復元する(ステップS240)。
【0048】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態に係る通信機1によれば、OFDM通信方式において、変調信号dに冗長信号rの要素を挿入して生成した挿入後データに基づきベースバンド信号を生成することを、所定の基準を満たすベースバンド信号を検出するまで異なる冗長信号rについて繰り返すことで、PAPRを低減することが可能となる。また異なる冗長信号rについて上述の処理を繰り返すことは、逐次決定法による計算処理の繰り返しと比べてより簡易な方法であり、本発明の実施の形態に係る通信機1によれば、PAPRを低減する処理を簡易化することが可能となる。
【0049】
(具体例)
次に、シミュレーションにより本実施の形態に係る発明の効果を説明する。入力信号にランダム信号を用いて、従来技術と本実施の形態に係る発明について、ベースバンド信号を生成し、PAPRの算出を繰り返すシミュレーションを行った。変調方式をQPSKとし、FFTサイズを2048として、従来技術と本実施の形態に係る発明のPAPRのCCDF(Complementary Cumulative Distribution Function:相補累積分布関数)、すなわちPAPRの発生確率の特性を比較した。従来技術とは、上述のような挿入処理を行わずに、入力信号を所定の変調方式で変調した信号を直並列変換し、IFFTを行ってベースバンド信号を生成する方法である。
【0050】
ここで一例として、それぞれの要素数が1024である変調信号dおよび冗長信号rを用いて、変調信号dの各要素と冗長信号rの各要素が交互に位置するように、変調信号dの各要素の直後に冗長信号rの各要素を順に挿入して生成した挿入後データを用いてシミュレーションを行う。冗長信号rとしてCAZAC系列を用いる。図7は、実施の形態に係る通信機における挿入後データの信号点配置図の例を示す図である。挿入後データの各要素の位相はQPSKの信号点配置図と比べて分散していることがわかる。
【0051】
図8は、実施の形態に係る通信機におけるベースバンド信号のPAPRのCCDF特性を示す図である。横軸はPAPR(単位:dB)、縦軸はPAPRのCCDFである。従来技術のPAPRのCCDF特性が細い実線のグラフであり、本実施の形態に係る発明のPAPRのCCDF特性が太い実線のグラフである。本実施の形態に係る発明のPAPRは従来技術と比べて低減されている。
【0052】
BER(Bit Error Rate:符号誤り率)について同様にシミュレーションを行った。図9は、実施の形態に係る通信機におけるBER特性を示す図である。横軸はEb/No(Energy per Bit to NOise power spectral density ratio:ビットエネルギー対雑音電力密度比)、縦軸はBERである。Eb/Noの単位はdBである。従来技術のBERはプロット点を四角で表したグラフであり、本実施の形態に係る発明のBERはプロット点を三角で表したグラフである。図9に示す範囲において、従来技術のBERと本実施の形態に係る発明のBERはほぼ同じであることがわかる。
【0053】
他の例として、冗長信号rとしてPN系列を用い、上述のシミュレーションと同様に変調信号dの各要素の直後に冗長信号rの各要素を順に挿入して生成した挿入後データを用いてシミュレーションを行う。図10は、実施の形態に係る通信機における挿入後データの信号点配置図の例を示す図である。図10(a)は、冗長信号rとしてPN系列を用いた場合の挿入後データの信号点配置図であり、図10(b)は、冗長信号rとしてPN系列の各要素についてπ/4だけ位相を回転させたデータまたはPN系列の各要素について−π/4だけ位相を回転させたデータを用いた場合の挿入後データの信号点配置図である。
【0054】
図11は、実施の形態に係る通信機におけるベースバンド信号のPAPRのCCDF特性を示す図である。横軸はPAPR(単位:dB)、縦軸はPAPRのCCDFである。図10(a)に示すように冗長信号rとしてPN系列を用いて上述のシミュレーションと同様のシミュレーションを行った。従来技術のPAPRのCCDF特性が細い実線のグラフであり、本実施の形態に係る発明のPAPRのCCDF特性が太い実線のグラフである。本実施の形態に係る発明のPAPRは従来技術と比べて低減されている。
【0055】
BERについても同様にシミュレーションを行った。図12は、実施の形態に係る通信機におけるBER特性を示す図である。横軸はEb/No、縦軸はBERである。Eb/Noの単位はdBである。従来技術のBERはプロット点を四角で表したグラフであり、本実施の形態に係る発明のBERはプロット点を三角で表したグラフである。図12に示す範囲において、従来技術のBERと本実施の形態に係る発明のBERはほぼ同じであることがわかる。
【0056】
所定の変調方式で変調した信号の各要素の位相が一致する、例えば要素の値が全て0である同一信号を入力信号としてシミュレーションを行った。従来技術のPAPRが33.11dBであるのに対し、冗長信号rにCAZAC系列を用いて生成した挿入後データに基づくベースバンド信号のPAPRは27.36dBであった。また冗長信号rにPN系列を用いて生成した挿入後データに基づくベースバンド信号のPAPRは27.11dBであり、冗長信号rにPN系列の各要素をπ/4だけ位相回転したデータを用いて生成した挿入後データに基づくベースバンド信号のPAPRも27.11dBであった。入力信号が同一信号である場合についても、本実施の形態に係る発明のPAPRは、いずれの冗長信号rを用いても、従来技術と比べて低減されている。
【0057】
また図3(c)〜(f)に示すように、冗長信号rの要素の挿入位置を変えてシミュレーションを行ったところ、PAPRの低減の程度が僅かではあるが変化した。
【0058】
上述のシミュレーションにより、本実施の形態においては、変調信号dに冗長信号rの要素を挿入して生成した挿入後データに基づきベースバンド信号を生成することを、所定の基準を満たすベースバンド信号を検出するまで異なる冗長信号rについて繰り返すことで、PAPRを低減できることがわかった。
【0059】
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られない。変調部11の変調方式は、QPSKに限られず、QPSK以外のPSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)などを用いることができる。上述の実施の形態においては、直並列変換部12で直並列変換した変調信号に冗長信号rの要素を挿入したが、直並列変換部12と挿入部13との順序を変えてもよい。すなわち、入力信号を所定の変調方式で変調して生成した変調信号に冗長信号rの要素を挿入して挿入後データを生成し、直並列変換部12で挿入後データを直並列変換するように構成してもよい。
【0060】
挿入部13が用いる冗長信号rは、CAZAC系列やPN系列などの自己相関特性を有するデータ系列に限られず、ランダム信号であってもよい。挿入部13は、例えば各要素の位相にばらつきがある複数のランダム信号を冗長信号rとして用いるように構成してもよい。IFFT部14は、IFFTの代わりにIDFTを行うよう構成してもよいし、FFT部34は、FFTの代わりにDFTを行うよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 通信機
10 アンテナ
11 変調部
12 直並列変換部
13 挿入部
14 IFFT部
15 合成部
16 判定部
17 送信部
20 コントローラ
21 CPU
22 I/O
23 RAM
24 ROM
31 復調部
32 並直列変換部
33 抽出部
34 FFT部
35 受信部
36 送受信切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12