【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、実施例及び比較例中における分析または評価は、以下のようにして行った。
【0039】
<粉末X線回折測定>
得られた複合材料について、粉末X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス社製「NEW D8 ADVANCE」)を用いて、対称反射法で測定した。測定条件を以下に示す。
1)X線源:CuKα(λ=1.5418Å)40kV 200mA
2)ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
3)検出器:シンチレーションカウンター
4)回折角(2θ)範囲:3〜90°
5)スキャンステップ:0.05°
6)積算時間:0.5秒/ステップ
7)スリット:発散スリット=0.5°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=0.5°
【0040】
<透過型電子顕微鏡(TEM)観察>
透過型電子顕微鏡(日立製作所製「HT7700」、または日本電子社製「JEM−2200FS」)を用いて、得られた多孔性材料、及び多孔性複合材料を観察した。
【0041】
<硫化水素ガス吸着試験>
5Lのテドラーバック中に硫化水素ガス10ppmを含む温度25℃、相対湿度0%の窒素、及び1ccの大きさのフィルタサンプルを封入した。次に、中に入っているフィルタサンプルと硫化水素ガスが十分に接触、反応するようにテドラーバックを適宜振った。なお、テドラーバック周囲の雰囲気温度は25℃に設定した。3時間後のテドラーバック内の硫化水素ガス濃度を硫化水素ガス用検知管を用いて測定し、反応前後の硫化水素ガスの濃度変化から硫化水素ガス除去量[mg]を求め、この硫化水素ガス除去量値をフィルタサンプルの体積で割ることにより、硫化水素ガス除去容量[mg/cc]を算出した。なお、測定フィルタサンプルは測定前に120℃で24時間真空乾燥処理し、吸着物質を予め除去したものを使用した。
【0042】
<銀系触媒の平均粒子径の測定方法>
銀系触媒の粒子径は、透過型電子顕微鏡(日立製作所製「HT7700」、または日本電子社製「JEM−2200FS」)を用い、任意の200個の銀系触媒について、倍率10万倍で観察することにより測定した。そして、これらの平均値を、銀系触媒の平均粒子径とした。
【0043】
(実施例1)
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu
3(BTC)
2(H
2O)
3]
n)を120℃で15時間真空乾燥させて配位不飽和金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体300mgを、メタノール4.8mlに分散させ、ここへAgNO
3を9.4mg(0.05mmol)含むメタノール溶液1.3mlを加え、室温で1.5時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール3.0mlを加えた。その後、NaBH
4を15.9mg(0.42mmol)含むメタノール溶液2.1mlを滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが2質量%担持された多孔性複合材料を得た(256mg、収率84%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定及びTEM観察を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンが観測されなかったが、TEM観察により、2〜5nmのAg粒子が高分散状態で担持されている様子が観察された。
さらに、得られた複合材料80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0044】
(実施例2)
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、Cu
3(BTC)
2(H
2O)
3]
n)を120℃で15時間真空乾燥させて配位不飽和金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、AgNO
3を23.6mg(0.14mmol)含むメタノール溶液6.4mlを加え、室温で17時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、NaBH
4を39.8mg(1.05mmol)含むメタノール溶液5.2mlを滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが1質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.51g、収率100%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。
さらに、得られた複合材料80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0045】
(実施例3)
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu
3(BTC)
2(H
2O)
3]
n)を120℃で15時間真空乾燥させて不飽和配位金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、AgNO
3を11.7mg(0.07mmol)含むメタノール溶液3.2mlを加え、室温で17時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、NaBH
4を19.9mg(0.53mmol)含むメタノール溶液2.6mlを滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが0.5質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.48g、収率98%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。
さらに、得られた複合材料80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0046】
(実施例4)
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、Cu
3(BTC)
2(H
2O)
3]
n)を120℃で15時間真空乾燥させて配位不飽和金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、AgNO
3を2.4mg(0.01mmol)含むメタノール溶液0.6mlを加え、室温で17時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、NaBH
4を4.0mg(0.11mmol)含むメタノール溶液0.52mlを滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが0.1質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.50g、収率100%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。
さらに、得られた複合材料80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0047】
(参考例1)
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu
3(BTC)
2(H
2O)
3]
n)80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0048】
(比較例1)
本比較例においては、真空加熱処理を行っても、構成金属が配位不飽和状態にならない多孔性材料として、Znと2−メチルイミダゾール(MeIm)から形成される多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径3.4Å、細孔内部径11.6Å;BASF社製「Basolite(登録商標) Z1200」、[Zn(MeIm)
2]
n)を試料に用いた。この多孔性金属錯体を構成する金属には、水分子が配位していない。そのため、錯体を真空条件下で加熱しても、配位不飽和状態の金属は形成されない。この多孔性金属錯体を120℃で15時間真空乾燥させ、その後、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、ここへAgNO
3を47.3mg(0.28mmol)含むメタノール溶液12.8mlを加え、室温で24時間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、NaBH
4を80.0mg(2.11mmol)含むメタノール溶液10.5mlを滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが2質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.48g、収率96%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定及びTEM観察を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。
さらに、得られた複合材料80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0049】
(比較例2)
NaY型ゼオライト(平均細孔径;7.4Å)を予め120℃で15時間真空乾燥させた後、室温まで放冷した。このゼオライト300mgを、メタノール4.8mlに分散させ、ここへAgNO
3を9.4mg(0.05mmol)含むメタノール溶液を1.3ml加え、室温で22時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール3.0mlを加えた。その後、NaBH
4を16.0mg(0.42mmol)含むメタノール溶液2.1mlを滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが2質量%担持された複合材料を得た(206mg、収率67%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定及びTEM観察を行った。粉末X線回折測定からは、Agパターンがわずかに観測され、Agの生成が確認できた。またTEM観察により、12〜24nmのAg粒子が担持されている様子が観察された。
さらに、得られた複合材料80mg、コロイダルシリカ;スノーテックス30(日産化学工業社製)67mgをイオン交換水0.95mlに投入し、よく撹拌して、ペーストを得た。前記ペースト中に430セル/inch
2のセル数を有するアルミ製ハニカム2ccを投入し、ペースト全量をハニカム上に添着した。さらに120℃条件で乾燥し、フィルタサンプルを得た。得られたフィルタサンプルを使用し、硫化水素ガス吸着試験を行った。
【0050】
以下、表1により本発明の効果を説明する。本発明である配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料に銀系触媒が担持された多孔性複合材料(実施例1〜4)は配位不飽和部位を有しない多孔性金属錯体を銀系触媒の担持体とした場合(比較例1)、NaY型ゼオライトを銀系触媒の担持体とした場合(比較例2)と比較して、硫化水素ガス除去量が高いことがわかる。
【0051】
【表1】