(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス流路管と、紫外線ランプとを備え、当該ガス流路管内を流通しているアンモニアガスに当該紫外線ランプからの紫外線を照射することによって活性化ガスを得るガス活性化装置において、
前記紫外線ランプは、前記ガス流路管によって形成されるガス流路形成空間に囲まれるよう配設されており、
前記ガス流路管の内面において、前記紫外線ランプからの紫外線が照射される領域の少なくとも一部が、ニッケルを主成分とする合金材料またはステンレス鋼により形成されており、当該ニッケルを主成分とする合金材料またはステンレス鋼により形成されたガス流路管の内面の紫外線反射率が50%以上であることを特徴とするガス活性化装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のガス活性化装置および窒素酸化物処理装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の窒素酸化物処理装置の一例における構成の概略を示す説明用模式図である。
窒素酸化物処理装置は、窒素酸化物を含む被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理するための装置であり、アンモニアガスに紫外線を照射することによって活性化ガスを得るガス活性化装置30を備えている。
この窒素酸化物処理装置には、ガス活性化装置30と共に、ガス活性化装置30からの活性化ガスが被処理ガスに混合されて当該被処理ガス中の窒素酸化物が還元処理される反応器20と、ガス活性化装置30にアンモニアガスを供給するためのガス供給手段10とが設けられている。
反応器20は、一端(
図1における左端)に被処理ガス導入口21が形成され、他端(
図1における右端)に被処理ガス排出口(図示せず)が形成されており、導管25を介してガス活性化装置30に接続されたガス流路管よりなるものである。反応器20の被処理ガス導入口21には、例えば焼却炉、燃焼炉または内燃機関などの被処理ガス発生源29が接続されている。また、反応器20には、被処理ガス発生源29から排出される被処理ガスを加熱する加熱処理部22が形成されおり、また加熱処理部22の下流側には、加熱された被処理ガスと導管25を介して供給される活性化ガスとが混合されて還元処理が行われる還元処理部23が形成されている。
また、ガス供給手段10は、アンモニアガス供給源11およびキャリアガス供給源12の各々に導管13,14を介して接続されたガス混合部15を有しており、このガス混合部15において混合されたアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガス(以下、「被活性化ガス」ともいう。)を、導管16を介してガス活性化装置30に供給するものである。
このガス供給手段10には、アンモニアガス供給源11とガス混合部15とを接続する導管13によって形成されるアンモニアガス流路に、アンモニアガス用流量計(図示せず)が設けられている。また、キャリアガス供給源12とガス混合部15とを接続する導管14によって形成されるキャリアガス流路には、キャリアガス用流量計(図示せず)が設けられている。
【0015】
ガス活性化装置30は、円筒状の外管部32と、円筒状の内管部33とを有する二重管状のガス流路管(以下、「アンモニアガス流路管」ともいう。)31を備えてなるものである。アンモニアガス流路管31において、内管部33は、外管部32の内径より小さい外径を有するものであり、外管部32内において、当該外管部32の筒軸に沿って配置されている。また、外管部32と内管部33とが、両端において側壁部34によって連結されており、外管部32と内管部33との間に、環状のガス流路形成空間Sよりなるガス流路が形成されている。
このアンモニアガス流路管31の他端側(
図1における右端側)には、ガス導入口35が形成されており、このガス導入口35には、導管16を介してガス供給手段10のガス混合部15が接続されている。また、アンモニアガス流路管31の一端側(
図1における左端側)には、ガス排出口36が形成されており、このガス排出口36には、導管25を介して反応器20が接続されている。
そして、アンモニアガス流路管31において、内管部33には、紫外線を透過する、例えば円管状の石英ガラス管よりなる紫外線透過窓37が設けられている。この紫外線透過窓37は、両端に配設された基材管33Aによって支持されている。また、内管部33の内部には、紫外線透過窓37を構成する石英ガラス管内に発光領域が位置するようにして、棒状の紫外線ランプ40が配設されている。
この紫外線ランプ40は、内管部33に設けられている紫外線透過窓37を構成する石英ガラス管の内径よりも小さい外径を有すると共に、当該石英ガラス管の全長と略同等の発光長を有している。そして紫外線ランプ40は、内管部33の内部において、当該紫外線ランプ40の管軸(ランプ中心軸)が内管部33の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されている。すなわち、紫外線ランプ40は、管軸(ランプ中心軸)がアンモニアガス流路管31の管軸と一致し、アンモニアガス流路管31によって形成されるガス流路形成空間Sに囲まれるように配設されている。
この図の例においては、紫外線が酸素に吸収されることによって、アンモニアガスに対する紫外線照射量が低下することを防止するため、紫外線ランプ40と紫外線透過窓37(石英ガラス管)との間は、紫外線を吸収しない窒素ガスで満たされている。
【0016】
アンモニアガス流路管31は、当該アンモニアガス流路管31内を流通するアンモニアガスに接触する内面の全面が、アンモニアガスに対する耐性を有している。
【0017】
そして、アンモニアガス流路管31においては、外管部32、内管部33の基材管33Aおよび側壁部34,34(以下、これらをまとめて「紫外線遮光部分」ともいう。)が、アンモニア活性化反応用触媒物質を含む材料(以下、「特定触媒含有材料」ともいう。)により構成されている。これにより、アンモニアガス流路管31の内面においては、紫外線ランプ40からの紫外線が照射される紫外線照射領域のうちの外管部32の内面が、特定触媒含有材料によって形成されている。
ここに、本明細書において、「アンモニア活性化反応用触媒物質」とは、アンモニア分解反応における触媒として機能する物質を示す。
この図の例において、アンモニアガス流路管31の内面における紫外線照射領域は、外管部32の内面における紫外線ランプ40からの紫外線が照射される領域と、内管部33における紫外線透過窓37(石英ガラス管)の内面とによって構成されている。
【0018】
アンモニア活性化反応用触媒物質は、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびクロム(Cr)のうちの少なくとも一種よりなるものであることが好ましい。
これらのうちでは、入手容易性の観点からニッケルが好ましい。
【0019】
紫外線遮光部分を構成する特定触媒含有材料の具体例としては、例えば、モネル、インコネルおよびハステロイなどのニッケルを主成分とする合金材料(以下、「ニッケル合金材料」ともいう。)、およびステンレス鋼などが挙げられる。
ここに、特定触媒含有材料として用いられるニッケル合金材料は、ニッケルの含有割合が50〜70質量%のものであり、また、ステンレス鋼は、例えばクロムの含有割合が10〜30%であってニッケルの含有割合が8〜20%であるものである。
【0020】
また、アンモニアガス流路管31の内面においては、紫外線照射領域に、紫外線反射能を有する部分(以下、「紫外線反射部分」ともいう。)が形成されていることが好ましい。
紫外線反射部分が形成されていることによれば、アンモニアガス流路管31内における紫外線光量を高くすることができるため、より高い効率でアンモニアガスを活性化することができる。その理由は、アンモニア活性化反応用触媒物質が、紫外線照射量に応じてアンモニア活性化能(触媒機能)が変化するものであることから、アンモニアガス流路管31内における紫外線光量を高くすることによってアンモニア活性化反応用触媒物質のアンモニア活性化能を向上させることができるためである。
この図の例においては、外管部分32の内面全面が紫外線反射能を有するものとされている。
【0021】
アンモニアガス流路管31の内面において、特定触媒含有材料よりなり、紫外線反射能を有する部分は、特定触媒含有材料よりなるアンモニアガス流路管形成用材料管の内面を、鏡面加工することによって形成することができる。
【0022】
また、アンモニアガス流路管31の内面における紫外線反射部分においては、紫外線反射率が50%以上であることが好ましい。
紫外線反射部分の紫外線反射率が50%以上であることにより、より一層高い効率でアンモニアガスを活性化することができる。
【0023】
紫外線ランプ40としては、アンモニアにおけるN−H結合を切断し得るエネルギーを有する紫外線を放射するものであればよいが、アンモニアの光吸収波長が220nm以下であることから、波長が220nm以下の紫外線を放射するものであることが好ましい。
また、アンモニアにおけるN−H結合を効率良く活性化させるために、紫外線ランプ40としては、アンモニアガスの吸収係数が高い波長の紫外線を放射するもの用いることが好ましい。例えば、アンモニアガスの吸収係数が10atm
-1cm
-1以上である紫外線の波長域は、150nm以下および162〜210nmである。
【0024】
紫外線ランプ40の好ましい具体例としてはキセノンエキシマランプが挙げられる。
キセノンエキシマランプとしては、例えば
図2に示すような構成のものがある。
図2のキセノンエキシマランプは、例えば石英ガラスなどの紫外線を透過する材料によって構成され、両端が封止された円筒状の発光管41を備えている。この発光管41の内部には、他端(
図2における右端)が封止され、一端(
図2における左端)が発光管41の金属箔46が埋設されている封止部(以下、「金属箔埋設封止部」ともいう。)42に溶着された内側管44が、発光管41の管軸に沿って設けられている。また、この内側管44と発光管41の間に形成された空間にキセノンガスが封入されている。そして、内側管44の内部には、コイル状の内部電極45が、内側管44の内周面に沿って管軸方向に伸びるように配設されており、その内部電極45は金属箔46に電気的に接続されている。この金属箔46には、金属箔埋設封止部42の外端面から外方に突出する外部リード47が電気的に接続されている。また、発光管41の外周面には、網状の外部電極48が設けられている。そして、内部電極45と外部電極48とが、内側管44の管壁、内側管44の外周面と発光管41の内周面との間の空間および発光管41の管壁を介して対向する領域において、発光領域が形成されている。
このエキシマランプは、内部電極45が金属箔46および外部リード47を介して高周波電源(図示せず)に接続され、外部電極48が接地されており、給電によって生じるエキシマ放電によって紫外線を得るものである。
【0025】
ガス供給手段10を構成するアンモニアガス供給源11においては、当該アンモニアガス供給源11からアンモニアガスを供給することができれば、アンモニアの貯蔵状態は、気体状態(アンモニアガス)であってもよく、液体状態(液体アンモニア)であってもよい。
また、キャリアガス供給源12から供給されるキャリアガスとしては、紫外線ランプ40からの紫外線の吸収が小さくて不活性であるものであれば、種々のガスを用いることができる。具体的には、例えばアルゴンガス、ネオンガス、キセノンガスおよびクリプトンガス等の希ガス、窒素ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、安価に入手することができる点で、窒素ガスを用いることが好ましい。
【0026】
このような構成の窒素酸化物処理装置においては、アンモニアガス流路管31を流通しているアンモニアガスに紫外線ランプ40からの紫外線を照射することにより、アンモニアガスを活性化処理して活性化ガスを得、この活性化ガスを、窒素酸化物を含む被処理ガスに混合することによって、当該窒素酸化物を還元反応させる工程(以下、「脱硝処理工程」ともいう。)を経ることにより、被処理ガスの処理が行われる。
【0027】
具体的には、例えば被処理ガス発生源29から排出された被処理ガス(
図1において矢印G1で示す。)が、被処理ガス導入口21を介して反応器20内に供給される。そして、反応器20内において、被処理ガスは、加熱処理部22において加熱され、この加熱された被処理ガス(
図1において矢印G2で示す。)が還元処理部23に供給される。
一方、アンモニアガス供給源11から導管13を介してアンモニアガス(
図1において矢印g1で示す。)が供給されると共に、キャリアガス供給源12から導管14を介してキャリアガス(
図1において矢印g2で示す。)が供給されることにより、ガス混合部15においてアンモニアガスとキャリアガスとが混合される。更に、ガス混合部15から導管16を介してアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガスよりなる被活性化ガス(
図1において矢印g3で示す。)がガス活性化装置30に供給される。
そして、ガス活性化装置30においては、紫外線放射ランプ40からの紫外線(
図1において矢印Lで示す。)が、紫外線透過窓37を介して、アンモニアガス流路管31内に供給された被活性化ガスに照射される。これにより、被活性化ガスを構成するアンモニアガスから、例えばNH
2 ラジカル、NHラジカル、Nラジカルなどのラジカルや、N
+ イオン、NH
+ イオン、NH
2 + イオン、NH
3 + イオンなどのイオンを含む活性化ガスが生成される。
そして、反応器20の還元処理部23に、ガス活性化装置30から導管25を介して活性化ガス(
図1において矢印g4で示す。)が供給され、当該反応器20内において、被処理ガスに活性化ガスが混合されることにより、被処理ガス中の窒素酸化物が活性化ガスによって還元処理される。その後、処理済ガス(
図1において矢印G3で示す)が被処理ガス排出口から反応器20の外部に排出される。
【0028】
脱硝処理工程において、ガス活性化装置30における被活性化ガス(混合ガス)の流量は、例えば1〜100L/minとされる。
また、アンモニアガス流路管31の内面における紫外線照射領域の照度は、アンモニア活性化反応用触媒物質によるアンモニア活性化能の発現性などの観点から、2〜350mW/cm
2 であることが好ましい。
また、被活性化ガスに対する紫外線ランプ40からの紫外線の照射時間は、紫外線照射による活性化ガスの生成率向上の観点から、0.01〜1.6分間であることが好ましい。
【0029】
また、反応器20における被処理ガスの温度、すなわちガス活性化装置30からの活性化ガスが混入された被処理ガスの温度は600℃以上であることが好ましく、より好ましくは650〜800℃である。故に、被処理ガス発生源29から排出される被処理ガスが高温、具体的には還元処理部23において活性化ガスが混入された状態で600℃以上となる温度である場合には、当該被処理ガスを加熱処理部22において加熱することなしに還元処理部23に供給することができる。
また、活性化ガスによる被処理ガスにおける窒素酸化物の還元処理時間、具体的には、還元処理部23における被処理ガスの混合時間は、2.0秒間以上であることが好ましく、より好ましくは4.0〜6.0秒間である。
【0030】
以上の窒素酸化物処理装置のガス活性化装置30においては、アンモニアガス流路管31の紫外線遮光部分(具体的には、外管部32、内管部33の基材管33Aおよび側壁部34,34)が、アンモニア活性化反応用触媒物質を含む特定触媒含有材料により形成されていることから、紫外線ランプ40からの紫外線が照射される外管部32の内面において、アンモニアガス流路管31内を流通するアンモニアガスが、アンモニア活性化反応用触媒物質と接触した状態とされる。そのため、アンモニアガス流路管31内を流通するアンモニアガスは、紫外線ランプ40からの紫外線が照射されることによって活性化されると共に、紫外線ランプ40からの紫外線が照射されることによって発現されるアンモニア活性化反応用触媒物質のアンモニア活性化能によって活性化される。
しかも、このガス活性化装置30においては、外管部32の内面の紫外線反射率が50%以上であることにより、アンモニアガス流路管31内における紫外線光量を高くすることができるため、極めて高い効率でアンモニアガスを活性化することができる。
【0031】
このように、窒素酸化物処理装置においては、ガス活性化装置30がアンモニアガスを高い効率で活性化することのできるものであるため、このガス活性化装置30から得られる活性化ガスを還元剤として用い、反応器20内において被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理することにより、被処理ガス中の窒素酸化物を高い効率で処理することができる。
【0032】
以上、本発明について、具体的には本発明のガス活性化装置および窒素酸化物処理装置について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ガス活性化装置においては、アンモニアガス流路管は、当該アンモニアガス流路管の内面において、紫外線ランプからの紫外線が照射される紫外線照射領域の少なくとも一部が、アンモニア活性化反応用触媒物質を含む特定触媒含有材料により形成されていればよい。
具体的には、
図1に係るガス活性化装置において、アンモニアガス流路管における外管部のみが特定触媒含有材料によって構成されたものであってもよい。また、
図1に係るガス活性化装置において、アンモニアガス流路管における内管部に設けられている紫外線透過窓(石英ガラス管)の外面のみに、特定触媒含有材料(具体的には、例えばニッケル)よりなる蒸着膜が形成されたものであってもよい。
ここに、紫外線透過窓の外面に特定触媒含有材料よりなる蒸着膜が形成される場合においては、蒸着膜は、紫外線透過性の観点から、格子状の形状を有することが好ましい。蒸着膜が格子状であることにより、蒸着膜における格子間隙から アンモニアガス流路管ガス内に紫外線が入射される。また、蒸着膜の厚みは、紫外線透過性およびアンモニア活性化能発現性の観点から、5〜50μmであることが好ましい。
【0033】
また、ガス活性化装置においては、紫外線ランプは、
図3に示すように、アンモニアガス流路管が一重管状のものであり、紫外線ランプが被活性化ガスと接触する構成のものであってもよい。
この
図3のガス活性化装置は、ガス導入口52およびガス排出口53を有する円筒状のアンモニアガス流路管51を備え、このアンモニアガス流路管51の内部に、紫外線ランプ40が配設されており、紫外線ランプ40が被活性化ガスと接触する構成であること以外は、
図1に係るガス活性化装置30と同様の構成を有するものである。
このガス活性化装置のアンモニアガス流路管51の内部において、紫外線ランプ40は、当該紫外線ランプ40の管軸(ランプ中心軸)がアンモニアガス流路管51の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されており、アンモニアガス流路管51と紫外線ランプ40との間に、この紫外線ランプ40を囲むようにしてガス流路形成空間が形成されている。
また、アンモニアガス流路管51は、特定触媒含有材料によって形成されており、よってアンモニアガス流路管51の内面は、その全面が特定触媒含有材料によって形成されている。
【0034】
また、ガス活性化装置においては、紫外線ランプはアンモニアガス流路管によって形成されるガス流路形成空間に囲まれるように配設されていなくてもよい。具体的には、例えばアンモニアガス流路管が一重管状であって、紫外線透過窓が設けられてなる構成を有しており、当該紫外線透過窓を介して、当該アンモニアガス流路管の外部に設けられた紫外線ランプからの紫外線が、アンモニアガス流路を流通する被活性化ガスに照射される構成のものであってもよい。
【0035】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0036】
〔実験例1〕
(本発明に係る窒素酸化物処理装置による窒素酸化物の還元処理(1))
図3に示すような構成のガス活性化装置(以下、「ガス活性化装置(1)」ともいう。)を備えてなる窒素酸化物処理装置(以下、「処理装置(1)」ともいう。)を作製した。
この処理装置(1)は、
図1に示されているように、ガス活性化装置(1)にアンモニアガスとキャリアガスとの混合ガスよりなる被処理ガスを供給するためのガス供給手段と、ガス活性化装置(1)からの活性化ガスを被処理ガスに混合することによって当該被処理ガス中の窒素酸化物を還元処理するための反応器とが設けられているものである。
また、処理装置(1)には、反応器における被処理ガス排出口に、排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定するための濃度測定装置を設けられている。
【0037】
処理装置(1)を構成するガス活性化装置(1)は、他端側(
図3における右端)にガス導入口52を有し、一端側(
図3における右端)にガス排出口53を有する円筒状のアンモニアガス流路管51と、このアンモニアガス流路管51の内部に、当該アンモニアガス流路管51の管軸に沿って設けられた棒状の紫外線ランプ40とを備えてなるものである。
このガス活性化装置(1)においては、紫外線ランプ40は、アンモニアガス流路管51の内部において、当該紫外線ランプ40の管軸(ランプ中心軸)がアンモニアガス流路管51の管軸と一致するように支持部材(図示せず)によって支持されて配設されている。また、アンモニアガス流路管51と紫外線ランプ40との間に、この紫外線ランプ40を囲むようにしてガス流路形成空間が形成されている。
ここに、ガス活性化装置(1)において、アンモニアガス流路管51は、アンモニア活性化反応用触媒物質としてクロム20質量%を含有するステンレス鋼よりなり、全長が110cmであって、内径が5.5cmであり、内面における紫外線反射率が50%のものである。
紫外線ランプ40は、キセノンエキシマランプであり、石英ガラス製の発光管を備え、ランプの長さが100cmであり、ランプ直径が2cmのものである。
また、ガス活性化装置(1)においては、紫外線ランプ40が50mW/cm
2 の放射強度で点灯されることにより、アンモニアガス流路管51の内面における紫外線照射領域の照度が30mW/cm
2 とされる。
【0038】
作製した処理装置(1)において、キャリアガスとして窒素ガスを用い、この窒素ガスとアンモニアガスとを、アンモニアガス濃度が3体積%であって窒素ガス濃度が97体積%となるように混合した混合ガスをガス活性化装置(1)に供給する被活性化ガスとした。
また、窒素酸化物濃度が500ppmのガスを被処理ガスとした。
そして、処理装置(1)を動作させ、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定した。
ここに、処理装置(1)の動作中、ガス活性化装置(1)においては、紫外線ランプ40を放射強度が50mW/cm
2 となる条件で点灯し、被活性化ガスを、アンモニアガス流路管41内における流量が15L/minとなるように供給した。
【0039】
また、得られた処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から、下記の数式(1)に基づいて脱硝率を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
(本発明に係る窒素酸化物処理装置による窒素酸化物の還元処理(2)および(3))
処理装置(1)において、ガス活性化装置(1)に代えて、アンモニアガス流路管として、内面における紫外線反射率が、表1に示すように、60%および75%のものが用いられている構成のガス活性化装置(以下、それぞれ「ガス活性化装置(2)」および「ガス活性化装置(3)」ともいう。)を備えてなること以外は当該処理装置(1)と同様の構成を有する窒素酸化物処理装置(以下、それぞれ「処理装置(2)」および「処理装置(3)」ともいう。)を作製した。
ガス活性化装置(2)およびガス活性化装置(3)は、各々、アンモニアガス流路管の内面の紫外線反射率が60%および75%であること以外は、ガス活性化装置(1)と同様の構成を有するものである。
作製した処理装置(2)および処理装置(3)を、処理装置(1)と同様の条件によって動作させた。なお、処理装置(2)および処理装置(3)の作動条件は、具体的には、紫外線ランプを放射強度が50mW/cm
2 となる条件で点灯すると共に、アンモニアガス濃度が3体積%であって窒素ガス濃度が97体積%である被活性化ガスを、アンモニアガス流路管内における流量が15L/minとなるように供給し、反応器において窒素酸化物濃度が500ppmである被処理ガスを処理する条件(以下、「実験用処理条件」ともいう。)である。
そして、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定し、得られた処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から脱硝率を算出した。結果を表1に示す。
【0042】
(窒素酸化物処理装置による窒素酸化物の還元処理(4))
処理装置(1)において、ガス活性化装置(1)に代えて、アンモニアガス流路管として、アンモニア活性化反応用触媒物質としてクロム20質量%と共にニッケル10質量%を含有するステンレス鋼よりなり、内面における紫外線反射率が50%のものが用いられている構成のガス活性化装置(以下、「ガス活性化装置(4)」ともいう。)を備えてなること以外は当該処理装置(1)と同様の構成を有する窒素酸化物処理装置(以下、「処理装置(4)」ともいう。)を作製した。
ガス活性化装置(4)は、アンモニアガス流路管がクロム20質量%と共にニッケル10質量%を含有するステンレス鋼よりなるものであること以外は、ガス活性化装置(1)と同様の構成を有するものである。
作製した処理装置(4)を処理装置(1)と同様の条件(実験用処理条件)によって動作させた。そして、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定し、得られた処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から脱硝率を算出した。結果を表1に示す。
【0043】
(本発明に係る窒素酸化物処理装置による窒素酸化物の還元処理(5)および(6))
処理装置(4)において、ガス活性化装置(4)に代えて、アンモニアガス流路管として、内面における紫外線反射率が、表1に示すように、60%および75%のものが用いられている構成のガス活性化装置(以下、それぞれ「ガス活性化装置(5)」および「ガス活性化装置(6)」ともいう。)を備えてなること以外は当該処理装置(4)と同様の構成を有する窒素酸化物処理装置(以下、それぞれ「処理装置(5)」および「処理装置(6)」ともいう。)を作製した。
ガス活性化装置(5)およびガス活性化装置(6)は、各々、アンモニアガス流路管の内面の紫外線反射率が60%および75%であること以外は、ガス活性化装置(4)と同様の構成を有するものである。
作製した処理装置(5)および処理装置(6)を、処理装置(1)と同様の条件(実験用処理条件)によって動作させた。そして、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定し、得られた処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から脱硝率を算出した。結果を表1に示す。
【0044】
(比較用窒素酸化物処理装置による窒素酸化物の還元処理(1))
処理装置(1)において、ガス活性化装置(1)に代えて、アンモニアガス流路管として、内面がガラスコーティング材よりなるガラスコーティング膜によって形成されているものが用いられている構成のガス活性化装置(以下、「比較用ガス活性化装置(1)」ともいう。)を備えてなること以外は当該処理装置(1)と同様の構成を有する窒素酸化物処理装置(以下、「比較用処理装置(1)」ともいう。)を作製した。
比較用ガス活性化装置(1)は、アンモニアガス流路管が、ステンレス鋼よりなる円筒管の内面全面に、ガラスコーティング膜が形成されており、当該ステンレス鋼よりなる円筒管の表面にアンモニアガスが接触することのないものであること以外は、ガス活性化装置(1)と同様の構成を有するものである。
ここに、比較用ガス活性化装置(1)のアンモニアガス流路管の内面を形成しているガラスコーティング膜は、紫外線ランプからの光を透過する紫外線透過性を有するものである。
【0045】
作製した比較用処理装置(1)を処理装置(1)と同様の条件(実験用処理条件)によって動作させた。そして、反応器から排出される処理済みガスにおける窒素酸化物濃度を測定し、得られた処理済みガス中の窒素酸化物濃度の測定値から脱硝率を算出した。結果を表1に示す。
【0047】
以上の実験例1の結果から、本発明に係る処理装置(1)〜処理装置(6)は、ガス活性化装置(1)〜ガス活性化装置(6)において、アンモニアガス流路管の内面が、アンモニア活性化反応用触媒物質を含む材料により形成されているため、比較用処理装置(1)に比して、高い脱硝率が得られることが明らかとなった。
その理由は、以下のように推測される。
ガス活性化装置(1)〜ガス活性化装置(6)においては、アンモニアガス流路管内において、アンモニア活性化反応用触媒物質のアンモニア活性化能(触媒機能)が得られたことで、アンモニアガスから生成されるアンモニアラジカルの量が増加したものと推測される。従って、処理装置(1)〜処理装置(6)においては、ガス活性化装置(1)〜ガス活性化装置(6)によってアンモニアガスからアンモニアラジカルを効率的に生成することができるため、脱硝率が向上したものと推測される。
また、本発明に係る処理装置(4)〜処理装置(6)は、ガス活性化装置(1)〜ガス活性化装置(3)におけるアンモニアガス流路管の形成材料中のアンモニア活性化反応用触媒物質の含有割合が大きいことから、処理装置(1)〜処理装置(2)よりも高い脱硝率が得られることが明らかとなった。
また、本発明に係る処理装置においては、ガス活性化装置におけるアンモニアガス流路管の内面の紫外線反射率が大きくなるに従って脱硝率が高くなることが明らかとなった。
更に、本発明に係る処理装置(6)においては、ガス活性化装置(6)において、紫外線反射率を50%以上とすることによる紫外線光量の増加効果と、紫外線が照射されることによって発現されるアンモニア活性化反応用触媒物質のアンモニア活性化能との相乗効果が得られたため、極めて高い脱硝率が得られることが明らかとなった。