(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側をウォッシャタンクに接続されると共に先端側を車両のボデー部材に係止され、前記先端側に設けられた注入口からウォッシャ液を前記ウォッシャタンクに注入するインレットパイプの取付構造であって、
前記ウォッシャタンクは、ウォッシャ液が流入する軸穴状開口部を有し、
前記インレットパイプは、
前記軸穴状開口部に挿通される直線状中空軸部を有する基端側パイプ部と、
前記直線状中空軸部の軸線と交差する方向に前記基端側パイプ部から屈曲して形成される係止部を有する先端側パイプ部と、
前記先端側パイプに、一端が固定され、前記軸線の方向に突設されるL字形の係止部と、を有し、
前記直線状中空軸部と前記軸穴状開口部との間には、前記軸穴状開口部に挿通した前記直線状中空軸部を所定の回転方向に所定角度だけ回転することにより、前記直線状中空軸部を前記軸穴状開口部に係止させる係止機構が設けられ、
前記先端側パイプ部の前記係止部の他端が押し下げられて前記ボデー部材に係止されると、前記ボデー部材が前記先端側パイプ部を通じて前記基端側パイプ部を前記所定の回転方向に押圧する
ことを特徴とする、インレットパイプ取付構造。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のインレットパイプ取付構造に係る実施の形態について説明する。本発明のインレットパイプ取付構造は車両に適用される。車両には、自動車や鉄道車両などが含まれるが、本実施形態では、車両として自動車を例に挙げて説明する。
車両には、フロントウィンドウにウォッシャ液を噴射するウォッシャ装置が装備されている。このウォッシャ装置は、ウォッシャ液が貯留されるウォッシャタンクを備えており、このウォッシャタンクはエンジンルーム内に配置される。
【0015】
上記のウォッシャタンクにウォッシャ液を注入するインレットパイプの取り付けに係る構造を本実施形態で説明する。このインレットパイプもまたエンジンルーム内に配置される。
また、本実施形態のインレットパイプ取付構造は、車両の前進方向を前方とし、前方を基準に左右を定め、前方の逆方向を後方とし、重力の作用方向を下方とし、この逆方向を上方とし、これらの前後方向および上下方向(すなわち鉛直方向)の何れの方向にも直交する方向を車幅方向とする。
【0016】
〔一実施形態〕
一実施形態のインレットパイプ取付構造は、フロントにエンジンを搭載した車両に適用され、このエンジンが収容されるエンジンルーム内に配置されたインレットパイプを取り付けるための構造である。
以下、図面を参照して、一実施形態に係るインレットパイプ取付構造について説明する。
【0017】
図1に示すように、ウォッシャタンク10とこれにウォッシャ液を注入するインレットパイプ20は何れも、エンジンルーム1に配置される。
エンジンルーム1は、複数のボデー部材(何れも二点鎖線で示す)によって区画形成されている。
エンジンルーム1の左右側方には、フロントフェンダーシールドパネルやアッパフレームを形成するアウタパネルおよびインナパネルなどの側面パネル2(ボデー部材)が配置され、側面パネル2がエンジンルーム1の左右側方を区画している。
【0018】
また、エンジンルーム1の後方には、ダッシュパネルやこのパネルを補強するダッシュリンフォースパネルなどの後面パネル3(ボデー部材)が配置され、後面パネル3がエンジンルーム1の後方を区画している。
また、エンジンルーム1の上方にはエンジンフード4とこの後方のデッキパネル5とが配置され、エンジンフード4およびデッキパネル5がエンジンルーム1の上方を区画している。デッキパネル5は、その前端縁部に詳細を後述するインレットパイプ20を係止するための孔部5aを有し、その後端縁部でフロントウィンドウ6を支持している。
【0019】
エンジンルーム1を区画形成するボデー部材のうち、上記の側面パネル2や後面パネル3は、エンジンルーム1内に各種の部品を取り付ける前に、溶接などで取り付けられるのに対し、上記のデッキパネル5は、エンジンルーム1内の各種の部品を取り付けた後に、側面パネル2などにネジなどで取り付けられる艤装パネルである。なお、ここでいうエンジンルーム1内の各種の部品には、もちろんウォッシャタンク10およびインレットパイプ20が含まれる。
【0020】
エンジンルーム1内の各種の部品を取り付けた後にデッキパネル5を取り付ける理由は、エンジンルーム1の上部開口の大きさを確保することでエンジンルーム1内への各種の部品の取り付け作業性を確保するためである。これにより、特にデッキパネル5の下方に配置される部品の取り付け作業性が向上する。
【0021】
ウォッシャタンク10は、エンジンルーム1内の側方後部に配置されており、側面パネル2や後面パネル3にネジなどで取付固定されている。このウォッシャタンク10は、例えばホイールハウスの上方に取付固定されている。本実施形態では、ウォッシャタンク10が車両の右側方の後部に配置されたものを説明する。
ウォッシャタンク10を上面視すれば、ウォッシャタンク10とデッキパネル5とが一部重複している。すなわち、ウォッシャタンク10の一部の上方にはデッキパネル5が位置する。
【0022】
インレットパイプ20は、その下端側(基端側)がウォッシャタンク10に接続されており、その先端側にはウォッシャ液を注入するための注入口26が形成されている。
上記したように、ウォッシャタンク10およびインレットパイプ20はデッキパネル5の下方に配置されるが、ウォッシャタンク10およびインレットパイプ20の取り付け後にデッキパネル5が取り付けられるため、これらの取り付け作業性が確保されている。
【0023】
次に、
図2を参照してウォッシャタンク10の構成を説明する。
ウォッシャタンク10は、内部にウォッシャ液を貯留する空間を有する容器である。
図2には、ウォッシャタンク10の内側(車体中心側)の側壁10aを主体に示す。なお、ウォッシャタンク10は、直方体から前方且つ上方の部位が切り落とした形状を有している。このウォッシャタンク10には種々の形状を採用することができるが、例えば狭隘なスペースに設置される場合には、ウォッシャタンク10として前後方向を長手方向とする薄型形状のものを用いることができる。
【0024】
このウォッシャタンク10の下部および後部には、取付用のフランジが複数設けられている。これらのフランジにより、ウォッシャタンク10を上記の側面パネル2や後面パネル3(何れも
図1参照)にネジなどで取り付けることができる。
ウォッシャタンク10の側壁10aには、ウォッシャ液が流入する軸穴状開口部11(以下、単に「開口部11」という)が形成されている。
図2には、ウォッシャタンク10の左側壁10aの上部であって前後方向中間部に開口部11が形成されたもの示す。
【0025】
開口部11は、ウォッシャタンク10の内部の空間と外部の空間とを連通する開口11pを形成する部位であって、車幅方向に沿った筒軸Cを有する軸穴状の部位である。この開口部11の車幅方向に沿った長さは、ウォッシャタンク10の側壁10aの厚みよりも大きく設定されている。
開口部11には、溝部11aと爪受け部11bとが形成されている。溝部11aは、筒軸Cに直交する方向に沿って凹設された部分、または、筒軸Cに直交する方向に沿って僅かに傾斜した雌ネジ状の凹設された部分である。これらの溝部11aおよび爪受け部11bについては、後述する係止機構αの説明で詳述する。
【0026】
次に、
図3を参照してインレットパイプ20の構成を説明する。なお、
図3には、ウォッシャタンク10とデッキパネル5との何れにも係止された状態、即ち、本止めされたインレットパイプ20を取り出して示している。
【0027】
インレットパイプ20は、先端と基端との間を中空の空間が連通するパイプ形状に形成された樹脂部材である。例えば、インレットパイプ20は一体に樹脂で成型されている。
また、インレットパイプ20は、その基端側がウォッシャタンク10に係止されて接続され、その先端側がデッキパネル5の孔部5a(何れも二点鎖線で示す)に係止される。また、インレットパイプ20の先端側には、ウォッシャ液を注入する注入口26が形成されている。なお、インレットパイプ20は、その先端が最も前方かつ上方に位置し、その基端が最も後方かつ右方に位置する。
【0028】
このインレットパイプ20は、基端側のパイプ部分である基端側パイプ部21と、先端側のパイプ部分である先端側パイプ部25とを有する。基端側パイプ部21は、上記した開口部11の筒軸C(何れも
図2参照)と一致する軸線Cを有する。先端側パイプ25は、軸線Cと交差する方向に基端側パイプ部21から屈曲形成して形成されている。ここでは、先端側パイプ25が、基端側パイプ部21の軸線Cに対して前方かつ上方に屈曲形成されたものを説明する。
【0029】
インレットパイプ20は、軸線Cを回転軸として所定の回転方向に所定角度θだけ回転されて、ウォッシャタンク10に取り付けられる。ここでは、所定の回転方向が反時計回りのものを説明する。
基端側パイプ部21は、基端から順に、突条部22aおよび爪部22bを有する直線状中空軸部22とフランジ部23と把手部24とを有する。これらの直線状中空軸部22,フランジ部23および把手部24は、何れも共通の軸線Cを有する。
【0030】
直線状中空溝部22は、上記の開口部11(
図2参照)に挿通される部位である。この直線状中空溝部22は、上記の開口部11が形成する開口11p(
図2参照)よりも小さい外径を有し、外周に突条部22aが形成されている。この突条部22aは、軸線Cに直交する方向に沿って突出した部分、または、軸線Cに直交する方向から僅かに傾斜した雄ネジ状の突出した部分である。また、この突条部22aよりも先端側(車両左側)上部には、爪部22bが形成されている。これらの突条部22aおよび爪部22bについては、後述する係止機構αで詳述する。
【0031】
フランジ部23は、直線状中空溝部22よりも先端側(車両左側)に形成され、基端側パイプ部21の筒状部分から全周に亘って拡径方向に突設された鍔状部位である。このフランジ部23は、直線状中空溝部22が上記の開口部11(
図2参照)に挿通されると、開口部11に左方からと当接する部位である。つまり、フランジ部23は、直線状中空溝部22の開口部11への挿入深さを規制するものとして機能する。
【0032】
把手部24は、基端側パイプ部21の前後方向に拡径するように突設された部位である。この把手部24は、インレットパイプ20をウォッシャタンク10(
図1および
図2参照)に取り付ける際に、作業者が所定の回転方向にインレットパイプ20を回転するときに使用するためのものである。
先端側パイプ部25には、その先端側の部位に注入口26と係止部27とが形成されている。
【0033】
注入口26は、インレットパイプ20の先端に形成された開口であり、インレットパイプ20がウォッシャタンク10に取り付けられた状態でエンジンルーム1(
図1参照)の上部に位置する。
係止部27は、インレットパイプ20をデッキパネル5に係止するための部位である。この係止部27は、可撓性を有する。このため、インレットパイプ20は、孔部5aや係止部27をはじめとした本実施形態のインレットパイプ取付構造に係る部位の製造誤差や取付位置の誤差などを許容したノミナル設計となっている。
【0034】
また、係止部27は、先端側パイプ部25に突設された部位である。
図3では、係止部27が、先端側パイプ部25の先端直下かつ左側面から突設されたものを示す。
詳細には、係止部27は、先端側パイプ部25に突設されたアーム部27aと、アーム部27aの先端部に突設された突起部27bとを有する。
アーム部27aは、正面視(上面視)がL字型の突出片である。例えば、側面視したアーム部27aは前下がりの傾斜を有する。
図3に示すアーム部27aは、先端側パイプ部25の先端直下から車両左方に突出し、この突出端から後方(先端)に突出している。
【0035】
突起部27bは、アーム部27aの先端部に形成された突起状の部位である。
図3では、突起部27bとして、直方体形状の突起を示している。
この突起部27bは、デッキパネル5の前端縁部に形成された孔部5a(何れも二点鎖線で示す)に差し込まれて取り付けられる。つまり、孔部5aは、突起部27bに対応した形状の四角孔を形成する部位である。なおここでは、突起部27bが直方体形状であり、孔部5aが突起部27bに対応した形状の四角孔のものを説明したが、突起部27bと孔部5aとは、例えば円柱形状の部位とこれに対応する丸孔を形成する部位でもよく、突起部27bが孔部5aに差し込まれるとこの突起部27bを孔部5aに係止可能なように、突起部27bに対応した形状に形成されていればよい。
【0036】
突起部27bがデッキパネル5の孔部5aに取り付けられた状態では、アーム部27bがデッキパネル5に押圧されている。すなわち、係止部27は、突起部27bが取り付けられた状態では、突起部27bが形成された先端部が押し下げられるように撓んでいる。一方、突起部27bがデッキパネル5の孔部5aに取り付けられた前の係止部27(二点鎖線で示す)の先端部は、突起部27bがデッキパネル5の孔部5aに差し込まれた係止部27の先端部よりも上方に位置する。
【0037】
このように、係止部27がデッキパネル5に押圧されることにより、インレットパイプ20には、軸線Cを回転軸とした反時計回りの回転力が付勢されている。言い換えれば、先端側パイプ部25の係止部27がデッキパネル5に係止されると、デッキパネル5が先端側パイプ25を通じて基端側パイプ部21を反時計回りに押圧している。
【0038】
次に、
図4を参照して、インレットパイプ20をウォッシャタンク10に係止する係止機構αについて説明する。この係止機構αは、インレットパイプ20の直線状中空溝部22と、ウォッシャタンク10の開口部11との間に設けられた機構である。
【0039】
係止機構αは、インレットパイプ20の直線状中空溝部22に形成された突条部22aおよび爪部22bと、ウォッシャタンク10の開口部11に形成された溝部11aおよび爪受け部11bとが協働することで機能する。この係止機構αでは、突条部22aとこれに対応して形成された溝部11aとによる係止(以下、「溝係止」という)と、爪部22bとこれに対応して形成された爪受け部11bとによる係止(以下、「爪係止」という)とが機能する。
【0040】
まず、係止機構αの溝係止に係る構成について説明する。
突条部22aと溝部11aとは、インレットパイプ20を軸線Cを回転軸として反時計回りに所定角度θだけ回転すると溝嵌合するように、互いに対応した形状に形成されている。つまり、突条部22aおよび溝部11aはそれぞれ、少なくとも軸線Cを基準に所定角度θの溝または溝受けが形成されている。
インレットパイプ20がウォッシャタンク10に係止される前の突条部22a(破線で示す)を所定角度θだけ回転すると、突条部22a(二点鎖線で示す)と溝部11a(破線で示す)とが溝嵌合して、溝係止が機能する。
【0041】
次に、係止機構αの爪係止に係る構成について説明する。
爪部22bは、直線状中空溝部22の先端側の上部に突設された部位である。また、爪受け部11bは、爪部22bが開口11pに差し込まれて反時計回りに所定角度θだけ回転されると当接される部位である。
開口11pは、直線状中空溝部22で中空を形成するパイプ部が挿通可能な丸穴状の下部開口11dと、爪部22bが抜き差し可能な鍵穴状の上部開口11uとに区分することができる。この上部開口11uは、側面視で爪部22bよりも大きく形成されている。
【0042】
上部開口11uを形成している開口部11の内部には、後端位置が上部開口11uと一致するとともに、前後方向の長さが上部開口11uよりも長い内部空間11sが形成されている。
内部空間11sは、左右側方と前方とを開口部11に囲繞されている。すなわち、内部空間11sは、上部開口11uに差し込まれた爪部22bが前方へ向けて回転可能な空間である。この内部空間11sは、インレットパイプ20を軸線Cを回転軸として反時計回りに所定角度θだけ回転すると、爪部22bが当接する前後方向の長さを有する。
【0043】
内部空間11sに対してインレットパイプ20が装着される側(ここでは左方側)の開口部11の厚み(車幅方向の長さ)は、爪部22bとフランジ部23(
図3参照)との距離と略等しいまたは僅かに長く設定されている。
爪受け部11bは、上記の内部空間11sを囲繞する開口部11の左側方と前方とを囲繞する開口部11の部分である。したがって、爪部22bが上部開口11uに差し込まれてインレットパイプ20を軸心Cを回転軸として反時計回りに所定角度θだけ回転すると、爪部22b(二点鎖線で示す)が爪受け部11bに後方から当接するとともに軸線Cに沿った移動が爪受け部11bにより規制される。
例えて言えば、爪部22bと爪受け部11bとは、鍵と鍵穴とのように形成されている。
【0044】
〔作用および効果〕
本発明の一実施形態に係るインレットパイプ取付構造は、上述のように構成される。次に、
図5(a)〜(c)を参照して、インレットパイプ20のウォッシャタンク10への取り付けを説明する。なお、
図5(a)〜(c)には、下記の説明で触れる箇所にだけ符号を付している。
【0045】
まず、
図5(a)に示すように、インレットパイプ20の基端側パイプ部21の軸線Cを、ウォッシャタンク10の開口部11の筒軸Cに一致させる。そして、基端側パイプ部21の直線状中間軸部22を、開口部11に挿通(挿入)する。
直線状中間軸部22が開口部11に挿通されると、
図5(b)に示すように、インレットパイプ20のフランジ部23が開口部11の左方から当接する。すなわち、直線状中間軸部22の開口部11への挿入深さが規制される。そして、インレットパイプ20を反時計回りに軸線Cを回転軸として回転させる。この際、作業者などは、把手部24を用いてインレットパイプを回転させることができる。
【0046】
インレットパイプ20が所定角度θだけ回転されると、
図5(c)に示すように、係止機構αでは、突条部22aおよび溝部11a(何れも
図4参照)が協働して溝係止し、また、爪部22bおよび爪受け部11b(何れも
図4参照)が協働して爪係止する。これにより、インレットパイプ20はウォッシャタンク10に係止される。このとき、デッキパネル5は未だ取り付けされていないが、係止機構αによる溝係止および爪係止により、インレットパイプ20はウォッシャタンク10から抜けることがなく外れることがない状態で仮止めされる。仮止めされたインレットパイプ20は、ウォッシャタンク10の開口部11に流入するウォッシャ液の流路を前方かつ上方に延長している。
【0047】
デッキパネル5が取り付けられた後には、上記した
図3に示すように、インレットパイプ20の係止部27を撓ませて、係止部27の突起部27aをデッキパネル5の孔部5aに差し込んで、突起部27aを孔部5aに係止する。すなわち、突起部27aを孔部5aに係止するだけで、インレットパイプ20の本止め作業は完了する。
このようにして、インレットパイプ20の取り付けが完了する。
【0048】
したがって、本発明のインレットパイプ取付構造によれば、先端側パイプ部25の係止部27がデッキパネル5に係止されると、デッキパネル5が先端側パイプ部25を通じて基端側パイプ部25を反時計回りに押圧する、即ち、係止機構αによるウォッシャタンク10へのインレットパイプ20の係止が緩むのを防止するようにデッキパネル5がインレットパイプ20を押圧するため、ウォッシャタンク10にインレットパイプ20を確実に係止することができる。
【0049】
また、直線状中空軸部22の軸線Cと交差する方向に基端側パイプ部21から屈曲された先端側パイプ部25が、デッキパネル5に係止されるアーム部27を有するため、インレットパイプ20は屈曲形成され、インレットパイプ20の先端側がデッキパネル5に係止される。したがって、エンジンルーム1の上部開口が小さい場合であっても、インレットパイプ20の上部をデッキパネル5の適切な個所に係止し固定することができる。よって、エンジンルーム1の上部開口が小さく、エンジンルーム1内のレイアウトの制約が厳しい場合であっても、注入口26を前方にシフトするようにして、インレットパイプ20の上部を係止することができる。
これらより、エンジンルーム1の上部開口が小さい場合であっても、インレットパイプ20を確実に固定することができる。
【0050】
また、インレットパイプ20における基端側パイプ部21の直線状中空軸部22とウォッシャタンク10の開口部11との間には、開口部11に挿通した直線状中空軸部22を反時計回りに所定角度θだけ回転することにより、直線状中空軸部22を開口部11に係止させる係止機構αが設けられているため、ウォッシャタンク10にインレットパイプ20を容易に係止することができる。
【0051】
開口部11に直線状中空軸部22を挿通すると、爪部22bが上部開口11uに差し込まれる。そして、直線状中空軸部22を反時計回りに所定角度θだけ回転すると、爪部22bが爪受け部11bに当接するとともに、爪受け部11bにより爪部22bの軸線Cに沿った方向への移動が規制される。したがって、爪部22bを上部開口11uに差し込んで回転させるだけで、爪受け部11bがインレットパイプ10の回転止めと抜け止めとして機能し、ウォッシャタンク10にインレットパイプ20を容易に係止することができる。したがって、デッキパネル5の取り付け前に、インレットパイプ20を容易に仮止めすることができる。
【0052】
インレットパイプ20の係止部27は可撓性を有するため、デッキパネル5から係止部27を介して伝達されるインレットパイプ20への押圧力を、円滑に伝達することができる。また、インレットパイプ20やデッキパネル5およびこの孔部5aなどの製造誤差や取付位置の誤差を許容することができる。したがって、インレットパイプ20のデッキパネル5への本止め位置の精度を確保することができる。
【0053】
係止部27の突起部27bをデッキパネル5の孔部5aに差し込むだけで、インレットパイプ20をデッキパネル5に係止することができる。この突起部27bは可撓性を有する係止部27に形成されるため、デッキパネル5の孔部5aの位置に突起部27bの位置を合わせるのが容易となる。よって、インレットパイプ20の取り付け位置の精度を確保することができる。
【0054】
仮止めされたインレットパイプ20をデッキパネル5に係止するには、係止部27の突起部27bをデッキパネル5の孔部5aに差し込むだけでよいため、従来のようにネジ止めしてインレットパイプ20をボデー部材に固定するものに比較して、インレットパイプ20の本止め作業の負担を軽減することができる。
【0055】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の一実施形態では、所定の回転方向として反時計回りのものを例示したが、所定の回転方向は時計回りでもよい。つまり、インレットパイプ20は、軸線Cを回転軸として時計回りに回転されてウォッシャタンク10に取り付けられてもよい。この場合、インレットパイプ20の係止部27がデッキパネル5に係止されると、デッキパネル5がインレットパイプ20を時計回りに押圧するように取り付けられる。このようなインレット20としては、その先端が最も後方かつ上方に位置し、その基端が最も前方かつ下方に位置するものが挙げられる。
【0056】
また、ウォッシャタンク10における開口部11の配設位置は左側に限られず、右側,前側,後側や上側でもよい。この場合、インレットパイプ20の屈曲形状は、ウォッシャタンク10の開口部11の配設箇所と、デッキパネル5の孔部5aの箇所とに応じて形成される。
また、係止機構αには、爪部22bおよび爪受け部11b、または、突条部22aおよび溝部11aの少なくとも何れかがあればよい。
【0057】
また、上述の一実施形態では、係止部27が可撓性を有するものを示したが、係止部27が可撓性を有しておらず、例えば係止部27以外の先端側パイプ部25や基端側パイプ部21などのインレットパイプ20の係止部27以外の箇所が可撓性を有していてもよい。この場合にも、インレットパイプ取付構造に係る種々の部材の製造誤差や取付位置の誤差などを許容したノミナル設計が実現できる。
また、上述の一実施形態では、突起部27bが孔部5aに差し込まれてインレットパイプ20がデッキパネル5に係止されるものを示したが、インレットパイプ20をデッキパネル5にボルトやナットなどで固定してもよい。
【0058】
また、上述の一実施形態では、デッキパネル5にインレットパイプ20の係止部27が係止されるものを示したが、係止部27が係止される部材はデッキパネル5に限らず、デッキパネル5の上方に配置されるデッキガーニッシュ,エンジンルーム1を区画形成する側面パネル2や後面パネル3などの車両のボデー部材に係止されてもよい。
また、上述の一実施形態では、フロントにエンジンを搭載した車両を説明したが、リヤエンジンやミッドシップエンジンの車両であってもよい。この場合、フロントウィンドウ6の前方に位置するするパネルがエンジンフード4に相当する。